(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121902
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】カトラリーレスト、ワーク保持ユニット、及びカトラリーレスト製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 21/00 20060101AFI20230825BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230825BHJP
【FI】
A47G21/00 P
B23K26/00 B
B23K26/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025244
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】517215559
【氏名又は名称】株式会社協栄医科工業
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】徳永 将幸
(72)【発明者】
【氏名】津久井 裕人
【テーマコード(参考)】
3B115
4E168
【Fターム(参考)】
3B115AA30
3B115BB16
3B115DA02
3B115DA09
3B115DA15
3B115DB13
3B115EA00
3B115EA09
4E168AA02
4E168DA28
4E168GA04
4E168HA00
4E168JA02
4E168JA17
4E168JA18
(57)【要約】
【課題】パターンデータに基づき照射を行う機能を持った市販のレーザ加工装置を用いて、レーザ加工での装飾等の位置ずれを抑制するワーク保持ユニットと、当該位置ずれが抑制されたカトラリーレストの製造方法、及びカトラリーレストを提供する。
【解決手段】ワーク保持ユニットは平板状の固定板53及びワーク保持板54を備える。固定板53はレーザ加工のワークが載置される載置ステージ42の上に固定される。ワーク保持板54は、固定板53に固定され、複数のワークの各々を固定板53を介して載置ステージ42上において位置決めした状態に保持する。ワーク保持板54は、ワークの外郭に沿った形状で厚み方向に貫通し、ワークが嵌め込まれてワークを位置決めした状態に保持するワーク保持孔61を有する。ワークはレーザ加工で凹凸模様が施された後に断面U字状に湾曲されて、カトラリーレストが得られる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面U字状に湾曲した略矩形の板状に形成され、
四隅が角丸形状に突出した脚部を形成しており、
凸側の湾曲表面に、レーザ加工で凹凸模様が施されたレーザ加工領域を有する
カトラリーレスト。
【請求項2】
ステンレス製である請求項1に記載のカトラリーレスト。
【請求項3】
レーザ加工のワークが載置される載置ステージの上面に固定される平板状の固定板と、
複数の前記ワークの各々を前記固定板を介して前記載置ステージ上において位置決めした状態に保持し、前記固定板に固定される平板状のワーク保持板と
を備え、
前記ワーク保持板は、
前記ワークの外郭に沿った形状で厚み方向に貫通し、前記ワークが嵌め込まれて、前記ワークを位置決めした状態に保持するワーク保持孔を有する
ワーク保持ユニット。
【請求項4】
前記ワーク保持孔は、嵌め込まれた前記ワークとのクリアランスがレーザの照射径よりも小さくなるように形成されている請求項3に記載のワーク保持ユニット。
【請求項5】
レーザ加工のワークが載置される載置ステージの上面に、平板状の固定板を固定する固定板固定工程と、
複数の前記ワークを前記載置ステージ上において前記固定板を介して位置決めした状態に保持するとともに、前記ワークの外郭に沿った形状で厚み方面に貫通したワーク保持孔に前記ワークを位置決めした状態に保持する平板状のワーク保持板を、前記固定板に固定し、前記ワークは四隅が角丸形状に突出した略矩形の平板状のカトラリーレスト材である保持板固定工程と、
前記固定板上の前記ワーク保持板に、複数の前記カトラリーレスト材を前記ワークとしてセットするセット工程と、
セットされた複数の前記カトラリーレスト材に、レーザ加工で凹凸模様を施すレーザ加工工程と、
前記カトラリーレスト材を、凹凸模様が施された面側に凸である断面U字状に湾曲させる曲げ工程と
を有するカトラリーレストの製造方法。
【請求項6】
前記ワーク保持孔は、嵌め込まれた前記ワークとのクリアランスがレーザの照射径よりも小さくなるように形成されている請求項5に記載のカトラリーレストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カトラリーレスト、ワーク保持ユニット、及びカトラリーレスト製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼等で形成されたワークに、装飾や印等(以下、装飾等と称する)を施す手法としてレーザ加工がある。近年では、ワークに向けてレーザを射出するレーザ加工装置に、予め準備した装飾等のパターンデータに基づき照射を行う機能をもった各種のレーザ加工装置が市販されている。レーザ加工においては、装飾等の凹凸をワークの所定の位置に付与するための位置決めが重要視される。
【0003】
そこで、例えば特許文献1は、ワークの位置決め方法を開示している。この方法は、ワークをレーザ加工の方向から撮像して映像信号を求めるとともに、レーザ加工をすべき照射点軌跡を映像信号に変換し、これらの映像信号を重ね合わせて一つの画像として表示する。そして、この方法は、表示された表示画像に基づいて、照射点軌跡に対するワークの相対位置を決める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、食卓等に載置されてカトラリーを置くカトラリーレスト等のように小型の製品は、施した装飾等の位置ずれが目立ちやすい。また、ひとつの製品に着目した場合には目立たなくても、複数個の製品がある場合には製品間で見比べることで位置ずれが目立って認識されやすい。
【0006】
このような製品を複数製造する場合には、特許文献1に記載される方法は、製造すべき個々のワークについて撮像し、その映像信号を求め、求めた映像信号を照射点軌跡を変換した映像信号に重ねて一つの画像を生成して表示する処理を行う。さらに、この方法では、表示画像に基づいて照射点軌跡に対するワークの相対的な位置を、ワークごとに決める必要がある。このように、特許文献1に記載される方法によると、ワーク毎に、画像を生成して表示する処理と、照射点軌跡に対するワークの相対的な位置を決めるので、レーザを照射するまでの手間がかかる。さらに、ワークを撮像する撮像機能や上記の一つの画像を生成して表示する機能をもったレーザ加工装置が必要となる。
【0007】
そこで、本発明は、パターンデータに基づき照射を行う機能をもった市販のレーザ加工装置を用いて、レーザ加工での装飾等の位置ずれを抑制するワーク保持ユニットと、当該位置ずれが抑制されたカトラリーレストの製造方法、及びその製造方法によって製造されるカトラリーレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカトラリーレストは、断面U字状に湾曲した略矩形の板状に形成され、四隅は角丸形状に突出した脚部を形成している。カトラリーレストは、凸側の湾曲表面に、レーザ加工で凹凸模様が施されたレーザ領域を有する。カトラリーレストはステンレス製であることが好ましい。
【0009】
本発明のワーク保持ユニットは、固定板と、ワーク保持板とを備える。固定板は平板状であり、レーザ加工のワークが載置される載置ステージの上に固定される。ワーク保持板は平板状であり、固定板に固定され、複数のワークの各々を固定板を介して載置ステージ上において位置決めした状態に保持する。ワーク保持板は、ワークの外郭に沿った形状で厚み方面に貫通し、ワークが嵌め込まれてワークを位置決めした状態に保持するワーク保持孔を有する。ワーク保持孔は嵌め込まれたワークとのクリアランスがレーザの照射径よりも小さくなるよう形成することが好ましい。
【0010】
本発明のカトラリーレストの製造方法は、固定板固定工程と、保持板固定工程と、セット工程と、レーザ加工工程と、曲げ工程とを有する。固定板固定工程は、レーザ加工のワークが載置される載置ステージ上の上面に、平板状の固定板を固定する。保持板固定工程は、平板状のワーク保持板を固定板に固定する。ワーク保持板は、複数のワークを載置ステージ上において固定板を介して位置決めした状態を保持するとともに、ワークの外郭に沿った形状で厚み方面に貫通したワーク保持孔にワークを位置決めした状態に保持する。ワークは四隅が角丸形状に突出した略矩形状のカトラリーレスト材である。セット工程は、固定板上のワーク保持板に、複数のカトラリーレスト材をワークとしてセットする。レーザ加工工程は、セットされた複数のカトラリーレスト材に、レーザ加工で凹凸模様を施す。曲げ工程は、カトラリーレスト材を凹凸模様が施された面側に凸である断面U字状に湾曲させる。ワーク保持孔は、嵌め込まれたワークとのクリアランスがレーザの照射径よりも小さくなるように形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のワーク保持ユニットによれば、パターンデータに基づき照射を行う機能をもった市販のレーザ加工装置を用いて、レーザ加工での装飾等の位置ずれが抑制される。本発明のカトラリーレストの製造方法によれば、当該位置ずれが抑制されたカトラリーレストが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】実施形態であるカトラリーレストの斜視図である。
【
図1B】別の実施形態であるカトラリーレストの断面図である。
【
図1C】別の実施形態であるカトラリーレストの断面図である。
【
図1D】別の実施形態であるカトラリーレストの正面図である。
【
図2】カトラリーレストの製造フローの説明図である。
【
図5】ワーク保持ユニットの固定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1Aに示すカトラリーレスト10は、本発明の実施形態の一例であり、食卓、調理台等の載置台の上に載置されて使用される。カトラリーレスト10はカトラリーを置くためのものであり、カトラリーは食事に使用する食事用具であるフォーク、ナイフ、スプーン、箸等の他、例えば調理や給仕に使用するサーバ(トング)等である。カトラリーレスト10は、箸を置く箸置きでもある。
【0014】
カトラリーレスト10は、断面U字状に湾曲した略矩形の板状に形成されており、載置台の上面である載置面から鉛直上向きに凸の湾曲形状を有する。カトラリーレスト10は、略矩形、すなわち概ね矩形の四隅が丸みのある角丸形状であり、湾曲した本体部分10aから面状に突出した脚部10bを形成している。カトラリーレスト10の一方向に延びた稜線が水平に見える方向から見たときに、脚部10bの外郭形状は、本体部分10aに連続した曲線形状になっている。本体部分10aと4つの脚部10bとの境界は明確ではない。このように、本体部分10aと脚部10bとは一体に形成されており、本体部分10aと脚部10bとは概念的なものである。
【0015】
カトラリーレスト10は、凸側の湾曲表面(以下、第1湾曲表面と称する)S1に、レーザ加工で凹凸模様RAが施されたレーザ加工領域を有する。本例では、レーザ加工領域は、第1湾曲表面S1の全域に設けられているが、第1湾曲表面S1の一部にのみ設けられていてもよい。なお、凹側の湾曲表面(以下、第2湾曲表面と称する)S2は、本例ではレーザ加工領域を有しないが、有していてもよい。
【0016】
カトラリーレスト10は、カトラリーの転がりを抑制するための貫通孔が中央部に形成されていてもよい。貫通孔の形状及び大きさは特に限定されない。この貫通孔は本例のカトラリーレスト10においては形成されていないが、
図1Aにおいては形成されている場合の貫通孔15を二点鎖線で描いている。この貫通孔15が形成されていることにより、周面の断面形状が丸みを帯びている箸等であっても、より安定して載置される。
【0017】
カトラリーレスト10は、ステンレス製であるが、素材は、カトラリーレストとしての用に適したものであればステンレス鋼以外の金属、木、プラスチックなどでもよい。ただし、食事用具であるカトラリーが触れることに対する安全性、意匠性、耐久性等の各点において、ステンレスが好ましい。本例ではステンレス鋼としてSUS304を用いている。板状のカトラリーレスト10の厚みTHは、後述の曲げ工程において曲げることができる厚みであれば特に限定されず、例えば1.0mm以上2.0mm以下の範囲内であり、本例では1.5mmとしている。
【0018】
カトラリーレスト10は本体部分10aと脚部10bとで構成される全体が湾曲しており、本体部分10aから脚部10bまでの曲率が連続している。しかし、断面U字状の湾曲形状はこの例に限られない。例えば、脚部10aが平面状、かつ、本体部分10aが湾曲した湾曲形状であってもよいし、
図1Bに示すカトラリーレスト21のように脚部21bと本体部分21aのうち脚部21b側の一部分が平面状、かつ、本体部分21aのうち一方の一対の脚部21bと他方の一対の脚部21bとの間の中央部分のみが湾曲形状であってもよい。また、湾曲の曲率は、稜線を成す頂部Tに向けて曲率が連続的に漸増している等、変化していてもよい。頂部Tの曲率が大きいほど、例えば
図1Cに示すカトラリーレスト23の場合のようにV字状に近い湾曲形状になる。
【0019】
脚部は、上記の例に限られない。例えば
図1Dに示すカトラリーレスト25のように、カトラリーレスト25の一方向に延びた稜線が水平に見える方向から見たときに、直線の外郭形状をもつ本体部分25aから、円形状に突出した脚部25bであってもよい。なお、脚部25bも本体部分25aとともに板状に形成されており、本体部分25aと一体に形成されている。
【0020】
カトラリーレスト10、21、23、25は、以下の製造方法により製造される。カトラリーレスト10、21、23、25は同様の製造方法で製造されるので、製造方法は、カトラリーレスト10を例に説明し、カトラリーレスト21、23、25については説明を略す。カトラリーレスト10は、
図2に示すように、平板状のステンレス鋼から切り出したカトラリーレスト材31から製造される。カトラリーレスト材31は、
図2(A)に示すように、四隅が角丸形状に突出した略矩形、本例では略長方形の平板状とされている。このカトラリーレスト材31の一方の表面S1aにレーザ加工を行うことにより、
図2(B)に示すように凹凸模様RAを施す。その後、カトラリーレスト材31を、
図2(C)に示すように、短手方向における各端から等距離Dである中央Cに関して対称となるように湾曲させることにより、
図2(D)に示すようにカトラリーレスト10とする。湾曲は、凹凸模様RAが施された表面S1a側に凸である断面U字状になるように行う。以上の製造フローは、具体的には、固定板固定工程と、保持板固定工程と、セット工程と、レーザ加工工程と、曲げ工程とからなる。以下、各工程につき説明する。
【0021】
固定板固定工程に供するカトラリーレスト材31は、表面、特に、凹凸模様RAを施す表面S1aを研磨しておくことが好ましい。これにより、凹凸模様RAを施された場合の意匠性がより高まる。さらに、表面S1a及び表面S1aの裏面と端面との境界部分を研磨して面取り加工することが好ましく、端面についても固定板固定工程前に研磨することにより、ばり等を取ることが好ましい。本例での面取りの半径Rは概ね0.5mmとしているが、触感や意匠性等の観点で設定すればよく、特に限定されない。研磨は、例えばサンドペーパが使用されるサンダや砥石を回転させて用いるグラインダなどで行うとよい。
【0022】
固定板固定工程と保持板固定工程とセット工程とは、カトラリーレスト材31に凹凸模様RAを施すレーザ加工工程の準備工程であり、レーザ加工工程を実施するレーザ加工装置にカトラリーレスト材31をセットするためのものである。カトラリーレスト材のセッティングには、
図3に示すように、ワーク保持ユニット37が用いられる。
図3に示すレーザ加工装置40は、パターンデータに基づき照射を行う機能をもったレーザ加工装置の一例であり、市販のものである。レーザの種類はカトラリーレスト材31の素材に応じて適宜選択する。本例では、レーザ加工装置40として、ブラザー工業(株)製のファイバレーザーマーカーLM-3200 PCを用いている。
【0023】
レーザ加工装置40は、レーザ照射部41と、載置ステージ42と、駆動部45と、記憶部46と、入力部48と、制御部49とを備える。レーザ照射部41はレーザ51を射出する。載置ステージ42はレーザの照射の対象であるワーク、すなわちカトラリーレスト材31(
図2参照)が載せられ、このカトラリーレスト材31にレーザが照射される。駆動部45は、レーザ射出部41を駆動してレーザ51の射出の向きやレーザ51の出力等を調整する。本例において照射するレーザを水平面において走査する速度(走査速度)は特に限定されない。レーザ51の出力は、カトラリーレスト材31の素材、凹凸模様RA(
図2(B)~
図2(D)参照)における凹部の深さ等に応じて適宜設定する。なお、
図3及び
図4、
図5の各図においては、X軸を水平方向、Y軸を鉛直方向、Z軸をX軸及びY軸に直交する方向とし、上記の水平面はXZ平面に対応する。なお、載置ステージ42は、Y軸方向において移動自在とされており、これによりワークであるカトラリーレスト材31のY軸方向における位置が調整される。
【0024】
記憶部46は、装飾等の凹凸模様RAのパターンデータを記憶する。この例では、後述のように6枚のカトラリーレスト材31をセットし、これらに対して順次凹凸模様RAを施すので、少なくともこれら6枚分のパターンデータを記憶している。パターンデータには、凹凸模様RAにおける濃淡に関わる凹部の深さ等の情報も含まれる。入力部48は、パターンデータの設定やレーザ51の出力等の設定の入力操作が行われる。制御部49は、入力部48からの入力情報に基づいて、記憶部46からパターンデータを読み出し、駆動部45を介してレーザ照射部41を制御する。これにより、セットされたカトラリーレスト材31に凹凸模様RAが形成される。
【0025】
ワーク保持ユニット37は、カトラリーレスト材31を載置ステージ42において位置決めした状態で保持するためのものであり、固定板53とワーク保持板54とを備える。固定板53とワーク保持板54とは平板状に形成されている。固定板固定工程は、載置ステージ42の上面に、固定板53を固定する工程であり、保持板固定工程は、ワーク保持板54を、固定板53の上に重ねた状態で固定板53に固定する工程である。セット工程は、固定されたワーク保持板54に、複数、本例では6枚のカトラリーレスト材31を、ワークとしてセットする。レーザ加工工程は、以上のようにセットされた6枚のカトラリーレスト材31に対して、順次凹凸模様RAを施す。
【0026】
図4に示すように、ワーク保持ユニット37の固定板53には複数のビス穴56が設けられている。載置ステージ42にも同様に複数のビス穴58(
図5参照)が上面に開口して形成されている。ビス穴56は、固定板53が載置ステージ42(
図3参照)の上に載置された際に、Y方向においてビス穴58に重なる位置に形成されている。これにより、固定板53は、ビス59(
図5参照)により、XZ平面において位置決めされた状態に載置ステージ42(
図3参照)に固定される。
【0027】
本例では、ビス穴58を載置ステージ42の四隅に、ビス穴56を固定板53の四隅に設けてある。しかし、ワーク保持板54を固定板53に固定するにあたりビス59がワーク保持板54に干渉しなければ、ビス穴58及びビス穴56の位置は問わない。また、固定板53を載置ステージ42に固定することができればビス穴58及びビス穴56の数も問わない。さらに、固定板53と載置ステージ42は、ビス59以外の他の固定部材により固定してもよい。
【0028】
ワーク保持板54は、カトラリーレスト材31を位置決めした状態に保持するためのものである。ワーク保持板54には、カトラリーレスト材31の外郭に沿った形状で厚み方面に貫通したワーク保持孔61が形成されている。カトラリーレスト材31はワーク保持孔61に嵌め込まれることによりセットされる。これがセット工程である。ワーク保持板54は、カトラリーレスト材31を、載置ステージ42上において固定板53を介して位置決めした状態を保持するとともに、ワーク保持孔61にカトラリーレスト材31を位置決めした状態に保持する。
【0029】
ワーク保持板54には複数のビス穴63が形成されており、固定板53には複数のビス穴65(
図5参照)が上面に開口して形成されている。ビス穴65は、ワーク保持板54が固定板53の上に載置された際に、Y方向においてビス穴65に重なる位置に形成されている。これにより、ワーク保持板54は、ビス66(
図5参照)により、XZ平面において位置決めされた状態に固定板53に固定される。
【0030】
本例では、ビス穴65をビス穴56よりも内側の四隅に、ビス穴63をワーク保持板54の四隅に形成してある。しかし、レーザ51の走査及びカトラリーレスト材31に対する照射を阻害しなければビス穴65及びビス穴63の位置は問わない。また、ワーク保持板54を固定板53に固定することができればビス穴63及びビス穴65の数も問わない。さらに、ワーク保持板54と固定板53とは、ビス66以外の他の固定部材により固定してもよい。
【0031】
ワーク保持孔61は、カトラリーレスト材31の取り外しをより容易にする取り外し孔部61aを有することがより好ましく、本例でもそのようにしている。本例においては、四隅のうち隣り合う二隅の間に、取り外し孔部61aを形成している。カトラリーレスト材31の外郭に沿って、ワーク保持孔61の四隅は外側に突出しているから、隣り合う二隅の間は隅よりも内側に凹形状となっており、取り外し孔部61aはこの凹形状の箇所から外側に突出した形状とされている。したがって、取り外し孔部61aを有するワーク保持孔61の場合には、この取り外し孔部61aの領域を除いて、カトラリーレスト材31の外郭に沿った形状である。この取り外し孔部61aに作業者の指などが挿入されることにより、レーザ加工工程を終えたカトラリーレスト材31はより容易に取り外される。
【0032】
図5において、まず、固定板53が、載置ステージ42に対して、ビス59により固定される。次に、ワーク保持板54が、固定板53に対して、ビス66により固定される。このように固定されたワーク保持板54のワーク保持孔61に、カトラリーレスト材31が嵌め込まれる。
【0033】
レーザ51(
図3参照)の照射においては、開始前に、レーザの照射位置の原点が設定される。この原点は、XZ平面において基準となる点(位置)であり、ワーク保持板54に対して原点を設定する。原点がワーク保持板54を基準に設定されているから、6枚のカトラリーレスト材31の各々に対する照射領域が目的とする領域に位置決めされ、凹凸模様RAの位置ずれが抑制される。また、形成されているすべてのワーク保持孔61のうちの一部にのみカトラリーレスト材31をセットする場合でも、原点はワーク保持板54に対して設定されるから、セットされたカトラリーレスト材31において当該位置ずれは抑制される。また、例えば6枚を超える数のカトラリーレスト材31に対して凹凸模様Raを付与する場合であっても、各作業ロット(最大枚数は6枚)同士での位置ずれも抑制される。このように、固定板53とワーク保持板54とを用いることにより、パターンデータに基づき照射を行う機能をもった市販のレーザ加工装置を用いても、装飾等の位置ずれが確実に抑制される。また、カトラリーレスト材31とワーク保持孔61とは、四隅が突出した略矩形に形成されているから、突出した四隅が互いに嵌め合わされて、カトラリーレスト材31はより高精度に位置決めされる。そのため、凹凸模様RAの位置ずれが確実かつより小さく抑えられる。これにより得られるカトラリーレスト10(
図1、
図2参照)は、位置ずれが抑制された装飾等の凹凸模様RAをもち、意匠性に優れる。またカトラリーレスト10は、四隅が突出した脚部10bを有することから食卓等のテーブル等に載置した際の安定性に優れるとともに、脚部10bが角丸形状であることから、テーブル等を傷付ける可能性も低い。
【0034】
ワーク保持孔61は、
図6に示すようにカトラリーレスト材31とのクリアランスCLa、CLbが、カトラリーレスト材31におけるレーザ51(
図3参照)の照射径70よりも小さくなるように形成されている。これにより、カトラリーレスト材31における位置ずれがより小さく抑制されるとともに、より確実に抑制される。ただし、取り外し孔部61aが形成されている場合には、取り外し孔部61aが形成されている領域での当該クリアランスについてはこの限りではない。クリアランスCLa、CLbは、ワーク保持孔61の中央71に関して対称な2箇所の一例である。これらクリアランスCLa、CLbのそれぞれは、大きくても照射径70の1/2とすることがより好ましく、大きくても照射径70の1/4とすることがさらに好ましい。これにより、凹凸模様RA(
図2参照)のカトラリーレスト材31における位置ずれがより小さく抑えられるとともに、さらに確実に抑えられる。同様の観点から、クリアランスCLaとクリアランスCLbとの和は、大きくても照射径70と等しいことが好ましく、大きくても照射径70の1/2であることがさらに好ましい。クリアランスCLa、CLbのそれぞれは、0.04mm以上であることが凹凸模様RAの付与後のカトラリーレスト材31をワーク保持板54からより取り外し易いことから好ましく、0.05mm以上であることがより好ましい。本例における照射径70は、0.2mm、クリアランスCLa、CLbはそれぞれ0.05mmというように照射径70の1/4とし、両者の和は照射径70の1/2である。
【0035】
本例では、6枚のカトラリーレスト材31に対して、互いに異なる凹凸模様RAを施しているが、互いの凹凸模様RAの同異は特に限定されない。本例では斜め方向に延びたドット柄の領域が複数並んだ凹凸模様RAが施されている(
図1(A)、
図2(B)~図(D)参照)が凹凸模様RAはかかる模様に限定されない。また、カトラリーレスト材31の他方の表面(図示無し)にも凹凸模様RAを形成する場合には、カトラリーレスト材31を表裏反転させてワーク保持孔61に再び嵌め込んでレーザ51(
図3参照)を照射すればよい。
【0036】
曲げ工程は、カトラリーレスト材31を、凹凸模様RAが施された面側に凸である断面U字状に湾曲させて、カトラリーレスト10とする工程である。曲げ工程は、市販されるベンディング装置(曲げ加工装置、ベンダー)により実施することができ、本例でも市販のベンディング装置を用いている。曲げ工程は、カトラリーレスト10の曲率に応じた型を予め準備しておき、この型に沿って曲げることにより行うとよい。
図1Aに示すようにカトラリーレスト10の本体部分10aから脚部10bまでの曲率が連続した断面U字状に湾曲させる工程である。しかし、これはあくまで一例であり曲率に制限はなく曲率を高くすることも低くすることも可能である。得られるカトラリーレスト10は、湾曲形状の板状に形成されているから、複数を重ね合わせることができるので、保管するためのスペースが抑えられる他、複数の持ち運びがしやすい。
【符号の説明】
【0037】
11,21,23,25 カトラリーレスト
10a,21a,25a 本体部分
10b,21b,25b 脚部
31 カトラリーレスト材
37 ワーク保持ユニット
40 レーザ加工装置
42 載置ステージ
51 レーザ
53 固定板
54 ワーク保持板
61 ワーク保持孔
56,58,63,65 ビス穴
59,66 ビス
61 ワーク保持孔
70 照射径
CLa,CLb クリアランス