(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122009
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 107
B41J2/01 451
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025422
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌義
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB03
2C056EB27
2C056EB29
2C056EC08
2C056EC77
2C056EE02
2C056FA02
2C056FA11
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】双方向印刷の調整精度を高める。
【解決手段】プリンタ100では、調整パターン印刷部61は、インクヘッド28を往路方向Y1および復路方向Y2に移動させている間にインクヘッド28からインクを吐出させて、調整パターンPT1を媒体5に印刷する。センサ移動制御部67は、媒体5に印刷された調整パターンPT1のうち、インクヘッド28のノズル列41における中央ノズル42によって吐出されたインクで形成されたパターン部分C1上をセンサ38が走査するように、センサ38を有するセンサヘッド36を移動させる。読取部69は、センサヘッド36が移動している間に、センサ38によって調整パターンPT1のパターン部分C1を読み取る。決定部71は、読取部69によるパターン部分C1の読み取り結果に基づいて、双方向印刷におけるインクの着弾位置を調整する調整値V1を決定する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持する支持台と、
前記支持台に支持された媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
媒体に印刷された調整パターンであって、双方向印刷における前記インクヘッドからのインクの着弾位置を調整するための前記調整パターンを読み取るセンサを有するセンサヘッドと、
印刷時に前記インクヘッドを主走査方向に移動させ、前記調整パターンを読み取るときに前記センサヘッドを前記主走査方向に移動させる移動機構と、
制御装置と、
を備え、
前記インクヘッドは、インクを吐出する複数のノズルが副走査方向に並んだノズル列を有し、
前記ノズル列は、前記ノズル列の前記副走査方向の中央部分に位置する中央ノズルを有し、
媒体に印刷された前記調整パターンの前記副走査方向の長さは、前記ノズル列の長さ以下であり、
前記主走査方向の一方から他方に向かう方向を往路方向とし、前記主走査方向の他方から一方に向かう方向を復路方向としたとき、
前記制御装置は、
前記インクヘッドを前記往路方向、および、前記復路方向に移動させている間に前記インクヘッドからインクを吐出させて、前記調整パターンを媒体に印刷する調整パターン印刷部と、
媒体に印刷された前記調整パターンのうち、前記中央ノズルによって吐出されたインクで形成されたパターン部分上を前記センサが走査するように、前記センサヘッドの移動を制御するセンサ移動制御部と、
前記センサ移動制御部によって前記センサヘッドが移動している間に、前記センサによって前記調整パターンの前記パターン部分を読み取る読取部と、
前記読取部による前記パターン部分の読み取り結果に基づいて、双方向印刷におけるインクの着弾位置を調整するための調整値を決定する決定部と、
を備えた、プリンタ。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記調整パターンの前記副走査方向の両端の位置を検出する位置検出部と、
前記調整パターンの前記両端の位置に基づいて、前記調整パターンにおける前記副走査方向の中心を通る中心線を算出する中心線算出部と、
を備え、
前記センサ移動制御部は、前記調整パターンの前記中心線を基準にして、前記調整パターンの前記パターン部分上を前記センサが走査するように前記センサヘッドの移動を制御する、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項3】
前記制御装置は、
媒体に印刷された前記調整パターンを印刷する際に使用された前記ノズルの範囲が示されたノズル情報が記憶された記憶部と、
前記調整パターンの前記副走査方向の一端の位置を検出する位置検出部と、
を備え、
前記センサ移動制御部は、前記ノズル情報と、前記調整パターンの前記一端の位置と、に基づいて決定される前記調整パターンの前記パターン部分上を前記センサが走査するように前記センサヘッドの移動を制御する、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項4】
前記インクヘッドは、前記ノズルから吐出されるインクの色が異なる複数の前記ノズル列を有し、
前記調整パターンは、インクの色毎に存在し、
インクの色毎の前記調整パターンは、前記副走査方向に並ぶように配置され、
前記調整パターンは、
前記インクヘッドが前記往路方向に移動しているときに、少なくとも前記中央ノズルから吐出されたインクによって印刷された第1図形が、前記主走査方向に複数並んで配置された往路パターンと、
前記インクヘッドが前記復路方向に移動しているときに、少なくとも前記中央ノズルから吐出されたインクによって印刷された第2図形が、前記第1図形と対になるように前記主走査方向に複数並んで配置された復路パターンと、
を有し、
対になる前記第1図形と前記第2図形を調整組としたとき、隣り合う前記調整組において、前記第2図形に対する前記第1図形の前記主走査方向の位置が異なっており、
前記調整パターン印刷部は、インクの複数の色のうち、予め定められた基準色のインクで形成された前記調整パターンと前記主走査方向に並んで配置された基準図形を、前記基準色のインクで媒体に印刷し、
前記センサ移動制御部は、少なくとも前記中央ノズルによって吐出された前記基準図形の部分を基準にして、前記調整パターンの前記パターン部分上を前記センサが走査するように、前記センサヘッドの移動を制御する、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記基準図形の前記副走査方向の両端の位置を検出する位置検出部と、
前記基準図形の前記両端の位置に基づいて、前記基準図形における前記副走査方向の中心を通る図形中心線を算出する中心線算出部と、
を備え、
前記センサ移動制御部は、前記基準図形の前記図形中心線を基準にして、前記調整パターンの前記パターン部分上をセンサが走査するように、前記センサヘッドの移動を制御する、請求項4に記載されたプリンタ。
【請求項6】
前記基準色は、黒色である、請求項4または5に記載されたプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、双方向印刷が可能なプリンタが開示されている。当該プリンタは、インクを吐出し、かつ、主走査方向に移動可能なインクヘッドを有している。双方向印刷では、インクヘッドが主走査方向のうちの往路へ移動しているときと、復路へ移動しているときの両方で媒体に対して印刷が行われる。
【0003】
ところで、双方向印刷が可能なプリンタでは、インクヘッドによる往路への移動と復路への移動とにおいて、媒体の同じ位置にインクを着弾させるようにインクヘッドからインクを吐出させる場合、インクの着弾位置が主走査方向にズレることがあり得る。そこで、特許文献1には、双方向印刷におけるインクの着弾位置のズレを調整することが開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されたプリンタでは、媒体に調整パターンを印刷する。調整パターンは、所定の方向に一定の間隔で配置された複数の第1印刷ブロックと、第1印刷ブロックと対になる複数の第2印刷ブロックとから構成されている。第2印刷ブロックは、所定の方向に向かうにしたがって、対になる第1印刷ブロックに対して所定の間隔ずつズレて印刷される。対になる第1印刷ブロックと第2印刷ブロックとのズレ量が調整値となる。ここで、第1印刷ブロックは、インクヘッドが主走査方向の往路に移動しているときに印刷され、第2印刷ブロックは、インクヘッドが主走査方向の復路に移動しているときに印刷されるものである。ここでは、第1印刷ブロックと第2印刷ブロックとの間隔が最も小さい対に設定された調整値に基づいて、双方向印刷におけるインクの着弾位置の調整を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インクヘッドは、副走査方向に並んだ複数のノズルによって構成されたノズル列を備えている。ここで、インクヘッドによっては、ノズル列のうち副走査方向の中央部分から端に向かうにしたがって、ノズルから吐出されたインクの着弾位置の精度が低くなることがあり得る。そのため、ノズル列のうち副走査方向の端の方に位置するノズルで、調整パターンを印刷すると、正確な調整値を算出することができないおそれがあった。その結果、双方向印刷のインクの着弾位置の調整の精度が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、双方向印刷のインクの着弾位置の調整の精度を高めることが可能なプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプリンタは、支持台と、インクヘッドと、センサヘッドと、移動機構と、制御装置とを備えている。前記支持台は、媒体を支持する。前記インクヘッドは、前記支持台に支持された媒体にインクを吐出する。前記センサヘッドは、媒体に印刷された調整パターンであって、双方向印刷における前記インクヘッドからのインクの着弾位置を調整するための前記調整パターンを読み取るセンサを有する。前記移動機構は、印刷時に前記インクヘッドを主走査方向に移動させ、前記調整パターンを読み取るときに前記センサヘッドを前記主走査方向に移動させる。前記インクヘッドは、インクを吐出する複数のノズルが副走査方向に並んだノズル列を有する。前記ノズル列は、前記ノズル列の前記副走査方向の中央部分に位置する中央ノズルを有する。媒体に印刷された前記調整パターンの前記副走査方向の長さは、前記ノズル列の長さ以下である。前記主走査方向の一方から他方に向かう方向を往路方向とし、前記主走査方向の他方から一方に向かう方向を復路方向とする。前記制御装置は、調整パターン印刷部と、センサ移動制御部と、読取部と、決定部とを備えている。前記調整パターン印刷部は、前記インクヘッドを前記往路方向、および、前記復路方向に移動させている間に前記インクヘッドからインクを吐出させて、前記調整パターンを媒体に印刷する。前記センサ移動制御部は、媒体に印刷された前記調整パターンのうち、前記中央ノズルによって吐出されたインクで形成されたパターン部分上を前記センサが走査するように、前記センサヘッドの移動を制御する。前記読取部は、前記センサ移動制御部によって前記センサヘッドが移動している間に、前記センサによって前記調整パターンの前記パターン部分を読み取る。前記決定部は、前記読取部による前記パターン部分の読み取り結果に基づいて、双方向印刷におけるインクの着弾位置を調整するための調整値を決定する。
【0009】
上記プリンタによれば、ノズル列の中央ノズルから吐出されたインクの着弾位置の精度は、比較的によい。そこで、双方向印刷におけるインクヘッドからのインクの着弾位置を調整するための調整パターンのうち、インクの着弾位置の精度がよい中央ノズルで印刷されたパターン部分をセンサで読み取ることで、より正確な調整値を決定することができる。よって、双方向印刷のインクの着弾位置の調整の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、双方向印刷のインクの着弾位置の調整の精度を高めることが可能なプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】プリントヘッドの下面の構成を模式的に示す図である。
【
図3】実施形態に係るプリンタのブロック図である。
【
図4】双方向印刷の調整の手順を示したフローチャートである。
【
図5】調整パターンの一例を模式的に示した図である。
【
図6】調整組G1fおよび基準図形を示す図である。
【
図7】第1調整パターンを模式的に示した図である。
【
図8】第1近似直線および第2近似直線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。
【0013】
図1は、本実施形態に係るプリンタ100の正面図である。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ100の前、後、左、右、上、下を示している。符号Yは主走査方向を示している。主走査方向Yは例えば左右方向である。主走査方向Yのうち一方(ここでは右方)から他方(ここでは左方)に向かう方向を往路方向Y1という。主走査方向Yのうち他方から一方に向かう方向を復路方向Y2という。符号Xは副走査方向を示している。副走査方向Xは、例えば前後方向である。副走査方向Xは、平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)している。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものではない。
【0014】
プリンタ100は、インクジェット方式のプリンタである。
図1に示すように、プリンタ100は、媒体5に対して印刷を行う。媒体5は例えばロール状の記録紙であるが、媒体5を形成する材料は特に限定されない。
【0015】
プリンタ100は、プリンタ本体11を備えている。プリンタ本体11は脚12に支持されている。プリンタ本体11には、タッチパネル13が設けられている。タッチパネル13は、プリンタ100の状態や、双方向印刷の調整に関する情報を表示できると共に、ユーザが操作をすること、例えばユーザによる双方向印刷に関する情報などを入力することができるように構成されている。
【0016】
プリンタ100は、媒体5を支持するプラテン18と、プラテン18に支持された媒体5を副走査方向Xに搬送する搬送機構20を備えている。プラテン18は、支持台の一例である。媒体5は、プラテン18に載置されている。プラテン18上において媒体5に対して印刷が行われる。搬送機構20は、例えばプラテン18に設けられたグリットローラ21と、グリットローラ21の上方に配置され、グリットローラ21と共に媒体5を挟むピンチローラ22と、グリットローラ21に接続されたフィードモータ23とを備えている。フィードモータ23が駆動してグリットローラ21が回転することで、媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0017】
図1に示すように、プリンタ100は、プラテン18の上方において主走査方向Yに延びたガイドレール25と、プリントヘッド26と、センサヘッド36とを備えている。プリントヘッド26は、主走査方向Yに移動可能に構成されている。プリントヘッド26は、インクキャリッジ27と、複数のインクヘッド28(
図2参照)とを備えている。インクキャリッジ27は、ガイドレール25に摺動可能に係合している。
【0018】
インクヘッド28は、プラテン18に支持された媒体5に向かってインクを吐出する。
図2は、プリントヘッド26の下面の構成を模式的に示す図である。インクヘッド28の数は特に限定されないが、
図2に示すように、ここでは4つである。4つのインクヘッド28は、インクキャリッジ27に支持されている。4つのインクヘッド28は、主走査方向Yに並んで配置されている。1つのインクヘッド28の下面には、インクが吐出される複数のノズル40が形成されている。複数のノズル40は、副走査方向Xに並んで配置されている。ここでは、複数のノズル40が副走査方向Xに並んだ列のことをノズル列41という。ここでは、1つのインクヘッド28において、2つのノズル列41が設けられている。そのため、本実施形態に係るプリンタ100では、8つのノズル列41が設けられている。複数のノズル列41は、副走査方向Xにおいて同じ位置に配置されていてもよいし、副走査方向Xにおいてズレた位置に配置されていてもよい。
【0019】
本実施形態では、各ノズル列41は、中央ノズル42を有している。中央ノズル42は、ノズル列41の副走査方向Xの中央部分に位置するノズル40のことをいう。中央ノズル42に含まれるのノズル40の数は、特に限定されないが、例えば複数である。ここで、中央ノズル42は、例えばノズル列41を副走査方向Xに3分割(例えば3等分)したときの前から2番目の範囲(ここでは、中央に位置する範囲)に位置するノズル40である。ただし、中央ノズル42は、ノズル列41を副走査方向Xに5分割(例えば5等分)したときの前から3番目の範囲(ここでは、中央に位置する範囲)に位置するノズル40であってもよい。また、中央ノズル42は、ノズル列41を副走査方向Xに7分割(例えば7等分)したときの前から4番目の範囲(ここでは、中央に位置する範囲)に位置するノズル40であってもよい。
【0020】
本実施形態では、複数のノズル列41は、それぞれ色が異なるインクをノズル40から吐出する。例えば各ノズル列41は、プロセスカラーインクやクリアインクなどの特色インクのうちの何れかのインクを吐出する。ここでは、複数のノズル列41は、左から右に向かう順に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ライトマゼンタ、ライトシアン、ライトブラック、オレンジの色のインクをノズル40から吐出する。ただし、複数のノズル列41におけるインクの色の配列順序は特に限定されない。また、複数のノズル列41のうちのいくつかのノズル列41から同じ色のインクが吐出されてもよい。
【0021】
図1に示すように、センサヘッド36は、プリントヘッド26と主走査方向Yに並んで配置されており、主走査方向Yに移動可能に構成されている。センサヘッド36は、センサキャリッジ37と、センサ38とを有している。センサキャリッジ37は、ガイドレール25に摺動可能に係合している。
【0022】
センサ38は、センサキャリッジ37に支持されている。センサ38は、双方向印刷におけるインクヘッド28からのインクの着弾位置を調整するための後述の調整パターンPT1(
図5参照)であって、媒体5に印刷された調整パターンPT1を読み取るためのセンサである。センサ38は、媒体5に対する調整パターンPT1の位置を読み取るものであり、かつ、調整パターンPT1と媒体5との境界の位置を読み取るものである。センサ38の種類は特に限定されないが、例えば光学式である。センサ38は例えばカラーセンサである。センサ38は、カラーを検出することが可能であり、例えばRGBでカラーを表現することが可能なセンサである。
【0023】
本実施形態では、
図1に示すように、プリントヘッド26とセンサヘッド36とは連結可能なものである。センサヘッド36は、プリントヘッド26と離反して単独で主走査方向Yに移動可能である。プリントヘッド26は、センサヘッド36と連結し、センサヘッド36と共に主走査方向Yに移動可能である。
【0024】
プリンタ100は、印刷時にインクヘッド28を主走査方向Yに移動させ、媒体5に印刷された調整パターンPT1(
図5参照)を読み取るときにセンサヘッド36を主走査方向Yに移動させる移動機構30を備えている。移動機構30は、ガイドレール25の左右の両端部の周囲に設けられた左右のプーリ31a、31bと、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられたベルト32と、右のプーリ31bに接続されたキャリッジモータ33とを備えている。ベルト32には、センサヘッド36が固定されている。ここでは、キャリッジモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、センサヘッド36が主走査方向Yに移動する。センサヘッド36にプリントヘッド26が連結されているときは、センサヘッド36と共にプリントヘッド26が主走査方向Yに移動する。
【0025】
プリンタ100は、制御装置50を備えている。制御装置50は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。制御装置50は、例えばホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリと、を備えている。なお、制御装置50は必ずしもプリンタ100の内部に設けられている必要はなく、例えばプリンタ100の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
【0026】
図3は、本実施形態に係るプリンタ100のブロック図である。本実施形態では、
図3に示すように、制御装置50は、タッチパネル13、搬送機構20(詳しくはフィードモータ23)、インクヘッド28、移動機構30(詳しくはキャリッジモータ33)、センサ38とそれぞれ通信可能に接続されている。制御装置50は、タッチパネル13、搬送機構20、インクヘッド28、移動機構30およびセンサ38を制御可能に構成されている。
【0027】
ところで、本実施形態に係るプリンタ100は、双方向印刷が可能なものである。ここで、双方向印刷とは、主走査方向Yの往路方向Y1にインクヘッド28が移動しているときにインクヘッド28からインクを吐出して媒体5に印刷(以下、往路印刷という。)すると共に、復路方向Y2にインクヘッド28が移動しているときにインクヘッド28からインクを吐出して媒体5に印刷(以下、復路印刷という。)することをいう。往路印刷と復路印刷において、媒体5の同じ位置にインクを吐出しようとしたときに、インクの着弾位置について主走査方向Yにズレが生じることがあり得る。この場合、例えば復路印刷におけるインクの吐出タイミングを調整することで、双方向印刷におけるインクの着弾位置の調整(以下、双方向印刷の調整という。)を行う。ここで、双方向印刷の調整に使用される値のことを調整値V1(
図8参照)という。
【0028】
本実施形態では、調整値V1は、制御装置50によって自動で決定される。ここでは、双方向印刷の調整を行うために、制御装置50は、
図3に示すように、記憶部52と、調整パターン印刷部61と、閾値設定部62と、位置検出部63と、中心線算出部65と、センサ移動制御部67と、読取部69と、決定部71と、を備えている。制御装置50の各部52~71は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置50の各部52~71は、1つまたは複数のプロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、制御装置50の各部52~71の詳細については後述する。
【0029】
次に、双方向印刷の調整の手順について
図4のフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、例えばタッチパネル13(
図1参照)に双方向印刷の調整を開始する開始ボタン(図示せず)が表示される。ユーザは、タッチパネル13を操作して、上記開始ボタンを押すことで、双方向印刷の調整の処理が自動で開始される。双方向印刷の調整は、例えば媒体5をプラテン18に取り付けたときに実行されるものである。なお、双方向印刷の調整時、タッチパネル13には、印刷画像の印刷を開始する印刷開始ボタン(図示せず)は、表示されない。このことによって、双方向印刷の調整時、ユーザが印刷開始ボタンに触れるなどの誤操作によって印刷画像の印刷を開始することを防止することができる。
【0030】
図5は、調整パターンPT1の一例を模式的に示した図である。まず
図4のステップS101では、
図3の調整パターン印刷部61は、
図5に示すような調整パターンPT1を、プラテン18に支持された媒体5(
図1参照)に印刷する。更に、調整パターン印刷部61は、調整パターンPT1と共に、基準図形F5(
図5参照)を媒体5に印刷する。調整パターンPT1および基準図形F5は、双方向印刷の調整を行う際に媒体5に印刷されるものである。
【0031】
本実施形態では、調整パターンPT1は、インクの色毎に存在する。ここでは、8つのノズル列41(
図2参照)から8色のインクを吐出することが可能である。そのため、調整パターンPT1として、第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1hの合計8つの調整パターンPT1が存在する。第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1hは、それぞれ異なる色のインクによって印刷されるパターンである。例えば第1調整パターンPT1a、第2調整パターンPT1b、第3調整パターンPT1c、第4調整パターンPT1dは、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクによって印刷されるパターンである。第5調整パターンPT1e、第6調整パターンPT1f、第7調整パターンPT1g、第8調整パターンPT1hは、それぞれライトマゼンタ、ライトシアン、ライトブラック、オレンジのインクによって印刷されるパターンである。
【0032】
ここでは、
図5に示すように、第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1hは、副走査方向Xに並んで配置されている。詳しくは、副走査方向Xの前から後ろに向かって、第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1hの順に並んで配置されている。副走査方向Xに隣り合う第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1hは、接しているが離れていてもよい。
【0033】
本実施形態では、1つの調整パターンPT1は、往路パターンPT11と、復路パターンPT12とを有している。往路パターンPT11は、インクヘッド28が往路方向Y1に移動しているときに印刷されるものである。1つの調整パターンPT1につき、往路パターンPT11は、主走査方向Yに並んで配置された複数の第1図形F1を有している。往路パターンPT11は、第1図形F1が主走査方向Yに並んで配置されたパターンである。主走査方向Yに並ぶ第1図形F1の数は特に限定されないが、ここでは6つである。第1図形F1は四角形状(詳しくは正方形状)であるが、第1図形F1の形状は特に限定されない。
【0034】
復路パターンPT12は、インクヘッド28が復路方向Y2に移動しているときに印刷されるものである。1つの調整パターンPT1につき、復路パターンPT12は、複数の第2図形F2を有している。復路パターンPT12は、第1図形F1と対になるように、第2図形F2が主走査方向Yに並んで配置されたパターンである。主走査方向Yに並ぶ第2図形F2の数は特に限定されないが、ここでは第1図形F1と同様に6つである。第2図形F2は、第1図形F1と同じ形状であり、四角形状(詳しくは正方形状)であるが、第2図形F2の形状も特に限定されない。
【0035】
本実施形態では、第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1hに対して、それぞれ主走査方向Yに並んだ第1図形F1を有する往路パターンPT11と、主走査方向Yに並んだ第2図形F2を有する復路パターンPT12とが存在する。
図6は、各調整パターンPT1の一部(ここでは調整組G1f)および基準図形F5を示す図である。ここで、
図6に示すように、各調整パターンPT1a~PT1hにおける第1図形F1は、副走査方向Xに接するように並んで配置されている。同様に、各調整パターンPT1a~PT1hにおける第2図形F2も、副走査方向Xに接するように並んで配置されている。
【0036】
本実施形態では、
図5に示すように、1つの調整パターンPT1につき、複数の第2図形F2のそれぞれは、第1図形F1と対になっている。ここで、対になる第1図形F1と第2図形F2とを調整組G1という。ここでは、6つの調整組G1が存在している。各調整組G1において、第1図形F1と第2図形F2とは、離間して配置されており、重なっていない。以下の説明では、調整組G1について、左から順に符号G1a~G1fを適宜付すことにする。調整組G1a、G1b、G1cでは、第1図形F1は、第2図形F2よりも左方に配置されている。調整組G1c、G1b、G1aの順に、第1図形F1と第2図形F2との間隔(ここでは主走査方向Yの距離)は、大きくなっている。調整組G1d、G1e、G1fでは、第1図形F1は、第2図形F2よりも右方に配置されている。調整組G1d、G1e、G1fの順に、第1図形F1と第2図形F2との間隔(ここでは主走査方向Yの距離)は、大きくなっている。本実施形態では、隣り合う調整組G1において、第2図形F2に対する第1図形F1の主走査方向Yの位置が異なっている。
【0037】
なお、各調整パターンPT1において、往路パターンPT11と復路パターンPT12の主走査方向Yの位置が入れ替わっていてもよい。すなわち、各調整組G1において、往路パターンPT11と復路パターンPT12の主走査方向Yの位置が入れ替わっていてもよく、言い換えると、第1図形F1と第2図形F2の主走査方向Yの位置が入れ替わっていてもよい。詳しくは、調整組G1a、G1b、G1cでは、第1図形F1は、第2図形F2よりも右方に配置されていてもよい。調整組G1d、G1e、G1fでは、第1図形F1は、第2図形F2よりも左方に配置されていてもよい。
【0038】
ここでは、各調整組G1に対して候補調整値V2が設定されている。候補調整値V2とは、各調整組G1における第2図形F2に対する第1図形F1の主走査方向Yのズレのことである。ここでは、調整組G1a~G1fにおける候補調整値V2のことを、それぞれ候補調整値V2a~V2fとする。なお、例えば候補調整値V2は、第1図形F1が第2図形F2に対して左方にズレているときには、マイナスの値となり、右方にズレているときにはプラスの値となる。なお、候補調整値V2は、データ上の値(言い換えると論理上の値)であり、媒体5に実際に印刷された第1図形F1と第2図形F2との主走査方向Yのズレとは異なることがあり得る。
【0039】
上述のように、
図5に示すように、媒体5には、各調整パターンPT1と共に基準図形F5が印刷される。基準図形F5は、調整パターンPT1の右方に配置されているが、左方に配置されてもよい。基準図形F5は、インクの複数の色のうち、予め定められた基準色のインクで媒体5に印刷される。ここでは、基準色は、黒色である。基準図形F5は、複数の調整パターンPT1のうち、黒色のインクで印刷された第4調整パターンPT1dと主走査方向Yに並んで配置されている。基準図形F5の大きさや形状は、特に限定されない。ここでは、基準図形F5は、第1図形F1および第2図形F2と同じ大きさであり、同じ形状である。基準図形F5は、四角形状(詳しくは正方形状)である。
【0040】
本実施形態では、制御装置50の記憶部52(
図3参照)には、調整パターンPT1(例えば第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1h)の印刷データが記憶されている。
図4のステップS101では、
図3の調整パターン印刷部61は、インクヘッド28が往路方向Y1に移動しているときに、各調整パターンPT1の往路パターンPT11(ここでは第1図形F1)を印刷する。調整パターン印刷部61は、インクヘッド28が復路方向Y2に移動しているときに、各調整パターンPT1の復路パターンPT12(ここでは第2図形F2)を印刷する。ここでは、インクヘッド28が複数回、主走査方向Yに往復移動することで、第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1hが媒体5に印刷される。各調整パターンPT1は、ノズル列41のうち少なくとも中央ノズル42(
図2参照)からインクが吐出されて媒体5に印刷される。1つの調整パターンPT1の副走査方向Xの長さL11(
図6参照)は、ノズル列41の長さL12(
図2参照)以下である。なお、長さL11は、第1図形F1の副走査方向Xの長さであり、かつ、第2図形F2の副走査方向Xの長さである。
【0041】
本実施形態では、
図3の調整パターン印刷部61は、各調整パターンPT1と共に基準図形F5(
図5参照)を媒体5に印刷する。ここでは、調整パターン印刷部61は、黒色のインクで第4調整パターンPT1dを印刷するときに、基準図形F5も印刷する。なお、基準図形F5は、インクヘッド28が往路方向Y1に移動しているときに印刷されるものであってもよいし、インクヘッド28が復路方向Y2に移動しているときに印刷されるものであってもよい。
【0042】
このように、各調整パターンPT1および基準図形F5が媒体5に印刷された後、次に
図4のステップS103では、
図3の閾値設定部62は、白黒判定のための閾値V50を設定する。ここで、白黒判定のための閾値V50とは、媒体5の反射率を調整するための閾値であり、媒体5のうちの白色の領域と、黒色の領域とによって設定されるセンサ38の閾値である。媒体5の白色の領域とは、例えば調整パターンPT1や基準図形F5が印刷されていない媒体5の領域である。白色は媒体5の地色である。媒体5の黒色の領域とは、媒体5に印刷された基準図形F5に対応した領域のことである。
【0043】
本実施形態では、センサ38を用いて、閾値V50を設定することができる。例えばセンサ38は、光を発する発光部と、光を受ける受光部とを有する。閾値設定部62は、黒色のインクで形成された基準図形F5(例えば基準図形F5の中心)に向かってセンサ38の発光部から光を発する。発光部から発せられた光は、基準図形F5で反射し、センサ38の受光部によって受けられる。閾値設定部62は、センサ38の受光部が、基準図形F5を反射した光を受けたときの黒色受光値を取得する。次に、印刷されていない媒体5の領域(例えば基準図形F5と第4調整パターンPT1dとの間の領域)に向かってセンサ38の発光部から光を発する。発光部から発せられた光は、媒体5の白色の領域で反射し、センサ38の受光部によって受けられる。閾値設定部62は、センサ38の受光部が、媒体5の白色の領域を反射した光を受けたときの白色受光値を取得する。そして、閾値設定部62は、黒色受光値と白色受光値との平均値、すなわち黒色受光値と白色受光値とを足して2で割った値を、白黒判定の閾値V50として設定する。
【0044】
次に、
図4のステップS105では、各調整パターンPT1(ここでは第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1h)の副走査方向Xの中心線L1(
図5参照)を算出する。ここでは、中心線L1とは、各調整パターンPT1において、中央ノズル42から吐出されたインクによって形成されたパターン部分C1の副走査方向Xの中心線とも言える。本実施形態では、基準図形F5の副走査方向Xの図形中心線L2(
図5参照)を算出することで、各調整パターンPT1の中心線L1、言い換えると、中央ノズル42から吐出されたインクによって形成されたパターン部分C1の中心線L1を算出することができる。
【0045】
ここでは、まず
図3の位置検出部63は、基準図形F5の副走査方向Xの両端の位置を検出する。例えば位置検出部63は、基準図形F5の前端および後端の位置を検出する。位置検出部63は、例えば基準図形F5上をセンサ38が副走査方向Xに走査するように、搬送機構20および移動機構30を制御する。このとき、センサ38が基準図形F5と媒体5の地色との副走査方向Xの境界の位置を検出することで、基準図形F5の前端および後端の位置を検出することができる。
【0046】
次に、
図3の中心線算出部65は、基準図形F5の副走査方向Xの両端の位置に基づいて、基準図形F5における副走査方向Xの中心を通る図形中心線L2(
図5参照)を算出する。ここでは、基準図形F5の前端と後端との中間位置を通過し、かつ、主走査方向Yに延びた線が図形中心線L2となる。
【0047】
本実施形態では、基準図形F5に対する各調整パターンPT1の相対的な位置は、記憶部52に予め記憶されている。そのため、中心線算出部65は、図形中心線L2が決まることで、各調整パターンPT1における中心線L1、言い換えるとパターン部分C1における中心線L1を一意的に決定することができる。本実施形態では、
図5に示すように、中心線L1は、各調整パターンPT1において、第1図形F1の副走査方向Xの中心を通り、かつ、第2図形F2の副走査方向Xの中心を通る線である。中心線L1は、主走査方向Yに延びた線である。なお、中心線算出部65によって算出された各調整パターンPT1(言い換えるとパターン部分C1)における中心線L1と、図形中心線L2に関する情報は、
図3の記憶部52に記憶される。
【0048】
なお、上記では、基準図形F5の図形中心線L2に基づいて、各調整パターンPT1、すなわち第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1hのそれぞれの中心線L1(言い換えると、各調整パターンPT1のパターン部分C1の中心線L1)を算出していたが、中心線算出部65は、基準図形F5を用いずに中心線L1を算出することが可能である。
【0049】
以下、基準図形F5を用いずに、第1調整パターンPT1aの中心線L1を算出する手順について説明する。ここでは、まず
図3の位置検出部63は、第1調整パターンPT1aの副走査方向Xの両端(ここでは前端および後端)の位置を検出する。位置検出部63は、例えば第1調整パターンPT1aの第1図形F1(または第2図形F2)上をセンサ38が副走査方向Xに走査するように、搬送機構20および移動機構30を制御する。このとき、センサ38が第1図形F1(または第2図形F2)の副走査方向Xの境界の位置を検出することで、第1調整パターンPT1aの副走査方向Xの両端の位置を検出することができる。
【0050】
次に、
図3の中心線算出部65は、第1調整パターンPT1aにおける副走査方向Xの両端の位置に基づいて、第1調整パターンPT1(言い換えると、パターン部分C1)における副走査方向Xの中心を通る中心線L1を算出する。ここでは、第1調整パターンPT1aの前端と後端との中間位置を通過し、かつ、主走査方向Yに延びた線が、第1調整パターンPT1aにおける中心線L1となる。同様の手順で、位置検出部63が、第2調整パターンPT1b~第8調整パターンPT1hにおける副走査方向Xの両端の位置を検出した後、中心線算出部65は、第2調整パターンPT1b~第8調整パターンPT1hにおける中心線L1を算出することができる。
【0051】
以上のようにして、各調整パターンPT1の中心線L1を算出した後、次にステップS107では、
図3のセンサ移動制御部67は、調整パターンPT1上をセンサ38が走査するように、搬送機構20および移動機構30を制御することで、センサヘッド36の移動を制御する。以下、第1調整パターンPT1a上をセンサ38が走査して、シアンのインクに関する調整値V1を算出する手順について説明する。
【0052】
図7は、第1調整パターンPT1aを模式的に示した図である。ステップS107では、センサ移動制御部67は、
図7に示すように、中心線L1を基準にして、媒体5に印刷された第1調整パターンPT1aのうち、ノズル列41の中央ノズル42(
図2参照)によって吐出されたインクで形成されたパターン部分C1上をセンサ38が走査するように、搬送機構20および移動機構30を制御する。本実施形態では、パターン部分C1は、第1調整パターンPT1aにおける副走査方向Xの中央部分である。パターン部分C1には、中心線L1が含まれる。ここでは、中心線L1は、パターン部分C1の副走査方向Xの中心を通る線である。しかしながら、中心線L1は、パターン部分C1の副走査方向Xの中心から前方または後方にずれていてもよい。本実施形態では、中心線L1よりも前方に位置するパターン部分C1の副走査方向Xの長さは、中心線L1よりも後方に位置するパターン部分C1の副走査方向Xの長さと同じであるが、異なっていてもよい。
【0053】
ここでは、例えば第1調整パターンPT1aの中心線L1上をセンサ38が走査することで、第1調整パターンPT1aのパターン部分C1上をセンサ38が走査することができる。そのため、センサ移動制御部67は、第1調整パターンPT1の中心線L1上をセンサ38が走査するように、センサヘッド36の移動を制御する。基準図形F5を用いて中心線L1を算出した場合には、センサ移動制御部67は、基準図形F5の図形中心線L2を基準にして、第1調整パターンPT1aのパターン部分C1上をセンサ38が走査するようにセンサヘッド36の移動を制御する。ただし、センサ38は、センサ移動制御部67によって、少なくとも第1調整パターンPT1aのパターン部分C1上を走査すれば、中心線L1上を走査しなくてもよい。センサ38は、中心線L1よりも前方または後方の位置を走査して、パターン部分C1上を走査してもよい。
【0054】
なお、上記では、例えば第1調整パターンPT1aにおける副走査方向Xの両端の位置に基づいて、第1調整パターンPT1aの中心線L1を算出し、中心線L1を基準にしてセンサ38は、パターン部分C1上を走査していた。しかしながら、第1調整パターンPT1aの副走査方向Xの一端の位置に基づいて、第1調整パターンPT1aにおけるパターン部分C1の範囲を決定することが可能である。ここで、副走査方向Xの一端とは、前端であるが、後端であってもよい。この場合、
図3の記憶部52には、媒体5に印刷された調整パターンPT1(ここでは第1調整パターンPT1a)を印刷する際に使用されたノズル列41のノズル40の範囲と、使用されたノズル40の範囲に対する中央ノズル42の範囲が示されたノズル情報が記憶されている。このノズル40の範囲には、中央ノズル42が含まれる。この場合、
図3の位置検出部63は、例えば第1調整パターンPT1aの第1図形F1(または第2図形F2)上をセンサ38が副走査方向Xに走査するように、搬送機構20および移動機構30を制御する。このとき、センサ38が第1図形F1(または第2図形F2)の副走査方向Xの境界の位置を検出することで、第1調整パターンPT1aの前端の位置を検出することができる。
【0055】
第1調整パターンPT1aの前端の位置は、記憶部52に記憶された上記のノズル情報における、第1調整パターンPT1aの一端(ここでは、第1図形F1の前端、または、第2図形F2の前端)を印刷した際に使用されたノズル列41の前端ノズルと対応する。ノズル情報には、前端ノズルから中央ノズル42(例えば中央ノズル42における副走査方向Xの前端)までのノズル間距離(ここでは副走査方向Xの距離)と、中央ノズル42の副走査方向Xの長さである中央ノズル長さが示されている。そのため、第1調整パターンPT1aの前端の位置から後方に向かってノズル間距離の分移動した位置から、中央ノズル長さだけ後方に広がる範囲を、中央ノズル42によって吐出されて形成されたパターン部分C1の範囲として決定することができる。この場合、センサ移動制御部67は、記憶部52に記憶されたノズル情報と、第1調整パターンPT1aの一端の位置と、に基づいて決定されるパターン部分C1上をセンサ38が走査するようにセンサヘッド36の移動を制御すればよい。
【0056】
このように、第1調整パターンPT1aのパターン部分C1上をセンサ38が走査している間、
図4のステップS109では、
図3の読取部69は、センサ38によって第1調整パターンPT1aのパターン部分C1を読み取る。ここでは、
図7に示すように、第1調整パターンPT1aにおける各調整組G1の第1図形F1および第2図形F2の少なくとも一部は、パターン部分C1に含まれる。そのため、読取部69は、パターン部分C1を読み取ることで、各調整組G1における第1図形F1および第2図形F2の位置を読み取ることができる。
【0057】
次に、
図4のステップS111では、
図3の決定部71は、読取部69によるパターン部分C1の読み取り結果に基づいて、双方向印刷におけるインクの着弾位置を調整するための調整値V1を決定する。
【0058】
本実施形態では、決定部71は、媒体5に印刷された第1調整パターンPT1aの調整組G1ごとに実ズレ量V3(
図8参照)を算出する。この実ズレ量V3は、調整組G1における第1図形F1と第2図形F2との間の主走査方向Yの実際のズレ量である。ここでは、実ズレ量V3は、候補調整値V2とは異なりプラスの値である。そのため、第1図形F1が第2図形F2に対して左方にズレていても、実ズレ量V3はマイナスにはならずに、絶対値の値となる。実ズレ量V3は、媒体5に印刷された第1図形F1と第2図形F2との間の実際のズレ量であるため、双方向印刷においてインクの着弾位置にズレが生じているときには、上記の候補調整値V2の絶対値とは異なる。この実ズレ量V3は、読取部69によって読み取られた第1図形F1の位置と、第2図形F2の位置とから算出されることができる。
【0059】
図8は、第1近似直線L31および第2近似直線L32を示すグラフである。このように、各調整組G1における実ズレ量V3を算出した後、
図3の決定部71は、各調整組G1における候補調整値V2と、実ズレ量V3とに基づいて、
図8に示すような第1近似直線L31と第2近似直線L32を算出する。第1近似直線L31および第2近似直線L32は、
図8に示すように、横軸が候補調整値V2であり、かつ、縦軸が実ズレ量V3である平面で表される。第1近似直線L31は、候補調整値V2が大きくなるに連れて実ズレ量V3が小さくなる直線であり、傾きがマイナスになる直線である。第1近似直線L31は、候補調整値V2がマイナス、すなわち第1調整パターンPT1aのデータ上において、第1図形F1が第2図形F2よりも左方にズレている調整組G1(
図7では、調整組G1a、G1b、G1c)の候補調整値V2と実ズレ量V3によって算出される直線である。
【0060】
図8に示すように、第2近似直線L32は、候補調整値V2が大きくなるに連れて実ズレ量V3が大きくなる直線であり、傾きがプラスになる直線である。第2近似直線L32は、候補調整値V2がプラス、すなわち第1調整パターンPT1aのデータ上において、第1図形F1が第2図形F2よりも右方にズレている調整組G1(
図7では調整組G1d、G1e、G1f)の候補調整値V2と実ズレ量V3によって算出される直線である。なお、第1近似直線L31および第2近似直線L32は、数式で表されることができる。第1近似直線L31および第2近似直線L32に関する情報は、
図3の記憶部52に記憶される。
【0061】
このように、第1近似直線L31および第2近似直線L32を算出した後、決定部71は、双方向印刷におけるインクの着弾位置を調整するための調整値V1を決定する。ここでは、
図8に示すように、第1近似直線L31と第2近似直線L32とは、交点P1で交差する。決定部71は、第1近似直線L31と第2近似直線L32との交点P1における候補調整値V2を調整値V1とする。なお、決定部71によって決定された調整値V1は、記憶部52に記憶される。
【0062】
以上のようにして、第1調整パターンPT1aをセンサ38が読み取ることで、シアンインクを吐出する際の調整値V1を算出した。本実施形態では、調整値V1は、インクの色毎に設定されるものである。例えば第2調整パターンPT1bに対して、ステップS107、S109、S111を順に実行することで、マゼンタインクを吐出する際の調整値V1を算出することができる。同様に、第3調整パターンPT1c、第4調整パターンPT1dに対して、ステップS107、S109、S111を順に実行することで、それぞれイエローインク、ブラックインクを吐出する際の調整値V1を算出することができる。同様に、第5調整パターンPT1e、第6調整パターンPT1f、第7調整パターンPT1g、第8調整パターンPT1hに対して、ステップS107、S109、S111を順に実行することで、それぞれライトマゼンタインク、ライトシアンインク、ライトブラックインク、オレンジインクを吐出する際の調整値V1を算出することができる。
【0063】
本実施形態では、各色のインクに対する調整値V1に基づいて、双方向印刷の調整が実行される。ここで、調整値V1に基づいて、インクヘッド28が復路方向Y2に移動する際の印刷におけるインクヘッド28からの吐出のタイミングを調整する。このことで、往路方向Y1における印刷におけるインクの着弾位置と、復路方向Y2における印刷におけるインクの着弾位置との主走査方向Yのズレを最小限に抑えることができる。
【0064】
本実施形態では、ユーザはタッチパネル13を操作して媒体5を前方に搬送させることで、媒体5に印刷された調整パターンPT1を視認することができる。その後、ユーザは、タッチパネル13を操作することで、タッチパネル13において、印刷画像を媒体5に印刷するための画面に移行する。このとき、調整パターンPT1の印刷を完了した位置、または、ユーザが指定した位置まで媒体5が後方に搬送される。すなわち、印刷開始位置まで媒体5が自動的に搬送されることになる。よって、ユーザの操作負担を軽減することができる。
【0065】
以上、本実施形態では、
図1に示すように、プリンタ100は、媒体5を支持するプラテン18と、プラテン18に支持された媒体5にインクを吐出するインクヘッド28(
図2参照)と、センサヘッド36と、移動機構30と、制御装置50とを備えている。センサヘッド36は、媒体5に印刷された調整パターンPT1であって、双方向印刷におけるインクヘッド28からのインクの着弾位置を調整するための調整パターンPT1(
図5参照)を読み取るセンサ38を有している。移動機構30は、印刷時にインクヘッド28を主走査方向Yに移動させ、調整パターンPT1を読み取るときにセンサヘッド36を主走査方向Yに移動させる。
図2に示すように、インクヘッド28は、インクを吐出する複数のノズル40が副走査方向Xに並んだノズル列41を有している。ノズル列41は、ノズル列41の副走査方向Xの中央部分に位置する中央ノズル42を有している。ここで、媒体5に印刷された各調整パターンPT1の副走査方向Xの長さL11(
図6参照)は、ノズル列41の長さL12(
図2参照)以下である。
図3に示すように、制御装置50は、調整パターン印刷部61と、センサ移動制御部67と、読取部69と、決定部71とを備えている。調整パターン印刷部61は、
図4のステップS101にように、インクヘッド28を往路方向Y1、および、復路方向Y2に移動させている間にインクヘッド28からインクを吐出させて、
図5に示すような調整パターンPT1を媒体5に印刷する。センサ移動制御部67は、
図4のステップS107のように、媒体5に印刷された調整パターンPT1のうち、中央ノズル42によって吐出されたインクで形成されたパターン部分C1(
図7参照)上をセンサ38が走査するように、センサヘッド36の移動を制御する。読取部69は、
図4のステップS109のように、センサ移動制御部67によってセンサヘッド36が移動している間に、センサ38によって調整パターンPT1のパターン部分C1を読み取る。決定部71は、
図4のステップS111のように、読取部69によるパターン部分C1の読み取り結果に基づいて、双方向印刷におけるインクの着弾位置を調整するための調整値V1を決定する。
【0066】
本実施形態では、ノズル列41の中央ノズル42から吐出されたインクの着弾位置の精度は、ノズル列41の端に位置するノズル40から吐出されたインクの着弾位置の精度よりもよい。そこで、双方向印刷におけるインクヘッド28からのインクの着弾位置を調整するための調整パターンPT1のうち、インクの着弾位置の精度がよい中央ノズル42で印刷されたパターン部分C1をセンサ38で読み取ることで、より正確な調整値V1を決定することができる。よって、双方向印刷のインクの着弾位置の調整の精度を高めることができる。
【0067】
本実施形態では、
図3に示すように、制御装置50は、位置検出部63と、中心線算出部65とを備えている。位置検出部63は、例えば第1調整パターンPT1aの副走査方向Xの両端の位置を検出する。中心線算出部65は、第1調整パターンPT1aの両端の位置に基づいて、第1調整パターンPT1aにおける副走査方向Xの中心を通る中心線L1(
図7参照)を算出する。
図3のセンサ移動制御部67は、第1調整パターンPT1aの中心線L1を基準にして、第1調整パターンPT1aのパターン部分C1上をセンサ38が走査するようにセンサヘッド36の移動を制御する。このことによって、第1調整パターンPT1aの副走査方向Xの両端の位置から、第1調整パターンPT1aの中心線L1を容易に算出することができる。ここでは、第1調整パターンPT1aの中心線L1を基準にして、第1調整パターンPT1aのパターン部分C1上をセンサ38が走査することで、第1調整パターンPT1aのうち中央ノズル42で印刷されたパターン部分C1をセンサ38で読み取ることができる。
【0068】
本実施形態では、制御装置50の記憶部52(
図3参照)には、媒体5に印刷された第1調整パターンPT1aを印刷する際に使用されたノズル40の範囲が示されたノズル情報が記憶されている。
図3の位置検出部63は、第1調整パターンPT1aの副走査方向Xの一端(例えば前端)の位置を検出する。センサ移動制御部67は、ノズル情報と、第1調整パターンPT1aの一端の位置と、に基づいて決定される第1調整パターンPT1aのパターン部分C1上をセンサ38が走査するようにセンサヘッド36の移動を制御する。このように、第1調整パターンPT1aを印刷する際に使用されたノズル40の範囲が予め分かっていることで、第1調整パターンPT1aの副走査方向Xの一端の位置を検出するのみで、第1調整パターンPT1aのパターン部分C1を容易に算出することができる。この場合、第1調整パターンPT1aの副走査方向Xの両端の位置を検出しなくてもよいため、検出時間を短くすることができる。
【0069】
本実施形態では、
図2に示すように、インクヘッド28は、ノズル40から吐出されるインクの色が異なる複数のノズル列41を有している。
図5に示すように、調整パターンPT1は、インクの色毎に存在する。インクの色毎の調整パターンPT1(ここでは第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1h)は、副走査方向Xに並ぶように配置されている。各調整パターンPT1は、往路パターンPT11と、復路パターンPT12とを有する。往路パターンPT11は、インクヘッド28が往路方向Y1に移動しているときに、少なくとも中央ノズル42(
図2参照)から吐出されたインクによって印刷された第1図形F1が主走査方向Yに複数並んで配置されたパターンである。復路パターンPT12は、インクヘッド28が復路方向Y2に移動しているときに、少なくとも中央ノズル42(
図2参照)から吐出されたインクによって印刷された第2図形F2が、第1図形F1と対になるように主走査方向Yに複数並んで配置されたパターンである。ここで、対になる第1図形F1と第2図形F2を調整組G1としたとき、隣り合う調整組G1において、第2図形F2に対する第1図形F1の主走査方向Yの位置が異なっている。
図3の調整パターン印刷部61は、
図5に示すように、インクの複数の色のうち、予め定められた基準色のインクで形成された調整パターンPT1(ここでは第4調整パターンPT1d)と主走査方向Yに並んで配置された基準図形F5を、基準色のインクで媒体5に印刷する。
図3のセンサ移動制御部67は、少なくとも中央ノズル42によって吐出された基準図形F5の部分を基準にして、調整パターンPT1のパターン部分C1上をセンサ38が走査するように、センサヘッド36の移動を制御する。
【0070】
ここで、基準図形F5に対して、各調整パターンPT1の相対的な位置は一意的である。そのため、基準図形F5のうち、中央ノズル42によって吐出された部分を特定することで、各調整パターンPT1のパターン部分C1(
図7参照)を一意的に特定することができる。
【0071】
本実施形態では、
図3の位置検出部63は、基準図形F5の副走査方向Xの両端の位置を検出する。
図3の中心線算出部65は、基準図形F5の両端の位置に基づいて、基準図形F5における副走査方向Xの中心を通る図形中心線L2を算出する。
図3のセンサ移動制御部67は、基準図形F5の図形中心線L2を基準にして、各調整パターンPT1のパターン部分C1(
図7参照)上をセンサ38が走査するように、センサヘッド36の移動を制御する。ここでは、基準図形F5の図形中心線L2から、各調整パターンPT1の中心線L1は一意的に決まる。よって、基準図形F5の図形中心線L2を特定することで、各調整パターンPT1のパターン部分C1を一意的に特定することができる。本実施形態では、基準図形F5の両端の位置を検出するのみで、各調整パターンPT1のパターン部分C1を算出することができるため、検出時間を短くすることができる。
【0072】
本実施形態では、基準図形F5を印刷するインクの基準色は、黒色である。例えば媒体5の色は、白色などの黒色とは相異なる色であることが多い。そのため、媒体5に対して基準図形F5を黒色のインクで印刷することで、基準図形F5の位置をセンサ38で検出し易くすることができる。
【0073】
本実施形態では、
図5に示すように、調整パターンPT1は、インクの色毎に存在し、例えば8つの調整パターンPT1(ここでは、第1調整パターンPT1a~第8調整パターンPT1h)は、副走査方向Xに並んで配置されていた。しかしながら、調整パターンPT1の数は、1つであってもよい。この場合、基準図形F5は省略されてもよい。ここでは、
図3の位置検出部63は、例えば1つの調整パターンPT1の副走査方向Xの両端の位置を検出してもよい。
図3の中心線算出部65は、1つの調整パターンPT1の副走査方向Xの両端に位置に基づいて、1つの調整パターンPT1の中心線L1を算出してもよい。
【符号の説明】
【0074】
5 媒体
18 プラテン(支持台)
28 インクヘッド
30 移動機構
36 センサヘッド
38 センサ
40 ノズル
41 ノズル列
42 中央ノズル
50 制御装置
61 調整パターン印刷部
63 位置検出部
65 中心線算出部
67 センサ移動制御部
69 読取部
71 決定部
100 プリンタ
PT1 調整パターン
C1 パターン部分