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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121988
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】救急傷病者治療システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20230825BHJP
【FI】
G16H10/60
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025389
(22)【出願日】2022-02-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】591131408
【氏名又は名称】日本ビー・エックス・アイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511212240
【氏名又は名称】束原 幸俊
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 和雄
(72)【発明者】
【氏名】束原 幸俊
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】救急搬送の傷病者に対し、本人の過去の病歴に応じた治療を可能とすることにより、適切な傷病者の治療を短時間で可能とするシステムを提供する。
【解決手段】傷病者の保持する個人情報を読み出す個人情報読出手段と、個人情報に含まれるかかりつけ医情報を基に抽出されたかかりつけ医に対し傷病者の状態を通報する傷病者通報手段と、通報を受けてかかりつけ医が行う、自ら治療するか、現地の医師に治療を依頼するかの治療方針を、救急車に通告する治療方針通告手段と、治療方針が現地の医師に治療を依頼する方針である場合、現地の医師に治療を依頼する治療依頼手段と、個人毎の病歴を保存する病歴データベースと、現地の医師に治療を依頼する場合、個人情報を基に傷病者の病歴を抽出し、抽出された病歴を現地の医師に送信する病歴データ抽出・送信手段と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
救急車の隊員による操作を受けて、傷病者の保持する個人情報を読み出す個人情報読出手段と、
該個人情報読出手段にて読み出された個人情報に含まれるかかりつけ医情報を基に抽出されたかかりつけ医に対し、傷病者の状態を通報する傷病者通報手段と、
該傷病者通報手段による通報を受けてかかりつけ医が行う、自ら傷病者を治療するか、傷病者のいる現地の医師に治療を依頼するかの治療方針を、救急車に通告する治療方針通告手段と、
該治療方針通告手段により通告された治療方針が、傷病者のいる現地の医師に治療を依頼する方針である場合、救急車の隊員による操作を受けて現地の医師に治療を依頼する治療依頼手段と、
個人毎に予め登録された病歴をデータとして保存している病歴データベースと、
前記治療依頼手段により現地の医師に治療を依頼する場合、前記個人情報読出手段にて読み出された個人情報を基に、前記病歴データベースから傷病者の病歴データを抽出し、抽出された病歴データを、現地の医師に治療の参考データとして送信する病歴データ抽出・送信手段と、
を備える救急傷病者治療システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記個人情報読出手段で読み出される個人情報には、その時点における傷病者の心電図、心拍数、体温等の生体情報を含み、
前記傷病者通報手段による通報、及び前記治療依頼手段による依頼には、付加情報として前記生体情報を含む救急傷病者治療システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
傷病者が保持する個人情報には、傷病者の情報を受ける者として予め決められた家族情報を含み、 前記個人情報読出手段にて読み出された個人情報に含まれる家族情報を基に抽出された家族に対し、救急車の隊員による操作を受けて傷病者の状態とその所在地を通報する家族通報手段と、
該家族通報手段による通報を受けて家族が行う、傷病者の治療をかかりつけ医に依頼するか、傷病者のいる現地の医師に依頼するかの意向をかかりつけ医に伝達する家族意向伝達手段と、
を備える救急傷病者治療システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、
救急車の隊員により傷病者の所在地、並びに傷病の状態を入力する所在地・傷病状態入力手段と、
地域別、且つ傷病別に専門の医師名を保存している現地医師データベースと、
前記所在地・傷病状態入力手段により入力された傷病者の所在地、及び傷病者の状態を基に、前記現地医師データベースから現地で依頼可能な医師を抽出し、前記治療方針通告手段により通告される治療方針を決定するかかりつけ医に情報提供される現地医師抽出手段と、
を備える救急傷病者治療システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかにおいて、
前記治療方針通告手段により通告された治療方針が、かかりつけ医が自ら傷病者を治療する方針である場合、救急車の隊員による操作を受けて傷病者を搬送することをかかりつけ医に通知する搬送通知手段を備える救急傷病者治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救急傷病者治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、対象者の生体情報に異常を検出したとき、本人に警報し、更にセンターに対象者の位置やユーザーIDを連絡するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-269662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本人に意識がない場合、対象者の異常と所在地などの情報がセンターに通報されるが、センターがそれらの通報を受けてから対象者に適切な治療を開始するまでには更に時間を要する。
【0005】
本発明の課題は、救急搬送の傷病者に対し、本人の過去の病歴に応じた治療を可能とすることにより、救急傷病者に対し、適切な治療を短時間で可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の救急傷病者治療システムは、個人毎に予め決められたかかりつけ医をデータとして保存しているかかりつけ医データベースと、救急車の隊員による操作を受けて、傷病者の保持する個人情報を読み出す個人情報読出手段と、該個人情報読出手段にて読み出された個人情報を基に、前記かかりつけ医データベースから傷病者のかかりつけ医を抽出するかかりつけ医抽出手段と、該かかりつけ医抽出手段にて抽出されたかかりつけ医に対し、傷病者の状態を通報する傷病者通報手段と、該傷病者通報手段による通報を受けてかかりつけ医が行う、自ら傷病者を治療するか、傷病者のいる現地の医師に治療を依頼するかの治療方針を、救急車に通告する治療方針通告手段と、該治療方針通告手段により通告された治療方針が、傷病者のいる現地の医師に治療を依頼する方針である場合、救急車の隊員による操作を受けて現地の医師に治療を依頼する治療依頼手段と、個人毎に予め登録された病歴をデータとして保存している病歴データベースと、前記治療依頼手段により現地の医師に治療を依頼する場合、前記個人情報読出手段にて読み出された個人情報を基に、前記病歴データベースから傷病者の病歴データを抽出し、抽出された病歴データを、現地の医師に治療の参考データとして送信する病歴データ抽出・送信手段と、を備える。
【0007】
第1発明によれば、旅行中、又は外出中に病気やケガをした傷病者がいるとき、救急車で傷病者が保持する個人情報に基づいてかかりつけ医が明らかとされる。かかりつけ医は、救急車からの通報を受けて、状況に応じた適切な治療方針を決定する。この治療方針を受けて救急車は、かかりつけ医か現地医師に向けて傷病者を搬送する。現地医師の治療を受ける際は、現地医師に対して傷病者の過去の病歴データが送られる。そのため、傷病者は、旅行中や外出中でもかかりつけ医の判断を受けて、無駄な時間を費やすことなく適切な治療を受けることができる。
【0008】
第2発明は、上記第1発明において、前記個人情報読出手段で読み出される個人情報には、その時点における傷病者の心電図、心拍数、体温等の生体情報を含み、前記傷病者通報手段による通報、及び前記治療依頼手段による依頼には、付加情報として前記生体情報を含む。
【0009】
第2発明によれば、傷病者通報手段によるかかりつけ医への通報には傷病者のその時点における生体情報が含まれる。また、治療依頼手段による現地の医師への治療依頼にも傷病者の生体情報が含まれる。そのため、かかりつけ医による治療方針の決定、並びに現地の医師による治療に生体情報を活用することができる。
【0010】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、通報を受ける家族として個人毎に予め登録された家族をデータとして保存している家族データベースと、前記個人情報読出手段にて読み出された個人情報を基に、前記家族データベースから通報を受ける家族を抽出する家族抽出手段と、該家族抽出手段にて抽出された家族に対し、救急車の隊員による操作を受けて傷病者の状態とその所在地を通報する家族通報手段と、該家族通報手段による通報を受けて家族が行う、救急傷病者の治療をかかりつけ医に依頼するか、救急傷病者のいる現地の医師に依頼するかの意向をかかりつけ医に伝達する家族意向伝達手段と、を備える。
【0011】
第3発明によれば、傷病者の治療を、かかりつけ医に依頼するか、現地の医師に依頼するかの家族の意向がかかりつけ医に伝達される。そのため、かかりつけ医は、家族の意向を踏まえて治療方針を決定することができる。
【0012】
第4発明は、上記第1~第3発明のいずれかにおいて、救急車の隊員により傷病者の所在地、並びに傷病の状態を入力する所在地・傷病状態入力手段と、地域別、且つ傷病別に専門の医師名を保存している現地医師データベースと、前記所在地・傷病状態入力手段により入力された傷病者の所在地、及び傷病者の状態を基に、前記現地医師データベースから現地で依頼可能な医師を抽出し、前記治療方針通告手段により通告される治療方針を決定するかかりつけ医に情報提供される現地医師抽出手段と、を備える。
【0013】
第4発明によれば、かかりつけ医が治療方針を決定するに当たり、現地の医師の情報を参照することができる。そのため、かかりつけ医による治療方針の決定を適切に行うことができる。
【0014】
第5発明は、上記第1~第4発明のいずれかにおいて、前記治療方針通告手段により通告された治療方針が、かかりつけ医が自ら救急傷病者を治療する方針である場合、救急車の隊員による操作を受けて傷病者を搬送することをかかりつけ医に通知する搬送通知手段を備える。
【0015】
第5発明によれば、かかりつけ医により決定された治療方針が自ら治療を行う方針である場合、搬送通知手段により傷病者が搬送されることが通知される。そのため、かかりつけ医は、傷病者を受け入れるための準備を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態のシステム構成図である。
図2】一実施形態の機能ブロック図である。
図3】一実施形態の救急車に搭載のコンピュータのプログラム内容を示すフローチャートである。
図4】一実施形態の家族が保有するコンピュータのプログラム内容を示すフローチャートである。
図5】一実施形態のかかりつけ医が保有するコンピュータのプログラム内容を示すフローチャートである。
図6】一実施形態の現地の医師が保有するコンピュータのプログラム内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<一実施形態のシステム構成>
図1は、救急傷病者治療システムの一実施形態のシステム構成を示す。このシステムを利用する個人は、体内植込型マイクロチップ(以下、単にチップという)10を体内に植え込んでいる。チップ10は、体内に植え込むものではなく、携帯型のメモリ、若しくは体表装着型センサとされてもよい。体表装着型センサは、例えば、接着剤により体表に接着して使用されるセンサ、若しくはベルトにより体表に固定して使用されるセンサである。チップ10には、個人情報とその時点及びそれ以前の所定期間(例えば、1時間程度)における生体情報が格納されている。個人情報は、任意に体外で操作される情報書換器(図示略)により必要が生じた都度書き換えられる。また、生体情報は、体内植込型、若しくは体表装着型のバイタルセンサ(図示略)からの検出信号を受けて書き換えられる。個人情報及び生体情報の一例は、次のようなものである。
【0018】
<個人情報例>
健康情報系:マイナンバ、健康診断記録、健康保険証情報、自動車運転免許証情報、かかりつけ医情報、家族情報、病歴、投薬歴等
その他情報:パスポート情報、ビザ情報、セミナー受講歴、犯罪歴、誘拐犯歴、武器所有歴、認知症歴、ドローン運転免許情報、国籍(皮膚の色、頭髪の色、眼球の色)、位置情報(GPSによる)等
【0019】
<生体情報例>
心電図、心拍数、体温、血圧、SPO2(酸素飽和度)等
【0020】
このように各個人がチップ10を保持することにより、外出先や旅行先で病気やケガで傷病者Pとなった各個人が、仮に意識のない状態となっても、情報読取器を持った救護者は、容易にその個人を特定することができる。そのため、傷病者Pを受け入れ、病院へ搬送する救急車2は、チップ10に格納された情報を読み取る読取器(図示略)を備える。また、チップ10内に位置情報及び緊急時通信機能が含まれていれば、傷病者Pが遭難者、被災者である場合に遭難場所、被災場所を特定することができる。傷病者Pが離島、僻地等にいる場合も、その場所を特定することができる。しかも、その場所にウェブ環境があればウェブ診療を行うことができる。救急車2は、移動体通信及び無線LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)によりコンピュータネットワーク12に接続可能とされている。コンピュータネットワーク12には、複数の医師4、6及び家庭5のコンピュータ(図示略)がLAN接続されている。複数の医師4、6及び家庭5は、救急傷病者治療システムを利用するとして予め登録した登録者である。また、コンピュータネットワーク12には、データセンタ8がLAN接続されている。データセンタ8の記憶装置には、各個人情報(特に、マイナンバ)に対応して病歴(投薬歴を含む)を特定する情報が検査結果と共に予め格納されており、個人情報から各個人の病歴等を読み出すことができるようにされている。検査結果には、生理学的検査(心電図、血圧、心拍数、SPO2、体温等)、血液検査(血液学的検査、生化学検査等)、画像検査(X線検査、MRI検査、超音波診断結果、陽子線治療(PBT)結果)等を含む。病歴にはAI分析の結果も含まれる。また、データセンタ8の記憶装置には、各地域別に各傷病の専門医が予め格納されており、傷病者Pの所在地と傷病の状態から傷病者Pの所在地における専門医を選出することができるようにされている。各地域としては、国内に限定されず、海外も含まれる。救急車2は、救急病院であってもよい。
【0021】
<一実施形態の機能>
図2は、機能ブロックにより救急傷病者治療システムの機能を示す。図2のように、救急車2における個人情報・生体情報読出手段では、チップ10に格納されている個人情報及び生体情報を救急車2の隊員によって操作される読取器によって読み出す。個人情報・生体情報読出手段によって読み出された個人情報に含まれる家族情報に基づいて、傷病者Pの家族が抽出される。この家族は、傷病者Pとなった個人が通報を受ける家族として予め登録した家族である。同様に、個人情報・生体情報読出手段によって読み出された個人情報に含まれるかかりつけ医情報に基づいて、傷病者Pのかかりつけ医が抽出される。このかかりつけ医は、傷病者Pとなった個人が予め登録したかかりつけ医である。かかりつけ医に代えて傷病者Pとなった個人が予め契約した病院とされてもよい。更に、個人情報・生体情報読出手段によって読み出された個人情報に基づいて、病歴データ抽出・送信手段では、データセンタ8の記憶装置に格納されている病歴データベースから傷病者Pの病歴データが検査結果と共に抽出される。この病歴データは、傷病者Pとなった個人が過去に診断治療を受けた医師によるカルテのデータである。この病歴データは、後述のように現地の医師に送信される。
【0022】
また、所在地・傷病状態入力手段では、傷病者Pの所在地と傷病の状態が救急車2の隊員によって入力される。所在地・傷病状態入力手段によって入力された傷病者Pの所在地と傷病の状態の情報に基づいて、現地医師抽出手段では、データセンタ8の記憶装置に格納されている現地医師データベースから傷病者Pの所在地において傷病の診断・治療が可能な専門医が抽出される。ここでは、最終的に治療を依頼できる可能性を高めるために複数の医師が抽出される。
【0023】
家族通報手段では、個人情報・生体情報読出手段によって読み出された家族に向けて、個人情報・生体情報読出手段によって読み出された個人情報、並びに所在地・傷病状態入力手段によって入力された傷病者Pの所在地と傷病の状態が通報される。この通報を受けて、家族は傷病者Pの治療をかかりつけ医に依頼したいか、傷病者Pのいる現地の医師に依頼したいかの意向を家族意向伝達手段にてかかりつけ医に向けて伝達する。一方、傷病者通報手段では、個人情報・生体情報読出手段によって読み出されたかかりつけ医に向けて、所在地・傷病状態入力手段によって入力された傷病者Pの所在地と傷病の状態が通報される。併せて、傷病者通報手段では、個人情報・生体情報読出手段によって読み出された生体情報もかかりつけ医に向けて通報される。この通報を受けて、かかりつけ医は傷病者Pの治療をかかりつけ医が自ら行うか、傷病者Pのいる現地の医師に依頼するかの方針を治療方針通告手段にて救急車2の隊員に向けて通告する。治療方針を決定するに当たり、かかりつけ医は傷病者通報手段によって通報される情報の他、現地医師抽出手段によって抽出された現地医師の情報、並びに家族意向伝達手段によって伝達される治療方針に関する家族の意向も参照することができる。
【0024】
搬送通知手段では、治療方針通告手段にて通告された治療方針が傷病者Pの治療をかかりつけ医が自ら行うとの方針の場合、救急車2からかかりつけ医4に向けて傷病者Pを搬送することを通知する。一方、治療依頼手段では、治療方針通告手段にて通告された治療方針が傷病者Pのいる現地の医師に依頼するとの方針の場合、救急車2から現地の医師6に向けて傷病者Pの治療を依頼する。この治療依頼には、個人情報・生体情報読出手段により読み出された生体情報、並びに所在地・傷病状態入力手段から傷病者Pの傷病の状態の情報も送信される。また、現地の医師6には、上述のように病歴データ抽出・送信手段から治療を依頼された傷病者Pの過去の検査結果、投薬歴等を含む病歴データが治療のための参考データとして提供される。そのため、現地の医師6は、傷病者Pの所在地の近くで、無駄な時間を費やすことなく適切な治療を施すことができる。なお、現地の医師6は、必要に応じてかかりつけ医4に対し、傷病者Pの治療に関するセカンドオピニオンを要求可能に構成することもできる。
【0025】
<救急車のコンピュータの処理内容>
図3は、図2で説明した機能を実現するため、救急車2に搭載のコンピュータが行う処理プログラムの内容を示す。ステップS2では、救急車2の隊員により傷病者Pのチップ10から読み出された個人情報及び生体情報を取り込む。ステップS2で取り込まれた個人情報には家族情報、及びかかりつけ医情報が含まれている。ステップS8では、ステップS2で取り込まれた個人情報に基づいて病歴データベースから病歴データを抽出する。
【0026】
ステップS9では、救急車2の隊員により入力された傷病者Pの所在地及び傷病の状態の情報を取り込む。次のステップS10では、ステップS9で取り込まれた傷病者Pの所在地及び傷病の状態の情報に基づいて、現地医師データベースから傷病者Pの所在地の近くで、当該傷病の診断・治療が可能な専門医を複数人選出する。
【0027】
ステップS12では、ステップS4で抽出された家族に向けて傷病者Pの情報を通報する。通報の内容は、ステップS2で取り込まれた個人情報、並びにステップS9で取り込まれた傷病者Pの所在地、及び傷病の状態である。ステップS12では、治療方法に関する家族の希望も問い合わせている。
【0028】
次のステップS14では、ステップS2で取り込まれたかかりつけ医に向けて傷病者Pの情報を通報する。通報の内容は、ステップS2で取り込まれた個人情報及び生体情報、並びにステップS9で取り込まれた傷病者Pの所在地、及び傷病の状態である。また、ステップS10で選出された現地の医師の名前も通報内容の一つとされる。ステップS14では、治療方針に関する問い合わせも行っている。
【0029】
ステップS20では、ステップS14における治療方針の問合せに対してかかりつけ医により治療方針が通告されたか否かが判定される。治療方針が通告されてステップS20が肯定判断されると、ステップS22にて治療方針の内容が判定される。治療方針がかかりつけ医で治療を行う方針の場合は、ステップS24にてかかりつけ医に向けて傷病者Pを搬送することが通知される。また、治療方針が現地の医師に治療を依頼する方針の場合は、ステップS26にて現地の医師の一人である第1の医師へ治療依頼を送信する。現地の医師は、ステップS10にて選出された複数人の医師の中から選択される。第1の医師への治療依頼には、ステップS2にて取り込まれた生体情報、並びにステップS9にて取り込まれた傷病の状態が参考情報として送信される。
【0030】
ステップS26による治療の依頼に対し、第1の医師の意向が示されると、ステップS28にてその意向の内容が判定される。第1の医師の意向が依頼を受け入れるものである場合は、ステップS40にて第1の医師に向けて傷病者Pを搬送する旨を通知する。一方、ステップS28の判定の結果、第1の医師の意向が依頼を受け入れず拒否するものである場合は、ステップS30にて、ステップS10で選出された複数人の医師の中から現地の医師の一人であり、第1の医師とは別の第2の医師へ治療依頼を送信する。第2の医師への治療依頼には、第1の医師に対する場合と同様、生体情報、並びに傷病の状態が送信される。
【0031】
ステップS30による治療の依頼に対し、第2の医師の意向が示されると、ステップS32にてその意向の内容が判定される。第2の医師の意向が依頼を受け入れるものである場合は、上述のステップS40にて第2の医師に向けて傷病者Pを搬送する旨を通知する。一方、ステップS32の判定の結果、第2の医師の意向が依頼を受け入れず拒否するものである場合は、ステップS34にて、ステップS10で選出された複数人の医師の中から現地の医師の一人であり、第1及び第2の医師とは別の第3の医師へ治療依頼を送信する。第3の医師への治療依頼には、第1、第2の医師に対する場合と同様、生体情報、並びに傷病の状態が送信される。
【0032】
ステップS34による治療の依頼に対し、第3の医師の意向が示されると、ステップS36にてその意向の内容が判定される。第3の医師の意向が依頼を受け入れるものである場合は、上述のステップS40にて第3の医師に向けて傷病者Pを搬送する旨を通知する。一方、ステップS36の判定の結果、第3の医師の意向が依頼を受け入れず拒否するものである場合は、ステップS10で選出された複数人の医師の中から第4の医師、第5の医師に向けて順次同様の処理が繰り返される。現地の医師への治療の依頼がいずれも受け入れられない場合は、ステップS38にてかかりつけ医に治療依頼を行う。
【0033】
上述のように現地の医師への治療の依頼が受け入れられ、ステップS40にて搬送通知が行われた後は、ステップS42にてステップS8にて抽出された傷病者Pの過去の病歴データが治療依頼の受入を表明した現地の医師に対して送信される。
【0034】
<家族のコンピュータの処理内容>
図4は、図2で説明した機能を実現するため、家庭5が所有するコンピュータで行われる処理プログラムの内容を示す。ステップS50では、図3のステップS12による救急通報の有無が確認される。ステップS50にて救急通報があったと確認されると、ステップS52にて傷病者Pの傷病発生の状態が表示される。このとき、ステップS12にて送信された個人情報、傷病者Pの所在地、及び傷病の状態が表示される。また、ステップS54では、ステップS12にて送信された治療方法の問合せを受信し表示する。ステップS56では、ステップS54の問合せに対し、治療方法に関する家族の意向を送信する。
【0035】
<かかりつけ医のコンピュータの処理内容>
図5は、図2で説明した機能を実現するため、かかりつけ医4が所有するコンピュータで行われた処理プログラムの内容を示す。ステップS60では、図3のステップS14による救急通報の有無が確認される。ステップS60にて救急通報があったと確認されると、ステップS62にて傷病者Pの傷病発生の状態が表示される。このとき、ステップS14にて送信された個人情報、生体情報、傷病者Pの所在地、及び傷病の状態が表示される。また、ステップS63では、ステップS14にて送信された治療方針の問合せを受信し表示する。
【0036】
ステップS64では、治療方法に関する家族の意向を受信したか否かが判定される。図4のステップS56による家族の意向を受信するとステップS64が肯定判断され、ステップS66にて家族の意向が表示される。また、ステップS68では、ステップS10で選出された現地の医師名が表示される。ステップS70では、かかりつけ医が治療方針を決定したか否かが判定される。治療方針が決定され、ステップS70が肯定判断されると、ステップS72にて救急車2に向けて治療方針が送信される。ステップS74では、図3のステップS24における搬送通知を受信したか否かが判定される。搬送通知を受信し、ステップS74が肯定判断されると、ステップS76にて搬送通知を表示する。この表示により、かかりつけ医は、搬送されてくる傷病者Pの受入準備を行うことができる。
【0037】
<現地の医師のコンピュータの処理内容>
図6は、図2で説明した機能を実現するため、現地の医師6が所有するコンピュータで行われる処理プログラムの内容を示す。ステップS80では、図3のステップS26、S30、S34にて送信された治療依頼を受信したか否かが判定される。治療依頼を受信すると、ステップS80が肯定判断され、ステップS82にて治療依頼を表示する。ステップS84では、現地の医師が治療依頼を受け入れるのか否かが判定される。治療依頼を受け入れない場合は、ステップS84は否定判断され、ステップS86にて救急車2に向けて拒否の回答を行う。治療依頼を受け入れる場合は、ステップS84は肯定判断され、ステップS88にて救急車2に向けて受入の回答を行う。
【0038】
ステップS88にて受入の回答を行った後は、ステップS90にて図3のステップS40による搬送通知を受信したか否かを判定する。搬送通知を受信すると、ステップS90は肯定判断され、ステップS92にて搬送通知を表示する。また、ステップS94では、図3のステップS42による病歴データの送信を受信したか否かを判定する。病歴データを受信すると、ステップS94は肯定判断され、ステップS96にて病歴データを表示する。
【0039】
図3~6の処理において、ステップS2の処理は、本発明の個人情報読出手段に相当し、ステップS14の処理は、本発明の傷病者通報手段に相当し、ステップS72の処理は、本発明の治療方針通告手段に相当し、ステップS26、S30、S34の処理は、本発明の治療依頼手段に相当し、ステップS8、S42の処理は、本発明の病歴データ抽出・送信手段に相当し、ステップS12の処理は、本発明の家族通報手段に相当し、ステップS56の処理は、本発明の家族意向伝達手段に相当し、ステップS9の処理は、本発明の所在地・傷病状態入力手段に相当し、ステップS10の処理は、本発明の現地医師抽出手段に相当し、ステップS24の処理は、本発明の搬送通知手段に相当する。
【0040】
<一実施形態の作用、効果>
上記実施形態の救急傷病者治療システムによれば、旅行中、又は外出中に病気やケガをした傷病者Pがいるとき、救急車2で傷病者Pが保持する個人情報に基づいてかかりつけ医4が明らかとされる。かかりつけ医4は、救急車2からの通報を受けて、状況に応じた適切な治療方針を決定する。即ち、かかりつけ医4は、傷病者Pの所在地、傷病の状態、現地の医師6の存在を総合判断して、かかりつけ医4が自ら治療を行うか、現地の医師6に治療を依頼するかの治療方針を決定することができる。この治療方針を受けて救急車2は、かかりつけ医4か現地医師6に向けて傷病者Pを搬送する。現地医師6の治療を受ける際は、現地医師6に対して傷病者Pの過去の病歴データが送られる。そのため、傷病者Pは、旅行中や外出中でもかかりつけ医4の判断を受けて、無駄な時間を費やすことなく適切な治療を受けることができる。
【0041】
<その他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、傷病者の個人情報と共に生体情報も読み出して生体情報をかかりつけ医及び現地の医師に提供するようにしたが、生体情報の扱いはなしとしてもよい。上記実施形態では、かかりつけ医が治療方針を決定するに当たって、家族の意向を参考にするものとしたが、このような家族の関わりはなしとしてもよい。上記実施形態では、現地の医師をデータベースから抽出するようにしたが、救急車の隊員がマニュアル作業で選択して決定してもよい。上記実施形態では、現地の医師を複数人選出するようにしたが、一人のみ選出してもよい。上記実施形態では、かかりつけ医及び現地の医師に傷病者の搬送を通知するものとしたが、この通知は割愛してもよい。
【符号の説明】
【0042】
2 救急車
4 かかりつけ医
5 家庭
6 現地の医師
8 データセンタ
10 体内植込型マイクロチップ
12 コンピュータネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6