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特開2023-121912電子キー認証装置、電子キー認証システム、電子キー認証方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121912
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】電子キー認証装置、電子キー認証システム、電子キー認証方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/24 20130101AFI20230825BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B60R25/24
E05B49/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025263
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】西台 哲夫
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB08
2E250DD06
2E250FF23
2E250FF25
2E250FF27
2E250FF36
2E250HH07
2E250JJ03
(57)【要約】
【課題】ユーザの利便性を損なうことなく、車両の盗難に対するセキュリティ性を向上させる。
【解決手段】電子キー認証システム100は、車両50に搭載される車載機1と、この車載機1と通信を行う第1電子キーA(スマートフォン)および第2電子キーB(FOB)を含む。車載機1は、電子キー認証装置を構成しており、第1電子キーAおよび第2電子キーBとの通信に基づいて、当該電子キーの認証を行う。第2電子キーBは、アンサーバック指令を送信するためのアンサーバックスイッチ32aを有している。車載機1は、このスイッチ32aが操作されたことにより、第2電子キーBからアンサーバック指令を受信すると、この指令に応じたランプ点滅などの処理を実行する。また、車載機1は、アンサーバック指令を送信した第2電子キーBとの間で、認証に必要な双方向の通信を行って、第2電子キーBの認証のみを実行し、第1電子キーAの認証を実行しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載機から構成され、車両のユーザが所持する第1電子キーおよび第2電子キーの認証を行う装置であって、
前記第1電子キーおよび第2電子キーと通信を行う通信部と、
前記各電子キーとの通信に基づいて、当該電子キーの認証を行う認証部と、
車両に所定の動作を行わせるための制御信号を出力する車両制御部と、を備え、
前記通信部が、前記第1電子キーまたは前記第2電子キーからアンサーバック指令を受信した場合に、
前記車両制御部は、前記アンサーバック指令に応じた処理を実行し、
前記認証部は、前記アンサーバック指令を送信した一方の電子キーの認証のみを実行し、他方の電子キーの認証を実行しない、ことを特徴とする電子キー認証装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キー認証装置において、
前記通信部は、前記アンサーバック指令を送信した一方の電子キーとの間で、認証に必要な双方向の通信を行い、
前記認証部は、前記双方向の通信に基づいて、前記一方の電子キーの認証を実行する、ことを特徴とする電子キー認証装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子キー認証装置において、
前記認証部は、
前記通信部が前記アンサーバック指令を受信した後、一定時間内に、前記車両に備わるメインスイッチが操作された場合に、前記一方の電子キーの認証を実行する、ことを特徴とする電子キー認証装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電子キー認証装置において、
前記認証部は、
前記アンサーバック指令を前記通信部が受信していない状態で、前記第1電子キーについて認証を行った場合は、その後に前記通信部が前記第2電子キーから前記アンサーバック指令を受信すると、当該第2電子キーについて認証を実行し、
前記認証が成功すると、前記第1電子キーの認証を破棄するとともに、前記第2電子キーの認証を承認する、ことを特徴とする電子キー認証装置。
【請求項5】
車両に搭載される車載機と、車両のユーザが所持する第1電子キーおよび第2電子キーとを備え、前記車載機が前記各電子キーとの通信に基づいて当該電子キーの認証を行う、電子キー認証システムにおいて、
前記第1電子キーまたは前記第2電子キーは、前記車載機へアンサーバック指令を送信するためのアンサーバックスイッチを有し、
前記車載機は、
前記アンサーバックスイッチが操作されたことにより、前記アンサーバック指令を受信すると、当該指令に応じた処理を実行するとともに、
前記アンサーバック指令を送信した一方の電子キーの認証のみを実行し、他方の電子キーの認証を実行しない、ことを特徴とする電子キー認証システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電子キー認証システムにおいて、
前記第1電子キーと前記第2電子キーの一方はスマートフォンであり、
前記第1電子キーと前記第2電子キーの他方はキーFOBである、ことを特徴とする電子キー認証システム。
【請求項7】
車両に搭載された車載機が、車両のユーザが所持する第1電子キーおよび第2電子キーとの通信に基づいて、当該電子キーの認証を行う方法であって、
前記第1電子キーまたは前記第2電子キーからアンサーバック指令を受信する手順と、
前記アンサーバック指令に応じた処理を実行する手順と、
前記アンサーバック指令を送信した一方の電子キーの認証のみを実行し、他方の電子キーの認証を実行しない手順と、を含むことを特徴とする電子キー認証方法。
【請求項8】
車両に搭載される車載機と、車両のユーザが所持する第1電子キーおよび第2電子キーとを備えた電子キー認証システムにおける、電子キーの認証方法であって、
前記第1電子キーまたは前記第2電子キーが、アンサーバック指令を送信する手順と、
前記車載機が、前記アンサーバック指令を受信する手順と、
前記車載機が、前記アンサーバック指令に応じた処理を実行する手順と、
前記車載機が、前記アンサーバック指令を送信した一方の電子キーの認証のみを実行し、他方の電子キーの認証を実行しない手順と、を含むことを特徴とする電子キー認証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車のような車両に用いられる電子キーを認証するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された車載機とユーザの所持する電子キーとの間の無線通信によりキー認証を行い、認証結果が正常な場合に車両の所定動作を許可する認証システムが知られている。特許文献1や特許文献2には、このような電子キーの認証システムが記載されている。特許文献1は、1台の車両を複数のユーザで共用する場合における、電子キーと車載機との間の通信設定の利便性を向上させる技術を開示している。特許文献2は、ユーザ以外の者の電子キーが認証されて車載機と無線接続されるのを防止する技術を開示している。
【0003】
一般に、電子キーの認証システムにおいては、電子キーとしてキーFOB(以下、単に「FOB」と表記)が広く用いられているが、特許文献1、2のように、スマートフォンを電子キーとして用いることも可能である。また、電子キーの紛失や車両利用者の交替などに対応できるように、1台の車両につき、スマートフォンとFOBといった複数の電子キーを使えるようにすることで、ユーザの利便性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-141199号公報
【特許文献2】特開2018-144794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、前述した複数の電子キーを用いる認証システムを自動二輪車で採用しようとした場合、以下のような問題の発生が想定されることを見い出した。
【0006】
電子キーとして用いるスマートフォンおよびFOBを所持したユーザが、自動二輪車に近づいてハンドルの解錠やエンジンの始動を行うにあたり、車載機が電子キーの認証処理を実行するが、この際、車載機は、先に通信が確立して無線接続された電子キーに対して認証処理を実行する。したがって、たとえばFOBよりも先にスマートフォンが車載機と無線接続された場合、車載機は、スマートフォンと通信して認証処理を実行する。そしてスマートフォンの認証が成功すれば、車載機は、ハンドルの解錠やエンジンの始動を許可し、以後はスマートフォンとの通信に基づいて車両の制御を行う。
【0007】
一方、近年の自動二輪車においては、ユーザの利便性を考慮して、コンソールボックスの内部に充電用の端子(USB端子など)が備わっており、このボックス内でスマートフォンを充電できるようになっている。ここで、ユーザが自動二輪車から降車して、充電中のスマートフォンをコンソールボックス内に置いたまま、コンビニエンスストアなどに立ち寄ったとする。この場合、車載機との通信によりスマートフォンが認証されると、キーを持たない第三者がハンドルを解錠したり、エンジンを始動させたりすることが可能となり、自動二輪車がスマートフォンごと盗難されてしまうという事態が起こりうる。そこで、このような事態を未然に、かつユーザに負担をかけずに回避するための方策が求められる。
【0008】
本発明は、上記のような知見に基づきなされたもので、ユーザの利便性を損なうことなく、車両の盗難に対するセキュリティ性を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、電子キーの認証にあたって、既存のアンサーバック機能を利用する。アンサーバックは、電子キーにおけるスイッチ操作に応答して、車両に備わるランプを点滅させたりブザーを鳴動させたりすることで、車両の所在位置を光や音でユーザに知らせる機能である。
【0010】
本発明の電子キー認証装置は、車両に搭載される車載機から構成されており、車両のユーザが所持する第1電子キーおよび第2電子キーと通信を行う通信部と、各電子キーとの通信に基づいて当該電子キーの認証を行う認証部と、車両に所定の動作を行わせるための制御信号を出力する車両制御部とを備えている。通信部が、第1電子キーまたは第2電子キーからアンサーバック指令を受信した場合、車両制御部は、アンサーバック指令に応じた処理を実行し、認証部は、アンサーバック指令を送信した一方の電子キーの認証のみを実行し、他方の電子キーの認証を実行しない。
【0011】
このようにすれば、第1電子キーが第2電子キーより先に車載機と無線接続されても、その後に第2電子キーでアンサーバックの操作が行われると、車載機は第2電子キーと通信を行って、当該第2電子キーの認証を実行する。その一方、車載機は、先に無線接続された第1電子キーに対しては、認証を実行しない。このため、車両のユーザが、第1電子キーを車両に残したまま降車して、車両から離れても、第1電子キーは認証がされないので、車両が走行可能な状態となることはない。その結果、車両の盗難に対するセキュリティ性が向上する。また、ユーザは、第2電子キーでアンサーバックの操作を行うだけで、第2電子キーが優先的に認証されるので、複雑な手順を踏まなくても、簡単かつ確実に、自らの意思で操作した第2電子キーを認証済の電子キーとすることができる。
【0012】
本発明において、通信部は、アンサーバック指令を送信した一方の電子キーとの間で、認証に必要な双方向の通信を行い、認証部は、この双方向の通信に基づいて、一方の電子キーの認証を実行してもよい。
【0013】
本発明において、認証部は、通信部がアンサーバック指令を受信した後、一定時間内に、車両に備わるメインスイッチが操作された場合に、アンサーバック指令を送信した電子キーの認証を実行してもよい。
【0014】
本発明において、認証部は、アンサーバック指令を通信部が受信していない状態で、第1電子キーについて認証を行った場合は、その後に通信部が第2電子キーからアンサーバック指令を受信すると、当該第2電子キーについて認証を実行し、認証が成功すると、第1電子キーの認証を破棄するとともに、第2電子キーの認証を承認してもよい。
【0015】
本発明において、第1電子キーと第2電子キーの一方はスマートフォンであり、第1電子キーと第2電子キーの他方はキーFOBであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アンサーバックの操作が行われた電子キーが優先的に認証されるので、車両に残された他の電子キーの認証によって車両が走行可能となることはなく、ユーザに負担をかけずに車両盗難に対するセキュリティ性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による電子キー認証システムの全体図である。
図2】車載機、第1電子キー、および第2電子キーの各構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態の動作を示すフローチャートである。
図5】第3実施形態の動作を示すフローチャートである。
図6】従来の電子キー認証システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。以下では、車両として、エンジンにより駆動される自動二輪車を例に挙げる。
【0019】
図1は、本発明による電子キー認証システムの一例を示している。電子キー認証システム100は、自動二輪車50に搭載された車載機1と、自動二輪車50のユーザが所持する第1電子キーAおよび第2電子キーBとを含んでいる。本実施形態の場合、第1電子キーAはスマートフォン、第2電子キーBはFOBであって、いずれも携帯機から構成されている。
【0020】
車載機1は、自動二輪車50の所定箇所に装備されていて、本発明の電子キー認証装置を構成している。車載機1は、第1電子キーAおよび第2電子キーBと双方向の通信を行う。この通信方式としては、たとえば、近距離無線通信であるBLE(Bluetooth〔登録商標〕Low Energy)が用いられる。車載機1と各電子キーA、Bとの間の通信の詳細については後述する。
【0021】
図2は、車載機1、第1電子キーA、および第2電子キーBの構成の一例を示している。
【0022】
車載機1は、ECU(電子制御ユニット)から構成されており、通信部11、CPU12、および記憶部13を備えている。通信部11は、第1電子キーAおよび第2電子キーBと近距離無線通信(前述のBLE)を行うための、アンテナや通信回路を有している。CPU12は、認証部14、車両制御部15、および落下検知部16を有している。車両制御部15には、ハンドルロック制御部15a、エンジン制御部15b、およびアンサーバック制御部15cが備わっている。CPU12の各部の機能は、実際にはソフトウェアによって実現されるが、ここでは便宜上ハードウェアのブロックで表してある。CPU12の各部の詳細については後で説明する。記憶部13は、半導体メモリから構成されており、CPU12の動作に必要なプログラムやデータが格納された領域を有している。
【0023】
車載機1には、外部から各種の信号が入力されるが、図2では本発明に関係するメインスイッチのオンオフ信号のラインだけを図示してある。メインスイッチは、自動二輪車50の所定箇所に設けられていて、乗車時や降車時に車両の電源をオンオフさせる場合などに操作される。
【0024】
第1電子キーAは、スマートフォンから構成されており、通信部21、操作部22、表示部23、記憶部24、およびCPU25を備えている。通信部21は、車載機1と近距離無線通信を行うためのアンテナや通信回路を有している。操作部22は、各種のスイッチ類から構成され、表示部23は、タッチパネルやLEDランプなどから構成される。記憶部24は半導体メモリから構成される。CPU25は、第1電子キーAの動作を制御する制御部を構成する。なお、スマートフォンである第1電子キーAには、上述した各部以外に、スピーカやマイクロフォンなども備わっているが、図2ではそれらの図示を省略してある。
【0025】
第2電子キーBは、FOBから構成されており、通信部31、操作部32、表示部33、記憶部34、およびCPU35を備えている。通信部31は、車載機1と近距離無線通信を行うためのアンテナや通信回路を有している。操作部32には、アンサーバックスイッチ32aと、オンオフスイッチ32bとが備わっている。表示部33は、LEDランプなどから構成され、記憶部34は半導体メモリから構成される。CPU35は、第2電子キーBの動作を制御する制御部を構成する。
【0026】
次に、車載機1におけるCPU12の各部の詳細について説明する。認証部14は、第1電子キーAおよび第2電子キーBとの通信に基づいて、当該電子キーの認証を行うブロックである。この認証は、各電子キーから送信されたIDと、記憶部13に記憶されているIDとを照合することによって行われ、双方のIDが一致すると、認証が成功したことになる。
【0027】
車両制御部15は、自動二輪車50に所定の動作を行わせるための制御信号を出力するブロックである。ハンドルロック制御部15aは、自動二輪車50のハンドルを施錠するためのロック信号や、施錠されたハンドルを解錠するためのアンロック信号を出力する。エンジン制御部15bは、自動二輪車50のエンジンを始動するためのエンジン始動信号や、エンジンを停止するためのエンジン停止信号を出力する。アンサーバック制御部15cは、第2電子キーBから送信される後述のアンサーバック指令に基づいて、自動二輪車50に備わるランプを点滅させるためのランプ駆動信号や、自動二輪車50に備わるブザーを鳴動させるためのブザー駆動信号を出力する。なお、車両制御部15には、これらの制御部15a~15c以外にも、所定の制御を行う各種のブロックが備わっているが、それらは本発明と直接関係がないので、図示を省略してある。
【0028】
落下検知部16は、自動二輪車50の走行中に、第1電子キーAまたは第2電子キーBが落下したことを検知するブロックである。車載機1と各電子キーとの間の通信は近距離無線通信で行われるため、自動二輪車50が、電子キーの落下地点から、近距離無線の通信範囲を越えた地点に至ると、電子キーから定期的に送信される接続要求信号(アドバタイズ信号)が、車載機1の通信部11で受信されなくなる。これにより、落下検知部16は、接続要求信号が所定回数以上途絶えたことを以って、電子キーが自動二輪車50から落下したと判定する。
【0029】
次に、上述した電子キー認証システム100における、車載機1と第1電子キーAおよび第2電子キーBのそれぞれの動作につき、図3図5のフローチャートを参照しながら詳述する。
【0030】
図3は、第1実施形態の動作を示している。第1実施形態では、ユーザが自動二輪車50へ乗車する前に、第2電子キーBでアンサーバックの操作を行うことを想定している。
【0031】
図3において、ステップS1~S6は、第1電子キーAおよび第2電子キーBを車載機1と無線接続するための手順を示している。ここでは、第1電子キーAが第2電子キーBよりも先に、車載機1と無線接続される場合を例に挙げる。
【0032】
第1電子キーAは、操作部22で所定の操作を行うことにより動作を開始し、車載機1に対して無線接続を要求する接続要求信号を、一定周期で通信部21から送信する(ステップS1)。車載機1は、この信号を通信部11で受信すると、所定の接続処理を実行して(ステップS2)、無線接続が確立したことを第1電子キーAへ通知する。これにより、第1電子キーAが車載機1と無線で接続される(ステップS3)。
【0033】
一方、第2電子キーBは、操作部32のオンオフスイッチ32bをオンにすることで動作を開始し、第1電子キーAより遅れて、接続要求信号を通信部31から送信する(ステップS4)。この信号を受信した車載機1は、所定の接続処理を実行して(ステップS5)、無線接続が確立したことを第2電子キーBへ通知する。これにより、第2電子キーBが車載機1と無線で接続される(ステップS6)。
【0034】
このようにして2つの電子キーA、Bが車載機1と無線接続された後、乗車前のユーザが、第2電子キーBの操作部32のアンサーバックスイッチ32aを押すと(ステップS7)、第2電子キーBの通信部31から、アンサーバック指令が送信される(ステップS8)。車載機1では、通信部11がこのアンサーバック指令を受信すると(ステップS9)、車両制御部15のアンサーバック制御部15cが、アンサーバック指令に応じた処理を実行する。
【0035】
具体的には、アンサーバック制御部15cが出力するランプ駆動信号によって、自動二輪車50に設けられているハザードランプが点滅し、また、アンサーバック制御部15cが出力するブザー駆動信号によって、自動二輪車50に設けられているブザーが鳴動する(ステップS10)。これらの光と音によって、ユーザは自動二輪車50の所在位置を確認することができる。
【0036】
次に、ユーザは、自動二輪車50に乗車するために、自動二輪車50に備わるメインスイッチをオンにする(ステップS11)。このメインスイッチのオン操作が、ステップS9でアンサーバック指令が受信されてから一定時間T1内に行われると、車載機1と第2電子キーBとの間で、認証に必要な双方向の通信が行われる(ステップS12~S15)。
【0037】
詳しくは、車載機1において、認証部14が乱数を生成し、これを通信部11から第2電子キーBへ送信する(ステップS12)。第2電子キーBでは、通信部31が乱数を受信すると、CPU35が乱数に基づいて暗号演算を行い(ステップS13)、演算の結果を通信部31から車載機1へ返信する(ステップS14)。この演算結果には、第2電子キーBのIDが含まれている。車載機1では、通信部11が第2電子キーBのIDを受信すると、認証部14が当該IDの照合を行う(ステップS15)。この照合では、受信した第2電子キーBのIDと、記憶部13に記憶されているIDとが比較される。
【0038】
ID照合の結果、第2電子キーBのIDが記憶部13に記憶されているIDと一致すれば、認証部14は認証が成功したと判断する(ステップS16:YES)。この場合はステップS17へ進む。一方、ID照合の結果、第2電子キーBのIDが記憶部13に記憶されているIDと一致しなければ、認証部14は認証が失敗したと判断する(ステップS16:NO)。この場合はステップS11へ戻る。
【0039】
第2電子キーBの認証が成功すると、ステップS17において、車載機1のハンドルロック制御部15aからアンロック信号が出力されるとともに、エンジン制御部15bからエンジン始動信号が出力される。これにより、ハンドルのロックが解除され、かつ、エンジンが始動するので、自動二輪車50は走行可能状態となる。
【0040】
このときから、車載機1の落下検知部16は、前述したように第2電子キーBからの信号の受信状態に基づいて、第2電子キーBの落下の検知を開始する(ステップS18)。第2電子キーBの落下が検知されると、落下検知部16から落下検知信号が出力される。自動二輪車50では、この落下検知信号に基づき、警報や表示などによって電子キーの落下を報知する。
【0041】
次に、ユーザが目的地に到達して自動二輪車50から降車する場合、ユーザはメインスイッチをオフにする(ステップS19)。そして、所定の操作を行うことで、車載機1のエンジン制御部15bからエンジン停止信号が出力されるとともに、ハンドルロック制御部15aからロック信号が出力される(ステップS20)。これにより、エンジンが停止し、ハンドルも施錠されるので、自動二輪車50は走行禁止状態となる。
【0042】
この後、車載機1では、各電子キーA、Bとの無線接続を切断するための切断処理が実行される(ステップS21)。これにより、第1電子キーAでは車載機1との通信が切断され(ステップS22)、第2電子キーBでも車載機1との通信が切断される(ステップS23)。
【0043】
上述した第1実施形態によれば、第1電子キーAが先に車載機1と無線接続され、第2電子キーBが後で車載機1と無線接続されても、その後に第2電子キーBのアンサーバックスイッチ32aが押されると、車載機1は第2電子キーBと通信を行って、第2電子キーBの認証を実行する。その一方、車載機1は、先に無線接続された第1電子キーAに対しては、認証を実行しない。このため、自動二輪車50のユーザが、第1電子キーAであるスマートフォンを、充電状態でコンソールボックス内に残したまま降車し、コンビニエンスストアなどに立ち寄った場合でも、スマートフォンは認証がされないので、自動二輪車50のハンドルの解錠やエンジンの始動が許可されることはない。その結果、第三者による自動二輪車50の盗難に対するセキュリティ性が向上する。また、ユーザは、第2電子キーBであるFOBのアンサーバックスイッチ32aを押すだけで、FOBが優先的に認証されるので、複雑な手順を踏まなくても、簡単かつ確実に、自らの意思で操作したFOBを認証済の電子キーとすることができる。
【0044】
図6は、比較例として示した従来のフローチャートである。図中、図3と同じ処理を行うステップには同じ符号を付してある。図3と比べればわかるように、図6では、ステップS6とステップS11との間に、図3に示されたステップS7~S10が存在しない。したがって、ステップS11でメインスイッチがオンされると、車載機1は、先に無線接続された第1電子キーAと通信を行って、第1電子キーAを認証する(ステップS12~S16)。このため、冒頭でも述べたように、コンソールボックス内に第1電子キーAであるスマートフォンが置かれたまま、ユーザが自動二輪車50から離れた場合、第三者によるハンドルの解錠やエンジンの始動が可能となり、自動二輪車50が盗難されるおそれがある。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図4は、第2実施形態の動作を示したフローチャートである。第2実施形態では、ユーザが自動二輪車50から降車した後に、第2電子キーBでアンサーバックの操作を行うことを想定している。
【0046】
図4において、図3と同じ処理を行うステップには同じ符号を付してある。図4のステップS1~S6、ステップS11、ステップS16~S17、およびステップS19~S20は、図3で説明したそれらの各ステップと同じである。一方、図4では、図3のステップS7~S10が、ステップS20の後に移動している。また、紙面の都合で、図3のステップS18が図4では省略されているが、図4のステップS17の次に、このステップS18を追加してもよい。
【0047】
図4のステップS11において、メインスイッチが、前回のアンサーバックから所定時間が経過した後にオンになると、車載機1は、従来(図6)と同様に、先に無線接続した第1電子キーAと通信を行い(ステップS12~S15)、これに基づいて第1電子キーAの認証を行う(ステップS16)。そして、認証が成功すれば、車載機1から、アンロック信号およびエンジン始動信号が出力され(ステップS17)、自動二輪車50は走行可能状態となる。
【0048】
自動二輪車50の走行後、降車時にユーザがメインスイッチをオフにし(ステップS19)、所定の操作を行うと、エンジンが停止するとともに、ハンドルが施錠される(ステップS20)。その後、ユーザが第2電子キーBのアンサーバックスイッチ32aを押すと(ステップS7)、図3の場合と同様に、第2電子キーBからアンサーバック指令が送信される(ステップS8)。このアンサーバック指令を車載機1が受信すると(ステップS9)、ハザードランプの点滅やブザーの鳴動などの、アンサーバック指令に応じた処理が実行される(ステップS10)。
【0049】
次に、ユーザは、自動二輪車50に再乗車するために、メインスイッチをオンにする(ステップS11’)。このメインスイッチのオン操作が、ステップS9でアンサーバック指令が受信されてから一定時間T2内に行われると、車載機1と第2電子キーBとの間で、認証に必要な双方向の通信が行われる(ステップS12’~S15’)。この通信は、図3で説明したステップS12~S15の通信と同じである。
【0050】
ステップS15’での照合の結果、第2電子キーBのIDが記憶部13に記憶されているIDと一致すれば、認証部14は認証が成功したと判断する(ステップS16’:YES)。この場合は、ステップS17と同様に、車載機1のハンドルロック制御部15aからアンロック信号が出力されるとともに、エンジン制御部15bからエンジン始動信号が出力される(ステップS17’)。これにより、ハンドルのロックが解除され、エンジンが始動するので、自動二輪車50は再び走行可能な状態となる。
【0051】
図5は、第3実施形態の動作を示したフローチャートである。第3実施形態では、ユーザが自動二輪車50に乗車した状態で、第2電子キーBでアンサーバックの操作を行うことを想定している。乗車中にアンサーバック操作が行われる例としては、たとえば、自動二輪車50が赤信号で停止している間に、ユーザがポケットから第2電子キーB(FOB)を取り出して、アンサーバックスイッチ32aを押す場合などが考えられる。
【0052】
図5において、図3および図4と同じ処理を行うステップには同じ符号を付してある。図5のステップS1~S6は、図3で説明したそれらの各ステップと同じである。また、図5のステップS11~S17は、図4で説明したそれらの各ステップと同じである。一方、図5では、図3のステップS7~S10が、ステップS18の後に移動している。また、ステップS25とステップS26が新たに追加されている。
【0053】
ユーザが自動二輪車50に乗車した状態で、第2電子キーBのアンサーバックスイッチ32aを押すと(ステップS7)、図3の場合と同様に、第2電子キーBからアンサーバック指令が送信される(ステップS8)。このアンサーバック指令を車載機1が受信すると(ステップS9)、ハザードランプの点滅やブザーの鳴動などの、アンサーバック指令に応じた処理が実行される(ステップS10)。
【0054】
次に、車載機1と第2電子キーBとの間で、認証に必要な双方向の通信が行われる(ステップS12’~S15’)。この通信は、図4で説明したステップS12’~S15’の通信と同じである。ステップS15’での照合の結果、第2電子キーBのIDが記憶部13に記憶されているIDと一致すれば、認証部14は認証が成功したと判断する(ステップS16’:YES)。この場合、認証部14は、先に無線接続された第1電子キーAの認証(ステップS16)を破棄し(ステップS25)、後から無線接続された第2電子キーBの認証を承認する(ステップS26)。これによって、以後、第1電子キーAの認証は無効となり、第2電子キーBの認証が有効となる。
【0055】
以上の第2実施形態および第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、アンサーバックの操作によって第2電子キーBが優先的に認証されるので、ユーザに負担をかけることなく、自動二輪車50の盗難に対するセキュリティ性を向上させることができる。
【0056】
本発明では、上述した実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0057】
上述した実施形態においては、第1電子キーAがスマートフォンであり、第2電子キーBがFOBであったが、これとは逆に、第1電子キーAがFOBで、第2電子キーBがスマートフォンであってもよい。また、第1電子キーAと第2電子キーBの双方がスマートフォンであってもよく、双方がFOBであってもよい。また、スマートフォンに代えて、小型のタブレット端末などを用いることも可能である。
【0058】
上述した実施形態においては、車載機1が、第2電子キーBからアンサーバック指令を受信した後、第2電子キーBとの間で認証に必要な双方向の通信を行って、第2電子キーBのIDを取得したが、第2電子キーBから送信されるアンサーバック指令に、第2電子キーBのIDを含めてもよい。
【0059】
上述した実施形態においては、車載機1と第1電子キーAおよび第2電子キーBとの間の近距離無線通信として、BLEを用いた例を挙げたが、これに代えて、Wi-Fi(登録商標)やZigBee(登録商標)のような、他の近距離無線通信を用いてもよい。
【0060】
上述した実施形態においては、エンジンを走行動力源とする自動二輪車50を例に挙げたが、自動二輪車50はモータを走行動力源とする電動式のものであってもよい。
【0061】
上述した実施形態においては、車両として自動二輪車50を例に挙げたが、本発明は、自動三輪車などの車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 車載機(電子キー認証装置)
A 第1電子キー
B 第2電子キー
11 通信部
14 認証部
15 車両制御部
32a アンサーバックスイッチ
50 自動二輪車(車両)
100 電子キー認証システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6