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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121892
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ファイバレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20230825BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20230825BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H01S3/067
H01S3/10 Z
G02B6/036
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025225
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】栗原 拓哉
【テーマコード(参考)】
2H250
5F172
【Fターム(参考)】
2H250AB03
2H250AB07
2H250AD03
2H250AE11
2H250AE72
2H250AE73
2H250AE74
2H250AE75
2H250AE76
2H250AE77
2H250AG02
2H250AG17
2H250AG27
2H250AH12
2H250AH32
2H250AH33
5F172AE13
5F172AF01
5F172AF02
5F172AF03
5F172AF05
5F172AF06
5F172AF15
5F172AM03
5F172AM04
5F172AM08
5F172EE15
5F172EE16
5F172EE19
5F172NQ34
5F172NR12
(57)【要約】
【課題】出力されるレーザ光の集光性を高く維持しつつ、ビーム特性を改善することができるファイバレーザ装置を提供する。
【解決手段】ファイバレーザ装置1は、活性元素が添加されたコア11を含む増幅用光ファイバ10と、活性元素を励起する励起光を出射可能な励起光源3と、増幅用光ファイバ10において生成されるレーザ光の波長においてシングルモード又はフューモードの光を伝搬させることが可能なコア50を含み、レーザ光を出力可能な出力端6を有するデリバリファイバ5とを備える。デリバリファイバ5は、少なくとも上記出力端6において、中心に位置する中心コア領域61と、中心コア領域61の周囲を覆い、中心コア領域61の屈折率よりも高い屈折率を有する外側コア領域62と、外側コア領域62の周囲を覆い、外側コア領域62の屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド領域63とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性元素が添加されたコアを含む増幅用光ファイバと、
前記活性元素を励起する励起光を出射可能な励起光源と、
前記増幅用光ファイバにおいて生成されるレーザ光の波長においてシングルモード又はフューモードの光を伝搬させることが可能なコアを含み、前記レーザ光を出力可能な出力端を有するデリバリファイバと
を備え、
前記デリバリファイバは、少なくとも前記出力端において、半径方向に沿って屈折率が変化する複数の領域により構成される多段屈折率構造を有し、
前記多段屈折率構造は、
前記多段屈折率構造の中心に位置し、第1の屈折率を有する中心コア領域と、
前記中心コア領域の周囲を覆い、前記第1の屈折率よりも高い第2の屈折率を有する外側コア領域と、
前記外側コア領域の周囲を覆い、前記第1の屈折率よりも低い第3の屈折率を有するクラッド領域と
を含む、
ファイバレーザ装置。
【請求項2】
前記デリバリファイバは、前記デリバリファイバの全長にわたって前記多段屈折率構造を有する、請求項1に記載のファイバレーザ装置。
【請求項3】
前記増幅用光ファイバは前記多段屈折率構造を有する、請求項1又は2に記載のファイバレーザ装置。
【請求項4】
前記増幅用光ファイバの上流側に接続され、前記増幅用光ファイバで増幅される光を第1の反射率で反射する高反射部と、
前記増幅用光ファイバの下流側に接続され、前記増幅用光ファイバで増幅される光を前記第1の反射率よりも低い第2の反射率で反射する低反射部と
をさらに備え、
少なくとも前記高反射部から前記デリバリファイバの前記出力端に至るまでの光導波路は前記多段屈折率構造を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のファイバレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバレーザ装置に係り、特にレーザ光を出力するデリバリファイバを含むファイバレーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザは、従来から金属材料の加工に用いられてきた炭酸ガスレーザと比べると、そのビーム品質が良く、ビームスポットを小さくすることができ、またパワー密度も大きいため、近年、金属材料などの切断や溶接、切削などの加工を行うために用いられることが多くなってきている。しかし、銅やアルミニウムなどの材料は、ファイバレーザの発振波長の光に対する吸収率が鉄などと比べて低く、これらの材料を加工するためには高いパワー密度のビームを照射する必要があり、従来から広く普及しているマルチモードファイバレーザでは加工が難しい。このため、銅やアルミニウムなどの材料を加工する際には、発振されるレーザ光の大部分が基本モードからなり、マルチモードファイバレーザに比べて高いパワー密度のレーザ光を出射可能なシングルモードファイバレーザを使用することが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、シングルモードファイバレーザから出力されるレーザ光は、図4Aに示すようなガウシアン形のビームプロファイルを有しているが、このようなガウシアン形のビームプロファイルにおいてはビームの中心部分のパワー密度が特に高くなる。しかしながら、中心部分のパワー密度が高くなることで、レーザ加工を行う際にレーザ光の照射により溶融した金属がさらに蒸発して加工スポットの周囲に飛散する現象(スパッタ)が生じやすくなる。このようなスパッタ現象が発生すると、金属材料の強度の低下や外観的な不良が生じ、レーザ加工の品質が低下する。このため、ファイバレーザから出力されるレーザ光の集光性を高く維持しつつも、レーザ光の中心部分のパワーが過度に高くならないようにビーム特性を改善できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-139857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、出力されるレーザ光の集光性を高く維持しつつ、ビーム特性を改善することができるファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、出力されるレーザ光の集光性を高く維持しつつ、ビーム特性を改善することができるファイバレーザ装置が提供される。このファイバレーザ装置は、活性元素が添加されたコアを含む増幅用光ファイバと、上記活性元素を励起する励起光を出射可能な励起光源と、上記増幅用光ファイバにおいて生成されるレーザ光の波長においてシングルモード又はフューモードの光を伝搬させることが可能なコアを含み、上記レーザ光を出力可能な出力端を有するデリバリファイバとを備える。上記デリバリファイバは、少なくとも上記出力端において、半径方向に沿って屈折率が変化する複数の領域により構成される多段屈折率構造を有する。この多段屈折率構造は、上記多段屈折率構造の中心に位置し、第1の屈折率を有する中心コア領域と、上記中心コア領域の周囲を覆い、上記第1の屈折率よりも高い第2の屈折率を有する外側コア領域と、上記外側コア領域の周囲を覆い、上記第1の屈折率よりも低い第3の屈折率を有するクラッド領域とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の第1の実施形態におけるファイバレーザ装置の構成を模式的に示す図である。
図2図2は、図1に示すファイバレーザ装置における増幅用光ファイバの構造を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示すファイバレーザ装置におけるデリバリファイバの構造を屈折率とともに模式的に示す断面図である。
図4A図4Aは、シングルモードファイバレーザから出力されるレーザ光のビームプロファイルの一例を模式的に示す図である。
図4B図4Bは、図1に示すファイバレーザ装置から出力されるレーザ光のビームプロファイルの一例を模式的に示す図である。
図4C図4Cは、図1に示すファイバレーザ装置から出力されるレーザ光のビームプロファイルの他の例を模式的に示す図である。
図5図5は、同一のパワーを有するレーザ光におけるビームプロファイルの違いを説明するための模式図である。
図6図6は、図1に示すファイバレーザ装置の変形例を模式的に示す図である。
図7図7は、本発明の第2の実施形態におけるファイバレーザ装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るファイバレーザ装置の実施形態について図1から図7を参照して詳細に説明する。図1から図7において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図7においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0009】
図1は、本発明の第1の実施形態におけるファイバレーザ装置1の構成を模式的に示す図である。図1に示すように、ファイバレーザ装置1は、光共振器2と、光共振器2の一端側(上流側)から光共振器2に励起光を供給する複数の励起光源3と、複数の励起光源3から出力される励起光を結合して光共振器2に導入する光コンバイナ4と、光共振器2の他端側(下流側)に接続されるデリバリファイバ5とを含んでいる。デリバリファイバ5は、レーザ光Lを出力可能な出力端6を有している。なお、本明細書では、特に言及がない場合には、光共振器2からデリバリファイバ5の出力端6に向かってレーザ光が伝搬する方向を「下流側」といい、それとは逆の方向を「上流側」ということとする。
【0010】
光共振器2は、レーザ光を増幅可能な増幅用光ファイバ10と、所定の波長帯(例えば1070nm)の光を高い反射率(例えば100%近い反射率)で反射する高反射部21と、この波長の光を高反射部21よりも低い反射率(例えば10%の反射率)で反射する低反射部22とを含んでいる。高反射部21及び低反射部22は、例えば、光の伝搬方向に沿って周期的に光ファイバの屈折率を変化させて形成したファイバブラッググレーティング(FBG)やミラーにより構成される。図1に示す例では、高反射部21及び低反射部22をファイバブラッググレーティングにより構成している。
【0011】
高反射部21と増幅用光ファイバ10とは融着接続部31において互いに融着接続されており、高反射部21と光コンバイナ4の光ファイバ4Aとは融着接続部32において互いに融着接続されている。また、低反射部22と増幅用光ファイバ10とは融着接続部33において互いに融着接続されており、低反射部22とデリバリファイバ5とは融着接続部34において互いに融着接続されている。
【0012】
図2は、増幅用光ファイバ10の構造を模式的に示す断面図である。図2に示すように、増幅用光ファイバ10は、コア11と、コア11の周囲を覆う内側クラッド層12と、内側クラッド層12の周囲を覆う外側クラッド層13とを有している。コア11は、例えば、石英に屈折率を上昇させるアルミニウムなどの元素を添加し、さらにその少なくとも一部に活性元素を添加することにより形成される。コア11に添加される活性元素としては、例えばイッテルビウム(Yb)やエルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)などの希土類元素、ビスマス(Bi)やクロム(Cr)などが挙げられる。本実施形態では、Ybを増幅用光ファイバ10のコア11に添加する例について説明するが、これに限られるものではない。
【0013】
内側クラッド層12は、例えばドーパントが添加されない石英から形成される。内側クラッド層12の屈折率はコア11の屈折率よりも低くなっており、コア11の内側には光導波路が形成される。外側クラッド層13は、例えば紫外線硬化樹脂から形成される。外側クラッド層13の屈折率は内側クラッド層12の屈折率よりも低くなっており、内側クラッド層12の内側にも光導波路が形成される。
【0014】
励起光源3のそれぞれは、例えばGaAs系半導体を材料とするファブリペロー型の半導体レーザ素子を含むものであり、例えば中心波長915nmの励起光を生成するものである。励起光源3から延びる光ファイバ3Aは、融着接続部35において光コンバイナ4の光ファイバ4Bと融着接続されている。光コンバイナ4は、複数の励起光源3から出力される励起光を結合してこの励起光を増幅用光ファイバ10の内側クラッド層12に導入するように構成されている。
【0015】
図3は、デリバリファイバ5の構造を屈折率とともに模式的に示す断面図である。図3に示すように、デリバリファイバ5は、コア50と、コア50の周囲を覆うクラッド51と、クラッド51の周囲を覆う被覆層52とを有している。クラッド51の屈折率はコア50の屈折率よりも低くなっており、コア50の内側には光導波路が形成される。例えば、コア50は石英に屈折率を上昇させるアルミニウムなどの元素を添加することにより形成され、クラッド51は石英から形成される。クラッド51の屈折率は例えば1.45である。
【0016】
本実施形態におけるデリバリファイバ5は、半径方向に沿って屈折率が変化する複数の領域から構成される多段屈折率構造60を有している。具体的には、図3に示すように、デリバリファイバ5は、コア50の中心に位置し、クラッド51の屈折率以上の屈折率を有する中心コア領域61と、中心コア領域61の周囲を覆い、中心コア領域61の屈折率よりも高い屈折率を有する外側コア領域62と、外側コア領域62の周囲を覆い、中心コア領域61の屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド領域63とから構成される多段屈折率構造60を有している。例えばクラッド領域63に対する中心コア領域61の比屈折率差は0.01%~0.09%、クラッド領域63に対する外側コア領域62の比屈折率差は0.1%~0.15%である。
【0017】
光共振器2において、増幅用光ファイバ10の内側クラッド層12を伝搬する励起光は、コア11を通過する際にYbに吸収され、このYbが励起されて自然放出光が生じる。Ybの励起により生じた自然放出光は、高反射部21と低反射部22との間で再帰的に反射され、特定の波長(例えば1064nm)の光が増幅されてレーザ発振が生じる。光共振器2で増幅されたレーザ光は、増幅用光ファイバ10のコア11内を伝搬し、その一部が低反射部22を透過して下流側に伝搬する。低反射部22を透過したレーザ光Lは、デリバリファイバ5を通って出力端6から例えば金属材料などの加工対象物Wに向けて出射される。
【0018】
本実施形態におけるデリバリファイバ5のコア50は、増幅用光ファイバ10において増幅されるレーザ光の波長(例えば1064nm)の光が伝搬する場合に、シングルモードの光又はフューモードの光が伝搬できるように構成されている。例えば、フューモードの光が伝搬できるようにコア50が構成されている場合、基本モードであるLP01モードの光に加えて、LP11モードの光もコア50を伝搬する。ここで、フューモードとは2から10程度のLP(Linearly Polarized)モードを意味する。このように、デリバリファイバ5のコア50にシングルモードの光又はフューモードの光を伝搬させるようにすることで、デリバリファイバ5のコア50にマルチモードの光を伝搬させる場合と比較して、出力されるレーザ光のパワー密度を上げることができる。
【0019】
本実施形態におけるデリバリファイバ5は、上述したような多段屈折率構造60を有しており、クラッド領域63に対する中心コア領域61の比屈折率差が外側コア領域62の比屈折率差よりも小さいため、外側コア領域62における光の閉じ込め効果が中心コア領域61における光の閉じ込め効果よりも高くなる。したがって、このような多段屈折率構造60にレーザ光を伝搬させると、図4Aに示すようなガウシアン形のビームプロファイルに比べて中心コア領域61におけるパワー密度を低くすることができる。このため、デリバリファイバ5の出力端6からは、図4Bに示すようなリング形のビームプロファイルや図4Cに示すようなトップハット形のビームプロファイルのレーザ光Lを出射することができる。
【0020】
図5は、同一のパワーを有するレーザ光におけるビームプロファイル(光強度分布)の違いを説明するための模式図である。図5では、従来のシングルモードファイバレーザから出射されるガウシアン形のビームプロファイルと、上述した多段屈折率構造60を有するデリバリファイバ5を用いたファイバレーザ装置1から出射されるリング形のビームプロファイルとが示されている。図5に示すように、ガウシアン形のビームプロファイルを有するレーザ光では、中心部分の光強度が半径方向外側の光強度に比べて特に高い(図5のAで示す部分参照)。上述したように、この中心部分のパワー密度の高さがスパッタ現象及びレーザ加工の品質の低下につながる。
【0021】
一方、同一のパワーでリング形のビームプロファイルを有するレーザ光を照射したとき、中心部分のパワー密度はガウシアン形のビームプロファイルよりも下がり、半径方向外側のパワー密度はガウシアン形のビームプロファイルよりも高くなる(図5のBで示す部分参照)。このように、リング形のビームプロファイルにおいてはパワー密度のピークをリング状にすることができる。したがって、レーザエネルギーの大部分が照射される領域をガウシアン形のビームプロファイルの場合と大きく変えることなく、中心部分における局所的なパワー密度をガウシアン形のビームプロファイルに比べて下げることができる。したがって、レーザ光の集光性を高く維持しつつも、レーザ光の中心部分のパワーが過度に高くならないようにビーム特性を改善することができる。これによってスパッタ現象が発生することが抑制される。
【0022】
また、上述したリング形のビームプロファイルは、裾の部分に関してもガウス形のビームプロファイルに対して利点を有している。裾の部分の傾きが小さいと、照射されるレーザエネルギーが周囲に広がりやすいため、照射されたレーザ光による熱が周囲に影響を及ぼすことが考えられる。一方、裾の部分の傾きが大きいと、照射されるレーザエネルギーが周囲に広がりにくいため、意図する領域に集中的にレーザ光を照射することができる。図5に示すように、リング形のビームプロファイルの裾の部分は、ガウス形のビームプロファイルの裾の部分に比べて傾きが大きいので(図5のCで示す部分参照)、このようなリング形のビームプロファイルを有するレーザ光を用いることで、意図する領域に集中的にレーザエネルギーを照射することができ、また周囲への熱の影響を低減することができる。
【0023】
上述した実施形態においては、デリバリファイバ5は、その全長にわたって上述した多段屈折率構造60を有しているものとして説明したが、上述したようにファイバレーザ装置1から出力されるレーザ光Lの集光性を高く維持しつつ、ビーム特性を改善するためには、少なくともデリバリファイバ5の出力端6において上述した多段屈折率構造60を有していればよい。また、図6に示すように、デリバリファイバ5と低反射部22との間に、多段屈折率構造60を有していないデリバリファイバ7を接続してもよい。図6に示す例では、デリバリファイバ7と低反射部22とが融着接続部36で互いに融着接続され、デリバリファイバ7とデリバリファイバ5とが融着接続部37で互いに融着接続される。
【0024】
上述した実施形態におけるファイバレーザ装置1は、光共振器2の上流側から励起光を導入する前方励起型のファイバレーザ装置であったが、本発明は、光共振器2の下流側から励起光を導入する後方励起型のファイバレーザ装置にも適用できるものである。さらに、本発明は、図7に示すような光共振器2の両側から励起光を導入する双方励起型のファイバレーザ装置201にも適用できるものである。
【0025】
図7に示すファイバレーザ装置201は、図1に示す構成に加えて、光共振器2の下流側から光共振器2に励起光を供給する複数の励起光源8と、複数の励起光源8から出力される励起光を結合して光共振器2に導入する光コンバイナ9とを含んでいる。低反射部22と光コンバイナ9の光ファイバ9Aとは融着接続部234において互いに融着接続されている。また、励起光源8から延びる光ファイバ8Aは、融着接続部235において光コンバイナ9の光ファイバ9Bと融着接続されている。光コンバイナ9の光ファイバ9Cと上述したデリバリファイバ5とは融着接続部236において互いに融着接続されている。光コンバイナ9は、複数の励起光源8から出力される励起光を結合してこの励起光を増幅用光ファイバ10の内側クラッド層12に導入するとともに、光共振器2で増幅され、低反射部22を透過したレーザ光をデリバリファイバ5のコア50に導入するように構成されている。このような構成においても、デリバリファイバ5の少なくとも出力端6において上述した多段屈折率構造60を採用することで、レーザ光の集光性を高く維持しつつ、レーザ光の中心部分のパワーが過度に高くならないようにビーム特性を改善することができる。
【0026】
上述したそれぞれの例において、デリバリファイバ5に加えて、増幅用光ファイバ10も多段屈折率構造を有していてもよい。すなわち、増幅用光ファイバ10のコア11が、コア11の中心に位置し、内側クラッド層12の屈折率以上の屈折率を有する中心コア領域と、この中心コア領域の周囲を覆い、中心コア領域の屈折率よりも高い屈折率を有する外側コア領域とによって構成され、増幅用光ファイバ10の内側クラッド層12が、コア11の外側コア領域の周囲を覆い、コア11の中心コア領域の屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド領域によって構成されていてもよい。このように、増幅用光ファイバ10も多段屈折率構造を有することで、コア11を伝搬する光を外周側に引き寄せることができるので、実効コア断面積を大きくすることができる。したがって、コア11を伝搬する光のパワー密度を下げることができ、非線形光学効果による影響を抑制することができる。
【0027】
また、レーザ光は、光共振器2の高反射部21からデリバリファイバ5の出力端6に至るまでの導波路を伝搬するが、この導波路は複数の光ファイバ部品を接続することで構成されている。これらの異なる光ファイバ部品間では光損失が生じると考えられるため、光共振器2の高反射部21からデリバリファイバ5の出力端6に至るまでの導波路をすべて上述した多段屈折率構造とし、光ファイバ部品間での光損失を低減してもよい。具体的には、図1に示す例では、高反射部21を含む光ファイバ、増幅用光ファイバ10、低反射部22を含む光ファイバ、及びデリバリファイバ5を多段屈折率構造としてもよい。また、図7に示す例では、高反射部21を含む光ファイバ、増幅用光ファイバ10、低反射部22を含む光ファイバ、光コンバイナ9、及びデリバリファイバ5を多段屈折率構造としてもよい。
【0028】
以上述べたように、本発明の一態様によれば、出力されるレーザ光の集光性を高く維持しつつ、ビーム特性を改善することができるファイバレーザ装置が提供される。このファイバレーザ装置は、活性元素が添加されたコアを含む増幅用光ファイバと、上記活性元素を励起する励起光を出射可能な励起光源と、上記増幅用光ファイバにおいて生成されるレーザ光の波長においてシングルモード又はフューモードの光を伝搬させることが可能なコアを含み、上記レーザ光を出力可能な出力端を有するデリバリファイバとを備える。上記デリバリファイバは、少なくとも上記出力端において、半径方向に沿って屈折率が変化する複数の領域により構成される多段屈折率構造を有する。この多段屈折率構造は、上記多段屈折率構造の中心に位置し、第1の屈折率を有する中心コア領域と、上記中心コア領域の周囲を覆い、上記第1の屈折率よりも高い第2の屈折率を有する外側コア領域と、上記外側コア領域の周囲を覆い、上記第1の屈折率よりも低い第3の屈折率を有するクラッド領域とを含む。
【0029】
このようなファイバレーザ装置によれば、デリバリファイバの少なくとも出力端が多段屈折率構造を有しているため、デリバリファイバの少なくとも出力端において外側コア領域における光の閉じ込め効果が中心コア領域における光の閉じ込め効果よりも高くなる。したがって、このような多段屈折率構造にレーザ光を伝搬させることにより、ガウシアン形のビームプロファイルに比べて中心コア領域におけるパワー密度を低くしたレーザ光を出射することができる。これにより、レーザ光の集光性を高く維持しつつ、レーザ光の中心部分のパワーが過度に高くならないようにビーム特性を改善することができる。
【0030】
上記デリバリファイバは、上記デリバリファイバの全長にわたって上記多段屈折率構造を有していてもよい。
【0031】
上記増幅用光ファイバが上記多段屈折率構造を有していてもよい。このように多段屈折率構造を有する増幅用光ファイバを用いることで、増幅用光ファイバのコアを伝搬する光を外周側に引き寄せることができるので、実効コア断面積を大きくすることができる。したがって、増幅用光ファイバのコアを伝搬する光のパワー密度を下げることができ、非線形光学効果による影響を抑制することができる。
【0032】
上記ファイバレーザ装置は、上記増幅用光ファイバの上流側に接続され、上記増幅用光ファイバで増幅される光を第1の反射率で反射する高反射部と、上記増幅用光ファイバの下流側に接続され、上記増幅用光ファイバで増幅される光を上記第1の反射率よりも低い第2の反射率で反射する低反射部とをさらに備えていてもよい。少なくとも上記高反射部から上記デリバリファイバの上記出力端に至るまでの光導波路が上記多段屈折率構造を有していてもよい。このように少なくとも高反射部からデリバリファイバの出力端に至るまでの光導波路を同一の構造とすることで、異なる光ファイバ部品間での光損失を低減することができる。
【0033】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1,201 ファイバレーザ装置
2 光共振器
3,8 励起光源
4,9 光コンバイナ
5,7 デリバリファイバ
6 出力端
10 増幅用光ファイバ
11 コア
12 内側クラッド層
13 外側クラッド層
21 高反射部
22 低反射部
31~37,234~236 融着接続部
50 コア
51 クラッド
52 被覆層
60 多段屈折率構造
61 中心コア領域
62 外側コア領域
63 クラッド領域
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7