(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121910
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】機械式駐車装置とその遠隔監視システム及び方法
(51)【国際特許分類】
E04H 6/42 20060101AFI20230825BHJP
E04H 6/18 20060101ALI20230825BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230825BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
E04H6/42 H
E04H6/18 601B
E04H6/42 Z
G06Q50/10
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025260
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小野 右季
(72)【発明者】
【氏名】金指 健一
(72)【発明者】
【氏名】巽 慎太郎
【テーマコード(参考)】
5G503
5L049
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5L049CC13
(57)【要約】
【課題】アクセスが困難なパレット支持部(例えば駆動セル)の異常の初期症状と異常箇所を容易に検出可能な機械式駐車装置とその遠隔監視手段を提供する。
【解決手段】機械式駐車装置50が、複数のパレット2と、複数のパレット支持部18と、監視パレット20とを備える。監視パレット20は、パレット2の少なくとも1つに組み込まれており、測定装置22、撮像装置24、及び監視制御装置26を有する。測定装置22は、水平移動時のパレット支持部18の状態データを検出する。撮像装置24は、水平移動時のパレット支持部18の画像データを撮影する。監視制御装置26は、測定装置22で検出された状態データと、撮像装置24で撮影された画像データを記憶し発信する。遠隔監視システム30は、機械式駐車装置50と、機械式駐車装置50とネットワーク回線を介して交信する監視装置60と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を載せる複数のパレットと、
水平移動時の前記パレットを支持する複数のパレット支持部と、
前記パレットの少なくとも1つに組み込まれ、前記水平移動時の前記パレット支持部の状態データを検出する測定装置と、前記水平移動時の前記パレット支持部の画像データを撮影する撮像装置と、前記状態データ及び前記画像データを記憶し発信する監視制御装置とを有する監視パレットと、を備えた機械式駐車装置。
【請求項2】
前記状態データは、前記水平移動時における、音圧データ、振動データ、前記パレット支持部との接触圧データ、又は、前記パレット支持部のレベルデータであり、
前記測定装置は、前記音圧データを検出する騒音計、前記振動データを検出する振動計、前記接触圧データを検出する面圧計、又は、前記レベルデータを検出するレベル計である、請求項1に記載の機械式駐車装置。
【請求項3】
前記監視パレットは、前記パレット支持部の位置データを検出する位置検出装置を有する、請求項1に記載の機械式駐車装置。
【請求項4】
前記監視パレットは、前記測定装置、前記撮像装置、及び前記監視制御装置に電力を供給する電源装置を有し、
さらに、前記パレットの外部に設けられ前記電源装置を充電する充電装置を有する、請求項1に記載の機械式駐車装置。
【請求項5】
構成機器の運転を制御する駐車場管制装置を備え、
前記駐車場管制装置は、前記状態データから前記パレット支持部の異常の初期症状を検出し、異常検出時の前記画像データ及び前記位置データを記憶する監視ユニットを有する、請求項3に記載の機械式駐車装置。
【請求項6】
請求項1に記載の機械式駐車装置と、
前記機械式駐車装置とネットワーク回線を介して交信する監視装置と、を備え、
前記機械式駐車装置は、前記パレットの外部に設けられ前記監視パレットから前記状態データ、及び前記画像データを無線で受信する無線受信器と、
前記監視装置と前記ネットワーク回線を介して交信するネットワーク機器とを有し、
前記機械式駐車装置は、前記監視パレットの前記水平移動時に、前記状態データ、及び前記画像データを、前記監視パレットから受信して前記パレット支持部の位置データと共に前記監視装置に送信し、
前記監視装置は、前記状態データから前記パレット支持部の異常の初期症状を検出し、異常検出時の前記画像データ及び前記位置データを記憶する、ことを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項7】
前記監視装置は、前記位置データが同一の複数の前記画像データを比較し、その差分から異常個所を検出する画像処理装置を有する、請求項6に記載の遠隔監視システム。
【請求項8】
請求項6に記載の遠隔監視システムを用い、
前記機械式駐車装置により、前記監視パレットの前記水平移動時に、前記状態データ、及び前記画像データを、前記監視パレットから受信して前記パレット支持部の前記位置データと共に前記監視装置に送信し、
前記監視装置により、前記状態データから前記パレット支持部の異常の初期症状を検出し、異常検出時の前記画像データ及び前記位置データを記憶する、ことを特徴とする遠隔監視方法。
【請求項9】
前記異常が検出された前記パレット支持部の使用を中止する、請求項8に記載の遠隔監視方法。
【請求項10】
前記異常が検出された前記パレット支持部を迂回するルートを新たに作成する、請求項8に記載の遠隔監視方法。
【請求項11】
前記状態データは、前記水平移動時における、音圧データ、振動データ、前記パレット支持部との接触圧データ、又は、前記パレット支持部のレベルデータであり、
前記状態データの大きさをそれぞれのしきい値と比較し、前記しきい値を超える場合に前記異常の初期症状を検出する、請求項8に記載の遠隔監視方法。
【請求項12】
画像処理により、前記位置データが同一の複数の前記画像データを比較し、その差分から異常個所を特定する、請求項8に記載の遠隔監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常の初期症状と異常箇所を検出可能な機械式駐車装置とその遠隔監視手段に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置、例えば水平循環式駐車装置は、パレットを支持して移動する複数の駆動セルを、パレットが水平面内で碁盤の目のように隣接するように配置し、各位置においてパレットを長さ方向又は幅方向に移動して循環させ車両の入出庫を行う装置である。
かかる装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
一方、機械式駐車装置の作動状態を遠隔で監視し、保守の必要性を判断する遠隔保守システムが、例えば特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-184800号公報
【特許文献2】特許第3996492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した水平循環式駐車装置では、多数のパレットが隣接して配置された駐車空間において少なくとも1つの駆動セルがパレットの載らない空セルであり、空セルに隣接する駆動セル上のパレットを空セル上に水平移動(横送り又は縦送り)することができる。この水平移動により空セルの位置が隣接する位置に移動し、これを繰り返すことにより、各段のパレットを自由に水平移動(横送り又は縦送り)することができる。
【0006】
水平循環式駐車装置では、パレットを支持して水平移動(横送り又は縦送り)する駆動セルの構造が複雑であり、異常が発生する可能性がある。
一方、駐車空間において複数の駆動セルの上には複数のパレットが隣接して載っており、パレットの下の駆動セルが位置する空間は、人が入って移動できないほど狭くて低い。そのため、空セル以外の箇所で駆動セルに人がアクセスできず、駆動セルの異常の早期検出や異常箇所の特定が従来困難だった。
【0007】
また、特許文献2の「駐車装置の遠隔保守システム」では、機械の作動状態として、電動機の動作時間やセンサの作動を遠隔で監視しているが、これらの監視のみでは駆動セルに発生する異常の初期症状(異音、振動、部材の傷、割れ、摩耗、等)を検出できなかった。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、アクセスが困難なパレット支持部(例えば駆動セル)の異常の初期症状と異常箇所を容易に検出可能な機械式駐車装置とその遠隔監視手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、車両を載せる複数のパレットと、
水平移動時の前記パレットを支持する複数のパレット支持部と、
前記パレットの少なくとも1つに組み込まれ、前記水平移動時の前記パレット支持部の状態データを検出する測定装置と、前記水平移動時の前記パレット支持部の画像データを撮影する撮像装置と、前記状態データ及び前記画像データを記憶し発信する監視制御装置とを有する監視パレットと、を備えた機械式駐車装置が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記の機械式駐車装置と、
前記機械式駐車装置とネットワーク回線を介して交信する監視装置と、を備え、
前記機械式駐車装置は、前記パレットの外部に設けられ前記監視パレットから前記状態データ、及び前記画像データを無線で受信する無線受信器と、
前記監視装置と前記ネットワーク回線を介して交信するネットワーク機器とを有し、
前記機械式駐車装置は、前記監視パレットの前記水平移動時に、前記状態データ、及び前記画像データを、前記監視パレットから受信して前記パレット支持部の位置データと共に前記監視装置に送信し、
前記監視装置は、前記状態データから前記パレット支持部の異常の初期症状を検出し、異常検出時の前記画像データ及び前記位置データを記憶する、ことを特徴とする遠隔監視システムが提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記の遠隔監視システムを用い、
前記機械式駐車装置により、前記監視パレットの前記水平移動時に、前記状態データ、及び前記画像データを、前記監視パレットから受信して前記パレット支持部の前記位置データと共に前記監視装置に送信し、
前記監視装置により、前記状態データから前記パレット支持部の異常の初期症状を検出し、異常検出時の前記画像データ及び前記位置データを記憶する、ことを特徴とする遠隔監視方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の機械式駐車装置は、パレットの少なくとも1つに組み込まれた測定装置、撮像装置、及び監視制御装置を有する監視パレットを備える。この構成により、監視パレットを他のパレットと同様に複数のパレット支持部(例えば駆動セル)で支持して水平移動することができる。
また、測定装置は水平移動時のパレット支持部の状態データを検出し、撮像装置は水平移動時のパレット支持部の画像データを撮影し、監視制御装置は状態データ及び画像データを記憶し発信する。この構成により、監視パレットを他のパレットと同様に複数のパレット支持部で支持して水平移動することで、記憶又は発信された状態データと画像データから、アクセスが困難なパレット支持部の異常の初期症状と異常箇所を容易に検出することができる。
【0013】
また、上記本発明の遠隔監視システムと遠隔監視方法によれば、機械式駐車装置により、監視パレットの水平移動時に、状態データ、及び画像データを、監視パレットから受信してパレット支持部の位置データと共に監視装置に送信する。また、監視装置により、状態データからパレット支持部の異常の初期症状を検出し、異常検出時の画像データ及び位置データを記憶する。
この構成により、アクセスが困難なパレット支持部(例えば駆動セル)の状態データを遠隔で監視し、異常の初期症状と異常箇所を遠隔で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来の水平循環式駐車装置の一例を示す側面図(A)と平面図(B)である。
【
図5】本発明による遠隔監視システムの全体構成図である。
【
図6】本発明の機械式駐車装置を構成する監視パレットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、従来の水平循環式駐車装置100の一例を示す側面図(A)と平面図(B)である。
水平循環式駐車装置100は、パレット2を支持して移動する複数の駆動セル4を、パレット2が水平面内で碁盤の目のように隣接するように配置し、各位置においてパレット2を長さ方向又は幅方向に移動して循環させ車両1の入出庫を行う装置である。
車両1は、例えば乗用車である。車両1は、小型車、中型車、大型車、ハイルーフ車、などである。
【0016】
図1(A)(B)において、水平循環式駐車装置100は、地下式であり、地下に上下2段の格納領域を有する。また、地上の入出庫部と地下の上段及び下段との間で鉛直に昇降しその間でパレット2を昇降するリフト3が設けられている。
上下2段の各格納領域には、この例では、リフト3がパレット2を昇降する位置以外の範囲に、それぞれ11台分の車両格納スペースを有する。
【0017】
この図において、各車両格納スペースには、車両1を載せたパレット2をその幅方向と長さ方向に移動する駆動セル4が設けられている。またこの例では、リフト3にも、駆動セル4が設けられている。
【0018】
駆動セル4は、車両1を載せたパレット2を、その幅方向に移動する「横送り」と、その長さ方向に移動する「縦送り」との両方が可能に構成されている。
【0019】
図1において、上下2段の各段には、この例において、それぞれ11台分の車両格納スペースにそれぞれ1台ずつの駆動セル4が設けられている。各駆動セル4は、平面視でパレット2の大きさに相当するフレーム9(
図4参照)を有する。
上下2段の各段において、複数のフレーム9は互いに一定の間隔を隔てて配置され、それぞれその四隅で水平に支持されている。また、各段において、少なくとも1つの駆動セル4上にはパレット2が載らず、その他の駆動セル4上にはパレット2が載っている。パレット2が載っていない駆動セル4を以下「空セル」と呼ぶ。
【0020】
上述した水平循環式駐車装置100の構成により、各段において少なくとも1つの駆動セル4が空セルなので、空セルに隣接する駆動セル4上のパレット2を空セル上に水平移動(横送り又は縦送り)することができる。この水平移動により空セルの位置が隣接する位置に移動する。
従ってこれを繰り返すことにより、各段のパレット2を自由に水平移動(横送り又は縦送り)することができる。
【0021】
図2は、上述した水平循環式駐車装置100の動作説明図である。
この図において、5は、リフト位置を示している。なおこの図において、駆動セル4の配列は、
図1とは相違する。
【0022】
図2は、符号aで示す車両1(以下、車両aと呼ぶ)を(A)(B)(C)(D)の順で、リフト位置5まで水平移動し、リフト3により地上の入出庫部まで搬送する動作を示している。
この図に示すように、水平循環式駐車装置100におけるパレット2の水平移動は、コンピュータ制御により最短の入出庫ルートを決定し、パズルのように次から次へと車両1を効率よく水平移動させ、入出庫の最短待ち時間を実現するようになっている。
【0023】
図3は、パレット2の具体例を示す下面図である。この図はパレット2の下面を示している。
パレット2は、車両1(例えば乗用車)の全体がその上に載り、車両1の一部がパレット2の平面視で外側に出ない大きさに設定されている。
【0024】
図3において、パレット2はその下面に、1対の幅方向レール6a、1対の長さ方向レール6b、及び複数の切替レール6cを有する。以下、必要な場合を除き、幅方向レール6a、長さ方向レール6b、及び切替レール6cを、単に「支持レール6」と呼ぶ。
【0025】
1対の幅方向レール6aは、パレット2の幅方向に一定の間隔を隔てて水平に延びる。なお以下、「水平」とは、パレット2の使用状態において水平であることを意味する。
1対の長さ方向レール6bは、パレット2の長さ方向に一定の間隔を隔てて水平に延びる。1対の幅方向レール6aの間隔と1対の長さ方向レール6bの間隔は、パレット2を水平に支持できるように設定されている。
【0026】
複数(この例で4つ)の切替レール6cは、幅方向レール6aと長さ方向レール6bの交差部7(この例で4箇所)に設けられ、幅方向と長さ方向との間で旋回可能に構成されている。
なお、切替レール6cの旋回は、鉛直軸まわりの旋回であり、旋回駆動機構は設けられず、外力により自由に旋回できるようになっている。
【0027】
幅方向レール6aと長さ方向レール6bの下面は互いに面一の水平面である。また幅方向レール6aと長さ方向レール6bの幅は同一に設定されている。
幅方向レール6aと長さ方向レール6bは、交差部7において分断されており、それぞれの端面は、切替レール6cの旋回中心から一定の間隔を隔てている。また、幅方向レール6aと長さ方向レール6bの外方端は、パレット2の外縁付近まで延びている。
【0028】
切替レール6cは、幅方向レール6a及び長さ方向レール6bと同一の幅を有する1本のレールである。また切替レール6cの下面は幅方向レール6a及び長さ方向レール6bと同じ高さの水平面である。さらに、切替レール6cの長さは、交差部7において分断された幅方向レール6a及び長さ方向レール6bを切替レール6cを介して連結するように設定されている。
【0029】
上述したパレット2の構成により、切替レール6cを水平に旋回して、切替レール6cを介して、分断された幅方向レール6aを連結することで、幅方向レール6aと切替レール6cによりパレット2の幅方向全体に延びる1対のレールを構成することができる。
【0030】
また同様に、切替レール6cを水平に旋回して、切替レール6cを介して、分断された長さ方向レール6bを連結することで、長さ方向レール6bと切替レール6cによりパレット2の長さ方向全体に延びる1対のレールを構成することができる。
【0031】
上述したように、パレット2は、その上に車両1を載せるようになっているが、それ自体を移動する駆動装置(動力源)はなく、下方に位置する駆動セル4により受動的に水平移動するようになっている。
【0032】
図4は、駆動セル4の平面図である。
この図において、駆動セル4は、フレーム9と、フレーム上に設置されたパレット駆動装置10と、を備える。
【0033】
フレーム9は、車両1を載せたパレット2をその幅方向と長さ方向に移動する駆動セル4のフレームである。
図4において、複数のフレーム9は互いに一定の間隔を隔てて配置され、それぞれその四隅で水平に支持されている。この場合、フレーム9の四隅の外側に鉛直に延びる柱(図示せず)が設けられ、その柱の間をパレット2が幅方向と長さ方向に水平移動して通過できるようになっている。
【0034】
パレット駆動装置10は、1対の駆動ユニット12、1対の従動ユニット14、及び旋回機構16と、を有する。
1対の駆動ユニット12と1対の従動ユニット14は、上述したパレット2の4つの切替レール6cの旋回中心位置に設けられ、それぞれ切替レール6cの旋回中心を中心に自由に旋回可能に取り付けられている。また、この例では、切替レール6cの4つの旋回中心のうち対角位置に1対の駆動ユニット12と1対の従動ユニット14がそれぞれ配置されている。
【0035】
旋回機構16は、1対の駆動ユニット12と1対の従動ユニット14を順に連結した複数の連動ロッド17aと、連動ロッド17aを水平に移動させる旋回駆動ユニット17bとを有する。
この構成により、旋回駆動ユニット17bにより連動ロッド17aを介して1対の駆動ユニット12と1対の従動ユニット14を同期して水平旋回させ、駆動ユニット12の駆動方向と従動ユニット14の案内方向を幅方向と長さ方向に切替えることができる。
【0036】
駆動ユニット12は、パレット2を支持し駆動する駆動輪12aと、駆動輪12aと共に水平旋回しパレット2の水平移動を案内する複数の案内ローラ12bと、を有する。
駆動輪12aは、水平軸を中心に回転駆動される。駆動輪12aは円板形状であり、その外周上面にパレット2の支持レール6の下面を支持し、その回転によりパレット2を水平方向に駆動する。
【0037】
従動ユニット14は、上述した駆動ユニット12の駆動輪12aを従動輪14aに置き換え、駆動モータ13を省略したものである。その他の構成は駆動ユニット12と同様である。
【0038】
上述した構成により、連動ロッド17aにより、駆動ユニット12の駆動方向と従動ユニット14の案内方向を幅方向と長さ方向に連動して切替えることができる。
また、支持レール6が、幅方向又は長さ方向に1対のレールを構成している場合に、1対の駆動ユニット12は1対のレールにそれぞれ位置して、1対のレールを介してパレット2を支持し、かつパレット2を幅方向又は長さ方向に水平駆動することができる。
さらにこの場合、1対の従動ユニット14も1対のレールにそれぞれ位置して、1対のレールを介してパレット2を支持し、かつパレット2を幅方向又は長さ方向に案内することができる。
従って、上述したパレット駆動装置10により、車両1を載せたパレット2を、その幅方向に移動する横送りと、その長さ方向に移動する縦送りとの両方を切替えて実施することができる。
【0039】
なお、上述したパレット2、駆動セル4、及びパレット駆動装置10の構成は、一例であり、本発明はこれらに限定されず、その他の構成であってもよい。
【0040】
図5は、本発明による遠隔監視システム30の全体構成図である。
この図において、遠隔監視システム30は、機械式駐車装置50と、機械式駐車装置50とネットワーク回線を介して交信する監視装置60と、を備える。
【0041】
本発明の機械式駐車装置50は、車両1を載せる複数のパレット2と、水平移動時のパレット2を支持する複数のパレット支持部18と、監視パレット20と、を備える。
機械式駐車装置50は、この例では上述した水平循環式駐車装置100であるが、本発明はこれに限定されず、その他の機械式駐車装置であってもよい。
パレット2は、この例では上述したパレット2である。
パレット支持部18は、この例では、上述した駆動ユニット12と従動ユニット14を含むパレット駆動装置10である。
【0042】
図6は、本発明の機械式駐車装置50を構成する監視パレット20の説明図である。
この図において、(A)は監視パレット20の側面図、(B)は監視パレット20を下方から見た下面図である。
【0043】
図6(A)において、パレット2は、車両1が載る車両搭載板2aと、車両搭載板2aと支持レール6の間に位置する支持フレーム2bとを有する。支持フレーム2bは、上述した幅方向レール6a及び長さ方向レール6bと車両搭載板2aの間に位置し、車両1を支持し支持レール6の変形を防止できる剛性を有する。支持フレーム2bは、例えば全高が100~150mmの型鋼(H型又は矩形型)である。
【0044】
図6(A)(B)において、監視パレット20は、パレット2の少なくとも1つに組み込まれており、測定装置22、撮像装置24、及び監視制御装置26を有する。
測定装置22、撮像装置24、及び監視制御装置26は、上述したパレット駆動装置10と干渉しないように、支持フレーム2bの間又は外側に位置し、全高が支持フレーム2bより低く設定されている。
【0045】
測定装置22は、水平移動時のパレット支持部18の状態データを検出する。
状態データは、水平移動時における、音圧データ、振動データ、パレット支持部18との接触圧データ、又は、パレット支持部18のレベルデータである。
また、測定装置22は、この例では、音圧データを検出する騒音計22a、振動データを検出する振動計22b、接触圧データを検出する面圧計22c、及び、レベルデータを検出するレベル計22dである。
騒音計22aと振動計22bは、例えば車両搭載板2aの裏面に固定され、それぞれ音圧データと振動データを検出する。
面圧計22cは、例えば切替レール6cに取り付けられた歪みゲージであり、切替レール6cに生じる歪みから接触圧データを検出する。
レベル計22dは、例えば支持フレーム2bの一部に固定されたレーザ距離計であり、駆動セル4の対応位置までの距離からパレット駆動装置10(例えば、駆動輪12a)の摩耗量を検出する。
【0046】
撮像装置24は、水平移動時のパレット支持部18の画像データを撮影する。撮像装置24は、この例では、交差部7の外側に設けられ、駆動ユニット12又は従動ユニット14を撮影する複数のカメラである。
【0047】
監視制御装置26は、例えば、無線通信機器を有するコンピュータ(PC)であり、水平移動時における測定装置22の測定タイミング及び撮像装置24の撮影タイミングを制御する。このタイミングは、例えば、交差部7がパレット支持部18の駆動輪12a及び従動輪14aの上に位置するときに設定するのがよい。さらに、監視制御装置26は、測定装置22で検出された状態データと、撮像装置24で撮影された画像データを記憶し発信する。
【0048】
図6(A)(B)において、監視パレット20は、さらに、位置検出装置27と電源装置28を有する。位置検出装置27及び電源装置28も、上述したパレット駆動装置10と干渉しないように、支持フレーム2bの間又は外側に位置し、全高が支持フレーム2bより低く設定されている。
【0049】
位置検出装置27は、例えばGPS又は画像処理装置である。GPSは、監視パレット20が載るパレット支持部18の位置データを検出する。画像処理装置は、撮像装置24で得られた画像を処理して、例えば駆動ユニット12と従動ユニット14に予め取り付けられたマーク(例えば2次元コード)から、駆動ユニット12と従動ユニット14の位置データを検出する。
なお、位置検出装置27は、必須ではなく、これを省略し、機械式駐車装置50の制御装置(駐車場管制装置52)により、監視パレット20が載るパレット支持部18の位置データを検出してもよい。
【0050】
電源装置28は、例えば充電コネクタ、バッテリー、及び変圧機器を有し、測定装置22、撮像装置24、及び監視制御装置26に電力を供給する。
なお、バッテリーは、例えば、駐車空間又は入出庫室の定位置に設けられた充電装置53(後述する)により充電される。
【0051】
上述したように、本発明の機械式駐車装置50は、パレット2の少なくとも1つに組み込まれた測定装置22、撮像装置24、及び監視制御装置26を有する監視パレット20を備える。この構成により、監視パレット20を他のパレット2と同様に複数のパレット支持部18で支持して水平移動することができる。
【0052】
また、監視パレット上の測定装置22は、水平移動時(例えば、交差部7がパレット支持部18の駆動輪12a及び従動輪14aの上に位置するとき)のパレット支持部18の状態データを検出する。また、撮像装置24は水平移動時のパレット支持部18の画像データを撮影し、監視制御装置26は状態データ及び画像データを記憶し発信する。
この構成により、監視パレット20を複数のパレット支持部18で支持して水平移動することで、記憶又は発信された状態データと画像データから、アクセスが困難なパレット支持部18(例えば駆動セル4)の異常の初期症状と異常箇所を容易に検出することができる。
【0053】
上述したように、監視パレット20はパレット2の1つに組み込まれており、パレット2と同様に、それ自体を移動する駆動装置(動力源)はなく、下方に位置する駆動セル4により受動的に水平移動する。
従って、機械式駐車装置50の駐車場管制装置52(後述する)により、他のパレット2と同様に車両の駐車空間及び入出庫部に自由に移動することができる。また、この際、監視パレット20の上に車両1を載せても、載せなくてもよい。
また、監視制御装置26により、水平移動時の状態データと画像データを記憶するので、音圧データによる音圧、振動データにより振動、または接触圧データによる面圧の変化から、異常の初期症状(異音、振動、又は面圧の急変)があるパレット支持部18を特定することができる。
さらに異常の初期症状が特定されたパレット支持部18を水平移動時の画像データを画像処理装置を用いて解析することで、異常箇所(部材の傷、割れ、摩耗、等)を容易に検出することができる。
【0054】
図5において、機械式駐車装置50は、さらに駐車場管制装置52、充電装置53、無線受信器54、及び、ネットワーク機器56を有する。
駐車場管制装置52は、例えばコンピュータ(PC)であり、構成機器の運転を制御する。充電装置53は、パレット2の外部(例えば、駐車空間又は入出庫室の定位置)に設けられ電源装置28のバッテリーを充電する。この充電は、非接触給電であることが好ましい。
無線受信器54は、パレット2の外部(例えば、駐車空間又は入出庫室)に設けられ、監視パレット20から状態データ、及び画像データを無線で受信する。ネットワーク機器56は、監視装置60とネットワーク回線を介して交信する。
【0055】
機械式駐車装置50は、監視パレット20の水平移動時に、状態データ、及び画像データを、監視パレット20から受信してパレット支持部18の位置データと共に監視装置60に送信する。
また、この例で駐車場管制装置52は、監視ユニット58を有する。監視ユニット58は、状態データからパレット支持部18の異常の初期症状を検出し、異常検出時の画像データ及び位置データを記憶する。監視ユニット58は、後述する監視装置60と同一機能を有することが好ましい。
なお、監視ユニット58は、必須ではなく、これを省略してもよい。
【0056】
監視装置60は、機械式駐車装置50とネットワーク回線を介して交信する監視用のコンピュータ(PC)であり、機械式駐車装置50から受信した状態データからパレット支持部18の異常の初期症状を検出し、異常検出時の画像データ及び位置データを記憶する。
また、監視装置60は、位置データが同一の複数の画像データを比較し、その差分から異常個所を検出する画像処理装置を有する。
監視装置60が交信する機械式駐車装置50は、1基に限定されず複数であってもよい。
【0057】
本発明による遠隔監視方法は、上述した遠隔監視システム30を用い、以下のステップ(工程)を有する。
(A)機械式駐車装置50により、監視パレット20の水平移動時に、状態データ、及び画像データを、監視パレット20から受信してパレット支持部18の位置データと共に監視装置60に送信する第1ステップ。
(B)監視装置60により、状態データからパレット支持部18の異常の初期症状を検出し、異常検出時の画像データ及び位置データを記憶する第2ステップ。
【0058】
第2ステップにおいて、状態データ(音圧、振動、面圧)の大きさをそれぞれのしきい値と比較し、しきい値を超える場合に異常の初期症状を検出する。
また、第2ステップにおいて、画像処理により、位置データが同一の複数の画像データを比較し、その差分から異常個所を特定する、ことが好ましい。
【0059】
また、異常が検出されたパレット支持部18(駆動セル4)の使用を中止することが好ましい。
すなわち異常個所を検出した場合には,該当箇所の駆動セル4の使用を自動的に使用中止にする。これにより、異常個所がさらに摩耗したり、駆動セル4からパレット2が脱線したりするなどの事故を未然に防ぐことができる。
【0060】
さらに、異常が検出されたパレット支持部18(駆動セル4)を迂回するルートを新たに作成することが好ましい。
異常個所を迂回するルートをコンピュータ制御により、異常個所を除いた新たな最短の入出庫ルートを決定する。これにより、駐車装置全体を止めることなく、車両の入出庫を継続することができ、点検のための作業員が到着するまでの間に駐車装置が使用できないことを防ぐことが可能となる。
【0061】
上述した本発明の遠隔監視システム30と遠隔監視方法によれば、機械式駐車装置50により、監視パレット20の水平移動時に、状態データ及び画像データを、監視パレット20から受信してパレット支持部18の位置データと共に監視装置60に送信する。
監視パレット20の移動は、機械式駐車装置50の駐車場管制装置52により、他のパレット2と同様に駐車空間及び入出庫部に自由に移動させてもよく、或いは駐車場管制装置52を介して遠隔制御してもよい。
また、監視装置60により、受信した水平移動時の状態データから、音圧データによる音圧、振動データにより振動、接触圧データによる面圧の変化から、異常の初期症状(異音、振動、又は面圧の急変)があるパレット支持部18を特定することができる。
さらに異常の初期症状が特定されたパレット支持部18を水平移動時の画像データを解析することで、異常箇所(部材の傷、割れ、摩耗、等)を容易に検出することができる。
従って、アクセスが困難なパレット支持部18(例えば駆動セル4)の状態データを遠隔で監視し、異常の初期症状と異常箇所を遠隔で検出することができる。
【0062】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1 車両、2 パレット、2a 車両搭載板、2b 支持フレーム、
3 リフト、4 駆動セル、5 リフト位置、6 支持レール、
6a 幅方向レール、6b 長さ方向レール、6c 切替レール、
7 交差部、9 フレーム、10 パレット駆動装置、12 駆動ユニット、
12a 駆動輪、12b 案内ローラ、14 従動ユニット、14a 従動輪、
16 旋回機構、17a 連動ロッド、17b 旋回駆動ユニット、
18 パレット支持部、20 監視パレット、22 測定装置、
22a 騒音計、22b 振動計、22c 面圧計、22d レベル計、
24 撮像装置、26 監視制御装置、27 位置検出装置、28 電源装置、
30 遠隔監視システム、50 機械式駐車装置、52 駐車場管制装置、
53 充電装置、54 無線受信器、56 ネットワーク機器、58 監視ユニット、
60 監視装置、100 水平循環式駐車装置