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2023-121906難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121906
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20230825BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230825BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20230825BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230825BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20230825BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230825BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20230825BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K3/013
C08K5/5399
C08K3/04
C08K3/10
C08K3/34
C08K3/40
C08K3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025253
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】小田 晃司
(72)【発明者】
【氏名】角田 敦
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC063
4J002BD152
4J002BN153
4J002BP013
4J002CG011
4J002DA026
4J002DA036
4J002DC006
4J002DE136
4J002DJ006
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DK006
4J002DL007
4J002EW158
4J002FA047
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD049
4J002FD059
4J002FD138
4J002FD202
4J002FD203
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】衝撃強度、難燃性、表面性および耐久性に優れる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品を提供する。
【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、(B)無機充填剤(B成分)0.1~160重量部、C)ホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有するホスファゼン(C成分)1~45重量部、(D)ドリップ防止剤(D成分)0.05~4.0重量部含有することを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、(B)無機充填剤(B成分)0.1~160重量部、(C)ホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有するホスファゼン(C成分)1~45重量部、(D)ドリップ防止剤(D成分)0.05~4重量部含有することを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
B成分が炭素系充填剤、ケイ酸塩鉱物、ガラス系充填剤、少なくとも2種の金属を含むレーザー照射立体回路成形用添加剤、金属酸化物、ホウ素系充填剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の無機充填剤である請求項1記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
B成分が炭素繊維、カーボンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、マイカ、タルク、ウォラストナイト、カオリン、ガラス繊維、ガラスフレーク、クロムとスズおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも2種の金属を含む化合物、酸化チタン、窒化ホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の無機充填剤である請求項1または2に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
A成分がポリカーボネート樹脂組成物の成形品の回収物を粉砕して得られた再生ポリカーボネート樹脂を含む請求項1~3のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
A成分が、下記式(1)で表されるポリカーボネートブロックおよび下記式(3)で表されるポリジオルガノシロキサンブロックからなるポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂(A-1成分)を1~100重量%含む芳香族ポリカーボネート樹脂であり、かつA-1成分100重量%中のポリジオルガノシロキサン含有量が0.05~20.0重量%である請求項1~4のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
(上記一般式(1)において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、e及びfは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
【化2】
(上記一般式(2)においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、gは1~10の整数、hは4~7の整数である。)
【化3】
(上記一般式(3)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。)
【請求項6】
A成分100重量部に対して、(E)衝撃改質剤として、ゴム質重合体(E-1成分)または芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体(E-2成分)を0.1~50重量部を含有する請求項1~5のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
E-1成分が、ジエン系ゴム、エチレン系ゴム、アクリル系ゴムおよびシリコーン系ゴムよりなる群から選ばれる少なくとも1種のゴム成分の存在下で、アクリル系単量体、芳香族ビニル系単量体、アクリル系単量体とアクリル系単量体と共重合可能な単量体との混合物、または芳香族ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体との混合物を共重合することにより得られるゴム質重合体、E-2成分がSEBS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEP(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体)及びSEEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)からなる群より選ばれる1種以上の芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体である請求項6に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
A成分100重量部に対し、(F)カルボキシル基および/またはその酸無水物基を有する酸変性ポリオレフィン樹脂(F成分)0.01~20重量部を含有してなる請求項1~7のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
A成分100重量部に対し、(G)リン系安定剤(G成分)0.001~1重量部を含有してなる請求項1~8のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項10】
A成分100重量部に対し、(H)紫外線吸収剤(H成分)0.01~15重量部を含有してなる請求項1~9のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関するものである。さらに詳細には、ポリカーボネート樹脂、無機充填剤、ホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有するホスファゼンおよびドリップ防止剤を配合することにより、衝撃強度、難燃性、表面性および耐久性に優れる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、優れた機械特性、寸法安定性、電気的特性、熱的性質を有しているため、自動車分野、OA機器分野、電子電気機器分野、通信分野等に広く利用されている。一方、近年は製品の小型・軽量化に伴いOA機器、家電製品等の用途に加え自動車分野や通信分野でも、使用する樹脂材料の難燃化に加え、高衝撃強度の要望が強まっている。これらの要望に応えるためにポリカーボネート樹脂に無機充填剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物において、難燃化の検討が数多くなされている。
【0003】
従来、かかるポリカーボネート樹脂組成物においては臭素原子等を有するハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモン等の難燃助剤の併用が一般的であったが、燃焼時の有害性物質の発生問題からハロゲン系化合物を含まない難燃化の検討が盛んになってきた。例えばポリカーボネート樹脂とガラス繊維にトリフェニルホスフェートとフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを配合する方法(特許文献1)、レーザーダイレクトストラクチャリングに縮合リン酸エステルであるホスフェート系オリゴマーを配合する方法(特許文献2)、ポリカーボネート樹脂とタルクに環状リン酸エステルとフッ素樹脂を配合する方法(特許文献3)等が提案されている。一方で、近年は製品の安全性、製品寿命の長期化による環境負荷低減、メーカーの製品保証等の観点から長期使用における性能保持性が極めて重要視されてきている。
【0004】
しかしながら、これらのリン酸エステル系の難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物はその長期使用において、配合したリン酸エステル系の難燃剤が加水分解し、この分解物がポリカーボネート樹脂のカーボネート結合の加水分解を促進させ、例えば衝撃強度や難燃性等が著しく低下するという問題点がある。
【0005】
かかる問題を解決するため、例えばポリカーボネート樹脂と環状フェノキシホスファゼンとポリテトラフルオロエチレンに、炭素繊維を配合する方法(特許文献4)、ガラス繊維を配合する方法(特許文献5)、タルクを配合する方法(特許文献6)、ガラス繊維にレーザーダイレクトストラクチャリングを配合する方法(特許文献7)、芳香族ポリカーボネート樹脂とホスファゼンと無機充填剤にポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を配合する方法(特許文献8)などが提案されている。
【0006】
ところで近年、ポリカーボネート樹脂と無機充填剤からなるポリカーボネート樹脂組成物においては、屋内外を含めた使用環境の多様化やクローズドリサイクルによる再生材の利用率向上などにより、UL746C f1定格認証に代表される紫外線や風雨に晒されても劣化しにくい耐久性が求められている。しかしながら、上述した従来のポリカーボネート/無機充填剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物ではUL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度と難燃性の低下抑制が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-278990号公報
【特許文献2】特開2015-108119号公報
【特許文献3】特開平11-256022号公報
【特許文献4】特開2015-137308号公報
【特許文献5】WO2020/118478号公報
【特許文献6】WO2020/212245号公報
【特許文献7】特開2015-108120号公報
【特許文献8】特開2015-137307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑み、本発明の目的は、衝撃強度、難燃性、表面性および耐久性に優れる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂、無機充填剤、ホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有するホスファゼンおよびドリップ防止剤からなる樹脂組成物を得ることで、衝撃強度、難燃性、表面性および長期耐久性に優れる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を得る方法を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、上記課題は、下記1~11項により達成される。
【0010】
1.(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、(B)無機充填剤(B成分)0.1~160重量部、(C)ホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有するホスファゼン(C成分)1~45重量部、(D)ドリップ防止剤(D成分)0.05~4重量部含有することを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
2.B成分が炭素系充填剤、ケイ酸塩鉱物、ガラス系充填剤、少なくとも2種の金属を含むレーザー照射立体回路成形用添加剤、金属酸化物、ホウ素系充填剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の無機充填剤である前項1記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
3.B成分が炭素繊維、カーボンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、マイカ、タルク、ウォラストナイト、カオリン、ガラス繊維、ガラスフレーク、クロムとスズおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも2種の金属を含む化合物、酸化チタン、窒化ホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の無機充填剤である前項1または2に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
4.A成分がポリカーボネート樹脂組成物の成形品の回収物を粉砕して得られた再生ポリカーボネート樹脂を含む前項1~3のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
5.A成分が、下記式(1)で表されるポリカーボネートブロックおよび下記式(3)で表されるポリジオルガノシロキサンブロックからなるポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂(A-1成分)を1~100重量%含む芳香族ポリカーボネート樹脂であり、かつA-1成分100重量%中のポリジオルガノシロキサン含有量が0.05~20.0重量%である前項1~4のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【0011】
【化1】
【0012】
(上記一般式(1)において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、e及びfは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
【0013】
【化2】
【0014】
(上記一般式(2)においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、gは1~10の整数、hは4~7の整数である。)
【0015】
【化3】
【0016】
(上記一般式(3)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。)
【0017】
6.A成分100重量部に対して、(E)衝撃改質剤として、ゴム質重合体(E-1成分)または芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体(E-2成分)を0.1~50重量部を含有する前項1~5のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
7.E-1成分が、ジエン系ゴム、エチレン系ゴム、アクリル系ゴムおよびシリコーン系ゴムよりなる群から選ばれる少なくとも1種のゴム成分の存在下で、アクリル系単量体、芳香族ビニル系単量体、アクリル系単量体とアクリル系単量体と共重合可能な単量体との混合物、または芳香族ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体との混合物を共重合することにより得られるゴム質重合体、E-2成分がSEBS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEP(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体)及びSEEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)からなる群より選ばれる1種以上の芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体である前項6に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
8.A成分100重量部に対し、(F)カルボキシル基および/またはその酸無水物基を有する酸変性ポリオレフィン樹脂(F成分)0.01~20重量部を含有してなる前項1~7のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
9.A成分100重量部に対し、(G)リン系安定剤(G成分)0.001~1重量部を含有してなる前項1~8のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
10.A成分100重量部に対し、(H)紫外線吸収剤(H成分)0.01~15重量部を含有してなる前項1~9のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
11.前項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0018】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、衝撃強度、難燃性、表面性および耐久性を高い次元で満たしていることから、住宅設備用途、建材用途、生活資材用途、インフラ設備用途、自動車用途、OA・EE用途、その他の各種分野において幅広く有用であり、特に耐久性が求められる屋外用途において有用である。したがって本発明の奏する産業上の効果は極めて大である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0020】
(A成分:ポリカーボネート樹脂)
本発明において使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0021】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましく、汎用されている。
【0022】
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ-トをA成分として使用することが可能である。
【0023】
例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis-TMC”と略称することがある)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ-ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは、該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
【0024】
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)~(3)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBCFが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10~95モル%(より好適には50~90モル%、さらに好適には60~85モル%)であり、かつBCFが5~90モル%(より好適には10~50モル%、さらに好適には15~40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBis-TMCが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート。
【0025】
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
【0026】
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6-172508号公報、特開平8-27370号公報、特開2001-55435号公報及び特開2002-117580号公報等に詳しく記載されている。
【0027】
なお、上述した各種のポリカーボネートの中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05~0.15%、好ましくは0.06~0.13%であり、かつTgが120~180℃であるポリカーボネート、あるいは
(ii)Tgが160~250℃、好ましくは170~230℃であり、かつ吸水率が0.10~0.30%、好ましくは0.13~0.30%、より好ましくは0.14~0.27%であるポリカーボネート。
【0028】
ここで、ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62-1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
【0029】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0030】
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明のポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0031】
分岐ポリカーボネート樹脂は、本発明の樹脂組成物に、ドリップ防止性能などを付与できる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0032】
分岐ポリカーボネートにおける多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、2価フェノールから誘導される構成単位とかかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.01~1モル%、より好ましくは0.05~0.9モル%、さらに好ましくは0.05~0.8モル%である。
【0033】
また、特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造単位が生ずる場合があるが、かかる分岐構造単位量についても、2価フェノールから誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.005~0.9モル%、さらに好ましくは0.01~0.8モル%であるものが好ましい。なお、かかる分岐構造の割合についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
【0034】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
【0035】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマー固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献および特許公報などで良く知られている方法である。
【0036】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、特に限定されないが、好ましくは1.8×10~4.0×10であり、より好ましくは2.0×10~3.5×10、さらに好ましくは2.2×10~3.0×10である。粘度平均分子量が1.8×10未満のポリカーボネート樹脂では、良好な機械的特性が得られない場合がある。一方、粘度平均分子量が4.0×10を超えるポリカーボネート樹脂から得られる樹脂組成物は、射出成形時の流動性に劣る点で汎用性に劣る。
【0037】
なお、前記ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が前記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。殊に、前記範囲(5×10)を超える粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、樹脂のエントロピー弾性が向上する。その結果、強化樹脂材料を構造部材に成形する際に使用されることのあるガスアシスト成形、および発泡成形において、良好な成形加工性を発現する。かかる成形加工性の改善は前記分岐ポリカーボネートよりもさらに良好である。より好適な態様としては、A成分が粘度平均分子量7×10~3×10のポリカーボネート樹脂A-1-1-1成分)、および粘度平均分子量1×10~3×10のポリカーボネート樹脂(A-1-1-2成分)からなり、その粘度平均分子量が1.6×10~3.5×10であるポリカーボネート樹脂(A-1-1成分)(以下、“高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂”と称することがある)も使用できる。
【0038】
かかる高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂(A-1-1成分)において、A-1-1-1成分の分子量は7×10~2×10が好ましく、より好ましくは8×10~2×10、さらに好ましくは1×10~2×10、特に好ましくは1×10~1.6×10である。またA-1-1-2成分の分子量は1×10~2.5×10が好ましく、より好ましくは1.1×10~2.4×10、さらに好ましくは1.2×10~2.4×10、特に好ましくは1.2×10~2.3×10である。
【0039】
高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂(A-1-1成分)は前記A-1-1-1成分とA-1-1-2成分を種々の割合で混合し、所定の分子量範囲を満足するよう調整して得ることができる。好ましくは、A-1-1成分100重量%中、A-1-1-1成分が2~40重量%の場合であり、より好ましくはA-1-1-1成分が3~30重量%であり、さらに好ましくはA-1-1-1成分が4~20重量%であり、特に好ましくはA-1-1-1成分が5~20重量%である。
【0040】
また、A-1-1成分の調製方法としては、(1)A-1-1-1成分とA-1-1-2成分とを、それぞれ独立に重合しこれらを混合する方法、(2)特開平5-306336号公報に示される方法に代表される、GPC法による分子量分布チャートにおいて複数のポリマーピークを示すポリカーボネート樹脂を同一系内において製造する方法を用い、かかるポリカーボネート樹脂を本発明のA-1-1成分の条件を満足するよう製造する方法、および(3)かかる製造方法((2)の製造法)により得られたポリカーボネート樹脂と、別途製造されたA-1-1-1成分および/またはA-1-1-2成分とを混合する方法などを挙げることができる。
【0041】
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
なお、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の算出は次の要領で行なわれる。すなわち、該組成物を、その20~30倍重量の塩化メチレンと混合し、組成物中の可溶分を溶解させる。かかる可溶分をセライト濾過により採取する。その後得られた溶液中の溶媒を除去する。溶媒除去後の固体を十分に乾燥し、塩化メチレンに溶解する成分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上記と同様にして20℃における比粘度を求め、該比粘度から上記と同様にして粘度平均分子量Mを算出する。
【0042】
本発明のポリカーボネート樹脂(A成分)としてポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を使用することも出来る。ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂とは下記一般式(1)で表される二価フェノールから誘導された単位および下記一般式(3)で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンから誘導された単位の共重合樹脂であることが好ましい。
【0043】
【化4】
【0044】
[上記一般式(1)において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、e及びfは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。]
【0045】
【化5】
【0046】
[上記一般式(2)においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、gは1~10の整数、hは4~7の整数である。]
【0047】
【化6】
【0048】
[上記一般式(3)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。]
【0049】
一般式(1)で表される二価フェノール(I)としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,3’-ビフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’-ジフェニル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’-(1,3-アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
【0050】
なかでも、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンが好ましく、殊に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)、4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記一般式(3)で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンとしては、例えば下記に示すような化合物が好適に用いられる。
【0052】
【化7】
【0053】
ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、オレフィン性の不飽和炭素-炭素結合を有するフェノール類、好適にはビニルフェノール、2-アリルフェノール、イソプロペニルフェノール、2-メトキシ-4-アリルフェノールを所定の重合度を有するポリシロキサン鎖の末端に、ハイドロシリレーション反応させることにより容易に製造される。なかでも、(2-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサン、(2-メトキシ-4-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサンが好ましく、殊に(2-アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサン、(2-メトキシ-4-アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサンが好ましい。ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、その分子量分布(Mw/Mn)が3以下であることが好ましい。さらに優れた高温成形時の低アウトガス性と低温衝撃性を発現させるために、かかる分子量分布(Mw/Mn)はより好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2以下である。かかる好適な範囲の上限を超えると高温成形時のアウトガス発生量が多く、また、低温衝撃性に劣る場合がある。
【0054】
また、高度な耐衝撃性を実現するためにヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)のジオルガノシロキサン重合度(p+q)は4以上150以下の自然数が適切である。かかるジオルガノシロキサン重合度(p+q)は好ましくは5以上140以下、より好ましくは10以上120以下、更に好ましくは14以上100以下である。かかる好適な範囲の下限未満では、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合体の特徴である耐衝撃性が有効に発現せず、かかる好適な範囲の上限を超えると外観不良が現れる。
【0055】
ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂全重量に占めるポリジオルガノシロキサン含有量は0.05~20重量%が好ましい。かかるポリジオルガノシロキサン成分含有量はより好ましくは0.1~18重量%、さらに好ましくは0.5~15重量%である。かかる好適な範囲の下限以上では、耐衝撃性や難燃性に優れ、かかる好適な範囲の上限以下では、成形条件の影響を受けにくい安定した外観が得られやすい。かかるポリジオルガノシロキサン重合度、ポリジオルガノシロキサン含有量は、1H-NMR測定により算出することが可能である。
【0056】
本発明において、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は1種のみを用いてもよく、また、2種以上を用いてもよい。
また、本発明の妨げにならない範囲で、上記二価フェノール(I)、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)以外の他のコモノマーを共重合体の全重量に対して10重量%以下の範囲で併用することもできる。
【0057】
本発明においては、あらかじめ水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中における二価フェノール(I)と炭酸エステル形成性化合物の反応により末端クロロホルメート基を有するオリゴマーを含む混合溶液を調製する。
【0058】
二価フェノール(I)のオリゴマーを生成するにあたり、本発明の方法に用いられる二価フェノール(I)の全量を一度にオリゴマーにしてもよく、又は、その一部を後添加モノマーとして後段の界面重縮合反応に反応原料として添加してもよい。後添加モノマーとは、後段の重縮合反応を速やかに進行させるために加えるものであり、必要のない場合には敢えて加える必要はない。
このオリゴマー生成反応の方式は特に限定はされないが、通常、酸結合剤の存在下、溶媒中で行う方式が好適である。
【0059】
炭酸エステル形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。また、ホスゲン等のガス状の炭酸エステル形成性化合物を使用する場合、これを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。
【0060】
前記酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ピリジン等の有機塩基あるいはこれらの混合物などが用いられる。酸結合剤の使用割合も、上記同様に、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜定めればよい。具体的には、オリゴマーの形成に使用する二価フェノール(I)のモル数(通常1モルは2当量に相当)に対して2当量若しくはこれより若干過剰量の酸結合剤を用いることが好ましい。
【0061】
前記溶媒としては、公知のポリカーボネートの製造に使用されるものなど各種の反応に不活性な溶媒を1種単独であるいは混合溶媒として使用すればよい。代表的な例としては、例えば、キシレン等の炭化水素溶媒、塩化メチレン、クロロベンゼンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。特に塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒が好適に用いられる。
【0062】
オリゴマー生成の反応圧力は特に制限はなく、常圧、加圧、減圧のいずれでもよいが、通常常圧下で反応を行うことが有利である。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は他の条件に左右され一概に規定できないが、通常、0.2~10時間で行われる。オリゴマー生成反応のpH範囲は、公知の界面反応条件と同様であり、pHは常に10以上に調製される。
【0063】
本発明はこのようにして、末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のオリゴマーを含む混合溶液を得た後、該混合溶液を攪拌しながら分子量分布(Mw/Mn)が3以下まで高度に精製された一般式(4)で表わされるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)を二価フェノール(I)に加え、該ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)と該オリゴマーを界面重縮合させることによりポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合体を得る。
【0064】
【化8】
【0065】
(上記一般式(4)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。)
【0066】
界面重縮合反応を行うにあたり、酸結合剤を反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜追加してもよい。酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ピリジン等の有機塩基あるいはこれらの混合物などが用いられる。具体的には、使用するヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)、又は上記の如く二価フェノール(I)の一部を後添加モノマーとしてこの反応段階に添加する場合には、後添加分の二価フェノール(I)とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との合計モル数(通常1モルは2当量に相当)に対して2当量若しくはこれより過剰量のアルカリを用いることが好ましい。
【0067】
二価フェノール(I)のオリゴマーとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との界面重縮合反応による重縮合は、上記混合液を激しく攪拌することにより行われる。
【0068】
かかる重合反応においては、末端停止剤或いは分子量調節剤が通常使用される。末端停止剤としては一価のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられ、通常のフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、トリブロモフェノールなどの他に、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸クロライド、脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、ヒドロキシフェニルアルキル酸エステル、アルキルエーテルフェノールなどが例示される。その使用量は用いる全ての二価フェノール系化合物100モルに対して、100~0.5モル、好ましくは50~2モルの範囲であり、二種以上の化合物を併用することも当然に可能である。
【0069】
重縮合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などの触媒を添加してもよい。
かかる重合反応の反応時間は、好ましくは30分以上、更に好ましくは50分以上である。所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよい。
【0070】
分岐化剤を上記の二価フェノール系化合物と併用して分岐化ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサンとすることができる。かかる分岐ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。分岐ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂中の多官能性化合物の割合は、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂全量中、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.005~0.9モル%、さらに好ましくは0.01~0.8モル%、特に好ましくは0.05~0.4モル%である。なお、かかる分岐構造量についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
【0071】
反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は反応温度等の他の条件によって異なるので一概に規定はできないが、通常、0.5~10時間で行われる。
【0072】
場合により、得られたポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂に適宜物理的処理(混合、分画など)及び/又は化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理など)を施して所望の還元粘度[ηSP/c]のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として取得することもできる。
【0073】
得られた反応生成物(粗生成物)は公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として回収することができる。
【0074】
ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂成形品中のポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズは、1~60nmの範囲が好ましい。かかる平均サイズはより好ましくは3~55nm、更に好ましくは5~50nmである。かかる好適な範囲の下限未満では、耐衝撃性や難燃性が十分に発揮されず、かかる好適な範囲の上限を超えると耐衝撃性が安定して発揮されない場合がある。
【0075】
また、上記式(1)で表されるポリカーボネートブロックおよび上記式(3)で表されるポリジオルガノシロキサンブロックからなるポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂(A-1成分)を1~100重量%含む芳香族ポリカーボネート樹脂であり、かつA-1成分100重量%中のポリジオルガノシロキサン含有量が0.05~20.0重量%であることが好ましい。
【0076】
さらに、ポリカーボネート樹脂として、ポリカーボネート樹脂組成物の成形品の回収物を粉砕して得られた再生ポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート樹脂が好ましく使用される。回収物としては、使用済みの製品から回収した回収物が好ましく、使用済みの製品としては防音壁、自動車窓、透光屋根材、および自動車サンルーフなどに代表される各種グレージング材、風防や自動車ヘッドランプレンズなどの透明部材、水ボトルなどの容器、導光板、メガネレンズ、並びに光記録媒体などが好ましく挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
【0077】
(B成分:無機充填剤)
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の効果を発揮する範囲において、各種無機充填剤を配合することができる。例えば、ケイ酸塩鉱物、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、グラファイト、気相成長法極細炭素繊維(繊維径が0.1μm未満)、カーボンナノチューブ(繊維径が0.1μm未満であり、中空状)、フラーレン、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、金属酸化物粒子、金属酸化物繊維、金属酸化物バルーン、並びに各種ウイスカー(チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、および塩基性硫酸マグネシウムなど)などが例示される。これらの無機充填剤は1種もしくは2種以上を併用して含むものであってもよい。
【0078】
本発明では従来公知の充填剤が使用できるが、好ましくは炭素系充填剤、ケイ酸塩鉱物、ガラス系充填剤、少なくとも2種の金属を含むレーザー照射立体回路成形用添加剤、金属酸化物、ホウ素系充填剤から選択される少なくとも1種の充填剤である。
【0079】
(B-1;炭素系充填剤)
本発明で好適に使用される繊維状炭素系充填剤としては、例えばカーボンファイバー、金属コートカーボンファイバー、カーボンミルドファイバー、気相成長カーボンファイバー、およびカーボンナノチューブ等が挙げられる。カーボンナノチューブは繊維径0.003~0.1μm、単層、2層、および多層のいずれであってもよく、多層(いわゆるMWCNT)が好ましい。これらの中でも機械的強度に優れる点、並びに良好な導電性を付与できる点において、カーボンファイバー、および金属コートカーボンファイバーが好ましい。尚、良好な導電性は近年のデジタル精密機器(例えばデジタルスチルカメラに代表される)において、樹脂材料に求められる重要な特性の1つになっている。
【0080】
カーボンファイバーとしては、セルロース系、ポリアクリロニトリル系、およびピッチ系などのいずれも使用可能である。また芳香族スルホン酸類またはそれらの塩のメチレン型結合による重合体と溶媒よりなる原料組成を防止または成形し、次いで炭化するなどの方法に代表される不融化工程を経ない紡糸を行う方法により得られたものも使用可能である。更に汎用タイプ、中弾性率タイプ、および高弾性率タイプのいずれも使用可能である。これらの中でも特にポリアクリロニトリル系の高弾性率タイプが好ましい。
【0081】
また、カーボンファイバーの平均繊維径は特に限定されないが、通常3~15μmであり、好ましくは5~13μmである。かかる範囲の平均繊維径を持つカーボンファイバーは、成形品外観を損なうことなく良好な機械的強度および疲労特性を発現することができる。また、カーボンファイバーの好ましい繊維長は、強化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中における数平均繊維長として60~500μm、好ましくは80~400μm、特に好ましくは100~300μmのものである。尚、かかる数平均繊維長は、成形品の高温灰化、溶剤による溶解、および薬品による分解等の処理で採取されるカーボンファイバーの残さから光学顕微鏡観察などから画像解析装置により算出される値である。また、かかる値の算出に際しては繊維長以下の長さのものはカウントしない方法による値である。カーボンファイバーのアスペクト比は、好ましくは10~200の範囲、より好ましくは15~100の範囲、更に好ましくは20~50の範囲である。繊維状炭素充填剤のアスペクト比は平均繊維長を平均繊維径で除した値をいう。
【0082】
さらにカーボンファイバーの表面はマトリックス樹脂との密着性を高め、機械的強度を向上する目的で酸化処理されることが好ましい。酸化処理方法は特に限定されないが、例えば、(1)繊維状炭素充填剤を酸もしくはアルカリまたはそれらの塩、あるいは酸化性気体により処理する方法、(2)繊維状炭素充填剤化可能な繊維または繊維状炭素充填剤を、含酸素化合物を含む不活性ガスの存在下、700℃以上の温度で焼成する方法、および(3)繊維状炭素充填剤を酸化処理した後、不活性ガスの存在下で熱処理する方法などが好適に例示される。
【0083】
金属コートカーボンファイバーは、カーボンファイバーの表面に金属層をコートしたものである。金属としては、銀、銅、ニッケル、およびアルミニウムなどが挙げられ、ニッケルが金属層の耐腐食性の点から好ましい。金属コートの方法としては、先にガラス充填剤における異種材料による表面被覆で述べた各種の方法が採用できる。中でもメッキ法が好適に利用される。また、かかる金属コートカーボンファイバーの場合も、元となるカーボンファイバーとしては上記のカーボンファイバーとして挙げたものが使用可能である。金属被覆層の厚みは好ましくは0.1~1μm、より好ましくは0.15~0.5μmである。更に好ましくは0.2~0.35μmである。
【0084】
かかるカーボンファイバー、金属コートカーボンファイバーは、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、およびウレタン系樹脂等で集束処理されたものが好ましい。特にウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂で処理された繊維状炭素充填剤は、機械的強度に優れることから本発明において好適である。
【0085】
本発明で好適に使用される非繊維状炭素充填剤としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、フラーレン等が挙げられる。これらの中でも機械的強度、耐湿熱性、熱安定性の点から、カーボンブラック、黒鉛が好ましい。カーボンブラックとしては、DBP吸油量が100ml/100g~500ml/100gであるカーボンブラックが導電性の点で好ましい。かかるカーボンブラックは、一般的にはアセチレンブラック、ケッチェンブラックである。具体的には、例えば電気化学工業(株)製のデンカブラック、キャボット社製バルカンXC-72およびBP-2000、ライオン(株)製ケッチェンブラックECおよびケッチェンブラックEC-600JD等が挙げられる。
【0086】
黒鉛としては、鉱物名で石墨とされる天然黒鉛、または各種の人造黒鉛のいずれも利用することができる。天然黒鉛としては、土状黒鉛、鱗状黒鉛(塊状黒鉛とも称されるVein Graphite)および鱗片状黒鉛(Flake Graphite)のいずれを利用することもできる。また人造黒鉛は、無定形炭素を熱処理し不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行わせたものであり、一般炭素材料に使用される人造黒鉛の他、キッシュ黒鉛、分解黒鉛、および熱分解黒鉛などを含む。一般炭素材料に使用される人造黒鉛は、通常石油コークスや石炭系ピッチコークスを主原料として黒鉛化処理により製造される。
【0087】
本発明の黒鉛は、酸処理に代表される処理をすることで、熱膨張可能とした膨張黒鉛、または該膨張処理済みの黒鉛を含んでもよい。本発明の黒鉛の粒径は、2~300μmの範囲であることが好ましい。かかる粒径はより好ましくは5~200μm、さらに好ましくは7~100μm、特に好ましくは7~50μmである。かかる範囲を満足することにより、良好な機械的強度、成形品外観が達成される。一方、平均粒径が2μm未満であると剛性の向上効果が小さく、平均粒径が300μmを超えると耐衝撃性の低下が著しく、成形品表面にいわゆる黒鉛の浮きが目立つようになり好ましくない。
【0088】
本発明の黒鉛の固定炭素量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは98重量%以上である。また本発明の黒鉛の揮発分は、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。
【0089】
本発明における黒鉛の平均粒径は、樹脂組成物となる以前のC成分自体の粒径をいい、またかかる粒径はレーザー回折・散乱法によって求められたものをいう。
【0090】
また黒鉛の表面は、本発明の組成物の特性を損なわない限りにおいて熱可塑性樹脂との親和性を増すために、表面処理、例えばエポキシ処理、ウレタン処理、シランカップリング処理、および酸化処理等が施されていてもよい。
【0091】
かかる炭素系充填剤は、いずれのものでも使用可能であるが、ナトリウムイオンの含有量が少ない炭素系充填剤がより好ましい。好ましいナトリウムイオンの含有量は0.01~500ppm以下であり、より好ましくは0.1~400ppm以下であり、さらに好ましくは0.2~350ppmであり、よりさらに好ましくは0.3~300ppmであり、特に好ましくは0.3~280ppmである。ナトリウムイオンの含有量が特に少ない炭素系充填剤をB-1成分とすることによって、特に良好な熱安定性や耐加水分解性等の利点が得られ、UL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度と難燃性の低下が抑制される。
【0092】
ナトリウムイオンの量はICP-AES分析による元素分析により求められる。なお、ICP-AES分析による元素分析は下記の方法で実施される。すなわち、試料を硫酸、硝酸で加熱分解後、超純水で定容して検液とし、ICP-AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー製 SPS5100型)により、検液中の元素の定性分析と定量分析を実施する。
【0093】
(B-2;ケイ酸塩鉱物)
本発明のB成分として使用されるケイ酸塩鉱物は、少なくとも金属酸化物成分とSiO成分とからなる鉱物であり、オルトシリケート、ジシリケート、環状シリケート、および鎖状シリケートなどが好適である。B成分のケイ酸塩鉱物は結晶状態を取るものであり、また結晶の形状も繊維状や板状などの各種の形状を取ることができる。
【0094】
B成分のケイ酸塩鉱物は複合酸化物、酸素酸塩(イオン格子からなる)、固溶体のいずれの化合物でもよく、更に複合酸化物は単一酸化物の2種以上の組み合わせ、および単一酸化物と酸素酸塩との2種以上の組み合わせのいずれであってもよく、更に固溶体においても2種以上の金属酸化物の固溶体、および2種以上の酸素酸塩の固溶体のいずれであってもよい。
【0095】
B成分のケイ酸塩鉱物は、水和物であってもよい。水和物における結晶水の形態はSi-OHとして水素珪酸イオンとして入るもの、金属陽イオンに対して水酸イオン(OH-)としてイオン的に入るもの、および構造の隙間にHO分子として入るもののいずれの形態であってもよい。
【0096】
B成分のケイ酸塩鉱物は、天然物に対応する人工合成物を使用することもできる。人工合成物としては、従来公知の各種の方法、例えば固体反応、水熱反応、および超高圧反応などを利用した各種の合成法、から得られたケイ酸塩鉱物が利用できる。
【0097】
各金属酸化物成分(MO)におけるケイ酸塩鉱物の具体例としては以下のものが挙げられる。ここでカッコ内の表記はかかるケイ酸塩鉱物を主成分とする鉱物等の名称であり、例示された金属塩としてカッコ内の化合物が使用できることを意味する。
【0098】
Oをその成分に含むものとしては、KO・SiO、KO・4SiO・HO、KO・Al・2SiO(カルシライト)、KO・Al・4SiO(白リュウ石)、およびKO・Al・6SiO(正長石)、などが挙げられる。
【0099】
NaOをその成分に含むものとしては、NaO・SiO、およびその水化物、NaO・2SiO、2NaO・SiO、NaO・4SiO、NaO・3SiO・3HO、NaO・Al・2SiO、NaO・Al・4SiO(ヒスイ輝石)、2NaO・3CaO・5SiO、3NaO・2CaO・5SiO、およびNaO・Al・6SiO(曹長石)などが挙げられる。
【0100】
LiOをその成分に含むものとしては、LiO・SiO、2LiO・SiO、LiO・SiO・HO、3LiO・2SiO、LiO・Al・4SiO(ペタライト)、LiO・Al・2SiO(ユークリプタイト)、およびLiO・Al・4SiO(スポジュメン)などが挙げられる。
【0101】
BaOをその成分に含むものとしては、BaO・SiO、2BaO・SiO、BaO・Al・2SiO(セルシアン)、およびBaO・TiO・3SiO(ベントアイト)などが挙げられる。
【0102】
CaOをその成分に含むものとしては、3CaO・SiO(セメントクリンカー鉱物のエーライト)、2CaO・SiO(セメントクリンカー鉱物のビーライト)、2CaO・MgO・2SiO(オーケルマナイト)、2CaO・Al・SiO(ゲーレナイト)、オーケルマナイトとゲーレナイトとの固溶体(メリライト)、CaO・SiO(ウォラストナイト(α-型、β-型のいずれも含む))、CaO・MgO・2SiO(ジオプサイド)、CaO・MgO・SiO(灰苦土カンラン石)、3CaO・MgO・2SiO(メルウイナイト)、CaO・Al・2SiO(アノーサイト)、5CaO・6SiO・5HO(トバモライト、その他5CaO・6SiO・9HOなど)などのトバモライトグループ水和物、2CaO・SiO・HO(ヒレブランダイト)などのウォラストナイトグループ水和物、6CaO・6SiO・HO(ゾノトライト)などのゾノトライトグループ水和物、2CaO・SiO・2HO(ジャイロライト)などのジャイロライトグループ水和物、CaO・Al・2SiO・HO(ローソナイト)、CaO・FeO・2SiO(ヘデンキ石)、3CaO・2SiO(チルコアナイト)、3CaO・Al・3SiO(グロシュラ)、3CaO・Fe・3SiO(アンドラダイト)、6CaO・4Al・FeO・SiO(プレオクロアイト)、並びにクリノゾイサイト、紅レン石、褐レン石、ベスブ石、オノ石、スコウタイト、およびオージャイトなどが挙げられる。
【0103】
更にCaOをその成分に含むケイ酸塩鉱物としてポルトランドセメントを挙げることができる。ポルトランドセメントの種類は特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、中よう熱、耐硫酸塩、白色などのいずれの種類も使用できる。更に各種の混合セメント、例えば高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどもB成分として使用できる。
またその他のCaOをその成分に含むケイ酸塩鉱物として高炉スラグやフェライトなどを挙げることができる。
【0104】
ZnOをその成分に含むものとしては、ZnO・SiO、2ZnO・SiO(トロースタイト)、および4ZnO・2SiO・HO(異極鉱)などが挙げられる。MnOをその成分に含むものとしては、MnO・SiO、2MnO・SiO、CaO・4MnO・5SiO(ロードナイト)およびコーズライトなどが挙げられる。
【0105】
FeOをその成分に含むものとしては、FeO・SiO(フェロシライト)、2FeO・SiO(鉄カンラン石)、3FeO・Al・3SiO(アルマンジン)、および2CaO・5FeO・8SiO・HO(テツアクチノセン石)などが挙げられる。
【0106】
CoOをその成分に含むものとしては、CoO・SiOおよび2CoO・SiOなどが挙げられる。
【0107】
MgOをその成分に含むものとしては、MgO・SiO(ステアタイト、エンスタタイト)、2MgO・SiO(フォルステライト)、3MgO・Al・3SiO(バイロープ)、2MgO・2Al・5SiO(コーディエライト)、2MgO・3SiO・5HO、3MgO・4SiO・HO(タルク)、5MgO・8SiO・9HO(アタパルジャイト)、4MgO・6SiO・7HO(セピオライト)、3MgO・2SiO・2HO(クリソライト)、5MgO・2CaO・8SiO・HO(透セン石)、5MgO・Al・3SiO・4HO(緑泥石)、KO・6MgO・Al・6SiO・2HO(フロゴバイト)、NaO・3MgO・3Al・8SiO・HO(ランセン石)、並びにマグネシウム電気石、直セン石、カミントンセン石、バーミキュライト、スメクタイトなどが挙げられる。
【0108】
Feをその成分に含むものとしては、Fe・SiOなどが挙げられる。
ZrOをその成分に含むものとしては、ZrO・SiO(ジルコン)およびAZS耐火物などが挙げられる。
【0109】
Alをその成分に含むものとしては、Al・SiO(シリマナイト、アンダリューサイト、カイアナイト)、2Al・SiO、Al・3SiO、3Al・2SiO(ムライト)、Al・2SiO・2HO(カオリナイト)、Al・4SiO・HO(パイロフィライト)、Al・4SiO・HO(ベントナイト)、KO・3NaO・4Al・8SiO(カスミ石)、KO・3Al・6SiO・2HO(マスコバイト、セリサイト)、KO・6MgO・Al・6SiO・2HO(フロゴバイト)、並びに各種のゼオライト、フッ素金雲母、および黒雲母などを挙げることができる。
【0110】
上記ケイ酸塩鉱物の中でも特に好適であるのは、マイカ、タルク、およびワラストナイトである。
【0111】
(タルク)
本発明におけるタルクとは、化学組成的には含水珪酸マグネシウムであり、一般的には化学式4SiO・3MgO・2HOで表され、通常層状構造を持った鱗片状の粒子であり、また組成的にはSiOを56~65重量%、MgOを28~35重量%、HO約5重量%程度から構成されている。その他の少量成分としてFeが0.03~1.2重量%、Alが0.05~1.5重量%、CaOが0.05~1.2重量%、KOが0.2重量%以下、NaOが0.2重量%以下などを含有している。タルクの粒子径は、沈降法により測定される平均粒径が0.1~15μm(より好ましくは0.2~12μm、更に好ましくは0.3~10μm、特に好ましくは0.5~5μm)の範囲であることが好ましい。更にかさ密度を0.5(g/cm3)以上としたタルクを原料として使用することが特に好適である。タルクの平均粒径は、液相沈降法の1つであるX線透過法で測定されたD50(粒子径分布のメジアン径)をいう。かかる測定を行う装置の具体例としてはマイクロメリティックス社製Sedigraph5100などを挙げることができる。
【0112】
またタルクを原石から粉砕する際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、および容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。さらに粉砕後のタルクは、各種の分級機によって分級処理され、粒子径の分布が揃ったものが好適である。分級機としては特に制限はなく、インパクタ型慣性力分級機(バリアブルインパクターなど)、コアンダ効果利用型慣性力分級機(エルボージェットなど)、遠心場分級機(多段サイクロン、ミクロプレックス、ディスパージョンセパレーター、アキュカット、ターボクラシファイア、ターボプレックス、ミクロンセパレーター、およびスーパーセパレーターなど)などを挙げることができる。
【0113】
さらにタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であるものが好ましく、かかる製法としては脱気圧縮による方法、集束剤を使用し圧縮する方法等がある。特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要の集束剤樹脂成分を本発明の樹脂組成物中に混入させない点で好ましい。
【0114】
(マイカ)
マイカは、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒径が10~100μmのものを好ましく使用できる。より好ましくは平均粒径が20~50μmのものである。マイカの平均粒径が10μm未満では剛性に対する改良効果が十分でなく、100μmを越えても剛性の向上が十分でなく、衝撃特性等の機械的強度の低下も著しく好ましくない。マイカは、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01~1μmのものを好ましく使用できる。より好ましくは厚みが0.03~0.3μmである。アスペクト比としては好ましくは5~200、より好ましくは10~100のものを使用できる。また使用するマイカはマスコバイトマイカが好ましく、そのモース硬度は約3である。マスコバイトマイカはフロゴバイトなど他のマイカに比較してより高剛性および高強度を達成でき、本発明の課題をより良好なレベルにおいて解決する。また、マイカの粉砕法としては乾式粉砕法および湿式粉砕法のいずれで製造されたものであってもよい。乾式粉砕法の方が低コストで一般的であるが、一方湿式粉砕法は、マイカをより薄く細かく粉砕するのに有効であり、その結果樹脂組成物の剛性向上効果はより高くなる。
【0115】
(ワラストナイト)
ワラストナイトの繊維径は0.1~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.1~3μmが更に好ましい。またそのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は3以上が好ましい。アスペクト比の上限としては30以下が挙げられる。ここで繊維径は電子顕微鏡で強化フィラーを観察し、個々の繊維径を求め、その測定値から数平均繊維径を算出する。電子顕微鏡を使用するのは、対象とするレベルの大きさを正確に測定することが光学顕微鏡では困難なためである。繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のフィラーをランダムに抽出し、中央部の近いところで繊維径を測定し、得られた測定値より数平均繊維径を算出する。観察の倍率は約1000倍とし、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。一方平均繊維長の測定は、フィラーを光学顕微鏡で観察し、個々の長さを求め、その測定値から数平均繊維長を算出する。光学顕微鏡の観察は、フィラー同士があまり重なり合わないように分散されたサンプルを準備することから始まる。観察は対物レンズ20倍の条件で行い、その観察像を画素数が約25万であるCCDカメラに画像データとして取り込む。得られた画像データを画像解析装置を使用して、画像データの2点間の最大距離を求めるプログラムを使用して、繊維長を算出する。かかる条件の下では1画素当りの大きさが1.25μmの長さに相当し、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。
【0116】
本発明のワラストナイトは、その元来有する白色度を十分に樹脂組成物に反映させるため、原料鉱石中に混入する鉄分並びに原料鉱石を粉砕する際に機器の摩耗により混入する鉄分を磁選機によって極力取り除くことが好ましい。かかる磁選機処理によりワラストナイト中の鉄の含有量はFeに換算して、0.5重量%以下であることが好ましい。
【0117】
珪酸塩鉱物(より好適には、マイカ、タルク、ワラストナイト)は、表面処理されていないことが好ましいが、シランカップリング剤、高級脂肪酸エステル、およびワックスなどの各種表面処理剤で表面処理されていてもよい。さらに各種樹脂、高級脂肪酸エステル、およびワックスなどの集束剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
【0118】
(カオリン)
カオリンは、珪酸アルミ塩であり、通常は焼成することにより結晶水を脱水したものが好ましく用いられる。カオリンの化学成分は、Alが40~50質量%、SiOが50~60質量%程度含まれ、さらに小量成分として、NaO、TiO、CaO、Fe、MgOやKO等が含まれる場合も多い。カオリンの中でも、樹脂組成物を用いて得られる成型品外観の観点より、焼成カオリンが好ましい。
【0119】
かかるケイ酸塩鉱物は、いずれのものでも使用可能であるが、ナトリウムイオンの含有量が少ないケイ酸塩鉱物がより好ましい。好ましいナトリウムイオンの含有量は0.01~5000ppm以下であり、より好ましくは0.1~4000ppm以下であり、さらに好ましくは0.2~3500ppmであり、よりさらに好ましくは0.3~3000ppmであり、特に好ましくは0.3~2800ppmである。ナトリウムイオンの含有量が特に少ないケイ酸塩鉱物をB-2成分とすることによって、特に良好な熱安定性や耐加水分解性等の利点が得られ、UL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度と難燃性の低下が抑制される。
【0120】
(B-3;ガラス充填剤)
本発明で好適に使用されるガラス充填剤としては、ガラスファイバー、金属コートガラスファイバー、およびガラスミルドファイバー等が挙げられる。かかる繊維状ガラス充填剤の基体となるガラスファイバーは溶融ガラスを種々の方法にて延伸しながら急冷し、所定の繊維状にしたものである。かかる場合の急冷および延伸についても特に限定されるものではない。また、断面の形状は真円状の他に、楕円状、マユ状、扁平状および三つ葉状などの真円以外の形状であってもよい。更に真円状と真円以外の形状が混合したものでもよい。扁平状とは、繊維断面の長径の平均値が10~50μm、好ましくは15~40μm、より好ましくは20~35μmで、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5~8、好ましくは2~6、更に好ましくは2.5~5である形状である。
【0121】
また、ガラスファイバーの如き高アスペクト比を有する繊維状ガラス充填剤の平均繊維径は1~25μmが好ましく、3~17μmがより好ましい。この範囲の平均繊維径を持つ充填剤を使用した場合には、成形品外観を損なうことなく良好な機械的強度を発現することができる。また、高アスペクト比の繊維状ガラス充填剤の繊維長は、強化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中における数平均繊維長として、60~500μmが好ましく、100~400μmがより好ましく、120~350μmが特に好ましい。尚、かかる数平均繊維長は、成形品の高温灰化、溶剤による溶解、並びに薬品による分解等の処理で採取される充填剤の残さを光学顕微鏡観察した画像から画像解析装置により算出される値である。また、かかる値の算出に際しては繊維径を目安にそれ以下の長さのものはカウントしない方法による値である。高アスペクト比の繊維状ガラス充填剤のアスペクト比は、好ましくは10~200、より好ましくは15~100、更に好ましくは20~50である。充填剤のアスペクト比は平均繊維長を平均繊維径で除した値をいう。
【0122】
ガラスミルドファイバーは、通常ガラスファイバーをボールミルの如き粉砕機を用いて短繊維化して製造されるものである。ガラスミルドファイバーの如き低アスペクト比を有する繊維状ガラス充填剤のアスペクト比は、好ましくは2~10、より好ましくは3~8である。低アスペクト比の繊維状ガラス充填剤の繊維長は、強化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中における数平均繊維長として5~150μmが好ましく、9~80μmがより好ましい。またその平均繊維径は1~15μmが好ましく、より好ましくは3~13μmである。
【0123】
本発明で好適に使用される板状ガラス充填剤としては、ガラスフレーク、金属コートガラスフレーク、および金属酸化物コートガラスフレーク等が挙げられる。
【0124】
板状ガラス充填剤の基体となるガラスフレークは、円筒ブロー法やゾル-ゲル法などに方法によって製造される板状のガラスフィラーである。かかるガラスフレークの原料の大きさも粉砕や分級の程度により種々のものを選択可能である。原料に使用するガラスフレークの平均粒径は10~1000μmが好ましく、20~500μmがより好ましく、30~300μmが更に好ましい。上記範囲のものは取り扱い性と成形加工性との両立に優れるためである。通常板状ガラス充填剤は樹脂との溶融混練加工により割れが生じ、その平均粒径は小径化する。樹脂組成物中の板状ガラス充填剤の数平均粒径は10~200μmが好ましく、15~100μmがより好ましく、20~80μmが更に好ましい。尚、かかる数平均粒径は、成形品の高温灰化、溶剤による溶解、および薬品による分解等の処理で採取される板状ガラス充填剤の残さを光学顕微鏡観察した画像から画像解析装置により算出される値である。また、かかる値の算出に際してはフレーク厚みを目安にそれ以下の長さのものはカウントしない方法による値である。また厚みとしては0.5~10μmが好ましく、1~8μmがより好ましく、1.5~6μmが更に好ましい。上記数平均粒径および厚みを有する板状ガラス充填剤は良好な機械的強度、外観、成形加工性を達成する。
【0125】
上記の各種繊維状ガラス充填剤および板状ガラス充填剤のガラス組成は、Aガラス、Cガラス、Dガラス、Eガラス、SガラスおよびNEガラス等に代表される各種のガラス組成が適用され、特に限定されない。かかるガラス充填剤は、必要に応じてTiO2、SO3、およびP2O5等の成分を含有するものであってもよい。これらの中でもEガラス(無アルカリガラス)やNEガラスがより好ましい。またガラス充填剤は、周知の表面処理剤、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、またはアルミネートカップリング剤等で表面処理が施されたものが機械的強度の向上の点から好ましい。また、ガラスファイバー(金属コートまたは金属酸化物コートされたものを含む)、およびガラスフレーク(金属コートまたは金属酸化物コートされたものを含む)は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、およびウレタン系樹脂等で集束処理されたものが好ましく使用される。集束処理された充填剤の集束剤付着量は、充填剤100重量%中好ましくは0.5~8重量%、より好ましくは1~4重量%である。
【0126】
更に本発明の繊維状ガラス充填剤および板状ガラス充填剤は、異種材料が表面被覆されたものを含む。かかる異種材料としては金属および金属酸化物が好適に例示される。金属としては、銀、銅、ニッケル、およびアルミニウムなどが例示される。また金属酸化物としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、および酸化ケイ素などが例示される。かかる異種材料の表面被覆の方法としては特に限定されるものではなく、例えば公知の各種メッキ法(例えば、電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法(例えば熱CVD、MOCVD、プラズマCVDなど)、PVD法、およびスパッタリング法などを挙げることができる。
【0127】
かかるガラス充填剤は、いずれのものでも使用可能であるが、ナトリウムイオンの含有量が少ないガラス充填剤がより好ましい。好ましいナトリウムイオンの含有量は0.01~4000ppm以下であり、より好ましくは0.1~3500ppm以下であり、さらに好ましくは0.2~3300ppmであり、よりさらに好ましくは0.3~3000ppmであり、特に好ましくは0.3~2800ppmである。ナトリウムイオンの含有量が特に少ないガラス充填剤をB-3成分とすることによって、特に良好な熱安定性や耐加水分解性等の利点が得られ、UL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度と難燃性の低下が抑制される。
【0128】
(B-4:チタン系酸化物)
本発明に用いるチタン系酸化物は二酸化チタンである。かかる二酸化チタンは、通常各種着色用途に使用されるものが使用でき、それ自体広く知られたものである。TiO100重量%からなる二酸化チタンも存在する(尚、本発明においては二酸化チタンの二酸化チタン成分を”TiO”と表記し、表面処理剤を含む全体を”二酸化チタン”と表記する)。しかしながら、通常、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アンチモン、スズ、亜鉛などの各種金属の酸化物による表面処理がなされる。本発明においても、好ましい二酸化チタンは、金属酸化物の表面処理がなされたものである。尚、これらの表面処理のための金属酸化物成分は、一部がTiO粒子の内部に存在する態様であってもよい。
【0129】
更に二酸化チタンは有機化合物で表面処理されていることがより好ましい。かかる表面処理剤としては、ポリオール系、アミン系、およびシリコーン系などの各種処理剤を使用することができる。ポリオール系表面処理剤としては、例えばペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、およびトリメチロールプロパンなどが挙げられ、アミン系表面処理剤としては、例えばトリエタノールアミンの酢酸塩、およびトリメチロールアミンの酢酸塩などが挙げられ、シリコーン系表面処理剤としては、例えばハロゲン置換有機ケイ素化合物およびアルコキシ基および/またはSi-H基を含有する有機ケイ素化合物が例示され、特に後者の有機ケイ素化合物が好ましい。ハロゲン置換有機ケイ素化合物としてはアルキルクロロシランが例示され、アルコキシ基および/またはSi-H基を含有する有機ケイ素化合物としては、アルキルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシロキサン、およびアルキルハイドロジェンシロキサンなどが例示される。
【0130】
かかるシラン化合物およびシロキサン化合物は、そのアルキル基の一部がフェニル基で置換されていてもよいが、いずれもフェニル基の置換がないものがより好ましい。かかるアルキル基の炭素数は好ましくは1~30、より好ましくは1~12である。アルコキシ基は炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好適である。
【0131】
アルキルアルコキシシラン化合物はアルコキシ基を1~3のいずれを含有するものであってもよく、またこれらの混合物であってもよいが、2~3のアルコキシ基が好ましく、特に3のアルコキシ基が好ましい。アルキルアルコキシシラン化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、メチルオクチルジメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、およびオクタデシルトリメトキシシランなどが例示される。
【0132】
シロキサン化合物におけるアルコキシ基およびSi-H基の含有割合は、0.1~1.2mol/100gの範囲が好ましく、0.12~1mol/100gの範囲がより好ましく、0.15~0.6mol/100gの範囲が更に好ましい。かかる割合はアルカリ分解法より、シロキサン化合物の単位重量当たりに発生した水素またはアルコールの量を測定することにより求められる。
【0133】
一般的にシロキサン化合物の構造は、以下に示す4種類のシロキサン単位を任意に組み合わせることによって構成される。すなわち、
M単位:(CHSiO1/2、H(CHSiO1/2、H(CH)SiO1/2、(CH(CH=CH)SiO1/2、(CH(C)SiO1/2、(CH)(C)(CH=CH)SiO1/2等の1官能性シロキサン単位、
D単位:(CHSiO、H(CH)SiO、HSiO、H(C)SiO、(CH)(CH=CH)SiO、(CSiO等の2官能性シロキサン単位、
T単位:(CH)SiO3/2、(C)SiO3/2、HSiO3/2、(CH=CH)SiO3/2、(C)SiO3/2等の3官能性シロキサン単位、
Q単位:SiOで示される4官能性シロキサン単位である。
【0134】
上記シロキサン化合物の構造は、具体的には、示性式としてDn、Tp、MmDn、MmTp、MmQq、MmDnTp、MmDnQq、MmTpQq、MmDnTpQq、DnTp、DnQq、DnTpQqが挙げられる。この中で好ましいシリコーン化合物の構造は、MmDn、MmTp、MmDnTp、MmDnQqであり、さらに好ましい構造は、MmDnまたはMmDnTpである。ここで、前記示性式中の係数m、n、p、qは各シロキサン単位の重合度を表す1以上の整数であり、各示性式における係数の合計がシロキサン化合物の平均重合度となる。この平均重合度は好ましくは2~150の範囲、より好ましくは3~80の範囲である。またm、n、p、qのいずれかが2以上の数値である場合、結合する水素原子や有機残基が異なる2種以上のシロキサン単位とすることができる。
【0135】
表面処理される有機化合物の量は、B-4成分100重量%当り1重量%以下が好ましく、0.6重量%以下が更に好ましい。一方下限としては0.05重量%以上が挙げられる。アルコキシ基および/またはSi-H基を含有する有機ケイ素化合物で表面処理された二酸化チタン顔料は、本発明の樹脂組成物により良好な光反射性を与える。
【0136】
本発明の二酸化チタンの好適な態様は、(i)その熱重量解析(TGA)による23℃~100℃における重量減少を(a)重量%、および23℃~300℃における重量減少を(b)重量%としたとき、0.05≦(b)-(a)≦0.6を満たし、(ii)その蛍光X線測定におけるTi元素、Al元素、およびSi元素に由来する重量割合をそれぞれ(c)、(d)および(e)としたとき、0.001≦(d)/(c)≦0.01を満たし、かつ0.001≦(e)/(c)≦0.02を満たすものである。上記(b)-(a)の値の下限はより好ましくは0.15であり、かかる値の上限はより好ましくは0.3である。上記(d)/(c)の下限はより好ましくは0.003であり、その上限はより好ましくは0.01である。上記(e)/(c)の下限はより好ましくは0.005であり、その上限はより好ましくは0.015である。上記(b)-(a)が0.6以下、(d)/(c)が0.01以下、および(e)/(c)が0.02以下であると熱安定性の効果がより顕著に発揮される。(b)-(a)が0.05以上、並びに(d)/(c)および(e)/(c)が0.001以上であると、良好な色相が得られ、特に高充填時には良好な光反射特性が得られる。
【0137】
尚、上記条件(i)における熱重量解析(TGA)の測定は、TGA測定装置において窒素ガス雰囲気中における23℃から20℃/分の昇温速度で900℃まで昇温する測定条件により行われる。上記条件(ii)における蛍光X線測定から元素の重量割合を算出する操作は、通常各元素の標品から求められた元素重量とピークの強度から算出される較正線に基づき算出することができる。近年は蛍光X線測定装置に定量可能なプログラムが内蔵され、該装置から直接元素の重量割合を求めることができる。該装置としては例えば(株)堀場製作所製MESA-500型を例示することができ、元素の重量割合の算出に好適に利用することができる。かかる算出は、MESA-500型における基礎パラメータ法により行われる。
【0138】
B-4成分におけるTiOは結晶形がアナタース型、ルチル型のいずれのものでもよく、それらは必要に応じて混合して使用することもできる。初期の機械特性や長期耐候性の点でより好ましいのはルチル型である。尚、ルチル型結晶中にアナタース型結晶を含有するものでもよい。更にTiOの製法は硫酸法、塩素法、その他種々の方法によって製造された物を使用できるが、塩素法がより好ましい。また本発明の二酸化チタン顔料は、特にその形状を限定するものではないが粒子状のものがより好適である。二酸化チタン顔料の平均粒子径は、0.01~0.4μmが好ましく、0.1~0.3μmがより好ましく、0.15~0.25μmが更に好ましい。かかる平均粒子径は電子顕微鏡観察から、個々の単一粒子径を測定しその数平均により算出される。
【0139】
TiO表面への各種金属酸化物による被覆は、通常行われている種々の方法によって行うことができる。例えば以下の1)~8)の工程から製造される。すなわち、1)乾式粉砕後の未処理TiOを水性スラリーとする、2)該スラリーを湿式粉砕して微粒化する、3)微粒スラリーを採取する、4)該微粒スラリーに金属塩の水溶性化合物を添加する、5)中和して金属の含水酸化物でTiO表面の被覆をする、6)副生物の除去、スラリーpHの調整、濾過、および純水洗浄を行う、7)洗浄済みケーキを乾燥する、8)該乾燥物をジェットミル等で粉砕する方法が挙げられる。かかる方法以外にも例えばTiO粒子に活性な金属化合物を気相中で反応させる方法が挙げられる。更にTiO2表面への金属酸化物表面処理剤の被覆においては、表面処理後に焼成を行うこと、表面処理後に再度表面処理を行うこと、および表面処理後に焼成し再度表面処理を行うことがいずれも可能である。また金属酸化物による表面処理は高密度な処理および低密度(多孔質)な処理のいずれも選択できる。上記条件(i)および(ii)の調整は、表面処理のための金属酸化物の調整並びにその焼成処理の条件によって調整できる。本発明の二酸化チタン顔料は、かかる条件から明らかなように酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素によって表面処理される。これらはいずれの順序であってもまた混合物として表面処理されてもよいが、好ましくは酸化アルミニウム処理の後に酸化ケイ素処理されたものである。更に好適には上述のように該金属酸化物処理のなされた後にアルコキシ基および/またはSi-H基を含有する有機ケイ素化合物で表面処理された二酸化チタンである。
【0140】
かかるチタン系酸化物は、いずれのものでも使用可能であるが、ナトリウムイオンの含有量が少ないチタン系酸化物がより好ましい。好ましいナトリウムイオンの含有量は0.01~500ppm以下であり、より好ましくは0.1~400ppm以下であり、さらに好ましくは0.2~3500ppmであり、よりさらに好ましくは0.3~300ppmであり、特に好ましくは0.3~280ppmである。ナトリウムイオンの含有量が特に少ないチタン系酸化物をB-4成分とすることによって、特に良好な熱安定性や耐加水分解性等の利点が得られ、UL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度と難燃性の低下が抑制される。
【0141】
(B-5:ホウ素系充填剤)
本発明で用いるホウ素系充填剤は窒化ホウ素である。窒化ホウ素は立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素等が挙げられ、六方晶窒化ホウ素が好ましい。また、窒化ホウ素には、球状、鱗片状、およびそれらの凝集体などがあり、本発明にはいずれも使用することができる。なかでも鱗片状、鱗片状の凝集体を用いるとより熱伝導性の良好な組成物が得られるとともに機械物性等が良好となるので好ましい。窒化ホウ素の平均粒径(D50)はレーザー回折・散乱法にて測定した数値にて1~100μmが好ましく、5~50μmがより好ましい。平均粒径が1μm未満では樹脂組成物製造時の押出安定性が悪く生産性が低下する場合があり好ましくない。平均粒径が100μmを超えると成形品表面の外観が悪くなる場合があり好ましくない。
【0142】
かかるホウ素系充填剤は、いずれのものでも使用可能であるが、ナトリウムイオンの含有量が少ないホウ素系充填剤がより好ましい。好ましいナトリウムイオンの含有量は0.01~500ppm以下であり、より好ましくは0.1~400ppm以下であり、さらに好ましくは0.2~3500ppmであり、よりさらに好ましくは0.3~300ppmであり、特に好ましくは0.3~280ppmである。ナトリウムイオンの含有量が特に少ないホウ素系充填剤をB-5成分とすることによって、特に良好な熱安定性や耐加水分解性等の利点が得られ、UL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度と難燃性の低下が抑制される。
【0143】
(B-6:レーザー照射立体回路成形用添加剤)
本発明に使用されるレーザー照射立体回路成形用添加剤とは、配合することによって、レーザー照射による立体回路成形を可能とする化合物であり、ポリカーボネート(帝人製Panlite(R)L-1250WP)樹脂100重量部に対し、レーザー照射立体回路成形用添加剤を5重量部添加し、波長1064nmのYVO4レーザーを用い、出力1.45W、周波数80kHz、速度2m/sにて照射し、標準的な無電解銅メッキ工程にて、該レーザー照射面にメッキを形成できる化合物であることが好ましい。レーザー照射立体回路成形用添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品はレーザー照射立体回路成形用添加剤として市販されているものの他、他の用途として販売されている物質であってもよい。レーザー照射立体回路成形用添加剤は、少なくとも2種の金属を含む化合物であることが好ましい。該金属としては、銅、クロム、スズおよびアンチモンが例示される。レーザー照射立体回路成形用添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0144】
本発明で用いるレーザー照射立体回路成形用添加剤として、酸化スズを主成分とする化合物が好ましく、アンチモンおよびスズを含む酸化物を主成分とする化合物がより好ましい。このようなレーザー照射立体回路成形用添加剤を用いることにより、樹脂成形品のメッキ特性をより向上させることができるため、樹脂成形品の表面にメッキを適切に形成することができる。その中でも、スズの含有量がアンチモンの含有量よりも多いものが好ましく、スズおよびアンチモンの合計量に対するスズの含有量が、80重量%以上であることがより好ましく、85重量%以上であることがさらに好ましい。そのような化合物として、アンチモンがドープされた酸化スズおよび酸化アンチモンがドープされた酸化スズが挙げられ、酸化アンチモンがドープされた酸化スズが好ましい。また、アンチモンおよび酸化スズを含むレーザー照射立体回路成形用添加剤において、酸化スズおよびアンチモンの合計量に対するアンチモンの含有量は、1~20重量%であることが好ましく、3~15重量%がより好ましい。また、アンチモンおよび酸化スズを含むレーザー照射立体回路成形用添加剤において、酸化スズおよびアンチモンの合計量に対するアンチモンの含有量は、0.5~10重量%であることが好ましく、1.0~8.0重量%であることがより好ましい。
【0145】
本発明で用いるレーザー照射立体回路成形用添加剤の平均粒子径は、0.01~50μmであることが好ましく、0.05~30μmであることがより好ましい。このような構成とすることにより、メッキを適応した際のメッキ表面状態の均一性が良好になる傾向にある。
かかるレーザー照射立体回路成形用添加剤は、いずれのものでも使用可能であるが、ナトリウムイオンの含有量が少ないレーザー照射立体回路成形用添加剤がより好ましい。好ましいナトリウムイオンの含有量は0.01~50ppm以下であり、より好ましくは0.1~40ppm以下であり、さらに好ましくは0.2~35ppmであり、よりさらに好ましくは0.3~30ppmであり、特に好ましくは0.3~25ppmである。ナトリウムイオンの含有量が特に少ないレーザー照射立体回路成形用添加剤をB-6成分とすることによって、特に良好な熱安定性や耐加水分解性等の利点が得られ、UL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度と難燃性の低下が抑制される。
【0146】
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.1~160重量部、好ましくは1~155重量部、より好ましくは5~150重量部である。B成分の含有量が0.1重量部未満では、難燃性が不十分となったりUL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度が低下し、160重量部を超えると、樹脂の分解やフローマークにより外観が著しく悪化する。
【0147】
(C成分:ホスファゼン)
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、C成分としてホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有するホスファゼンを含有する。リン系難燃剤として、ホスファゼン以外の化合物、例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステルなどを使用した場合には、UL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度および難燃性の低下が抑制されない。ホスファゼンは、ハロゲン原子を含まず、分子中にホスファゼン構造を持つ化合物であれば特に限定されない。ここでいうホスファゼン構造とは、式:-P(R2)=N-[式中、R2は有機基]で表される構造を表す。ホスファゼンは一般式(5)、(6)で表される。
【0148】
【化9】
【0149】
(式中、X、X、X、Xは、水素、水酸基、アミノ基、またはハロゲン原子を含まない有機基を表す。また、nは3~10の整数を表す。)
【0150】
上記式(5)、(6)中、X、X、X、Xで表されるハロゲン原子を含まない有機基としては、例えば、アルコキシ基、フェニル基、アミノ基、アリル基などが挙げられる。
【0151】
C成分であるホスファゼンはホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有することが必要である。該含有量は、好ましくは99mol%~100mol%、より好ましくは99.5mol%~100mol%の範囲である。ホスファゼン環状三量体の含有量が98.5mol%未満であるとUL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度および難燃性の低下が抑制されない。
一般的なホスファゼンの製造方法は欧州特許出願公開第728811号および国際公開第97/40092号等に記載されている。
【0152】
製造過程でホスファゼンは環状三量体以外に副生成物として環状四量体やそれ以上の高級なオリゴマーが生成されるが、カラムクロマトグラフィー等で精製することによりホスファゼン環状三量体の含有量を増加させることができる。
なお、ホスファゼン中のホスファゼン環状三量体の含有量は、31PNMR(化学シフト、δ三量体6.5~10.0ppm、δ四量体-10~-13.5ppm、δより高級なオリゴマー-16.5~-25.0ppm)によって定量できる。
【0153】
C成分の含有量はA成分100重量部に対し、1~45重量部であり、好ましくは1.3~40重量部であり、1.5~35重量部がより好ましい。C成分の含有量が1重量部未満であると難燃化の効果が得られず、45重量部を超えるとUL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度の低下が抑制されない。
【0154】
(D成分:ドリップ防止剤)
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、D成分としてドリップ防止剤を含有する。このドリップ防止剤の含有により、成形品の物性を損なうことなく、良好な難燃性を達成することができる。
【0155】
D成分のドリップ防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。中でも好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
【0156】
フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万~1000万、好ましくは200万~900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
【0157】
かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン工業(株)のポリフロンMPA FA500およびF-201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD-1、AD-936、ダイキン工業(株)製のフルオンD-1およびD-2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表として挙げることができる。
【0158】
混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い、共凝集混合物を得る方法(特開昭60-258263号公報、特開昭63-154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4-272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06-220210号公報、特開平08-188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9-95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、さらに該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11-29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これら混合形態のPTFEの市販品としては、三菱ケミカル(株)の「メタブレン A3800」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
【0159】
混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量%中、PTFEが1~60重量%が好ましく、より好ましくは5~55重量%である。PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる場合がある。なお、上記F成分の割合は正味のドリップ防止剤の量を示し、混合形態のPTFEの場合には、正味のPTFE量を示す。
【0160】
また本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体に使用される有機系重合体に使用されるスチレン系単量体としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基およびハロゲンからなる群より選ばれた1つ以上の基で置換されてもよいスチレン、例えば、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチル-スチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、メトキシスチレン、フルオロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、およびトリブロモスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレンが例示されるが、これらに制限されない。前記スチレン系単量体は単独又は2つ以上の種類を混合して使用することができる。
【0161】
本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体に使用される有機系重合体に使用されるアクリル系単量体は、置換されてもよい(メタ)アクリレート誘導体を含む。具体的に前記アクリル系単量体としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、アリール基、及びグリシジル基からなる群より選ばれた1つ以上基によりの置換されてもよい(メタ)アクリレート誘導体、例えば(メタ)アクリロ二トリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレート、炭素数1~6のアルキル基、又はアリール基により置換されてもよいマレイミド、例えば、マレイミド、N-メチル-マレイミドおよびN-フェニル-マレイミド、マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸が例示されるが、これらに制限されない。前記アクリル系単量体は単独又は2つ以上の種類を混合して使用することができる。これらの中でも(メタ)アクリロ二トリルが好ましい。
【0162】
コーティング層に用いられる有機重合体に含まれるアクリル系単量体由来単位の量は、スチレン系単量体由来単位100重量部に対して好ましくは8~11重量部、より好ましくは8~10重量部、さらに好ましくは8~9重量部である。アクリル系単量体由来単位が8重量部より少ないとコーティング強度が低下することがあり、11重量部より多いと成形品の表面外観が悪くなり得る。
【0163】
本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体は、残存水分含量が0.5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2~0.4重量%、さらに好ましくは0.1~0.3重量%である。残存水分量が0.5重量%より多いと難燃性に悪影響を与えることがある。
【0164】
本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体の製造工程には、開始剤の存在下でスチレン系単量体及びアクリル単量体からなるグループより選ばれた1つ以上の単量体を含むコーティング層を分岐状ポリテトラフルオロエチレンの外部に形成するステップが含まれる。さらに、前記コーティング層形成のステップ後に残存水分含量を0.5重量%以下、好ましくは0.2~0.4重量%、より好ましくは0.1~0.3重量%となるように乾燥させるステップを含むことが好ましい。乾燥のステップは、例えば、熱風乾燥又は真空乾燥方法のような当業界に公知にされた方法を用いて行うことができる。
【0165】
本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体に使用される開始剤は、スチレン系及び/又はアクリル系単量体の重合反応に使用されるものであれば制限なく使用され得る。前記開始剤としては、クミルハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ハイドロゲンパーオキサイド、およびポタシウムパーオキサイドが例示されるが、これらに制限されない。本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体には、反応条件に応じて前記開始剤を1種以上使用することができる。前記開始剤の量は、ポリテトラフルオロエチレンの量及び単量体の種類/量を考慮して使用される範囲内で自由に選択され、全組成物の量を基準として0.15~0.25重量部使用することが好ましい。
【0166】
本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体は、懸濁重合法により下記の手順にて製造を行った。
【0167】
まず、反応器中に水および分岐状ポリテトラフルオロエチレンディスパージョン(固形濃度:60%、ポリテトラフルオロエチレン粒子径:0.15~0.3μm)を入れた後、攪拌しながらアクリルモノマー、スチレンモノマーおよび水溶性開始剤としてクメンハイドロパーオキサイドを添加し80~90℃にて9時間反応を行なった。反応終了後、遠心分離機にて30分間遠心分離を行うことにより水分を除去し、ペースト状の生成物を得た。その後、生成物のペーストを熱風乾燥機にて80~100℃にて8時間乾燥した。その後、かかる乾燥した生成物の粉砕を行い本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体を得た。
【0168】
かかる懸濁重合法は、特許3469391号公報などに例示される乳化重合法における乳化分散による重合工程を必要としないため、乳化剤および重合後のラテックスを凝固沈殿するための電解質塩類を必要としない。また乳化重合法で製造されたポリテトラフルオロエチレン混合体では、混合体中の乳化剤および電解質塩類が混在しやすく取り除きにくくなるため、かかる乳化剤、電解質塩類由来のナトリウムイオンとカリウムイオンを低減することは難しい。本発明で使用するポリテトラフルオロエチレン系混合体は、懸濁重合法で製造されているため、かかる乳化剤、電解質塩類を使用しないことから混合体中のナトリウムイオンとカリウムイオンの含有量を低減することができ、熱安定性および耐加水分解性を向上することができる。
【0169】
また、本発明ではドリップ防止剤として被覆分岐PTFEを使用することができる。被覆分岐PTFEは分岐状ポリテトラフルオロエチレン粒子および有機系重合体からなるポリテトラフルオロエチレン系混合体であり、分岐状ポリテトラフルオロエチレンの外部に有機系重合体、好ましくはスチレン系単量体由来単位及び/又はアクリル系単量体由来単位を含む重合体からなるコーティング層を有する。前記コーティング層は、分岐状ポリテトラフルオロエチレンの表面上に形成される。また、前記コーティング層はスチレン系単量体及びアクリル系単量体の共重合体を含むことが好ましい。
【0170】
被覆分岐PTFEに含まれるポリテトラフルオロエチレンは分岐状ポリテトラフルオロエチレンである。含まれるポリテトラフルオロエチレンが分岐状ポリテトラフルオロエチレンでない場合、ポリテトラフルオロエチレンの添加が少ない場合の滴下防止効果が不十分となる。分岐状ポリテトラフルオロエチレンは粒子状であり、好ましくは0.1~0.6μm、より好ましくは0.3~0.5μm、さらに好ましくは0.3~0.4μmの粒子径を有する。0.1μmより粒子径が小さい場合には成形品の表面外観に優れるが、0.1μmより小さい粒子径を有するポリテトラフルオロエチレンを商業的に入手することは難しい。また0.6μmより粒子径が大きい場合には成形品の表面外観が悪くなる場合がある。本発明に使用されるポリテトラフルオロエチレンの数平均分子量は1×10~1×10が好ましく、より好ましくは2×10~9×10であり、一般的に高い分子量のポリテトラフルオロエチレンが安定性の側面においてより好ましい。粉末又は分散液の形態いずれも使用され得る。被覆分岐PTFEにおける分岐状ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、被覆分岐PTFEの総重量100重量部に対して、好ましくは20~60重量部、より好ましくは40~55重量部、さらに好ましくは47~53重量部、特に好ましくは48~52重量部、最も好ましくは49~51重量部である。分岐状ポリテトラフルオロエチレンの割合がかかる範囲にある場合は、分岐状ポリテトラフルオロエチレンの良好な分散性を達成することができる場合がある。
【0171】
D成分の含有量は、A成分100重量部に対して、0.05~4重量部であり、好ましくは0.1~3.5重量部、より好ましくは0.2~3重量部である。D成分の含有量が0.05重量部未満では、十分な難燃性が得られず、4重量部を超えるとf1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度の低下が抑制されない。
【0172】
(E成分:衝撃改質剤)
本発明のE成分として使用される衝撃改質剤としては、ゴム質重合体(E-1成分)または芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体(E-2成分)が好ましく使用される。
【0173】
(E-1成分:ゴム質重合体)
本発明で使用されるゴム質重合体とは、ゴム成分に一段または多段でビニル系単量体または該単量体との混合物を共重合したものを指す。
【0174】
ゴム成分としては、ポリブタジエン、ジエン系共重合体(例えば、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体など)、ポリイソプレン、エチレンとα-オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体など)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン・メタクリレート共重合体、およびエチレン・ブチルアクリレート共重合体など)、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体など)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー(例えば、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体など)、アクリル系ゴム(例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、およびブチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとの共重合体など)、並びにシリコーン系ゴム(例えば、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなるIPN型ゴム;すなわち2つのゴム成分が分離できないように相互に絡み合った構造を有しているゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリイソブチレンゴム成分からなるIPN型ゴムなど)が挙げられる。中でもより好適であるのは、その効果がより発現しやすいポリブタジエン、ジエン系共重合体、ポリイソプレン、アクリル系ゴム、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー、シリコーン系ゴムであり、その中でも特にジエン系共重合体が好ましい。
【0175】
かかるゴム成分のゴム粒子の重量平均粒子径は、0.10~1.0μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.15~0.8μm、更に好ましくは0.20~0.5μmである。ゴム粒子の重量平均粒子径が0.1μmより小さくなると、グラフトポリマー添加による衝撃改良効果が低下する場合があり好ましくない。また、1.0μmを超えると熱可塑性樹脂との分散状態が悪く、衝撃低下などを起こす場合があるので好ましくない。
【0176】
本発明におけるゴム粒子の重量平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により測定された値である。具体的には、エマルジョン状態のゴム質重合体を透過型電子顕微鏡測定用のメッシュ上に一滴取り、四酸化オスミウムあるいは四酸化ルテニウムの蒸気で染色した後、染色されたゴム質重合体のサンプルを透過型電子顕微鏡(FEI社製 TECNAI G2、加速電圧120kv)で撮影し、撮影した画像中のゴム粒子200個から画像処理ソフト(Nexus NewQube)を用いて重量平均粒子径を算出した。
【0177】
ここで、ジエン系重合体は、主構成単位の1,3-ブタジエンが好ましくは50~100重量%、より好ましくは65~100重量%、更に好ましくは75~100重量%、これと共重合可能なスチレンに代表されるビニル単量体が好ましくは50~0重量%、より好ましくは35~0重量%、更に好ましくは25~0重量%となるように重合して得られる共重合体である。主構成単位の1,3-ブタジエンが50重量%より少なくなると、十分な衝撃特性が得られない場合があり好ましくない。
【0178】
E-1成分に使用されるビニル系単量体としては、例えばスチレン、α―メチルスチレン、P-メチルスチレン、クロロスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどの芳香族ビニル単量体、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレートなどのアルキルメタアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートなどのアルキルアクリレートが挙げられる。なお、上記単量体以外でもビニルエーテル系単量体、ハロゲン化ビニリデン単量体、グリシジルアクリレートなどグリシジル基を有するビニル系単量体などが挙げられる。
【0179】
さらに、前記のビニル系単量体のうち、架橋性単量体ともなるものは、ブタジエンやビニル系単量体と共重合可能なもので、分子内に独立したC=C結合を二以上内在する化合物であり、例えば、ジビニルベンゼン,ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコールのα、β-不飽和カルボン酸エステル、トリメタクリル酸エステルまたはトリアクリル酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等のα、β-不飽和カルボン酸のアリルエステル、ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジ-またはトリアリル化合物などが挙げられる。これらのビニル系単量体ならびに架橋性単量体は、それぞれ一種または二種以上を使用することができる。
【0180】
また、ジエン系ゴム成分を形成する際、重合反応には、必要に応じて、t-ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤(開始剤)を使用することもできる。このジエン系ゴム成分には、そのラテックスを調製する際、肥大化剤を添加しジエン系ゴム成分の重量平均粒子径を制御する。かかる肥大化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の無機塩、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等の有機塩、硫酸、塩酸等の無機酸、酢酸、コハク酸等の有機酸、ならびにそれら有機酸無水物、さらには、カルボン酸含有高分子ラテックスなどが挙げられる。
【0181】
本発明に使用されるゴム質重合体の好ましいものとして、スチレン系重合体があげられる。スチレン系重合体は良好な成形加工性と、適度な流動性および耐熱性を有しているため、これら特性のバランスを保つために好ましいゴム質重合体である。
【0182】
かかるスチレン系重合体は、ベンゼン環にビニル基またはアルキルエテニル基(アルキル基が修飾したビニル基)が結合した芳香族ビニル化合物の重合体または共重合体、またこれと必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体およびゴム成分を共重合して得られる重合体である。
【0183】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンなどが挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0184】
芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物を好ましく挙げることができる。シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。尚(メタ)アクリレートの表記はメタクリレートおよびアクリレートのいずれをも含むことを示し、(メタ)アクリル酸エステルの表記はメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルのいずれをも含むことを示す。特に好適な(メタ)アクリル酸エステル化合物としてはメチルメタクリレートを挙げることができる。
【0185】
シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β-不飽和カルボン酸およびその無水物があげられる。
【0186】
上記芳香族ビニル化合物と共重合可能なゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(例えば、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体など)、エチレンとα-オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体など)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン・メタクリレート共重合体、およびエチレン・ブチルアクリレート共重合体など)、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体など)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー(例えば、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体など)、アクリル系ゴム(例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、およびブチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとの共重合体など)、並びにシリコーン系ゴム(例えば、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなるIPN型ゴム;すなわち2つのゴム成分が分離できないように相互に絡み合った構造を有しているゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリイソブチレンゴム成分からなるIPN型ゴムなど)が挙げられる。中でもより好適であるのは、その効果がより発現しやすいポリブタジエン、ポリイソプレン、またはジエン系共重合体であり、特にポリブタジエンが好ましい。
【0187】
上記スチレン系重合体として具体的には、例えば、HIPS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、MAS樹脂、およびSMA樹脂などのスチレン系重合体からなる樹脂、並びにスチレン系熱可塑性エラストマー(例えば(水添)スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、(水添)スチレン-イソプレン-スチレン共重合体などを挙げることができる。尚、(水添)の表記は水添していない樹脂および水添した樹脂のいずれをも含むことを意味する。
【0188】
中でもより好適であるのはHIPS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、MAS樹脂、およびスチレン系熱可塑性エラストマーなどのゴム強化スチレン系重合体が好適である。
【0189】
上述の如くこれらの中でもジエン系共重合体のゴム成分を有するものが好ましく、特にABS樹脂、MBS樹脂が好ましい。ABS樹脂、MBS樹脂は良好な耐衝撃性を有する点で本発明の効果を好適に発揮する。ここでAES樹脂はアクリロニトリル、エチレン-プロピレンゴム、およびスチレンから主としてなる共重合体樹脂、ASA樹脂はアクリロニトリル、スチレン、およびアクリルゴムから主としてなる共重合体樹脂、MABS樹脂はメチルメタクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン、およびスチレンから主としてなる共重合体樹脂、MAS樹脂はメチルメタクリレート、アクリルゴム、およびスチレンから主としてなる共重合体樹脂、SMA樹脂はスチレンと無水マレイン酸(MA)から主としてなる共重合体樹脂を示す。
【0190】
尚、かかるスチレン系樹脂はその製造時にメタロセン触媒等の触媒使用により、シンジオタクチックポリスチレン等の高い立体規則性を有するものであってもよい。更に場合によっては、アニオンリビング重合、ラジカルリビング重合等の方法により得られる、分子量分布の狭い重合体及び共重合体、ブロック共重合体、及び立体規則性の高い重合体、共重合体を使用することも可能である。
【0191】
これらの中でも、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)が好ましい。また、スチレン系重合体を2種以上混合して使用することも可能である。
【0192】
本発明で使用するABS樹脂とは、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体の混合物である。このABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン及びスチレン-ブタジエン共重合体等のガラス転位温度が-30℃以下のゴムが用いられ、その割合はABS樹脂成分100重量%中5~80重量%であるのが好ましく、より好ましくは8~50重量%、特に好ましくは10~30重量%である。ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、特にスチレン及びα-メチルスチレンが好ましく使用できる。かかるジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の割合は、ABS樹脂成分100重量%中95~20重量%が好ましく、特に好ましくは50~90重量%である。更にかかるシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5~50重量%、芳香族ビニル化合物が95~50重量%であることが好ましい。更に上記のジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の一部についてメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、N置換マレイミド等を混合使用することもでき、これらの含有割合はABS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。更に反応で使用する開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0193】
本発明のABS樹脂においては、ゴム粒子径は0.1~5.0μmが好ましく、より好ましくは0.15~1.5μm、特に好ましくは0.2~0.8μmである。かかるゴム粒子径の分布は単一の分布であるもの及び2山以上の複数の山を有するもののいずれもが使用可能であり、更にそのモルフォロジーにおいてもゴム粒子が単一の相をなすものであっても、ゴム粒子の周りにオクルード相を含有することによりサラミ構造を有するものであってもよい。
【0194】
またABS樹脂がジエン系ゴム成分にグラフトされないシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を含有することは従来からよく知られているところであり、本発明のABS樹脂においてもかかる重合の際に発生するフリーの重合体成分を含有するものであってもよい。かかるフリーのシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物からなる共重合体の還元粘度は、先に記載の方法で求めた還元粘度(30℃)が好ましくは0.2~1.0dl/g、より好ましくは0.3~0.7dl/gであるものである。
【0195】
またグラフトされたシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の割合はジエン系ゴム成分に対して、グラフト率(重量%)で表して20~200%が好ましく、より好ましくは20~70%のものである。
【0196】
かかるABS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、特に塊状重合によるものが好ましい。更にかかる塊状重合法としては代表的に、化学工学 第48巻第6号415頁(1984)に記載された連続塊状重合法(いわゆる東レ法)、並びに化学工学 第53巻第6号423頁(1989)に記載された連続塊状重合法(いわゆる三井東圧法)が例示される。本発明のABS樹脂としてはいずれのABS樹脂も好適に使用される。また共重合の方法も一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。また、かかる製造法により得られたABS樹脂に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル成分とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体をブレンドしたものも好ましく使用できる。
【0197】
前記ABS樹脂は、アルカリ(土類)金属量が低減されたものが良好な熱安定性や耐加水分解性などの点からより好適である。スチレン系樹脂中のアルカリ(土類)金属量は、好ましくは100ppm未満であり、より好ましくは80ppm未満であり、更に好ましくは50ppm未満であり、特に好ましくは10ppm未満である。かかる点からも塊状重合法によるABS樹脂が好適に使用される。更にかかる良好な熱安定性や耐加水分解性に関連して、ABS樹脂において乳化剤を使用する場合には、該乳化剤は好適にはスルホン酸塩類であり、より好適にはアルキルスルホン酸塩類である。また凝固剤を使用する場合には、該凝固剤は硫酸または硫酸のアルカリ土類金属塩が好適である。
【0198】
また別の本発明に好適なゴム質重合体として、スチレン成分を含まないものがあげられる。スチレン成分を含まない重合体は良好な成形加工性と、適度な流動性および耐熱性に加えて耐薬品性にも優れており、これら特性のバランスを保つために好ましいゴム質重合体である。スチレン成分を含まない重合体としては、スチレン系以外のビニル単量体およびスチレン成分を含まないゴム成分を共重合して得られる重合体が挙げられる。
【0199】
スチレン系以外のビニル単量体としては、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物を好ましく挙げることができる。シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。尚(メタ)アクリレートの表記はメタクリレートおよびアクリレートのいずれをも含むことを示し、(メタ)アクリル酸エステルの表記はメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルのいずれをも含むことを示す。特に好適な(メタ)アクリル酸エステル化合物としてはメチルメタクリレートを挙げることができる。
【0200】
シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の他のビニル単量体としては、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β-不飽和カルボン酸およびその無水物があげられる。
【0201】
スチレン成分を含まないゴム成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンを含まないジエン系共重合体(例えば、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体など)、エチレンとα-オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体など)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン・メタクリレート共重合体、およびエチレン・ブチルアクリレート共重合体など)、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体など)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー(例えば、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体など)、アクリル系ゴム(例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、およびブチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとの共重合体など)、並びにシリコーン系ゴム(例えば、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなるIPN型ゴム;すなわち2つのゴム成分が分離できないように相互に絡み合った構造を有しているゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリイソブチレンゴム成分からなるIPN型ゴムなど)が挙げられる。中でもより好適であるのは、その効果がより発現しやすいポリブタジエン、ポリイソプレン、またはジエン系共重合体、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴムであり、特にポリブタジエンが好ましい。
【0202】
かかるスチレン成分を含まないゴム質重合体のゴム粒子の重量平均粒子径は、好ましくは0.10~1.0μmの範囲であり、より好ましくは0.15~0.8μm、更に好ましくは0.20~0.5μmである。ゴム粒子の重量平均粒子径が0.1μmより小さくなると、グラフトポリマー添加による衝撃改良効果が低下し好ましくない。また、1.0μmを超えると熱可塑性樹脂との分散状態が悪く、衝撃低下などを起こすので好ましくない。
【0203】
本発明におけるゴム粒子の重量平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により測定された値である。具体的には、エマルジョン状態のゴム質重合体を透過型電子顕微鏡測定用のメッシュ上に一滴取り、四酸化オスミウムあるいは四酸化ルテニウムの蒸気で染色した後、次に染色されたゴム質重合体のサンプルを透過型電子顕微鏡(FEI社製 TECNAI G2、加速電圧120kv)で撮影し、撮影した画像中のゴム粒子200個から画像処理ソフト(Nexus NewQube)を用いて重量平均粒子径を算出した。
【0204】
ここで、ジエン系ゴム成分とは、主構成単位の1,3-ブタジエンが好ましくは50~100重量%、より好ましくは65~100重量%、更に好ましくは75~100重量%、これと共重合可能なメチルメタアクリレートに代表されるビニル単量体が好ましくは50~1重量%、より好ましくは35~1重量%、更に好ましくは25~1重量%となるように重合して得られる共重合体である。主構成単位の1,3-ブタジエンが50重量%より少なくなると、十分な衝撃特性が得られない場合があり好ましくない。
【0205】
このジエン系ゴム成分の形成に使用されるメチルメタアクリレートに代表されるビニル系単量体としては、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレートなどのアルキルメタアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートなどのアルキルアクリレートが挙げられる。なお、上記単量体以外でもビニルエーテル系単量体、ハロゲン化ビニリデン単量体、グリシジルアクリレートなどグリシジル基を有するビニル系単量体などが挙げられる。
【0206】
さらに、前記のビニル系単量体のうち、架橋性単量体ともなるものは、ブタジエンやビニル系単量体と共重合可能なもので、分子内に独立したC=C結合を二以上内在する化合物であり、例えば、ジビニルベンゼン,ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコールのα、β-不飽和カルボン酸エステル、トリメタクリル酸エステルまたはトリアクリル酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等のα、β-不飽和カルボン酸のアリルエステル、ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジ-またはトリアリル化合物などが挙げられる。
【0207】
前記ビニル系単量体ならびに架橋性単量体は、それぞれ一種または二種以上を使用することができる。
また、ジエン系ゴム成分を形成する際、重合反応には、必要に応じて、t-ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤(開始剤)を使用することもできる。このジエン系ゴム成分には、そのラテックスを調製する際、肥大化剤を添加しジエン系ゴム成分の重量平均粒子径を制御する。かかる肥大化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の無機塩、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等の有機塩、硫酸、塩酸等の無機酸、酢酸、コハク酸等の有機酸、ならびにそれら有機酸無水物、さらには、カルボン酸含有高分子ラテックスなどが挙げられる。
【0208】
本発明で使用するスチレン成分を含まないゴム質重合体は、前記構成のゴム質成分のラテックスに、アルキル(メタ)アクリレート単量体、あるいはアルキル(メタ)アクリレートとそれと共重合する他の単量体との混合物を、一段または多段でグラフト重合することによって調製される。
【0209】
すなわち、前記のグラフト重合に使用する単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、およびメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート類の他に、スチレン、α-メチルスチレン、あるいは各種ハロゲン置換及び/またはアルキル置換のスチレン等のスチレン類、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体が挙げられる。さらには、上述した架橋性単量体となるビニル系単量体を、前記ビニル系単量体と併せて使用することもできる。アルキル(メタ)アクリレートと混合して利用する際、これらビニル系単量体ならびに架橋性単量体は、それぞれ一種または二種以上を使用することができる。
【0210】
グラフト重合においては、ジエン系ゴム成分ラテックス40~90重量部に対し、使用する単量体または単量体混合物の量を60~10重量部とすることが好ましく、42~85重量部に対し58~15重量部とすることがより好ましく、45~80重量部に対し、55~20重量部とすることがさらに好ましい。また、単量体混合物を用いる際には、単量体混合物の総和において、アルキル(メタ)アクリレート単量体は、少なくとも25重量%以上、より好ましくは40重量%以上であることが好ましい。
【0211】
なお、グラフト重合自体は、単量体または単量体混合物を一度に加えて、一段で重合してもよく、あるいは、単量体または単量体混合物を2回もしくはそれ以上に分割して添加し,グラフト重合を複数段に分けて行うこともできる。
【0212】
グラフト重合の方法としては乳化重合の手段を用いる。このグラフト共重合を行う際、重合開始剤として、過硫酸カリウム,過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化物などを使用することができる。この他、前記の酸化剤化合物と亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒド・スルホキシレート、デキストローズ等を組み合わせてレドックス系開始剤として使用することもできる。
【0213】
グラフト共重合における反応温度は、用いる重合開始剤の種類に応じて、例えば、40~80℃の範囲に適宜選択することができる。また、乳化重合に際し、ゴム質重合体ラッテクスに対する乳化剤としては、公知の乳化剤を適宜用いることができる。
【0214】
得られたスチレン成分を含まないゴム質重合体は、反応液に適当な酸化防止剤や、必要に応じて、添加剤等を加え、あるいは添加せずに、噴霧乾燥(直接粉体化)するか、または、硫酸、塩酸、リン酸等の酸や塩化カルシウム、塩化ナトリウム等の塩などの凝析剤を反応液に適宜加えて、凝析し更に熱処理して固化する。その後、脱水、洗浄を経て、最終的に乾燥して粉末化し使用する。
【0215】
(E-2成分:芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体)
E-2成分として使用される芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体とは、一般的に樹脂組成物の耐衝撃性の向上を目的に使用されるものであり、例えば、A-B-A型トリブロック共重合体及びA-B型ジブロック共重合体である。
【0216】
A-B型及びA-B-A型ブロック共重合体ゴム添加剤には、1又は2つの芳香族ビニルブロック(通例スチレンブロックである)とゴムブロック(例えばブタジエンブロックを部分的に水添したもの)とを含む熱可塑性ゴムがある。これらのトリブロック共重合体とジブロック共重合体の混合物が本発明において特に有用である。
【0217】
上記、芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニルが挙げられる。また、芳香族ビニル系単量体以外にも、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル;エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体等を用いることができる。
【0218】
更に、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコール;トリメタクリル酸エステル、トリアクリル酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等のカルボン酸アリルエステル、ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジ及びトリアリル化合物等の架橋性単量体を併用することもできる。
なお、これらのビニル系単量体および架橋性単量体は、1種または2種以上で使用することができる。
【0219】
好適な芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体の製造方法は、例えば特開平8-301929に開示されている。芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体の典型的な例には、特に制限はないが、SBRと称されるスチレン-ブタジエンブロック共重合体、SBSと称されるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、SISと称されるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の、ブタジエン重合体ブロック及びイソプレン重合体ブロックを夫々水素添加して得られ、一般にSEBS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEP(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体)及びSEEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)と称されるものが挙げられる。
【0220】
また、上述のブロック共重合体は水酸基、アミド基、アミノ基、カルボン酸基、酸無水物基、グリシジル基、メルカプト基およびそれらの誘導体から選ばれる一種以上の官能基を有する変性化合物で変性されているものを使用してもよい。
【0221】
好適な芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体としては、芳香族ビニル化合物と(水添)共役ジエンとの重量比が5/95~95/5、好ましくは10/90~90/10の範囲にあり、さらに、ブロック共重合体の共役ジエンに基づく不飽和結合の50%以上が水素添加された水添ブロック共重合体から構成されている。ここで、ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物と共役ジエンとの重量比が5/95~95/5の範囲からはずれると、本発明の耐衝撃性の向上効果を得ることができない。一方、水添率が上記の範囲を下回ると樹脂組成物の耐熱性や剛性が著しく低下する。
【0222】
かかるA-B及びA-B-Aブロック共重合体は数々の供給元から市販されており、Kraton Polymers社からKRATONという商品名で、またクラレ(株)からセプトン(SEPTON)という商品名で市販されている。
【0223】
E成分の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.1~50.0重量部、より好ましくは1.0~48.0重量部、さらに好ましくは2.5~45.0重量部である。E成分の含有量が0.1重量部未満では、耐衝撃性が不十分となることがあり、50.0重量部を超えると、難燃性が著しく低下することがある。
【0224】
(F成分;酸変性ポリオレフィン樹脂)
本発明のF成分として使用される酸変性ポリオレフィン樹脂としては、カルボキシル基および/またはその誘導体基を有するオレフィン系ワックスが好ましく使用される。カルボキシル基誘導体としては、カルボン酸無水物基、カルボン酸の金属塩、カルボン酸のアルキルエステルまたはアリールエステル等が挙げられる。このカルボキシル基および/またはその誘導体基は、このオレフィン系ワックスのどの部分に結合してもよく、またその濃度は特に限定されないが、該オレフィン系ワックス1g当り0.1~6meq/gの範囲が好ましい。0.1meq/gより少なくなると剛性および耐衝撃性の改良が不十分となり、6meq/gより多くなると該オレフィン系ワックス自身の熱安定性が悪化し好ましくない。
【0225】
かかるオレフィン系ワックスの市販品としては、例えばダイヤカルナ-DC30M(三菱ケミカル(株)製)、Licolub CE 2 TP(クラリアント(株)製)、ハイワックス酸処理タイプの2203A、1105A(三井石油化学工業(株)製)、ダウケミカル(株)製EXL3808および酸化パラフィン(日本精蝋(株)製)等が挙げられる。本発明において、オレフィン系ワックスは単独あるいは2種以上の混合物として使用できる。
【0226】
F成分の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.01~20.0重量部であり、より好ましくは0.1~18.0重量部、さらに好ましくは0.5~15.0重量部である。F成分が0.01重量部未満では、耐衝撃性が低下することがあり、またシルバーにより外観が著しく悪化することがあり、20.0重量部を超えると難燃性が著しく低下することがある。
【0227】
(G成分;リン系安定剤)
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、好ましくはG成分としてリン系安定剤を含有する。このリン系安定剤の含有により、加工時の熱分解を抑制し、良好な衝撃強度および難燃性を達成することができる。
【0228】
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。
【0229】
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0230】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、および2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが例示される。
【0231】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0232】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0233】
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0234】
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
【0235】
上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。上記リン系安定剤の中でも、ホスホナイト化合物もしくは下記一般式(7)で表されるホスファイト化合物が好ましい。
【0236】
【化10】
【0237】
(式(7)中、RおよびR’は炭素数6~30のアルキル基または炭素数6~30のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0238】
上記の如く、ホスホナイト化合物としてはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、該ホスホナイトを主成分とする安定剤は、Sandostab P-EPQ(商標、Clariant社製)およびIrgafos P-EPQ(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販されておりいずれも利用できる。
【0239】
また上記式(7)の中でもより好適なホスファイト化合物は、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトである。
【0240】
ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトは、アデカスタブPEP-8(商標、(株)ADEKA製)、JPP681S(商標、城北化学工業(株)製)として市販されておりいずれも利用できる。ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトは、Songnox 6260W(商標、Song Wong社製)、Alkanox P-24(商標、Great Lakes社製)、Ultranox P626(商標、GE Specialty Chemicals社製)、Doverphos S-9432(商標、Dover Chemical社製)、並びにIrgaofos126および126FF(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)などとして市販されておりいずれも利用できる。ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトはアデカスタブPEP-36(商標、(株)ADEKA製)として市販されており容易に利用できる。またビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトは、アデカスタブPEP-45(商標、(株)ADEKA製)、およびDoverphos S-9228(商標、Dover Chemical社製)として市販されておりいずれも利用できる。
【0241】
上記リン系安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。リン系安定剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.001~1重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.9重量部、さらに好ましくは0.05~0.8重量部である。含有量が0.001重量部未満では加工時の熱分解抑制効果が発現せず、衝撃強度の低下が発生する場合があり、1重量部を超えるとUL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度の低下が抑制されない場合がある。
【0242】
(H成分;紫外線吸収剤)
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系では、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、および2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
【0243】
ベンゾトリアゾール系では、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル、並びに2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2-(2’―ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
【0244】
ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、および2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
【0245】
環状イミノエステル系では、例えば2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-m-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2,2’-p,p’-ジフェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが例示される。
【0246】
シアノアクリレート系では、例えば1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
【0247】
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/または光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。前記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
【0248】
上記化合物の中でも、本発明において、下記式(8)、(9)および(10)のいずれかで表される化合物がより好適に用いられる。
【0249】
【化11】
【0250】
上記紫外線吸収剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
紫外線吸収剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.01~15重量部であることが好ましく、より好ましくは0.05~12重量部、さらに好ましくは0.1~10重量部である。紫外線吸収剤の含有量が0.01重量部未満であると、UL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度の低下が抑制されない場合があり、15重量部より多いとガス発生による外観不良や物性低下が発生することがある。
【0251】
(その他の添加剤)
(i)フェノール系安定剤
本発明の樹脂組成物はフェノール系安定剤を含有することができる。フェノール系安定剤としては一般的にヒンダードフェノール、セミヒンダードフェノール、レスヒンダードフェノール化合物が挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂に対して熱安定処方を施すという観点で特にヒンダードフェノール化合物がより好適に用いられる。かかるヒンダードフェノール化合物としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセテート、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセチルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)ベンゼン、およびトリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)イソシアヌレートなどが例示される。上記化合物の中でも、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好適に用いられ、さらに加工時の熱分解による機械特性低下の抑制に優れるものとして、下記式(11)で表される(3,3’, 3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、および下記式(12)で表される1,3,5-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンがより好適に用いられる。
【0252】
【化12】
【0253】
上記フェノール系安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。フェノール系安定剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.05~1.0重量部であることが好ましく、より好ましくは0.07~0.8重量部、さらに好ましくは0.1~0.5重量部である。含有量が0.05重量部未満では加工時の熱分解抑制効果が発現せず、機械特性の低下が発生する場合があり、1.0重量部を超えても機械特性が低下する場合がある。
【0254】
(ii)ヒンダードアミン系光安定剤
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物はヒンダードアミン系光安定剤を含有することができる。ヒンダードアミン系光安定剤は一般にHALS(Hindered Amine Light Stabilizer)と呼ばれ、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格を構造中に有する化合物であり、例えば、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルアセトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-フェノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(エチルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)テレフタレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)カーボネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)オキサレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)マロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)テレフタレート、N,N’-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル-1,3-ベンゼンジカルボキシアミド、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)エタン、α,α’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)-p-キシレン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルトリレン-2,4-ジカルバメート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレン-1,6-ジカルバメート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,4-トリカルボキシレート、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物などが挙げられる。
【0255】
ヒンダードアミン系光安定剤はピペリジン骨格中の窒素原子の結合相手により大きく分けて、N-H型(窒素原子に水素が結合)、N-R型(窒素原子にアルキル基(R)が結合)、N-OR型(窒素原子にアルコキシ基(OR)が結合)の3タイプがあるが、ポリカーボネート樹脂に適用する際、ヒンダードアミン系光安定剤の塩基性の観点から、低塩基性であるN-R型、N-OR型を用いるのがより好ましい。
【0256】
上記化合物の中でも、本発明において、下記式(13)、(14)で表される化合物がより好適に用いられる。
【0257】
【化13】
【0258】
ヒンダードアミン系光安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0~1重量部であることが好ましく、0.05~1重量部がより好ましく、さらに好ましくは0.08~0.7重量部、特に好ましくは0.1~0.5重量部である。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が1重量部より多いとガス発生による外観不良やポリカーボネート樹脂の分解による物性低下が起こる場合がある。また、0.05重量部未満であると、十分な耐光性が発現しない場合がある。
【0259】
(iii)離型剤
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、その成形時の生産性向上や成形品の歪みの低減を目的として、更に離型剤を配合することが好ましい。かかる離型剤としては公知のものが使用できる。例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1-アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。中でも好ましい離型剤として脂肪酸エステルが挙げられる。かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数としては、3~32の範囲、より好適には5~30の範囲である。かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール~ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。本発明の脂肪酸エステルにおいては多価アルコールがより好ましい。
【0260】
一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3~32であることが好ましく、特に炭素数10~22の脂肪族カルボン酸が好ましい。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、ベヘン酸、イコサン酸、およびドコサン酸などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14~20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。特にステアリン酸およびパルミチン酸が好ましい。
【0261】
ステアリン酸やパルミチン酸など上記の脂肪族カルボン酸は通常、牛脂や豚脂などに代表される動物性油脂およびパーム油やサンフラワー油に代表される植物性油脂などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪族カルボン酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって本発明の脂肪酸エステルの製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる脂肪族カルボン酸、殊にステアリン酸やパルミチン酸が好ましく使用される。
【0262】
本発明の脂肪酸エステルは、部分エステルおよび全エステル(フルエステル)のいずれであってもよい。しかしながら部分エステルでは通常水酸基価が高くなり高温時の樹脂の分解などを誘発しやすいことから、より好適にはフルエステルである。本発明の脂肪酸エステルにおける酸価は、熱安定性の点から好ましく20以下、より好ましくは4~20の範囲、更に好ましくは4~12の範囲である。尚、酸価は実質的に0を取り得る。また脂肪酸エステルの水酸基価は、0.1~30の範囲がより好ましい。更にヨウ素価は、10以下が好ましい。尚、ヨウ素価は実質的に0を取り得る。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0263】
離型剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.005~5重量部、より好ましくは0.01~3重量部、更に好ましくは0.05~1重量部である。かかる範囲においては、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は良好な離型性および離ロール性を有する場合がある。特にかかる量の脂肪酸エステルは良好な色相を損なうことなく良好な離型性および離ロール性を有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供できる場合がある。
【0264】
(iv)染顔料
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は更に各種の染顔料を含有し多様な意匠性を発現する成形品を提供できる。蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を配合することにより、発光色を生かした更に良好な意匠効果を付与することができる。また極微量の染顔料による着色、かつ鮮やかな発色性を有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物もまた提供可能である。
【0265】
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。
【0266】
上記ブルーイング剤および蛍光染料以外の染料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。更に本発明の樹脂組成物はメタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。メタリック顔料としては、各種板状フィラーに金属被膜または金属酸化物被膜を有するものが好適である。
【0267】
上記の染顔料の含有量は、A成分100重量部に対し、0.00001~1重量部が好ましく、0.00005~0.5重量部がより好ましい。
【0268】
(v)その他の熱安定剤
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、上記のリン系安定剤およびフェノール系安定剤以外の他の熱安定剤を配合することもできる。かかるその他の熱安定剤は、これらの安定剤および酸化防止剤のいずれかと併用されることが好ましく、特に両者と併用されることが好ましい。かかる他の熱安定剤としては、例えば3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物に代表されるラクトン系安定剤(かかる安定剤の詳細は特開平7-233160号公報に記載されている)が好適に例示される。かかる化合物はIrganox HP-136(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販され、該化合物を利用できる。更に該化合物と各種のホスファイト化合物およびヒンダードフェノール化合物を混合した安定剤が市販されている。例えば上記社製のIrganox HP-2921が好適に例示される。本発明においてもかかる予め混合された安定剤を利用することもできる。ラクトン系安定剤の配合量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.0005~0.5重量部、より好ましくは0.001~0.3重量部である。
【0269】
またその他の安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール-3-ステアリルチオプロピオネートなどのイオウ含有安定剤が例示される。かかる安定剤は、樹脂組成物が回転成形に適用される場合に特に有効である。かかるイオウ含有安定剤の配合量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.001~0.3重量部、より好ましくは0.01~0.1重量部である。
【0270】
(vi)他の樹脂
本発明の樹脂組成物には、他の樹脂を本発明の効果を発揮する範囲において使用することもできる。
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、並びに熱可塑性フッ素樹脂(例えばポリフッ化ビニリデン樹脂に代表される)等の樹脂が挙げられる。
他の熱可塑性樹脂の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。
【0271】
(vii)熱線吸収能を有する化合物
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は熱線吸収能を有する化合物を含有することができる。かかる化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウム、酸化イモニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系や酸化タングステン系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物が好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR-362が市販され容易に入手可能である。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.0005~0.2重量部が好ましく、0.0008~0.1重量部がより好ましく、0.001~0.07重量部がさらに好ましい。金属酸化物系近赤外線吸収剤および金属ホウ化物系近赤外線吸収剤の含有量は、本発明の樹脂組成物中、0.1~200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5~100ppmの範囲がより好ましい。
【0272】
(viii)その他の添加剤
その他、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、成形品に種々の機能の付与や特性改善のために、それ自体知られた添加物を少割合配合することができる。これら添加物は本発明の目的を損なわない限り、通常の配合量である。
かかる添加剤としては、摺動剤(例えばPTFE粒子)、光拡散剤(例えばアクリル架橋粒子、シリコーン架橋粒子、極薄ガラスフレーク、炭酸カルシウム粒子)、蛍光染料、無機系蛍光体(例えばアルミン酸塩を母結晶とする蛍光体)、帯電防止剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛)、ラジカル発生剤、およびフォトクロミック剤などが挙げられる。
【0273】
(樹脂組成物の製造)
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分~D成分および任意に他の添加剤を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーンなどによりかかる予備混合物の造粒を行い、その後ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練し、その後ペレタイザーによりペレット化する方法が挙げられる。
【0274】
他に、各成分をそれぞれ独立にベント式二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法や、各成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。各成分の一部を予備混合する方法としては例えば、A成分以外の成分を予め予備混合した後、A成分の樹脂に混合または押出機に直接供給する方法が挙げられる。
【0275】
予備混合する方法としては例えば、A成分としてパウダーの形態を有するものを含む場合、かかるパウダーの一部と配合する添加剤とをブレンドしてパウダーで希釈した添加剤のマスターバッチを製造し、かかるマスターバッチを利用する方法が挙げられる。更に一成分を独立に溶融押出機の途中から供給する方法なども挙げられる。尚、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融押出機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
【0276】
押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
【0277】
溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
【0278】
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にかかるペレットの製造においては、光学ディスク用ポリカーボネート樹脂において既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の低減、運送または輸送時に発生する微小粉の低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を適宜行うことができる。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を行うことができる。またペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1~5mm、より好ましくは1.5~4mm、さらに好ましくは2~3.3mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1~30mm、より好ましくは2~5mm、さらに好ましくは2.5~3.5mmである。
【0279】
(本発明の樹脂組成物からなる成形品)
本発明における樹脂組成物は、通常上述の方法で得られたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0280】
(衝撃強度)
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、ISO179に準拠したノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した値が、好ましくは4kJ/m以上であり、より好ましくは5kJ/m以上であり、さらに好ましくは6kJ/m以上である。ノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した値が、それぞれの適当な範囲未満であると、各種用途において適用が難しい。なお、上限は特に限定されないが100kJ/m以下で十分性能を発揮する。
【0281】
(難燃性)
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、UL94に準拠した垂直燃焼試験において、試験片のUL94難燃ランクが好ましくはV-1以上であり、より好ましくはV-0である。難燃ランクがV-1を下回った場合、高度な難燃性が要求される部材においては、適用が難しい。
【0282】
(耐久性)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、UL746Cに準拠した水暴露試験実施前後において、試験片のノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した値から求められる下記式で表される保持率が好ましくは45%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは55%以上、特に好ましくは60%以上である。保持率が上記上限未満であると、屋外用途向けの構造部材や各種筐体部材、自動車関連部品においては、適用が難しい。
保持率(%)=(水暴露試験後のシャルピー衝撃強度/水暴露試験前のシャルピー衝撃強度)×100
また、同じくUL746Cに準拠した水暴露試験実施後において、試験片のUL94難燃ランクが維持されることが望ましい。難燃ランクが維持されない場合、屋外用途向けの構造部材や各種筐体部材、自動車関連部品においては、適用が難しい。
【0283】
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、UL746Cに準拠した水暴露試験実施前後において、試験片のUL94難燃試験における合計燃焼秒数が50秒以下であることが好ましく、45秒以下であることがより好ましく、40秒以下であることがさらに好ましく、35秒以下であることが特に好ましい。合計燃焼秒数が上記燃焼秒数を上回った場合、高度な難燃性が要求される部材においては、適用が難しい。
【実施例0284】
本発明を実施するための形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。また、特に説明が無い限り実施例中の部は重量部、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によって実施した。
【0285】
(1)樹脂組成物の評価
(i)シャルピー衝撃強度
下記方法で得られた厚み4mmのISO曲げ試験片を用いて、ISO179に従い、23℃の雰囲気下でノッチ付きのシャルピー衝撃強度の測定を実施した。
(ii)難燃性
米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL94垂直燃焼試験に従い、下記方法で得られた厚み1.5mmのUL試験片を用いて燃焼試験を実施した。結果はV-0、V-1、V-2およびnot Vに分類して評価した。また水暴露試験後のUL試験では合計燃焼秒数も含め難燃性を評価した。
(iii)耐久性
(a)UL746C f1定格認証における水暴露試験後のシャルピー衝撃強度保持率
下記方法で得られた厚み4mmのISO曲げ試験片を米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL746C水暴露試験に準拠し、70℃の温水中へ7日間浸漬した後、ISO179に従い、23℃の雰囲気下でノッチ付きのシャルピー衝撃強度の測定を実施した。この結果より、下記式によりノッチ付きのシャルピー衝撃強度の保持率を算出した。
シャルピー衝撃強度保持率(%)=(水暴露試験後のシャルピー衝撃強度/初期のシャルピー衝撃強度)×100
(b)UL746C f1定格認証における水暴露試験後の難燃性
下記方法で得られた厚み1.5mmのUL試験片を米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL746C水暴露試験に準拠し、70℃の温水中へ7日間浸漬した後、米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL94垂直燃焼試験に従い燃焼試験を実施した。結果はV-0、V-1、V-2およびnot Vに分類して評価した。また、合計燃焼秒数についても表1に表記した。
(iv)表面性
下記射出成形の条件で成形した厚さ2mmの平板の表面外観を観察をし、樹脂の分解やガス発生によるシルバーやフローマークがみられないものを〇(良好)、みられるものを×(不可)と判定した。
(v)熱伝導率
角板(50mm×100mm×4mmt)を下記の射出成形の条件で成形し、サンプルの流動方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法にて測定した。
(vi)体積抵抗率
厚さ2mmの平板を下記射出成形の条件で成形し、JIS K6911に従って、500Vを電極間に印加し、1分後の抵抗率を測定した。
(vii)電磁遮蔽特性
下記の方法で得られた成形用材料より150mm×150mm×2mm厚の平板状試験片を射出成形機によりシリンダー温度280℃、金型温度80℃にて作成した。得られた試験片についてKEC(関西電子工業振興センター)法準拠の電磁波シールド性測定装置にて1GHzにおける磁界遮蔽性能(単位:dB)を測定した。
〇:磁界遮蔽性能は40dB以上、
×:磁界遮蔽性能は40dB未満
(viii)光線反射特性
下記射出成形の条件により得られた厚さ2mmの成形板(長さ90mm×幅50mm)を、カラーコンピューター(東京電色製TC-1800MK-II)により測定した。波長450nm~850nmにおける最も低い反射率の値で評価した。
〇:光線反射率95%以上、
×:光線反射率95%未満
(ix)めっき密着性
下記射出成形の条件により得られた50mm×100mm×1mmの板状試験片を用い下記条件にてメッキをした後、金属薄膜と樹脂との密着性評価を実施した。なお碁盤目剥離試験は「JISK5600 塗料一般試験方法」の4-6に準拠して実施した。
○:メッキ未着部が全くない。且つ、セロハンテープによる碁盤目剥離試験にて剥離発生なし。
△:メッキ未着部が全くないが、セロハンテープによる碁盤目剥離試験にて剥離発生あり。
×:メッキ未着部が発生する。且つ、セロハンテープによる碁盤目剥離試験にて剥離発生あり。
【0286】
[実施例1~21、参考例1、比較例1~8]
表1および表2に示す組成で、混合物を押出機の第1供給口から供給した。かかる混合物は次の(i)の予備混合物と他の成分とをV型ブレンダーで混合して得た。すなわち、(i)はD成分のドリップ防止剤とA成分のポリカーボネート樹脂との混合物であってD成分がその2.5重量%となるようポリエチレン袋中で該袋全体を振り動かすことで均一に混合された混合物である。混合物の供給量は計量器[(株)クボタ製CWF]により精密に計測された。押出は径30mmφのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所TEX30α-38.5BW-3V)を使用し、スクリュー回転数230rpm、吐出量25kg/h、ベントの真空度3kPaで溶融混練しペレットを得た。なお、押出温度については、第1供給口からダイス部分まで280℃で実施した。得られたペレットの一部は、90~100℃で6時間熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度70℃にてISO曲げ試験片(ISO179)およびUL試験片を成形した。
【0287】
かかる成形品のうち、密着性評価は以下に示す条件にしたがってメッキを施したのちに実施した。メッキ工程として、得られた試験片をキーエンス製MDX-2000を用いて1064nmのYVO4レーザーにて周波数80kHz、速度2m/s、出力1.45W、レーザースポット径60μm、オーバーラップ30μmの条件にて幅5mmの印字を行った後、下記の操作を実施した。
(a)脱脂(45℃で5分間) OPCクリーナーMIC* 150ml/L
(b)超音波水洗(室温で2分間)
(c)無電解銅(55℃、10分)OPCカッパーMIC-ST*
(d)水洗(1分)
(e)活性化(30℃、1分間) ICPアクセラ200ml/L、35%塩酸85ml/L
(f)水洗(1分)
(g)無電解ニッケル(80℃、10分間)ICP二コロンGM-M 120ml/L、
ICP二コロンGM-1 50ml/L
(h)乾燥
(処理液で*印の処理液は奥野製薬工業(株)の商品名である。)
なお、表1中の記号表記の各成分は下記の通りである。
【0288】
(A成分)
A-1:芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量20,900のポリカーボネート樹脂粉末、帝人(株)製 パンライトL-1225WS(製品名))
A-2:再生ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネート樹脂製のシートから再生された粘度平均分子量20,000の再生ポリカーボネート樹脂ペレット)
A-3:再生ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネート樹脂製のヘッドランプレンズから再生された粘度平均分子量20,500の再生ポリカーボネート樹脂ペレット)
A-4:再生ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネート樹脂製の水ボトルから再生された粘度平均分子量20,000の再生ポリカーボネート樹脂ペレット)
【0289】
(B成分)
B-1-1:PAN系炭素繊維(帝人製 HTC422、ウレタン集束2.5重量部、平均繊維長6mm、繊維径7μm)B-1-1成分に含まれるナトリウムイオン量は35ppmであった。
B-1-2:ニッケルコート炭素繊維(帝人(株)製:HT C923 6mm、長径7μm、カット長6mm、エポキシ・ウレタン系集束剤)。B-1-2成分に含まれるナトリウムイオン量は40ppmであった。
B-1-3:ケッチェンブラック[ライオン株式会社製:EC―600JD(製品名)、DBP吸油量495ml/100g、BET比表面積1270m/g)]。B-1-3成分に含まれるナトリウムイオン量は280ppmであった。
B-1-4:熱膨張処理を施した黒鉛((株)丸豊鋳材製作所製 CSF400R)。B-1-4成分に含まれるナトリウムイオン量は230ppmであった。
B-2-1:タルク[(株)勝光山鉱業所 ビクトリライトTK-RC、平均粒子径(D50)4.7μm]。B-2-1成分に含まれるナトリウムイオン量は35ppmであった。
B-2-2:マイカ[キンセイマテック(株)製:MT200B(商品名)、平均粒子径約35μm]。B-2-2成分に含まれるナトリウムイオン量は2,500ppmであった。
B-2-3:ウォラストナイト[関西マティック(株)製 KGP-H40]。B-2-3成分に含まれるナトリウムイオン量は35ppmであった。
B-3-1:ガラス繊維:異形断面チョップドガラス繊維(日東紡績(株)製:CSG 3PA-830(商品名)、長径28μm、短径7μm、カット長3mm、エポキシ系集束剤)。
B-3-1成分に含まれるナトリウムイオン量は1,900ppmであった。
B-3-2:薄型ガラスフレーク(平均厚み0.7μm、平均粒径160μm、表面処理剤量3重量%、表面処理剤:シランカップリング剤およびエポキシ樹脂)。B-3-2成分に含まれるナトリウムイオン量は1,100ppmであった。
B-4-1:酸化チタン(レジノカラー(株)製:DCF-T-17007(商品名)、平均粒径0.2μm、有機表面処理有り(表面処理量2.0重量%))。B-4-1成分に含まれるナトリウムイオン量は160ppmであった。
B-5-1:窒化ホウ素(Dandong Chemical Engineering Institute製 HS(製品名)、平均粒径20μm )。B-5-1成分に含まれるナトリウムイオン量は30ppmであった。
B-6-1:銅、クロムの複合酸化物(シェファードカラージャパンインク製ブラック1G)。B-6-1成分に含まれるナトリウムイオン量は1ppmであった。
【0290】
(C成分)
C-1:下記式(15)のk=1の三量体の含有量が100mol%である環状フェノキシホスファゼン
C-2;下記式(15)のk=1の三量体の含有量が98.5mol%、k=2の四量体の含有量が1mol%、k=3以上の多量体の含有量が0.5molである環状フェノキシホスファゼン
C-3:下記式(15)のk=1の三量体の含有量が98mol%、k=2の四量体の含有量が1.5mol%、k=3以上の多量体の含有量が0.5molである環状フェノキシホスファゼン
C-4:下記式(15)のk=1の三量体の含有量が70mol%、k=2の四量体の含有量が20mol%、k=3以上の多量体の含有量が10mol%である環状フェノキシホスファゼン
【0291】
【化14】
【0292】
(D成分)
D-1:ドリップ防止剤(ポリテトラフルオロエチレン、ダイキン工業(株)製 ポリフロンMPA FA500H(商品名))
D-2:被覆ドリップ防止剤(スチレン-アクリロニトリル共重合物で被覆されたポリテトラフルオロエチレン(ポリテトラフルオロエチレン含有量50重量%)、Shine polymer社製SN3307PF(商品名))
【0293】
(E成分)
E-1:ABS樹脂(日本A&L(株)製 UT-61(商品名)、遊離のAS重合体成分約80重量%およびABS重合体成分(アセトン不溶ゲル分)約20重量%、ブタジエンゴム成分約14重量%、重量平均ゴム粒子径が0.56μm、塊状重合にて製造)
E-2:スチレンを実質含まないゴム質重合体(カネカ(株)製:カネエースM-711(商品名)、コアがポリブタジエン80重量%、シェルがメチルメタクリレートとエチルアクリレートであるグラフト共重合体、重量平均粒子径が0.23μm)
E-3:ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体(SEBS)[クラレ社製;セプトン8006(商品名)(スチレン含有量34重量%)]
【0294】
(F成分)
F-1:酸変性ポリオレフィン(三菱ケミカル(株)製ダイヤカルナ-DC30M)
(G成分)
G-1:リン系熱安定剤(エチルジエチルホスホノアセテート 城北化学工業(株)製JC-224(製品名))
(H成分)
H-1:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティケミカルズ社製Tinuvin234)
【0295】
(その他の成分)
STB-1:フェノール系熱安定剤(オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、分子量531、BASFジャパン(株)製 Irganox 1076(製品名))
WAX:脂肪酸エステル系離型剤(理研ビタミン(株)製 リケマールSL900(製品名))
【0296】
(X成分)
X-1:リン酸エステル系難燃剤(ビスフェノールA系縮合リン酸エステル、大八化学工業(株)製 CR-741(製品名))
【0297】
【表1A】
【表1B】
【0298】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0299】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、衝撃強度、難燃性、表面性および耐久性を高い次元で満たしていることから、住宅設備用途、建材用途、生活資材用途、インフラ設備用途、自動車用途、OA・EE用途、その他の各種分野において幅広く有用であり、特に耐久性が求められる屋外用途において有用である。