(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012184
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20230118BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20230118BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115677
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】515185924
【氏名又は名称】株式会社プロギア
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】中原 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠一
(72)【発明者】
【氏名】三枝 宏
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH06
(57)【要約】
【課題】高初速エリアを拡大しつつ反発係数の低下を抑制する上で有利なゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】接触部材32は、中空部28内に設けられてフェース部14、クラウン部16、ソール部18、サイド部20の何れかの箇所に取り付けられ、フェース裏面14Bに接触している。フェース裏面14Bに接触する接触部材32の箇所を通るフェース面14Aの法線がフェース面14Aと交差する点をフェース面上接触点接触点Pαとし、ゴルフクラブヘッド10の重心点G0を通るフェース面14Aの法線がフェース面14Aと交差する点をフェース面上重心点FGとする。フェース面上接触点Pαが、フェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部、クラウン部、ソール部、サイド部を含むヘッド本体を備え、それらフェース部とクラウン部とソール部とサイド部とで囲まれた内部が中空部であるゴルフクラブヘッドであって、
前記フェース部、前記クラウン部、前記ソール部、前記サイド部の何れかの箇所に取り付けられ、前記フェース部のフェース面と反対側に位置するフェース裏面に接触する接触部材を備え、
前記ゴルフクラブヘッドの重心点を通る前記フェース面の法線が前記フェース面と交差する点をフェース面上重心点とし、
前記フェース裏面に接触する接触部材の箇所を通る前記フェース面の法線が前記フェース面と交差する点をフェース面上接触点としたとき、
前記フェース面上接触点は前記フェース面上重心点から変位した前記フェース面の箇所に位置している、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記フェース面上で前記フェース面の中心点を通りかつトウヒール方向と直交する方向に延在する直線をフェースセンターラインとしたとき、
前記フェース面上重心点は、前記フェースセンターラインからトウヒール方向にそれぞれ10mm以内の範囲に位置し、
前記フェース面上接触点は、前記フェースセンターラインからトウヒール方向にそれぞれ30mm以内の範囲に位置している、
ことを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、前記フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面としたとき、
前記フェース面上重心点と前記フェース面上接触点とを結ぶ直線を前記水平面に投影したときの長さをトウヒール方向距離としたとき、前記トウヒール方向距離は10mm以上であり、
前記フェース面上重心点と前記フェース面上接触点とを結ぶ直線を前記フェース中心基準断面に投影したときの長さをクラウンソール方向方向距離としたとき、前記クラウンソール方向距離は5mm以上であり、
前記フェース面上重心点と前記フェース面上接触点とを結ぶ直線の距離は10mm以上30mm以下である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、前記フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、
前記基準状態において、前記フェース面上重心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面を重心点断面とし、
前記重心点断面と平行し前記重心点断面からトウ方向に2mm離間した平面を第1平面とし、
前記重心点断面と平行し前記重心点断面からヒール方向に2mm離間した平面を第2平面としたとき、
前記フェース面上接触点は、前記第1平面と前記第2平面とで区画された第1範囲から外れた前記フェース面の箇所に位置している、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、前記フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ方向に2mm離間した平面を第3平面とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール方向に2mm離間した平面を第4平面としたとき、
前記フェース面上接触点は、前記第3平面と前記第4平面とで区画された第2範囲から外れた前記フェース面の箇所に位置している、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記接触部材は、前記フェース裏面に接触する接触面を有し、
前記フェース裏面に接触する接触部材の箇所を通る前記フェース面の法線は、前記接触面の幾何学的な中心点である図心を通る前記フェース面の法線である、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記接触面の面積は3mm2以上400mm2以下であり、
前記接触面が前記フェース裏面に接触している前記接触部の部分の肉厚Δt2は1mm以上7mm以下である、
ことを特徴とする請求項6記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記接触面が接触する前記フェース裏面の部分に対応する前記フェース部の肉厚を肉厚Δt1としたとき、以下の式(1)が満たされる、
ことを特徴とする請求項7記載のゴルフクラブヘッド。
0.5≦Δt1/Δt2≦2.0 (1)
【請求項9】
前記接触部材に前記ヘッド本体および前記接触部材と異なる材料で形成された中間部材が取り付けられ、
前記接触面は、前記中間部材に設けられている、
ことを特徴とする請求項6記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記中間部材はエラストマーで形成され、
前記中間部材の肉厚は、0.1mm以上2.0mm以下であり、
前記中間部材の弾性率は、1GPa以上50GPa以下である、
ことを特徴とする請求項9記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記フェース裏面に接触する接触部材の箇所は、前記フェース裏面に押し付けられることで前記フェース裏面に荷重を加えている、
ことを特徴とする請求項1~10の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記荷重は、打球時のフェース部の変形をほぼ阻害しない大きさの力である、
ことを特徴とする請求項11記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記荷重を調整する荷重調整部が設けられている、
ことを特徴とする請求項11記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
前記フェース部、前記クラウン部、前記ソール部、前記サイド部20の何れかに対する前記接触部材の取り付けは、溶接、接着、ろう付け、ねじ止めの何れかによってなされている、
ことを特徴とする請求項1~13の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
前記接触部材は、金属材料、繊維強化樹脂材料、合成樹脂材料、エラストマーの何れかの材料で形成されている、
ことを特徴とする請求項1~14の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ソール部に取り付けられた支持部と、支持部の端部から起立されフェース裏面に当接する作用部を備える弾性板を設けたゴルフクラブヘッドが提案されている(特許文献1参照)。
このゴルフクラブヘッドでは、打球時のフェース部のたわみに追従して変形する弾性板の弾性を利用して飛距離の向上を図ろうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、フェース裏面のうち、打球時にたわみ量が概ね最大となるフェース面の中心点あるいはその近傍に弾性板が当接しているため、フェース部の変形(たわみ)が阻害される。
このようにフェース部の変形量(たわみ量)が低下すると、反発係数が低下するので飛距離も低下し、したがって、高初速エリアも狭くなることが懸念される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高初速エリアを拡大しつつ反発係数の低下を抑制する上で有利なゴルフクラブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、フェース部、クラウン部、ソール部、サイド部を含むヘッド本体を備え、それらフェース部とクラウン部とソール部とサイド部とで囲まれた内部が中空部であるゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部、前記クラウン部、前記ソール部、前記サイド部の何れかの箇所に取り付けられ、前記フェース部のフェース面と反対側に位置するフェース裏面に接触する接触部材を備え、前記ゴルフクラブヘッドの重心点を通る前記フェース面の法線が前記フェース面と交差する点をフェース面上重心点とし、前記フェース裏面に接触する接触部材の箇所を通る前記フェース面の法線が前記フェース面と交差する点をフェース面上接触点としたとき、前記フェース面上接触点は前記フェース面上重心点から変位した前記フェース面の箇所に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、フェース面上接触点を、フェース面上重心点から変位したフェース面の箇所に位置させることによって高初速エリアを拡大しつつ反発係数の低下を抑制する上で有利となる。
また、フェース裏面に接触部材が接触していることで、打球音の残響が短くなり、打感を柔らかくする上で有利となる。
さらに、フェース裏面に接触部材が接触していることで、CT値を調整すなわち、ばらつきを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドをフェース面の前方から見た正面図である。
【
図5】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第1の説明図である。
【
図6】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第2の説明図である。
【
図7】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第3の説明図である。
【
図8】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第4の説明図である。
【
図9】ゴルフクラブヘッドの重心点G0とフェース面上重心点FGとの関係を示すゴルフクラブヘッドの断面図である。
【
図10】フェース面の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図11】フェース面の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッドの断面図である。
【
図12】フェース面の中心点Pcの定義を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図13】(A)は
図1のY-Y線断面図であり、(B)は接触部材の本体と支持体とが異なる材料で構成された第1の実施の形態の第1の変形例を示す同断面図である。
【
図14】(A)は接触部材の斜視図、(B)は同平面図、(C)は同下面図、(D)はトウヒール方向の一方から見た同側面図、(E)は同正面図、(F)はトウヒール方向の他方から見た同側面図である。
【
図15】接触部材がヘッド本体部材の開口に組み付けられた状態を示す斜視図である。
【
図17】ヘッド本体部材の開口に接触部材およびフェース部材が溶接された状態を示す斜視図である。
【
図18】フェース面におけるフェース面上重心点とフェース面上接触点が位置する範囲の規定を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図19】フェース面におけるフェース面上重心点とフェース面上接触点との距離の規定を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図20】フェース面におけるフェース面上重心点とフェース面上接触点が位置しない範囲の規定を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図21】比較例のゴルフクラブヘッドにおけるトウヒール方向の位置と、その位置で打球した場合のボール初速との関係を模式的に示す線図である。
【
図22】本発明のゴルフクラブヘッドにおけるトウヒール方向の位置と、その位置で打球した場合のボール初速との関係を模式的に示す線図である。
【
図23】ゴルフクラブヘッドの第2の変形例を示し、(A)は接触部材が取り付けられたヘッド本体部材の正面図、(B)は(A)の断面図である。
【
図24】第2の実施の形態におけるゴルフクラブヘッドをフェース面の前方から見た正面図である。
【
図26】(A)は繊維強化樹脂材料から形成された接触部材の正面図、(B)は同側面図である。
【
図27】接触部材がヘッド本体に取り付けられた状態を示す断面斜視図であり、ヘッド本体のフェースバック寄りの部分を取り除いてフェースバック方向から見た状態を示す。
【
図28】(A)は第2の実施の形態の第1の変形例におけるゴルフクラブヘッドをフェース中心基準断面と平行な断面で破断した断面図、(B)は接触部材を構成する接触部材本体と雄ねじ部材の斜視図である。
【
図29】第2の実施の形態の第2の変形例におけるゴルフクラブヘッドをフェース中心基準断面と平行な断面で破断した断面図である。
【
図30】(A)は第2の実施の形態の第3の変形例に係るゴルフクラブヘッドのフェースバック寄りの部分を取り除いてフェースバック方向から見た状態を示す斜視図、(B)は同ゴルフクラブヘッドをフェース中心基準断面と平行な断面で破断した断面図である。
【
図31】条件1における実験例の評価結果を示す図である。
【
図32】条件2における実験例の評価結果を示す図である。
【
図33】条件3における実験例の評価結果を示す図である。
【
図34】条件4における実験例の評価結果を示す図である。
【
図35】条件5における実験例の評価結果を示す図である。
【
図36】条件6における実験例の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施の形態について説明する。
図1-
図4に示すように、本実施の形態において、ゴルフクラブヘッド10は、中空のウッド型ゴルフクラブヘッド(ドライバー)であり、ヘッド本体12と、接触部材32とを含んで構成されている。
ヘッド本体12は、主に金属材料により構成される。
前記金属材料としては、例えばステンレス鋼、マルエージング鋼、純チタン、チタン合金又はアルミニウム合金等の1種又は2種以上が用いられる。
ヘッド本体12は、フェース部14と、クラウン部16と、ソール部18と、サイド部20とを備えている。
図13に示すように、ヘッド本体12は、それらフェース部14とクラウン部16とソール部18とサイド部20とで囲まれた内部が中空部28とされた中空構造を呈している。
フェース部14は、上下の高さを有して左右に延在している。
クラウン部16は、フェース部14よりも小さい肉厚でフェース部14の上部から後方に延在している。
例えば、クラウン部16の肉厚は、0.4mm-1.2mmであり、フェース部14の肉厚は、2.0mm-4.5mmであり、ソール部18の肉厚は、0.6mm-1.5mmである。
図13(A)に示すように、フェース部14の外側に露出する表面がボールを打撃するフェース面14Aであり、フェース部14の中空部28に面した裏面がフェース裏面14Bとなっている。
クラウン部16の外側に露出する表面がクラウン面16Aであり、クラウン部16の中空部28に面した裏面がクラウン裏面16Bである。
図1に示すように、クラウン部16には、フェース面14A側でかつヒール24寄りの位置にシャフトSに接続するホーゼル30が設けられ、ホーゼル30にシャフトSが接続されることでゴルフクラブ100が構成される。
図13(A)に示すように、ソール部18は、フェース部14の下部から後方に延在している。
ソール部18の外側に露出する表面がソール面18Aであり、ソール部18の中空部28に面した裏面がソール裏面18Bである。
図1、
図2に示すように、サイド部20は、クラウン部16とソール部18の間でフェース部14のトウ22側縁とヒール24側縁との間をフェースバック26を通って延在している。
図2に示すように、サイド部20の外側に露出する表面がサイド面20Aであり、
図13(A)に示すように、サイド部20の中空部28に面した裏面がサイド裏面20Bである。
図中、符号19はリーディングエッジを示す。
【0009】
(フェース面14Aの中心点Pc)
次に、接触部材32について説明する前に、フェース面14Aの中心点Pcの規定方法について説明する。
フェース面14Aの中心点Pcは、フェース面14Aの幾何学的中心であり、中心点Pcの規定方法としては以下に例示する第1の規定方法、第2の規定方法を含め従来公知のさまざまな方法が採用可能である。
【0010】
[A]フェース面14Aの中心点Pcの第1の規定方法:
フェース面14Aと他のゴルフクラブヘッド10の部分との境目が明確である場合、言い換えると、フェース面14Aの周縁が稜線によって特定される場合における中心点Pcの規定方法である。この場合はフェース面14Aが明瞭に定義されることになる。
図5-
図8はフェース面14Aの中心点Pcの規定方法を示す説明図である。
【0011】
(1)まず、
図5に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平面HP上にゴルフクラブヘッド10を載置する。このときのゴルフクラブヘッド10の状態を基準状態とする。なお、ライ角およびフェース角の設定値は、例えば製品カタログに記載された値である。
【0012】
(2)次にクラウン部16及びソール部18を結ぶ方向における仮中心点c0を求める。
すなわち、
図5に示すように、トウ22およびヒール24を結ぶ水平面HPと平行な線(以下水平線という)の概略中心点と交差する垂線f0を引く。
この垂線f0とフェース面14Aの上縁とが交差するa0点と、垂線f0とフェース面14Aの下縁とが交差するb0点の中点を仮中心点c0とする。
【0013】
(3)次に
図6に示すように仮中心点c0を通る水平線g0を引く。
(4)次に
図7に示すように水平線g0とフェース面14Aのトウ22側の縁とが交差するd0点と、水平線g0とフェース面14Aのヒール24側の縁とが交差するe0点の中点を仮中心点c1とする。
【0014】
(5)次に
図8に示すように仮中心点c1を通る垂線f1を引き、この垂線f1とフェース面14Aの上縁とが交差するa1点と、垂線f1とフェース面14Aの下縁とが交差するb1点の中点を仮中心点c2とする。
ここで、仮中心点c1とc2とが合致したならばその点をフェース面14Aの中心点Pcとして規定する。
仮中心点c1とc2が合致しなければ、(2)乃至(5)の手順を繰り返す。
なお、フェース面14Aは曲面を呈しているため、水平線g0の中点、垂線f0、f1の中点を求める場合の水平線g0の長さ、垂線f0、f1の長さはフェース面14Aの曲面に沿った長さを用いるものとする。
そして、フェースセンターラインCLは、中心点Pcを通りかつトウヒール方向と直交する方向に延在する直線で定義される。
【0015】
[B]フェース面14Aの中心点Pcの第2の規定方法:
次に、フェース面14Aの周縁と他のゴルフクラブヘッド10の部分との間が曲面で接続されておりフェース面14Aが明瞭に定義できない場合の中心点Pcの定義を説明する。
【0016】
図9に示すように、ゴルフクラブヘッド10は中空であり、符号G0はゴルフクラブヘッド10の重心点を示し、符号Lpは重心点G0とフェース面上重心点FGとを結ぶ直線であり、言い換えると、直線Lpは重心点G0を通るフェース面14Aの垂線である。
すなわち、ゴルフクラブヘッド10の重心点G0をフェース面14Aに投影した点がフェース面上重心点FGであり、例えば、フェース面上重心点FGは、重心点G0を通るフェース面14Aの法線がフェース面14Aと交差する点である。
ここで、
図10に示すように、重心点G0とフェース面上重心点FGとを結ぶ直線Lpを含む多数の平面H1、H2、H3、…、Hnを考える。
【0017】
ゴルフクラブヘッド10を各平面H1、H2、H3、…、Hnに沿って破断したときの断面において、
図11に示されるように、ゴルフクラブヘッド10の外面の曲率半径r0を測定する。
曲率半径r0の測定に際して、フェース面14A上のフェースライン、パンチマーク等が無いものとして扱う。
曲率半径r0は、フェース面14Aの中心点Pcから外方向(
図11における上方向、下方向)に向かって連続的に測定される。
そして、測定において曲率半径r0が最初に所定の値以下となる部分をフェース面14Aの周縁を表わす輪郭線Iとして定義する。
所定の値は例えば200mmである。
多数の平面H1、H2、H3、…、Hnに基づいて決定された輪郭線Iによって囲まれた領域が、
図10、
図11に示すように、フェース面14Aとして定義される。
【0018】
次に、
図12に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平な地面上(水平面HP)にゴルフクラブヘッド10を載置する。
直線LTは、フェース面14Aのトウ側点PTを通過して鉛直方向に延在する。
直線LHは、フェース面14Aのヒール側点PHを通過して鉛直方向に延在する。
直線LCは、直線LTおよび直線LHと平行である。直線LCと直線LTとの距離は、直線LCと直線LHとの距離と等しい。
符号Puは、フェース面14Aの上側点を示し、符号Pdはフェース面14Aの下側点である。上側点Puおよび下側点Pdは、いずれも直線LCと輪郭線Iとの交点である。
中心点Pcは、上側点Puと下側点Pdとを結ぶ線分の中点で定義される。
【0019】
次に、ゴルフクラブヘッド10の各部の規定について詳細に説明する。
図1-
図4に示すように、ゴルフクラブヘッド10を水平面HPに対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態とする。なお、以下では、ゴルフクラブヘッド10の基準状態を単に「基準状態」という。
図1に示すように、基準状態において、フェース面14Aの中心点Pcを通る法線を含みかつ水平面HPと直交する平面Xでヘッド本体12を破断した断面をフェース中心基準断面Pfcとする。言い換えると、フェース中心基準断面Pfcは、基準状態において、フェースセンターラインCLを含みかつ水平面HPと直交する平面Xでヘッド本体12を破断した断面である。
また、フェース中心基準断面Pfcと平行な任意の平面でヘッド本体12を破断した断面をフェース基準断面Pfとする。したがって、フェース基準断面Pfはフェース中心基準断面Pfcを含む。
【0020】
(接触部材32)
次に接触部材32について説明する。
なお、第1の実施の形態では、接触部材32として第1接触部材32A、第2接触部材32B、第3接触部材32Cの3つの形態について個別に説明するが、それら各接触部材32A、32B、32Cを総称して接触部材32という場合がある。
図13(A)、
図14(A)-(F)に示すように、第1接触部材32Aは、中空部28内に設けられてフェース部14、クラウン部16、ソール部18、サイド部20の何れかの箇所に取り付けられ、フェース裏面14Bに接触している。
本実施の形態では、第1接触部材32Aは、接触部34と、弾性変形可能な2つの脚部36、38を有している。
第1接触部材32Aはチタンなどの金属材料で形成されているが、接触部材32は、金属材料、繊維強化樹脂材料、合成樹脂材料、エラストマーの何れかの材料で形成することができる。
なお、接触部34と脚部36、38とをそれぞれ別の材料で形成してもよいが、本実施の形態のように同一の材料で形成すると、簡単に確実に製作でき、コストダウンを図る上で有利となる。
接触部34は、接触部材32のうちフェース裏面14Bに接触する箇所である。
なお、本発明において、接触部材32がフェース裏面14Bに接触するとは、接触部材32からフェース裏面14Bに荷重が加わった状態で接触部材32がフェース裏面14Bに接触している場合と、接触部材32からフェース裏面14Bに荷重が加わっていない状態で接触部材32がフェース裏面14Bに接触している場合との双方を含んでいる。
第1の実施の形態では、接触部材32からフェース裏面14Bに荷重が加わった状態で接触部材32がフェース裏面14Bに接触している場合について説明する。
【0021】
図14(A)-(F)に示すように、本実施の形態では、接触部34は、正面から見てトウヒール方向に長辺を合致させたほぼ長方形の板状を呈しており、フェース裏面14Bに接触するほぼ長方形状の接触面3402を有している。
なお、本発明では接触部材32がフェース裏面14Bに接触する接触部34は、面ではなく後述するように点であってもよい。
接触部34の肉厚は各脚部36、38の肉厚よりも大きな寸法で形成されている。
図1、
図13(A)に示すように、フェース裏面14Bに接触する接触部材32の箇所を通るフェース面14Aの法線がフェース面14Aと交差する点をフェース面上接触点接触点Pαという。
本実施の形態では、フェース裏面14Bに接触する接触部材32の箇所を通るフェース面14Aの法線とは、
図13(A)に示すように、接触面3402の幾何学的な中心点である図心3402A(
図14(A)参照)を通るフェース面14Aの法線Lαである。
本発明は、フェース面上接触点Pαが、フェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置していることを特徴としており、これにより、後述するように反発係数(COR)の低下を抑制しつつ高初速エリアの拡大を図っている。
【0022】
各脚部36、38は、接触部34の互いに離れた箇所からそれぞれ離れる方向に延在しており、詳細には、接触部34を構成する一対の長辺からそれぞれ互いに離れる方向に延在している。
なお、各脚部36、38は、接触部34の同一の箇所からそれぞれ離れる方向に延在させてもよいが、本実施の形態のように、接触部34の互いに離れた箇所からそれぞれ離れる方向に延在させると、接触部34を安定した状態で支持でき、後述するように、フェース部14が変形した際、フェース裏面14Bに接触させつつフェース裏面14B上を変位させる上で有利となる。
各脚部36、38の先端は、フェース部14、クラウン部16、ソール部18、サイド部20の何れかの箇所または異なった箇所に取り付けられる。
本実施の形態では、
図13(A)に示すように、2つの脚部のうち一方の脚部36の先端はフェース部14のうちクラウン部16寄りの箇所に溶接により接合され、他方の脚部38の先端はフェース部14のうちソール部18寄りの箇所に溶接により接合されている。
また、本実施の形態では、接触部材32が2つの脚部36、38を介してヘッド本体12に取り付けられている場合について説明するが、脚部は1つであっても、あるいは、3つ以上であっても構わない。
なお、接触部材32のヘッド本体12への取り付け方法については後述する。
【0023】
図14(D)に示すように、各脚部36、38は、接触部34を構成する一対の長辺からそれぞれ互いに離れる方向に延在しており、言い換えると、接触部34の上部および下部にそれぞれ設けられた上脚部36および下脚部38で構成されている。
上脚部36は、接触部34の上部から上方(クラウン部16方向)へ向かうにつれてフェースバック26方向に傾斜する上傾斜部3602と、上傾斜部3602の上端からフェース部14に向かって屈曲された上屈曲部3604と、上屈曲部3604の前端から上方に屈曲された上係合部3606とを備えている。
下脚部38は、接触部34の下部から下方(ソール部18方向)へ向かうにつれてフェースバック26方向に傾斜する下傾斜部3802と、下傾斜部3802の下端からフェース部14に向かって屈曲された下屈曲部3804と、下屈曲部3804の前端から下方に屈曲された下係合部3806とを備えている。
したがって、接触部34から上脚部36および下脚部38は、フェース裏面14Bの法線に対して斜めに延在している。
【0024】
ここで、第1接触部材32Aのヘッド本体12への取り付け方法の一例について説明する。
図15、
図16に示すように、フェース部14は、ヘッド本体部材40とフェース部材42とを含んで構成されている。
フェース部14には、開口4002が形成されており、ヘッド本体部材40は、フェース部14から開口4002を除いた箇所である。
フェース部材42は、開口4002を閉塞する部材である。
したがって、フェース部14のフェース面14Aは、フェース部材42で構成される部分と、ヘッド本体部材40の開口4002の周囲の部分で構成される部分とを含んで構成される。
このようなヘッド本体部材40とフェース部材42を用意する。
図15に示すように、第1接触部材32Aは、接触面3402を開口4002内でヘッド本体部材40の前方に向けると共に、上係合部3606および下係合部3806を開口4002の上側のヘッド本体部材40の縁部および下側のヘッド本体部材40の縁部に係合させた状態で、上係合部3606および下係合部3806をヘッド本体部材40の各縁部に点溶接することで、第1接触部材32Aがヘッド本体部材40に組み付けられる。
次に、フェース部材42で開口4002を閉塞する。
図16に示すように、上係合部3606および下係合部3806に対応するフェース部材42の上下の縁部には、それぞれ上係合部3606および下係合部3806に円滑に位置決めさせて係合させるため、上係合部3606および下係合部3806と係合する上凹部4202および下凹部4204が形成されている。
図17に示すように、第1接触部材32Aがヘッド本体部材40に組み付けられた状態でフェース部材42によって開口4002を閉塞し、上係合部3606および下係合部3806と上凹部4202および下凹部4204とをそれぞれ嵌合させた状態とする。
このとき、フェース部材42側のフェース面14Aを構成する部分を約1mm程度、ヘッド本体部材40の開口4002の周囲のフェース面14Aを構成する部分に対して浮き上がる状態とし、フェース部材42のフェース面14Aを構成する部分から力をかけて、フェース部材42のフェース面14Aを構成する部分とヘッド本体部材40のフェース面14Aを構成する部分とを面一にした状態でスポット溶接を10点程度行う。
このことで、接触部34は、フェース裏面14Bに当たって応力が発生している状態になり、言い換えると、接触部34は荷重がかかってフェース裏面14Bに接触している状態となる。
この場合、フェース面14Aの法線方向における、上係合部3606および下係合部3806と接触面3402との相対的な位置関係が異なる複数の第1接触部材32Aを予め用意しておき、接触部34からフェース裏面14Bに加わる荷重が所望の値となるような第1接触部材32Aを選択することで、接触部34からフェース裏面14Bに加わる荷重を調整可能である。
また、各脚部36、38の肉厚や幅を変えることでも接触部34からフェース裏面14Bに加わる荷重を調整可能である。
そして、このときの荷重は、打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力である。
そして、フェース部材42の縁部と開口4002の縁部とを全周にわたって溶接(プラズマやレーザー溶接)し、フェース部材42をヘッド本体部材40に一体的に接合し、これによりフェース部14が形成される。
次いで、溶接によりフェース面14Aに生じたビードを研磨により除去することで凹凸の無いなめらかなフェース面14Aが形成され、ヘッド本体12が完成する。
【0025】
この結果、
図13(A)に示すように、第1接触部材32Aの上脚部36および下脚部38の先端(上係合部3606および下係合部3806)がフェース部14に取り付けられ、接触部34(接触面3402)がフェース裏面14Bに接触した状態で、接触部34が上脚部36および下脚部38によって支持される。
すなわち、上脚部36および下脚部38は、打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力、または、打球時のフェース面たわみ量を微少に低減する力で接触部34(接触面3402)をフェース裏面14Bに常時接触させ、かつ、フェース部14が変形する際に接触部34(接触面3402)がフェース裏面14Bに常時接触しつつフェース裏面14Bに対して変位できるように接触部34を支持している。
言い換えると、接触部34がフェース裏面14Bに沿って接触しつつ移動するように脚部36、38で支持されており、打球によりフェース部14が変形した際、接触部34の少なくとも一部は、フェース裏面14Bに接触しつつフェース裏面14Bに沿って移動し、フェース部14が当初の形状に復帰した際、接触部34もフェース裏面14Bに沿って接触しつつ移動して当初の位置に復帰する。
なお、本明細書において、「上脚部36および下脚部38は、打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力、または、打球時のフェース面たわみ量を微少に低減する力で接触部34をフェース裏面14Bに常時接触させ」の文言中の「打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力、または、打球時のフェース面たわみ量を微少に低減する力」とは、打球時、フェース裏面14Bに接触する接触部34が設けられていない場合と同様にフェース部14が接触部34による影響をほぼ受けることなく変形できる大きさの力、または、打球時のフェース面たわみ量を微少に低減する力である。
詳細には、打球時にフェース部14が変形するには、上脚部36と下脚部38とで付勢された接触部34を移動させる必要があるが、打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力とは、打球時にフェース部14が変形する力に比べて、上脚部36と下脚部38とで付勢された接触部34をフェース部14の変形に追従させて移動させる力が小さく、打球時、接触部34が設けられていない場合とほぼ同様にフェース部14が変形できる大きさの力、または、打球時のフェース面たわみ量を微少に低減する力である。
また、本明細書において常時接触とは、実質的に接触部34の少なくとも一部がフェース裏面14Bに常に接触している状態であり、瞬間的(約1~2/10000秒)に接触部34がフェース裏面14Bから離間する場合を含むものとする。
【0026】
ここで、
図21、
図22を参照して実施の形態のゴルフクラブヘッド10の高初速エリアについて説明する。
なお、高初速エリア(スイートエリア)とは、フェース面14Aのスイートスポットから外れた打点でゴルフボールを打撃しても、スイートスポットで打撃した場合とほぼ同等の飛距離(例えば、ボールの最大初速の98%程度)を得ることができる領域をいう。
そのため、初心者のように打点のばらつきが大きなユーザでは、高初速エリアを拡大することで平均的な飛距離を確保する上で有利となる。
【0027】
図21は、2つの比較例のゴルフクラブヘッドにおけるトウヒール方向の位置と、その位置で打球した場合のボール初速Vbとの関係を模式的に示す線図である。
なお、クラウンソール方向の打球位置は、例えば、
図1に示すフェースセンターラインCLと直交しフェース面14Aの中心点Pcを通る直線上である。
曲線V1は、フェース裏面14Bに接触する部材が無い一般的な比較例1のゴルフクラブヘッドで打球した場合のボール初速を示す。
曲線V2は、従来技術で説明したように、フェース裏面14Bに接触する弾性板を設けた比較例2のゴルフクラブヘッドで打球した場合のボール初速を示す。
比較例2では、弾性板は、フェース裏面14Bのトウヒール方向の中央でクラウンソール方向の大部分に接触しており、フェース面14Aの前方から見て弾性板の中心点とフェース面14Aの中心点Pcとがほぼ一致している。
ここで、フェース裏面14Bに接触する弾性板の箇所を通るフェース面14Aの法線がフェース面14Aと交差する点をフェース面上接触点接触点Pαとしたとき、一般的にフェース面上重心点FGはフェース面14Aの中心点Pcの近傍に位置していることから、比較例2では、フェース面上接触点接触点Pαはフェース面上重心点FGに近接し、または一致している。
図中、COR0.81とは、反発係数を示し、ここでは、COR0.81以上の初速が得られる範囲を、高初速エリアとする。
図21から明らかなように、比較例1の高初速エリアA1に対して、比較例2の高初速エリアA2が拡大される一方、比較例1の高初速エリアA1のピークに対して比較例2の高初速エリアA2のピークが低下し、反発係数が低下している。
これは、打球時にフェース部14のたわみ量が大きくなるフェース面上重心点FGに対応するフェース裏面14Bの箇所に弾性板が接触することに起因すると考えられる。
【0028】
図22は、本発明のゴルフクラブヘッド10におけるトウヒール方向の位置と、その位置で打球した場合のボール初速Vbとの関係を模式的に示す線図である。
曲線V1は、
図21と同様に、フェース裏面14Bに接触する部材が無い一般的な比較例1のゴルフクラブヘッドで打球した場合のボール初速を示す。
曲線V3は、本発明に係るゴルフクラブヘッド10で打球した場合のボール初速を示す。
本発明のゴルフクラブヘッド10では、フェース面上接触点Pαが、フェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置しており、本実施の形態では、フェース面上接触点Pαが、フェース面上重心点FGからトウ22側に変位した変位したフェース面14Aの箇所に位置している。
図22から明らかなように、比較例1の高初速エリアA1に対して、本実施の形態の高初速エリアA3が拡大され、比較例1の高初速エリアA1のピークに対して本実施の形態の高初速エリアA3のピークは低下している。
しかしながら、
図21と
図22を比較すると、比較例2の高初速エリアA2に対して本実施の形態の高初速エリアA3はわずかに狭くなっているものの、比較例2の高初速エリアA2のピークに対して本実施の形態の高初速エリアA3のピークの低下は抑制されたものとなっている。
これは、フェース面上接触点Pαが、打球時にフェース部14のたわみ量が大きくなるフェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置していることで、フェース部14のたわみ量の低下が抑制されることによるものと考えられる。
すなわち、本発明者らは、フェース面上接触点Pαが、フェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置することによって高初速エリアA3を拡大(確保)しつつ反発係数の低下を抑制することができるという知見を得た。
なお、
図22では、フェース面上接触点Pαが、フェース面上重心点FGからトウ22側に変位したフェース面14Aの箇所に位置している場合を例示したが、フェース面上接触点Pαはフェース面上重心点FGからヒール24側に変位してもよい。
本発明者らは、何れの場合であっても、高初速エリアA3を拡大(確保)しつつ反発係数の低下を抑制することができるという知見を得た。
なお、フェース面上接触点Pαはフェース面上重心点FGからクラウン側に変位してもよく、あるいは、フェース面上接触点Pαはフェース面上重心点FGからソール側に変位してもよい。
しかしながら、フェース部14は、トウヒール方向の長さに比較してクラウンソール方向の長さが概ね半分以下である。そのため、フェース部14(フェース面14A)のたわみ量は、長さが短いクラウンソール方向の長さが支配的である。
すなわち、フェース部14は、そのトウヒール方向の長さが長いので、トウヒール方向については打球時に大きくたわめるが、クラウンソール方向の長さが短いのでクラウンソール方向については大きくたわめない。
また、フェース部14は、トウヒール方向とクラウンソール方向で別々にたわむことができない。そのため、フェース部14のたわみ量は、大きくたわめないクラウンソール方向のたわみ量に支配される。
したがって、フェース面上接触点Pαをフェース面上重心点FGからクラウン側あるいはソール側に変位させた場合は、高初速エリアA3を拡大しつつ反発係数の低下を抑制することは難易度が高い。すなわち、フェース部14のたわみが低下しやすいので、反発係数の低下を抑制しにくいからである。
一方、フェース面上接触点Pαをフェース面上重心点FGからトウ側あるいはヒール側に変位させた場合は、フェース部14のトウヒール方向は元々たわみ量が大きいので、高初速エリアA3を拡大しつつ反発係数の低下を抑制することが容易である。すなわち、フェース部14のたわみが低下しにくいので、反発係数の低下を抑制しやすいからである。
ここで、フェース部14のたわみ量を便宜的にトウヒール方向とクラウンソール方向に分けた場合の大小関係を示す関係式は以下の通りである。
TH>THPα>CS>CSPα
TH :トウヒール方向のたわみ量(接触部材無し)
THPα:トウヒール方向のたわみ量(接触部材有り)
CS :クラウンソール方向のたわみ量(接触部材無し)
CSPα:クラウンソール方向のたわみ量(接触部材有り)
【0029】
以上説明したように、本実施の形態によれば、フェース面上接触点Pαを、フェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置させることによって高初速エリアA3を拡大しつつ反発係数の低下を抑制する上で有利となる。
また、フェース裏面14Bに接触部材32が接触していることで、打球音の残響が短くなり、打感を柔らかくする上で有利となる。
さらに、本実施の形態では、フェース裏面14Bに接触する接触部材32の箇所は、フェース裏面14Bに押し付けられることでフェース裏面14Bに荷重を加えているので、接触部材32からフェース裏面14Bに加わる荷重を組み付け時に調整することにより、CT値のばらつきを低下させる方向に調整することが可能となる。
上記効果は、本実施の形態のように接触部材32からフェース裏面14Bに荷重が加わった状態で接触部材32がフェース裏面14Bに接触している場合だけではなく、接触部材32からフェース裏面14Bに荷重が加わっていない状態で接触部材32がフェース裏面14Bに接触している場合についても奏される。
この場合には、打球時にフェース部14がたわむ際、接触部材32を変位させるための力(接触部材32の慣性力)が抵抗となり、フェース部14のたわみ量の低下が抑制されることによるものと考えられる。
この場合には、接触部材32をフェース裏面14Bに押し付ける荷重が発揮されないように、接触部材32を支持する脚部36、38の断面積を小さくしておけばよい。
その他、接触部材32をフェース裏面14Bに押し付ける荷重が発揮されないようにするためには、フェース裏面14Bに接触する接触部材32の部分(接触部34)の肉厚を厚くしてもよい。
例えば、フェース部14(チタン合金)の肉厚が3.0mmである場合、接触部材32(チタン合金)がフェース裏面14Bに接触する部分の肉厚を倍以上の肉厚6.0mmにするなどである。
また、接触部材32をフェース裏面14Bに押し付ける荷重が発揮されないようにするためには、接触部材32がフェース裏面14Bに接触する部分(接触部34の接触面3402)の接触面積を大きくしてもよい。
【0030】
(第1の実施の形態の第1の変形例)
図13(B)は、第1の実施の形態の第1の変形例であり、第2接触部材32Bを設けたゴルフクラブヘッド10を示す。
なお、以下の変形例の説明では、実施の形態と同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を簡略化し、異なる部分を重点的に説明する。
第1の変形例では、第2接触部材32Bにヘッド本体12および第2接触部材32Bと異なる材料で形成された中間部材44が取り付けられ、接触面3204が中間部材44に設けられている点が第1の実施の形態と異なっている。
第1の変形例によれば、第1の実施の形態と同様にフェース面上接触点Pαを、フェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置させることによって高初速エリアA3を拡大しつつ反発係数の低下を抑制する上で有利となるという効果が奏される他、次の効果が奏される。
例えば、中間部材44を振動が減衰しやすい材料(エラストマーや合成樹脂材料)で形成すると共に、接触部材32を耐久性の高い金属材料で構成することにより、打球時のフェース部14の振動を減衰させることができ、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに振動がCT値に与える影響を抑制する上で有利となり、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
【0031】
(第1の実施の形態の第2の変形例)
図23に示すように、第1の実施の形態の第2の変形例は、第3接触部材32Cの形状が第1の実施の形態と異なっている。
第3接触部材32Cは、チタンなどの金属材料で一体成型されている。
第3接触部材32Cは、接触部34と、上脚部36および下脚部38とを含んで構成されている。
第2の変形例では、接触部34、上脚部36、下脚部38は、トウヒール方向に沿った幅が均一の寸法で形成されている。
したがって、接触面3402は細長の矩形状を呈している。
前述した接触部材32と同様に、上脚部36および下脚部38は、フェース裏面14Bに対して斜めに延在しており、本実施の形態では、上脚部36および下脚部38は、接触部34からフェース裏面14Bに対して45度以下の傾斜を持って延在している。
上脚部36の上端は、フェース裏面14B寄りのクラウン裏面16Bの箇所に溶接されることで取り付けられ、下脚部38の下端は、フェース裏面14B寄りのソール裏面18Bの箇所に溶接されることで取り付けられている。
このような第2の変形例によれば、第1の実施の形態と同様にフェース面上接触点Pαを、フェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置させることによって高初速エリアA3を拡大しつつ反発係数の低下を抑制する上で有利となるという効果が奏される他、第3接触部材32Cの幅を均一にしたため、第3接触部材32Cおよびゴルフクラブヘッド10の軽量化を図る上で有利となる。
【0032】
(各パラメータ)
次に、フェース面上重心点FGおよびフェース面上接触点Fαが配置される位置、接触面3402の面積、接触部34の肉厚、接触部34の肉厚とフェース部14の肉厚との関係に関する規定について説明する。
【0033】
(フェース面上重心点FGおよびフェース面上接触点Fαが位置するフェース面14A上の範囲)
図18に示すように、フェース面上重心点FGは、フェースセンターラインCLからトウヒール方向にそれぞれ10mm以内の範囲に位置し、フェース面上接触点Pαは、フェースセンターラインCLからトウヒール方向にそれぞれ30mm以内の範囲に位置している。
このようにすると、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに振動がCT値に与える影響を抑制する上で有利となり、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
これは、上記範囲が、一般的なゴルファーが打球した際のフェース面14A上における打点の分布範囲をほぼ含んでいるためである。
また、接触部34が上記範囲外でフェース裏面14Bに接触すると、実際に使用されるフェース部14の部分の反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。さらに振動がCT値に与える影響を抑制し、CT値の調整を効率的に行なうという効果が低下する。
なお、フェース面上重心点FGは、上記規定に加え、フェースセンターラインCLと直交しフェース面14Aの中心点Pcを通る水平面に対してクラウン側に10mm以内、ソール側に10mm以内に範囲に位置していると、上記の効果を高める上でより有利となる。
また、フェース面上接触点Pαは、フェースセンターラインCLからトウヒール方向にそれぞれ20mm以内の範囲に位置していると、上記の効果を高める上でより有利となる。
また、
図18に示すように、クラウン側の輪郭線をソール側に5mm平行移動させた上側規定線(上側規定ライン)をIAとし、ソール側の輪郭線をクラウン側に5mm平行移動させた下側規定線(下側規定ライン)をIBとしたとき、フェース面上接触点Pαは、規定線IAとIBで区画された範囲内に位置していることが上記の効果を高める上でより好ましい。
【0034】
(フェース面上重心点FGとフェース面上接触点Pαとの距離)
図19に示すように、ゴルフクラブヘッド10を水平面HPに対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面上重心点FGとフェース面上接触点Pαとを結ぶ直線を水平面HPに投影したときの長さをトウヒール方向距離Lthとしたとき、トウヒール方向距離Lthは10mm以上であり、フェース面上重心点FGとフェース面上接触点Pαとを結ぶ直線をフェース中心基準断面Pfcに投影したときの長さをクラウンソール方向方向距離Lcsとしたとき、クラウンソール方向距離Lcsは5mm以上であり、フェース面上重心点FGとフェース面上接触点Pαとを結ぶ直線の距離Lgαは10mm以上30mm以下である。
このようにすると、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに振動がCT値に与える影響を抑制する上で有利となり、CT値の調整を効率的に行ない、CT値のばらつきを効率よく低減させる上で有利となる。
フェース面上重心点FGとフェース面上接触点Pαとを結ぶ直線の距離Lgαが上記規定範囲を上回ると、フェース面上重心点FGとフェース面上接触点Pαとが離間しすぎるため、高初速エリアを拡大する効果が低下する。
フェース面上重心点FGとフェース面上接触点Pαとを結ぶ直線の距離Lgαが上記規定範囲を下回ると、フェース面上重心点FGとフェース面上接触点Pαとが接近しすぎるため、反発係数の低下量を抑制する効果が低下する。
【0035】
(フェース面上接触点Pαのトウヒール方向の位置)
図20に示すように、ゴルフクラブヘッド10の基準状態において、フェース面上重心点FGを通る法線を含みかつ水平面HPと直交する平面でヘッド本体12を破断した断面を重心点断面Pfgとする。
なお、図中符号Phcは、水平面HPと平行しフェース面14Aの中心点Pcを通る水平面である。
重心点断面Pfgと平行し重心点断面Pfgからトウ方向に2mm離間した平面を第1平面P1とする。
重心点断面Pfgと平行し重心点断面Pfgからヒール方向に2mm離間した平面を第2平面P2とする。
フェース面上接触点Pαは、第1平面P1と第2平面P2とで区画された第1範囲W1から外れたフェース面14Aの箇所に位置している。
フェース中心基準断面Pfcと平行しフェース中心基準断面Pfcからトウ方向に2mm離間した平面を第3平面P3とする。
フェース中心基準断面Pfcと平行しフェース中心基準断面Pfcからヒール方向に2mm離間した平面を第4平面P4とする。
フェース面上接触点Pαは、第3平面P3と第4平面P4とで区画された第2範囲W2から外れたフェース面14Aの箇所に位置している。
第1範囲W1は第1平面P1、第2平面P2とフェース面14Aとが交差する交差線を含み、第2範囲W2は第3平面P3、第4平面P4とフェース面14Aとが交差する交差線を含むものとする。
このようにすると、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに振動がCT値に与える影響を抑制する上で有利となり、CT値の調整を効率的に行ない、CT値のばらつきを効率よく低減させる上で有利となる。
フェース面上接触点Pαが第1範囲W1に位置すると、フェース面上重心点FGとフェース面上接触点Pαとが接近しすぎるため、反発係数の低下量を抑制する効果が低下する。
フェース面上接触点Pαが第2範囲W2に位置すると、フェース面14Aの中心点Pcとフェース面上接触点Pαとが接近しすぎるため、反発係数の低下量を抑制する効果が低下する。
本実施の形態では、第1範囲W1を規定する第1平面P1、第2平面P2と重心点断面Pfgとの距離を2mmとし、第2範囲W2を規定する第3平面P3、第4平面P4とフェース中心基準断面Pfcとの距離を2mmとした場合について説明した。
しかしながら、第1範囲W1を規定する第1平面P1、第2平面P2と重心点断面Pfgとの距離を5mmとし、第2範囲W2を規定する第3平面P3、第4平面P4とフェース中心基準断面Pfcとの距離を5mmとすると、上述の効果を高める上でより好ましい。
【0036】
(接触面3402の面積S/接触部34の肉厚Δt2)
また、接触面3402の面積Sが3mm
2以上400mm
2以下であることが、高初速エリアを拡大しつつCT値の調整を効率的に行なう上で有利である。
接触面3402の面積Sが上記範囲を下回ると、高初速エリアを拡大する効果が低下し、接触部34からフェース裏面14Bに加わる荷重を加える効果が低下し、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果も低下する。
接触面3402の面積Sが上記範囲を上回ると、高初速エリアを確保できる一方、接触部34からフェース裏面14Bに加わる荷重が過剰となり、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果も低下する。
また、接触面3402がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は1mm以上7mm以下であることが、初速エリアを確保しつつCT値の調整を効率的に行なう上で有利である。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる効果がある。
上記肉厚Δt2が上記範囲を下回ると、初速エリアを確保する効果が低下し、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
上記肉厚Δt2が上記範囲を上回ると、初速エリアを確保することができる一方、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
なお、
図13(B)に示すように、中間部材44がフェース裏面14Bと接触部34との間に配置されている場合は、上記肉厚Δt2は、中間部材44を介してフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚と中間部材44の肉厚とを合計した値である。
【0037】
接触面3402が接触するフェース裏面14Bの部分に対応するフェース部14の肉厚を肉厚Δt1としたとき、以下の式(1)が満たされるようにすると、CT値の調整(CT値のばらつきの低減)を効率的に行なう上で有利となる。
0.5≦Δt1/Δt2≦2.0 (1)
比率Δt1/Δt2が上記範囲を下回ると、打球時のフェース部14の振動が抑制されにくくなるためCT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
比率Δt1/Δt2が上記範囲を上回ると、打球時のフェース部14の振動が抑制され過ぎるためCT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
【0038】
(中間部材44)
図13(B)に示すように、接触面3402が、ヘッド本体12および接触部34と異なる材料で形成された中間部材44を介してフェース裏面14Bに接触し、中間部材44が接触面3402に接合されていると、中間部材44によって打球時のフェース部14の振動を減衰させることができ、振動がCT値に与える影響を抑制する上で有利となり、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる効果を得る上で有利となる。
さらに、中間部材44が接触部34とソール裏面18Bとの間に介在することで接触部34とフェース裏面14Bとが直接接触することで摩耗することを抑制でき、ゴルフクラブヘッド10の耐久性の向上を図る上で有利となる。
【0039】
(エラストマー、肉厚、弾性率)
また、中間部材44がエラストマーで形成され、中間部材44の肉厚Δtpは、0.1mm以上2.0mm以下とすると、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる効果を得る上で有利となる。
中間部材44の肉厚Δtpが上記範囲を下回ると、打球時のフェース部14の振動が抑制されにくくなるためCT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
中間部材44の肉厚Δtpが上記範囲を上回ると、打球時のフェース部14の振動が抑制され過ぎるため、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
この場合、中間部材44の弾性率Eを、1GPa以上50GPa以下とすると、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる効果を得る上で有利となる。
中間部材44の弾性率Eが上記範囲を下回ると、打球時のフェース部14の振動が抑制されにくくなるためCT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
中間部材44の弾性率Eが上記範囲を上回ると、打球時のフェース部14の振動が抑制され過ぎるため、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
【0040】
また、本実施の形態では、接触部材32のヘッド本体12への取り付けが溶接によってなされる場合について説明したが、接触部材32のフェース部14、クラウン部16、ソール部18、サイド部20の何れかに対する取り付けは、溶接、接着、ろう付け、ねじ止めなど、従来公知の様々な方法によってなされていてもよい。
【0041】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、
図24、
図25に示すように、フェース裏面14Bに押し付けられた接触部材32の箇所からフェース裏面14Bに加わる荷重を調整する荷重調整部48を設けた点が第1の実施の形態と異なっている。
なお、以下の実施の形態において第1の実施の形態と同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について重点的に説明する。
【0042】
なお、第2の実施の形態では、接触部材32として第4接触部材32D、第5接触部材32E、第6接触部材32F、第7接触部材32Gの4つの形態について個別に説明するが、それら各接触部材32を総称して接触部材32という場合がある。
図24、
図25に示すように、第4接触部材32Dは、中空部28内に設けられてヘッド本体12に取り付けられ、接触部34がフェース裏面14Bに当接してフェース裏面14Bに荷重を加え、打球時におけるフェース部14のたわみ量(フェース部14のスプリング効果)を抑制することで、ゴルフクラブヘッド10のCT値を調整するものである。
接触部材32は、第1の実施の形態と同様に、金属材料、繊維強化樹脂材料、合成樹脂材料、エラストマーの何れかの材料で形成されている。
【0043】
図25、
図26(A)、(B)、
図27に示すように、第4接触部材32Dは、接触部34と、2つの脚部36、38とを含んで構成されている。
本実施の形態では、第4接触部材32Dは、カーボン繊維強化樹脂(CFRP)で形成され、接触部34と2つの脚部36、38は一体形成されている
接触部34は、フェース裏面14Bに当接する接触面3402を有している。
本実施の形態では、接触部34は扁平な円柱状を呈し、その軸心方向の一端が円形の接触面3402として形成されている。
接触面3402は、フェース裏面14Bに対応した平坦な平面あるいは緩やかな曲面で形成されている。
第2の実施の形態においても、フェース面上接触点Pαはフェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置しており、フェース面上接触点PαFαおよびフェース面上重心点FGに関する規定は、第1の実施の形態と同様に適用されるため、その説明は省略する。
各脚部36、38は、接触部34から互いに離れる方向に延在しそれぞれ弾性を有している。
図25に示すように、2つの脚部36、38うち一方の脚部36(以下上脚部36という)の先端は、クラウン部16の係止部46に取り付けられ、他方の脚部38(以下下脚部38という)の先端は荷重調整部48を介してソール部18に取り付けられている。
上脚部36および下脚部38は、フェース裏面14Bに対して斜めに延在しており、本実施の形態では、上脚部36および下脚部38は、接触部34からフェース裏面14Bに対して45度以下の傾斜を持って延在している。
【0044】
したがって、
図26(A)、(B)に示すように、第4接触部材32Dは、接触部34と、上脚部36、下脚部38とを含んで構成されている。
上脚部36は、脚部本体3610と、屈曲片3612と、一対の係止凸部3614とを含んで構成されている。
第4接触部材32Dがヘッド本体12に取り付けられた状態でフェース面14Aの前方から見て、脚部本体3610は、接触部34からクラウン部16に向かって延在し、接触部34から離間するほどトウヒール方向の幅が拡大する二股状を呈しその中央に逆三角形状の孔3616が形成されている。
屈曲片3612は、脚部本体3610の上端からフェースバック26方向に屈曲されている。
一対の係止凸部3614は、屈曲片3612の上端の幅方向両端からそれぞれフェースバック26方向に突設され、それらの先端がクラウン部16の係止部46の係止面4602に係止する被係止面3618となっている。
一対の係止凸部3614の被係止面3618はクラウン部16の係止部46の係止面4602に係止した状態で接着材により係止部46に移動不能に取り付けられている。
2つの係止凸部3614を設けることにより、それら係止凸部3614とクラウン部16の係止部46との接着面積が大きく確保され、これにより接着強度の向上が図られている。
【0045】
下脚部38は、トウヒール方向の幅がほぼ均一な帯板状を呈し、接触部材32の上脚部36と反対側の箇所から延在している。
下脚部38の下端には、
図25に示すように、後述する荷重調整部48の雄ねじ部材52の押圧面5206に押圧される平坦な被押圧面3810が形成されている。
【0046】
(荷重調整部48)
図25に示すように、荷重調整部48は、下脚部38の下端とソール部18との間に設けられ、接触部材32の箇所(接触面3402)からフェース裏面14Bに加わる荷重を調整するように構成されている。
荷重調整部48は、雌ねじ部50と、雄ねじ部材52とを含んで構成されている。
雌ねじ部50は、フェース部14寄りのソール部18の箇所に設けられている。
雌ねじ部50は、ソール裏面18Bからクラウン部16に向けて突設された円筒壁部5002と、円筒壁部5002の内周面に形成された雌ねじ5004とを備えている。
円筒壁部5002の上端は中空部28に開口し、円筒壁部5002の下端は、ソール面18Aに開口している。
本実施の形態では、前述したゴルフクラブヘッド10の基準状態において、雌ねじ5004の軸線は、水平面HPとほぼ直交している。
【0047】
雄ねじ部材52は、外周面に雄ねじ5202が形成された雄ねじ本体5204と、雄ねじ本体5204の先端に形成され雄ねじ5202の軸線と直交する平面で形成された押圧面5206と、雄ねじ本体5204の基端に形成され六角レンチなどの工具に係合し回転される回転操作用凹部5208とを備えている。
雄ねじ部材52は、雄ねじ5202が雌ねじ5004に螺合され、押圧面5206が接触部材32の下脚部38の被押圧面3810に当接して下脚部38を押圧している。
したがって、雄ねじ部材52は、下脚部38の先端に当接し下脚部38の下端を押圧する方向に移動可能に設けられた押圧部54を構成している。
このように荷重調整部48を雌ねじ部50と雄ねじ部材52とで構成すると、荷重調整部48の簡素化を図る上で有利となる。
【0048】
したがって、回転操作用凹部5208に係合した六角レンチなどの工具により雄ねじ部材52を正方向に回して雄ねじ部材52をクラウン部16側に移動させることにより弾性を有する上脚部36および下脚部38を介して接触部34に加わる荷重が増加し、接触面3402からソール裏面18Bに加わる荷重が増加する。
また、雄ねじ部材52を逆方向に回して雄ねじ部材52をソール部18側に移動させることにより上脚部36および下脚部38を介して接触部34に加わる荷重が減少し、接触面3402からソール裏面18Bに加わる荷重が減少する。
なお、雄ねじ部材52の押圧面5206と接触部材32の下脚部38の被押圧面3810との押圧が安定してなされるように以下のような構成とすることができる。
図25に二点鎖線で示すように、下脚部38の下部から雌ねじ部50の外周面にわたってそれらを収容する筒状部材56をソール部18に設け、筒状部材56の内周面によって下脚部38の移動を規制させることにより、下脚部38の雄ねじ部材52に対する位置ずれを抑制する。
この際、筒状部材56は、予め下脚部38に挿通させておき、下脚部38の被押圧面3810に雄ねじ部材52の押圧面5206を当接させたならば、筒状部材56を雌ねじ部50側に移動させたのち、筒状部材56の下端をソール裏面18Bに接着あるいは溶接などによって移動不能に取り付ければ良い。
なお、筒状部材56の高さ方向(軸線方向)の寸法は、少なくとも筒状部材56内部に、下脚部38の被押圧面3810と雄ねじ部材52の押圧面5206が収容される寸法であればよい。
【0049】
第2の実施の形態においても、フェース面上接触点Pαはフェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置しており、第1の実施の形態と同様に、高初速エリアA3を拡大しつつ反発係数の低下を抑制する上で有利となるという効果が奏される他、下記の効果が奏される。
第2の実施の形態では、上述のように荷重調整部48が下脚部38の先端とソール部18の箇所との間に設けられ、荷重調整部48が、フェース裏面14Bに接触する接触面3402からフェース裏面14Bに加わる荷重を調整するように構成されている。
【0050】
ここで、CT値の調整について説明する。
USGAやR&Aのルールで規定されたCT値の規制値は257μsである。
一般的にゴルフクラブヘッド10の量産工程では、フェース部14の肉厚の公差は±0.1mm程度であることから、CT値には±15μs程度のばらつきが発生する。
例えば、CT値の平均値が235μsならば、量産においてCT値は±15μs程度の公差が発生し、CT値は220μs~250μsの範囲となり、ルールで定められた規制値257μsを満たすものとなる。
この場合、ゴルフクラブの購入者は、CT値が250μsのゴルフクラブヘッド10を備えたゴルフクラブを購入できれば、飛距離が大きなゴルフクラブを入手できることとなる。一方、CT値220μsのゴルフクラブヘッド10を備えたゴルフクラブを購入してしまうと、飛距離が小さなゴルフクラブを入手することになり、購入者の間に不公平が生じてしまうことになる。
本発明のゴルフクラブヘッド10によれば、以下のようにして、上記の不公平を防止することができる。
【0051】
第2の実施の形態に係るゴルフクラブヘッド10によれば、予め、規制値257μsを満たすように、CT値の平均が例えば235μsとなるようにゴルフクラブヘッド10の設計を行ない、製造されたゴルフクラブヘッド10全数のCT値を測定する。
以下では、CT値235μsを目標値という。
前述したように、ゴルフクラブヘッド10の量産工程では、通常、CT値に±15μsの公差が発生している。
そして、CT値が目標値235μsを上回った個体については、荷重調整部48により接触部材32からフェース裏面14Bに加わる荷重を調整してCT値が目標値235μsとなるようにする。
一方、CT値が目標値235μsを下回った個体については、フェース面14Aを研磨(例えば約0.1mm)してフェース部14のたわみ量を増加させることで、CT値を235μs~250μsに調整する。
そして、CT値が目標値235μsを上回った個体については、荷重調整部48により接触部材32からフェース裏面14Bに加わる荷重を調整してCT値が目標値235μsとなるようにする。
このようにすることで、CT値が規制値257μsを満たす目標値235μsであるゴルフクラブヘッド10を確実に製造することができ、このようなゴルフクラブヘッド10を備えるゴルフクラブをユーザ(購入者)に提供することができる。
すなわち、上述したように、ゴルフクラブヘッド10のCT値の調整を効率的に行なうことで、CT値が規制値257μsを上回るようなルール違反のゴルフクラブヘッド10を無駄に製造することなく、製造コストの低減を図れると共に、CT値の規制値を満足しつつ、ユーザに提供するゴルフクラブヘッド10において反発性能の不公平が生じることを防止してユーザの満足度を向上する上で有利となる。
【0052】
(第2の実施の形態の第1の変形例)
次に、第2の実施の形態の第1の変形例について
図28(A)、(B)を参照して説明する。
第5接触部材32Eは、接触部材本体58と、雄ねじ部材60とを備えている。
接触部材本体58は、中央基部5802と、中央基部5802から互いに離れる方向に延在する上脚部5804と下脚部5806とを含んで構成されている。
接触部材本体58は、チタンなどの金属材料で形成され、中央基部5802と2つの脚部5804、5806は一体形成されている
上脚部5804の上端はクラウン部16に溶接によって取り付けられ、下脚部5806の下端は溶接によってソール部18に取り付けられている。
上脚部5804および下脚部5806は、フェース裏面14Bに対して斜めに延在しており、本実施の形態では、上脚部5804および下脚部5806は、中央基部5802からフェース裏面14Bに対して45度以下の傾斜を持って延在している。
中央基部5802は、フェース裏面14Bに対向して配置されている。
中央基部5802は、円盤状を呈しその中央に厚さ方向に軸心を有する、本実施の形態ではフェース部14に直交する軸心を有する雌ねじ5808が貫通形成されている。
雄ねじ部材60は、チタンなどの金属材料あるいは合成樹脂材料で形成され、雄ねじ部6002と、回転操作用凹部6004と、頭部6006と、接触面6008とを備えている。
雄ねじ部6002は、中央基部5802の雌ねじ5808に螺合されている。
回転操作用凹部6004は、雄ねじ部6002の先端に設けられドライバーなどの工具に係合し回転される箇所である。
頭部6006は、雄ねじ部6002の基部に雄ねじ部6002と同軸上に設けられ雄ねじ部6002よりも大径の円盤状を呈している。
接触面6008は、頭部6006の先端に設けられ、フェース裏面14Bに接触可能な平坦面で形成されている。
したがって、ドライバーによって回転操作用凹部6004を介して雄ねじ部6002を回転させることにより、頭部6006がフェース裏面14Bに接離する方向に移動し、頭部6006(接触面6008)からフェース裏面14Bに加わる荷重を調整することができるように図られている。
第1の変形例では、荷重調整部48Aは、雌ねじ5808と雄ねじ部材60を含んで構成されている。
なお、荷重調整部48Aを調整するため、フェースバック26にドライバーなどの工具を挿入するための孔を設けてもよく、あるいは、上脚部5804が取り付けられた箇所を除いたクラウン部16の一部をヘッド本体12の部分と別体で構成しておき、荷重調整部48による荷重調整を行なっておき、その後、クラウン部16の一部をヘッド本体12の部分に取り付けるようにしてもよい。
このような第1の変形例によれば、第1の実施の形態と同様にフェース面上接触点Pαを、フェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置させることによって高初速エリアA3を拡大しつつ反発係数の低下を抑制する上で有利となるという効果が奏される他、第2の実施の形態と同様の効果が奏される。
【0053】
(第2の実施の形態の第2の変形例)
次に第2の変形例について
図29を参照して説明する。
第2の変形例は、第2の実施の形態と第1の変形例とを組み合わせたものである。
すなわち、第2の変形例の第6接触部材32Fは、第2の実施の形態の接触部34に代えて、第1の変形例の中央基部5802と雄ねじ部材60とを用いたものである。
したがって、第2の変形例では、第2の実施の形態の荷重調整部48に加えて第1の変形例の荷重調整部48Aを備えている。
そのため、第2の変形例によれば、2つの荷重調整部48、48Aによって雄ねじ部材60の接触面6008からフェース裏面14Bに加わる荷重をよりきめ細かく調整する上で有利となる。
【0054】
(第2の実施の形態の第3の変形例)
次に第3の変形例について
図30を参照して説明する。
第3の変形例は、第7接触部材32Gが雄ねじ部材62で構成され、荷重調整部48Bが雄ねじ部材62と雌ねじ部64で構成されている点が第2の実施の形態、第1の変形例、第2の変形例と異なっている。
すなわち、雌ねじ部64は、フェース部14寄りのソール部18の箇所からフェース部14に向けて斜めに突設された円筒壁部6402と、この円筒壁部6402の内周面に形成された雌ねじ6404とで構成されている。
円筒壁部6402の上端は中空部28に開口し、円筒壁部6402の下端は、ソール面18Aに開口している。
雄ねじ部材62は、チタン、アルミなどの金属材料あるいは合成樹脂材料で形成され、雄ねじ6202と、接触部6204と、回転操作用凹部6206とを備えている。
雄ねじ6202は、雄ねじ部材62の先部を除く部分にわたって形成され、雌ねじ6402に螺合される。
回転操作用凹部6206は、雄ねじ部材62の基端に設けられドライバーなどの工具に係合し回転される箇所である。
接触部6204は、雄ねじ部材62の先部に円柱状に形成され、接触部6204の先端はフェース裏面14Bに接触する球面からなる接触面6208として形成されている。
したがって、ドライバーなどの工具により回転操作用凹部6206を介して雄ねじ部材62を回転させることにより、接触面6208がフェース裏面14Bに接離する方向に移動し、接触面6208からフェース裏面14Bに加わる荷重を調整できるように図られている。
第3の変形例では、第7接触部材32Fがフェース裏面14Bに接触する箇所は、球面からなる接触面6208の一点であり、第1の実施の形態と異なって接触部材32がフェース裏面14Bに面接触ではなく点接触している。
また、接触部材32はフェース裏面14Bに、フェース面14Aの法線に対して傾斜する方向に荷重を加えている。
このような第3の変形例によれば、第1の実施の形態と同様にフェース面上接触点Pαを、フェース面上重心点FGから変位したフェース面14Aの箇所に位置させることによって高初速エリアA3を拡大しつつ反発係数の低下を抑制する上で有利となるという効果が奏される他、第2の実施の形態と同様の効果が奏される。
また、第3の変形例では、第7接触部材32Gおよび荷重調整部48Bを構成する部品点数の削減を図る上で有利となる。
【0055】
以下、本発明の実験例について説明する。
図31-
図36は、本発明に係るゴルフクラブヘッド10の実験結果を示す図である。
試料となるゴルフクラブヘッド10を各実験例毎に作成し、以下の4つの評価項目を測定し指数(評価点)を求めると共に、4つの指数の合計点を求めた。
【0056】
(1)高初速エリア(スイートエリア)
フェース面14Aの中心点Pcを中心に、トウヒール方向およびクラウンソール方向に等間隔をおいた45箇所を打点Piとして設定した。
専用のスイングロボットを用いて45の打点Piでゴルフクラブをスイングし、計測器によってゴルフボールの初速を計測した。ヘッドスピードは40m/sとした。
45打点の初速のデータを補間し、ゴルフボールの最大初速の98%以上となるフェース面14Aの高初速エリアの面積を指数化した。なお、中心点Pcより上打点(クラウン部16側)でのデータと、下打点(ソール部18側)でのデータは、ゴルファーの実使用打点位置に合わせて、上打点(クラウン部16側)でのデータの重み付けを重くした。
高初速エリアのデータは、実験例1のゴルフクラブヘッド10の測定結果を100とした指数で示した。指数が大きいほど高初速エリアの評価が良いことを示す。
【0057】
(2)COR(反発係数)
CORは、実験例1のCOR(ピーク値)を100とした指数で示した。
CORの測定時におけるボールスピードは、160ft/secであり、CORの算出方法は、R&Aの測定方法に準じたものとした。
指数が大きいほどCORの低下が少なくCORの評価が良いことを示す。
【0058】
(3)打感
打感は、ゴルフクラブヘッド10でボールを打撃したときの打球音が支配的であり、一般的に、打球音の残響が短いと打感が柔らかく好ましいものとされ、ゴルファーの評価が高くなる。
打感の評価方法は以下の通りである。
専用のスイングロボットを用いて中心点Pcを打点としてゴルフクラブをヘッドスピード40m/sでスイングし、騒音計によってゴルフボールの打球音を計測し、打球音の振動波形データを所定のサンプリング周期でサンプリングして記録する。
次に、残響パラメータTを算出する。
残響パラメータTは、打球音の減衰の度合いを表すパラメータである。残響パラメータTの算出では、まず、記録された振動波形データを、時間軸上で一番最初のサンプルデータ(始点データ)を基準番号とし、この番号から所定のサンプル数、例えば、サンプル数100で音圧振動波形が順次区切られたブロック群αを作成する。
そして、ブロック群αのブロックAk毎に振動波形のレベルの二乗和を求め、各ブロック毎にこの二乗和の対数値(以降、ブロック値とする)を求める。
そして、ブロック群αの各ブロックから、ブロック値が最大となる最大音圧ブロックを、起点ブロックとして抽出する。そして、この最大音圧ブロックのブロック値から所定値(本実施形態では30dB)だけ低い値を終点ブロック値として設定し、起点ブロック以降の複数のブロックにおいて、ブロック値が最初に終点ブロック値以下となる終点ブロックを抽出する。
そして、これら起点ブロックと終点ブロックそれぞれの、時間軸上で最前のサンプルデータ間での時間幅を残響パラメータTとする。
したがって、残響パラメータTは打球音の残響時間に対応しており、残響パラメータTが短いほど残響が短く、打感が柔らかく、打感の評価が高いことになる。
この場合、打感のデータは、比較例に相当する実験例1のゴルフクラブヘッド10の残響パラメータTの逆数1/Tを100とする指数で示した。指数が大きいほど打感の評価が良いことを示す。
なお、上記残響パラメータTの算出方法は、例えば特許第4840106号に記載されている方法を用いることができるが、打球音の残響時間をどのような方法で評価するかは限定されるものではなく、従来公知の様々な方法によって打球音の残響時間を求め、打感を評価することが可能である。
また、残響パラメータや残響時間を算出して打感を評価する以外に、実際にゴルファーがゴルフクラブをスイングしてボールを打撃し、その際の打球音を聴いて打感を評価するようにしてもかまわない。
【0059】
(4)CT値
ゴルフクラブヘッド10のCT値をUSGAで定められたペンデュラム試験によって測定し、CT値の調整を行わない第1の状態でのCT値t1と、CT値の調整を最大限行った第2の状態でのCT値t2との差分Δt=t1-t2を測定し、比較例に相当する実験例1の差分Δtを100とする指数で評価した。
CT値の調整とは、第1の実施の形態のように接触部材32によるCT値の調整、および、第2の実施の形態のように荷重調整部48、48A、48BによるCT値の調整を含む。
CT値の指数が大きいほどCT値をより大きく低下させることができ、言い換えると、CT値をより大きく調整することができ、したがって、CT値の調整を効率的に調整できることになり、CTのばらつきを抑えることができ、評価が良いことを示す。
なお、フェース面14A上におけるCT値の測定位置は、フェース面上接触点Pαを基準点とし、基準点を含め、基準点の上下左右5mmピッチで測定(全9点)した。各測定位置で5回ずつCT値を測定し、合計45回のCT値の平均値を、第1の状態および第2の状態でそれぞれ算出し(t1、t2)、差分Δt=t1-t2の指数を求めた。
【0060】
(5)合計点
上述した高初速エリア、COR、打感、CT値の4つの指数を合計したものを合計点とした。
比較例(実験例1)に相当する実験例の合計点を400とし合計点が大きいほど評価が良いことを示す。
【0061】
以下実験例のゴルフクラブヘッド10について説明する。
実験例1は、比較例であり、本発明の請求項1の規定を満たさないものである。
実験例1は、特許文献1に対応するものであって、中空型のウッド型ゴルフクラブヘッド10(ドライバー)において、フェース裏面14Bに当接する弾性板を設けたものである。
実験例1の各部の仕様は以下の通りである。
ヘッド本体12の材料:チタン合金 Ti-8Al-1Mo-1V
フェース部14の材料:Ti-6Al-4V
ロフト角 10.5°
ライ角 59°
ヘッド体積 460cc
なお、実験例1においても、本発明と同様に、フェース面上重心点FGを規定すると共に、弾性板がフェース裏面14Bに接触する接触面の幾何学的中心を通るフェース面14Aの法線とフェース面14Aとの交点をフェース面上接触点Pαと規定する。
実験例1では、フェース面上重心点FGおよびフェース面上接触点Pαはフェース中心点Pcと合致している。
【0062】
実験例2-26で使用したゴルフクラブヘッド10は、本発明に対応するものであって、中空型のドライバーであり、各実験例で規定したパラメータを除き以下の仕様を共通としている。
ヘッド本体12の材料:チタン合金 Ti-8Al-1Mo-1V
フェース部14の材料:Ti-6Al-4V
ロフト角 10.5°
ライ角 59°
ヘッド体積 460cc
詳細に説明すると、実験例2-17は、請求項1、13の規定を満たすものであり、
図25に示すように第4接触部材32Dと荷重調整部48を設けたものである。
実験例18-22は、
図25に示す第4接触部材32Dと荷重調整部48に加えて、第4接触部材32Dとフェース裏面14Bとの間に中間部材44(
図13(B)に相当)を設けたものである。
実験例23は、実験例2-17と同様に、
図25に示すように第4接触部材32Dと荷重調整部48を設けたものである。
実験例24は、
図28に示すように第5接触部材32Eと荷重調整部48Aを設けたものである。
実験例25は、
図29に示すように第6接触部材32Fと荷重調整部48、48Aを設けたものである。
実験例26は、
図30に示すように第7接触部材32Gと荷重調整部48Bを設けたものである。
【0063】
(条件1)
各実験例2-6について、
図31に示すように、請求項2で規定する条件を変更した。
なお、請求項3、4、5、7、8で規定する条件は、以下に示す条件とした。
請求項3で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGの距離に関する規定は満たさないものとした。
請求項4、5で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGが除外される範囲に関する規定を満たすものとした。
請求項7で規定する接触面3402がフェース裏面14Bに接触する面積Sは35mm
2として、3mm
2≦S≦400mm
2の範囲内とした。
請求項7で規定する接触面3402がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は、2mmとして、1mm≦Δt2≦7mmの範囲内とした。
請求項8で規定する肉厚の比率は1.4とし、式(1)の0.5≦Δt1/Δt2≦2.0の範囲内とした。
なお、請求項6で規定する中間部材44は省略した。
図中記号×は、条件を満たさず、記号○は条件を満たすことを示す。
図中Tn(nは数値)は、フェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGのトウ側への変位量、Hnはヒール側への変位量、Unはソール側への変位量を示す(単位はmm)。
【0064】
実験例1は、比較例であり、請求項1の規定を満たさないものであり、各評価点を100とし、合計点が400である。
【0065】
実験例2-6は、請求項1の規定を満たす。
実験例2-5は、請求項2で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGが位置する範囲に関する規定を満たさないものとした。
実験例6は、請求項2で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGが位置する範囲に関する規定を満たすものとした。
【0066】
したがって、
図31に示すように、請求項1の規定を満たす実験例2-6は、高初速エリア、COR、打感、CT値、合計点が本発明の範囲外である実験例1を上回っている。
また、請求項2の規定を満たす実験例6は、請求項2の規定を満たさない実験例2-5に対して高初速エリア、COR、打感、CT値、合計点が優れている。
【0067】
(条件2)
各実験例7-9について、
図32に示すように、請求項3で規定する条件を変更した。
なお、請求項2、4、5、7、8で規定する条件は、以下に示す条件とした。
請求項2で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGが位置する範囲に関する規定を満たすものとした。
請求項4、5で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGが除外される範囲に関する規定を満たすものとした。
請求項7で規定する接触面3402がフェース裏面14Bに接触する面積Sは35mm
2として、3mm
2≦S≦400mm
2の範囲内とした。
請求項7で規定する接触面3402がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は、2mmとして、1mm≦Δt2≦7mmの範囲内とした。
請求項8で規定する肉厚の比率は1.4とし、式(1)の0.5≦Δt1/Δt2≦2.0の範囲内とした。
なお、請求項6で規定する中間部材44は省略した。
【0068】
したがって、
図32に示すように、請求項1、2、3の規定を満たす実験例9は、請求項1、2の規定は満たすが請求項3の規定を満たさない実験例7、8に対して高初速エリア、COR、打感、CT値、合計点が優れている。
【0069】
(条件3)
各実験例10-13について、
図33に示すように、請求項4、5で規定する条件を変更した。
なお、請求項2、3、7、8で規定する条件は、以下に示す条件とした。
請求項2で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGが位置する範囲に関する規定を満たすものとした。
請求項3で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGの距離に関する規定は、実験例10-12は満たさず、実験例13は満たすものとした。
請求項7で規定する接触面3402がフェース裏面14Bに接触する面積Sは35mm
2として、3mm
2≦S≦400mm
2の範囲内とした。
請求項7で規定する接触面3402がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は、2mmとして、1mm≦Δt2≦7mmの範囲内とした。
請求項8で規定する肉厚の比率は1.4とし、式(1)の0.5≦Δt1/Δt2≦2.0の範囲内とした。
なお、請求項6で規定する中間部材44は省略した。
【0070】
したがって、
図33に示すように、請求項1、2、3、4、5の規定を満たす実験例13は、請求項1、2の規定は満たすが、請求項3の規定を満たさず、かつ、請求項4および請求項5の一方または双方の規定を満たさない実験例10-12に対して高初速エリア、COR、打感、CT値、合計点が優れている。
【0071】
(条件4)
各実験例14-17について、
図34に示すように、請求項7、8で規定する条件を変更した。
なお、請求項2、3、4、5で規定する条件は、以下に示す条件とした。
請求項2で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGが位置する範囲に関する規定を満たすものとした。
請求項3で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGの距離に関する規定は満たすものとした。
請求項4、5で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGが除外される範囲に関する規定を満たすものとした。
なお、請求項6で規定する中間部材44は省略した。
【0072】
したがって、
図34に示すように、請求項1-5、7、8の規定を満たす実験例16、17は、請求項1-5の規定は満たすが請求項7、8の規定を満たさない実験例14、15に対して高初速エリア、COR、打感、CT値、合計点が優れている。
【0073】
(条件5)
実験例18-22は、エラストマーからなる板状の中間部材44を設けたものであり、請求項9の規定を満たしている。
各実験例18-22について、
図35に示すように、請求項10で規定する条件を変更した。
なお、請求項2-5、7、8で規定する条件は、以下に示す条件とした。
請求項2で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGが位置する範囲に関する規定を満たすものとした。
請求項3で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGの距離に関する規定は満たすものとした。
請求項7で規定する接触面3402がフェース裏面14Bに接触する面積Sは35mm
2として、3mm
2≦S≦400mm
2の範囲内とした。
請求項7で規定する接触面3402がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は、2mmとして、1mm≦Δt2≦7mmの範囲内とした。
請求項8で規定する肉厚の比率は1.4とし、式(1)の0.5≦Δt1/Δt2≦2.0の範囲内とした。
【0074】
したがって、
図35に示すように、請求項2-5、7-10の規定を満たす実験例22は、請求項2-5、7-9の規定は満たすが請求項10の規定を満たさない実験例18-21に対して高初速エリア、COR、打感、CT値、合計点が優れている。
【0075】
(条件6)
次に、各請求項で規定する条件をより好適なものとした好適実験例(実験例23-26)について
図36を参照して説明する。
実験例23は、実験例2-17と同様に、
図25に示すように第4接触部材32Dと荷重調整部48に対応している。
実験例24は
図28に示す第5接触部材32E、荷重調整部48Aに対応している。
実験例25は
図29に示す第6接触部材32F、荷重調整部48、48Aに対応している。
実験例26は
図30に示す第7接触部材32G、荷重調整部48Bに対応している。
なお、請求項2-5、7、8で規定する条件は、以下に示す条件とした。
請求項2で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGが位置する範囲に関する規定を満たすものとした。
請求項3で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGの距離に関する規定は満たすものとした。
請求項4、5で規定するフェース面上接触点Pαおよびフェース面上重心点FGが除外される範囲に関する規定を満たすものとした。
請求項7で規定する接触面3402がフェース裏面14Bに接触する面積Sは35mm
2として、3mm
2≦S≦400mm
2の範囲内とした。
請求項7で規定する接触面3402がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は、2mmとして、1mm≦Δt2≦7mmの範囲内とした。
請求項8で規定する肉厚の比率は1.4とし、式(1)の0.5≦Δt1/Δt2≦2.0の範囲内とした。
なお、請求項6で規定する中間部材44は省略した。
【0076】
図35に示すように、実験例23-26は、請求項2-5、7、8で規定する条件を全て満たすものであり、請求項2-5、7、8で規定する各数値を、上述した条件1-4に比較してより好適なものとした。
したがって、
図35に示すように、実験例23-26は、高初速エリア、COR、打感、CT値、合計点が本発明の範囲内である他の実施例2-22を上回っている。
【0077】
また、本発明は、中空部28を有するドライバー、中空部28を有するフェアウェイウッド、中空部28を有するユーテリティなどの様々な中空部28を有するゴルフクラブヘッド10に適用されることは無論のことである。
【符号の説明】
【0078】
10 ゴルフクラブヘッド
12 ヘッド本体
14 フェース部
14A フェース面
14B フェース裏面
16 クラウン部
16A クラウン面
16B クラウン裏面
18 ソール部
18A ソール面
18B ソール裏面
19 リーディングエッジ
20 サイド部
20A サイド面
20B サイド裏面
22 トウ
24 ヒール
26 フェースバック
28 中空部
30 ホーゼル
32 接触部材
32A 第1接触部材
32B 第2接触部材
32C 第3接触部材
32D 第4接触部材
32E 第5接触部材
32F 第6接触部材
32G 第7接触部材
34 接触部
3402 接触面
3402A 図心
36 上脚部(脚部)
3602 上傾斜部
3604 上屈曲部
3606 上係合部
3610 脚部本体
3612 屈曲片
3614 係止凸部
3616 孔
3618 被係止面
38 下脚部(脚部)
3802 下傾斜部
3804 下屈曲部
3806 下係合部
3810 被押圧面
40 ヘッド本体部材
4002 開口
42 フェース部材
4202 上凹部
4204 下凹部
44 中間部材
46 係止部
4602 係止面
48、48A、48B 荷重調整部
50 雌ねじ部
5002 円筒壁部
5004 雌ねじ
52 雄ねじ部材
5202 雄ねじ
5204 雄ねじ本体
5206 押圧面
5208 回転操作用凹部
54 押圧部
56 筒状部材
58 接触部材本体
5802 中央基部
5804 脚部
5806 脚部
5808 雌ねじ
5810 被押圧面
60 雄ねじ部材
6002 雄ねじ部
6004 回転操作用凹部
6006 接触面部
6008 接触面
62 雄ねじ部材
6202 雄ねじ
6204 接触部
6206 回転操作用凹部
6208 接触面
64 雌ねじ部
6402 円筒壁部
6404 雌ねじ
HP 水平面
I フェース面14Aの周縁を表わす輪郭線
CL フェースセンターライン
G0 ゴルフクラブヘッドの重心点
FG フェース面上重心点
Pc フェース面の中心点
Lp 重心点G0を通るフェース面14Aの法線(垂線)
Pfc フェース中心基準断面
Pf フェース基準断面
Pfg 重心点断面
Phc フェース面の中心点Pcを通る水平面
IA 上側規定線(上側規定ライン)
IA 下側規定線(下側規定ライン)
Lth トウヒール方向距離
Lcs クラウンソール方向距離
Lgα フェース面上重心点FGとフェース面上接触点Pαとを結ぶ直線の距離
W1 第1範囲
W2 第2範囲
P1 第1平面
P2 第2平面
P3 第3平面
P4 第4平面