(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121963
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】半導体スイッチング素子の駆動回路
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20230825BHJP
H03K 17/691 20060101ALI20230825BHJP
H03K 17/04 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H02M1/08 301A
H02M1/08 A
H03K17/691
H03K17/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025346
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】599161890
【氏名又は名称】NECネットワーク・センサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】水見 健太
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH07
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK03
5H740NN17
5J055AX02
5J055BX16
5J055CX23
5J055DX13
5J055DX22
5J055EX07
5J055EY01
5J055EY07
5J055EY12
5J055EY13
5J055EY17
5J055EY21
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
(57)【要約】
【課題】信頼性が高く、安価な駆動回路を提供すること。
【解決手段】 接地されたソースとゲートとを持つ半導体スイッチング素子(Q3)を駆動するための駆動回路(10)は、少なくとも1つの一次巻線、第1の二次巻線、および第2の二次巻線を持つパルストランス(T1)と、一次巻線に直列に接続され、パルス幅変調(PWM)制御信号に応答してパルストランス(T1)を駆動するスイッチング素子(Q1)と、第1の二次巻線と半導体スイッチング素子(Q3)のゲートとの間に接続され、半導体スイッチング素子(Q3)のゲートに正電圧であるON駆動電圧を伝達する第1の伝達回路(11)と、第2の二次巻線と半導体スイッチング素子(Q3)のゲートとの間に接続され、半導体スイッチング素子(Q3)のゲートに負電圧であるOFF駆動電圧を伝達する第2の伝達回路(12)と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地されたソースとゲートとを持つ半導体スイッチング素子(Q3)を駆動するための駆動回路(10)であって、
少なくとも1つの一次巻線、第1の二次巻線、および第2の二次巻線を持つパルストランス(T1)と、
前記一次巻線に直列に接続され、パルス幅変調(PWM)制御信号に応答して前記パルストランス(T1)を駆動するスイッチング素子(Q1)と、
前記第1の二次巻線と前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲート-ソースとの間に接続され、前記第1の二次巻線に誘導された第1の誘導電圧を、前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲート-ソース間に、正電圧であるON駆動電圧として伝達する第1の伝達回路(11)と、
前記第2の二次巻線と前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲート-ソースとの間に接続され、前記第2の二次巻線に誘導された第2の誘導電圧を、前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲート-ソース間に、負電圧であるOFF駆動電圧として伝達する第2の伝達回路(12)と、
を有する駆動回路。
【請求項2】
前記半導体スイッチング素子(Q3)が、炭化ケイ素電圧効果トランジスタ(SiC-FET)から成る、
請求項1に記載に駆動回路。
【請求項3】
前記一次巻線には、Vccの直流電圧が供給されており、
前記一次巻線の巻数をN1とし、前記第1の二次巻線の巻数をN2とすると、
前記第1の誘導電圧は、N2×Vcc/N1で表される、
請求項2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記ON駆動電圧の波高値が+20Vであり、
前記OFF駆動電圧が-5Vである、
請求項3に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記PWM制御信号は、ON区間のON信号と、OFF区間のOFF信号とを繰り返す信号であり、
前記スイッチング素子(Q1)は、前記ON信号に応答して、前記一次巻線に電流を流し、
前記第1の伝達回路(11)は、前記ON区間に、前記第1の誘導電圧を、前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲート-ソース間に前記ON駆動電圧として伝達し、
前記第2の電圧回路(12)は、
前記ON区間に、前記第2の誘導電圧を、保持電圧として保持する保持回路(122)と、
前記OFF区間に、前記保持電圧を、前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲート-ソース間に前記OFF駆動電圧として放出する放出回路(124)と、
を含む、請求項4に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記第1の伝達回路(11)は、前記第1の二次巻線の一端と前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲートとの間に直列に順番に接続された、第1のダイオード(CR2)、第2のダイオード(CR3)、および第1の抵抗器(R4)を含み、
前記第1の二次巻線の他端は、接地されている、
請求項5に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記第2の二次巻線の一端は、接地されており、
前記保持回路(122)は、
前記第2の二次巻線の一端と前記第2の二次巻線の他端との間に直列に順番に接続された、ツェナーダイオード(CR5)、第2の抵抗器(R6)、および第3のダイオード(CR4)と、
前記ツェナーダイオード(CR5)に並列に接続されたコンデンサ(C1)と、
を含み、
前記コンデンサ(C1)は、前記ON区間に、前記第2の誘導電圧を前記保持電圧として保持する、
請求項6に記載の駆動回路。
【請求項8】
前記放出回路(124)は、
エミッタが前記第2のダイオード(CR3)のカソードに接続され、コレクタが前記ツェナーダイオード(CR5)のアノードに接続された制御トランジスタ(Q2)と、
前記制御トランジスタ(Q2)のベースと前記第1のダイオード(CR2)のカソードとの間に接続された第3の抵抗器(R3)と、
前記第1のダイオード(CR2)のカソードと前記ツェナーダイオード(CR5)のアノードとの間に接続された第4の抵抗器(R7)と、
前記第1の抵抗器(R4)と、
を含み、
前記制御トランジスタ(Q2)は、前記OFF区間にターンオンして、前記コンデンサ(C1)に保持された前記保持電圧を、前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲート-ソース間に前記OFF駆動電圧として放出する、
請求項7に記載の駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチング素子の駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体スイッチング素子としては、Siを用いて成る電界効果トランジスタ(Si-FET)や、SiCを用いて成るFET(SiC-FET)が使用される。Si-FETの場合、その駆動電圧は10V以上あれば十分にON抵抗を下げることができる。しかしながら、SiC-FETの場合、その駆動電圧として18V以上の電圧をゲート-ソース間に加えないと、Si-FETと同レベルにON抵抗が下がらないという課題がある。また、SiC-FETの場合、ゲートスレッシュホールド電圧が1.6V~4Vと低い。そのため、SiC-FETをOFFする時に、ゲート-ソース間に加える駆動電圧を負電圧にすることが望まれている。
【0003】
このような半導体スイッチング素子を駆動する駆動回路は、種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、ハーフブリッジ接続された2つの電力スイッチの各々としてSiC-FETを用いた駆動回路を開示している。特許文献1では、SiC-FETは最大負荷駆動電圧-10Vまでの負電圧に制限され、最大3Vの閾値電圧Vthを有し、オーム領域に完全に入るには最大+20Vを必要とする、ことを記載している。特許文献1は、DCゲート供給電圧は、最大負荷供給電圧に近く、たとえば-10V装置限度の場合、-8Vに定義される、ことを記載している。
【0005】
また、特許文献1において、可能な実施形態では、印加される入力信号はパパルス幅変調(PMW)信号である。可能な実施形態として、駆動回路は微分回路、磁気トリガ回路、2つのトリガ回路、2つのランプ生成回路、磁気結合回路、および2つのレジスタを備える。磁気トリガ回路は、1つの一次巻線と4つの二次巻線とを有する変圧器を備える。
【0006】
特許文献2は、半導体スイッチング素子のスイッチング動作の応答速度の向上、およびリンギングの抑制に貢献する技術を提供している。特許文献2に開示された半導体スイッチング素子のゲート駆動回路は、一次巻線がパルス電圧源に接続されるパルストランスと、パルストランスの二次巻線一端側と二次巻線他端側との間において並列接続された放電用トランジスタおよびツェナーダイオードと、を備える。パルストランスの二次巻線の一端側が半導体スイッチング素子のゲートに接続され、他端側が半導体スイッチング素子のソースに接続されている。放電用トランジスタは、半導体スイッチング素子がターンオフの状態の場合に、半導体スイッチング素子のゲート容量に残っている電荷を十分に放電するためのものである。
【0007】
二次巻線一端側の中央部には、直列接続された第1、第2ダイオードが、当該第1、第2ダイオードの順で半導体スイッチング素子のゲートに向かって順方向となるように、直列に接続されている。放電用トランジスタは、エミッタが二次巻線一端側における第2ダイオードのカソード側に接続され、コレクタが二次巻線他端側に接続され、ベースが第1、第2ダイオードの直列接続点に接続、および抵抗器を介して二次巻線他端側に接続されている。ツェナーダイオードは、カソードが二次巻線一端側における第1ダイオードのアノード側に接続され、アノードが二次巻線他端側に接続されている。半導体スイッチング素子は、容量性のゲートを有した構造であり、直流電源から負荷に供給される直流電力エネルギをパルス状に変換する。
【0008】
特許文献2では、パワースイッチング素子の具体例として、SiC(シリコンカーバイド)を用いて成り容量性のゲートをしたMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)構造の素子(いわゆるSiC素子)が挙げられる、ことを記載している。また、特許文献2では、複数個のスイッチ製品SWを同時にスイッチング動作させる場合には、パルス電圧源に接続される一次巻線と、当該一次巻線に対向して配列された複数個の二次巻線と、を有したパルストランスを備えた構成が挙げられる、ことを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2015-509333号公報
【特許文献2】特開2020-014032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、半導体スイッチング素子がSiC-FETから成る場合、ゲートスレッシュホールド電圧が1.6V~4Vと低い。その為、SiC-FETをOFFする時に、ゲート-ソース間に加える駆動電圧を負電圧にすることが望まれている。そのため、後で図面を参照して詳述するように、駆動回路が複雑になるという問題がある。
【0011】
特許文献1は、ハーフブリッジ接続された2つの電力スイッチを駆動する駆動回路を開示しているに過ぎない。すなわち、特許文献1は、1つの電力スイッチを駆動する駆動回路を開示していない。
【0012】
特許文献2では、パルストランスは、1つの二次巻線しか備えていない。そのため、特許文献2に開示されたゲート駆動回路では、半導体スイッチング素子のゲート-ソース間には、駆動電圧として正電圧しか印加することができない。よって、半導体スイッチング素子がSiC-FETから成る場合、SiC-FETをOFFする時に、駆動電圧としてゲートに負電圧を印加することができない。
【0013】
本発明の目的は、上述した課題を解決する、半導体スイッチ素子の駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの態様として、駆動回路は、接地されたソースとゲートとを持つ半導体スイッチング素子(Q3)を駆動するための駆動回路(10)であって、少なくとも1つの一次巻線、第1の二次巻線、および第2の二次巻線を持つパルストランス(T1)と、前記一次巻線に直列に接続され、パルス幅変調(PWM)制御信号に応答して前記パルストランス(T1)を駆動するスイッチング素子(Q1)と、前記第1の二次巻線と前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲート-ソースとの間に接続され、前記第1の二次巻線に誘導された第1の誘導電圧を、前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲート-ソース間に、正電圧であるON駆動電圧として伝達する第1の伝達回路(11)と、前記第2の二次巻線と前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲート-ソースとの間に接続され、前記第2の二次巻線に誘導された第2の誘導電圧を、前記半導体スイッチング素子(Q3)のゲート-ソース間に、負電圧であるOFF駆動電圧として伝達する第2の伝達回路(12)と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、信頼性が高く、安価な駆動回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】関連技術の駆動回路の構成を示す回路図である。
【
図2】
図1に示した駆動回路によって駆動される、半導体スイッチング素子のゲート-ソース間に供給される駆動波形を示す波形図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る駆動回路の構成を示す回路図である。
【
図4】
図3に示した駆動回路によって駆動される、半導体スイッチング素子のゲート-ソース間に供給される駆動波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[関連技術]
本発明の理解を容易するために、本発明に関連する関連技術について説明する。
【0018】
図1は関連技術に係る駆動回路20の構成を示す回路図である。
【0019】
図示の駆動回路20は、半導体スイッチング素子Q11を駆動するための回路である。図示の半導体スイッチング素子Q11は、SiC-MOSFETから成り、ゲートとソースとドレインとを持つ。半導体スイッチング素子Q11のソースは、接地端子PGNDに接続されて接地されている。半導体スイッチング素子Q11のドレインは、スイッチング(SW)トランス(図示せず)に接続されている。半導体スイッチング素子Q11のゲートは、抵抗器R11を介して駆動回路20の出力端子に接続されると共に、抵抗器R12を介して接地端子PGNDに接続されて接地されている。
【0020】
図示の駆動回路20は、第1のDC/DCコンバータ21と、第2のDC/DCコンバータ22と、制御回路23と、FET駆動用集積回路(IC)24とを備える。
【0021】
第1のDC/DCコンバータ21は、半導体スイッチング素子Q11をON駆動するための+20VのON駆動電圧を発生する+20V電源である。第2のDC/DCコンバータ22は、半導体スイッチング素子Q11をOFFする時に、半導体スイッチング素子Q11のゲート-ソース間に-5VのOFF駆動電圧を供給するための±5V電源である。制御回路23は、PWM制御用の+5Vの制御信号を発生する回路である。
【0022】
FET駆動用IC24は、抵抗器R11を介して半導体スイッチング素子Q11のゲートに接続されている。FET駆動用IC24は、第1のDC/DCコンバータ21と第2のDC/DCコンバータ22と制御回路23とに接続されている。FET駆動用IC24は、制御回路23から供給される制御信号に応答して、第1のDC/DCコンバータ21から供給されるON駆動電圧および第2のDC/DCコンバータ22から供給されるOFF駆動電圧の一方を選択して、選択した駆動電圧を、抵抗器R11を介して半導体スイッチング素子Q11のゲート-ソース間に供給する。
【0023】
図2は、半導体スイッチング素子Q11のゲート-ソース間に供給される駆動波形を示す波形図である。
【0024】
半導体スイッチング素子Q11をONする期間には、+20VのON駆動電圧が半導体スイッチング素子Q11のゲート-ソース間に供給される。半導体スイッチング素子Q11をOFFする期間には、-5VのOFF駆動電圧が半導体スイッチング素子Q11のゲート-ソース間に供給される。
【0025】
図1に示されるように、関連技術の駆動回路20は、回路構成が複雑で、部品点数が多いことが分かる。これが、平均故障間隔(MTBF:Mean time between failures)を下げる要因となる。
【0026】
[実施形態]
以下、本発明を実施する形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の実施形態に記載されている構成は単なる例示であり、本発明の技術範囲はそれらには限定されない。
【0027】
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る駆動回路10について説明する。
【0028】
図示の駆動回路10は、半導体スイッチング素子Q3を駆動するための回路である。図示の半導体スイッチング素子Q3は、SiC-MOSFETから成り、ゲートとソースとドレインとを持つ。図示のSiC-MOSFETは、NチャネルMOSFETから成る。半導体スイッチング素子Q3のソースは、接地端子PGNDに接続されて接地されている。半導体スイッチング素子Q3のドレインは、SWトランス(図示せず)に接続されている。半導体スイッチング素子Q3のゲートは、後述するように、駆動回路10に接続されている。
【0029】
図示の駆動回路10は、
図1に図示した駆動回路20のようなDC/DCコンバータ21、22を使用せずに、後述するパルストランスT1を用いてON駆動電圧とOFF駆動電圧とを得ることを特徴としている。
【0030】
駆動回路10は、上述したパルストランスT1と、スイッチング素子Q1と、第1の伝達回路11と、第2の伝達回路12と、制御信号発生器14とを含む。
【0031】
パルストランスT1は、一次側に補助巻線(1-2)と一次巻線(3-4)とを持ち、二次側に第1の二次巻線(5-6)と第2の二次巻線(7-8)とを持つ。補助巻線(1-2)の巻数はNrである。一次巻線(3-4)の巻数はN1である。第1の二次巻線(5-6)の巻数はN2である。第2の二次巻線(7-8)の巻数はN3である。
【0032】
次に、パルストランスT1の一次側に設けられる回路構成について説明する。
【0033】
補助巻線(1-2)の一端(1)は、ダイオードCR1を介して接地端子SGNDに接続されて、接地されている。すなわち、ダイオードCR1のアノードは接地端子SGNDに接続され、ダイオードCR1のカソードは補助巻線(1-2)の一端(1)に接続されている。補助巻線(1-2)の他端(2)には、Vccの直流電圧が供給されている。
【0034】
一次巻線(3-4)の一端(3)にも、Vccの直流電圧が供給されている。一次巻線(3-4)の他端(4)は、後述するスイッチング素子Q1のドレインに接続されている。
【0035】
図示のスイッチング素子Q1は、SiC-MOSFETから成り、ゲートとソースとドレインとを持つ。図示のSiC-MOSFETは、NチャネルMOSFETから成る。スイッチング素子Q1は、一次巻線(3-4)に直列に接続されている。
【0036】
詳述すると、スイッチング素子Q1のソースは、接地端子SGNDに接続されて接地されている。半導体スイッチング素子Q1のドレインは、上述したように、一次巻線(3-4)の他端(4)に接続されている。
【0037】
制御信号発生器14は、PWM制御信号を発生するための回路である。制御信号発生器14の一端は、抵抗器R1を介して、スイッチング素子Q1のゲートに接続されている。制御信号発生器14の他端は、接地端子SGNDに接続されて接地されている。また、スイッチング素子Q1のゲートは、抵抗器R2を介して、接地端子SGNDに接続されている。
【0038】
したがって、制御信号発生器14から発生されたPWM制御信号は、抵抗器R1を介してスイッチング素子Q1のゲートに供給される。このPWM制御信号に応答して、スイッチング素子Q1は、パルストランスT1を駆動する。
【0039】
詳述すると、PWM制御信号は、ON区間のON信号(High)と、OFF区間のOFF信号(Low)とを繰り返す信号である。スイッチング素子Q1は、ON信号(High)に応答して、パルストランスT1の一次巻線(3-4)に電流を流す。よって、PMW制御信号のON信号(High)がスイッチング素子Q1のゲートに伝達されると、パルストランスT1が駆動されることになる。
【0040】
次に、パルストランスT1の二次側に設けられる回路構成について説明する。
【0041】
第1の伝達回路11は、第1の二次巻線(5-6)と半導体スイッチング素子Q3のゲート-ソースとの間に接続されている。第1の伝達回路11は、パルストランスT1の第1の二次巻線(5-6)に誘導された第1の誘導電圧を、半導体スイッチング素子Q3のゲート-ソース間に、正電圧であるON駆動電圧として伝達するための回路である。
【0042】
前述したように、一次巻線(3-4)の巻数はN1であり、第1の二次巻線(5-6)の巻数はN2である。また、一次巻線(3-4)にはVccの直流電圧が供給されている。したがって、上記第1の誘導電圧(ON駆動電圧)は、N2×Vcc/N1で表される。本例では、第1の誘導電圧(ON駆動電圧)の波高値は+20Vに等しい。換言すれば、第1の誘導電圧(ON駆動電圧)の波高値が+20Vとなるように、直流電圧VccからN2:N1の比率(変圧比)を決定している。
【0043】
詳述すると、第1の伝達回路11は、上記ON区間に、第1の誘導電圧を、半導体スイッチング素子Q3のゲート-ソース間に、ON駆動電圧として伝達する。図示の第1の伝達回路11は、第1の二次巻線(5-6)の一端(5)と半導体スイッチング素子Q3のゲートとの間に順番に直列に接続された、第1のダイオードCR2、第2のダイオードCR3、および第1の抵抗器R4を含む。
【0044】
第1のダイオードCR2のアノードは、第1の二次巻線(5-6)の一端(5)に接続されている。第1のダイオードCR2のカソードは、第2のダイオードCR3のアノードに接続されている。第2のダイオードCR3のカソードは、第1の抵抗器R4を介して半導体スイッチング素子Q3のゲートに接続されている。
【0045】
第1の二次巻線(5-6)の他端(6)は、接地端子PGNDに接続されて接地されている。
【0046】
第2の二次巻線(7-8)の一端(7)も、接地端子PGNDに接続されて接地されている。
【0047】
第2の伝達回路12は、第2の二次巻線(7-8)と半導体スイッチング素子Q3のゲート-ソースとの間に接続されている。第2の伝達回路12は、パルストランスT1の第2の二次巻線(7-8)に誘導された第2の誘導電圧を、半導体スイッチング素子Q3のゲート-ソース間に、負電圧であるOFF駆動電圧を伝達するための回路である。本例では、OFF駆動電圧は、-5Vに等しい。
【0048】
詳述すると、図示の第2の伝達回路12は、上記ON区間に、第2の誘導電圧を、保持電圧として保持する保持回路122と、上記OFF区間に、保持電圧を、半導体スイッチング素子Q3のゲート-ソース間にOFF駆動電圧として放出する放出回路124とを含む。
【0049】
保持回路122は、第2の二次巻線(7-8)の一端(7)と第2の二次巻線(7-8)の他端(8)との間に直列に順番に接続された、ツェナーダイオードCR5、第2の抵抗器R6、および第3のダイオードCR4と、ツェナーダイオードCR5に並列に接続されたコンデンサC1とを含む。
【0050】
ツェナーダイオードCR5のカソードは、第2の二次巻線(7-8)の一端(7)に接続されている。ツェナーダイオードCR5のアノードは、第2の抵抗器R6を介して第3のダイオードCR4のアノードに接続されている。第3のダイオードCR4のカソードは、第2の二次巻線(7-8)の他端(8)に接続されている。
【0051】
本例では、ツェナーダイオードCR5のツェナー電圧は、5.1Vに設定されている。コンデンサC1は、ON区間に、第2の誘導電圧を保持電圧として保持する。
【0052】
一方、放出回路124は、制御トランジスタQ2と、第3の抵抗器R3と、第4の抵抗器R7と、上記第1の抵抗器R4とを含む。図示の例では、制御トランジスタQ2は、PNPトランジスタから成る。
【0053】
制御トランジスタQ2のエミッタは第2のダイオードCR3のカソードに接続されている。制御トランジスタQ2のコレクタはツェナーダイオードCR5のアノードに接続されている。第3の抵抗器R3は、制御トランジスタQ2のベースと第1のダイオードCR2のカソードとの間に接続されている。第4の抵抗器R7は、第1のダイオードCR2のカソードとツェナーダイオードCR5のアノードとの間に接続されている。
【0054】
したがって、制御トランジスタQ2は、上記OFF区間にターンオンして、コンデンサC1に保持された保持電圧を、半導体スイッチング素子Q3のゲート-ソース間にOFF駆動電圧として放出する。
【0055】
尚、図示の駆動回路10は、第5の抵抗器R5と第6の抵抗器R8とを更に含む。第5の抵抗器R5は、半導体スイッチング素子Q3のゲートとソースとの間に接続されている。第6の抵抗器R8は、コンデンサC1と並列に接続されている。
【0056】
図4は、半導体スイッチング素子Q3のゲート-ソース間に供給される駆動波形を示す波形図である。
【0057】
[実施形態の動作の説明]
次に、
図4を参照して、
図3に示した駆動回路10の動作について説明する。
【0058】
制御信号発生器14からPWM制御信号のON信号(High)が抵抗器R1を介してスイッチング素子Q1のゲートに伝達される。このON信号に応答して、スイッチング素子Q1はパルストランスT1を駆動する(すなわち、パルストランスT1の一次巻線(3-4)に電流を流す)。駆動されたパルストランスT1の第1の二次巻線(5-6)には、N2×Vcc/N1の第1の誘導電圧(本例では、+20Vに等しい)が誘起される。この誘起された第1の誘導電圧は、第1の伝達回路11を介して、半導体スイッチング素子Q3のゲート-ソース間にON駆動電圧として供給される(
図4のON区間参照)。
【0059】
尚、この動作と並行して、駆動されたパルストランスT1の第2の二次巻線(7-8)には、N3×Vcc/N1の第2の誘導電圧が誘起される。この誘起された第2の誘導電圧は、第2の伝達回路12の保持回路122のコンデンサC1に保持電圧として蓄えられる。この蓄えられた保持電圧は、-5Vに等しい。しかしながら、このとき、放出回路124の制御トランジスタQ2はOFF状態であるので、蓄えられた保持電圧が半導体スイッチング素子Q3のゲート-ソース間に供給されることはない。
【0060】
その後、制御信号発生器14からPWM制御信号のOFF信号(Low)が抵抗器R1を介してスイッチング素子Q1のゲートに伝達される。このOFF信号に応答して、スイッチング素子Q1はパルストランスT1の駆動を停止する。そのため、第1の二次巻線(5-6)および第2の二次巻線(7-8)には、第1および第2の誘導電圧が誘起されることはない。
【0061】
と同時に、放出回路124の制御トランジスタQ2はターンオンする(すなわち、ON状態に遷移する)。この制御トランジスタQ2のON状態の遷移に応答して、保持回路122のコンデンサC1に蓄えられた保持電圧(-5V)が、制御トランジスタQ2および第1の抵抗器R4を介して、半導体スイッチング素子Q3のゲート-ソース間にOFF駆動電圧として供給される(
図4のOFF区間参照)。
【0062】
[実施形態の効果の説明]
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0063】
以上説明した本発明の実施形態では、以下に記載するとおりの効果を奏する。
【0064】
実施形態の効果は、SiC-FETのような半導体スイッチング素子を駆動するために必要な最適な駆動波形を、ローコストで、部品点数が少なく、高信頼性で、提供することができることである。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。
【0066】
例えば、上記実施形態では、第2の伝達回路12の放出回路124を構成する制御トランジスタが、PNPトランジスタQ2である場合を例に挙げて説明しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、本発明に係る制御トランジスタは、半導体スイッチング素子Q3をON駆動するときにはターンオフし、半導体スイッチング素子Q3をOFFにするときはターンオンするものであれば、どのようなものでもよい。また、上記実施形態では、パルストランスT1を駆動するためのスイッチング素子が、NチャンネルのSiC-FETQ1である場合を例に挙げて説明しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、本発明に係るスイッチング素子は、パルストランスT1を駆動できるものであれば、どのようなものでもよい。さらに、上記実施形態では、駆動回路10によって駆動される半導体スイッチング素子が、NチャンネルのSiC-FETQ3である場合を例に挙げて説明しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、本発明が適用される半導体スイッチング素子は、それをOFFするときに、ゲート-ソース間に負電圧を印加することが必要であるものであれば、どのようなものでもよい。
【0067】
以上、実施の形態を参照し本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明による駆動回路は、AC/DCコンバータ、DC/DCコンバータ、インバータ、モータ制御、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Systems)、再生可能エネルギの電力変換の技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 駆動回路
11 第1の伝達回路
12 第2の伝達回路
122 保持回路
124 放出回路
14 制御信号発生器
Q1 スイッチング素子
Q2 制御トランジスタ
Q3 半導体スイッチング素子
T1 パルストランス