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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121897
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
H01G4/30 513
H01G4/30 511
H01G4/30 201C
H01G4/30 201Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025233
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】竹口 和伸
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC02
5E001AC05
5E001AJ01
5E082AB03
5E082BC38
5E082EE04
5E082EE16
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082MM26
(57)【要約】
【課題】積層セラミックコンデンサのトレーサビリティを向上させる。
【解決手段】積層セラミックコンデンサは、セラミック素体と、第1及び第2外部電極と、を具備する。セラミック素体は、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、第1軸に垂直な第1及び第2主面と、第1軸と直交する第2軸に垂直な第1及び第2端面と、複数のセラミック層の間に交互に配置され、第1及び第2端面にそれぞれ引き出された複数の第1及び第2内部電極と、を有する。第1及び第2外部電極は、第1及び第2端面をそれぞれ被覆する。複数の第1及び第2内部電極は、相互に共通の構成を有する複数の第1及び第2標準内部電極と、複数の第1及び第2標準内部電極とは異なる構成を有する複数の第1及び第2特定内部電極と、から構成される。複数の第1及び第2特定内部電極は、セラミック素体の第1軸方向の中央部から一対の主面のいずれか一方側に寄った領域に連続して配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記第1軸に垂直な第1及び第2主面と、前記第1軸と直交する第2軸に垂直な第1及び第2端面と、前記複数のセラミック層の間に交互に配置され、前記第1及び第2端面にそれぞれ引き出された複数の第1及び第2内部電極と、を有するセラミック素体と、
前記第1及び第2端面をそれぞれ被覆する第1及び第2外部電極と、
を具備し、
前記複数の第1及び第2内部電極は、相互に共通の構成を有する複数の第1及び第2標準内部電極と、前記複数の第1及び第2標準内部電極とは異なる構成を有する複数の第1及び第2特定内部電極と、から構成され、
前記複数の第1及び第2特定内部電極は、前記セラミック素体の前記第1軸方向の中央部から前記一対の主面のいずれか一方側に寄った領域に連続して配置されている
積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記複数の第1及び第2特定内部電極は、相互に共通の構成を有する
積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記複数の第1及び第2特定内部電極は、前記複数の第1及び第2標準内部電極とは異なる平面形状を有する
積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
請求項3に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記複数の第1及び第2特定内部電極は、前記複数の第1及び第2標準内部電極に空隙部が設けられた平面形状を有する
積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
請求項4に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記複数の第1及び第2特定内部電極は、前記複数の第1及び第2標準内部電極と共通の矩形の輪郭を有する
積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記複数の第1及び第2特定内部電極では、前記複数の第1及び第2標準内部電極と金属材料の面密度が異なる
積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
請求項5に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記複数の第1及び第2特定内部電極では、前記複数の第1及び第2標準内部電極よりも金属材料の面密度が低い
積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記セラミック素体では、前記第1軸方向の寸法が、前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向の寸法よりも大きい
積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサのトレーサビリティに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、複数の内部電極が積層されたセラミック素体に一対の外部電極が設けられた構成を有する。一般的な積層セラミックコンデンサの製造過程では、複数のセラミックシートを積層する積層工程で得られた積層シートを切り分けることで複数のセラミック素体を一括して製造することができる。
【0003】
積層セラミックコンデンサでは、実装面積を小さく留めつつ静電容量を増大させるために、セラミック素体の積層数を増やすことが有効である。積層工程では、セラミックシートを下側から順番に1枚ずつ積み重ね、その度に加圧を繰り返すため、積層数が多い積層シートほど上部と下部とで加圧の回数に大きい差が生じる。
【0004】
積層数が多いセラミック素体では、このような加圧の回数の差に起因して、上部と下部とのいずれか一方に不良が発生しやすくなる傾向が見られる。このため、積層セラミックコンデンサでは、不良の発生に対する対策を講ずるために、製造後においてセラミック素体の上部と下部とを判別可能とすることが有用である。
【0005】
特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサでは、セラミック素体において下部カバー部に上部カバー部とは異なる色彩の識別層が設けられている。この積層セラミックコンデンサでは、色彩によって特定可能な識別層の有無によってセラミック素体の上部と下部とを視覚的に判別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-72515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサでは、識別層の色彩を変更するための添加物がセラミック素体中において拡散することで、電気的特性に悪影響が及ぶことが考えられる。このため、セラミック素体に追加の添加物を用いることなく、セラミック素体の上部と下部との判別可能とする技術が求められる。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、積層セラミックコンデンサのトレーサビリティを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミックコンデンサは、セラミック素体と、第1及び第2外部電極と、を具備する。
上記セラミック素体は、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、上記第1軸に垂直な第1及び第2主面と、上記第1軸と直交する第2軸に垂直な第1及び第2端面と、上記複数のセラミック層の間に交互に配置され、上記第1及び第2端面にそれぞれ引き出された複数の第1及び第2内部電極と、を有する。
上記第1及び第2外部電極は、上記第1及び第2端面をそれぞれ被覆する。
上記複数の第1及び第2内部電極は、相互に共通の構成を有する複数の第1及び第2標準内部電極と、上記複数の第1及び第2標準内部電極とは異なる構成を有する複数の第1及び第2特定内部電極と、から構成される。
上記複数の第1及び第2特定内部電極は、上記セラミック素体の上記第1軸方向の中央部から上記一対の主面のいずれか一方側に寄った領域に連続して配置されている。
【0010】
この積層セラミックコンデンサでは、第1及び第2標準内部電極と異なる構成の第1及び第2特定内部電極が第1及び第2主面のいずれか一方側のみに存在している。これにより、この積層セラミックコンデンサでは、製造後においても、第1及び第2特定内部電極の位置によってセラミック素体における第1主面と第2主面とを判別可能となる。
【0011】
上記複数の第1及び第2特定内部電極は、相互に共通の構成を有してもよい。
上記複数の第1及び第2特定内部電極は、上記複数の第1及び第2標準内部電極とは異なる平面形状を有してもよい。この場合、上記複数の第1及び第2特定内部電極は、上記複数の第1及び第2標準内部電極に空隙部が設けられた平面形状を有してもよい。
上記複数の第1及び第2特定内部電極は、上記複数の第1及び第2標準内部電極と共通の矩形の輪郭を有してもよい。
上記複数の第1及び第2特定内部電極では、上記複数の第1及び第2標準内部電極と金属材料の面密度が異なってもよい。この場合、上記複数の第1及び第2特定内部電極では、上記複数の第1及び第2標準内部電極よりも金属材料の面密度が低くてもよい。
上記セラミック素体では、上記第1軸方向の寸法が、上記第1軸及び上記第2軸と直交する第3軸方向の寸法よりも大きくてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によれば、積層セラミックコンデンサのトレーサビリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2】上記積層セラミックコンデンサの図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3】上記積層セラミックコンデンサの図1のB-B'線に沿った断面図である。
図4】上記積層セラミックコンデンサの標準内部電極の平面図である。
図5】上記積層セラミックコンデンサの特定内部電極の平面図である。
図6】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
図7】ステップS01で準備される標準セラミックシートの平面図である。
図8】ステップS01で準備される特定セラミックシートの平面図である。
図9】ステップS01で準備されるカバーセラミックシートの平面図である。
図10】ステップS02を示す模式図である。
図11】ステップS03を示す平面図である。
図12】上記積層セラミックコンデンサの特定内部電極の他の形態を示す平面図である。
図13】上記積層セラミックコンデンサの特定内部電極の他の形態を示す平面図である。
図14】上記積層セラミックコンデンサの特定内部電極の他の形態を示す平面図である。
図15】上記積層セラミックコンデンサの特定内部電極の他の形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10について説明する。なお、図面には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は、積層セラミックコンデンサ10に対して固定された固定座標系を規定する。
【0015】
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A'線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0016】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、Z軸と直交する第1及び第2主面M1,M2と、X軸と直交する第1及び第2端面E1,E2と、Y軸と直交する一対の側面S1,S2と、を有する6面体として構成される。
【0017】
セラミック素体11の主面M1,M2、端面E1,E2、及び側面S1,S2はいずれも、平坦面として構成される。本実施形態に係る平坦面とは、全体的に見たときに平坦と認識される面であれば厳密に平面でなくてもよく、例えば、表面の微小な凹凸形状や、所定の範囲に存在する緩やかな湾曲形状などを有する面も含まれる。
【0018】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11のZ軸方向の寸法TがY軸方向の寸法Wよりも大きい高背型として構成される。積層セラミックコンデンサ10では、例えば、セラミック素体11の寸法Tが寸法Wの1.2倍以上である。つまり、積層セラミックコンデンサ10では、セラミック素体11の寸法Tを大きくすることで大容量を確保しつつ、Y軸方向に制限された実装スペースに実装可能となる。
【0019】
また、積層セラミックコンデンサ10では、セラミック素体11のX軸方向の寸法Lが、寸法Wよりも大きければよく、寸法Tよりも小さくてもよい。積層セラミックコンデンサ10では、上記の条件を満たす範囲内においてセラミック素体11の寸法T,W,Lを任意に決定可能である。
【0020】
各外部電極14,15は、セラミック素体11の各端面E1,E2を覆っている。外部電極14,15は、セラミック素体11の各端面E1,E2から主面M1,M2及び側面S1,S2に延出している。これにより、外部電極14,15では、X-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。
【0021】
なお、外部電極14,15の形状は、図1に示すものに限定されない。例えば、外部電極14,15は、セラミック素体11の各端面E1,E2から主面M1,M2の一方のみに延び、X-Z平面に平行な断面がL字状となっていてもよい。また、外部電極14,15は、いずれの主面M1,M2及び側面S1,S2にも延出していなくてもよい。
【0022】
外部電極14,15は、金属材料を主成分として形成されている。外部電極14,15を構成する金属材料としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、及びこれらの合金などが挙げられる。なお、本実施形態で主成分とは最も含有比率の高い成分を言うものとする。
【0023】
セラミック素体11は、誘電体セラミックスで形成され、電極積層部16と、一対のカバー部17と、を有する。一対のカバー部17は、電極積層部16をZ軸方向両側から覆っている。つまり、セラミック素体11では、一対のカバー部17が主面M1,M2を構成し、電極積層部16と一対のカバー部17とが端面E1,E2及び側面S1,S2を構成する。
【0024】
セラミック素体11は、X-Y平面に沿って延びる平板状の複数のセラミック層18がZ軸方向に積層された構成を有する。電極積層部16は、複数のセラミック層18の間に配置され、X-Y平面に沿って延びるシート状の複数の第1及び第2内部電極12,13を有する。カバー部17には、内部電極12,13が配置されていない。
【0025】
内部電極12,13は、Z軸方向に沿って交互に配置され、X軸及びY軸方向の中央の対向領域において相互にZ軸方向に対向している。第1内部電極12は、対向領域から第1端面E1に引き出され、第1外部電極14に接続されている。第2内部電極13は、対向領域から第2端面E2に引き出され、第2外部電極15に接続されている。
【0026】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15間に電圧が印加されると、対向領域において内部電極12,13間の複数のセラミック層18に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0027】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層18の静電容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0028】
なお、誘電体セラミックスは、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸マグネシウム(MgTiO)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム((Ba,Ca)(Zr,Ti)O)、ジルコン酸バリウム(BaZrO)、酸化チタン(TiO)などの組成系でもよい。
【0029】
内部電極12,13は、金属材料を主成分として形成されている。内部電極12,13を構成する金属材料としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、及びこれらの合金などが挙げられる。
【0030】
セラミック素体11は、後述する積層工程(ステップS03)において複数のセラミック層18がZ軸方向下側から順番に1枚ずつ積み重ねられることで積層される。つまり、セラミック素体11では、第2主面M2に近いセラミック層18ほど早い段階で積層され、第1主面M1に近いセラミック層18ほど遅い段階で積層されている。
【0031】
詳細については積層工程(ステップS03)の項目で説明するが、積層セラミックコンデンサ10では、上記のような複数のセラミック層18の積層されるタイミングの違いに起因して、セラミック素体11の第1主面M1に近いZ軸方向上部、及び第2主面M2に近いZ軸方向下部のいずれか一方において不良が発生しやすい傾向が見られる。
【0032】
このような傾向は、本実施形態のようにセラミック素体11のZ軸方向の寸法TがY軸方向の寸法Wよりも大きい高背型の構成においてより顕著に見られる。この点、積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11において外観上の差異が見られない主面M1,M2を判別可能なように構成されている。
【0033】
このため、積層セラミックコンデンサ10では、不良の原因がセラミック素体11の主面M1,M2のいずれの側に存在しているかを判別可能となり、これにより不良の発生に対する適切な対策を講ずることが可能となる。積層セラミックコンデンサ10では、内部電極12,13をセラミック素体11の主面M1,M2を判別する目印とする。
【0034】
第1及び第2内部電極12,13は、第1及び第2標準内部電極12a,13aと、第1及び第2特定内部電極12b,13bと、から構成される。つまり、第1内部電極12は第1標準内部電極12aと第1特定内部電極12bとから構成され、第2内部電極13は第2標準内部電極13aと第2特定内部電極13bとから構成される。
【0035】
電極積層部16は、Z軸方向に区分された領域である、標準内部電極12a,13aが配置された標準領域16aと特定内部電極12b,13bが配置された特定領域16bとを有する。電極積層部16では、標準領域16aが大半の領域を占め、特定領域16bがZ軸方向の中央の中央面Cよりも第1主面側の一部の領域を占める。
【0036】
図4A,4Bは、標準領域16aにおける標準内部電極12a,13aがそれぞれ形成されたセラミック層18を1層ずつ示す平面図である。具体的に、図4Aは第1標準内部電極12aが形成されたセラミック層18を示し、図4Bは第2標準内部電極13aが形成されたセラミック層18を示している。
【0037】
図4A,4Bに示すように、標準内部電極12a,13aは、相互に共通の平面形状を有する。つまり、図4Aに示す第1標準内部電極12aと図4Bに示す第2標準内部電極13aとでは、セラミック層18のX軸方向の中心を通るY軸に平行な中心軸について相互に左右反転させた位置関係となっている。
【0038】
標準内部電極12a,13aはいずれも、矩形の輪郭の内側を隙間無く延びる平面形状を有する。標準内部電極12a,13aはいずれも、側面S1,S2から間隔をあけて設けられている。また、第1標準内部電極12aは第2端面E2から間隔をあけて設けられ、第2標準内部電極13aは第1端面E1から間隔をあけて設けられている。
【0039】
図5A,5Bは、特定領域16bにおける特定内部電極12b,13bがそれぞれ形成されたセラミック層18を1層ずつ示す平面図である。具体的に、図5Aは第1特定内部電極12bが形成されたセラミック層18を示し、図5Bは第2特定内部電極13bが形成されたセラミック層18を示している。
【0040】
図5A,5Bに示すように、特定内部電極12b,13bは、相互に共通の平面形状を有する。つまり、図5Aに示す第1特定内部電極12bと図5Bに示す第2特定内部電極13bとでは、セラミック層18のX軸方向の中心を通るY軸に平行な中心軸について相互に左右反転させた位置関係となっている。
【0041】
特定内部電極12b,13bはいずれも、標準内部電極12a,13aに空隙部Vが設けられた平面形状を有する。つまり、特定内部電極12b,13bはいずれも、標準内部電極12a,13aと同様の矩形の輪郭を有するが、空隙部Vによって隙間が形成されている点で標準内部電極12a,13aと異なる。
【0042】
図5A,5Bに示すように、特定内部電極12b,13bの空隙部Vは、端面E1,E2に引き出された辺以外の3辺の内側に沿って一連にスリット状に形成されている。スリット状の空隙部Vは、端面E1,E2まで貫通しており、特定内部電極12b,13bを内側の領域と外側の領域とに分断している。
【0043】
積層セラミックコンデンサ10では、複数の特定内部電極12b,13bが連続して配置された特定領域16bを目印として各主面M1,M2を判別することができる。つまり、主面M1,M2のうち、特定領域16bに近い方が第1主面M1であり、特定領域16bから遠い方が第2主面M2であることがわかる。
【0044】
セラミック素体11における特定領域16bの位置は、例えば、超音波顕微鏡を用いて検出することができる。つまり、超音波顕微鏡によって主面M1,M2を超音波の照射面としてセラミック素体11を観察したときに、検出される特定領域16bの深さによって当該照射面が主面M1,M2のいずれであるかがわかる。
【0045】
特定領域16bでは、特定内部電極12b,13bの空隙部Vが側面S1,S2に沿ってX軸方向に延びる2つの部分においてZ軸方向に重なっているため、超音波顕微鏡による観察では当該2つの部分において特定領域16bを特に視覚的に認識しやすくなる。これにより、特定領域16bの位置を良好に検出可能となる。
【0046】
また、特定領域16bでは、超音波顕微鏡によって良好に検出可能とするために、特定内部電極12b,13bの合計積層数を3層以上とすることが好ましい。また、特定領域16bでは、空隙部Vによる静電容量の低下を抑えるために、特定内部電極12b,13bの合計積層数を、標準内部電極12a,13a及び特定内部電極12b,13bを含めた内部電極12,13全体としての合計積層数の30%以下に留めることが好ましい。
【0047】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図6は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図7~11は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図6に沿って、図7~11を適宜参照しながら説明する。
【0048】
(ステップS01:セラミックシート準備)
ステップS01では、電極積層部16の標準領域16aを形成するための第1及び第2標準セラミックシート101a,102aと、電極積層部16の特定領域16bを形成するための第1及び第2特定セラミックシート101b,102bと、カバー部17を形成するためのカバーセラミックシート103と、を準備する。
【0049】
セラミックシート101a,101b,102a,102b,103はいずれも、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。セラミックシート101a,101b,102a,102b,103は、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。
【0050】
図7Aは、第1標準セラミックシート101aの平面図である。図7Bは、第2標準セラミックシート102aの平面図である。図8Aは、第1特定セラミックシート101bの平面図である。図8Bは、第2特定セラミックシート102bの平面図である。図9は、カバーセラミックシート103の平面図である。
【0051】
この段階では、各セラミックシート101a,102a,101b,102b,103が、個片化されていない大判のシートとして構成される。図7~9には、各積層セラミックコンデンサ10ごとに個片化する際の切断線として、X軸に平行な第1切断線LxとY軸に平行な第2切断線Lyとが一点鎖線で示されている。
【0052】
標準セラミックシート101a,102aには、標準内部電極12a,13aに対応する未焼成の導体パターン112a,113aが形成されている。特定セラミックシート101b,102bには、特定内部電極12b,13bに対応する未焼成の導体パターン112b,113bが形成されている。
【0053】
なお、内部電極が設けられないカバー部17に対応するカバーセラミックシート103には、未焼成の導体パターンが形成されていない。また、静電容量の形成に寄与しないカバー部17に対応するカバーセラミックシート103の組成は、セラミックシート101a,102a,101b,102bと異なっていてもよい。
【0054】
導体パターン112a,113a,112b,113bは、金属材料を主成分とする導体ペーストをセラミックシート101a,102a,101b,102bに塗布することによって形成される。導電性ペーストの塗布方法としては、公知の技術から任意に選択可能であり、例えば、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0055】
導体パターン112a,112b及び導体パターン113a,113bにはそれぞれ、切断線Lyに沿ったX軸方向の隙間が、切断線Ly1本置きに形成されている。導体パターン112a,112bと導体パターン113a,113bとでは、各隙間がX軸方向に沿って互い違いの配置となっている。
【0056】
(ステップS02:積層)
ステップS02では、ステップS01で準備したセラミックシート101a,102a,101b,102b,103を、図10に示すように積層することにより積層シート104を作製する。なお、図10では、説明の便宜上、セラミックシート101a,102a,101b,102b,103を相互に離間させて示している。
【0057】
積層シート104では、電極積層部16の標準領域16aに対応する位置に標準セラミックシート101a,102aがZ軸方向に交互に積層されている。また、積層シート104では、電極積層部16の特定領域16bに対応する位置に特定セラミックシート101b,102bがZ軸方向に交互に積層されている。
【0058】
また、積層シート104では、電極積層部16に対応する位置に積層されたセラミックシート101a,102a,101b,102bのZ軸方向上下の両側からカバー部17に対応するカバーセラミックシート103が積層される。カバーセラミックシート103は、カバー部17の厚みに応じた枚数が連続して積層される。
【0059】
ステップS02では、セラミックシート101a,102a,101b,102b,103をZ軸方向下側から順番に1枚ずつ積み重ね、1枚積み重ねるごとに加圧を行う。このため、積層シート104では、Z軸方向下側の部分ほど加圧の回数が多くなり、Z軸方向上側の部分ほど加圧の回数が少なくなる。
【0060】
したがって、積層シート104では、Z軸方向下部に加わるトータルの圧力が過剰になったり、Z軸方向上部において圧力が不充分となったりする場合がある。これに起因して、積層セラミックコンデンサ10では、セラミック素体11のZ軸方向上部又は下部において不良が発生しやすい傾向が見られる。
【0061】
これに対し、積層シート104では、Z軸方向上側のみに特定セラミックシート101b,102bを配置することで、Z軸方向上側と下側とで構造的差異を設けることができる。これにより、製造後のセラミック素体11においても、積層シート104におけるこの構造的差異が電極積層部16の特定領域16bとして表れる。
【0062】
(ステップS03:切断)
ステップS03では、ステップS02で得られた積層シート104を、図11に示すように切断線Lx,Lyに沿って切断することにより、未焼成のセラミック素体11が得られる。ステップS03における積層シート104の切断には、例えば、押し切り刃を備えた切断装置や、回転刃を備えたダイシング装置などを用いることができる。
【0063】
(ステップS04:焼成)
ステップS04では、ステップS03で得られたセラミック素体11を焼成する。ステップS05における焼成温度は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系材料を用いる場合には、焼成温度は1000~1300℃程度とすることができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0064】
(ステップS05:外部電極形成)
ステップS05では、ステップS04で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成することにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。ステップS05における外部電極14,15の形成方法は、公知の方法から任意に選択可能である。
【0065】
[特定領域16bの他の構成例]
セラミック素体11では、標準内部電極12a,13aとは構成の異なる特定内部電極12b,13bが連続して配置された特定領域16bによって第1主面M1側と第2主面M2側とに構造的差異が表れていればよい。したがって、積層セラミックコンデンサ10では、特定領域16bの構成が上記に限定されない。
【0066】
例えば、特定領域16bの位置は、セラミック素体11のZ軸方向の中央でなければよく、主面M1,M2のいずれか一方側に寄っていればよい。つまり、特定領域16bは、第2主面M2側に寄った位置に設けられていてもよい。また、特定領域16bは、電極積層部16の主面M1,M2の一方側の端部を構成していてもよい。
【0067】
また、特定内部電極12b,13bの平面形状は、上記に限定されない。例えば、特定内部電極12b,13bでは、図12に示すように、スリット状の空隙部Vを端面まで延出させずに、空隙部Vの全体を矩形の輪郭よりも内側に配置することで、外部電極14,15に対する接続幅を大きく確保することができる。
【0068】
更に、特定内部電極12b,13bでは、空隙部Vの形状がスリット状でなくてもよく、例えば、図13に示す円形状など、あらゆる形状であってよい。いずれの場合にも、超音波顕微鏡によってより良好に検出可能とする観点から、特定内部電極12b,13bにおいて空隙部Vの少なくとも一部がZ軸方向に重なっていることが好ましい。
【0069】
加えて、特定内部電極12b,13bでは、平面形状が標準内部電極12a,13aと異なっていれれば、空隙部Vが設けられていなくてもよい。例えば、特定内部電極12b,13bは、図14に示すように、標準内部電極12a,13aと異なる輪郭の内側を隙間無く延びる平面形状を有していてもよい。
【0070】
また、特定内部電極12b,13bに設ける標準内部電極12a,13aに対する構造的差異は、非破壊でセラミック素体11内における位置を検出可能な構成であればよく、平面形状に限定されない。非破壊でのセラミック素体11内における特定内部電極12b,13bの位置の検出には、典型的には超音波顕微鏡を用いる。
【0071】
特定内部電極12b,13bに標準内部電極12a,13aに対する構造的差異を設ける平面形状以外の構成としては、例えば、金属材料の面密度が挙げられる。標準内部電極12a,13a及び特定内部電極12b,13bでは、分散させるポアの量によって、金属材料の面密度を相互に異ならせることができる。
【0072】
特定内部電極12b,13bにおける金属材料の面密度は、例えば、ステップS01において導体パターン112b,113bを形成するために用いる導電性ペーストに添加するセラミック粉末(共材)の量によって制御可能である。つまり、セラミック粉末の量を多く添加することで金属材料の面密度を低下させることができる。
【0073】
標準内部電極12a,13aと特定内部電極12b,13bとで金属材料の面密度を異ならせることで、超音波顕微鏡による観察による像の明度によって標準領域16aと特定領域16bとを判別することが可能となる。つまり、金属材料の面密度を低くすることで、超音波顕微鏡による観察による像が暗く観察される。
【0074】
図15は、標準内部電極12a,13aよりも金属材料の面密度が低い特定内部電極12b,13bを示している。図15に示す特定内部電極12b,13bを用いた構成では、超音波顕微鏡よって特定領域16bにおいて標準領域16aよりも暗い像が観察されるため、特定領域16bの位置を検出することが可能である。
【0075】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0076】
例えば、本発明の効果は、高背型の積層セラミックコンデンサにおいてより有効に得られるが、高背型でない積層セラミックコンデンサにおいても得られる。つまり、積層セラミックコンデンサでは、任意の寸法T,W,Lのセラミック素体を有する構成においても、本発明の効果を得ることができる。
【0077】
また、本発明に係る積層セラミックコンデンサは、上記で説明した2つの外部電極を有する2端子型に限定されない。つまり、本発明に係る積層セラミックコンデンサは、3つ以上の外部電極を有する多端子型であってもよく、例えば、4つの外部電極を有する4端子型であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
12,13…内部電極
12a,13a…標準内部電極
12b,13b…特定内部電極
14,15…外部電極
16…電極積層部
16a…標準領域
16b…特定領域
17…カバー部
18…セラミック層
M1,M2…主面
E1,E2…端面
S1,S2…側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15