IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特開2023-121887シリコーン系ブロック共重合体、その製造方法、エポキシ樹脂組成物およびエポキシ樹脂硬化剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121887
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】シリコーン系ブロック共重合体、その製造方法、エポキシ樹脂組成物およびエポキシ樹脂硬化剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20230825BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C08G81/00
C08L63/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025220
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡部 航大
(72)【発明者】
【氏名】浅野 到
【テーマコード(参考)】
4J002
4J031
【Fターム(参考)】
4J002CD00W
4J002CD01W
4J002CD02W
4J002CD04W
4J002CD05W
4J002CD07W
4J002CD10W
4J002CD11W
4J002CD13W
4J002CP18X
4J002GJ02
4J002GQ01
4J031AA53
4J031AA59
4J031AB04
4J031AC03
4J031AC07
4J031AD01
4J031AE19
4J031AF24
4J031CD09
4J031CD24
(57)【要約】
【課題】エポキシ樹脂に添加することでエポキシ樹脂硬化物の低弾性率化および高靭性化することができ、かつエポキシ樹脂との混錬および硬化反応において高温領域で増粘を抑制することができるブロック共重合体を提供する。
【解決手段】ポリシロキサンから構成されるブロック[A]、ポリアルキレングリコールから構成されるブロック[B]、および連結セグメント[C]を含むブロック共重合体であって、連結セグメント[C]はフェノール性水酸基を有しかつエステル結合および/またはアミド結合を含み、ブロック共重合体のフェノール性水酸基含有量が0.1~3.0mmol/gであり、かつ、重量平均分子量が5,000~500,000であるブロック共重合体。本発明のブロック共重合体は、エポキシ樹脂硬化物を低弾性率化かつ高靭性化することができ、かつエポキシ樹脂組成物の高い流動性を実現できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック[A]、ブロック[B]、および連結セグメント[C]を含むブロック共重合体であって、ブロック[A]は一般式(1)で表される構造単位を有し、
【化1】
(Rは水素、炭素数1~10のアルキル基またはアリール基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。nは5~70の繰り返し単位を表す。)
ブロック[B]は一般式(2)で表される構造単位を有し、
【化2】
(Rは炭素数2~10のアルキレン基またはアリーレン基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mは3~100の繰り返し単位を表す。)
連結セグメント[C]はフェノール性水酸基を有しかつエステル結合および/またはアミド結合を含み、ブロック共重合体のフェノール性水酸基含有量が0.1~3.0mmol/gであり、かつ、重量平均分子量が5,000~500,000であるブロック共重合体。
【請求項2】
連結セグメント[C]が一般式(3)および/または(4)で表される請求項1に記載のブロック共重合体。
【化3】
(Xは-O-または-NH-を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yは炭素数4~14の有機基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Zはフェノール性水酸基を含む有機基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは炭素数1~7の有機基を表し、アミド基を含んでもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記一般式(3)および(4)中のYが一般式(5)~(13)のいずれかで表される、請求項1または2に記載のブロック共重合体。
【化4】
【請求項4】
前記一般式(3)および(4)中のZが一般式(14)または(15)で表される、請求項1~3のいずれかに記載のブロック共重合体。
【化5】
(Rは炭素数0~3のアルキレン基を表す。)
【化6】
(Rは炭素数0~3のアルキレン基を表す。)
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のブロック共重合体であって、ブロック[A]由来の構造の含有量が10質量%以上90質量%以下であるブロック共重合体。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される構造単位を有し、かつ水酸基およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基を両末端に有する化合物[A’]と、前記一般式(2)で表される構造単位を有し、かつ水酸基およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基を両末端に有する化合物[B’]と、分子内に2つ以上のカルボン酸無水物基を有する連結剤[C1’]を反応させてブロック共重合体中間体を得て、次いで分子内にフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]を反応させ、フェノール性水酸基含有量が0.1~3.0mmol/gであり、かつ、重量平均分子量が5,000~500,000であるブロック共重合体を得るブロック共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記連結剤[C1’]が、前記一般式(5)~(13)のいずれかで表される構造を有する請求項6記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項8】
分子内にフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]が一般式(16)または(17)で表される、請求項6または7に記載のブロック共重合体
【化7】
(Rは炭素数0~3のアルキレン基を表す。)
【化8】
(Rは炭素数0~3のアルキレン基を表す。)
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載のブロック共重合体およびエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン系ブロック共重合体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を電子機器に実装するためのパッケージング技術は進化を続けており、半導体チップを3次元に積層した複雑なパッケージや大型パネルで大量のパッケージを一括生産する技術などが開発されている。半導体パッケージの構成材料である封止材は、内部の半導体を衝撃やほこりなどから守る役割を担っており、一般にエポキシ樹脂、硬化剤、フィラー硬化物と、低応力剤から成る。低応力剤は、封止材の弾性率を低減することでクラックや反りなどに伴うパッケージの破損を回避する目的で添加され、弾性率の低いシリコーンを主成分とするポリマーが一般的に用いられる。しかしシリコーンは、エポキシ樹脂との親和性が低く混ざり難いことから、シリコーンの両末端にポリアルキレングリコール鎖を結合したABA型のトリブロック共重合体を用いる技術が開示されている(特許文献1)。また、シリコーン-ポリエーテル系ブロック共重合体の両末端に、エポキシ樹脂との反応性を有するカルボキシル基やアミノ基を導入することで、封止材の靭性も向上させる技術も開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-182831号公報
【特許文献2】特開平4-359023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体パッケージング技術の発展によって、上述の低弾性率化、高靭性化要求に加えて、積層した半導体チップ間に硬化前の封止材(エポキシ樹脂組成物)を充填する際の作業性を向上する目的などで、エポキシ樹脂組成物の低粘度化要求が高まっている。
【0005】
特許文献1のシリコーン系ブロック共重合体ではエポキシ樹脂との親和性が不十分であり、低応力化と高靭性化の両立には課題があった。特許文献2ではマルチブロック化および反応性基の導入により親和性が改善され、低応力化と高靭性化を達成したものの、エポキシ樹脂組成物の流動性に関しては一切言及されていない。
【0006】
本発明は、エポキシ樹脂に添加することでエポキシ樹脂硬化物の低弾性率化および高靭性化することができ、かつエポキシ樹脂との混錬および硬化反応において高温領域で増粘を抑制することができるブロック共重合体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討をした結果、下記の発明に到達した。すなわち本発明は、
「<1>ブロック[A]、ブロック[B]、および連結セグメント[C]を含むブロック共重合体であって、ブロック[A]は一般式(1)で表される構造単位を有し、
【0008】
【化1】
【0009】
(Rは水素、炭素数1~10のアルキル基またはアリール基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。nは5~70の繰り返し単位を表す。)
ブロック[B]は一般式(2)で表される構造単位を有し、
【0010】
【化2】
【0011】
(Rは炭素数1~10のアルキレン基またはアリーレン基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mは3~100の繰り返し単位を表す。)
連結セグメント[C]はフェノール性水酸基を有しかつエステル結合および/またはアミド結合を含み、ブロック共重合体のフェノール性水酸基含有量が0.1~3.0mmol/gであり、かつ、重量平均分子量が5,000~500,000であるブロック共重合体。
<2>前記一般式(1)で表される構造単位を有し、かつ水酸基およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基を両末端に有する化合物[A’]と、前記一般式(2)で表される構造単位を有し、かつ水酸基およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基を両末端に有する化合物[B’]と、分子内に2つ以上のカルボン酸無水物基を有する連結剤[C1’]を反応させてブロック共重合体中間体を得て、次いで分子内にフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]を反応させ、フェノール性水酸基含有量が0.1~3.0mmol/gであり、かつ、重量平均分子量が5,000~500,000であるブロック共重合体を得るブロック共重合体の製造方法。
<3>上記のブロック共重合体およびエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
<4>上記のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物。」である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エポキシ樹脂に添加することでエポキシ樹脂硬化物の低弾性率化および高靭性化することができ、かつエポキシ樹脂との混錬および硬化反応において高温領域で増粘を抑制することができるため、エポキシ樹脂組成物の高い取扱性および充填性を実現できるブロック共重合体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明におけるブロック共重合体は、ブロック[A]、ブロック[B]、および連結セグメント[C]を含む構成からなる。
【0014】
ここで、本発明のブロック[A]は、一般式(1)で表されるポリシロキサンの構造単位を有する。かかる構造単位は、シロキサン骨格を有するため、ブロック共重合体を配合したエポキシ樹脂硬化物(成形品)は、耐久性、靱性、弾性率等の機械特性が向上する。
【0015】
【化3】
【0016】
なお、一般式(1)のRは、水素、炭素数1~10のアルキル基、またはフェニル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。樹脂硬化物の弾性率を低減できる点から、Rは、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基のいずれかであり、より好ましくはメチル基である。
【0017】
nは5~70の繰り返し単位数を表す。繰り返し単位nの下限値としては、樹脂硬化物の弾性率を低減できる点から、7以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上が特に好ましい。また、繰り返し単位nの上限値としては、エポキシ樹脂組成物との親和性が高くなり、樹脂硬化物中での良分散性を保てるために破断点歪が向上する点から、60以下が好ましく、55以下がより好ましく、50以下が特に好ましい。
【0018】
本発明におけるブロック[B]は、一般式(2)で表されるポリアルキレングリコールの構造単位を有する。かかる構造単位は、エポキシ樹脂との親和性が高く、エポキシ樹脂組成物中での分散性が良好となるため、エポキシ樹脂硬化物の靱性等の機械特性が向上する。
【0019】
【化4】
【0020】
は炭素数2~10のアルキレン基またはアリーレン基を表し、それぞれ同一でも異なっても良い。破断点歪が向上する点から、Rの好ましい炭素数は3または4である。
【0021】
mは、3~100の繰り返し単位数を表す。繰り返し単位mの下限値としては、破断点歪が向上する点から、5以上が好ましく、7以上がより好ましく、10以上が特に好ましい。また、繰り返し単位nの上限値としては、エポキシ樹脂硬化物の弾性率を低減できる点から、90以下が好ましく、80以下がより好ましく、70以下が特に好ましい。
本発明における連結セグメント[C]は、ブロック[A]とブロック[B]を繋ぐ連結部であり、フェノール性水酸基を有しかつエステル結合および/またはアミド結合を含む。かかる連結部は、エポキシ樹脂中で反応するフェノール性水酸基を有するため、ブロック共重合体のエポキシ樹脂との親和性を高め、エポキシ樹脂硬化物の靱性等の機械特性が向上する。さらに、官能基が硬化剤であるフェノール樹脂と同一であることから、ブロック共重合体のとエポキシ樹脂の反応を硬化反応(エポキシ樹脂と硬化剤の反応)と同時に起こすことができ、結果として硬化反応前の封止材充填温度領域でのエポキシ樹脂組成物の流動性が向上する。
【0022】
本発明における連結セグメント[C]は、一般式(3)および/または(4)で表されることが好ましい。一般式(3)および(4)のXは-O-または-NH-を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Xは、エポキシ樹脂硬化物の弾性率が低下することから-O-であることが好ましい。また、Yは炭素数4~14の有機基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yの好ましい炭素数は、エポキシ樹脂組成物との親和性が高くなり、樹脂硬化物中での良分散性を保てるために破断点歪が向上する点から、6または12が好ましい。Zはフェノール性水酸基を含む有機基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは炭素数1~7の有機基を表し、アミド基を含んでもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは、破断点歪が向上する点から、好ましくは炭素数4~7のアミド基を有する有機基であり、より好ましくは炭素数4または5のアミド基を有する有機基である。
【0023】
【化5】
【0024】
一般式(3)および/または(4)のYは、一般式(5)~(13)から選ばれる少なくとも一種の構造であることが好ましい。エポキシ樹脂組成物との親和性が高くなり、樹脂硬化物中での良分散性を保てるために破断点歪が向上する点から、Yは(5)または(9)で表される構造であることがより好ましい。
【0025】
【化6】
【0026】
一般式(3)および/または(4)のZは、一般式(14)または(15)から選ばれる少なくとも一種の構造であることが好ましい。
【0027】
【化7】
【0028】
なお、一般式(14)のRは炭素数0~3のアルキレン基を表す。Rの炭素数は、樹脂との親和性の観点から好ましくは0または1である。
【0029】
一般式(15)のRは炭素数0~3のアルキレン基を表す。Rの炭素数は、樹脂との親和性の観点から好ましくは0または1である。
【0030】
本発明におけるブロック共重合体のフェノール性水酸基の含有量は、樹脂との親和性および樹脂組成物の流動性を向上させるという点から、0.1以上3.0mmol/g以下の範囲である必要がある。フェノール性水酸基が0.1mmol/g未満の場合、樹脂との反応点が少なくなり、エポキシ樹脂との親和性が低下し、得られる成形品の靭性や界面の接着性が低下する。フェノール性水酸基の下限値は、0.2mmol/g以上がより好ましく、0.3mmol/g以上が特に好ましい。フェノール性水酸基の含有量が3.0mmol/gを超える場合、かかるブロック共重合体をエポキシ樹脂に配合した際、反応点の多さ故に、反応が過剰に進行してしまい、エポキシ樹脂硬化物の弾性率が高くなりすぎたり、エポキシ樹脂組成物の流動性の低下につながる。エポキシ基の上限値は2.5mmol/g以下がより好ましく、2.0mmol/g以下がさらに好ましく、1.5mmol/g以下が特に好ましい。
【0031】
かかるブロック共重合体のフェノール性水酸基の含有量は、JISK0070に準じ、ブロック共重合体を無水酢酸ピリジン溶液に溶解させ、加熱および加水処理をした後に、0.5mol/Lのアルコール性水酸化カリウムでフェノールフタレインを指示薬として中和滴定することで算出できる。
【0032】
本発明のブロック共重合体の重量平均分子量(M)は、5,000以上500,000以下の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が5,000より小さい場合は、ブロック共重合体としての靭性が低くなるため、エポキシ樹脂硬化物の靱性も低下する場合がある。重量平均分子量の下限値は好ましくは5,000以上であり、より好ましくは7,000以上であり、特に好ましくは、10,000以上である。また、重量平均分子量が500,000より大きい場合は、ブロック共重合体の粘度が上昇し、エポキシ樹脂組成物の流動性が悪化する傾向にある。さらに、ブロック共重合体を配合したエポキシ樹脂硬化物を得る際、成形時に金型の細部にまで浸透させることができず、成形不良の原因となるため好ましくない。重量平均分子量の上限は、好ましくは200,000以下であり、より好ましくは100,000以下であり、特に好ましくは50,000以下である。
【0033】
なお、ここで言うブロック共重合体の重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、ポリメタクリル酸メチルで換算した重量平均分子量を指す。
【0034】
本発明のブロック共重合体におけるブロック[A]由来の構造の含有量は、ブロック共重合体全体を100質量%として、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。含有量の下限値は好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。また含有量の上限値としては、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは60質量%以下である。ブロック[A]由来の構造の含有量が少なすぎる場合は、ブロック共重合体をエポキシ樹脂に添加して硬化物を作製しても、ブロック共重合体添加による低弾性率化効果が小さい。また、ブロック[A]由来の構造の含有量が多すぎる場合は、ブロック共重合体のエポキシ樹脂組成物との親和性が低いために、エポキシ樹脂硬化物中でブロック共重合体が良分散しない。
【0035】
本発明におけるブロック共重合体の製造方法は、前記一般式(1)で表される構造単位を有し、かつ水酸基およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基を両末端に有する化合物[A’]と、前記一般式(2)で表される構造単位を有し、かつ水酸基およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基を両末端に有する化合物[B’]と、分子内に2つ以上のカルボン酸無水物基を有する連結剤[C1’]を反応させてブロック共重合体中間体を得て、分子内にフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]をブロック共重合体中間体に反応させる方法が好ましい。また、前記連結剤[C1’]は、一般式(5)~(13)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0036】
化合物[A’]は、前記一般式(1)で表される構造単位を有し、かつ水酸基およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基を末端に有する。樹脂硬化物の弾性率を低減できる点から、官能基としては水酸基が好ましい。
【0037】
化合物[A’]の重量平均分子量は、特に制限はないが、その下限値としては好ましくは500以上であり、より好ましくは800以上であり、さらに好ましくは1,000以上である。また重量平均分子量の上限値としては、8,000以下が好ましく、より好ましくは5,000以下であり、さらに好ましくは4,000以下であり、最も好ましくは3,000以下である。水酸基およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基を末端に有する化合物[A’]の重量平均分子量が小さい場合は、シリコーン骨格由来の特性が発現せず、得られるブロック共重合体をエポキシ樹脂に添加する際の樹脂改質剤としての性能が低くなる場合があるため、好ましくない。また、化合物[A’]の重量平均分子量が大きい場合は、化合物[A’]と化合物[B’]が相分離し、均一状態での重合が進行せず、均質なブロック共重合体が得られず、破断点歪が低減する点から好ましくない。なお、化合物[A’]の重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、ポリメタクリル酸メチルで換算した重量平均分子量を指す。
【0038】
化合物[A’]としては、信越化学工業株式会社から市販されている、KF-6000、KF-6001、KF-6002、KF-6003、X-22-160AS、X-22-1821、PAM-E、KF-8010、X-22-161A、X-22-161B、KF-8012、KF-8008、X-22-1660B-3、X-22-9409、東レ・ダウコーニング株式会社から市販されている、BY16-201、SF8427Fluid、BY16-853U、BY16-871等が挙げられる。
【0039】
化合物[B’]は、前記一般式(2)で表される構造単位を有し、かつ水酸基およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基を末端に有する。樹脂硬化物の弾性率を低減できる点から、官能基としては水酸基が好ましい。
【0040】
化合物[B’]の重量平均分子量は、特に制限はないが、その下限値としては好ましくは400以上であり、より好ましくは800以上であり、さらに好ましくは1,000以上である。また重量平均分子量の上限値としては、8,000以下が好ましく、より好ましくは5,000以下であり、さらに好ましくは4,000以下であり、最も好ましくは3,000以下である。化合物[B’]の重量平均分子量が小さい場合は、得られるブロック共重合体をエポキシ樹脂に添加する際の樹脂改質剤としての性能が低くなる場合があるため、好ましくない。また、化合物[B’]の重量平均分子量が大きい場合は、化合物[B’]と化合物[A’]が相分離し、均一状態での重合が進行せず、均質なブロック共重合体が得られず、破断点歪が低減する点から好ましくない。なお、化合物[B’]の重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、ポリメタクリル酸メチルで換算した重量平均分子量を指す。
【0041】
化合物[B’]は、前記一般式(2)で表される構造単位を有する。具体的にはRが分岐したペンテン基であるポリネオペンチルグリコール、Rが直鎖のブチレン基であるポリテトラメチレングリコール、Rが分岐したプロピレン基であるポリプロピレングリコール、Rがエチレン基であるポリエチレングリコール、およびそれらの共重合体などが挙げられる。特に、化合物[A’]との親和性に優れ、均質なブロック共重合体を得ることができることから、ポリネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコール共重合体が好ましく、他のポリマー成分との親和性に優れるため、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコール共重合体がより好ましく、ポリプロピレングリコールが特に好ましい。
【0042】
連結剤[C1’]は、分子内に2つ以上のカルボン酸無水物基を有し、かつ一般式(5)~(13)で表される構造単位を有する化合物である。具体的には、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。特に化合物[A’]および化合物[B’]への溶解性に優れ、反応性に優れることから、ピロメリット酸無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0043】
化合物[A’]の水酸基またはアミノ基と連結剤[C1’]の酸無水物基、および化合物[B’]の水酸基またはアミノ基と連結剤[C1’]の酸無水物基が反応した結果、エステル結合またはアミド結合とカルボキシル基が生成される。従って、ブロック共重合体中間体は連結部にカルボキシル基を有する。
【0044】
かかるブロック共重合体中間体のカルボキシル基含有量は、JISK0070(1992)に準じ、ブロック共重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、0.1mol/Lのアルコール性水酸化カリウムでフェノールフタレインを指示薬として中和滴定することで算出できる。
【0045】
化合物[A’]、化合物[B’]、および連結剤[C1’]を反応させてブロック共重合体中間体を得る方法としては、化合物[A’]、化合物[B’]、および連結剤[C1’]を混合し、加熱することで反応させる方法などを挙げることができる。必要に応じて有機溶媒の使用や窒素雰囲気下で反応させても良く、反応を促進させるために減圧下で行っても良い。また、反応時に反応促進剤等を添加しても良いが、副反応も促進する可能性があるため、反応促進剤を用いずに反応させることが好ましい。
【0046】
本発明のブロック共重合体の製造方法として化合物[A’]と化合物[B’]のモル総和に対する連結剤[C1’]のモル数の比率は、0.5~1.2で適宜調整することが出来る。
【0047】
更にブロック共重合体中間体のカルボキシル基の一部を、カルボキシル基との反応性を有する化合物と反応させることで、所望のカルボキシル基含有量に制御することも可能である。この反応により、カルボキシル基が封鎖されてエステル結合を含む置換基が生成する。カルボキシル基との反応性を有する化合物(カルボキシル基封鎖剤)の具体例としては、オルトエステル類やオキサゾリン類などが挙げられる。
【0048】
次に、このようにして得られたブロック共重合体中間体を、分子内にフェノール性水酸基およびカルボキシル基との反応性を有する官能基を含有した化合物[C2’]と反応させることで、本発明のブロック共重合体を含む組成物を得る。この反応により、ブロック共重合体中間体が有するカルボキシル基と化合物[C2’]のカルボキシル基との反応性を有する官能基が反応してエステル結合を生成し、側鎖にフェノール性水酸基を有するブロック共重合体が得られる。
【0049】
分子内にフェノール性水酸基およびカルボキシル基との反応性を有する官能基を含有した化合物[C2’]としては、一般式(16)または(17)のいずれかの構造で表される化合物であることが好ましい。これらの構造に含まれるオキサゾリン環およびエポキシ環はカルボキシル基との反応性が高いため、化学両論的にフェノール水酸基へ官能基変換できる点で優れる。
【0050】
【化8】
【0051】
なお、一般式(16)のRは炭素数0~3のアルキレン基を表す。Rの炭素数は樹脂との親和性の観点から好ましくは0または1である。
【0052】
一般式(17)のRは炭素数0~3のアルキレン基を表す。Rの炭素数は樹脂との親和性の観点から好ましくは0または1である。
【0053】
分子内にフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
分子内にフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]の使用量としては、ブロック共重合体中間が有するカルボキシル基に対して1~5倍モルとする([C2’]/[COOH]=1~5)。[C2’]/[COOH]が1よりも小さい場合は、ブロック共重合体中間体にカルボキシル基が残存するため好ましくない。[C2’]/[COOH]が5よりも大きい場合は、未反応の分子内にフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]の残存量が大きいために、ブロック共重合体を添加したエポキシ樹脂硬化物の架橋密度が低下するため好ましくない。[C2’]/[C1’]の範囲としては、1~3が好ましく、1~1.5がより好ましい。
【0055】
ブロック共重合体中間体を、分子内にフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]と反応させる際の反応温度としては、生産効率の観点からブロック共重合体中間体を合成する際の温度と同一であることが望ましい。反応温度の上限値としては、ポリマーの分解などの副反応が発生する可能性があるため、220℃以下であることが好ましく、より好ましくは200℃以下である。
【0056】
なお、分子内にフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]と同時に前記カルボキシル基封鎖剤を用いることで、所望のフェノール性水酸基量に制御してもよい。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物とは、後述のエポキシ樹脂と本発明のブロック共重合体を混合したものであり、硬化反応をさせる前の混合物を指す。
【0058】
本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれる、ブロック共重合体の好ましい量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、0.1~50質量部であり、より好ましくは0.1~40質量部であり、さらに好ましくは0.5~30質量部である。エポキシ樹脂組成物に、この範囲のブロック共重合体を含むことで、エポキシ樹脂組成物を硬化させたエポキシ樹脂硬化物において、効率よく低弾性率化と破断点歪の向上による高靭性化効果を付与することができる。
【0059】
エポキシ樹脂としては、特に制限はされないが、例えば、水酸基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、アミノ基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、カルボキシル基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、二重結合を有する化合物を酸化することにより得られる脂環式エポキシ樹脂、あるいはこれらから選ばれる2種類以上のタイプの基が分子内に混在するエポキシ樹脂などが用いられる。
【0060】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールS型エポキシ樹脂、4,4’-ビフェノールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるビフェニル型エポキシ樹脂、レゾルシノールとエピクロロヒドリンの反応により得られるレゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールとエピクロロヒドリンの反応により得られるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、およびこれらの位置異性体やアルキル基やハロゲンでの置換体が挙げられる。
【0061】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)825、“jER”(登録商標)826、“jER”(登録商標)827、“jER”(登録商標)828(以上、三菱ケミカル(株)製)、“エピクロン”(登録商標)850(DIC(株)製)、“エポトート”(登録商標)YD-128(新日鉄住金化学(株)製)、D.E.R-331(商標)(ダウケミカル社製)、“Bakelite”(登録商標)EPR154、“Bakelite”(登録商標)EPR162、“Bakelite”(登録商標)EPR172、“Bakelite”(登録商標)EPR173、および“Bakelite”(登録商標)EPR174(以上、Bakelite AG社製)などが挙げられる。
【0062】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)806、“jER”(登録商標)807、“jER”(登録商標)1750(以上、三菱ケミカル(株)製)、“エピクロン”(登録商標)830(DIC(株)製)、“エポトート”(登録商標)YD-170、“エポトート”(登録商標)YD-175(新日鉄住金化学(株)製)、“Bakelite”(登録商標)EPR169(Bakelite AG社製)、“アラルダイト”(登録商標)GY281、“アラルダイト”(登録商標)GY282、および“アラルダイト”(登録商標)GY285(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
【0063】
ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)YX4000、“jER”(登録商標)YX4000K、“jER”(登録商標)YX4000H、“jER”(登録商標)YX4000HK(以上、三菱ケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0064】
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、“デナコール”(登録商標)EX-201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0065】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)152、“jER”(登録商標)154(以上、三菱ケミカル(株)製)、“エピクロン”(登録商標)740(DIC(株)製)、およびEPN179、EPN180(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
【0066】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂の具体例としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン類、アミノフェノールのグリシジル化合物類、グリシジルアニリン類、およびキシレンジアミンのグリシジル化合物などが挙げられる。
【0067】
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン類の市販品としては、“スミエポキシ”(登録商標)ELM434(住友化学(株)製)、“アラルダイト”(登録商標)MY720、“アラルダイト”(登録商標)MY721、“アラルダイト”(登録商標)MY9512、“アラルダイト”(登録商標)MY9612、“アラルダイト”(登録商標)MY9634、“アラルダイト”(登録商標)MY9663(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、“jER”(登録商標)604(三菱ケミカル(株)製)、“Bakelite”(登録商標)EPR494、“Bakelite”(登録商標)EPR495、“Bakelite”(登録商標)EPR496、および“Bakelite”(登録商標)EPR497(以上、Bakelite AG社製)などが挙げられる。
【0068】
アミノフェノールのグリシジル化合物類の市販品としては、“jER”(登録商標)630(三菱ケミカル(株)製)、“アラルダイト”(登録商標)MY0500、“アラルダイト”(登録商標)MY0510(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、“スミエポキシ”(登録商標)ELM120、および“スミエポキシ”(登録商標)ELM100(以上住友化学(株)製)などが挙げられる。
【0069】
グリシジルアニリン類の市販品としては、GAN、GOT(以上、日本化薬(株)製)や“Bakelite”(登録商標)EPR493(Bakelite AG社製)などが挙げられる。
【0070】
キシレンジアミンのグリシジル化合物としては、TETRAD-X(登録商標)(三菱瓦斯化学(株)製)が挙げられる。
【0071】
グリシジルエステル型エポキシ樹脂の具体例としては、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、および、これらの各種異性体が挙げられる。
【0072】
フタル酸ジグリシジルエステルの市販品としては、“エポミック”(登録商標)R508(三井化学(株)製)や“デナコール”(登録商標)EX-721(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0073】
ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルの市販品としては、“エポミック”(登録商標)R540(三井化学(株)製)やAK-601(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0074】
ダイマー酸ジグリシジルエステルの市販品としては、“jER”(登録商標)871(三菱ケミカル(株)製)や“エポトート”(登録商標)YD-171(新日鉄住金化学(株)製)などが挙げられる。
【0075】
脂環式エポキシ樹脂の市販品としては、“セロキサイド”(登録商標)2021P((株)ダイセル製)、CY179(ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ社製)、“セロキサイド”(登録商標)2081((株)ダイセル製)、および“セロキサイド”(登録商標)3000((株)ダイセル製)などが挙げられる。
【0076】
エポキシ樹脂としては、耐熱性、靱性および低リフロー性の点からビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびビスフェノールS型エポキシ樹脂から選ばれた樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂がさらに好ましい。上記エポキシ樹脂は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0077】
エポキシ樹脂組成物には、硬化剤および/または硬化促進剤を添加することができる。
【0078】
エポキシ樹脂硬化剤としては、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン系硬化剤;メンセンジアミンやイソホロンジアミンなどの脂環族ポリアミン系硬化剤;ジアミノジフェニルメタンやm-フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン系硬化剤;ポリアミド、変性ポリアミン、無水フタル酸、無水ピロメリット酸や無水トリメリット酸などの酸無水物系硬化剤;フェノールノボラック樹脂やフェノールアラルキル樹脂などのポリフェノール系硬化剤;ポリメルカプタン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-フェニル-4-メチルイミダゾールなどのアニオン型触媒;3フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体などのカチオン型触媒;ジシアンジアミド、芳香族ジアゾニウム塩やモレキュラーシーブなどの潜在型硬化剤などが挙げられる。
【0079】
特に本発明のブロック共重合体と反応性官能基が同一であり、樹脂組成物の流動性を向上することができる点からポリフェノール系硬化剤を用いることが好ましい。
【0080】
芳香族系アミン硬化剤の具体例を挙げると、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタキシリレンジアミン、ジフェニル-p-ジアニリンやこれらのアルキル置換体などの各種誘導体やアミノ基の位置の異なる異性体が挙げられる。
【0081】
酸無水物系硬化剤の具体例を挙げると、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0082】
ポリフェノール系硬化剤の具体例としては、フェノールアラルキル樹脂、1-ナフトールアラルキル樹脂、o-クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ナフトールノボラック型樹脂などが挙げられる。
【0083】
硬化剤の添加量の最適値は、エポキシ樹脂、および硬化剤の種類により異なるが、硬化剤の化学量論的な当量比が、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ基に対して0.5~1.4の間にあることが好ましく、0.6~1.4であることがより好ましい。当量比が、0.5よりも小さい場合、硬化反応が十分に起こらず、硬化不良が発生したり、硬化反応に長時間を要したりする場合がある。当量比が、1.4よりも大きい場合は、硬化時に消費されなかった硬化剤が欠陥となり、機械物性を低下させることがある。
【0084】
硬化剤はモノマーおよびオリゴマーのいずれの形でも使用でき、混合時は粉体、液体いずれの形態でも良い。これらの硬化剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、硬化促進剤を併用しても良い。
【0085】
硬化促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7に代表されるアミン化合物系硬化促進剤;2-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミダゾールに代表されるイミダゾール化合物系硬化促進剤;トリフェニルホスファイトに代表されるリン化合物系硬化促進剤等を用いることができる。なかでも、リン化合物系硬化促進剤が最も好ましい。
【0086】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、エポキシ樹脂およびブロック共重合体以外の難燃剤、充填剤、着色剤、離型剤等などの各種添加剤を加えてもよい。
【0087】
充填剤としては、特に制限はないが、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニアなどの粉末や微粒子が用いられる。これら充填剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、線膨張係数を下げることから、溶融シリカを用いることが好ましい。また充填剤の形状としては、成形時の流動性および磨耗性の観点から球状であることが好ましい。
【0088】
充填剤の配合量は、吸湿率の低下、線膨張係数の低減、強度向上の観点から、エポキシ樹脂100質量部に対し、好ましくは20質量部~2000質量部、より好ましくは、50~2000質量部、さらに好ましくは100~2000質量部、特に好ましくは100~1000質量部、最も好ましくは200~800質量部である。
【0089】
その他の添加剤の例としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、ヒンダードアミン系劣化防止剤、ヒンダードフェノール系劣化防止剤などが挙げられる。
【0090】
これらの添加剤は、エポキシ樹脂組成物の硬化前の段階で加えることが好ましく、粉体、液体、スラリー体のいずれの形態で加えても良い。
【0091】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、流動性が良く、取扱い性に優れている。半導体封止材に用いる際、流動性が悪い場合は、細部にまでエポキシ樹脂組成物を充填することができず、ボイドの原因となりパッケージの破損に繋がるおそれがある。本発明のブロック共重合体は、エポキシ樹脂に添加した際の、添加による粘度上昇が小さく、流動性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。なお、エポキシ樹脂組成物中に2種類以上のブロック共重合体を添加しても良い。
【0092】
本発明のブロック共重合体は、エポキシ樹脂に非相溶であるが柔軟性に優れたシリコーン骨格、エポキシ樹脂に相溶し柔軟性に優れたポリアルキレングリコール骨格、および樹脂と反応するフェノール性水酸基を含有した連結セグメントを有するため、エポキシ樹脂硬化物中における良分散性、低弾性率化効果、および高靭性化効果を発現する。エポキシ樹脂硬化物は、公知の方法で作製することができる。例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、各種添加剤、および充填剤を混合し、加熱により硬化することで作製する方法が挙げられる。
【0093】
硬化物を作製する際のエポキシ樹脂組成物の流動性は、封止材成形時の作業性および充填性の観点から高いことが好ましい。本発明のブロック共重合体は、硬化剤として好ましく用いられるポリフェノール系硬化剤と同一のフェノール性水酸基を有しており、ブロック共重合体とエポキシ樹脂の反応を樹脂硬化反応と同時に起こすことができる。その結果、樹脂組成物を封止材として充填する温度(硬化反応前)では樹脂組成物の増粘を抑制することができ、高い流動性を実現することが可能である。
【0094】
エポキシ樹脂組成物の流動性は、レオメーターによる粘度測定により評価することができる。具体的には、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、および硬化促進剤の合計100質量部に対し、ブロック共重合体を17質量部含んだエポキシ樹脂組成物の粘度を70℃~220℃で昇温しながら連続的に測定し、温度170℃における粘度を流動性の指標として用いる。温度170℃における粘度の値としては20Pa・s以下が好ましく、15Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。温度170℃における粘度が大きい場合には、エポキシ樹脂組成物の流動性が悪く、封止材成形時に細部にまで充填させることができず、クラックの原因となるため好ましくない。
【0095】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂および必要に応じて硬化剤中に上記ブロック共重合体を添加し、通常公知の混練機を用いて混練することにより作製することができる。混練機としては、3本ロール混練機、自公転式ミキサー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。
【0096】
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、上記のエポキシ樹脂組成物を硬化反応させて得られるものである。エポキシ樹脂硬化物を得るための硬化反応を進めるためには、必要に応じて温度をかけてもよい。その際の温度としては、好ましくは室温~250℃、より好ましくは50~200℃、さらに好ましくは70~190℃、特に好ましくは100~180℃である。また必要に応じて、温度の昇温プログラムをかけてもよい。その際の昇温速度は、特に制限はされないが、好ましくは0.5~20℃/分であり、より好ましくは0.5~10℃/分であり、さらに好ましくは1~5℃/分である。
【0097】
また硬化時の圧力は、好ましくは1~100kg/cm、より好ましくは1~50kg/cm、さらに好ましくは1~20kg/cm、特に好ましくは1~5kg/cmである。
【0098】
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、内部でブロック共重合体が均質に微分散している。均質かつ微細に分散しているかどうかは、硬化後の樹脂板を四酸化ルテニウムにて染色し、その断面を透過型電子顕微鏡で得た写真で確認することにより、判断できる。四酸化ルテニウムによる染色により、ポリシロキサンドメインが染色される。ポリシロキサンドメインの平均ドメイン径は、微細であるほど破断点歪が向上し、靭性改善効果が発現するために好ましい。ポリシロキサンドメインの平均ドメイン径は、上述の透過型電子顕微鏡写真から任意100個のドメインの直径を特定し、算術平均を求めることにより算出することができる。ドメインが真球状でない場合は、ドメインの最大径をその直径とする。
【0099】
本手法により求められたポリシロキサンドメインの平均ドメイン径は、好ましくは20μ m以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm 以下であり、特に好ましくは500nm以下であり、著しく好ましくは200nm以下であり、最も好ましくは100nm以下である。平均ドメイン径の下限は通常10nmである。
【0100】
以上、本発明のフェノール性水酸基を含有するブロック共重合体は、エポキシ樹脂硬化物中で良好に分散するために、エポキシ樹脂硬化物を低弾性率化かつ高靭性化することができ、さらにエポキシ樹脂組成物の流動性を向上することが可能である。これらのことから、本発明のブロック共重合体は、エポキシ樹脂の低応力化剤として極めて有用である。
【0101】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中、用いる測定方法は下記のとおりである。
【実施例0102】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中、用いる測定方法は下記のとおりである。
【0103】
(1)重量平均分子量の測定
ブロック共重合体中間体およびブロック共重合体中間体にフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]を反応させて得られたブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法を用いて、下記条件にて測定し、ポリメタクリル酸メチルによる較正曲線と対比させて分子量を算出した。
装置:株式会社島津製作所 LC-20ADシリーズ
カラム:昭和電工株式会社 KF-806L×2
流速:1.0mL/min
移動相:テトラヒドロフラン
検出:示差屈折率計
カラム温度:40℃。
【0104】
(2)カルボキシル基含有量の定量
JISK0070(1992)に従い、ブロック共重合体中間体0.5gをテトラヒドロフラン10gに溶解し、フェノールフタレインを指示薬として0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウムで滴定し、カルボキシル基含有量を定量した。
【0105】
(3)フェノール性水酸基含有量の定量
JISK0070(1992)に従い、無水酢酸2.5gを100mLメスフラスコに量り取り、ピリジンを加えて全量を100mLとした。ブロック共重合体1.0gに前述の無水酢酸ピリジン溶液5mLを加え、100℃に加熱した。1時間後、フラスコを放冷したのちに水1mLを加えて、再び100℃で1時間加熱をし、フェノールフタレインを指示薬として0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウムで滴定した。同様にして空試験も行い、フェノール性水酸基含有量を定量した。
【0106】
(4)ブロック[A](シリコーン)由来の構造の含有量(シリコーン比率)の計算方法
ブロック共重合体中間体におけるシリコーン比率は、ブロック共重合体10~15mgを重クロロホルム0.6mL中でH NMR測定(500MHz、積算回数256回)し、得られたスペクトルの化合物[A’]に由来する構造のシグナル強度、化合物[B’]に由来する構造のシグナル強度、および結合剤[C1’]に由来する構造のシグナル強度から、ブロック共重合体中間体全体の質量に対する化合物[A’]に由来する構造の質量の割合を算出することで求めた。ブロック共重合体中間体にフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]を反応させて得られたブロック共重合体のシリコーン比率は、上記と同様の方法でブロック共重合体のH NMR測定を行い、得られたスペクトルの化合物[A’]に由来する構造のシグナル強度、化合物[B’]に由来する構造のシグナル強度、結合剤[C1’]に由来する構造のシグナル強度、およびフェノール性水酸基を有する化合物[C2’]に由来する構造のシグナル強度から、ブロック共重合体全体の質量に対する化合物[A’]に由来する構造の質量の割合を算出することで求めた。
【0107】
(5)粘度測定
各実施例に示した混合比でエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、硬化促進剤およびブロック共重合体を混合した組成物の粘度を、レオメーター(Anton Paar社製 MCR501)を用いて下記条件にて測定し、170℃における粘度を求めた。
治具:φ25mmパラレルプレート
周波数:0.5Hz
ひずみ:100%
ギャップ:1mm
測定温度:70℃~220℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:窒素
【0108】
(6)曲げ弾性率および破断点歪みの測定
ポリシロキサン-ポリアルキレングリコールブロック共重合体が分散したエポキシ樹脂硬化物を幅10mm、長さ80mm、厚さ4mmにカットし試験片を得た。テンシロン万能試験機(TENSIRON TRG-1250、エー・アンド・デイ社製)を用い、JISK7171(2008)に従い、支点間距離64mm、試験速度2mm/分の条件で3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率および破断点歪みを測定した。測定温度は室温(23℃)、測定数はn=5とし、その平均値を求めた。
【0109】
<ブロック共重合体中間体(連結セグメントにエステル結合および/またはアミド結合を含むブロック共重合体)の合成>
[中間体合成例1]
300mLのセパラブルフラスコ中に、化合物[A’]として両末端水酸基変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、BY-16-201、重量平均分子量3100)を30g、化合物[B’]としてポリプロピレングリコール(三洋化成工業株式会社製、ニューポールPP-2,000、ジオール型、重量平均分子量4,000)を60g、および連結剤[C1’]としてピロメリット酸無水物(東京化成工業株式会社製、分子量218g/mol)を9.8g加え、窒素置換を行った。その後、160℃に加熱して8時間反応させ、ブロック共重合体中間体を得た。得られたブロック共重合体中間体のシリコーン比率は30質量%、カルボキシル基含有量は0.9mmol/g、数平均分子量は7,400、重量平均分子量は15,000であった。結果を表1に示す。
【0110】
[中間体合成例2]
化合物[A’]として両末端水酸基変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、BY-16-201、重量平均分子量3100)を29g、化合物[B’]としてポリプロピレングリコール(三洋化成工業株式会社製、ニューポールPP-2,000、ジオール型、重量平均分子量4,000)を61g、および連結剤[C1’]として4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(新日本理化株式会社製、分子量300g/mol)を7.3gに変更した以外は中間体合成例1と同様にブロック共重合体中間体を得た。得られたブロック共重合体中間体のシリコーン比率は30質量%、カルボキシル基含有量は0.5mmol/g、数平均分子量は16,400、重量平均分子量は29,800であった。結果を表1に示す。
【0111】
[中間体合成例3]
化合物[A’]として両末端水酸基変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF6000、重量平均分子量1600)を33g、化合物[B’]として両末端アミノ基変性ポリプロピレングリコール(HUNTSMAN社製、ジェファーミンD-2,000、ジアミン型、重量平均分子量3700)を57g、連結剤[C1’]としてピロメリット酸無水物(東京化成工業株式会社製、分子量218g/mol)を20.5gに変更した以外は中間体合成例1と同様にブロック共重合体中間体を得た。得られたブロック共重合体中間体のシリコーン比率は30質量%、カルボキシル基含有量は1.7mmol/g、数平均分子量は3,300、重量平均分子量は7,100であった。結果を表1に示す。
【0112】
[中間体合成例4]
化合物[A’]として両末端水酸基変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、BY-16-201、重量平均分子量3100)を70g、化合物[B’]として両末端アミノ基変性ポリプロピレングリコール(HUNTSMAN社製、ジェファーミンD-400、ジアミン型、重量平均分子量430)を20g、連結剤[C1’]として4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(新日本理化株式会社製、分子量300g/mol)を10.5gに変更した以外は中間体合成例1と同様にブロック共重合体中間体を得た。得られたブロック共重合体中間体のシリコーン比率は70質量%、カルボキシル基含有量は0.7mmol/g、数平均分子量は6,100、重量平均分子量は11,700であった。結果を表1に示す。
【0113】
[中間体合成例5]
化合物[A’]として両末端水酸基変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、BY-16-201、重量平均分子量3100)を15g、化合物[B’]としてポリプロピレングリコール(三洋化成工業株式会社製、ニューポールPP-2,000、ジオール型、重量平均分子量4,000)を75g、連結剤[C1’]として5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物(新日本理化株式会社製、分子量264g/mol)を10.8gに変更した以外は中間体合成例1と同様にブロック共重合体中間体を得た。得られたブロック共重合体中間体のシリコーン比率は15質量%、カルボキシル基含有量は0.8mmol/g、数平均分子量は82,000、重量平均分子量は147,000であった。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
<ブロック共重合体(連結セグメントにフェノール性水酸基を有するブロック共重合体)の合成>
[合成例1]
100mLのセパラブルフラスコ中に、中間体合成例1で示したブロック共重合体中間体を20gおよび化合物[C2’]として2-(4-ヒドロキシルフェニル)-2-オキサゾリン(分子量163g/mol)を2.9g加えて、窒素置換を行った。その後、160℃に加熱して6時間反応させることで、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体のシリコーン比率は30質量%、フェノール性水酸基含有量は0.9mmol/g、数平均分子量は7,800、重量平均分子量は15,100であった。結果を表2に示す。
【0116】
[合成例2]
中間体合成例2で示したブロック共重合体中間体を20gおよび化合物[C2’]として2-(4-ヒドロキシルフェニル)-2-オキサゾリン(分子量163g/mol)を1.6gに変更した以外は、合成例1と同様に反応させることで、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体のシリコーン比率は30質量%、フェノール性水酸基含有量は0.5mmol/g、数平均分子量は17,000、重量平均分子量は30,500であった。結果を表2に示す。
【0117】
[合成例3]
中間体合成例2で示したブロック共重合体中間体を20g、化合物[C2’]として2-(4-ヒドロキシルフェニル)-2-オキサゾリン(分子量163g/mol)を0.65g、およびカルボキシル基封鎖剤として2-エチル-2-オキサゾリン(東京化成工業株式会社製、分子量99g/mol)を0.59gに変更した以外は、合成例1と同様に反応させることで、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体のシリコーン比率は30質量%、フェノール性水酸基含有量は0.2mmol/g、数平均分子量は16,000、重量平均分子量は31,200であった。結果を表2に示す。
【0118】
[合成例4]
中間体合成例3で示したブロック共重合体中間体を20gおよび化合物[C2’]として2-(4-ヒドロキシルフェニル)オキシラン(分子量136g/mol)を4.6gに変更した以外は、合成例1と同様に反応させることで、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体のシリコーン比率は30質量%、フェノール性水酸基含有量は1.7mmol/g、数平均分子量は3,600、重量平均分子量は7,200であった。結果を表2に示す。
【0119】
[合成例5]
中間体合成例4で示したブロック共重合体中間体を20gおよび化合物[C2’]として4-[(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)メチル]フェノール(分子量177g/mol)を2.5gに変更した以外は、合成例1と同様に反応させることで、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体のシリコーン比率は70質量%、フェノール性水酸基含有量は0.7mmol/g、数平均分子量は5,500、重量平均分子量は12,000であった。結果を表2に示す。
【0120】
[合成例6]
中間体合成例3で示したブロック共重合体中間体を20gおよび化合物[C2’]として2-(4-ヒドロキシルフェニル)オキシラン(分子量136g/mol)を2.2gに変更した以外は、合成例1と同様に反応させることで、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体のシリコーン比率は15質量%、フェノール性水酸基含有量は0.8mmol/g、数平均分子量は68,000、重量平均分子量は151,000であった。結果を表2に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
<エポキシ樹脂硬化物の作製>
[実施例1]
エポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、“jER”(登録商標)YX4000H)30.12g、および硬化剤としてフェノールノボラック型硬化剤(明和化成株式会社製、H-1)21.76gを150ccのステンレス製ビーカーに秤量し、120℃のオーブンにて溶解し、均一にした。その後、添加剤として合成例1で得られたブロック共重合体17.16g、硬化促進剤としてテトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート0.3gを加え、自公転ミキサー「あわとり練太郎」(株式会社シンキー製)を用いて、2000rpm、80kPa、1.5分間の混合を1回、2000rpm、50kPa、1.5分間の撹拌を1回、2000rpm、0.2kPa、1.5分間の撹拌を2回行い、未硬化のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0123】
この未硬化エポキシ樹脂組成物を、4mm厚みの“テフロン”(登録商標)製スペーサーおよび離型フィルムをセットしたアルミ製モールド中に注入し、オーブンに入れた。オーブンの温度を80℃にセットし、5分間保持後、1.5℃/分の昇温速度で175℃まで昇温し、4時間硬化し、厚さ4mmのエポキシ樹脂硬化物を得た。
【0124】
得られたエポキシ樹脂硬化物を、幅10mm、長さ80mmにカットし、上記の方法により曲げ弾性率および破断点歪みを測定したところ、曲げ弾性率2.5GPa、破断点歪み14.6%であった。170℃における粘度は7Pa・sであった。結果を表3に示す。
【0125】
[実施例2]
合成例1で得られたブロック共重合体を合成例2で得られたブロック共重合体に変更した以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率は2.4GPa、破断点歪みは12.5%であった。170℃における粘度は7Pa・sであった。結果を表3に示す。
【0126】
[実施例3]
合成例1で得られたブロック共重合体を合成例3で得られたブロック共重合体に変更した以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率は2.4GPa、破断点歪みは10.3%であった。170℃における粘度は5Pa・sであった。結果を表3に示す。
【0127】
[実施例4]
合成例1で得られたブロック共重合体を合成例4で得られたブロック共重合体に変更した以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率は2.8GPa、破断点歪みは14.8%であった。170℃における粘度は10Pa・sであった。結果を表3に示す。
【0128】
[実施例5]
合成例1で得られたブロック共重合体を合成例5で得られたブロック共重合体に変更した以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率は2.1GPa、破断点歪みは11.1%であった。170℃における粘度は6Pa・sであった。結果を表3に示す。
【0129】
[実施例6]
合成例1で得られたブロック共重合体を合成例6で得られたブロック共重合体に変更した以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率は2.9GPa、破断点歪みは12.3%であった。170℃における粘度は16Pa・sであった。結果を表3に示す。
【0130】
[比較例1]
合成例1で得られたブロック共重合体を使用しなかった以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率は3.1GPa、破断点歪みは8.7%であった。170℃における粘度は4Pa・sであった。結果を表3に示す。
【0131】
[比較例2]
合成例1で得られたブロック共重合体を両末端カルボキシル基変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、X-22-162C)に変更した以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率は2.3GPa、破断点歪みは9.4%であった。170℃における粘度は31Pa・sであった。結果を表3に示す。
【0132】
[比較例3]
合成例1で得られたブロック共重合体を両末端フェノール性水酸基変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF-2201)に変更した以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率は2.2GPa、破断点歪みは8.9%であった。170℃における粘度は5Pa・sであった。結果を表3に示す。
【0133】
[比較例4]
合成例1で得られたブロック共重合体をポリプロピレングリコール(三洋化成株式会社製、ニューポールPP4000)に変更した以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率は3.4GPa、破断点歪みは8.3%であった。170℃における粘度は7Pa・sであった。結果を表3に示す。
【0134】
[比較例5]
合成例1で得られたブロック共重合体を中間体合成例2で得られたブロック共重合体中間体に変更した以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率は2.4GPa、破断点歪みは13.5%であった。170℃における粘度は48Pa・sであった。結果を表3に示す。
【0135】
【表3】