(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121975
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】型締装置および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B22D 17/26 20060101AFI20230825BHJP
B29C 45/66 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B22D17/26 D
B29C45/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025373
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米原 裕輔
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CB01
4F202CL32
4F202CL34
4F202CL39
4F202CL40
(57)【要約】
【課題】型締機構が備えるボールねじを構成するねじ軸の寿命低下や破損を防止する。
【解決手段】型締装置2は、ねじ軸25と、クロスヘッド23と、ねじ軸25を収容する筒状のカバー部材40とを含む型締機構20を有する。カバー部材40は、型締ハウジング14とクロスヘッド23との間に配置される後方カバー部材50と、クロスヘッド23と可動盤15との間に配置される前方カバー部材60とを含み、後方カバー部材50は、クロスヘッド23の移動に伴う型締ハウジング14とクロスヘッド23との対向間隔の変化に応じて伸縮する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型が取り付けられる固定盤および可動盤と、前記可動盤を前記固定盤に対して移動させる型締機構と、を有する型締装置であって、
前記型締機構は、
回転駆動されるねじ軸と、
前記ねじ軸の回転に伴って移動するクロスヘッドと、
前記ねじ軸を収容する筒状のカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、前記ねじ軸を回転自在に保持する型締ハウジングと前記クロスヘッドとの間に配置される第1カバー部材と、前記クロスヘッドと前記可動盤との間に配置される第2カバー部材と、を含み、
前記第1カバー部材は、前記クロスヘッドの移動に伴う前記型締ハウジングと前記クロスヘッドとの対向間隔の変化に応じて伸縮する、型締装置。
【請求項2】
請求項1に記載の型締装置において、
前記第1カバー部材は蛇腹管であり、前記第2カバー部材は円筒管である、型締装置。
【請求項3】
請求項2に記載の型締装置において、
前記第1カバー部材の一端は前記型締ハウジングの前面に固定され、前記第1カバー部材の他端は前記型締ハウジングの前記前面と対向する前記クロスヘッドの背面に固定され、
前記第2カバー部材の一端は、前記背面と反対側の前記クロスヘッドの前面に固定される、型締装置。
【請求項4】
請求項3に記載の型締装置において、
前記第1カバー部材は、前記型締ハウジングの前記前面に固定される第1フランジと、前記クロスヘッドの前記背面に固定される第2フランジと、を備え、
前記第2フランジに切欠き部が設けられ、
前記切欠き部は、前記ねじ軸に供給される潤滑剤を輸送する管部材を前記第1カバー部材の内側に引き入れるための導入口を形成する、型締装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の型締装置において、
前記第1カバー部材が開閉可能である、型締装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の型締装置において、
前記第1カバー部材の内側に配置される支持部材を備え、
前記支持部材は、前記ねじ軸が挿通される筒部と、前記筒部から径方向外側に拡がって前記第1カバー部材に固定される連結部と、を含む、型締装置。
【請求項7】
請求項6に記載の型締装置において、
前記支持部材は、互いに分離可能な2つ以上の部材から構成される、型締装置。
【請求項8】
金型が取り付けられる型締装置と、前記金型に溶融金属又は溶融樹脂を注入する射出装置と、から構成される射出成形機であって、
前記型締装置は、
前記金型が取り付けられる固定盤および可動盤と、
前記可動盤を前記固定盤に対して移動させる型締機構と、を有し、
前記型締機構は、
回転駆動されるねじ軸と、
前記ねじ軸の回転に伴って移動するクロスヘッドと、
前記ねじ軸を収容する筒状のカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、前記ねじ軸を回転自在に保持する型締ハウジングと前記クロスヘッドとの間に配置される第1カバー部材と、前記クロスヘッドと前記可動盤との間に配置される第2カバー部材と、を含み、
前記第1カバー部材は、前記クロスヘッドの移動に伴う前記型締ハウジングと前記クロスヘッドとの対向間隔の変化に応じて伸縮する、射出成形機。
【請求項9】
請求項8に記載の射出成形機において、
前記第1カバー部材は蛇腹管であり、前記第2カバー部材は円筒管である、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締装置および射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
所望形状の樹脂部材や金属部材を製造する射出成形機が知られている。一般的な射出成形機は、型締装置と射出装置とによって構成される。型締装置は、金型を保持し、保持している金型を開閉させる。射出装置は、樹脂材料や金属材料を溶融させ、溶融した材料を型締装置に供給する。
【0003】
型締装置は、金型を開閉させる型締機構を備えており、型締機構は、回転運動を直線運動に変換するボールねじを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
型締機構が備えるボールねじは、金型の近傍に配置されるねじ軸を含んでいる。別の見方をすると、ねじ軸は、離型剤,バリ,樹脂粉などの異物が付着する虞がある環境下で使用される。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の型締装置に設けられる型締機構は、ねじ軸と、前記ねじ軸を収容する筒状のカバー部材と、を備える。前記カバー部材には、型締ハウジングとクロスヘッドとの間に配置されるカバー部材と、前記クロスヘッドと可動盤との間に配置されるカバー部材と、が含まれる。前記型締ハウジングと前記クロスヘッドとの間に配置される前記カバー部材は、前記クロスヘッドの移動に伴う前記型締ハウジングと前記クロスヘッドとの対向間隔の変化に応じて伸縮する。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態によれば、型締機構が備えるボールねじを構成するねじ軸の寿命低下や破損が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の射出成形機を示す模式図である。
【
図2】
図1に示されている射出成形機の一部を示す模式図である。
【
図3A】
図1に示されているボールねじ及びその周辺の部分断面図である。
【
図3B】
図2に示されているボールねじ及びその周辺の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、実施形態を説明するための全図において、同一または実質的に同一の機能を有する部材や機器などには同一の符号を付し、繰り返しの説明は行わない。
【0011】
<射出成形機>
図1は、本実施形態に係る射出成形機1を示す模式図である。射出成形機1は、型締装置2と射出装置3とから構成されている。型締装置2には金型11,12が取り付けられる。型締装置2は、取り付けられた金型11,12を開閉させる。射出装置3は、金属材料(例えば、マグネシウムやマグネシウム合金)を加熱して溶融させる。射出装置3は、溶融させた金属材料(溶融金属)を型締装置2に取り付けられている金型11,12に注入する。より特定的には、射出装置3は、溶融金属を金型11,12のキャビティー内に射出する。つまり、本実施形態に係る射出成形機1は、金属射出成形機である。
【0012】
<型締装置>
型締装置2は、ベッド4の上に設けられた固定盤13,型締ハウジング14及び可動盤15を備えている。固定盤13及び型締ハウジング14は、ベッド4に固定されている。一方、可動盤15は、ベッド4上をスライド可能である。
【0013】
固定盤13と型締ハウジング14とは、可動盤15を貫通する複数本のタイバー16によって互いに連結されている。より特定的には、4本のタイバー16によって、固定盤13と型締ハウジング14とが連結されている。可動盤15は、固定盤13と型締ハウジング14との間で、これらの対向方向にスライド可能である。
【0014】
型締ハウジング14と可動盤15との間に、型締機構20が設けられている。より特定的には、型締ハウジング14と可動盤15との間に、リンク式の型締機構20が設けられている。別の見方をすると、型締ハウジング14と可動盤15との間に、トグル機構が設けられている。
【0015】
型締機構20は、可動盤15に取り付けられている金型11を固定盤13に取り付けられている金型12に対して進退させる。金型11が金型12に接すると、金型11,12が閉じられる。一方、金型11が金型12から離れると、金型11,12が開かれる。型締機構20は、金型11,12を閉じている間、金型11,12が開かないように、金型11を金型12に押し付けることができる。
【0016】
<射出装置>
射出装置3は、ベッド4の上に設けられた加熱シリンダ30や射出ノズル31等から構成されている。射出装置3は、ノズルタッチ装置32により、型締装置2に近接する方向(前方)に駆動されるとともに、型締装置2から離反する方向(後方)にも駆動される。つまり、射出装置3は、型締装置2に対して前進および後進(後退)する。射出装置3が所定位置まで前進すると、射出ノズル31の先端が金型12のスプルーブッシュに接触する。
【0017】
加熱シリンダ30の後端側にホッパ33が設けられている。ホッパ33は、加熱シリンダ30に金属材料を供給するための供給口である。加熱シリンダ30の内部には、スクリュ34が設けられている。スクリュ34は、加熱シリンダ30内で駆動される。より特定的には、スクリュ34は、加熱シリンダ30内で回転駆動される。また、スクリュ34は、加熱シリンダ30内で直線駆動される。尚、スクリュ34が直線駆動される方向は、型締装置2に対する射出装置3の移動方向と同じである。つまり、スクリュ34は、加熱シリンダ30内で、型締装置2に近接する方向(前方)と、型締装置2から離反する方向(後方)とに直線的に駆動される。
【0018】
加熱シリンダ30は、供給された金属材料を溶融させて溶融金属を作る。加熱シリンダ30の周囲には、加熱シリンダ30を加熱するためのヒータが設けられる。本実施形態では、複数のバンドヒータが加熱シリンダ30の外周面に巻かれている。加熱シリンダ30に供給された金属材料は、バンドヒータから発せられる熱や、スクリュ34の回転によって生じる剪断発熱によって加熱され、溶融する。
【0019】
<成形品の製造方法>
次に、
図1に示されている射出成形機1を用いて金属部材を製造する手順(プロセス)の一例について説明する。まず、型締装置2に取り付けられている金型11,12を開くとともに、射出装置3を後退させる。
【0020】
然る後、射出装置3のホッパ33に金属材料を投入する。例えば、マグネシウムの粉末をホッパ33に投入する。もっとも、射出装置3を後退させる前にホッパ33に金属材料を予め投入しておいてもよい。
【0021】
ホッパ33に投入された金属材料は、ホッパ33を通過して加熱シリンダ30内に落下する。加熱シリンダ30に供給された金属材料は、加熱されて溶融する。溶融した金属材料(溶融金属)は、スクリュ34の回転によって加熱シリンダ30の先端側に送られる。別の見方をすると、スクリュ34と射出ノズル31との間に溶融金属が充填される。
【0022】
その後、射出装置3を前進させ、射出ノズル31の先端を金型12(金型11,12は予め閉じられている)のスプルーブッシュに接触させる。次いで、スクリュ34を加熱シリンダ30内で前方に移動させる。このとき、スクリュ34は回転させない。すると、射出ノズル31の先端から金型11,12のキャビティー内に溶融金属が注入(射出)される。
【0023】
スクリュ34は、キャビティー内に溶融金属を射出した後も溶融金属に圧力(保圧)を掛け続ける。保圧は、キャビティー内に溶融金属を注入(射出)するための圧力(射出圧力/1次圧力)と同じか、それよりも小さい圧力である。キャビティー内の溶融金属に保圧が掛けられている状態を維持したまま金型11,12を冷却する。
【0024】
金型11,12を冷却している間に、スクリュ34を再び回転させて次の射出に備える。具体的には、スクリュ34を回転させ、溶融金属を加熱シリンダ30の先端側に送る。つまり、次に射出する溶融金属をスクリュ34と射出ノズル31との間に充填する。この結果、反力によってスクリュ34が後退する。溶融金属を前方に送りつつスクリュ34を後退させるこの工程は“計量”と呼ばれる。
【0025】
キャビティー内の溶融金属が凝固する温度以下の温度まで金型11,12が冷却された後、金型11,12を開いて成形品を取り出す。
【0026】
上記のプロセスを繰り返すことで、連続して同一形状の金属部材(成形品)が製造される。つまり、所望形状の金属部材(成形品)が量産される。尚、上記プロセスには、金型11,12から取り出された成形品を脱脂したり、焼結したりする工程が追加されることもある。
【0027】
<型締機構>
型締装置2が備える型締機構20は、リンク,クロスヘッド,ボールねじ等から構成されている。より特定的には、型締機構20は、上側リンク21a,21b,21cと、下側リンク22a,22b,22cと、を備えている。また、型締機構20は、上側リンク21a,21b,21cと下側リンク22a,22b,22cとの間に配置されたクロスヘッド23を備えている。さらに、型締機構20は、回転自在に保持されたねじ軸25と、ねじ軸25にねじ結合されたナット部材26と、を含むボールねじ24を備えている。
【0028】
尚、
図1に示されているリンクやボールねじの背後(反操作側)には、同様のリンクやボールねじがもう一組設けられている。つまり、型締装置2の操作側および反操作側に、リンクやボールねじが一組ずつ設けられている。もっとも、操作側のリンクやボールねじと、反操作側のリンクやボールねじと、は同一の構造を有する。そこで、
図1に示されている操作側のリンクやボールねじの構造を明らかにすることにより、
図1に示されていない反操作側のリンクやボールねじの構造についても明らかにする。
【0029】
<リンク>
上側リンク21a及び下側リンク22aの一端(基端)は、ピンによってクロスヘッド23に回転自在に連結されている。上側リンク21b及び下側リンク22bの一端(基端)は、ピンによって型締ハウジング14に回転自在に連結されている。上側リンク21c及び下側リンクの22cの一端(基端)は、ピンによって可動盤15に回転自在に連結されている。また、上側リンク21b及び下側リンク22bの一端(先端)と、上側リンク21c及び下側リンクの22c一端(先端)とは、ピンによって回転自在に連結されている。さらに、上側リンク21a及び下側リンク22aの一端(先端)は、上側リンク21b及び下側リンク22bの長手方向中央または略中央に回転自在に連結されている。
【0030】
リンク(上側リンク21a,21b,21c及び下側リンク22a,22b,22c)は、クロスヘッド23の移動に伴って伸縮する。より特定的には、クロスヘッド23が型締ハウジング14に近接する方向に移動すると(クロスヘッド23が後退すると)、
図1に示されるように、リンクが縮まる(屈曲する)。一方、クロスヘッド23が型締ハウジング14から離反する方向に移動すると(クロスヘッド23が前進すると)、
図2に示されるように、リンクが伸びる(伸張する)。
【0031】
さらに、リンクが縮まると、上側リンク21c及び下側リンクの22cの基端が連結されている可動盤15が型締ハウジング14に近接する方向に移動する。この結果、可動盤15に取り付けられている金型11が金型12から離れ、金型11,12が開かれる。一方、リンクが伸びると、上側リンク21c及び下側リンクの22cの基端が連結されている可動盤15が型締ハウジング14から離反する方向に移動する。この結果、可動盤15に取り付けられている金型11が金型12に押し付けられ、金型11,12が閉じられる。つまり、リンクの伸縮によって金型11,12の開閉や型締めが実現される。
【0032】
<ボールねじ>
図3Aは、
図1に示されているボールねじ24及びその近傍の部分断面図である。
図3Bは、
図2に示されているボールねじ24及びその近傍の部分断面図である。ホールねじ24のねじ軸25の一端側は、型締ハウジング14に設けられている軸受によって回転自在に保持されている。一方、ねじ軸25の他端側は、クロスヘッド23に挿通されている。
【0033】
ボールねじ24のナット部材26は、部分的にクロスヘッド23に埋設され、クロスヘッド23と一体化している。また、ナット部材26は、ねじ軸25にねじ結合されている。別の見方をすると、ねじ軸25は、クロスヘッド23に埋設されているナット部材26を貫通している。
【0034】
尚、ねじ軸25とナット部材26との間には、複数のボール(転動体)27が配置されており、それらボール27は、ねじ軸25とナット部材26との間で無限循環する。
【0035】
ねじ軸25は、ギヤやベルト等を介して入力される駆動力によって回転駆動される。ねじ軸25が回転すると、ナット部材26がねじ軸25上をねじ軸25の長手方向(軸方向)に移動する。この結果、ナット部材26と一体化しているクロスヘッド23がねじ軸25の長手方向に移動する。つまり、ねじ軸25の回転運動がクロスヘッド23の直線運動に変換される。
【0036】
以下の説明では、クロスヘッド23を前進させるねじ軸25の回転方向を“正転方向”と定義し、クロスヘッド23を後退させるねじ軸25の回転方向を“逆転方向”と定義する。もっとも、かかる定義は説明の便宜上の定義に過ぎない。
【0037】
上記定義に従うと、
図3Aに示されているねじ軸25を正転させると、クロスヘッド23が前進し、型締ハウジング14から離反する。一方、
図3Bに示されているねじ軸25を逆転させると、クロスヘッド23が後退し、型締ハウジング14に近接する。
【0038】
別の見方をすると、ねじ軸25が回転すると、型締ハウジング14とクロスヘッド23との対向間隔Dが変化する。より特定的には、ねじ軸25が正転すると、型締ハウジング14とクロスヘッド23との対向間隔Dが増大する。一方、ねじ軸25が逆転すると、型締ハウジング14とクロスヘッド23との対向間隔Dが減少する。
【0039】
<カバー部材>
型締機構20は、ねじ軸25を収容する筒状のカバー部材40を備えている。カバー部材40は、ねじ軸25の長手方向の一部を収容する後方カバー部材50と、ねじ軸25の長手方向の他の一部(残部)を収容する前方カバー部材60と、を含んでいる。別の見方をすると、ねじ軸25は、後方カバー部材50及び前方カバー部材60によって覆われている。但し、後方カバー部材50によって覆われる部分と前方カバー部材60によって覆われる部分との比率は、クロスヘッド23の移動に伴って変化する。
【0040】
但し、ねじ軸25は、クロスヘッド23の位置にかかわらず、その全部がカバー部材40によって常に覆われ、ねじ軸25がカバー部材40の外に露出することはない。より特定的には、クロスヘッド23の後方(型締ハウジング側)に突出しているねじ軸25の一部は、常に後方カバー部材50によって覆われる。また、クロスヘッド23の前方(可動盤側)に突出しているねじ軸25の一部は、常に前方カバー部材60によって覆われる。
【0041】
以下の説明では、クロスヘッド23の後方に突出し、後方カバー部材50によって覆われているねじ軸25の一部を“後方突出部”と呼び、クロスヘッド23の前方に突出し、前方カバー部材60によって覆われているねじ軸25の他の一部を“前方突出部”と呼ぶ場合がある。既述のとおり、後方突出部および前方突出部の長さは、クロスヘッド23の移動に伴って変化する。
【0042】
<後方カバー部材>
後方カバー部材50は、型締ハウジング14とクロスヘッド23との間に配置されている。
図4は、後方カバー部材50を示す説明図である。本実施形態の後方カバー部材50は、樹脂製の蛇腹管である。後方カバー部材50の一端にはフランジ51が設けられ、他端にはフランジ52が設けられている。また、フランジ51とフランジ52との間には、複数の山部(凸部)53aと谷部(凹部)53bとが交互に設けられている。
【0043】
フランジ51は型締ハウジング14に固定され、フランジ52はクロスヘッド23に固定される。より特定的には、フランジ51は、クロスヘッド23と対向する型締ハウジング14の前面14fに固定される。フランジ52は、型締ハウジング14と対向するクロスヘッド23の背面23bに固定される。別の見方をすると、クロスヘッド23と対向している型締ハウジング14の一面が当該型締ハウジング14の前面14fである。また、型締ハウジング14と対向しているクロスヘッド23の一面が当該クロスヘッド23の背面23bである(
図3A,
図3B)。
【0044】
図5は、フランジ51が固定されている型締ハウジング14の前面14fの詳細を示す平面図である。
図6は、フランジ52が固定されているクロスヘッド23の背面23bの詳細を示す平面図である。フランジ51,52には、複数の貫通孔53が周方向に沿って形成されている。フランジ51は、それぞれの貫通孔53に挿通されたボルト54によって型締ハウジング14の前面14fに固定されている。また、フランジ52は、それぞれの貫通孔53に挿通されたボルト54によってクロスヘッド23の背面23bに固定されている。
【0045】
再び
図3A,
図3Bを参照する。一端が型締ハウジング14に固定され、他端がクロスヘッド23に固定された蛇腹管である後方カバー部材50は、クロスヘッド23の移動に伴って伸縮する。より特定的には、クロスヘッド23の移動に伴う型締ハウジング14とクロスヘッド23との対向間隔Dの変化に応じて後方カバー部材50の全長が伸縮する。
【0046】
例えば、ねじ軸25の正転によってクロスヘッド23が前進し、型締ハウジング14とクロスヘッド23との対向間隔Dが増大すると、後方カバー部材50が引き伸ばされる(
図3A→
図3B)。一方、ねじ軸25の逆転によってクロスヘッド23が後退し、型締ハウジング14とクロスヘッド23との対向間隔Dが減少すると、後方カバー部材50が押し縮められる(
図3B→
図3A)。
【0047】
図4に示されるように、フランジ51は円形または略円形であるのに対し、フランジ52は非円形である。より特定的には、フランジ52には2つの切欠き部55が設けられている。この結果、フランジ52がクロスヘッド23の背面23bに固定されると、クロスヘッド23と後方カバー部材50(フランジ52)との間に隙間56が生じる(
図6)。本実施形成では、切欠き部55によって形成されたそれぞれの隙間56を通して、ねじ軸25にグリスを供給するためのチューブ57が後方カバー部材50の内側に引き入れられている。つまり、切欠き部55は、ねじ軸25に供給される潤滑剤を輸送する管部材(チューブ57)を後方カバー部材50の内側に引き入れるための導入口(隙間56)を形成する。
【0048】
後方カバー部材50は、開閉可能である。より特定的には、後方カバー部材50には、ファスナー(ジッパー)58が設けられている。よって、ファスナー58を開いて内部(ねじ軸25)の状態などを確認することができる。また、型締機構20を分解することなく、後方カバー部材50だけを取り外すことや、交換することができる。
【0049】
本実施形態のファスナー58は、後方カバー部材50の胴部上にらせん状に設けられているが、ファスナー58は、例えば直線状に設けてもよい。また、ファスナー58とは異なる留め具を用いて後方カバー部材50を開閉可能としてもよい。さらに、後方カバー部材50に、フィルタ付きの通気孔が設けられる実施形態もある。
【0050】
<支持部材>
後方カバー部材50の内部には、支持部材70が設けられている。
図7は、後方カバー部材50内に配置されている支持部材70を模式的に示す断面図である。
図8は、後方カバー部材50内に配置されている支持部材70の一つを示す部分斜視図である。
【0051】
本実施形態では、複数の支持部材70が後方カバー部材50内に配置されている。より特定的には、三つの支持部材70が後方カバー部材50内に配置されている。それら支持部材70は、ねじ軸25の長手方向に一列に並んでいる。それぞれの支持部材70は、ねじ軸25が挿通される筒部71と、筒部71から径方向外側に拡がる板状の連結部72と、を含んでいる。
【0052】
連結部72は円形であって、その縁は後方カバー部材50の山部53aの内側に挿し込まれている。この結果、支持部材70の前後への移動が規制されている。また、山部53aの内側に挿し込まれている連結部72の縁は、後方カバー部材50に固定されている。連結部72の固定方法は特に限定されない。例えば、連結部72の縁は、後方カバー部材50にカシメ固定される。
【0053】
支持部材70は、後方カバー部材50の撓みや変形を防止する。特に、後方カバー部材50が伸びたときに、自重による後方カバー部材50の撓みが支持部材70によって効果的に防止される。別の見方をすると、後方カバー部材50とねじ軸25との干渉が効果的に防止される。
【0054】
支持部材70は、筒部71の径方向に分離可能な2つ以上の部材から構成されている。より特定的には、支持部材70は、筒部71の径方向に分離可能な一対の半割れ部材70a,70bによって構成されている。
【0055】
半割れ部材70a,70bは、後方カバー部材50が開かれると分離する。よって、支持部材70は、後方カバー部材50に固定されているが、後方カバー部材50の開閉を阻害するものではない。一方、半割れ部材70a,70bは、後方カバー部材50が閉じられると、合体して支持部材70を形成する。尚、ここでの“合体”とは、半割れ部材70a,70bが一体化するという意味ではない。ここでの“合体”とは、半割れ部材70a,70bの端面同士が突き合わされた状態や、ほぼ隙間なく対向した状態を意味する。
【0056】
支持部材70の数や間隔は、後方カバー部材50の長さや太さに応じて適宜変更することができる。また、支持部材70は省略することもできる。例えば、後方カバー部材50が自己の形状を保持可能な強度を備えている場合には、支持部材70を省略してもよい。
【0057】
<前方カバー部材>
再び
図3A,
図3Bを参照する。前方カバー部材60は、クロスヘッド23と可動盤15との間に配置される。前方カバー部材60は、ねじ軸25が出入り可能な内径を有する樹脂製の円筒管である。前方カバー部材60の一端(基端)は開口されており、前方カバー部材60の他端(先端)は閉塞されている。
【0058】
前方カバー部材60の基端はクロスヘッド23に固定されている。一方、前方カバー部材60の先端は何にも固定されていない。つまり、前方カバー部材60は片持ち支持されている。
【0059】
前方カバー部材60の基端は、クロスヘッド23の前面23f(背面23bと反対側のクロスヘッド23の一面)に、ボルトによって固定されている。また、前方カバー部材60は、クロスヘッド23に設けられているナット部材26と連通している。
【0060】
ねじ軸25,後方カバー部材50,ナット部材26及び前方カバー部材60の中心は、共通の直線上にある。言い換えれば、ねじ軸25,後方カバー部材50,ナット部材26及び前方カバー部材60は同軸である。
【0061】
クロスヘッド23に固定されている前方カバー部材60は、クロスヘッド23と一緒に前後に移動する。クロスヘッド23の移動に伴って当該クロスヘッド23の前方に突出したねじ軸25の一部は、前方カバー部材60によって覆われる。別の見方をすると、ねじ軸25の前方突出部が前方カバー部材60内に進入する。
【0062】
ねじ軸25の前方突出部の長さは、クロスヘッド23の移動に伴って変化(増減)する。具体的には、クロスヘッド23が後退すると前方突出部の長さが増加し、クロスヘッド23が前進すると前方突出部の長さが減少する。別の見方をすると、クロスヘッド23が後退すると、ねじ軸25の前方カバー部材60に対する進入長が増加し、クロスヘッド23が前進すると、ねじ軸25の前方カバー部材60に対する進入長が減少する。
【0063】
前方カバー部材60の全長は、クロスヘッド23が最も後退したときの前方突出部の長さよりも長い。よって、前方突出部の長さが最長になる位置までクロスヘッド23が後退しても、前方カバー部材60がねじ軸25に突き当たることはない。
【0064】
一方、前方カバー部材60の全長は、クロスヘッド23が最も前進したときの当該クロスヘッド23と可動盤15との対向間隔よりも短い。よって、前方突出部の長さが最短になる位置までクロスヘッド23が前進しても、前方カバー部材60が可動盤15に突き当たることはない。
【0065】
以上のように、本実施形態では、型締機構20を構成しているねじ軸25がカバー部材40によって常に覆われている。よって、型締機構20を含む型締装置2や、型締装置2を含む射出成形機1が悪環境下で使用された場合であっても、ねじ軸25の寿命が低下したり、ねじ軸25が早期に破損したりすることがない。例えば、ねじ軸25に付着した離型剤,バリ,樹脂粉その他の異物によってねじ軸25の寿命が低下したり、ねじ軸25が破損したりすることがない。
【0066】
また、カバー部材40(後方カバー部材50及び前方カバー部材60)が着脱式なので、ねじ軸25やナット部材26の保守が容易であり、カバー部材40の交換も容易である。特に、後方カバー部材50は開閉可能なので、後方カバー部材50を取り外すことなく、ねじ軸25やナット部材26を保守したり、点検したりすることができる。
【0067】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、後方カバー部材50や前方カバー部材60の形状,寸法,素材などは、適宜変更することができる。また、射出装置3は、型締装置2に取り付けられている金型11,12に溶融樹脂を注入する射出装置(樹脂射出装置)に置換することができる。
【0068】
上記実施形態では、型締装置2の操作側および反操作側に、リンクやボールねじが一組ずつ設けられていた。しかし、型締装置の中心に一組のリンクやボールねじが設けられる実施形態もある。また、型締機構を構成するリンクが操作側と反操作側とに分割されていない実施形態もある。
【符号の説明】
【0069】
1 射出成形機
2 型締装置
3 射出装置
4 ベッド
11,12 金型
13 固定盤
14 型締ハウジング
14f 前面
15 可動盤
16 タイバー
20 型締機構
21a,21b,21c 上側リンク
22a,22b,22c 下側リンク
23 クロスヘッド
23b 背面
23f 前面
25 ねじ軸
26 ナット部材
27 ボール
30 加熱シリンダ
31 射出ノズル
32 ノズルタッチ装置
33 ホッパ
34 スクリュ
40 カバー部材
50 後方カバー部材
51,52 フランジ
53 貫通孔
53a 山部
53b 谷部
54 ボルト
55 切欠き部
56 隙間
57 チューブ
58 ファスナー
60 前方カバー部材
70 支持部材
70a,70b 半割れ部材
71 筒部
72 連結部
D 対向間隔