(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121969
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】高炉用原料の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
C10B 53/08 20060101AFI20230825BHJP
C10B 31/02 20060101ALI20230825BHJP
B65G 65/32 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C10B53/08
C10B31/02
B65G65/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025364
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】横森 玲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
(72)【発明者】
【氏名】今西 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石田 匡平
【テーマコード(参考)】
3F075
4H012
【Fターム(参考)】
3F075AA08
3F075BA04
3F075BB01
3F075DA17
3F075DA19
3F075DA21
4H012KA06
(57)【要約】
【課題】フェロコークス等の高炉用原料の製造時における乾留炉内での高炉用原料の分布を改善し、すなわち、粉体および粉体よりも粒径の大きい成型物粒子の偏析を抑制して高品質かつ生産性の高い高炉用原料の製造装置および製造方法を提案する。
【解決手段】シュート3を介して炉内に装入された成型物を乾留して高炉用原料を製造する高炉用原料の製造装置において、成型物は、粉体SPと、粉体SPよりも粒径の大きい成型物粒子LPとを有しており、炉壁のうち、装入口2に対向する炉壁の少なくとも一部に、シュート3を介して炉内に装入された成型物粒子LPに接触して装入口2側に押し戻すガイド部6が炉内に突出して設置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュートを介して炉内に装入された成型物を乾留して高炉用原料を製造する高炉用原料の製造装置において、
前記成型物は、粉体と、前記粉体よりも粒径の大きい成型物粒子とを有しており、
前記炉内の炉壁のうち、前記シュートが連結されている装入口に対向する炉壁の少なくとも一部に、前記シュートを介して前記炉内に装入された前記成型物粒子に接触して前記装入口側に押し戻すガイド部が前記炉内に突出して設けられている
高炉用原料の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高炉用原料の製造装置において、
前記ガイド部は、前記装入口の下端部よりも下側に位置しており、
前記ガイド部と前記装入口の下端部との高低差dと、前記炉の奥行方向の内寸Wとの第1比(d/W)が0.65以上0.80以下であり、かつ、
前記奥行方向における前記ガイド部の突出長さwと前記内寸Wとの第2比(w/W)が0.35以上0.50以下である高炉用原料の製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の高炉用原料の製造装置において、
前記炉内に前記成型物を装入するときに、前記炉の幅方向に前記成型物を拡散させる拡散部が前記シュートに設けられている高炉用原料の製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の高炉用原料の製造装置において、
前記ガイド部は、平板状を成している高炉用原料の製造装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の高炉用原料の製造装置において、
前記成型物は、成分として炭素含有物質と鉄含有物質とを含む高炉用原料の製造装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の高炉用原料の製造装置を用いて高炉用原料を製造することを特徴とする高炉用原料の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の高炉用原料の製造方法において、
前記装入口の下端部から前記炉内に堆積した前記成型物の上端部分までの距離Dが下記式の関係を常に満たすように、前記炉内における前記成型物の堆積レベルを監視しつつ、前記炉内に前記成型物を装入する高炉用原料の製造方法。
0.1≦(D-d)/W
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用原料の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、鉄鋼業界においてもCO2ガスの発生量低減が求められており、化石燃料使用量の削減が急務である。鉄鋼業においては、高炉内で鉄鉱石を炭素すなわち石炭をコークス炉で乾留して製造したコークスで還元することにより溶銑を製造しているが、コークス原単位低減のため、フェロコークスを高炉用原料として用いる技術の開発が行われている。フェロコークスは、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した後、乾留処理を施すことでコークス中に微細な金属鉄粒子を分散させ、金属鉄の触媒作用によりコークスの反応性を高めた成型コークスである。
【0003】
フェロコークスの乾留方法としては竪型の乾留炉(以下、単に乾留炉と記す。)を用いるものが提案されている。例えば、特許文献1には、上部に乾留ゾーン、下部に冷却ゾーンを有する乾留炉を用いたフェロコークス製造方法が開示されている。この方法は、炭素含有物質と鉄含有物質とからなる成型物を乾留炉の炉頂部から乾留炉内に装入する装入工程と、乾留ゾーンにおいて、加熱ガスを吹き込むことで成型物を乾留してフェロコークスを製造する乾留工程と、冷却ガスを吹き込むことによりフェロコークスを冷却する冷却工程と、乾留炉の炉頂部の排出口から炉内ガスを排出する炉内ガス排出工程と、冷却ゾーン下部からフェロコークスを排出するフェロコークス排出工程とを有する。乾留工程では、乾留ゾーン中間部分の低温ガス吹き込み羽口から低温ガスを、乾留ゾーン下部の高温ガス吹き込み羽口から高温ガスをそれぞれ炉内に吹き込むことで成型物を加熱する。また、冷却工程では冷却ゾーン下部の冷却ガス吹き込み羽口から冷却ガスを吹き込むことでフェロコークスの冷却を行う。ここで、フェロコークスの生産量を増加させるためには、乾留炉の容積を大きくする必要があるが、加熱ガスおよび冷却ガスは乾留炉の奥行方向つまり成型物装入方向の水平成分に平行に、言い換えれば乾留炉の厚さ方向に噴射される。そのため、上述した各ガスを乾留炉の奥行方向で炉内中央部まで浸透させるには奥行方向の内寸を一定以下に抑える必要がある。よって、乾留炉は奥行方向に比べて炉幅方向(乾留炉横断面において、奥行方向と直交する方向)が長い形状となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-57970号公報
【特許文献2】特開2011-162271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、奥行方向に対して炉幅方向が長い構造を有する乾留炉では、炉幅方向に成型物の装入口を複数列配置した場合でも、成型物の均一な装入分布を得ることは困難である。特に、成型物と乾留炉内に成型物を挿入するシュートの壁面との衝突、もしくは、シュートを含む乾留炉内への成型物の搬送工程で成型物同士が衝突することで生成した粉体は偏析しやすく、乾留炉内の装入口側に密集する傾向にある。これは、粉体の大部分が成型物の間をすり抜けて沈降することで、乾留炉に到達するまでに成型物が前記粉体よりも粒径の大きい成型物粒子の層(以下、成型物層と記す。)と、当該成型物層の下側に位置する粉体層との2層に分離するためである。具体的には、乾留炉内に1tの成型物を装入した場合、乾留炉内に突入する際の装入物の厚みは、すなわち、成型物層と粉体層とを合わせた厚みは最大で150mm程度になる。成型物粒子はその下側に存在する粉体の分、高い位置から乾留炉内に装入されるため、装入口から離れた位置まで飛来しやすい一方で、下層の粉体は装入口近傍に落下する。成型物粒子はその安息角に応じた山を形成するため、粉体と比較して偏析し難いものの、乾留炉内では、奥行方向で装入口から離れた箇所に偏って成型物粒子が堆積してしまう傾向がある。また、粉体は成型物間に潜り込むことで位置が固定されるため、粉体が一点に、例えば上述した装入口近傍に集中して落下した場合には、著しい粉体偏析が発生する。成型物および粉体の偏析がもたらす問題としては、炉内のガス流れが不均一となり成型物の乾留に影響を与えることが挙げられる。
【0006】
材料の均一装入方法の一例として、特許文献2に、搬送路の幅方向中央部から出口側へ向かって放射状に下る傾斜面を有する分散誘導部を搬送炉に設けることで材料を放射状に分散させる方法が開示されている。この技術は炉幅方向の分散改善に特化したものである。分散誘導部の有無は粉体の飛距離に影響しないため、分散誘導部の設置によって粉体や成型物粒子の偏析を解消することはできない。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、フェロコークス等の高炉用原料の製造時における乾留炉内での高炉用原料の分布を改善し、すなわち、粉体および粉体よりも粒径の大きい成型物粒子の偏析を抑制して高品質かつ生産性の高い高炉用原料の製造装置および製造方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために、
[1]シュートを介して炉内に装入された成型物を乾留して高炉用原料を製造する高炉用原料の製造装置において、前記成型物は、粉体と、前記粉体よりも粒径の大きい成型物粒子とを有しており、前記炉内の炉壁のうち、前記シュートが連結されている装入口に対向する炉壁の少なくとも一部に、前記シュートを介して前記炉内に装入された前記成型物粒子に接触して前記装入口側に押し戻すガイド部が前記炉内に突出して設けられている高炉用原料の製造装置である。
【0009】
[2]上記の[1]に記載の高炉用原料の製造装置において、前記ガイド部は、前記装入口の下端部よりも下側に位置しており、前記ガイド部と前記装入口の下端部との高低差dと、前記炉の奥行方向の内寸Wとの第1比(d/W)が0.65以上0.80以下であり、かつ、前記奥行方向における前記ガイド部の突出長さwと前記内寸Wとの第2比(w/W)が0.35以上0.50以下である高炉用原料の製造装置である。
【0010】
[3]上記の[1]または[2]に記載の高炉用原料の製造装置において、前記炉内に前記成型物を装入するときに、前記炉の幅方向に前記成型物を拡散させる拡散部が前記シュートに設けられている高炉用原料の製造装置である。
【0011】
[4]上記の[1]ないし[3]のいずれかに記載の高炉用原料の製造装置において、前記ガイド部は平板状を成している高炉用原料の製造装置である。
【0012】
[5]上記の[1]ないし[4]のいずれかに記載の高炉用原料の製造装置において、前記成型物は、成分として炭素含有物質と鉄含有物質とを含む高炉用原料の製造装置である。
【0013】
[6]上記の[1]ないし[5]のいずれかに記載の高炉用原料の製造装置を用いて高炉用原料を製造することを特徴とする高炉用原料の製造方法である。
【0014】
[7]上記の[6]に記載の高炉用原料の製造方法において、前記装入口の下端部から前記炉内に堆積した前記成型物の上端部分までの距離Dが下記式の関係を常に満たすように、前記炉内における前記成型物の堆積レベルを監視しつつ、前記炉内に前記成型物を装入する高炉用原料の製造方法である。
0.1≦(D-d)/W
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炉内における成型物の成型物粒子および粉体の偏析を抑制することができる。また、成型物粒子や粉体が偏析することによる成型物の乾留への悪影響を抑制できる。その結果、高炉に装入される高炉用原料の品質を改善できると共に高炉用原料の生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明におけるフェロコークス製造装置の側面図であって、
図1の(a)は、炉内に成型物を装入し始めた状態を説明するための図であり、
図1の(b)は、炉内への成型物の装入終了間際の状態を説明するための図である。
【
図2】最大粉体率、および、最大成型物粒子重量と、第1比との相関関係を示す図である。
【
図3】最大粉体率、および、最大成型物粒子重量と、第2比との相関関係を示す図である。
【
図4】最大粉体率、および、最大成型物粒子重量と、第3比との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態における成型物は乾留されることによって高炉用原料と成るものであって、その高炉用原料は一例として、成型コークスを挙げることができる。具体的には、成型コークスの一種であるフェロコークスを挙げることができる。以下に、本発明の一実施形態をフェロコークスの製造工程を例として説明する。なお、以下の説明における各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、本発明は以下に説明する実施形態に限定されない。すなわち、本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
図1は、本発明におけるフェロコークス製造装置(以下、単に製造装置と記す。)の側面図である。
図1に示す製造装置は、上部の乾留ゾーンで成型物の乾留を行い、下部の冷却ゾーン(図示せず)で成型物を乾留することによって生成されたフェロコークスの冷却を行なう乾留炉1であり、乾留炉1の炉上部における側面に装入口2が形成されている。なお、
図1の左右方向が、乾留炉1の奥行方向や厚さ方向を示し、
図1の上下方向が、乾留炉1の上下方向を示している。
【0019】
本発明の実施形態における成型物は、上述したように、乾留されることによってフェロコークスと成るものであり、成分として炭素含有物質(石炭など)と鉄含有物質(鉄鉱石など)とを含んでいる。成型物は、上述した各物質が図示しない塊成化装置によって塊成化されたものであり、その状態で図示しない搬送装置によって乾留炉1にまで搬送される。また、成型物は、搬送の過程で、振動によって搬送装置に衝突したり、互いに衝突したりするなどによってその一部が粉体となってしまう場合がある。そのため、乾留炉1に装入されるときには、成型物は、粉体SPと、当該粉体SPよりも粒径の大きい成型物粒子LPとを含んでいる。なお、塊成化装置や搬送装置は、塊成化装置や搬送装置として従来知られたものと同様に構成されたものであってよい。
【0020】
装入口2に、予め設定された量の成型物を乾留炉1の内部に装入するシュート3が連結されている。そのシュート3に、上述した図示しない搬送装置が連結されている。シュート3は、
図1に示す例では、上方から下方に向かって下る傾斜面を有しており、搬送装置によって搬送されてきた成型物を傾斜面に沿って乾留炉1内に装入するようになっている。具体的には、
図1に示すシュート3は、成型物の装入方向で、互いに傾斜角度の異なる2つの傾斜面を有している。装入方向で上流側の第1傾斜面3Aに対して、下流側の第2傾斜面3Bの図示しない水平面に対する傾斜角度は小さく設定されている。これは、乾留炉1の奥行方向で装入口2とは反対側に成型物を装入しやすくするためである。なお、それらの傾斜面3A,3Bの傾斜角度は予め設定される。また、乾留炉1に対する成型物の装入方向でシュート3の上流側に、すなわち、シュート3の入口側にゲート4が設けられている。
【0021】
ゲート4は、乾留炉1に対して成型物を装入する機構、あるいは、乾留炉1に対して装入する成型物の量を調整する機構である。すなわち、ゲート4は、乾留炉1に対して成型物を装入することができ、あるいは、成型物の装入量を調整することができる機構であればよく、特には、限定されない。ここに示す例では、ゲート4は、所定の回転中心軸を中心として回動するように構成された扉状を成している。具体的には、シュート3の内面のうち、上側の内面に設けられており、図示しないアクチュエータから伝達されるトルクを受けて乾留炉1側に向かって開くように構成されている。これは、シュート3の内面のうち、下側の内面にゲート4が設けられていると、ゲート4を開いて乾留炉1内に成型物を装入する際に、ゲート4によって成型物の装入が阻害されてしまう可能性があるので、これを避けるためである。また、ゲート4はその開度を連続的あるいは段階的に変更可能に構成されていてよい。ゲート4の開度を変更可能に構成した場合には、ゲート4の開度を制御することによって乾留炉1の内部への成型物の装入量を制御できる。
【0022】
成型物の装入方向でゲート4の下流側に拡散部5が設けられている。拡散部5は乾留炉1の内部に成型物を装入するときに、ゲート4を通過した成型物を乾留炉1の幅方向(以下、炉幅方向と記す。)に拡散あるいは分散させるものである。具体的には、成型物の装入方向でシュート3の第1傾斜面3Aと第2傾斜面3Bとの間に拡散部5が設けられている。また、拡散部5は、詳細は図示しないが、一例として四角錐形状を成しており、乾留炉1側を向く三角形の前方傾斜面と、前方傾斜面の両側にそれぞれ位置する三角形の側方傾斜面とを備えている。それらの前方傾斜面と二つの側方傾斜面とのそれぞれは、シュート3から装入口2側に向かって下っており、成型物の通過面になっている。なお、炉幅方向は、乾留炉1の上下方向と奥行方向とのそれぞれに対して直交する方向である。
【0023】
乾留炉1内の炉壁のうち、装入口2に対向する炉壁に、乾留炉1内に成型物が装入された際に、主として成型物中の成型物粒子LPに接触してこれを装入口2側に押し戻して成型物粒子LPの堆積位置を装入口2側に案内するガイド部6が設けられている。ガイド部6は、ここに示す例では、乾留炉1の内部に向かってほぼ水平に突出する平板状を成している。具体的には、乾留炉1内に成型物を装入した際に、粉体SPと成型物粒子LPとの境界部分に、主としてガイド部6の先端部6Aが位置するように、奥行方向での突出長さと、上下方向での設置高さとが設定されている。ガイド部6の突出長さと上下方向での設置高さとのそれぞれは、実験によって予め求めることができる。また、ガイド部6は、一例として、炉幅方向で、装入口2に対向する炉壁の少なくとも一部、すなわち、拡散部5によって炉幅方向に拡散される成型物の幅とほぼ同じ長さに亘って延びて設けられていてよい。もしくは、炉幅方向での全範囲(全長)に亘って延びて設けられていてよい。
【0024】
なお、ガイド部6は水平に設置することに替えて、乾留炉1の下部に向かって傾斜させて設置してもよい。ガイド部6を乾留炉1の下部に向かって傾斜させて設置する場合には、図示しない水平面とガイド部6との成す角度は30度未満とすることが好ましい。これは、後述するように、乾留炉1内に成型物を装入する際に、ガイド部6上にある程度、成型物を堆積させ、その堆積物を次々と装入されてくる成型物に対する緩衝材として機能させるためである。また、ガイド部6は一例として鉄系材料によって構成されてよい。
【0025】
次に、
図1に示す製造装置の作用について説明する。シュート3に、フェロコークスの原料となる炭素含有物質(石炭等)と鉄含有物質(鉄鉱石等)とを含む成型物が搬送装置から供給される。ここで、成型物は、上述したように搬送の過程でその一部が粉体SPとなり、当該粉体SPは成型物粒子LP同士の間の隙間を通って成型物粒子LPの下側に移動する。そのため、成型物は、シュート3に到達する時点で、成型物粒子LPの層(以下、成型物粒子層と記す。)と、その下側に粉体SPの層(以下、粉体層と記す。)との二層になっており、その状態でシュート3に供給される。
【0026】
シュート3に対する成型物の供給時、シュート3の入口側に設けられたゲート4は閉鎖された状態であり、ゲート4の上流側に1バッチ分の成型物が堆積する。続いて、ゲート4を開放し、シュート3よりも低い位置に設置された乾留炉1内に成型物を装入する。この時、成型物は炉幅方向の分散を促進する拡散部5上を通過し、これにより、炉幅方向に拡散あるいは分散されて乾留炉1内に装入される。成型物のうち、成型物粒子LPは、乾留炉1の装入口2に対向する炉壁の炉幅方向の一部もしくは全範囲に設置されたガイド部6に接触して乾留炉1内に落下する。なお、拡散部5はシュート3よりも炉幅方向の長さが長い構造である。
【0027】
前述の通り、従来の操業では、つまり、本願発明のガイド部6がない場合には、成型物中の成型物粒子LPは乾留炉1の装入口2から離れた位置にまで飛来する一方で、成型物中の粉体SPは乾留炉1の装入口2の近傍に偏析しやすい傾向にある。このような粉体SPの偏析を改善する方法の一つとして、乾留炉1内の堆積物DMのレベル(以下、堆積レベルと記す。)、つまり、乾留炉1内に堆積している成型物の高さを下げることによって粉体SPの飛距離を延長することが挙げられる。しかしながら、堆積レベルを下げると、成型物粒子LPの飛距離も伸びるため、当該成型物粒子LPによって形成される山のピークも乾留炉1の装入口2から遠ざかる。すなわち、乾留炉1の装入口2に対向する炉壁の近傍に成型物粒子LPが偏析してしまう。なお、堆積物DMとは、乾留炉1に装入されて堆積した成型物、および、ガイド部6上に堆積した成型物を意味している。
【0028】
成型物粒子LPはその安息角に応じた山を形成するため、粉体SPと比較して偏析の程度は小さいものの、粉体SPと同様に偏析することで炉内のガス流れが不均一になり、成型物の乾留に悪影響を与える。そこで、本発明では、乾留炉1内の堆積レベルを下げた状態で、乾留炉1内に成型物を挿入する際の成型物粒子LPの偏析を抑制するため、乾留炉1の装入口2に対向する炉壁の炉幅方向の一部もしくは全範囲に亘って上述したガイド部6が設けられている。ガイド部6によって成型物粒子LPを乾留炉1の装入口2側に押し戻して成型物粒子LPの堆積位置を装入口2側に案内して成型物粒子LPの偏析を抑制するようになっている。
【0029】
シュート3を介して乾留炉1内に装入される成型物粒子層と粉体層との間にガイド部6の先端部6Aが位置するように、上記のように、ガイド部6の突出長さと設置高さとがそれぞれ設定されている。そのため、主として成型物粒子LPとガイド部6とが接触し、ガイド部6上に成型物粒子LPが一時的に滞留させられる。ガイド部6は乾留炉1の下部に向かって傾斜させても良いが、乾留炉1の横断面と平行に設置してガイド部6上に成型物粒子LPを滞留させることが望ましい。
【0030】
ガイド部6上に滞留した成型物粒子LPは、次々と装入されてくる成型物粒子LPと接触する。つまり、ガイド部6上に滞留した成型物粒子LPすなわち堆積物DMは、次々と装入されてくる成型物粒子LPとガイド部6との接触や衝突を抑制する緩衝材として機能し、成型物粒子LPの粉化と、ガイド部6の摩耗や損傷との両方を防止もしくは抑制するようになっている。なお、本発明の実施形態では、ガイド部6は主として成型物粒子LPと接触するため、粉体SPの分散は特には阻害されない。そのため、粉体SPは、
図1の(a)に示すように、乾留炉1の奥行方向でのほぼ中央部に落下して堆積する。なお、ガイド部6は一例として鉄系材料によって構成されるため、シュート3から装入される成型物と直接的に接触あるいは衝突すると、成型物同士が互いに接触あるいは衝突する場合と比較して粉化しやすくなる。
【0031】
ここで、ガイド部6のサイズについて具体的に説明する。
図1に示す例では、ガイド部6は乾留炉1の装入口2の下端部2Aよりも下側に位置しており、装入口2の下端部2Aとガイド部6との間の高低差dと、奥行方向の乾留炉1の内寸Wとの第1比(d/W)は0.65以上0.80以下(0.65≦d/W≦0.80)に設定されることが好ましい。また、ガイド部6の奥行方向長さつまり上述した突出長さwと奥行方向の乾留炉1の内寸Wとの第2比(w/W)は0.35以上0.50以下(0.35≦w/W≦0.50)に設定されることが好ましい。
【0032】
なお、ガイド部6上に落下した成型物には、乾留炉1の装入口2から装入される成型物流を突き破ったり、つまり成型物流の反対側に移動したり、成型物流の軌道を変化させたりする勢いはない。これは、ガイド部6上に成型物が落下することによって、シュート3から乾留炉1内に落下した際の成型物の運動エネルギは大きく低減されるためである。そのため、
図1の(a)に示すように、成型物流が生じている間は、ガイド部6上の成型物はガイド部6上に保持され、ガイド部6上から成型物流を突き破って乾留炉1の下方に落下することはない。したがって、ガイド部6上の成型物は、ガイド部6に接触しなかった成型物のほぼ全てが乾留炉1内に落下後に、つまり、
図1の(b)に示すように、成型物流がなくなって初めてガイド部6上から乾留炉1の下方に落下して乾留炉1内に堆積する。なお、粉体層はガイド部6に接触しない限り、粉体SPの装入軌道にガイド部6が悪影響を及ぼすことはない。
【0033】
また、本発明の実施形態では、ガイド部6の設置は、前述の通り乾留炉1内の堆積レベルを下げることを前提としている。乾留炉1内の堆積レベルについては、乾留炉1の装入口2の下端部2Aから乾留炉1内の堆積物DMの上端部分までの距離Dが、下記式を常に満たすことが好ましい。
0.1≦(D-d)/W ・・・(1)
上記の式(1)の関係を常に満たすように、乾留炉1内の堆積レベルを監視しつつ、乾留炉1へ成型物を断続的に装入する。こうすることによって、粉体SPと成型物粒子LPとは共に、乾留炉1内での分散性つまり偏析を改善することができる。
【0034】
次に、本発明の作用・効果を確認するために行った実施例について説明する。この実施例では、
図1に示すフェロコークスの製造装置を模擬した試験用装置を用い、当該試験装置内に成型物を装入した際の試験装置の奥行方向の成型物の分布を調査した。具体的には、成型物の装入装置つまりシュートは実際に乾留炉1に設置されているシュートとほぼ同形状のものを用い、そのシュートの出側に乾留炉1に見立てた回収ボックスを設置した。回収ボックスの内面のうち、当該回収ボックスの送入口に対向する内面の幅方向(上述した乾留炉1の炉幅方向に相当する。)の少なくとも一部に、平板状のガイド部6を設置した。
【0035】
回収ボックス内に、シュートから成型物を予め定めた一定量を装入した。回収ボックス内を奥行方向に四等分し、また、幅方向に五等分して合計二十個に区分けした。こうして区分けされた各空間内に存在する成型物の粒度を調査した。具体的には、各空間内の成型物を回収して篩分けし、篩上に残った成型物を成型物粒子LPとし、篩下の成型物を粉体SPとし、それら成型物粒子LPの重量と粉体SPの重量とをそれぞれ測定した。なお、成型物の篩分けには、篩目20mmの篩を使用した。したがって、成型物粒子LPの粒径は直径20mm以上となっており、粉体SPの粒径は直径20mm未満となっている。また、粉体率つまり各空間内の成型物の総量に占める粉体SPの重量割合を算出した。成型物粒子LPの重量、および、粉体率は、上述した二十個の空間のそれぞれについて得られるが、以下の説明では、粉体SPの偏析の指標として「最大粉体率」を示し、成型物粒子LPの偏析の指標として「最大成型物粒子重量」を示す。「最大粉体率」は、二十個の各空間の粉体率をそれぞれ比較して得られる粉体率の最大値である。また、「最大成型物粒子重量」は、二十個の各空間の成型物粒子重量をそれぞれ比較して得られる成型物粒子重量の最大値である。
【0036】
[実施例1]
実施例1では、最大粉体率、および、最大成型物粒子重量に対するガイド部6の設置高さの影響を調査した。成型物の装入量は250kg、ガイド部6の奥行方向長さwは600mm、第2比(w/W)は0.4に設定して、乾留炉1の装入口2の下端部2Aとガイド部6との間の高低差dを変化させた。その結果を
図2に示す。なお、成型物を装入した後において、乾留炉1内の堆積物DMの上端部分とガイド部6との間の高低差と、奥行方向の内寸Wとの第3比((D-d)/W)は、0.15以上0.18以下であり、上述した式(1)を満たしている。
【0037】
図2に示すように、第1比(d/W)が0.65以上0.80以下(0.65≦d/W≦0.80)の範囲において、粉体SP、成型物粒子LP共に分散性が向上することが確認された。第1比(d/W)が0.65未満(d/W<0.65)の場合には、ガイド部6とシュートから装入された成型物粒子LPとが十分に接触しないため、成型物粒子LPの偏析が改善されない。第1比(d/W)が0.80より大きい(0.80<d/W)場合には、ガイド部6が粉体層に接触して、粉体層が乾留炉1の装入口2側に押し戻されてしまい、粉体SPの偏析が改善されない。
【0038】
[実施例2]
実施例2では、最大粉体率、および、最大成型物粒子重量に対するガイド部6の奥行方向長さwの影響を調査した。成型物の装入量は250kg、乾留炉1の装入口2の下端部2Aとガイド部6との高低差dは1200mm、第1比(d/W)は0.80に設定した。その結果を
図3に示す。成型物を装入した後において、乾留炉1内の堆積物DMの上端部分とガイド部6との間の高低差と、奥行方向の内寸Wとの第3比((D-d)/W)は、0.14以上0.19以下であり、上述した式(1)を満たしている。
【0039】
図3に示すように、第2比(w/W)が0.35以上0.50以下(0.35≦w/W≦0.50)の範囲において、粉体SP、成型物粒子LP共に分散性が向上することが確認された。第2比(w/W)が0.35未満(w/W<0.35)の場合には、ガイド部6と成型物粒子LPとが十分に接触しないため成型物粒子LPの偏析が改善されない。第2比(w/W)が0.50よりも大きい(0.50<w/W)場合には、ガイド部6が粉体層に接触して、粉体層が乾留炉1の装入口2側に押し戻されてしまい、粉体SPの偏析が改善されない。
【0040】
[実施例3]
実施例3では、最大粉体率および最大成型物粒子重量に対する乾留炉1内の堆積レベルの影響を調査した。成型物の装入量は250kg、乾留炉1の装入口2の下端部2Aとガイド部6との高低差dは1200mm、第1比(d/W)は0.80に設定し、ガイド部6の奥行方向長さwは600mm、第2比(w/W)は、0.40に設定した。その結果を
図4に示す。
【0041】
図4に示すように、成型物の装入後において、乾留炉1内の堆積物DMの上端部分とガイド部6との間の高低差と、奥行方向の内寸Wとの第3比((D-d)/W)が、0.1以上、つまり、上述した式(1)を満たすことによって粉体SP、成型物粒子LP共に分散性が向上することが確認された。成型物の装入後において、第3比((D-d)/W)が0.1未満((D-d)/W<0.1)の場合には、ガイド部6上に堆積した成型物が乾留炉1の内部に向かって落下する際の落差が小さいために、すなわち、成型物の運動エネルギが小さいために、装入口2側に成型物粒子LPを十分に押し戻すことができず、成型物粒子LPの偏析が解消されない。
【符号の説明】
【0042】
1 乾留炉
2 装入口
3 シュート
4 ゲート
5 拡散部
6 ガイド部
SP 粉体
LP 成型物粒子
DM 堆積物