IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-計量機構及び薬液合成装置 図1
  • 特開-計量機構及び薬液合成装置 図2
  • 特開-計量機構及び薬液合成装置 図3
  • 特開-計量機構及び薬液合成装置 図4
  • 特開-計量機構及び薬液合成装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122008
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】計量機構及び薬液合成装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 23/00 20060101AFI20230825BHJP
   G01N 9/04 20060101ALI20230825BHJP
   G01G 17/04 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
G01G23/00 F
G01N9/04
G01G17/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025421
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 喜代司
(57)【要約】
【課題】チャンバ部内の使用環境に影響されることなくチャンバ部に配置される計量容器内の薬液を精度よく計量することができる計量機構及び薬液合成装置を提供する。
【解決手段】液体を計量するための計量機構であって、液体を貯留可能な計量容器と、前記計量容器を非接触で収容するチャンバ部と、前記計量容器の重量を計測する重量センサと、を備え、前記重量センサは、前記チャンバ部の外部に配置されており、前記計量容器と前記重量センサとが前記計量容器の重量変化を伝達するアーム部で接続されており、前記アーム部には、前記計量容器の重量が変化する方向に変位可能に形成される封止カバー材が設けられ、この封止カバー材により前記アーム部と前記チャンバ部とで形成される隙間が封止されている構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を計量するための計量機構であって、
液体を貯留可能な計量容器と、
前記計量容器を非接触で収容するチャンバ部と、
前記計量容器の重量を計測する重量センサと、
を備え、
前記重量センサは、前記チャンバ部の外部に配置されており、前記計量容器と前記重量センサとが前記計量容器の重量変化を伝達するアーム部で接続されており、前記アーム部には、前記計量容器の重量が変化する方向に変位可能に形成される封止カバー材が設けられ、この封止カバー材により前記重量センサが前記チャンバ部の環境と縁切りされていることを特徴とする計量機構。
【請求項2】
前記封止カバー材は、金属製伸縮部材であることを特徴とする請求項1に記載の計量機構。
【請求項3】
前記アーム部は、前記重量センサ側に接続され、鉛直方向に延びるセンサ側支柱部材と、前記計量容器側に接続され鉛直方向に延びる容器側支柱部材とを有しており、前記センサ側支柱部材と前記容器側支柱部材とが球体ジョイントで接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の計量機構。
【請求項4】
前記アーム部は、前記計量容器に対して鉛直方向に見て120°間隔で設けられており、それぞれの前記アーム部に接続される前記重量センサは、それぞれ独立して設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の計量機構。
【請求項5】
前記請求項1~4のいずれかに記載の計量容器と、液体である薬液を反応させる反応容器とが接続されており、計量後の薬液が順次配管を通じて前記反応容器に送液されることにより、前記反応容器内で薬液同士を合成反応させることを特徴とする薬液合成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気に触れることなく送液される液体を計量する計量機構、及び、計量後の液体である薬液を反応させる薬液合成装置に関するものであり、使用環境が計量機器に与える影響を抑えることができる計量機構及び薬液合成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、ペプチド、ポリマー、核酸等を化学合成する薬液合成装置では、複数の薬液(試薬)を反応容器部に供給し化学合成が行われる。例えば、核酸を合成する場合には、反応容器部内に担体(多孔質のビーズ。)を多数設け、この反応容器部に薬液を順次供給しながら、脱トリチル化、カップリング、酸化、キャッピング等の処理を繰り返し行って担体に塩基を次々に結合させる。
【0003】
このような薬液合成装置は、例えば図5に示すように、薬液を収容する収容容器100と、収容容器100から供給された薬液を計量する計量機構101と、計量後の薬液を化学合成させる反応容器102と、を備えている。この計量機構101には、収容容器100から送液された薬液を一時的に収容する計量容器103と、計量容器103に供給された薬液の重量を計測する重量センサ(例えばロードセル)104が設けられており、計量容器103及び重量センサ104は、大気との接触を避けられるようにチャンバ部105内に収容されている。そして、計量容器103は、重量センサ104により計量容器103内の薬液の重量が計測されるため、配管106は、計量容器103と非接触に構成されており、計量容器103の収容口は解放されている。すなわち、収容容器100の薬液は、大気に触れることなく配管106を通じて計量容器103に送液され、送液された薬液のみがチャンバ部105内の計量容器103で計量されるようになっている。
【0004】
そして、収容容器100から薬液が送液され計量容器103に貯留されると、薬液が重量センサ104により計量され、所定の重量になると送液が停止される。そして、計量された薬液は、チャンバ部105が加圧されることにより計量容器103に貯留された薬液が加圧され、配管107を通じて反応容器102に送液される。これにより、反応容器102には、正確に計量された薬液が順次供給されることにより、薬液を浪費することなく化学合成が行われ、担体に塩基を次々に結合させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-167158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記薬液合成装置では、計量機器である重量センサ104が正常に動作せず、計量を精度よく行うことができない可能性があるという問題があった。すなわち、重量センサ104は精密機器であるため、使用環境により誤作動を起こすことがある。ところが、チャンバ部105は、計量容器103への薬液供給時と、反応容器102への薬液送液時では圧力が大きく変化することに加え、大気圧とは異なる圧力環境となる。そのため、チャンバ部105内の重量センサ104は、動作が保証された大気圧とは異なる圧力環境下で使用されることになる。
【0007】
また、計量容器103が解放されておりチャンバ部105は密閉空間であるため、重量センサ104は送液される薬液による薬液雰囲気に曝されることになる。汎用の重量センサ104では、このような環境で使用されることが想定されておらず、このような環境で使用すると、常に正常に動作するという保証ができず、計量精度の低下につながる虞があるという問題がある。
【0008】
一方、重量センサ104に、このような環境に使用できる耐圧性、耐薬品性を求めると非常に高価となり、薬液合成装置全体のコストが高くなってしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、チャンバ部内の使用環境に影響されることなくチャンバ部に配置される計量容器内の薬液を精度よく計量することができる計量機構及び薬液合成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の計量機構は、液体を計量するための計量機構であって、液体を貯留可能な計量容器と、前記計量容器を非接触で収容するチャンバ部と、前記計量容器の重量を計測する重量センサと、を備え、前記重量センサは、前記チャンバ部の外部に配置されており、前記計量容器と前記重量センサとが前記計量容器の重量変化を伝達するアーム部で接続されており、前記アーム部には、前記計量容器の重量が変化する方向に変位可能に形成される封止カバー材が設けられ、この封止カバー材により前記重量センサが前記チャンバ部の環境と縁切りされていることを特徴としている。
【0011】
上記計量機構によれば、計量容器が収容されるチャンバ部の外部に重量センサが配置されているため、重量センサがチャンバ部内の環境の影響を受けずに動作することができる。すなわち、計量容器がチャンバ部内に非接触で収容され、その計量容器とチャンバ部の外側に配置される重量センサとがアーム部で接続される。また、アーム部には、封止カバー材が取り付けられており、この封止カバー材によりアーム部とチャンバ部とで形成される隙間が封止カバー材で封止され、重量センサがチャンバ部と縁切りされる。これにより、チャンバ部内の環境が維持されるともに、チャンバ部の環境が重量センサと縁切りされるため、チャンバ部の環境が重量センサに影響することを抑えることができ、継続的に重量センサを正常に動作させることができる。したがって、チャンバ部内の使用環境に影響されることなくチャンバ部に配置される計量容器内の薬液を精度よく計量することができる。
【0012】
また、上記封止カバー材の具体的な態様としては、前記封止カバー材は、金属製伸縮部材とすることができる。
【0013】
また、前記アーム部は、前記重量センサ側に接続され、鉛直方向に延びるセンサ側支柱部材と、前記計量容器側に接続され鉛直方向に延びる容器側支柱部材とを有しており、前記センサ側支柱部材と前記容器側支柱部材とが球体ジョイントで接続されている構成にしてもよい。
【0014】
この構成によれば、計量容器内に貯留される液体の重量により重量センサが微少に変位した場合、重量センサが傾くことで発生する微小な芯ずれを球体ジョイントが吸収することができる。したがって、アーム部を1本の支柱部材にした場合に比べて、外乱負荷となる支柱の曲がり変形による力が発生しないため、重量センサに計測誤差が生じるのを抑えることができる。
【0015】
また、前記アーム部は、前記計量容器に対して鉛直方向に見て120°間隔で設けられており、それぞれの前記アーム部に接続される前記重量センサは、それぞれ独立して設けられている構成にしてもよい。
【0016】
この構成によれば、アーム部で計量容器を3点で支持することができるため、安定して支持することができる。
【0017】
上記課題を解決するために本発明の薬液合成装置は、上記いずれかに記載の計量容器と、液体である薬液を反応させる反応容器とが接続されており、計量後の薬液が順次配管を通じて前記反応容器に送液されることにより、前記反応容器内で薬液同士を合成反応させることを特徴としている。
【0018】
計量容器の計量が継続して精度よく行われるため、正確に計量された薬液により合成反応を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の計量機構及び薬液合成装置によれば、チャンバ部内の使用環境に影響されることなくチャンバ部に配置される計量容器内の薬液を精度よく計量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の薬液合成装置の概略的な配管経路図である。
図2】上記薬液合成装置の計量機構の図である。
図3】上記計量機構のアーム部を示す図であり、(a)はセンサ側支柱部材と容器側支柱部材が一方向に並ぶ姿勢を示す図、(b)はセンサ側支柱部材が可動部に追従し球体ジョイントを中心に変位した状態を示す図である。
図4】計量容器とアーム部との位置関係を示す図であり、(a)は、封止カバー材がアーム部に取り付けられた構成を示す図、(b)は他の実施形態において、封止カバー材がアーム部の内径側と外径側に配置された構成を示す図である。
図5】従来の薬液合成装置及び計量機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の計量機構及び薬液合成装置に係る実施の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態における計量機構を備える薬液合成装置を示す配管経路図である。なお、本実施形態では、液体として薬液(試薬)が用いられる例を説明するが、本発明は薬液に限定されるものではなく、薬液以外の液体を化学合成、混合等行う場合にも適用することができる。
【0023】
図1に示すように、薬液合成装置は、薬液が貯留される収容容器1と、薬液を計量する計量機構2と、計量機構2で計量された薬液を収容し化学合成させる反応容器3と、反応容器3から排出された薬液を貯留する排液タンク4とを備えており、それぞれ配管5で接続されている。そして、反応に必要な所定の薬液が計量機構2に送液されることにより計量機構2で正確に計量され、計量された薬液を反応容器3に順次供給することにより、脱トリチル化、カップリング、酸化、キャッピング等の処理を繰り返し行ってビーズ(担体ともいう)に塩基を次々に結合させる。これにより、薬液を無駄にすることなく、所望の塩基を形成することができる。
【0024】
収容容器1は、化学合成で用いる試薬を貯留するためのものである。収容容器1は、複数設けられており、図1の例では、2つの収容容器1のみが記載されているが、実際には多数の収容容器1が設けられている。そして、それぞれの収容容器1は、薬液送液配管5aにより計量機構2と連結されている。
【0025】
また、収容容器1には、図示しない加圧手段(工場のガス源、ガスボンベ等)が接続されており、この加圧手段により収容容器1の圧力が調節されることにより薬液が送液されるようになっている。すなわち、加圧手段により収容容器1にガスが供給されると、収容容器1が加圧され薬液送液配管5aを通じて薬液が計量機構2に送液される。そして、薬液送液配管5aにはバルブVaが設けられており、バルブVaの開閉状態を切り替えることにより、複数の収容容器1から選択された薬液のみを反応容器3に送液できるようになっている。なお、加圧手段のガスは、収容容器1の薬液と反応しないガス(例えば、不活性ガス、アルゴンガス等)が用いられている。
【0026】
また、収容容器1の下流側には、計量機構2が設けられている。計量機構2は、供給された薬液を計量するものである。計量機構2は、薬液を計量するための計量容器21が備えられており、計量容器21と薬液送液配管5aとが非接触で接続されている。この計量容器21には、計量後の薬液を送液するための送液配管5bが接続されており、送液配管5bを通じて薬液が反応容器3に送液できるようになっている。すなわち、計量機構2において計量された薬液は、配管5bを通じて反応容器3に送液されるようになっている。
【0027】
また、反応容器3は、供給された薬液等を接触させて化学合成させる反応場を提供するものである。反応容器3は、一方向に延びる円筒管が使用されており、反応容器3内には担体(不図示)が収容されている。また、この反応容器3の両端部には、配管5が接続可能なポート3aが設けられており、それぞれのポート3aに送液配管5b、排液配管5cが接続されている。そして、送液配管5bから反応容器3に薬液が導入されると、薬液が径方向に広がりつつ反応容器3内に貯留されることにより、薬液と担体とが化学合成され、担体に塩基が結合される。
【0028】
また、反応容器3の下流側(流出側)には、反応容器3で反応完了後に排液された薬液等を貯留する排液タンク4が設けられている。排液タンク4は、反応容器3に比べて容量が大きく形成されており、反応容器3から複数回排出された場合でも貯留できる容量に形成されている。
【0029】
また、計量機構2は、密封構造を有するチャンバ部22と、チャンバ部22内に配置される計量容器21と、計量容器21を支持する支持ユニット23と、重量センサ24とを有しており、計量容器21に供給された薬液がチャンバ部22に取り付けられた重量センサ24で計測されるように形成されている。
【0030】
チャンバ部22は、チャンバ部22内が所定環境に維持されるように形成されている。本実施形態では、密閉状態に形成されて外部と遮断されており、チャンバ部22内に不活性ガスが充填されることにより、所定の一定環境に維持されている。これにより、供給された薬液が大気(外気)と接触して薬液の品質が低下するのを抑え、薬液合成の精度が低下するのを防止できるようになっている。図2に示すように、本実施形態では、チャンバ部22は、筒状部材に形成されており、上方から大径の大径筒状部材22a、中央に小径の小径筒状部材22b、下方に小径よりも大径となる中径筒状部材22cが組み合わされて形成されており、小径筒状部材22bの部分で括れた形状を有するように形成されている。本実施形態では、この括れた部分を括れ部29と呼ぶ。
【0031】
また、計量容器21は、チャンバ部22内に支持ユニット23で支持されており、チャンバ部22内のほぼ中央位置に計量容器21が配置されている。すなわち、計量容器21は、チャンバ部22とは非接触で収容されており、支持ユニット23により支持されている。本実施形態の計量容器21は、先端部分21cが先細り形状で円筒形状に形成されており、先端部分21cと反対側に位置する開口部21bは、チャンバ部22内の上方に開口した状態に形成されている。そして、それぞれ先端部分21cが下方に向く姿勢で支持ユニット23により支持されており、開口部21bには、収容容器1に接続される薬液送液配管5aが接続されている。
【0032】
この計量容器21の開口部21bには、複数の薬液送液配管5aが接続されている。具体的には、各収容容器1に接続される薬液送液配管5aがチャンバ部22の配管挿通部22dに接続され、チャンバ部22内に挿通された薬液送液配管5aは、配管支持部25により集約された状態で支持されている。すなわち、配管支持部25は、チャンバ部22から延伸して設けられており、配管支持部25には、薬液送液配管5aを束ねて保持する配管保持部材25aが設けられている。そして、図2の例では、配管保持部材25aにより、すべての薬液送液配管5aが束ねられた状態で配管支持部25に固定されて保持されている。そして、それぞれの薬液送液配管5aの先端部分5tは、計量容器21の開口部21bに部分的に収容されている。すなわち、薬液送液配管5aの先端部分5tは、先端保持部材26により各薬液送液配管5aが所定距離を保つ状態で束ねて保持されており、この先端保持部材26が開口部21bに非接触で収容された状態で保持されている。これにより、薬液送液配管5aの先端部分5tそれぞれは、他の薬液送液配管5aと接触することなく計量容器21に非接触で保持されており、薬液送液配管5aの先端部分5tから吐出された薬液が他の薬液送液配管5aの先端部分5tに付着している残液の巻き込みを防止できるようになっている。
【0033】
また、図1に示すように、計量機構2は、供給された薬液を精度よく計量できるように形成されており、本実施形態では、重量センサ24で計測できるように形成されている。この重量センサ24は、本実施形態ではロードセルで構成されており、チャンバ部22の外部に配置されている。図2の例では、チャンバ部22の括れ部29に取り付けられており、この重量センサ24と計量容器21とがアーム部6で連結されている。すなわち、支持ユニット23は、径方向に延びる補助リング部材23aとアーム部6を有しており、計量容器21に接続された補助リング部材23aを介してアーム部6が接続され、このアーム部6が重量センサ24と接続されている。これにより、薬液送液配管5aから計量容器21に薬液が供給されると、その薬液の重量がアーム部6を通じて重量センサ24により計測され、供給された薬液の重量を計測することができるようになっている。本実施形態では、重量センサ24であるロードセルは、3つ設けられており、図4(a)に示すように、計量容器21を鉛直方向に見て120°間隔でそれぞれ独立して設けられている。この構成により、計量容器21に供給された薬液の重量の負荷は、それぞれのロードセルにほぼ均等にかかり、3つのロードセルが示す値が合計されることにより薬液の重量が計測されるようになっている。
【0034】
ここで、上述したように、薬液送液配管5aの先端部分5tは、先端保持部材26で束ねた状態で保持されており、計量容器21には非接触で保持されている。また、計量容器21の先端部分21cには、送液配管5bが接続されており、下流側の反応容器3と接続されている。この送液配管5bは、余長mが設けられており、この余長mを設けることにより、縁切りを行い、計量容器21の可動を可能にしている。これにより、計量容器21には、機械的な構造において重量が作用しないように構成されているため、計量容器21に供給された薬液の重量のみが重量センサ24であるロードセルに作用し、薬液の重量を精度よく計測できるようになっている。
【0035】
また、図2図3に示すように、アーム部6は、計量容器21と重量センサ24を連結し、計量容器21の重量変化を重量センサ24に伝達するものである。アーム部6は、一方向に延びる形状を有しており、計量容器21側に接続される容器側支柱部材61と、重量センサ側に接続されるセンサ側支柱部材62とを有しており、鉛直方向に延びる姿勢で取り付けられている。
【0036】
具体的には、センサ側支柱部材62は、重量センサ24であるロードセルの可動部24aに直接接続されて固定されている。一方、ロードセルの可動部24aは、負荷される重量によって変位するように構成されており、変位方向が鉛直方向になるように取り付けられている。すなわち、センサ側支柱部材62は、ロードセルに対して鉛直方向に延びる姿勢で取り付けられており、センサ側支柱部材62が受ける荷重方向がロードセルの可動部24aの変位方向と一致するように取り付けられている。
【0037】
また、計量容器21には、計量容器21の径方向に延びる補助リング部材23aが設けられており、容器側支柱部材61は、この補助リング部材23aに鉛直方向に延びる姿勢で固定されている。具体的には、容器側支柱部材61は、補助リング部材23aに取り付けられる支柱本体部61aと、支柱本体部61aに固定される支柱軸部61bで形成されており、支柱本体部61aが補助リング部材23aに鉛直方向に延びる姿勢で取り付けられている。
【0038】
また、図3に示すように、チャンバ部22の大径筒状部材22aの底面部22eには、外部と連通する開口部22e1が形成されており、容器側支柱部材61は、支柱軸部61bが開口部22e1に挿通され外部まで延伸して設けられ、支柱軸部61bが後述の球体ジョイント63を介してセンサ側支柱部材62と連結されている。これにより、計量容器21は、アーム部6を介して重量センサ24に接続されており、計量容器21の重量がアーム部6を介して直接、重量センサ24に伝達されるようになっている。
【0039】
また、容器側支柱部材61とセンサ側支柱部材62との間には、球体ジョイント63が取り付けられており、この球体ジョイント63を中心に容器側支柱部材61、センサ側支柱部材62がそれぞれ変位できるようになっている。球体ジョイント63は、球体とその両端に取り付けられたアタッチメントを有しており、一方のアタッチメントが他方のアタッチメントに対して、あらゆる方向に可動できるように形成されている。これにより、アーム部6は、容器側支柱部材61とセンサ側支柱部材62は直線状に延びる姿勢を基本姿勢として設定されているが(図3(a))、図3(b)に示すように、球体ジョイント63を中心にして、一方側に対して傾斜する姿勢が可能となっている。すなわち、計量容器21に薬液が供給されると、薬液の重量がアーム部6を介して伝達される。具体的には、補助リング部材23aを介して容器側支柱部材61に伝達され、センサ側支柱部材62に伝達されることにより、重量センサ24に伝達される。ここで、重量センサ24が荷重を受けると、重量センサ24の可動部24aが片持ちで固定されているため、図3(b)に示すように、わずかに可動部24aが変形し、センサ側支柱部材62が容器側支柱部材61の延長線上から離れるように変形する。すなわち、重量センサ24が傾くことで芯ずれを発生するが、可動部24aが球体ジョイント63を介して変形するため、アーム部6が荷重により曲がり変形を受けることが抑えられる。すなわち、アーム部6であるセンサ側支柱部材62と容器側支柱部材61が一体的に棒状に形成されている場合に比べて、外乱負荷となるアーム部6の曲がり変形による力が発生しないため、重量センサ24に計測誤差が生じるのを抑えることができる。
【0040】
また、アーム部6であるセンサ側支柱部材62と容器側支柱部材61が一体的に棒状に形成されていると、可動部24aの変形に追従することにより、アーム部6全体が傾斜し、開口部22e1に接触し、薬液の重量を正確に行えない可能性が生じる。そこで、センサ側支柱部材62と容器側支柱部材61との間に球体ジョイント63が設けられることにより、可動部24aが変形しセンサ側支柱部材62が追従しても、球体ジョイント63を中心としてセンサ側支柱部材62が追従し容器側支柱部材61の姿勢は変化しないため、アーム部6全体が開口部22e1に接触する問題を回避することができる。これにより、薬液の重量を重量センサ24に精度よく伝達し、計測誤差が生じるのを抑えることができる。
【0041】
また、容器側支柱部材61には、封止カバー材64が取り付けられている。この封止カバー材64は、チャンバ部22の環境と重量センサ24とを縁切りするためのものである。すなわち、封止カバー材64により、アーム部6とチャンバ部とで形成される隙間、本実施形態では、開口部22e1が封止される。本実施形態では、封止カバー材64は、金属製伸縮部材である金属ベローズ64aが使用されており、それぞれの容器側支柱部材61に取り付けられている。金属ベローズ64aは、一定方向に伸縮可能で復元力の高い蛇腹部材であり、変形前の姿勢に復元する再現性に優れた部材である。本実施形態では、容器側支柱部材61に取り付けられている。
【0042】
すなわち、チャンバ部22の大径筒状部材22aの底面部22eには、開口部22e1上に容器側支柱部材61を取り付けるための台座22fが設けられており、金属ベローズ64aを介して、台座22fと支柱本体部61aとが取り付けられている。具体的には、金属ベローズ64aは、伸縮方向が荷重方向(鉛直方向)となるように取り付けられ、それぞれの取り付け部分は溶接により固定されている。これにより、図3(a)の破線矢印で示すように、開口部22e1を通じてチャンバ部22の外部に出る経路が金属ベローズ64aにより遮断されるため、チャンバ部22内の気体(例えば薬液が揮発した気体)は、チャンバ部22内に密封される。そして、計量容器21に薬液が供給されると補助リング部材23aを通じて支柱本体部61aが鉛直方向下向きに変位するが、この支柱本体部61aの動きにより金属ベローズ64aが伸縮するため、チャンバ部22の密封状態を維持しつつ、重量センサ24に薬液の重量をアーム部6を通じて伝達することができる。なお、台座22fにはOリング22f1が設けられており、大径筒状部材22aの底面部22eと台座22fとによって形成される隙間は封止されている。
【0043】
また、本実施形態における薬液合成装置では、制御装置が設けられており、この制御装置により各バルブの開閉動作が制御され、使用する薬液の選択、送液状態、送液タイミングが制御されるように構成されている。また、制御装置は、校正機能を備えており、各重量センサ24を校正することができる。すなわち、重量センサ24には、計量容器21等の自重、及び、金属ベローズ64aの弾性変形による反力が作用するため、計量容器21に供給された薬液のみの自重を計測するために校正が必要となる。本実施形態では、計量容器21を空にした状態の重量を計測したデータと、重量が既知の物体を計量容器21に供給した場合の重量を予め計測したデータとを有しており、実際に計測した値に対して、それらのデータから補正を行うようになっている。これにより、計量容器21等の自重、及び、金属ベローズ64aの弾性変形による反力がキャンセルされ、計測した値が限りなく真の値になるようになっている。
【0044】
以上、上記薬液合成装置によれば、計量容器21が収容されるチャンバ部22の外部に重量センサ24が配置されているため、重量センサ24がチャンバ部22内の環境の影響を受けずに動作することができる。すなわち、計量容器21がチャンバ部22内に非接触で収容され、その計量容器21とチャンバ部22の外側に配置される重量センサ24とがアーム部6で接続される。また、アーム部6には、封止カバー材64が取り付けられており、アーム部6とチャンバ部22とで形成される隙間が封止カバー材64で封止され、重量センサがチャンバ部と縁切りされる。これにより、チャンバ部22内の環境が維持されるともに、チャンバ部22の環境が重量センサ24と縁切りされるため、チャンバ部の環境が重量センサ24に影響することを抑えることができ、継続的に重量センサ24を正常に動作させることができる。したがって、チャンバ部22内の使用環境に影響されることなくチャンバ部22に配置される計量容器21内の薬液を精度よく計量することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、封止カバー材64である金属ベローズ64aがそれぞれのアーム部6に取り付けられる例について説明したが、アーム部6全体を金属ベローズ64aで覆う構成であってもよい。すなわち、図4(b)に示すように、各アーム部6の内径側と外径側に金属ベローズ64aを配置し、これらの金属ベローズ64aを補助リング部材23aと台座22fとに溶接されるように構成する。これにより、内径側金属ベローズ64aと外径側金属ベローズ64aとの間が密封されつつ、計量容器に供給された薬液の重量により補助リング部材23a及び支柱本体部61aの下降動作に合わせて金属ベローズ64aが収縮するため、薬液の重量はアーム部6を介して重量センサ24に伝達することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、封止カバー材64として金属ベローズ64aを用いる例について説明したが、樹脂製のベローズであってもよく、重量が変化する方向に変位可能であって、アーム部6とチャンバ部22とで形成される隙間を封止できるものであればよい。なお、金属製の方が伸縮動作の再現性が高いため、より高い精度で計測することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、センサ側支柱部材62と計量容器側支柱部材61との間に球体ジョイント63を設ける例について説明したが、開口部22e1を大きくすることにより、球体ジョイント63を設けず、センサ側支柱部材62と計量容器側支柱部材61を一体化した棒状部材としたアーム部6を採用するものであってもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、アーム部6を120°間隔で3つ設ける例について説明したが、2つ又は4つ以上設けるものであってもよい。なお、アーム部6を3つ以上で構成する方がアーム部6間を面で拘束するため、重力方向以外の自由度が少なくなることで計量容器に供給された薬液を精度よく計測できる点で好ましい。
【0049】
また、上記実施形態では、チャンバ部22が密封構造のものについて説明したが、反応させる液体(薬液含む)の性質によっては、高精度の密封状態に及ばないものであってもよく、取り扱う液体に応じた環境を維持できる程度のものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 収容容器
2 計量機構
3 反応容器
6 アーム部
21 計量容器
22 チャンバ部
24 重量センサ
61 容器側支柱部材
62 センサ側支柱部材
64 封止カバー材
64a 金属ベローズ
図1
図2
図3
図4
図5