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特開2023-121901ポリウレタン樹脂製造用触媒、その用途、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121901
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂製造用触媒、その用途、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/20 20060101AFI20230825BHJP
   C07D 453/02 20060101ALI20230825BHJP
   C07D 487/08 20060101ALI20230825BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230825BHJP
【FI】
C08G18/20
C07D453/02
C07D487/08
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025241
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮平
【テーマコード(参考)】
4C050
4J034
【Fターム(参考)】
4C050AA03
4C050BB08
4C050CC11
4C050EE02
4C050FF01
4C050GG03
4C050HH01
4J034BA03
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DC50
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG09
4J034DQ05
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC02
4J034KC07
4J034KC17
4J034KC18
4J034KC35
4J034KD02
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA03
4J034QA03
4J034QB13
4J034QB15
4J034QC01
4J034QD03
4J034RA03
4J034RA05
4J034RA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】臭気を低減したポリウレタン樹脂製造用触媒を提供する。
【解決手段】式(1)で示されるアミン化合物(A)の水溶液からなる触媒であって、水溶液中の2-エチルピラジン含有量が3.9ppm以下である触媒を用いる。

[R、R、R、R、R;H、C1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、C1~4のアルコキシ基。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の水溶液からなるポリウレタン樹脂製造用触媒であって、前記の水溶液中における2-エチルピラジン含有量が3.9ppm以下であるポリウレタン樹脂製造用触媒。
【化1】
[上記一般式(1)中、R、R、R、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。]
【請求項2】
一般式(1)中、R、R、R、R及びRが、各々独立して、水素原子又はメチル基である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒。
【請求項3】
前記の水溶液におけるアミン化合物(A)の濃度が、10~70質量%である請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒の存在下、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項5】
下記工程を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒の製造方法。
工程1: 酸触媒存在下、下記一般式(2)
【化2】
[上記一般式(2)中、R、R、R、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。]
で表されるピペラジン化合物を分子内環化させて、上記一般式(1)で表されるアミン化合物を製造し、得られたアミン化合物を、分留によって精製する工程
工程2:前記工程1で精製されたアミン化合物を水に溶解して水溶液を製造する工程
工程3:前記工程2で得られた水溶液を活性炭に接触させ、次いで水溶液を単離する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂製造用触媒、その用途、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートを主原料として、触媒、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等を必要に応じて添加して製造される。得られるポリウレタン樹脂は、自動車用シートクッション、マットレス、家具等の軟質フォーム、自動車インストルメントパネル、ヘッドレスト、アームレスト等の半硬質フォーム、電気冷蔵庫、建材等に用いられる硬質フォーム等に加工され幅広く使用されている。
【0003】
前記のポリウレタン樹脂を製造する際に、触媒として第3級アミン化合物が用いられるが、当該第3級アミン化合物は、その揮発性に基づいて、ポリウレタン樹脂製造現場の作業環境を汚染する懸念があり、更に、製造されたポリウレタン樹脂製品から徐々に揮散し、使用環境を汚染するとともに、使用環境下に存在する塩ビ樹脂の変色やポリカーボネート樹脂の白濁化といった悪影響を及ぼす懸念がある。上記懸念を解消する手段として、例えば、下記特許文献1に記載の発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/145320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類、及びそれを含む触媒組成物については、上記懸念を解消できるものであったものの、その触媒組成物自体がかすかな臭気を帯びているものであり、当該かすかな臭気の低減が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、かすかな臭気が、酸触媒環化反応の微量副生物である2-エチルピペラジン等の芳香族系化合物に由来し、前記芳香族系化合物の含有量を減らすことによって、従来よりも臭気を低減できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の一態様は、以下に示す通りのポリウレタン樹脂製造用触媒、その用途、及びその製造方法に関するものである。
【0008】
[1] 下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の水溶液からなるポリウレタン樹脂製造用触媒であって、前記の水溶液中における2-エチルピラジン含有量が3.9ppm以下であるポリウレタン樹脂製造用触媒。
【0009】
【化1】
【0010】
[上記一般式(1)中、R、R、R、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。]
[2] 一般式(1)中、R、R、R、R及びRが、各々独立して、水素原子又はメチル基である、[1]に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒。
【0011】
[3] 前記の水溶液におけるアミン化合物(A)の濃度が、10~70質量%である[1]又は[2]に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒。
【0012】
[4] [1]乃至[3]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒の存在下、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【0013】
[5] 下記工程を含む、[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒の製造方法。
工程1: 酸触媒存在下、下記一般式(2)
【0014】
【化2】
【0015】
[上記一般式(2)中、R、R、R、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。]
で表されるピペラジン化合物を分子内環化させて、上記一般式(1)で表されるアミン化合物を製造し、得られたアミン化合物を、分留によって精製する工程
工程2:前記工程1で精製されたアミン化合物を水に溶解して水溶液を製造する工程
工程3:前記工程2で得られた水溶液を活性炭に接触させ、次いで水溶液を単離する工程
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒は、従来の触媒に比べて、それ自体の臭気が少なく、取り扱い上の不快感が無いという効果を奏する。また、本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒は、従来の触媒に比べて、より低臭気のポリウレタン樹脂を製造する製造方法を提供できるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0018】
本実施形態の一つは、上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の水溶液からなるポリウレタン樹脂製造用触媒であって、前記の水溶液中における2-エチルピラジン含有量が3.9ppm以下であるポリウレタン樹脂製造用触媒である。
【0019】
上記一般式(1)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、特に限定するものではないが、例えば、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ヒドロキシメチル基、炭素数1~4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)又は炭素数1~4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基又はtert-ブトキシ基)等を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基又はメトキシ基である。
【0020】
本願発明において好ましいアミン化合物(A)としては、例えば、上記一般式(1)において、R、R、R、R及びRが、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基又はヒドロキシメチル基を表す化合物(但し、R、R、R、R及びRの全てが同じ置換基を表すことはない)、上記一般式(1)において、R、R、R、R及びRの全てがメチル基である化合物、又は上記一般式(1)において、R、R、R、R及びRの全てが水素原子である化合物等が挙げられ、より好ましいアミン化合物(A)としては、一般式(1)において、R、R、R、R及びRが、各々独立して、水素原子又はメチル基である化合物等が挙げられ、より好ましいアミン化合物(A)としては、上記一般式(1)において、R、R、R、R及びRの全てが水素原子である化合物が挙げられる。
【0021】
上記の一般式(1)において、a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。
【0022】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の具体例としては、例えば、以下の化合物(例示化合物1~例示化合物28)を挙げることができるが、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
本願発明において好ましいアミン化合物(A)としては、下記の例示化合物1及び/又は例示化合物15が挙げられる。
【0024】
【化3】
【0025】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、ジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応により製造することができる(例えば、特開2010-37325号公報参照)。
【0026】
また、上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenil,10,1404(1980)、国際公開第95/18104号パンフレット等に記載の方法により製造可能である。また、Journal of Medicinal Chemistry(1993),36(15),2075-2083や、特開2010-120887号公報に記載の方法等によって誘導されるヒドロキシアルキルピペラジン類のエチレンオキサイド付加物を分子内環化することによっても製造可能である。更には、例えば、特開2010-37325号公報に記載の方法、すなわちジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応により製造することができる。
【0027】
置換基を有する上記式(1)で示されるアミン化合物の製造方法については、対応する置換ピペラジンを使用することで製造可能である。置換ピペラジンの製造方法は、上記したヒドロキシアルキルピペラジン類の合成に関する公知技術等によって製造可能である。
【0028】
本発明における本実施形態の一つは、上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の水溶液からなるポリウレタン樹脂製造用触媒であるが、前記アミン化合物(A)の水溶液中の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、10~70重量%の範囲であることが好ましく、35~65重量%の範囲であることがより好ましく、40~60重量%の範囲であることがより好ましい。
【0029】
なお、アミン化合物(A)については、ポリウレタン樹脂製造用触媒全体に対する含有量は、特に限定するものではないが、例えば、10~70重量%の範囲であることが好ましく、35~65重量%の範囲であることがより好ましく、40~60重量%の範囲であることがより好ましい。
【0030】
本願発明の上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の水溶液における水としては、特に限定するものではないが、例えば、蒸留水、イオン交換水、精製水、又は純水等を用いることができる。
【0031】
本願発明の上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の水溶液は、2-エチルピラジンを含有することを特徴とし、その含有量が3.9ppm以下であることを特徴とする。なお、前記の2-エチルピラジンの含有量については、本願発明の効果に優れる点で、0.01~3.9ppmの範囲が好ましく、0.02~3.5ppmの範囲がより好ましく、0.03~3.0ppmの範囲がより好ましい。
【0032】
上記の2-エチルピラジンの含有量の定量については、一般公知の分析方法を利用して測定することができる。本発明においては、後述する実施例に示した方法によって当該含有量を定量した。
【0033】
上記の2-エチルピラジンは、後述する酸触媒環化反応の副生物の一つである。当該酸触媒環化反応では、2-エチルピラジンに限らず、多数の芳香族化合物が副生していると考えられるが、2-エチルピラジンが主成分である。それら多数の芳香族化合物については、含有量がごく微量であり、定性定量分析が非常に困難である。そして後述する工程3は、活性炭処理によって、2-エチルピラジンを除去することを目的とするが、2-エチルピラジンと同様の物性を有する前記の副生芳香族化合物については、2-エチルピラジンと同様に活性炭によって除去される。
【0034】
本実施形態の別の形態は、上記のポリウレタン樹脂製造用触媒の存在下、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法である。
【0035】
前記の製造方法におけるポリオールとしては、従来公知のものを用いることができ、特に限定するものではないが、通常、平均水酸基価が20~1000mgKOH/gの範囲のポリオール類が好ましい。なお、軟質ポリウレタン樹脂や半硬質ポリウレタン樹脂の製造の際には平均水酸基価が20~100mgKOH/gの範囲のポリオールが好ましく、硬質ポリウレタン樹脂の製造の際には平均水酸基価が100~800mgKOH/gの範囲のポリオールが好ましい。
【0036】
前記の製造方法に使用されるポリイソシアネートは、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、トルエンジイソシアネート(以下、「TDI」と称する場合がある)若しくはその誘導体、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と称する場合がある)若しくはその誘導体、ナフチレンジイシシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、ジシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、又はこれらの混合体等が挙げられる。これらのうち好ましくは、TDI若しくはその誘導体、又はMDI若しくはその誘導体であり、これらは単独で使用しても、混合して使用しても差し支えない。
【0037】
TDIとその誘導体としては、例えば、2,4-TDIと2,6-TDIの混合物、TDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体等を挙げることができる。また、MDIとその誘導体としては、例えば、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体、末端イソシアネート基を持つジフェニルメタンジイソシアネート誘導体等を挙げることができる。
【0038】
これらイソシアネートのうち、軟質ポリウレタン樹脂や半硬質ポリウレタン樹脂製品には、TDIとその誘導体、MDIとその誘導体、又はそれらの両方が好適に使用される。また、硬質ポリウレタン樹脂には、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体が好適に使用される。
【0039】
これらポリイソシアネートとポリオールの混合割合としては、特に限定するものではないが、イソシアネートインデックス([イソシアネート基]/[イソシアネート基と反応しうる活性水素基]×100)で表すと、一般に50~400の範囲が好ましい。より好ましくは50~200の範囲であり、更に好ましくは60~120の範囲である。
【0040】
なお、本願発明のポリウレタン樹脂製造用触媒は、ポリウレタン樹脂製造用の触媒として、単独で用いても良いが、必要に応じて泡化触媒や有機金属触媒、カルボン酸金属塩触媒、又は第4級アンモニウム塩触媒を併用しても良い。
【0041】
有機金属触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、又はナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0042】
カルボン酸金属塩触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、カルボン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等が挙げられる。ここで、カルボン酸としては、特に限定するものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、2-エチルヘキサン酸、アジピン酸等の脂肪族モノ若しくはジカルボン酸類、安息香酸、又はフタル酸等の芳香族モノ若しくはジカルボン酸類等が挙げられる。また、カルボン酸塩を形成すべき金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、又はマグネシウム等のアルカリ土類金属が好適なものとして挙げられる。
【0043】
第4級アンモニウム塩触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、又は2-エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類が挙げられる。
【0044】
上記の製造方法においては、上記のポリウレタン樹脂製造用触媒を単独で、又は上記した他の触媒と混合して使用することができるが、これらを混合調製するにあたっては、必要ならば、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、又は水等の溶媒を使用することができる。
【0045】
上記の製造方法において、上記のポリウレタン樹脂製造用触媒の使用量は、使用されるポリオール100重量部に対し、通常0.1~30重量部の範囲であることが好ましく、0.5~20重量部の範囲であることがより好ましい。
【0046】
本実施形態の別の形態は、下記工程を含む、上記のポリウレタン樹脂製造用触媒の製造方法である。
工程1: 酸化触媒存在下、下記一般式(2)
【0047】
【化4】
【0048】
[上記一般式(2)中、R、R、R、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。]
で表されるピペラジン化合物を分子内環化させて、上記一般式(1)で表されるアミン化合物を製造し、得られたアミン化合物を、分留によって精製する工程
工程2:前記工程1で精製されたアミン化合物を水に溶解して水溶液を製造する工程
工程3:前記工程2で得られた水溶液を活性炭に接触させ、次いで水溶液を単離する工程
前記の一般式(2)におけるR、R、R、R及びRの定義及び好ましい範囲については、上記の一般式(1)におけるR、R、R、R及びRの定義及び好ましい範囲と同義である。
【0049】
工程1において、分子内環化させる方法としては、特に限定するものではないが、公知の方法を用いることができ、例えば、特開2010-37325号公報に記載の方法を用いることができる。
【0050】
工程1における酸触媒としては、特に限定するものではないが、例えば、金属リン酸塩や有機リン化合物等のリン含有物質、窒素含有物質、硫黄含有物質、ニオブ含有物質、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア、ゼオライト、ヘテロポリ酸、第4B族金属酸化物縮合触媒、第6B族金属含有縮合触媒、ブレンステッド酸、ルイス酸、リンアミド等が挙げられるが、これらのうち金属リン酸塩が好ましく、当該金属リン酸塩の具体例としては、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸ストロンチウム等を挙げることができる。
【0051】
前記の工程2における水については、上記の水と同じものを用いることができる。
【0052】
工程1で製造されたアミン化合物を水に溶解する方法については、一般公知技術に基づいて行うことができ、例えば、撹拌溶解、加熱溶解等の方法によって行うことができる。
【0053】
前期の工程3における活性炭としては、例えば、鉱物系活性炭または植物系活性炭等が挙げられる。鉱物系活性炭としては、具体的には、例えば、石炭系活性炭、石油系活性炭等が挙げられる。植物系活性炭としては、具体的には、例えば、木質系活性炭またはやし殻活性炭等が挙げられ、好ましくは木質系活性炭が挙げられる。
【0054】
前記の活性炭の形状としては、上記の工程3に適した形状であればいずれも用いられるが、例えば、粉砕炭、顆粒炭、球状炭若しくはペレット炭等の粒状活性炭、ファイバー若しくはクロス等の繊維状活性炭、シート状、成形体若しくはハニカム状等の特殊成形活性炭、または粉末活性炭等が挙げられる。
【0055】
前記の活性炭の平均細孔直径としては、特に限定されないが、通常は0.1~20nm、好ましくは0.5~5.0nm、より好ましくは2.0~5.0nm、さらに好ましくは3.0~5.0nmである。活性炭の平均細孔径は窒素吸着等温吸着曲線よりBJH法を用いて算出することができる。
【0056】
活性炭としては、具体的には、例えば、カルボラフィン、強力白鷺(登録商標)、精製白鷺、特製白鷺、白鷺A、白鷺C、白鷺C-1、白鷺DO-2、白鷺DO-5、白鷺DO-11、白鷺DC、白鷺DO、白鷺Gx、白鷺G、白鷺GH、白鷺FAC-10、白鷺FPG-1、白鷺M、白鷺P、白鷺PHC、白鷺Gc、白鷺GH、白鷺GM、白鷺GS、白鷺GT、白鷺GAA、白鷺GOC、白鷺GOX、白鷺APRC、白鷺TAC、白鷺MAC、白鷺XRC、白鷺NCC、白鷺SRCX、白鷺Wc、白鷺LGK、白鷺KL、白鷺WH、白鷺W、白鷺WHA、白鷺LH、白鷺KL、白鷺LGK、白鷺MAC-W、白鷺S、白鷺Sx、白鷺X2M、白鷺X7000、白鷺X7100、白鷺DX7-3、モルシーボン、ACF、GLC、太閤A、太閤S、太閤K、太閤KA、太閤Q、太閤Y、Norit(登録商標) SP、Norit CNI、Norit GBG、又はNorit TEST EUR等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
このうち、木質系の活性炭としては、例えば、特製白鷺、強力白鷺、白鷺P、白鷺C、白鷺A、太閤Y、太閤KA、太閤M、太閤A、Norit GSP、またはNorit CNI等が挙げられる。
【0058】
前記の工程3において、前記工程2で得られた水溶液を活性炭に接触させる手段としては、特に限定されないが、例えば、バッチ法、膜処理法またはカラムクロマトグラフィー法等が挙げられ、それぞれの手段に応じて適切な活性炭の形状が選択される。必要に応じて、多孔性ポリマー若しくはゲルに活性炭を封入した粒子等の形態またはポリプロピレン若しくはセルロース等のサポート剤若しくは繊維等を用いて活性炭を吸着、固定若しくは成形した膜若しくはカードリッジ等の形態等にて使用することも出来る。
【0059】
活性炭を含む膜またはカードリッジとしては、具体的には、例えば、CUNO活性炭フィルターカードリッジ、ゼータプラス(登録商標)活性炭フィルターカードリッジ、ミリスタック(登録商標)プラス活性炭フィルター、スープラAKS1フィルター、AKS1フィルター、Stax(登録商標) AKS1、アドール、Kフィルター(登録商標)、活性炭シート、へマックス、ヘモソーバ(登録商標)、へモカラム、またはへセルス等が挙げられるが、これらに限定されない。このうち、木質系の活性炭を含む膜またはカートリッジとしては、例えば、ゼータプラス活性炭フィルターカートリッジ、スープラAKS1フィルター、AKS1フィルター、またはStax AKS1等が挙げられる。
【0060】
前記の工程3において、活性炭と前記工程2で得られた水溶液を接触させる場合は、フィルターろ過等の方法によって、前記の活性炭と前記水溶液を分離し、前記水溶液を単離することができる。
【0061】
前記の工程3において、カートリッジ状の活性炭と前記工程2で得られた水溶液を接触させる場合は、当該水溶液を前記カートリッジに通液することによって、前記水溶液を単離することができる。
【実施例0062】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0063】
なお、実施例、比較例における測定方法、評価方法は以下のとおりである。
[2-エチルピラジンの定量方法]
ヘッドスペースGC分析装置(アルファ・モス・ジャパン、フラッシュGCノーズ HERACLES II)を用いて、2-エチルピラジンの定量を行った。
(サンプリング条件)
インキュベーション:60℃、20分
ヘッドスペース注入:250μL/秒で5000μL
(機器条件)
カラム:MXT-5(微極性 10m、180μmID、0.4μm)
キャリアガス流量:水素 1.6mL/min
水素炎イオン化検出器(FID)温度: 260℃
インジェクター温度: 220℃
オーブン温度 40℃(10秒)~1.5℃/秒~250℃(60秒)
注入時間 25秒
トラップ温度 40℃
トラップ時間 30秒
<検量線の作成>
2-エチルピラジンが1000ppmの濃度となるよう標準原液(エタノール溶媒)を作製し、純水でこれを薄めて、0.05ppm、0.1ppm、0.2ppm、0.4ppm、0.8ppmの2-エチルピラジン調整液を調製した。各調製液10mLを、塩化ナトリウム4gが入った20mL容量のバイアル瓶に投入して検量線サンプルとした。それぞれの検量線サンプルをヘッドスペースGC装置にて分析し、サンプル濃度とピーク面積から検量線を作成した。
<分析サンプルの調製>
実施例等で製造した触媒組成物 0.715gを純水で10mLに調製し、塩化ナトリウム4gが入った20mL容量のバイアル瓶に投入して分析サンプルとした。
[触媒組成物の臭気の判定]
20mLのバイアル瓶に実施例等で製造した触媒組成物を15g取り、社内パネラーにより、アミン臭気が感じられるか判定した。
【0064】
○:アミン臭気なし、 ×:アミン臭気あり。
[ポリウレタン樹脂の臭気の判定]
社内パネラーにより、発泡成型直後のフォームの臭気を嗅ぎ、アミン臭気が感じられるか判定した。
【0065】
○:アミン臭気なし、 ×:アミン臭気あり。
【0066】
製造例1 (気相反応用触媒1の調製).
市販のリン酸アルミニウム(キシダ化学社品) 40gを水 300mlに混ぜスラリー溶液とした後、水 100mlに溶解させた硝酸セシウム(和光純薬工業社品) 6.4g(金属比10モル%)を混合した後、エバポレーター用いて脱水し、白色固体 48.6g得た。この固体にグラファイトを0.42g(1重量%)添加後、打錠成型機を使用し、直径5mm、厚み2mmの成型品を得た。この成型品をマッフル炉で450℃、6時間の条件で焼成し、気相反応用触媒1を得た。
【0067】
製造例2 (例示化合物1で示されるアミン化合物と例示化合物15で示されるアミン化合物の合成).
【0068】
【化5】
【0069】
50Lの反応釜に、ピペラジン 15.5kg(180モル)、溶媒としてメタノール15.6Lを仕込み、窒素雰囲気下で液温が45℃となるように調整した後、3-クロロ-1,2-プロパンジオール 6.06kg(54.8モル)を3時間かけて滴下した。滴下中液温は徐々に上昇し、終了時の液温は75℃であった。その後、反応温度を70℃となるように調整し、更に3時間熟成した。ピペラジンの反応転化率は100%であった。温調停止後、一晩放置し、室温と同じ温度になった反応液に、48%水酸化ナトリウム水溶液 4.6kg(55モル)をゆっくり滴下させ、副生塩を析出させた。釜底から抜出した反応液について、ろ過処理により前記の副生塩を取り除いた後、エバポレーターを用いてメタノールを留去した。次いで、さらに単蒸留により未反応のピペラジンを留去した後、減圧蒸留により3-(1’-ピペラジニル)-1,2-プロパンジオール(2-A)を単離した(白色固体、収量7.9kg、収率90%)。
【0070】
内径40mmの石英ガラス管中央部に、製造例1で調製した気相反応用触媒1を160ml、その上下部に外径5mmのラッシヒリングを充填した。電気炉で触媒層及びラッシヒリング層を360℃に保ち、上部より、前記の3-(1’-ピペラジニル)-1,2-プロパンジオール(2-A) 1.6kg(10モル)の水溶液(2モル%)を、GHSV=1,500Hr-1の速度で滴下した。また希釈ガスとして窒素ガスをGHSV=750Hr-1で同伴させた。通液開始から3時間後、反応液を1時間かけて採取し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、3-(1’-ピペラジニル)-1,2-プロパンジオール(2-A)の転化率は100%であった。前記の1時間の間で得られた反応液は、上記した例示化合物1で表される1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(42%)、上記した例示化合物15で示される3-ヒドロキシ-1,5-ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン(6%)、また側鎖が脱離したピペラジン(13%)及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1%)を含むものであった。
【0071】
製造例3 (例示化合物1で示されるアミン化合物と例示化合物15で示されるアミン化合物の組成物の合成).
製造例2にて得られた反応液から、上記した例示化合物1で示されるアミン化合物である1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノールと例示化合物15で示されるアミン化合物である3-ヒドロキシ-1,5-ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン以外を蒸留によって分留し、例示化合物1で示されるアミン化合物と例示化合物15で示されるアミン化合物を含む組成物(淡黄色固体)を約20g得た。[例示化合物1で示されるアミン化合物]/[例示化合物15で示されるアミン化合物]=10/1(重量比)であった。
【0072】
実施例1.
[触媒組成物の調製]
製造例3にて得られた組成物 20gを、20gの純水に溶解させて水溶液を調製し、当該水溶液に平均細孔径3nmの木質系粉末活性炭(大阪ガスケミカル社製、カルボラフィン(登録商標)SS)を0.8g(上記水溶液の2重量%に相当)添加し、室温下30分間スターラーで攪拌した。次いでろ紙(ADVANTEC社製、No.2)を用いて前記水溶液中の活性炭を除去し、ポリウレタン樹脂製造用触媒(本発明)を得た。当該触媒の臭気評価、及び当該触媒に含まれる2-エチルピラジン量の定量評価を行った。結果を表1に示した。
[ポリウレタン樹脂の調製]
先ず、A液及びB液として以下のものを準備した。
【0073】
A液(ポリオール成分):ポリマーポリオール(三洋化成工業株式会社製、商品名「サンニックス(登録商標)FA-921」) 100重量部、連通化剤(東邦化学工業株式会社製、商品名「トーホーポリオール(登録商標)QB-8000」) 2重量部、架橋剤(ポリエチレングリコール200) 2重量部、整泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名「Y-10366」) 1重量部、発泡剤(水) 2.2重量部、及び上記の通り活性炭処理を行ったポリウレタン樹脂製造用触媒 2.2重量部を混合し、A液(ポリオール成分)を調整した。
【0074】
B液(ポリイソシアネート成分):ポリイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名「CEF-456」)をそのまま用いた。
【0075】
上記配合のA液と、イソシアネートインデックスが100となる量のB液とを混合し、これを機械攪拌により発泡を行い、ポリウレタン樹脂を得た。
【0076】
当該ポリウレタン樹脂の臭気評価を行った。結果を表1に示した。
【0077】
評価測定結果を表1に示した。
【0078】
比較例1~5
実施例1の[触媒組成物の調製]において用いた純水を、表1に示した溶媒にした以外は実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂製造用触媒を製造し、次いでポリウレタン樹脂を得た。前記の触媒の臭気評価、前記のポリウレタン樹脂の臭気評価、及び前記の触媒に含まれる2-エチルピラジン量の定量評価を行った。結果を表1に示した。
【0079】
【表1】
【0080】
表1における1)~5)については、以下の通り。
【0081】
1)キシダ化学社製 エチレングリコール
2)キシダ化学社製 ジプロピレングリコール
3)キシダ化学社製 ジエチレングリコール
4)キシダ化学社製 ポリエチレングリコール
5)東京化成工業社製 2-メチル-1,3-プロパンジオール
実施例1と比較例1~5との比較から明らかなように、純水以外の溶媒では、2-エチルピラジンの含有量を低下させることができず、その結果として、触媒の臭気低減、及びポリウレタン樹脂の臭気低減の効果が得られない。
【0082】
実施例2
実施例1において用いた活性炭を、白鷺Aに変更した以外は実施例1と同様にして実験を行い、得られた触媒の臭気評価、得られたポリウレタン樹脂の臭気評価、及び得られた触媒に含まれる2-エチルピラジン量の定量評価を行った。結果を表2に示した。
【0083】
【表2】
【0084】
表2における1)については、以下の通り。
【0085】
1) 大阪ガスケミカル社製 質系粉状活性炭
実施例3~5
実施例1において用いた活性炭の量 0.8g(上記水溶液の2重量%に相当)について、0.4g(上記水溶液の21重量%に相当)、1.6g(上記水溶液の4重量%に相当)、又は3.2g(上記水溶液の8重量%に相当)に変更した以外は実施例1と同様にして実験を行い、得られた触媒の臭気評価、得られたポリウレタン樹脂の臭気評価、及び得られた触媒に含まれる2-エチルピラジン量の定量評価を行った。結果を表3に示した。
【0086】
【表3】