(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012186
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/40 20060101AFI20230118BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20230118BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230118BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
H04N1/40 075
B41J2/525
B41J2/01 201
B41J2/205
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115680
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】増田 心一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
2C262
5C077
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB58
2C056EB59
2C056EC79
2C056ED05
2C057AF21
2C057AL31
2C057AM28
2C057CA05
2C262AA02
2C262AB07
2C262BB03
2C262BB06
2C262BB27
2C262BB35
2C262BC01
2C262BC07
2C262BC10
2C262BC17
5C077NN09
5C077RR09
(57)【要約】
【課題】ターゲット濃度に画像濃度が合う多値化画像データを生成する画像処理装置を提供する。
【解決手段】印刷媒体に表現したい画像の濃度であるターゲット濃度の入力階調値に対する変化を示すターゲット濃度プロファイルを設定するターゲット濃度設定部と、単位面積当たりのドロップ数密度に対する画像濃度の変化を示す実測濃度プロファイルを取得する実測濃度取得部と、ターゲット濃度プロファイルと実測濃度プロファイルに基づいて生成され、入力階調値に対応するドット形成パターンを実現するディザマトリクスを記憶した記憶部3と、ディザマトリクスを参照して画像の階調を表現するハーフトーン処理を行うハートーン処理部2とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に表現したい画像の画像濃度であるターゲット濃度の入力階調値に対する変化を示すターゲット濃度プロファイルを設定するターゲット濃度設定部と、
単位面積当たりのドロップ数密度に対する前記画像濃度の変化を示す実測濃度プロファイルを取得する実測濃度取得部と、
前記ターゲット濃度プロファイルと前記実測濃度プロファイルに基づいて生成され、入力階調値に対応するドット形成パターンを実現するディザマトリクスを記憶した記憶部と、
前記ディザマトリクスを参照して前記画像の階調を表現するハーフトーン処理を行うハーフトーン処理部と
を備える画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷システムでは、入力される画像データの階調値(以降、入力階調値)に対して、印刷媒体において実現したい画像濃度(OD)を設定する。画像濃度は、単位面積当たりのドットの形成個数に依存し、入力階調値の増加に対してどのようにドットの形成個数を増加させるかをハーフトーン処理で用いるディザマトリクスによって決定している。
【0003】
例えば、出したい濃度(以降、ターゲット濃度)に応じて1ドロップドットと2ドロップドットを使い分ける多値記録の印刷システムは、ディザマトリクスを用いて実現されるドット形成パターンを、入力階調値に合わせた複数のパターンの中から選択して使用する。一般的な方法では、ターゲット濃度の範囲を線形に分割したドット形成パターンを選択するので、ターゲット濃度と異なる画像濃度になってしまう。
【0004】
そこで、1ドロップドットで形成するパタ-ン群と2ドロップドットで形成するパターン群の中からターゲット濃度に近い濃度を出せるパターンを非線形に選択する技術が例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、特に低い階調領域でターゲット濃度を実現できない。その理由は、ディザマトリクスの構成が固定であり、入力階調値の増加に対応して増加するドット数の変化量が固定されていることによる。その結果、ターゲット濃度に画像濃度が合わないという課題がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、ターゲット濃度に画像濃度が合う多値化画像データを生成する画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の実施形態に係る画像処理装置は、印刷媒体に表現したい画像の画像濃度であるターゲット濃度の入力階調値に対する変化を示すターゲット濃度プロファイルを設定するターゲット濃度設定部と、単位面積当たりのドロップ数密度に対する前記画像濃度の変化を示す実測濃度プロファイルを取得する実測濃度取得部と、前記ターゲット濃度プロファイルと前記実測濃度プロファイルに基づいて生成され、入力階調値に対応するドット形成パターンを実現するディザマトリクスを記憶した記憶部と、前記ディザマトリクスを参照して前記画像の階調を表現するハーフトーン処理を行うハーフトーン処理部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ターゲット濃度に画像濃度が合う多値化画像データを生成する画像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】ターゲット濃度プロファイルを模式的に示す図である。
【
図3】実測濃度プロファイルを模式的に示す図である。
【
図4】ターゲットドロップ数密度プロファイルとマトリクス内数値の累積度数分布を模式的に示す図である。
【
図5】ディザマトリクスの原理を説明するための図である。
【
図6】入力階調値とドット形成パターンの関係の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態の入力階調値とドット形成パターンの関係例を示す図である。
【
図8】
図1に示す画像処理装置が実行するディザマトリクスの生成手順を示すフローチャートである。
【
図9】2つのマトリクス内数値の累積度数分布を重み付け平均する処理を模式的に示す図である。
【
図10】入力階調値とターゲット濃度の特性例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示す画像処理装置10は、大ドット(2ドロップ)、小ドット(1ドロップ)、及びドロップなし(0ドロップ)の3値記録を使い分ける多値化画像データを生成する。
【0013】
画像処理装置10は、画像データ入力部1、ハーフトーン処理部2、記憶部3、及び制御部4を備える。ハーフトーン処理部2、記憶部3、及び制御部4は、例えばROM、RAM、CPU等からなるコンピュータで実現することができる。その場合、その処理内容はプログラムによって記述される。なお、制御部4は、各機能構成部の動作を連携させ、全体を画像処理装置1として作用するように制御する。
【0014】
画像データ入力部1は、例えばスキャナーとタッチパネル等のスイッチで構成され、画像データ及び使用する印刷媒体の種類等の情報が入力される。また、後述するターゲット濃度プロファイルと実測濃度プロファイルを、画像データ入力部1から入力するようにしてもよい。
【0015】
記憶部2は、ターゲット濃度プロファイルと実測濃度プロファイルに基づいて、画像データの階調を表現するハーフトーン処理を行う入力階調値に対応するドット形成パターンを実現するディザマトリクスを記憶する。ここで、画像データの階調数は、一般的には例えば256である。
【0016】
なお、以降の説明は、都合により階調数を6の例で説明する。
【0017】
また、ディザマトリクスは、この例の場合は6×6のマトリクス(一般的には0~255の数値を64個ずつ含んだ128×128画素の大きなものであるが、ここでは簡略化する)であり、出したい濃度(ターゲット濃度)を表現するためにドットの形成/非形成を決めるマスクの役割を持つ。
【0018】
ターゲット濃度プロファイルは、入力階調値とターゲット濃度の関係を表すデータの集まりである。また、実測濃度プロファイルは、ドロップ数密度と実測画像濃度の関係を表すデータの集まりである。
【0019】
ターゲット濃度プロファイルと実測濃度プロファイルは、上記のように画像データ入力部1から入力してもよいし、予め記憶部に記憶してもよい。また、画像データ入力部1から入力されるそれらのデータを制御部4の作用で記憶部3に記憶するようにしてもよい。つまり制御部4に、ターゲット濃度設定部5(図示せず)と実測濃度取得部6(図示せず)を備えるようにしてもよい。
【0020】
ターゲット濃度設定部5は、画像データの印刷媒体への入力階調値に対する画像濃度の変化を示すターゲット濃度プロファイルを設定する。
【0021】
実測濃度取得部6は、単位面積当たりのドロップ数密度に対する印刷媒体の画像濃度の変化を示す実測濃度プロファイルを取得する。
【0022】
ハーフトーン処理部3は、ディザマトリクスを参照してハーフトーン処理を行う。
【0023】
(ターゲット濃度プロファイル)
図2は、ターゲット濃度プロファイルを模式的に示す図である。
図2の横軸は入力階調値、縦軸はターゲット濃度(濃度と表記)である。ターゲット濃度は、印刷媒体に表現したい画像データの濃度である。
【0024】
入力階調値は、入力される元画像の濃さを表す値である。画像の濃さは0~255の数値で表現するのが一般的であるが、ここでは簡単の為に6階調の例で説明する。この例の場合、画像の構成単位は6×6ドット(36画素)のマトリクスであり、大ドット(2ドロップ)、小ドット(1ドロップ)、及びドロップなし(0ドロップ)の3値記録を行う。
【0025】
ターゲット濃度プロファイルは、入力階調値に対する出したい濃度(ターゲット濃度)の設定データの集まりである。
【0026】
(実測濃度プロファイル)
図3は、実測濃度プロファイルを模式的に示す図である。
図3の横軸はドロップ数密度(drop数密度と表記)、縦軸はターゲット濃度(濃度と表記)である。
【0027】
ドロップ数密度は、印刷媒体上の単位面積当たりのドロップ数の密度である。濃度は、その印刷媒体上の画像濃度である。
【0028】
実測濃度プロファイルは、印刷媒体の種類及びインクの種類ごとに実測したドロップ数密度と濃度のデータの集まりである。
【0029】
1ドロップドットと2ドロップドットを使い分ける本実施形態では、
図3に示すようにドロップ数が切り替わるドロップ数密度Pが存在する。この例では、ドロップ数密度Pを境に1ドロップドットで形成する濃度領域と、2ドロップドットで形成する濃度領域とに二分される。
【0030】
36画素の各画素に1ドロップドットを徐々に形成していき、36画素が全て1ドロップドット形成(1ドロップベタ)となってから、既に1ドロップドットが形成された画素を2ドロップドットで置き換え、2ドロップドットを徐々に形成し、最終的に36画素が全て2ドロップドット形成(2ドロップドットベタ)となることを考える。この場合、2ドロップ×36画素=72がドロップ数密度100%となる。
【0031】
1ドロップのドロップ数密度は、例えば、1:6/72(8.3%)、2:12/72(16.7%)、3:18/72(25.0%)、4:24/72(33.3%)、5:30/72(41.7%)、及び6:36/72(50.0%)の6段階であり、2ドロップのドロップ数密度は、7:42/72(58.3%)、8:48/72(66.7%)、9:54/72(75.0%)、10:60/72(83.3%)、11:66/72(91.7%)、及び12:72/72(100%)の6段階であり、合計12段階である。
【0032】
このドロップ数密度から明らかなように、ある面積内の画素をすべて1ドロップドットで埋めてから、その上に2ドロップドットが形成される。つまり、1ドロップドットでベタ状態にした後に2ドロップドットに切り替わる。
【0033】
(ターゲットドロップ数密度プロファイル)
ターゲット濃度プロファイル(
図2)と実測濃度プロファイル(
図3)を対応させて、ターゲット濃度を実現するために入力階調値に対してドロップ数密度がどの程度であるべきかを表すターゲットドロップ数密度プロファイルを求める。ターゲットドロップ数密度プロファイルは、制御部4が、記憶部2に記憶されているターゲット濃度プロファイルと実測濃度プロファイルを参照して生成する。
【0034】
図4(a)は、ターゲットドロップ数密度プロファイルを模式的に示す図である。
図4(a)の横軸は入力階調値、縦軸はドロップ数密度である。
【0035】
制御部4は、まず、ドロップ数が切り替わるドロップ数密度P(
図3)に対応するドット切替閾値Thを求める。
【0036】
次に制御部4は、ドット切替閾値Thから入力階調値の上下方向に、入力階調値→ターゲット濃度→ドロップ数密度のそれぞれの関係(
図2と3)から、入力階調値に対するドロップ数密度の特性を生成する(
図4(a))。ターゲットドロップ数密度プロファイル(
図4)は、入力階調値とドロップ数密度のデータの集まりである。
【0037】
図4(a)に示すように、入力階調値に対するドロップ数密度の関係は、その変化具合が始めはなだらかで徐々に急峻になる特性を示す。このような特性にしなければ所望のターゲット濃度は得られない。
【0038】
図4(a)に示すような特性を実現するためには、ディザマトリクス内の数値の分布を変える必要がある。
図4(b)と
図4(c)について説明する前に、ディザマトリクスについて説明する。
【0039】
(ディザマトリクス)
図5は、ディザマトリクスの原理を説明するための図である。
図5の左側から、入力階調値、ディザマトリクス、及びドット形成画像のそれぞれを模式的に表す。
【0040】
ディザマトリクスは、例えば1~6の数値を含んだ6×6のマトリクスである。以降この数値は、マトリクス内数値と称する。実際のディザマトリクスは、例えば0~255の数値を64個ずつ含む128×128の大きなマトリクスである。ここでは都合により簡略化する。
【0041】
入力階調値は、上記の入力階調値であり、6×6のドット形成画像(画像の構成単位)に対応する。
図5に示す例はマトリクスに対応する全ての入力階調値が2の場合である。
【0042】
図5では、概念を説明するため、単一種類のドット(例えば1ドロップドット)のみを使用することを前提とした場合のドット形成の例を示しており、入力階調値が2以下のマトリクス内数値1と2の12個の要素にインクが吐出され、1ドロップドットが形成される。
【0043】
図6は、
図5のディザマトリクスを使用した場合において、1ドロップドットだけでなく2ドロップドットも形成する場合における、実現可能なドット形成パターンを全て示したものである。パターン(1)~(6)は、1ドロップドットのみを形成するパターンである。パターン(7)~(12)は、1ドロップドットに加え2ドロップドットも形成するパターンである。
【0044】
図6に示すように、パターン(3)で18個の要素にインクが吐出される。パターン(6)で全ての要素に1ドロップドットが形成されてベタ状態になる。その後、パターン(7)では、再びマトリクス内数値1の要素から2ドロップドットの形成が開始される。そして、パターン(12)で2ドロップドットのベタ状態となる。このように、例えば6の整数倍でインクの吐出量が増加する。
【0045】
(1)~(12)の各パターンのドロップ数密度は72を100%とすると、(1):6/72(8.3%)、(2):12/72(16.7%)、(3):18/72(25.0%)、(4):24/72(33.3%)、(5):30/72(41.7%)、(6):36/72(50.0%)、(7):42/72(58.3%)、(8):48/72(66.7%)、(9):54/72(75.0%)、(10):60/72(83.3%)、(11):66/72(91.7%)、(12):72/72(100%)である。
【0046】
図5に示すディザマトリクスを用いる場合は、ドロップ数密度が6の倍数でしか実現できない。よって、
図4(a)に示した始めはなだらかで徐々に急峻になるドロップ数密度を実現することができない。
【0047】
そこで本実施形態では、ターゲットドロップ数密度プロファイルに基づいてマトリクス内数値の分布を変える。つまり、上記のように固定(6)ではなく、ターゲットドロップ数密度の変化に対応させてマトリクス内数値の変化の幅を例えば2、3、4、…のように変化させる。
【0048】
マトリクス内数値の変化の幅は、ターゲットドロップ数密度プロファイルに基づいて求める。
図4(a)に示すように、ドット切替閾値Thを境にターゲットドロップ数密度の特性が異なるのでそれぞれの特性に合わせてマトリクス内数値を設定する。
【0049】
要するに、1ドロップドットと2ドロップドットを出したい濃度に応じて使い分ける多値記録の画像処理装置では、
図6に示すように1ドロップがベタになってから2ドロップドットを吐出するのが一般的である。そこで、入力階調値にドロップ数密度を対応させる必要がある。本実施形態では、入力階調値が6であるので、1~6のそれぞれの入力階調値に、ターゲット濃度を達成可能なドロップ数密度を実現できるようなマトリクスを生成可能にする。
【0050】
図4(b)は、入力階調値がドット切替閾値Th以下の領域(1)のターゲットドロップ数密度プロファイルに基づいて生成したマトリクス内数値の累積度数分布である。
図4(b)の横軸はマトリクス内数値、縦軸はマトリクス内数値の累積度数である。例えば、入力階調値1の累積度数を2、入力階調値2の累積度数を5と仮定した場合、マトリクス内数値1の要素を2個、マトリクス内数値2の要素を3個に設定する。
【0051】
図4(c)は、入力階調値がドット切替閾値Thより大きい領域(2)の同様に生成したマトリクス内数値の累積度数分布である。
図4(c)の横軸と縦軸の関係は
図4(b)と同じである。領域(2)についても領域(1)と同様に、入力階調値に対する累積度数の変化からマトリクス内数値の変化の幅を設定する。
【0052】
このようにして領域(1),(2)にそれぞれ対応する2つのディザマトリクスを用いて、次式に示すようにインクの吐出量を制御することで、ターゲット濃度プロファイル(
図2)に極めて近い濃度プロファイルを実現することができる。
【0053】
【0054】
ここで、i(x,y)は入力階調値、imaxは最大階調値、Thはドット切替閾値、M1(x,y)は1ドロップドット用のマトリクス内数値、M2(x,y)は2ドロップドット用マトリクス内数値、drop(x,y)は吐出ドロップ数である。
【0055】
ドット切替閾値Thを例えばTh=4とすると、上記の式から領域(1)に対応するディザマトリクスは、1~4のマトリクス内数値を持つ。そして、入力階調値1~4をそのままマトリクス数値と比較し、1ドロップドットのインクの吐出の有無を決定する。
【0056】
領域(2)に対応するディザマトリクスは、1~2のマトリクス内数値を持つようにし、入力階調値5~6は4(ドット切替閾値Th)を引いてマトリクス内数値と比較すればよい。
【0057】
図7は、本実施形態の入力階調値とドット形成パターンの関係例を示す図である。
図7に示すA~Dは入力階調値1~4に対応し、E,Fは入力階調値5,6に対応するドット形成パターンである。このドット形成パターンによれば、ターゲット濃度プロファイルに極めて近い濃度プロファイルを実現することができる。つまり、ターゲット濃度に近い多値画像データを生成することができる。
【0058】
ドロップ切替閾値Thは記憶部3に記憶するようにしてもよい。ハーフトーン処理部2は、画像データ、ディザマトリクス、及びドロップ切替閾値Thに基づいてハーフトーン処理を行う。
【0059】
(ディザマトリクスの生成手順)
図8は、本実施形態に係る画像処理装置10が実行するディザマトリクスの生成手順を示すフローチャートである。
【0060】
利用者は、画像処理装置10を使用する場合、先ず、ターゲット濃度プロファイル(
図2)を設定する(ステップS1)。入力階調値とターゲット濃度の組のデータを画像データ入力部1から入力してもよいし、予め記憶部3に記憶されたターゲット濃度プロファイルを読み出して設定してもよい。
【0061】
次に、印刷媒体の種類及びインクの種類ごとに実測したドロップ数密度と濃度のデータの集まりである実測濃度プロファイル(
図3)を取得する。実測濃度プロファイルは、ターゲット濃度プロファイルと同様に利用者が入力してもよいし、記憶部3に予め記憶されているものを読み出して取得してもよい。
【0062】
次に制御部4は、ターゲット濃度プロファイルと実測濃度プロファイルをターゲット濃度で対比させて、ドロップ数が切り替わるドロップ数密度P(
図3、P点)を特定し、そのドロップ数密度Pを取得する(ステップS3)。
【0063】
次に制御部4は、入力階調値→ターゲット濃度→ドロップ数密度のそれぞれの関係(
図2と3)から、入力階調値に対するドロップ数密度の特性を生成する(
図4(a))(ステップS4)。そして、ドロップ数密度P(
図3、P点)に対応するドット切替閾値Thを求める(ステップS5)。
【0064】
ステップS5中の「記録数」は、大ドット(2ドロップ)、小ドット(1ドロップ)、及びドロップなし(0ドロップ)のことである。この例の場合記録数は3である。よってこの場合、求めるドット切替閾値Thは1つである。
【0065】
次に制御部4は、ドット切替閾値Thから入力階調値の上下方向に、入力階調値→ターゲット濃度→ドロップ数密度のそれぞれの関係(
図2と3)から、入力階調値に対するドロップ数密度の特性を生成する(
図4(a))。そして、ターゲットドロップ数密度プロファイル(
図4(a))からマトリクス内数値の累積度数分布であるターゲット累積度数分布(
図4(b),(c))を生成する(ステップS6)。
【0066】
ディザマトリクスは、システムのメモリ容量の関係で少ないほど好ましい。この例の場合は、ドット切替閾値Th以下の領域(1)のディザマトリクスと、ドット切替閾値Thより大きい領域(2)のディザマトリクスの2つである。2つのディザマトリクスが保持可能であれば(ステップS7のNo)、2つのターゲット累積度数分布に基づいてステップS10,S11の処理を行って多値化画像データを生成する。
【0067】
メモリ容量の関係でディザマトリクスが1つに限られる場合(ステップS7のYES)は、領域(1)のマトリクス内数値の累積度数分布(
図4(b))と領域(2)のマトリクス内数値の累積度数分布(
図4(c))を重み付け平均する重み付け値を設定する(ステップS8)。そして、重み付け値に基づいて平均ターゲット累積度数分布を算出する(ステップS9)。
【0068】
図9(上図)は、2つのマトリクス内数値の累積度数分布を重み付け平均する様子を模式的に示す図である。領域(1)の分布を破線、領域(2)の分布を一点鎖線、重み付け平均した分布を実線で示す。
【0069】
図9(上図)に示すように、重み付け係数a,b(a,b≦1、a+b=1)を用いることで重み付け平均された1つの平均ターゲット累積度数分布(マトリクス内数値の累積度数分布)が得られる。
【0070】
次に、平均ターゲット累積度数分布を満たすマトリクス内数値のターゲットヒストグラムを生成する(ステップS10)。保持可能なディザマトリクスが2以上の場合(ステップS7のNO)は、領域(1)のターゲット累積度数分布(
図4(b))と領域(2)のターゲット累積度数分布のそれぞれを満たすマトリクス内数値のターゲットヒストグラムを生成する。
【0071】
図9(下図)は、マトリクス内数値のターゲットヒストグラムを模式的に示す図である。
図9(下図)の横軸はマトリクス内数値(例えば1~16)、縦軸はマトリクス内数値の度数である。
【0072】
マトリクス内数値の度数は、
図9(上図)の重み付け平均した特性から求める。例えば、マトリクス内数値1,2,3,…に対応する重み付け平均した平均ターゲット累積度数が9,16,18,…と仮定すると、マトリクス内数1の度数は9、同2の度数は7、同3の度数は2、…である。
【0073】
このように各マトリクス内数値1,2,3,…は、累積度数分布を形成する隣り合う累積度数の差分の度数の数が設けられる。
【0074】
次に、求めたマトリクス内数値の度数に基づいてディザマトリクスを生成する(ステップS11)。つまり、ディザマトリクスは、該ディザマトリクス上のドット吐出と吐出順を表すマトリクス内数値の複数の累積度数分布を重み付け平均した一つの累積度数分布に基づいて生成される。
【0075】
生成されたディザマトリクスを用いて、入力階調値iがドット切替閾値Thより大きか小さいかによって次式に示すようにインクの吐出量を制御することで、ターゲット濃度プロファイル(
図2)に極めて近い濃度プロファイルを実現することができる。
【0076】
【0077】
この式の意味するところは、入力階調値が小ドットで形成する領域又は大ドットで形成する領域かに応じて入力階調値を0~imaxで規格化した値とマトリクス内数値の大小を比較して多値化画像データを決定するということである。
【0078】
図10は、入力階調値と画像濃度の関係を、多値化画像データの生成方法をパラメータにして示す図である。プロット□はターゲット濃度を示す。×は上記の一般的な多値化画像データの生成方法で得られる画像濃度を示す。△は上記の先行技術(特開2000-71439)の多値化画像データの生成方法で得られる画像濃度を示す。○は本実施形態の多値化画像データの生成方法で得られる画像濃度を示す。
【0079】
一般的な多値化画像データの生成方法で得られる濃度×は、入力階調値にドロップ数密度を線形に対応させるので、ターゲット濃度(表現したい画像濃度)□が得られない。そこで、先行技術△は、線形に対応させずにターゲット濃度□に近いドロップ数密度を選択するようにしている。
【0080】
しかし、
図10に示すように、先行技術△は、低濃度の領域でターゲット濃度□との間で乖離が生じる。本実施形態は、画像濃度〇をターゲット濃度□に合わすことができる。つまり、ドット形成パターン(ドロップ数密度)を、表現したい画像濃度に最適化することができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係る画像処理装置10は、印刷媒体に表現したい画像データの画像濃度であるターゲット濃度の入力階調値に対する変化を示すターゲット濃度プロファイル(
図2)を設定するターゲット濃度設定部5と、単位面積当たりのドロップ数密度に対する画像濃度の変化を示す実測濃度プロファイル(
図3)を取得する実測濃度取得部6と、ターゲット濃度プロファイルと実測濃度プロファイルに基づいて生成され、入力階調値に対応するドット形成パターンを実現するディザマトリクスを記憶した記憶部3と、ディザマトリクスを参照して画像データの階調を表現するハーフトーン処理を行うハーフトーン処理部2とを備える。これにより、画像濃度がターゲット濃度に合う多値化画像データを生成することができる。
【0082】
本発明によれば、ターゲット濃度を実現するために入力階調値に対してドロップ数密度がどの程度であるべきかを表すターゲットドロップ数密度ファイルから、マトリクス内数値の累積度数分布を求め、その累積度数分布からディザマトリクスを生成する。そして、そのディザマトリクスを画像データに適用するので画像濃度をターゲット濃度に合わせることができる。
【0083】
なお、上記の実施形態では、1ドロップ)と2ドロップで小ドットと大ドットを形成する例を示したが、本発明はこの例に限定されない。ドットサイズが変えられればその手段は何でも構わない。例えば、波形を制御して小ドットと大ドットを形成してもよい。
【0084】
また、色の異なるドットで多値化記録してもよい。例えばライトシアンドット/シアンドットに置き換える多値化画像データの生成に本発明の技術思想をそのまま適用することができる。
【0085】
また、ドット切替閾値Thは1つの例で説明したが、2つ以上の複数のドット切替閾値Thを備えてもよい。その場合、ドット切替閾値Thの数よりも1つ多い数のディザマトリクスを備えてもよいし、1つのディザマトリクスに平均しても構わない。
【0086】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0087】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0088】
(付記1)
印刷媒体に表現したい画像の画像濃度であるターゲット濃度の入力階調値に対する変化を示すターゲット濃度プロファイルを設定するターゲット濃度設定部と、
単位面積当たりのドロップ数密度に対する前記画像濃度の変化を示す実測濃度プロファイルを取得する実測濃度取得部と、
前記ターゲット濃度プロファイルと前記実測濃度プロファイルに基づいて生成され、入力階調値に対応するドット形成パターンを実現するディザマトリクスを記憶した記憶部と、
前記ディザマトリクスを参照して前記画像の階調を表現するハーフトーン処理を行うハーフトーン処理部と
を備える画像処理装置。
【0089】
(付記2)
前記記憶部は、
ドロップ数を切り替える入力階調値を表すドット切替閾値を記憶し、
前記ハーフトーン処理部は、
前記画像データ、前記ディザマトリクス、及び前記ドット切替閾値に基づいて前記ハーフトーン処理を行う
付記1に記載の画像処理装置。
【0090】
(付記3)
前記ドット切替閾値の数よりも1つ多い数の前記ディザマトリクス
を備える付記2に記載の画像処理装置。
【0091】
(付記4)
前記ディザマトリクスは、
該ディザマトリクス上のドット吐出と吐出順を表すマトリクス内数値の複数の累積度数分布を重み付け平均した一つの累積度数分布に基づいて生成される
付記1又は2に記載の画像処理装置。
【0092】
(付記5)
前記マトリクス内数値は、
前記累積度数分布を形成する隣り合う累積度数の差分の度数の数が設けられる
付記3に記載の画像処理装置。
【符号の説明】
【0093】
1 画像データ入力部
2 ハーフトーン処理部
3 記憶部
4 制御部
5 ターゲット濃度設定部
6 実測濃度取得部
10 画像処理装置