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特開2023-121916設備温度管理システム、設備温度管理プログラム、設備温度管理システム用のマーカー部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121916
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】設備温度管理システム、設備温度管理プログラム、設備温度管理システム用のマーカー部材
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/53 20220101AFI20230825BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20230825BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230825BHJP
【FI】
G01J5/02 L
G01J5/48 C
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025267
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518423191
【氏名又は名称】株式会社ヒューマンサポートテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 八雲
【テーマコード(参考)】
2G024
2G066
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024CA17
2G024FA01
2G024FA06
2G024FA14
2G066AA13
2G066AC01
2G066AC09
2G066CA02
2G066CA16
(57)【要約】
【課題】雰囲気温度の影響を受けずに異常な温度変化を高精度に検出することができる設備温度管理システムを提供すること。
【解決手段】本発明の設備温度管理システム1は、第1マーカー31及び第2マーカー41を備える。また、設備温度管理システム1は、撮像手段50、マーカー判別手段61、設備表面温度算出手段61、雰囲気温度決定手段61及び温度差算出手段61を備える。マーカー判別手段61は、撮像手段50が撮像したマーカーの種類を判別する。設備表面温度算出手段61は、撮像したマーカーが第1マーカー31である場合に、設備10の表面温度を算出する。雰囲気温度決定手段61は、第2マーカー41である場合に、第2マーカー41の表面温度を算出し、算出した表面温度に基づいて雰囲気温度を決定する。温度差算出手段61は、設備10の表面温度と雰囲気温度との温度差を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の表面温度を管理するシステムであって、
前記設備の表面に接触して設けられる設備表面温度測定用の第1マーカーと、前記設備の表面から離間して設けられる雰囲気温度測定用の第2マーカーとを備え、前記第1マーカー及び前記第2マーカーは、互いに異なる識別可能な幾何学的特徴を有しており、
前記第1マーカーを含む第1領域と前記第2マーカーを含む第2領域とを撮像して可視画像及び熱画像を取得する撮像手段と、
前記可視画像に映る前記幾何学的特徴に基づいて、前記撮像手段が撮像したマーカーの種類を判別するマーカー判別手段と、
前記第1マーカーであると判別された場合に、前記第1マーカーが映る前記熱画像に基づいて、前記設備の表面温度を算出する設備表面温度算出手段と、
前記第2マーカーであると判別された場合に、前記第2マーカーが映る前記熱画像に基づいて、前記第2マーカーの表面温度を算出し、算出した表面温度に基づいて雰囲気温度を決定する雰囲気温度決定手段と、
前記設備の表面温度と前記雰囲気温度との温度差を算出する温度差算出手段と
を備えたことを特徴とする設備温度管理システム。
【請求項2】
前記雰囲気温度決定手段は、1つの前記第2マーカーにおける複数の点の温度の平均値を算出し、その算出した平均値を前記雰囲気温度として決定することを特徴とする請求項1に記載の設備温度管理システム。
【請求項3】
前記第2マーカーは複数箇所に設けられており、
前記雰囲気温度決定手段は、複数の前記第2マーカーの表面温度の平均値を算出し、その算出した平均値を前記雰囲気温度として決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の設備温度管理システム。
【請求項4】
前記可視画像及び前記熱画像を表示する表示手段を備え、
前記表示手段は、前記設備の表面温度から前記雰囲気温度を差し引いた温度を示す画像を補正可視画像として表示する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の設備温度管理システム。
【請求項5】
前記第2マーカーは、熱伝導性が高い材料からなる基体の表面に、明度が異なる複数種類の色からなる幾何学模様が表示されたマーカー部材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の設備温度管理システム。
【請求項6】
前記第2マーカーは、前記基体の表面に反射防止処理が施されていることを特徴とする請求項5に記載の設備温度管理システム。
【請求項7】
前記温度差の範囲が所定範囲外にある場合に警告を発する警告手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の設備温度管理システム。
【請求項8】
設備の表面に接触して設けられる設備表面温度測定用の第1マーカーを含む第1領域と、前記設備の表面から離間して設けられる雰囲気温度測定用の第2マーカーを含む第2領域とを撮像して、可視画像及び熱画像を取得する撮像手段を備えた設備温度管理システムを制御するプロセッサに、
前記可視画像に映る幾何学的特徴に基づいて、前記撮像手段が撮像したマーカーの種類を判別するマーカー判別ステップと、
前記第1マーカーであると判別された場合に、前記第1マーカーが映る前記熱画像に基づいて、前記設備の表面温度を算出する設備表面温度算出ステップと、
前記第2マーカーであると判別された場合に、前記第2マーカーが映る前記熱画像に基づいて、前記第2マーカーの表面温度を算出し、算出した表面温度に基づいて雰囲気温度を決定する雰囲気温度決定ステップと、
前記設備の表面温度と前記雰囲気温度との温度差を算出する温度差算出ステップと
を実行させるための設備温度管理プログラム。
【請求項9】
撮像手段によって撮像され、設備の表面温度を管理する設備温度管理システムに用いられるマーカー部材であって、
熱伝導性が高い材料からなる基体の表面に、明度が異なる複数種類の色からなる幾何学模様が表示され、反射防止処理が施されていることを特徴とする設備温度管理システム用のマーカー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備の表面温度を管理する設備温度管理システム及び設備温度管理プログラム、設備温度管理システムに用いられるマーカー部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装乾燥炉などの設備は、自動車ボディなどのワークに塗布された塗料を乾燥させるために用いられる。このため、乾燥炉には、塗料を確実に乾燥させるために、絶えず熱風が供給されるようになっている。ところが、乾燥炉の劣化などに起因して、乾燥炉に設置された排気ダクト(図示略)や乾燥炉壁面等に亀裂が生じる場合があり、乾燥炉内の熱風が亀裂から外部に漏れることがある。そこで、乾燥炉の表面をサーモカメラで定期的に撮像して表面温度を確認することにより、熱風の漏れを検出する技術が従来提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-111714号公報(図1等)
【特許文献2】特開平6-138003号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、乾燥炉(設備)周辺の雰囲気温度は、季節によって変化する。これに伴い、サーモカメラで測定される乾燥炉の表面温度も変化してしまうため、表面温度を確認したとしても、異常な温度変化を正確に検出できない可能性がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、雰囲気温度の影響を受けずに異常な温度変化を高精度に検出することができる設備温度管理システム、設備温度管理プログラム及び設備温度管理システム用のマーカー部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、設備の表面温度を管理するシステムであって、前記設備の表面に接触して設けられる設備表面温度測定用の第1マーカーと、前記設備の表面から離間して設けられる雰囲気温度測定用の第2マーカーとを備え、前記第1マーカー及び前記第2マーカーは、互いに異なる識別可能な幾何学的特徴を有しており、前記第1マーカーを含む第1領域と前記第2マーカーを含む第2領域とを撮像して可視画像及び熱画像を取得する撮像手段と、前記可視画像に映る前記幾何学的特徴に基づいて、前記撮像手段が撮像したマーカーの種類を判別するマーカー判別手段と、前記第1マーカーであると判別された場合に、前記第1マーカーが映る前記熱画像に基づいて、前記設備の表面温度を算出する設備表面温度算出手段と、前記第2マーカーであると判別された場合に、前記第2マーカーが映る前記熱画像に基づいて、前記第2マーカーの表面温度を算出し、算出した表面温度に基づいて雰囲気温度を決定する雰囲気温度決定手段と、前記設備の表面温度と前記雰囲気温度との温度差を算出する温度差算出手段とを備えたことを特徴とする設備温度管理システムをその要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明では、第1マーカーが映る熱画像に基づいて設備の表面温度を算出し、第2マーカーが映る熱画像に基づいて雰囲気温度を決定した後、表面温度と雰囲気温度との温度差を算出することにより、雰囲気温度の変化に起因する表面温度の変化がキャンセルされる。よって、この状態で表面温度を測定すれば、雰囲気温度の影響を受けずに異常な温度変化を高精度に検出することができる。
【0008】
なお、撮像手段としては、固定式の撮像手段や非固定式の撮像手段が挙げられるが、非固定式の撮像手段を用いることが好ましい。非固定式の撮像手段は固定式のものよりも一般的に安価であるため、設備の表面温度を低コストで管理することができる。しかも、非固定式の撮像手段を用いる場合には、撮像場所を移動することにより、1つの撮像手段で全てのマーカーを撮像することも可能である。よって、各マーカーを撮像するために多数の撮像手段を設置しなくても済む。従って、固定式の撮像手段を用いる場合と比較して、設備の表面温度の管理に必要なコストを大幅に低減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記雰囲気温度決定手段は、1つの前記第2マーカーにおける複数の点の温度の平均値を算出し、その算出した平均値を前記雰囲気温度として決定することをその要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明では、1つの第2マーカーにおける複数の点の温度の平均値を雰囲気温度とするため、その第2マーカーの表面温度にバラツキがあったとしても、そのバラツキが均平化され、雰囲気温度を精度良く算出することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記第2マーカーは複数箇所に設けられており、前記雰囲気温度決定手段は、複数の前記第2マーカーの表面温度の平均値を算出し、その算出した平均値を前記雰囲気温度として決定することをその要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明では、第2マーカーを設備周辺の複数箇所に設け、それぞれの第2マーカーの表面温度の平均値を算出することにより、1つの第2マーカー付近の雰囲気温度ではなく、設備全体における雰囲気温度を得ることができる。従って、設備周辺の温度にバラツキがあったとしても、そのバラツキが均平化され、雰囲気温度を高精度に算出することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記可視画像及び前記熱画像を表示する表示手段を備え、前記表示手段は、前記設備の表面温度から前記雰囲気温度を差し引いた温度を示す画像を補正可視画像として表示することをその要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明では、設備の表面温度を示す画像ではなく、設備の表面温度から雰囲気温度を差し引いた温度を示す画像、即ち、雰囲気温度の変化に起因する表面温度の変化がキャンセルされた画像を、表示手段に表示している。これにより、作業者は、設備の表面のどの部分の温度変化が大きいのか、即ち、設備の表面のどの部分で異常な温度変化が生じているのかを、正確に認識することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記第2マーカーは、熱伝導性が高い材料からなる基体の表面に、明度が異なる複数種類の色からなる幾何学模様が表示されたマーカー部材であることをその要旨とする。
【0016】
請求項5に記載の発明では、第2マーカーを構成する基体が熱伝導性が高い材料からなるため、第2マーカーの表面温度は、周囲の雰囲気温度に追従しやすくなる。その結果、第2マーカーを撮像手段で撮像すれば、熱画像に映る第2マーカーに基づいて、第2マーカーの表面温度を正確に算出することができる。また、基体の表面に表示される幾何学模様が、明度が異なる複数種類の色からなるため、幾何学模様を認識しやすくなり、ひいては、異なる幾何学的特徴を有する他のマーカーとの判別が容易になる。
【0017】
なお、基体を構成する熱伝導性が高い材料は、金属などの材料であることが好ましく、具体的には、銅(熱伝導率:403[W/m・K])、アルミニウム(熱伝導率:236[W/m・K])、亜鉛(熱伝導率:116[W/m・K])、鉄(熱伝導率:83.5[W/m・K])、ニッケル(熱伝導率:91[W/m・K])、コバルト(熱伝導率:69[W/m・K])、マグネシウム(熱伝導率:156[W/m・K])、クロム(熱伝導率:90.3[W/m・K])、またはこれらの合金などを挙げることができる。即ち、基体を構成する材料の熱伝導率は、50[W/m・K]以上であることが好ましく、100[W/m・K]以上であることがより好ましい。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記第2マーカーは、前記基体の表面に反射防止処理が施されていることをその要旨とする。
【0019】
例えば、第2マーカーが周囲の熱を反射する場合、第2マーカーに対する撮像の角度によって熱反射量が異なるため、第2マーカーを撮像手段で撮像したとしても、熱画像に映る第2マーカーの表面温度を正確に算出できない可能性がある。そこで、請求項6に記載の発明は、第2マーカーを構成する基体の表面に反射防止処理を施している。このようにすれば、第2マーカーが熱を反射しにくくなり、熱反射量の大小による影響を受けにくくなるため、熱画像に映る第2マーカーの表面温度を正確に算出することができる。なお、反射防止処理としては、基体の表面に艶消し塗装を施す処理や、基体の表面の表面粗さを粗くする処理などが挙げられる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項において、前記温度差の範囲が所定範囲外にある場合に警告を発する警告手段をさらに備えたことをその要旨とする。
【0021】
請求項7に記載の発明では、温度差の範囲が所定範囲外にあることを警告するため、設備の表面温度の変化が大き過ぎることを作業者に確実に気付かせることができる。その結果、表面温度の異常に対して迅速に対応することが可能となる。
【0022】
なお、警告手段としては、例えば、温度差の範囲が所定範囲外にあることを発光(点灯・点滅等)にて警告するランプ等の発光手段、温度差の範囲が所定範囲外にあることを音声(警告音等)にて警告するアラーム等の音声出力手段、温度差の範囲が所定範囲外にあることを表示(文字、記号、絵等)にて警告する液晶式表示装置等の表示手段、などが挙げられる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、設備の表面に接触して設けられる設備表面温度測定用の第1マーカーを含む第1領域と、前記設備の表面から離間して設けられる雰囲気温度測定用の第2マーカーを含む第2領域とを撮像して、可視画像及び熱画像を取得する撮像手段を備えた設備温度管理システムを制御するプロセッサに、前記可視画像に映る幾何学的特徴に基づいて、前記撮像手段が撮像したマーカーの種類を判別するマーカー判別ステップと、前記第1マーカーであると判別された場合に、前記第1マーカーが映る前記熱画像に基づいて、前記設備の表面温度を算出する設備表面温度算出ステップと、前記第2マーカーであると判別された場合に、前記第2マーカーが映る前記熱画像に基づいて、前記第2マーカーの表面温度を算出し、算出した表面温度に基づいて雰囲気温度を決定する雰囲気温度決定ステップと、前記設備の表面温度と前記雰囲気温度との温度差を算出する温度差算出ステップとを実行させるための設備温度管理プログラムをその要旨とする。
【0024】
請求項8に記載の発明では、設備表面温度算出ステップにおいて、第1マーカーが映る熱画像に基づいて設備の表面温度を算出し、雰囲気温度決定ステップにおいて、第2マーカーが映る熱画像に基づいて雰囲気温度を決定する。その後、温度差算出ステップにおいて、設備の表面温度と雰囲気温度との温度差を算出することにより、雰囲気温度の変化に起因する表面温度の変化がキャンセルされる。よって、この状態で表面温度を測定すれば、雰囲気温度の影響を受けずに異常な温度変化を高精度に検出することができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、撮像手段によって撮像され、設備の表面温度を管理する設備温度管理システムに用いられるマーカー部材であって、熱伝導性が高い材料からなる基体の表面に、明度が異なる複数種類の色からなる幾何学模様が表示され、反射防止処理が施されていることを特徴とする設備温度管理システム用のマーカー部材をその要旨とする。
【0026】
請求項9に記載の発明では、マーカー部材を構成する基体が熱伝導性が高い材料からなるため、マーカー部材の表面温度は、周囲の雰囲気温度に追従しやすくなる。その結果、マーカー部材を撮像手段で撮像して熱画像を取得すれば、熱画像に映るマーカー部材に基づいて、マーカー部材の表面温度、ひいては雰囲気温度を正確に算出することができる。そして、設備の表面温度と雰囲気温度との温度差を算出すれば、雰囲気温度の変化に起因する設備の表面温度の変化がキャンセルされるため、この状態で設備の表面温度を測定すれば、雰囲気温度の影響を受けずに異常な温度変化を高精度に検出することが可能となる。また、基体の表面に表示される幾何学模様が、明度が異なる複数種類の色からなるため、幾何学模様を認識しやすくなり、ひいては、異なる幾何学的特徴を有する他のマーカーとの判別が容易になる。
【発明の効果】
【0027】
以上詳述したように、請求項1~9に記載の発明によると、雰囲気温度の影響を受けずに異常な温度変化を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態における設備温度管理システムを示す概略構成図。
図2】第1マーカーを含む第1領域が映る第1の可視画像を示す写真。
図3】第2マーカーを含む第2領域が映る第2の可視画像を示す写真。
図4】第1の熱画像を示す写真。
図5】第2の熱画像を示す写真。
図6】乾燥炉の表面温度を管理する処理を示すフローチャート。
図7】補正可視画像を示す写真。
図8】各部の温度の測定結果及び温度差の算出結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0030】
図1に示されるように、本実施形態の設備温度管理システム1は、乾燥炉10(設備)の表面温度を管理するシステムである。乾燥炉10は、塗装ブース(図示略)を通過したワークW1(本実施形態では自動車ボディ)の表面に塗布された塗料を乾燥させるためのものである。また、乾燥炉10は、例えば鉄板などの壁材を用いて略直方体状に形成されており、天井部11、床部12及び一対の側壁13を備えている。さらに、乾燥炉10の内面全体には断熱材(図示略)が貼付されている。また、乾燥炉10の床部12にはコンベア21が設けられている。コンベア21は、ワークW1を載置した複数の台車22を搬送方向(図1では右方向)に沿って搬送する装置である。
【0031】
図1図2に示されるように、乾燥炉10の側壁13には、複数枚の設備表面温度測定用の第1マーカー31が搬送方向に沿って設けられている。各第1マーカー31は、乾燥炉10における特定の測定点A1~A13ごとにそれぞれ設けられている。また、各第1マーカー31は、測定点A1~A13ごとに異なる識別可能な幾何学的特徴を有するとともに、乾燥炉10の表面10aに貼付される二次元的な板状部材である。つまり、各第1マーカー31は、乾燥炉10の表面10aに接触して設けられている。なお、本実施形態の第1マーカー31は、熱伝導性が高い材料(アルミニウム)からなる矩形状の基体32の表面33に、明度が異なる2種類の色(白及び黒)からなる幾何学模様34が表示されたマーカー部材(ArUcoマーカー)である。
【0032】
さらに、図1図3に示されるように、乾燥炉10の側壁13には、1枚の雰囲気温度測定用の第2マーカー41が設けられている。第2マーカー41は、工場内において日光の影響を受けない箇所、具体的には、乾燥炉10における特定の測定点A0に設けられている。また、第2マーカー41は、各第1マーカー31とは異なる識別可能な幾何学的特徴を有するとともに、側壁13近傍に設置されたマーカー支持フレーム14の梁部15から吊り下げられる二次元的な板状部材である。なお、第2マーカー41は、乾燥炉10の表面10aから100mm以上離間した位置に設けられている。
【0033】
また、本実施形態の第2マーカー41は、熱伝導性が高い材料(アルミニウム)からなる矩形状の基体42の表面43に、明度が異なる2種類の色(白及び黒)からなる幾何学模様44が表示されたマーカー部材(ArUcoマーカー)である。さらに、基体42の表面43には、反射防止処理(具体的には、艶消し塗装)が施されている。なお本実施形態では、第1マーカー31の基体32の表面33に反射防止処理は施されていないが、反射防止処理が施されていても構わない。第1マーカー31に反射防止処理が施されていれば、その第1マーカー31を、第1マーカー31としても第2マーカー41としても使用することができる。
【0034】
図1に示されるように、設備温度管理システム1は、非固定式(即ち可搬式)の撮像手段であるサーモカメラ50を備えている。サーモカメラ50は、第1マーカー31を含む第1領域31a(図2参照)を撮像することにより、第1の可視画像51a(図2参照)及び第1の熱画像52a(図4参照)を同時に取得する。また、サーモカメラ50は、第2マーカー41を含む第2領域41a(図3参照)を撮像することにより、第2の可視画像51b(図3参照)及び第2の熱画像52b(図5参照)を同時に取得する。そして、サーモカメラ50は、取得した可視画像51a,51b及び熱画像52a,52bの画像データを出力する。なお、可視画像51a,51bはカラー画像であり、熱画像52a,52bは赤外線画像である。
【0035】
次に、設備温度管理システム1の電気的構成について説明する。
【0036】
図1に示されるように、設備温度管理システム1はパソコン(図示略)を備えており、パソコンは、システム全体を統括的に制御する制御装置60(プロセッサ)を備えている。制御装置60は、CPU61、ROM62、RAM63等からなる周知のコンピュータにより構成されている。CPU61には、パソコンのキーボード64、パソコンのディスプレイ65(表示手段)及びアラーム66が電気的に接続されている。また、本実施形態では、制御装置60にサーモカメラ50をUSB(Universal Serial Bus)ケーブルを介して接続することにより、CPU61にサーモカメラ50が電気的に接続される。そして、RAM63には、サーモカメラ50が取得した可視画像51a,51b及び熱画像52a,52bが記憶されるようになっている。また、ROM62には、設備温度管理システム1を制御するためのプログラム(設備温度管理プログラム)が記憶されている。
【0037】
次に、乾燥炉10の温度管理方法を説明する。
【0038】
まず、作業者は、サーモカメラ50を把持して乾燥炉10の表面10aを測定点A0~A13ごとに撮像し、各測定点A0~A13のそれぞれにおいて可視画像51a,51b及び熱画像52a,52bを取得する。即ち、本実施形態のサーモカメラ50は、ハンディタイプのカメラであり、共通の光軸で可視画像51a,51b及び熱画像52a,52bを同時に取得する。なお、作業者による各測定点A0~A13の撮像は、定期的(例えば1か月ごと)に行われる。
【0039】
そして、各測定点A0~A13の撮像が終了する度に、作業者は、USBケーブルを用いてサーモカメラ50をパソコンの制御装置60に接続する。この時点で、サーモカメラ50は、取得した可視画像51a,51b及び熱画像52a,52bの画像データをCPU61に出力する。そして、CPU61は、入力された画像データが示す可視画像51a,51b及び熱画像52a,52bをRAM63に記憶する。さらに、CPU61は、RAM63に記憶されている可視画像51a,51b及び熱画像52a,52bをディスプレイ65に表示させる制御を行う。
【0040】
次に、CPU61は、ROM62に記憶されている設備温度管理プログラムに基づいて、乾燥炉10の表面温度を管理する制御を行う。まず、CPU61は、マーカー判別ステップの処理を行い、可視画像51a,51bに映る幾何学的特徴に基づいて、サーモカメラ50が撮像したマーカー31,41の種類を判別する。即ち、CPU61は、『マーカー判別手段』としての機能を有している。
【0041】
具体的に言うと、CPU61は、図6に示されるステップS10において、RAM63に記憶されている全ての可視画像51a,51bに対して、2値化、輪郭抽出、交点の算出などの処理を行い、各可視画像51a,51b内のマーカー31,41を抽出する制御を行う。続くステップS20において、CPU61は、抽出したマーカー31,41のID番号(0~13)を、幾何学模様34,44の形状から算出する。なお、ID番号(0~13)は、測定点A0~A13ごとに対応付けられた番号である。
【0042】
算出されたID番号が「1」~「13」のいずれかである場合、CPU61は、撮像したマーカーが第1マーカー31であると判別する。この場合、CPU61は、ステップS30(設備表面温度算出ステップ)の処理を行い、第1マーカー31が映る第1の熱画像52aに基づいて、乾燥炉10の表面温度を算出する。詳述すると、CPU61は、第1の熱画像52aの各ピクセルのうち、第1マーカー31の表面33上に位置するピクセル(点)の温度を測定する。そして、CPU61は、測定したピクセルの温度を、乾燥炉10の表面温度として決定する。即ち、CPU61は、『設備表面温度算出手段』としての機能を有している。
【0043】
また、算出されたID番号が「0」である場合、CPU61は、撮像したマーカーが第2マーカー41であると判別する。この場合、CPU61は、ステップS40(雰囲気温度決定ステップ)の処理を行い、第2マーカー41が映る第2の熱画像52bに基づいて、第2マーカー41の表面温度を算出し、算出した表面温度に基づいて雰囲気温度を決定する。詳述すると、CPU61は、第2の熱画像52bの各ピクセルのうち、第2マーカー41の表面43上に位置する複数のピクセル(点)の温度をそれぞれ測定する。そして、CPU61は、測定した各ピクセルの温度の平均値を算出し、その算出した平均値を雰囲気温度として決定する。即ち、CPU61は、『雰囲気温度決定手段』としての機能を有している。また、本実施形態では、算出されたID番号が「0」である場合に、撮像したマーカーを第2マーカー41であると判別しているが、ID番号が「0」以外である場合に、撮像したマーカーを第2マーカー41であると判別するように設定することも可能である。
【0044】
そして、CPU61は、ステップS50(温度差算出ステップ)の処理を行い、ステップS30において算出された乾燥炉10の表面温度と、ステップS40において決定された雰囲気温度との温度差を算出する。即ち、CPU61は、『温度差算出手段』としての機能を有している。なお、温度差は、乾燥炉10の表面温度が雰囲気温度よりも高い場合に算出される温度差である。また、CPU61は、全ての測定点A1~A13において、ステップS10~S30,S50の処理を順番に実行させ、乾燥炉10の表面温度と雰囲気温度との温度差を算出する。
【0045】
続くステップS60において、CPU61は、乾燥炉10の表面温度から雰囲気温度を差し引いた温度を示す画像、換言すると、雰囲気温度の変化に起因する表面温度の変化がキャンセルされた画像を、補正可視画像53(図7参照)としてディスプレイ65に表示させる制御を行う。また、CPU61は、今回の補正可視画像53と、過去(例えば3か月前)に取得した補正可視画像53とを比較する。詳述すると、CPU61は、今回の補正可視画像53の各ピクセルにおける温度と、過去に取得した補正可視画像53の各ピクセルにおける温度との差分を算出する。そして、CPU61は、差分のレベル(大きさ)に応じて色画像54,55を設定するか否かを判定する。具体的に言うと、今回の補正可視画像53が示す温度が過去に取得した補正可視画像53が示す温度よりも高い場合であって、例えば50℃以上の温度上昇である場合には、赤色の色画像54となる。また、10℃以上50℃未満の温度上昇である場合には、青色の色画像55となる。一方、10℃未満の温度上昇である場合や、今回の補正可視画像53が示す温度が過去に取得した補正可視画像53が示す温度よりも低い場合には、色画像54,55が設定されることはない。
【0046】
次に、CPU61は、設定した色画像54,55をディスプレイ65に表示させる制御を行う。具体的に言うと、CPU61は、補正可視画像53上における対応した箇所(ピクセル)に色画像54,55を重畳してディスプレイ65に表示させる制御を行う。その結果、対応する測定点における乾燥炉10の表面10aにおいて、温度上昇が大きいと判断された部分が、色分けして表示される。これにより、作業者は、乾燥炉10の表面10aのどの部分の温度上昇が大きいのか、即ち、乾燥炉10の表面10aのどの部分で熱風が漏れているのかを、正確に認識することができる。
【0047】
また、上記した温度差の範囲が所定範囲外である(本実施形態では、10℃よりも高い)と判定された場合、CPU61は、異常が発生しているとして、アラーム66に駆動信号を出力し、警告手段であるアラーム66を作動させる制御を行う。これにより、乾燥炉10の表面10aが高温であるために乾燥炉10内の熱風が漏れている可能性が高いことが作業者に警告される。
【0048】
次に、乾燥炉10の温度管理の検証方法及びその結果を説明する。
【0049】
まず、冬期、中間期、夏期のそれぞれにおいて、乾燥炉10の表面温度を測定した(図8の「表面温度(測定値)」の欄を参照)。また、冬期、中間期、夏期のそれぞれにおいて雰囲気温度を測定した後、乾燥炉10の表面温度と雰囲気温度との温度差、即ち、補正後の表面温度を算出した(図8の「表面温度(補正後)」の欄を参照)。なお、乾燥炉10の内部(設備内部)の温度は、常時250℃とした。図8は、各部の温度の測定結果及び温度差の算出結果を示す表である。
【0050】
その結果、補正前の表面温度(測定値)は、季節による温度差(夏期-冬期)が、29.1℃にも達することが確認された。一方、補正後の表面温度は、季節による温度差(夏期-冬期)が0.9℃に抑えられるため、乾燥炉10の本来の表面温度を測定できることが確認された。よって、補正後の表面温度(即ち、乾燥炉10の表面温度と雰囲気温度との温度差)の範囲が所定範囲外(例えば10℃以上)にあるか否かを確認すれば、熱風の漏れを正確に検出できることが確認された。なお、図8に示す各部の温度の数値は、ディスプレイ65の表示画面上に表示されていてもよい。
【0051】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0052】
(1)本実施形態の設備温度管理システム1では、第1マーカー31が映る第1の熱画像52aに基づいて乾燥炉10の表面温度を算出し、第2マーカー41が映る第2の熱画像52bに基づいて雰囲気温度を決定した後、表面温度と雰囲気温度との温度差を算出する。これにより、雰囲気温度の変化に起因する表面温度の変化がキャンセルされるため、この状態で表面温度の推移を測定すれば、雰囲気温度の影響を受けずに乾燥炉10内の熱風の漏れを高精度に検出することができる。
【0053】
(2)本実施形態では、第1マーカー31を構成する基体32が、熱伝導性が高く、数百℃(少なくとも100℃以上)の温度に耐えうる耐熱性を有するアルミニウムからなるため、第1マーカー31の表面温度は、乾燥炉10の表面温度に追従しやすくなる。同様に、第2マーカー41を構成する基体42もアルミニウムからなるため、第2マーカー41の表面温度は、周囲の雰囲気温度に追従しやすくなる。その結果、マーカー31,41をサーモカメラ50で撮像すれば、熱画像52a,52bに映るマーカー31,41に基づいて、表面温度や雰囲気温度を正確に算出することができる。また、基体32,42の形成材料として、樹脂などの可燃物は用いられていないため、マーカー31,41を、熱風を用いる乾燥炉10に好適に用いることができる。
【0054】
(3)例えば、第2マーカー41が周囲の熱を反射する場合、第2マーカー41を撮像手段で撮像したとしても、第2の熱画像52bに映る第2マーカー41の表面温度を正確に算出できない可能性がある。また、サーモカメラ50が第2マーカー41を撮像する角度によって、算出される第2マーカー41の表面温度が変わる可能性もある。そこで、本実施形態では、第2マーカー41を構成する基体の表面に反射防止処理を施している。このようにすれば、第2マーカー41が熱を反射しにくくなる。また、第2マーカー41を撮像する角度が変わったとしても、得られる表面温度の誤差が小さくなる。よって、第2の熱画像52bに映る第2マーカー41の表面温度を正確に算出することができる。
【0055】
(4)本実施形態の第2マーカー41は、乾燥炉10の表面10aから100mm以上離間した位置に設けられているため、乾燥炉10の表面温度の影響を受けにくくなる。よって、第2マーカー41の表面温度、ひいては雰囲気温度を正確に算出することができる。
【0056】
(5)例えば、各測定点A0~A13にそれぞれ温度センサを設置し、各温度センサによって乾燥炉10の表面温度や雰囲気温度を測定することが考えられる。しかし、この場合、それぞれの温度センサをパソコン(のCPU61)に電気的に接続しなければならない。しかも、温度センサは、パソコンから最大で数百mも離れている。よって、各温度センサを各測定点A0~A13に設置する作業は大変である。
【0057】
一方、本実施形態では、各測定点A0~A13に設置されたマーカー31,41をサーモカメラ50で撮像し、撮像したマーカー31,41に基づいて、乾燥炉10の表面温度や雰囲気温度を算出している。この場合、非固定式のサーモカメラ50をUSBケーブルを介してパソコンに接続するだけで済み、多数のマーカー31,41をパソコンに電気的に接続する必要がないため、表面温度や雰囲気温度を得る作業を容易に行うことができる。また、本実施形態のCPU61は、サーモカメラ50で撮像したマーカー31,41のID番号を自動的に読み取って、設備表面温度測定用の第1マーカー31であるか雰囲気温度測定用の第2マーカー41であるかを自動的に判定し、表面温度や雰囲気温度を自動的に算出する。このため、作業者自身がマーカーを判定したり、表面温度や雰囲気温度を算出したりする作業が不要になる。よって、作業者の作業負荷がよりいっそう軽減される。
【0058】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0059】
・上記実施形態のCPU61は、1つの第2マーカー41における複数のピクセル(点)の温度の平均値を算出し、算出した平均値を雰囲気温度として決定していた。しかし、第2マーカー41を乾燥炉10周辺の複数箇所に設け、CPU61は、各第2マーカー41の表面温度の平均値を算出し、その算出した平均値を雰囲気温度として決定してもよい。このようにすれば、1つの第2マーカー41付近の雰囲気温度ではなく、乾燥炉10全体における雰囲気温度を得ることができる。従って、乾燥炉10周辺の温度にバラツキがあったとしても、そのバラツキが均平化され、雰囲気温度を高精度に算出することができる。
【0060】
・上記実施形態のCPU61は、1つの第2マーカー41における複数のピクセル(点)の温度の平均値を算出し、その算出した平均値を雰囲気温度として決定していた。しかし、CPU61は、1つの第2マーカー41における各ピクセルの温度の最大値や最小値等を、雰囲気温度として決定してもよい。さらに、CPU61は、1つの第2マーカー41における1つの点(例えばピクセル)の温度を算出し、その算出した温度を雰囲気温度として決定してもよい。
【0061】
・上記実施形態のマーカー31,41には、明度が異なる2種類の色(白及び黒)からなる幾何学模様34,44が表示されていたが、3種類以上の色からなる幾何学模様が表示されていてもよい。
【0062】
・上記実施形態のマーカー31,41は、二次元的なArUcoマーカーであったが、QRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)やAprilTag等の他の二次元的なマーカーであってもよい。また、絵、文字、記号等の他の二次元的なものをマーカーとして用いてもよい。さらに、設備の表面に存在する部品等の三次元的なものを、マーカーとして用いてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、乾燥炉10の表面温度が雰囲気温度よりも所定範囲(ここでは10℃)を超えて高くなっている場合に、アラーム66を作動させて作業者に警告を発していた。しかし、表面温度が雰囲気温度よりも所定範囲(例えば-10℃)を超えて低くなっている場合に、アラーム66を作動させて作業者に警告を発するようにしてもよい。このようにすれば、例えば化学プラント等において、設備内の冷気の漏れを検出することが可能となる。
【0064】
・上記実施形態では、第1マーカー31を含む第1領域31aと第2マーカー41を含む第2領域41aとを撮像して可視画像51a,51b及び熱画像52a,52bを取得するサーモカメラ50が、撮像手段として用いられていた。しかし、撮像手段は、可視画像51a,51bを取得する可視画像撮像カメラ(撮像手段)と、可視画像撮像カメラとは別々に設けられ、熱画像52a,52bを取得する熱画像撮像カメラ(撮像手段)とからなっていてもよい。なお、可視画像撮像カメラ及び熱画像撮像カメラは、極力近接して配置されることが好ましい。
【0065】
・上記実施形態では、全ての測定点A0~A13が、非固定式のサーモカメラ50によって撮像されていた。しかし、各測定点A0~A13の一部を、固定式のサーモカメラで撮像するようにしてもよいし、各測定点A0~A13の全てを、固定式のサーモカメラで撮像するようにしてもよい。
【0066】
・上記実施形態のサーモカメラ50は、USBケーブルを介して画像データを制御装置60に送信していたが、他の手段を用いて画像データを制御装置60に送信してもよい。例えば、サーモカメラ50は、Bluetooth(ブルートゥース エスアイジー,インコーポレイテッドの登録商標)、赤外線通信、インターネット回線(電話回線等)などの通信手段を介して、画像データを制御装置60に送信してもよい。
【0067】
・上記実施形態の設備温度管理システム1は、乾燥炉10の表面温度を管理するシステムであったが、加温・冷却を行う生産設備や用役設備、化学プラント等の他の設備の表面温度を管理するシステムであってもよい。
【0068】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0069】
(1)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記温度差は、前記設備の表面温度が前記雰囲気温度よりも高い場合に算出される温度差であることを特徴とする設備温度管理システム。
【0070】
(2)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記第1マーカーは、熱伝導性が高い材料からなる基体の表面に、明度が異なる複数種類の色からなる幾何学模様が表示されたマーカー部材であることを特徴とする設備温度システム。
【0071】
(3)技術的思想(2)において、前記第1マーカーは、前記基体の表面に反射防止処理が施されていることを特徴とする設備温度管理システム。
【0072】
(4)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記第1マーカー及び前記第2マーカーは、前記設備における特定の測定点ごとに設けられ、前記第1マーカー及び前記第2マーカーには、前記測定点ごとに対応付けられたID番号が付与されていることを特徴とする設備温度管理システム。
【符号の説明】
【0073】
1…設備温度管理システム
10…設備としての乾燥炉
10a…設備の表面
31…第1マーカー
31a…第1領域
41…第2マーカー
41a…第2領域
42…基体
43…基体の表面
44…幾何学模様
50…撮像手段としてのサーモカメラ
51a…可視画像としての第1の可視画像
51b…可視画像としての第2の可視画像
52a…熱画像としての第1の熱画像
52b…熱画像としての第2の熱画像
53…補正可視画像
60…プロセッサとしての制御装置
61…マーカー判別手段、設備表面温度算出手段、雰囲気温度決定手段及び温度差算出手段としてのCPU
65…表示手段としてのディスプレイ
66…警告手段としてのアラーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8