(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121851
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】食器洗浄機用液体洗浄剤組成物およびそれを用いる食器類の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 7/60 20060101AFI20230824BHJP
C11D 7/06 20060101ALI20230824BHJP
C11D 7/12 20060101ALI20230824BHJP
C11D 7/14 20060101ALI20230824BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20230824BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20230824BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
C11D7/60
C11D7/06
C11D7/12
C11D7/14
C11D7/26
C11D7/32
C11D17/08
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109355
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2017007099の分割
【原出願日】2017-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】石川 直愛
(57)【要約】
【課題】低濃度で優れた洗浄性を有する食器洗浄機用液体洗浄剤組成物およびそれを用い
る食器類の洗浄方法を提供する。
【解決手段】下記の(A)~(E)成分を含有し、(A)成分のアルカリ剤がアルカリ金
属水酸化物、珪酸塩および炭酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つであり、上記(
A)成分の(D)成分に対する割合[(A)/(D)]が0.25~3の範囲にあって、
0.05質量%水溶液の25℃におけるpHが10.5以上であり、且つ、pH8.2を
終点とした時の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物のアルカリ度が水酸化カリウム換算で13
質量%以上である食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
(A)アルカリ剤:5~20質量%。
(B)キレート剤:15~40質量%。
(C)スケール防止剤:0.5~10質量%。
(D)アルカノールアミン:3~20質量%。
(E)水。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(E)成分を含有する食器洗浄機用液体洗浄剤組成物であって、上記(
A)成分のアルカリ剤がアルカリ金属水酸化物、珪酸塩および炭酸塩からなる群から選ば
れた少なくとも一つであり、上記(A)~(D)成分を食器洗浄機用液体洗浄剤組成物全
体に対し下記の割合で含有し、上記(A)成分の(D)成分に対する割合[(A)/(D
)]が0.25~3の範囲にあって、0.05質量%水溶液の25℃におけるpHが10
.5以上であり、且つ、pH8.2を終点とした時の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物のア
ルカリ度が水酸化カリウム換算で13質量%以上であることを特徴とする食器洗浄機用液
体洗浄剤組成物。
(A)アルカリ剤:5~20質量%。
(B)キレート剤:15~40質量%。
(C)スケール防止剤:0.5~10質量%。
(D)アルカノールアミン:3~20質量%。
(E)水。
【請求項2】
上記(D)成分のアルカノールアミンが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン
およびトリエタノールアミンからなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1に記
載の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
上記(C)成分のスケール防止剤が、有機リン系スケール防止剤、高分子電解質および
グリシン系スケール防止剤からなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1または
2記載の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を水で希釈して、
食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を0.03~0.15質量%含有する洗浄液を作製し、上
記洗浄液を食器洗浄機の洗浄工程で用いることを特徴とする食器類の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低濃度で優れた洗浄性を有し、節水型食器洗浄機で洗浄した場合でも、食器
類への汚れの再付着防止性やすすぎ性に優れ、食器類に洗浄剤の残留がなく、さらには、
低濃度で使用してもシリカスケールの発生の少ない、コンパクトで作業性の高い食器洗浄
機用液体洗浄剤組成物およびそれを用いる食器類の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食器洗浄機用液体洗浄剤組成物として、特許文献1に示すように、高濃度の水酸
化ナトリウムまたは水酸化カリウムと、ポリアクリル酸塩とが配合され、電導度が0.1
マイクロジーメンス以下の水で調製されたものが知られている。このものは、強アルカリ
を配合することで加水分解により油脂汚れを可溶化し、除去することに優れており、また
、ポリアクリル酸塩を配合するとともに、電導度の低い水で調製することにより、高い保
存安定性を実現したとされている。
【0003】
しかしながら、このものは、軟水機を設置していない食器洗浄機で使用した場合には、
キレート作用が不充分であるために、油脂汚れに対して、満足できる洗浄力を得ることが
できず、食器類への汚れの再付着が起こりやすいという問題がある。また、食器洗浄機へ
のスケールの付着という問題も有している。
【0004】
一方、種々の汚れに対する洗浄力を高め、また、食器洗浄機へのスケールの付着防止を
考慮した食器洗浄機用液体洗浄剤組成物も提案されている(特許文献2参照)。しかしな
がら、このものは、食器洗浄機内および配水管に発生するシリカスケールに起因する衛生
的課題やシリカスケールによるノズルの詰まりからなる洗浄不良という課題を解決するに
は不充分である。
【0005】
また、食器洗浄機用液体洗浄剤組成物として、特許文献3に示すものが提案されている
。このものは、低分子キレート剤、アクリル酸およびマレイン酸のコポリマー、アルカノ
ールアミン化合物の配合により、茶渋汚れによる着色を防止することができ、茶渋汚れや
他の汚れに対する洗浄性が高められるとされている。しかしながら、原液pHが8~11
であり、アルカリ剤がアルカノールアミンのみのため、食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を
低濃度の洗浄液として使用する場合、油汚れおよびタンパク質汚れに対する洗浄性が充分
得られないおそれがあるという問題を有している。
【0006】
さらに、近年、業務用の食器洗浄機において、従来の食器洗浄機よりもすすぎ水が半分
以下の節水型食器洗浄機が普及してきている。業務用の食器洗浄機の場合、一般に、洗浄
タンクの洗浄液を循環させて洗浄を行い、すすぎ水の全部若しくは一部を洗浄タンクに流
入させることにより、洗浄タンク内に溜まった汚れをオーバーフローさせて排出する仕組
みになっている。しかしながら、節水型食器洗浄機は、すすぎ水も節水されているため、
汚れがオーバーフローで排出されづらくなり、洗浄タンク内に汚れが蓄積される傾向がみ
られる。このため、汚れが残ったままの洗浄液を用いて洗浄することとなり、洗浄性の低
下、食器への汚れの再付着が問題となっている。また、すすぎ水量が少ないために、すす
ぎ不良によるアルカリ洗剤の食器への残留も問題となっており、従来の食器洗浄機用液体
洗浄剤組成物では、これらの課題を解決するには、不充分である。また、原油の価格上昇
に伴い、ガソリン代等の輸送コストが上昇しており、輸送コスト削減のために、コンパク
トな濃縮タイプの食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4-15299号公報
【特許文献2】特開2002-363596号公報
【特許文献3】特開2008-163079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低濃度で優れた洗浄性を有し、節水
型食器洗浄機で洗浄した場合でも、食器類への汚れの再付着が防止され、また、すすぎ性
に優れるため食器類に食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の残留がなく、さらには、低濃度で
使用しても、シリカスケールの発生の少ない、コンパクトで輸送コストに優れる食器洗浄
機用液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明はこの食器洗浄機用液
体洗浄剤組成物を用いた食器洗浄機による食器類の洗浄方法を提供することを目的とする
。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、下記の(A)~(E)成分を含有す
る食器洗浄機用液体洗浄剤組成物であって、上記(A)成分のアルカリ剤がアルカリ金属
水酸化物、珪酸塩および炭酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つであり、上記(A
)~(D)成分を食器洗浄機用液体洗浄剤組成物全体に対し下記の割合で含有し、上記(
A)成分の(D)成分に対する割合[(A)/(D)]が0.25~3の範囲にあって、
0.05質量%水溶液の25℃におけるpHが10.5以上であり、且つ、pH8.2を
終点とした時の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物のアルカリ度が水酸化カリウム換算で13
質量%以上である食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を第1の要旨とする。
(A)アルカリ剤:5~20質量%。
(B)キレート剤:15~40質量%。
(C)スケール防止剤:0.5~10質量%。
(D)アルカノールアミン:3~20質量%。
(E)水。
【0010】
また、本発明は、第1の要旨の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の(D)成分のアルカノ
ールアミンが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン
からなる群から選ばれた少なくとも一つであるものを第2の要旨とし、第1の要旨の食器
洗浄機用液体洗浄剤組成物の(C)成分のスケール防止剤が、有機リン系スケール防止剤
、高分子電解質およびグリシン系スケール防止剤からなる群から選ばれた少なくとも一つ
であるものを第3の要旨とする。さらに、本発明は、第1~3の要旨の食器洗浄機用液体
洗浄剤組成物を0.03~0.15質量%含有する洗浄液を作製し、上記洗浄液を食器洗
浄機の洗浄工程で用いる食器類の洗浄方法を第4の要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明者は、節水型食器洗浄機で洗浄した場合でも、優れた洗浄性を有する
食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を得るため、鋭意研究を重ねた。その結果、上記の(A)
~(E)成分を含有する食器洗浄機用液体洗浄剤組成物であって、上記(A)成分のアル
カリ剤がアルカリ金属水酸化物、珪酸塩および炭酸塩からなる群から選ばれた少なくとも
一つであり、上記(A)~(D)成分を食器洗浄機用液体洗浄剤組成物全体に対し下記の
割合で含有し、上記(A)成分の(D)成分に対する割合[(A)/(D)]が0.25
~3の範囲にあって、0.05質量%水溶液の25℃におけるpHが10.5以上であり
、且つ、pH8.2を終点とした時の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物のアルカリ度が水酸
化カリウム換算で13質量%以上であるようにすると、節水型食器洗浄機で洗浄した場合
でも、食器類への汚れの再付着が防止され、また、すすぎ性に優れるため食器類に食器洗
浄機用液体洗浄剤組成物の残留がなくなることを見い出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、(A)アルカリ金属水酸化
物、珪酸塩および炭酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つであるアルカリ剤、(B
)キレート剤、(C)スケール防止剤、(D)アルカノールアミン、(E)水を必須成分
として含有し、そのうち、(A)~(D)成分を食器洗浄機用液体洗浄剤組成物全体に対
し、それぞれ特定の割合で配合されるとともに、(A)成分と(D)成分の比(A/D)
が0.25~3の範囲に設定されている。(A)成分と(D)成分とを上記の割合で配合
することにより、低濃度におけるアルカリ緩衝性が最適になり、さらに、これらと特定の
割合で配合された(B)キレート剤と組み合わせることで、油に対する洗浄性が高められ
ている。また、(B)キレート剤と(C)スケール防止剤とが特定の割合で配合されてい
るため、シリカスケールの発生が効果的に抑制されている。しかも、本発明の食器洗浄機
用液体洗浄剤組成物は、0.05質量%水溶液の25℃におけるpHが10.5以上であ
り、且つ、pH8.2を終点とした時の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物のアルカリ度が水
酸化カリウム換算で13質量%以上であるように設定されているため、従来のものに比べ
、低濃度であっても油汚れおよびタンパク質汚れに対する洗浄性が充分得られ、コンパク
トで作業性、経済性に優れている。
【0013】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物のなかでも、(D)成分のアルカノールアミン
が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンからなる群
から選ばれた少なくとも一つである場合には、より洗浄性、貯蔵安定性に優れるようにな
る。
【0014】
また、(C)成分のスケール防止剤が、有機リン系スケール防止剤、高分子電解質およ
びグリシン系スケール防止剤からなる群から選ばれた少なくとも一つである場合には、よ
り汚れの再付着が効果的に防止されるため、洗浄性を高めることができ、炭酸カルシウム
スケール、シリカスケール等の発生に対する防止性を高めることができる。
【0015】
そして、本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を水で希釈して、食器洗浄機用液体洗
浄剤組成物を0.03~0.15質量%含有する洗浄液を作製し、上記洗浄液を食器洗浄
機の洗浄工程で用いる食器類の洗浄方法によると、節水タイプの食器洗浄機であっても、
洗浄効果とすすぎ性とのバランスに優れ、短時間で繰り返し洗浄を行うことができる。し
たがって、すすぎ水が少なくて済み、水道代の削減と、一般的なすすぎ水の温度である8
0℃まで加熱するためのエネルギーコストの削減を行うことができる。また、低濃度でも
充分な洗浄能を発揮するため、経済的にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態
に限定されるものではない。
【0017】
まず、本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物(以下「洗浄剤組成物」とする)は、(
A)アルカリ剤、(B)キレート剤、(C)スケール防止剤、(D)アルカノールアミン
および(E)水を含有し、洗浄剤組成物全体に対し、上記(A)~(D)成分を特定の割
合で含有するように設定されており、(A)成分の(D)成分に対する割合[(A)/(
D)]が0.25~3の範囲にあって、0.05質量%水溶液の25℃におけるpHが1
0.5以上であり、且つ、pH8.2を終点とした時の洗浄剤組成物のアルカリ度が水酸
化カリウム換算で13質量%以上であるように設定されているものである。
【0018】
上記洗浄剤組成物に用いられる(A)成分であるアルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物
、珪酸塩および炭酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つを用いるものであり、具体
的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩、珪酸ナ
トリウム、珪酸カリウム等の珪酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩があげら
れる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0019】
上記(A)成分であるアルカリ剤の配合量は、洗浄剤組成物全体に対し、5~20質量
%であり、より好ましくは7~15質量%である。(A)成分の配合量が少なすぎると、
所望の洗浄性能を発揮できなくなる可能性があり、逆に(A)成分の配合量が多すぎると
、食器洗浄機で使用した際のすすぎ性が悪化するとともに、洗浄剤組成物の各性能のバラ
ンスが悪くなり、とりわけ他成分との相乗効果による洗浄性能が飽和となり、貯蔵安定性
も低下する傾向がみられるためである。
【0020】
上記洗浄剤組成物に用いられる(B)成分であるキレート剤は、リン系および無リン系
のキレート剤のいずれも用いることができる。上記リン系のキレート剤としては、リン酸
アルカリ金属塩があげられ、上記リン酸としては、オルソリン酸、ポリリン酸、ピロリン
酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸等があげられる。そして、これらのリン酸と化合させ
るアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等があげられる。特に、上記リン酸アル
カリ金属塩のなかでもトリポリリン酸ナトリウムが好適である。上記無リン系のキレート
剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、ジエチレントリ
アミン五酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン酢酸、エチレンジアミンテトラプ
ロピオン酢酸、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢
酸、エチレングリコールジエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、シ
クロヘキサン-1,2-ジアミン四酢酸、ジエンコル酸、ジカルボキシメチルグルタル酸
、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS
)、L-グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク
酸(HIDS)、L-アスパラギン酸-N,N-ジ酢酸(ASDA)、ヘプトグルコン酸
(GH-NA)、タウリン-N,N-ジ酢酸、グルコン酸、クエン酸およびこれらのナト
リウム塩,カリウム塩等の水溶性アルカリ金属塩、エタノールアミン塩、アンモニウム塩
等があげられる。そして、上記無リン系のキレート剤のなかでも、エチレンジアミン四酢
酸、ニトリロ三酢酸、L-グルタミン酸ジ酢酸、メチルグリシンジ酢酸およびこれらのナ
トリウム塩,カリウム塩等の水溶性アルカリ金属塩、エタノールアミン塩、アンモニウム
塩が好ましく、特に、洗浄力およびコスト面からナトリウム塩が好ましく用いられる。こ
れらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記(B)成分であるキレート剤の配合量は、洗浄剤組成物全体に対し、15~40質
量%であり、好ましくは18~35質量%、より好ましくは、20~30質量%である。
(B)成分の配合量が少なすぎると、他成分とのバランスから油脂汚れの洗浄性能に乏し
くなるだけでなく、スケール発生の原因ともなり、逆に(B)成分の配合量が多すぎると
、貯蔵安定性が低下するだけでなく、コスト面でも不利になるためである。
【0022】
上記洗浄剤組成物に用いられる(C)成分のスケール防止剤は、有機リン系スケール防
止剤、高分子電解質およびグリシン系スケール防止剤が好ましく用いられる。これらは単
独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0023】
上記有機リン系スケール防止剤は、例えば、エタン-1,1-ジホスホン酸塩、エタン
-1,1,2-トリホスホン酸塩、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸塩お
よびその誘導体、エタンヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジ
カルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等のホスホン酸化合物
、またはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、もしくはエタ
ノールアミン塩、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2
,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸化合物
、アミノトリメチルホスホン酸、またはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、
アンモニウム塩、もしくはエタノールアミン塩があげられる。なかでも、アルカリ金属塩
が好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0024】
上記高分子電解質は、例えば、アクリル酸重合体およびその塩、マレイン酸重合体およ
びその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体およびその塩、ポリ-α-ヒドロキシアクリ
ル酸およびその塩、アクリル酸-マレイン酸系-ポリエチレングリコール共重合体および
その塩、オレフィン-マレイン酸共重合体およびその塩、アクリル酸-スルホン酸系共重
合体およびその塩があげられる。また、これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩
、アンモニウム塩、エタノールアミン塩があげられるが、なかでも、ナトリウム塩、カリ
ウム塩が好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0025】
上記高分子電解質は、市販品を用いてもよいが、例えば、ポリマレイン酸ナトリウムを
用いる場合、ポリマレイン酸に、事前に、水酸化ナトリウムを添加(中和反応)し、ポリ
マレイン酸ナトリウムを調製して用いることができる。同様に、上記中和反応において、
水酸化ナトリウムの代わりに、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを用いると、ポリ
マレイン酸ナトリウムとポリマレイン酸カリウムとが任意の比で含まれる混合物が得られ
るため、これを用いることができる。
【0026】
上記高分子電解質において、高分子電解質のマレイン酸重合体、アクリル酸重合体およ
びその塩の平均分子量は、600~15,000のものが好適に用いられ、特に好ましく
は1,000~15,000のものが用いられる。また、マレイン酸とアクリル酸の共重
合体およびその塩の平均分子量としては、1,000~100,000のものが好適に用
いられ、特に好ましくは3,000~80,000のものが用いられる。また、スルホン
酸とアクリル酸の共重合体およびその塩の平均分子量としては、1,000~100,0
00のものが好適に用いられ、特に好ましくは1,500~60,000のものが用いら
れる。上記重合体および共重合体の塩は、全てが中和された塩であっても、部分的に中和
された塩であってもよい。
【0027】
上記グリシン系スケール防止剤は、例えば、イミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシ
ンおよびその塩があげられる。また、これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、
アンモニウム塩、エタノールアミン塩があげられるが、なかでも、ジヒドロキシエチルグ
リシンのナトリウム塩が好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることが
できる。
【0028】
このような(C)成分のスケール防止剤として、具体的には、金属イオン封鎖能、スケ
ール防止性、再付着防止性および洗浄性能の点から、1-ヒドロキシエチリデン-1,1
-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸ナトリウム塩、フォス
フォノブタントリカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸ナトリ
ウム塩、ポリマレイン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アク
リル酸-マレイン酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体のナトリウム塩、ポリ-
α-ヒドロキシアクリル酸ナトリウム、アクリル酸-マレイン酸系-ポリエチレングリコ
ール共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体のナトリウム塩、アクリル酸-スルホン
酸系共重合体のナトリウム塩、ジヒドロキシエチルグリシンナトリウム塩が好ましく用い
られる。
【0029】
上記(C)成分であるスケール防止剤の配合量は、洗浄剤組成物全体に対し、0.5~
10質量%であり、1~7質量%であることがより好ましい。すなわち、(C)成分の配
合量が少なすぎると、スケール防止性、食器に残留するスポットの低減効果、汚れの分散
性等の性能が充分に得られない傾向がみられ、逆に(C)成分の配合量が多すぎると、洗
浄剤組成物の各性能のバランスが悪くなるおそれがあり、貯蔵安定性が低下するとともに
、他成分との相乗効果がそれ以上得られない傾向がみられるためである。
【0030】
上記洗浄剤組成物に用いられる(D)成分であるアルカノールアミンは、アルカン骨格
にヒドロキシ基とアミノ基を持つ化合物を用いることができる。このような化合物として
は、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ
プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパ
ノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-エチルジ
エタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-
メチルエタノールアミンがあげられる。なかでも、トリエタノールアミン、ジエタノール
アミン、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N-エチルジエタノール
アミン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミンが好ましく用いら
れる。さらに好ましくは、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノール
アミンである。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0031】
上記(D)成分であるアルカノールアミンの配合量は、洗浄剤組成物全体に対し、3~
20質量%であり、より好ましくは、5~15質量%である。(D)成分の配合量が少な
すぎると、タンパク質汚れの洗浄性能に劣る傾向がみられ、逆に(D)成分の配合量が多
すぎると、食器洗浄機で使用した際のすすぎ性が悪化するとともに、洗浄剤組成物の各性
能のバランスが悪くなり、他成分との相乗効果が得られにくくなるだけでなく、コスト面
でも不利になる傾向がみられるためである。
【0032】
上記(D)成分であるアルカノールアミンと、上記(A)成分である特定のアルカリ剤
とは、(A)/(D)の質量比が0.25~3の範囲になるよう配合されており、より好
ましくは0.35~2.5の範囲に配合されることである。すなわち、上記質量比が高す
ぎると、洗浄した食器類にアルカリ残留が発生する可能性が高くなり、また、汚れ流入に
よる洗浄液緩衝性の低下がみられるためである。一方、上記質量比が低すぎると、所望の
洗浄力を得るのに不充分であり、コスト面でも不利になる傾向がみられるためである。
【0033】
上記洗浄剤組成物に用いられる(E)成分である水としては、例えば、水道水、軟水、
イオン交換水、純水、精製水があげられ、好ましくは、軟水、イオン交換水、純水である
。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、上記「水」は、液
体洗浄剤組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と外から加
えられる水との総和であり、洗浄剤組成物全体が100質量%になるよう配合される。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物には、上記(A)~(E)成分とともに、任意成分を用いてもよ
く、このような任意成分としては、例えば、スケール防止剤中和剤、pH調整剤、染料、
香料、金属腐食抑制剤、殺菌剤、消臭剤、帯電防止剤等があげられる。
【0035】
上記スケール防止剤中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の
水酸化アルカリ金属塩、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸塩、炭酸ナトリウム、炭
酸カリウム等の炭酸塩があげられる。なかでも、貯蔵安定性とコスト面から水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩が好ましく用いられる。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物は、0.05質量%水溶液の25℃におけるpHが10.5以上
であり、さらに好ましくは、10.8以上である。すなわち、pHが高い程、より高い洗
浄力が期待でき、pHが低くなるとそれに伴い洗浄力も低下するとともに、食器洗浄機内
の衛生環境に悪影響を与える傾向がみられるためである。なお、本発明において、0.0
5質量%水溶液の25℃におけるpHは、JIS(Z-8802「pH測定方法」)に従
って測定される値である。
【0037】
そして、本発明の洗浄剤組成物は、pH8.2を終点とした時の洗浄剤組成物のアルカ
リ度が水酸化カリウム換算で13質量%以上であることが必要であり、好ましくは15質
量%以上である。すなわち、アルカリ度が高い程、食器洗浄機で使用した際の洗浄液のア
ルカリ緩衝性が高くなり、油汚れなどの酸性の汚れが混入した際も、タンパク汚れや油脂
汚れに対する高い洗浄力が維持できる。また、本発明の洗浄剤組成物を0.03~0.1
5質量%という低濃度に希釈し、洗浄液として使用する際にも高いアルカリ度を保つこと
ができ、所望の洗浄力を得ることができる。
【0038】
ここで、本発明におけるアルカリ度は、洗浄剤組成物に対しフェノールフタレイン指示
薬を使用して0.1mol/L塩酸規定液で中和滴定することにより測定され、フェノー
ルフタレイン指示薬のピンク色が消えた点を終点として、下記の一般式(1)にて算出さ
れる値である。
アルカリ度(KOHとして)=0.1×F×X×56.1/サンプルの質量(g)×10・・・(1)
X=0.1mol/L塩酸規定液の滴定量(mL)
F=0.1mol/L塩酸規定液のファクター
【0039】
したがって、本発明の洗浄剤組成物は、ガラス、陶磁器、金属、プラスチック等の硬質
表面を有する食器の洗浄用途に適している。本発明において「食器」とは、それ自身が所
定の形状を保つことのできる程度の硬さを有する物体であって、飲食物を供するために用
いることができるもの全般を意味し、例えば、繊維製品は含まないが、弾性のある樹脂表
面は含むという趣旨である。
【0040】
また、本発明の洗浄剤組成物は食器に限らず、各種製造工場,加工工場棟における器具
や容器、流通に用いられるプラスチックコンテナ等を洗浄するための自動洗浄用途として
も使用可能である。さらに、食品工場・食品加工工場等のタイル、床等の硬質表面の洗浄
、飲料を供するために用いられるガラス瓶等の容器洗浄、金属表面洗浄にも好ましく用い
ることができる。特に、ホテル、レストラン、学校、病院、飲食店、給食会社、会社の食
堂等における食器洗浄機に用いるのに好適である。すなわち、本発明における「食器類」
には、文言通りの「食器」の他、上記のような各種の食品製造・食品加工に関連する洗浄
対象物が含まれる。
【0041】
上記洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液の濃度は、食器類の食器洗浄機での洗浄には、
洗浄剤組成物を0.03~0.15質量%含有するものであることが好ましく、より好ま
しくは0.04~0.13質量%である。すなわち、洗浄剤組成物の含有量が少なすぎる
と、所望の効果が得られにくい傾向がみられ、逆に多すぎると、すすぎ性が低下するため
である。
【0042】
なお、「食器洗浄機」とは、自動で食器等を洗浄する機械であり、ドアタイプ、アンダ
ーカウンタータイプ、ラックコンベアタイプ、フライトコンベアタイプ等が存在する。本
発明の洗浄剤組成物においては、従来よりも半分のすすぎ水量で食器等をすすぐ節水型の
食器洗浄機に好適に使用できる。このような節水型の食器洗浄機のすすぎ水量は、例えば
ドアタイプの食器洗浄機の場合、すすぎ1回当たり、すすぎ水が1~3Lである。また、
ラックコンベアタイプの食器洗浄機の場合、1ラックのすすぎ1回当たり、すすぎ水が1
~3Lである。
【実施例0043】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明するが、本発明はこれらにより何ら限定さ
れない。
【0044】
〔実施例1~24、比較例1~13〕
後記の表1~表5に示す組成(各表の数値の単位は質量%である)の洗浄剤組成物を調
製し、洗浄性1(食器洗浄機による洗浄性)、洗浄性2(食器洗浄機における洗浄剤の洗
浄性能耐久性)、すすぎ性(食器洗浄機における食器へのアルカリ残留性)、洗浄後仕上
がり性、スケール防止性1(人工硬水を使用したスケール発生抑制)、スケール防止性2
(シリカスケールの分散性)、貯蔵安定性、pH、アルカリ度の9項目について評価した
。その結果を後記の表1~表5に併せて示す。なお、各項目の試験方法、評価方法は、下
記に示すとおりである。
【0045】
〔洗浄性1:食器洗浄機による洗浄性〕
・試験方法
調製された洗浄剤組成物をイオン交換水で下記の洗浄剤濃度になるよう希釈して、洗浄
液を作製した。この洗浄液を、業務用の食器洗浄機(SD104GS,日本洗浄機社)の
洗浄タンクにセットし、下記の運転条件で被洗浄物である磁器皿または茶碗を10枚一組
として洗浄し、その洗浄性能を下記の基準に従い評価した。なお、汚れとして、油脂(牛
脂)汚れ、およびタンパク質(卵黄)汚れの2種類を用意し、それぞれの汚れに対し洗浄
評価を行った。
*運転条件
洗浄剤濃度 :0.05質量%
洗浄温度 :60℃
すすぎ温度 :80℃
すすぎ水量 :2.2L
洗浄コース :標準洗浄サイクル(洗浄:50秒、すすぎ:10秒)
水道水の硬度:(CaCO3として)60mg/L
油脂汚れ :直径25cmの磁器皿に、精製牛脂を4g/枚になるように付着させたも
のを用いた。
タンパク質汚れ:直径25cmの磁器皿に鶏卵の卵黄を4g/枚になるように付着させ、
室温(約23±2℃)で1時間乾燥させ、洗浄直前に30分間40℃のお湯にて浸漬した
ものを用いた。
・評価基準
油脂汚れについては、オイルレッド液を洗浄後の磁器皿に塗布し、タンパク質汚れにつ
いては、そのまま目視にて以下のように汚れ除去具合を判定した。なお、オイルレッド液
にはアゾ色素が含まれており、油脂を赤く染める。
◎:非常によい(90%以上の汚れ除去)。
○:よい(70%以上で90%未満の汚れ除去)。
△:可(50%以上で70%未満の汚れ除去)。
×:悪い(50%未満の汚れ除去)。
【0046】
〔洗浄性2:食器洗浄機における洗浄剤の洗浄性能耐久性〕
・試験方法
洗浄方法は、洗浄性1の試験を10回繰り返した。その際、洗浄タンクの洗浄液は、す
すぎ水流入により洗浄剤濃度が薄まった分だけ洗浄剤を追加して、洗浄剤濃度を0.05
質量%に保つようにし、洗浄の度に取り換えることはしなかった。一方、被洗浄物である
磁器皿または茶碗は、洗浄を繰り返す度に取り換えるようにし、各洗浄の開始時には上記
汚れが付着しているものを用いるようにした。したがって、洗浄を繰り返すにつれて、食
器から剥離した汚れが洗浄タンク内に貯まり、洗浄液の汚れ蓄積量は大きいものとなって
いる。
・評価基準
10回目の洗浄終了後、洗浄性1と同様の評価基準で洗浄評価を行った。
【0047】
〔すすぎ性:食器洗浄機における食器へのアルカリ残留性〕
・試験方法
調製された洗浄剤組成物をイオン交換水で下記の洗浄剤濃度になるよう希釈して、洗浄
液を作製した。この洗浄液を、業務用の食器洗浄機(SD104GS,日本洗浄機社)の
洗浄タンクにセットし、下記の運転条件で、洗浄ラックに飲み口が下になるように配置さ
れた被洗浄物であるグラス(7オンスタンブラー,東洋佐々木ガラス社)10個を一組と
して洗浄し、そのすすぎ性能を下記の基準に従い評価した。
*運転条件
洗浄剤濃度 :0.15質量%
洗浄温度 :60℃
すすぎ温度 :80℃
すすぎ水量 :2.2L
洗浄コース :標準洗浄サイクル(洗浄:50秒、すすぎ:10秒)
水道水の硬度:(CaCO3として)60mg/L
・評価基準
洗浄、すすぎ後のグラスの底部に残留している水にフェノールフタレイン液を滴下し、
アルカリ剤の残留による着色反応を目視で観察し、以下のようにすすぎ性を判定した。
◎:非常によい(全く着色反応が見られない)。
○:よい(ほとんど着色反応が見られない)。
×:悪い(顕著に着色反応が見られる)。
【0048】
〔洗浄後仕上がり性〕
・試験方法
調製された洗浄剤組成物をイオン交換水で下記の洗浄剤濃度になるよう希釈して、洗浄
液を作製した。この洗浄液を、業務用の食器洗浄機(SD104GS,日本洗浄機社)の
洗浄タンクにセットし、下記の運転条件で、洗浄ラックに飲み口が下になるように配置さ
れた被洗浄物であるグラス(7オンスタンブラー,東洋佐々木ガラス社)10個を一組と
して洗浄し、その仕上がり性能を下記の基準に従い評価した。なお、汚れとして、牛乳汚
れを用意した。
*運転条件
洗浄剤濃度 :0.05質量%
洗浄温度 :60℃
すすぎ温度 :80℃
すすぎ水量 :2.2L
洗浄コース :標準洗浄サイクル(洗浄:50秒、すすぎ10秒)
使用水の硬度:(CaCO3として)60mg/L
牛乳汚れ :グラスに牛乳を注いだ後、5分間放置した。ついで、牛乳を捨てた後、水
ですすぐことなく30分間風乾した。
・評価基準
◎:非常によい(ウォータースポットが全くみられない)。
○:よい(ウォータースポットが1~2個みられる)。
△:可(ウォータースポットが3~5個みられる)。
×:悪い(ウォータースポットが6個以上みられる)。
【0049】
〔スケール防止性1:人工硬水を使用したスケール発生抑制〕
・試験方法
洗浄剤組成物を人工硬水(総硬度:150mg/L)を用いて0.05質量%に希釈し
て、試験液を作製した。この試験液を、容量100mLの比色管に50mLを注ぎ、イン
キュベーター(IS800,ヤマト科学社)により60℃で4時間保持した後、試験液お
よび比色管を目視で観察し、下記の基準に従いスケール発生抑制を評価した。なお、スケ
ールには、試験液に浮遊するものと、比色管底部および側部に付着するものとがあるが、
いずれも評価対象とした。
・評価基準
◎:非常によい(スケールの発生がなかった)。
○:よい(スケールの発生がほとんどなかった)。
△:可(スケールの発生があった)。
×:悪い(スケール付着が著しかった)。
【0050】
〔スケール防止性2:シリカスケールの分散性〕
・試験方法
試験管(直径23mm,高さ200mm,IWAKI GLASS社)にシリカスケー
ルとしてフュームドシリカ(平均粒径20μm,PQ Corporation)0.3
gを入れた後、フュームドシリカを含めて合計30gになるように塩化アンモニウム・ア
ンモニアpH緩衝液と人工硬水(総硬度:150mg/L)と洗浄剤組成物とを順に加え
て、洗浄剤組成物を100mg/L含む、分散性試験液を調製した。蓋をして密封した後
、試験管を振ってフュームドシリカを分散性試験液内に均一に分散させた。その後、試験
管を室温(約23±2℃)で1時間静置した。1時間後に分散性試験液5mLを最上部か
ら採取し、UV波長380nmでの1cmセル吸光度(Abs)を測定した。
*評価方法
試験管を振ってフュームドシリカを均一に分散させた直後の分散性試験液の吸光度(静
置前Abs)と、上記で測定した1時間静置後の分散性試験液の吸光度(静置後Abs)
とを、下記の一般式(2)に当てはめ、シリカスケールの分散性(%)を算出した。なお
、シリカスケール分散性(%)が良好であることは、シリカスケールの沈着・成長が抑制
されることを示している。
シリカスケールの分散性(%)=(静置後Abs)/(静置前Abs)×100・・・(2)
・評価基準
◎:非常によい(分散性が75%以上であった)。
○:よい(分散性が50%以上75%未満であった)。
△:可(分散性が25%以上50%未満であった)。
×:悪い(分散性が25%未満であった)。
【0051】
〔貯蔵安定性〕
・試験方法
調製された洗浄剤組成物を原液のまま100mLのガラス瓶に入れ、恒温槽(SLI-
4S,須中理化工業社)により40℃の雰囲気下に置き、その状態で1カ月保管した。ま
た、同様に、調製された洗浄剤組成物を原液のまま100mLのガラス瓶に入れ、インキ
ュベーター(MTH-2400,SANYO社)により-5℃~5℃にプログラムコント
ロールされた雰囲気下に置き、その状態で1カ月保管した。そして、これらの外観を目視
によりそれぞれ観察し、下記の評価基準に基づいて評価した。
・評価基準
◎:非常によい(1カ月後、濁り・分離・析出等の外観変化は全くなかった)。
○:よい(1カ月後、濁り・分離・析出等の外観変化がわずかにみられた)。
△:可(2週間後、濁り・分離もしくは析出等の外観変化がわずかにみられた)。
×:悪い(配合直後に、濁り・分離もしくは析出等の外観変化があった)。
【0052】
〔pH〕
・測定方法
pHメータ(pH METER F-12,堀場製作所社)を用いて、JIS Z-8
802:1984にしたがって、調製された洗浄剤組成物の濃度0.05質量%水溶液の
25℃におけるpH値を測定し、下記の評価基準に基づいて評価した。
・評価基準
◎:よい(pH値が10.5以上)
×:悪い(pH値が10.5未満)
【0053】
〔アルカリ度〕
・試験方法
洗浄剤組成物0.2gに純水を加えて100gとし、これにフェノールフタレイン指示
薬を3滴加え、0.1mol/L塩酸規定液にて中和滴定を行った。フェノールフタレイ
ン指示薬のピンク色が消えた点(pH8.2)を終点とし、下記の一般式(1)に基づき
洗浄剤組成物のアルカリ度を算出した。0.1mol/L塩酸規定液は評定済みの市販品
を用いた。
アルカリ度(KOHとして)=0.1×F×X×56.1/洗浄剤組成物の質量(g)×10・・・(1)
X=0.1mol/L塩酸規定液の滴定量(mL)
F=0.1mol/L塩酸規定液のファクター
【0054】
なお、後記の表1~表5において、用いた成分とその有効純分(%)の詳細は、下記の
とおりであり、表中の数値は、各成分を純分で示したものである。また、水は、イオン交
換水を用いている。
【0055】
〔(A)成分〕
水酸化アルカリ金属塩1:水酸化ナトリウム(純分48%)[液体苛性ソーダ48%,
旭硝子社]。
水酸化アルカリ金属塩2:水酸化カリウム(純分48%)[48%液体苛性カリ,旭硝
子社]
珪酸塩1:メタ珪酸ナトリウム5水塩(純分57%)[メタエース5,三宝化学工業社]
。
珪酸塩2:オルソ珪酸ナトリウム(純分65%)[オルソ65,東洋珪酸ソーダ社]。
炭酸塩1:炭酸ナトリウム(純分99%)[ライトソーダ灰,徳山曹達社]。
炭酸塩2:炭酸カリウム(純分99%)[炭酸カリウム粉末,旭硝子社]。
【0056】
〔(B)成分〕
キレート剤1:トリポリリン酸ナトリウム[純分58%(P2O5)],[トリポリリン
酸ソーダ,日本化学社]。
キレート剤2:エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム(純分87%)[トリロンBPo
wder,BASF社]。
キレート剤3:ニトリロ三酢酸3ナトリウム(純分92%)[トリロンA92R,BA
SF社]。
キレート剤4:グルタミン酸二酢酸4ナトリウム(純分80%)[ディゾルビンGL-
PD-S,アクゾノーベル社]。
キレート剤5:メチルグリシン二酢酸3ナトリウム(純分76%)[トリロンMSG,
BASF社]。
【0057】
〔(C)成分〕
スケール防止剤1:1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(純分60%)
[DEQUEST 2016,イタルマッチジャパン社]。
スケール防止剤2:フォスフォノブタントリカルボン酸(純分50%)[BAYHIB
IT AM,ランクセス社]。
スケール防止剤3:ポリアクリル酸[平均分子量=4,500(純分48%)],[A
cusol445,ローム・アンド・ハース社]。
スケール防止剤4:アクリル酸-マレイン酸共重合体(平均分子量=70,000)[
ソカランCP-5G,BASF社]。
スケール防止剤5:オレフィン-マレイン酸共重合体のナトリウム塩[平均分子量=1
2,000(純分25%)],[ソカランCP-9,BASF社]。
スケール防止剤6:アクリル酸-スルホン酸系共重合体のナトリウム塩[平均分子量=
5,000(純分47%)],[Acusol500,ローム・アンド・ハース社]。
スケール防止剤7:ジヒドロキシエチルグリシンナトリウム(純分50%)[キレスト
G-50,キレスト社]。
【0058】
〔(D)成分〕
アルカノールアミン1:トリエタノールアミン(純分99%)[トリエタノールアミン
S,日本触媒社]。
アルカノールアミン2:モノエタノールアミン(純分90%)[モノエタノールアミン
90%,日本触媒社]。
【0059】
〔スケール防止剤中和剤〕
水酸化ナトリウム(純分48%)[苛性ソーダ48%,旭硝子社]。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
このように、本発明の洗浄剤組成物は、低濃度に希釈して用いた場合であっても優れた
洗浄性を有することがわかる。そして、節水型食器洗浄機で洗浄を行っても、食器類へ汚
れが再付着しないだけでなく、すすぎ性にも優れ、シリカスケールの発生も効果的に抑制
されている。また、貯蔵安定性にも優れ、コンパクトで作業性、経済性に優れることがわ
かる。さらに、上記各表に示していないが、(D)成分として、ジエタノールアミンを用
いた場合も、モノエタノールアミンおよびトリエタノールアミンと同様の結果を示すこと
がわかった。