IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナカシマメディカル株式会社の特許一覧

特開2023-12201脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント
<>
  • 特開-脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント 図1
  • 特開-脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント 図2
  • 特開-脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント 図3
  • 特開-脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント 図4
  • 特開-脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント 図5
  • 特開-脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント 図6
  • 特開-脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント 図7
  • 特開-脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント 図8
  • 特開-脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント 図9
  • 特開-脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント 図10
  • 特開-脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012201
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】脊椎固定術用キットおよび椎間インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/46 20060101AFI20230118BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20230118BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20230118BHJP
   A61F 2/44 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A61F2/46
F16C11/04 G
F16C11/04 D
F16C11/10 A
A61F2/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115707
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】508282465
【氏名又は名称】帝人ナカシマメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 未来
(72)【発明者】
【氏名】藤田 圭生
【テーマコード(参考)】
3J105
4C097
【Fターム(参考)】
3J105AA03
3J105AA12
3J105AB02
3J105AB13
3J105AB17
3J105AC10
3J105BB03
3J105BB05
3J105BC13
3J105DA15
4C097AA10
4C097BB04
4C097MM09
(57)【要約】
【課題】椎間インプラント100の揺動の禁止と許可とを切り換えることができ、かつ、椎間インプラント100の揺動を許可したときでも挿入器具からの椎間インプラントのリリースを防止することができる脊椎固定術用キットを提供する。
【解決手段】脊椎固定術用キットは、椎間インプラント2と挿入器具3を含む。挿入器具3は、ロッド4と、ロッド4の軸方向に摺動可能なスリーブ5を含む。ロッド4は、椎間インプラント2のピボット穴24と係合するボス45が設けられた保持壁41,42と、保持壁43,44を支持するアーム43,44を含む。スリーブ5の先端部52には、保持壁41,42の間に介在する拘束板55が設けられている。スリーブ5は、椎間インプラント2の揺動を禁止する揺動禁止位置と、椎間インプラント2の揺動を許可する揺動許可位置と、拘束板55がアーム43,44の間に後退する後退位置との間で摺動する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入端及び係合端を含む椎間インプラントであって、前記係合端が互いに対向してそれらの間にスロットを形成する一対の係合壁を有し、前記一対の係合壁に一対のピボット穴がそれぞれ設けられた椎間インプラントと、
前記椎間インプラントを揺動可能に保持するロッド、および前記ロッドに貫通される、前記ロッドの軸方向に摺動可能なスリーブを含む挿入器具と、を備え、
前記ロッドは、前記スロットに挿入される、互いに対向する一対の保持壁と、前記一対の保持壁にそれぞれ設けられた、前記一対のピボット穴と係合する一対のボスと、前記一対の保持壁をそれぞれ支持する、前記一対の保持壁同士の離間距離よりも大きな離間距離で互いに対向する一対のアームを含み、
前記スリーブは、前記スロットに挿入される先端部を有し、前記先端部には、前記一対の保持壁の間に介在する拘束板が設けられており、
前記スリーブは、前記拘束板が前記一対の保持壁の間に介在する位置である、前記椎間インプラントの揺動を禁止する揺動禁止位置と、前記拘束板が前記一対の保持壁の間に介在したままで前記先端部が前記スロットから所定量だけ引き抜かれた位置である、前記椎間インプラントの揺動を許可する揺動許可位置と、前記拘束板が前記一対のアームの間に後退する後退位置との間で摺動する、脊椎固定術用キット。
【請求項2】
前記一対の係合壁のそれぞれは、前記ピボット穴を中心とする円弧状の輪郭を有し、
前記一対の係合壁の少なくとも一方の内周面の周縁には、前記ピボット穴の周方向に並ぶ、前記ピボット穴を中心とする径方向に開口する複数の窪みが形成されており、
前記スリーブの前記先端部には、前記揺動禁止位置で前記複数の窪みの1つと嵌合し、前記揺動許可位置で前記1つの窪みから抜け出す少なくとも1つの突起が設けられている、請求項1に記載の脊椎固定術用キット。
【請求項3】
前記複数の窪みは、前記ピボット穴回りに5~30度ピッチで形成されている、請求項2に記載の脊椎固定術用キット。
【請求項4】
挿入端及び係合端を備え、
前記係合端は、互いに対向してそれらの間にスロットを形成する一対の係合壁を有し、前記一対の係合壁に一対のピボット穴がそれぞれ設けられ、
前記一対の係合壁のそれぞれは、前記ピボット穴を中心とする円弧状の輪郭を有し、
前記一対の係合壁の少なくとも一方の内周面の周縁には、前記ピボット穴の周方向に並ぶ、前記ピボット穴を中心とする径方向に開口する複数の窪みが形成されている、椎間インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎間インプラントを椎間板内に挿入するための脊椎固定術用キット、およびその脊椎固定術用キットに好適な椎間インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎固定術の一つの手技では、椎間板内に椎間インプラントを挿入した状態で椎体同士が連結される。椎間インプラントの中には、挿入器具と係合する一端回りに旋回されながら、椎間板内へ挿入されるものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、図9に示すような椎間インプラント100と、図10に示すような挿入器具200が記載されている。椎間インプラント100は、尖った挿入端110と、挿入器具200と係合する係合端120を含む。
【0004】
係合端120は一対の係合壁121,122を有し、これらの係合壁121,122の間には、挿入器具200の先端が挿入されるスロット130が形成されている。係合壁121,122のそれぞれには、ピボット穴123が形成されているとともに、ピボット穴123の周囲に複数の係合穴124が形成されている。
【0005】
一方、挿入器具200は、椎間インプラント100を揺動可能に保持する管状体300と、管状体300内に挿入される、管状体300の軸方向に摺動可能なシャフト400を含む。管状体300は、図11に示すように、椎間インプラント100のスロット130に挿入される、互いに対向する一対の保持壁310,320と、保持壁310,320をそれぞれ支持する一対のアーム330,340を含む。アーム330,340は、保持壁310,320同士の離間距離よりも大きな離間距離で互いに対向している。
【0006】
保持壁310,320のそれぞれには、ピボット穴123と係合するボス350が設けられている。一対のボス350が一対のピボット穴123と係合することで、椎間インプラント100がピボット穴123を中心として揺動可能となる。
【0007】
さらに、保持壁310,320のそれぞれには、ボス350の周囲に複数の突起360が設けられている。これらの突起360が係合穴124と係合することで、椎間インプラント100の揺動が禁止される。
【0008】
シャフト400は、保持壁310,320の間に介在する板状のヘッド410を含む。シャフト400は、ヘッド410が保持壁310,320の間に介在するロック位置と、ヘッド410がアーム330,340の間に後退するピボット位置との間で摺動する。ピボット位置では、保持壁310,320が互いに近づくようにアーム330,340が撓み可能である。従って、シャフト400をピボット位置に摺動させた状態で椎間インプラント100に回転力を付与すれば、突起360と係合穴124との係合が解除されるまでアーム330,340が撓むことで椎間インプラント100がピボット穴123を中心として揺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第10478313号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の椎間インプラント100および挿入器具200では、ピボット位置で突起360と係合穴124との係合が解除されるようにアーム330,340が撓んだときに、ボス350とピボット穴123との係合が不十分となって椎間インプラント100が挿入器具200からリリースされるおそれがある。
【0011】
これに対し、突起360および係合穴124を省略して保持壁310,320を椎間インプラント100の係合壁121,122に押し付けることで摩擦力によって椎間インプラント100を保持することが考えられる。しかし、この場合には、椎間インプラント100を椎間板内に挿入する際の抵抗によって椎間インプラント100が揺動するおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、椎間インプラント100の揺動の禁止と許可とを切り換えることができ、かつ、椎間インプラント100の揺動を許可したときでも挿入器具からの椎間インプラントのリリースを防止することができる脊椎固定術用キット、およびその脊椎固定術用キットに好適な椎間インプラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明は、挿入端及び係合端を含む椎間インプラントであって、前記係合端が互いに対向してそれらの間にスロットを形成する一対の係合壁を有し、前記一対の係合壁に一対のピボット穴がそれぞれ設けられた椎間インプラントと、前記椎間インプラントを揺動可能に保持するロッド、および前記ロッドに貫通される、前記ロッドの軸方向に摺動可能なスリーブを含む挿入器具と、を備え、前記ロッドは、前記スロットに挿入される、互いに対向する一対の保持壁と、前記一対の保持壁にそれぞれ設けられた、前記一対のピボット穴と係合する一対のボスと、前記一対の保持壁をそれぞれ支持する、前記一対の保持壁同士の離間距離よりも大きな離間距離で互いに対向する一対のアームを含み、前記スリーブは、前記スロットに挿入される先端部を有し、前記先端部には、前記一対の保持壁の間に介在する拘束板が設けられており、前記スリーブは、前記拘束板が前記一対の保持壁の間に介在する位置である、前記椎間インプラントの揺動を禁止する揺動禁止位置と、前記拘束板が前記一対の保持壁の間に介在したままで前記先端部が前記スロットから所定量だけ引き抜かれた位置である、前記椎間インプラントの揺動を許可する揺動許可位置と、前記拘束板が前記一対のアームの間に後退する後退位置との間で摺動する、脊椎固定術用キットを提供する。
【0014】
上記の構成によれば、スリーブを揺動禁止位置と揺動許可位置との間で摺動するだけで、椎間インプラントの揺動の禁止と許可とを切り換えることができる。しかも、揺動禁止位置および揺動許可位置では、拘束板が一対の保持壁の間に介在するので、保持壁に設けられたボスと椎間インプラントのピボット穴との係合を維持することができる。従って、挿入器具からの椎間インプラントのリリースを防止することができる。さらに、スリーブを後退位置に摺動させれば、保持壁が互いに近づくようにアームが撓むことができるので、挿入器具への椎間インプラントの取付および挿入器具からの椎間インプラントの取外しを行うことができる。
【0015】
前記一対の係合壁のそれぞれは、前記ピボット穴を中心とする円弧状の輪郭を有し、前記一対の係合壁の少なくとも一方の内周面の周縁には、前記ピボット穴の周方向に並ぶ、前記ピボット穴を中心とする径方向に開口する複数の窪みが形成されており、前記スリーブの前記先端部には、前記揺動禁止位置で前記複数の窪みの1つと嵌合し、前記揺動許可位置で前記1つの窪みから抜け出す少なくとも1つの突起が設けられてもよい。この構成によれば、揺動禁止位置でスリーブの先端部に設けられた突起が椎間インプラントの窪みと嵌合するので、椎間インプラントの揺動を強固に阻止することができる。
【0016】
例えば、前記複数の窪みは、前記ピボット穴回りに5~30度ピッチで形成されてもよい。
【0017】
また、本発明は、挿入端及び係合端を備え、前記係合端は、互いに対向してそれらの間にスロットを形成する一対の係合壁を有し、前記一対の係合壁に一対のピボット穴がそれぞれ設けられ、前記一対の係合壁のそれぞれは、前記ピボット穴を中心とする円弧状の輪郭を有し、前記一対の係合壁の少なくとも一方の内周面の周縁には、前記ピボット穴の周方向に並ぶ、前記ピボット穴を中心とする径方向に開口する複数の窪みが形成されている、椎間インプラントを提供する。この構成によれば、脊椎固定術用キットに好適な椎間インプラントが実現される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、椎間インプラント100の揺動の禁止と許可とを切り換えることができ、かつ、椎間インプラント100の揺動を許可したときでも挿入器具からの椎間インプラントのリリースを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る脊椎固定術用キットの斜視図であり、挿入器具の先端に椎間インプラントが取り付けられた状態を示す。
図2図1の要部拡大図である。
図3】椎間インプラントの斜視図である。
図4】挿入器具の先端の斜視図である。
図5】挿入器具の分解斜視図である。
図6図2のVI-VIに沿った、スリーブが揺動禁止位置にあるときの断面図である。
図7】スリーブが揺動許可位置にあるときの断面図である。
図8】スリーブが後退位置にあるときの断面図である。
図9】従来の椎間インプラントの斜視図である。
図10】従来の挿入器具の斜視図である。
図11】従来の挿入器具の先端の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本発明の一実施形態に係る脊椎固定術用キット1を示す。このキット1は、椎間板内に挿入される椎間インプラント2と、この椎間インプラント2が先端に取り付けられる挿入器具3を含む。
【0021】
椎間インプラント2は、尖った挿入端2aと、挿入器具3と係合する係合端2bを含む。本実施形態では、椎間インプラント2が湾曲した形状を有する。ただし、椎間インプラント2の形状はこれに限られるものではなく、図9の示す従来の椎間インプラント100と同様にストレートであってもよい。
【0022】
図2および図3に示すように、椎間インプラント2の係合端2bは、互いに対向する一対の係合壁21,22を有する。係合壁21,22の間には、スロット23が形成されている。係合壁21,22には、一対のピボット穴24がそれぞれ設けられている。双方のピボット穴24は同軸上に並んでいる。
【0023】
本実施形態では、係合壁21,22のそれぞれが、ピボット穴24を中心とする円弧状の輪郭を有する。さらに、本実施形態では、係合壁21,22のそれぞれの内周面の周縁に、ピボット穴24の周方向に並ぶ複数の窪み25が形成されている。これらの窪み25は、ピボット穴24を中心とする径方向に開口している。例えば、窪み25は、ピボット穴24回りに5~30度ピッチで形成される。
【0024】
挿入器具3は、図4および図5に示すように、椎間インプラント2を揺動可能に保持するロッド4と、およびこのロッド4に貫通される、ロッド4の軸方向に摺動可能なスリーブ5を含む。
【0025】
本実施形態では、図1に示すように、ロッド4の椎間インプラント2と反対側の端部にグリップ7が取り付けられており、このグリップ7の前方に操作部6が設けられている。操作部6は、スリーブ5の軸方向におけるスリーブ5との相対移動は不能であるもののスリーブ5との相対回転は可能である。また、操作部6はねじ構造によりグリップ7と結合されており、操作部6を回転することで、操作部6およびスリーブ5がロッド4の軸方向に摺動する。
【0026】
なお、スリーブ5を摺動させる構成はこれに限られず適宜変更可能である。例えば、操作部6をスリーブ5に固定するとともに、スプリングによって操作部6を椎間インプラント2に向かって付勢し、操作部6をスプリングの付勢力に抗してグリップ7に近づけることでスリーブ5を摺動させてもよい。
【0027】
図4および図5に戻って、ロッド4は、椎間インプラント2のスロット23に挿入される一対の保持壁41,42と、これらの保持壁41,42をそれぞれ支持する一対のアーム43,44を含む。保持壁41,42は互いに対向しており、アーム43,44は保持壁41,42同士の離間距離よりも大きな離間距離で互いに対向している。保持壁41,42には、椎間インプラント2のピボット穴24と係合する一対のボス45それぞれ設けられている。
【0028】
スリーブ5は、筒状の本体51と、本体51から突出する、本体51が扁平化されたような形状の先端部52を含む。先端部52は、ロッド4の保持壁41,42と同様に椎間インプラント2のスロット23に挿入される部分である。
【0029】
本実施形態では、先端部52が、保持壁41の両側に位置する一対のショルダー53と、保持壁42の両側に位置する一対のショルダー54で構成されている。また、先端部52には、保持壁41,42の間に介在する拘束板55が設けられている。
【0030】
拘束板55は、保持壁41,42よりも広い幅を有し、拘束板55の両端部は、ショルダー53とショルダー54の間に挟持されている。拘束板55は、ショルダー53、拘束板55およびショルダー54を貫通するピン57(図7および図8も参照)によって先端部52に固定されている。例えば、拘束板55とピン57のどちらかがショルダー53,54に溶接される。
【0031】
ピン57の両端は、ショルダー53,54から突出しており、突起56を形成する。各突起56は、椎間インプラント2の窪み25の1つと嵌合する。
【0032】
スリーブ5は、図6に示す揺動禁止位置と、図7に示す揺動許可位置と、図8に示す後退位置との間で摺動する。
【0033】
揺動禁止位置は、拘束板55が保持壁41,42の間に介在する位置である。また、揺動禁止位置では、各突起56が椎間インプラント2の窪み25の1つと嵌合する。これにより椎間インプラント2の揺動が禁止される。
【0034】
揺動許可位置は、拘束板55が保持壁41,42の間に介在したままで先端部52がスロット23から所定量だけ引き抜かれた位置である。また、揺動許可位置では、突起56が窪み25から抜け出す。これにより、椎間インプラント2の揺動が許可される。
【0035】
後退位置は、拘束板55がアーム43,44の間に後退する位置である。これにより、アーム43,44が、保持壁41,42が互いに近づくように撓むことが可能となる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のキット1では、スリーブ5を揺動禁止位置と揺動許可位置との間で摺動するだけで、椎間インプラント2の揺動の禁止と許可とを切り換えることができる。しかも、揺動禁止位置および揺動許可位置では、拘束板55が保持壁41,42の間に介在するので、保持壁41,42に設けられたボス45と椎間インプラント2のピボット穴24との係合を維持することができる。従って、挿入器具3からの椎間インプラント2のリリースを防止することができる。さらに、スリーブ5を後退位置に摺動させれば、保持壁41,42が互いに近づくようにアーム43,44が撓むことができるので、挿入器具3への椎間インプラント2の取付および挿入器具3からの椎間インプラント2の取外しを行うことができる。
【0037】
ところで、図10および11に示す従来の挿入器具200では、突起360が椎間インプラント100の係合穴124との係合が解除されるようにアーム330,340が撓むことでピボット穴123を中心とする椎間インプラント100の揺動が可能となるが、椎間インプラント100を揺動させると、突起360が係合穴124に係合する度に揺動がストップする。しかも、椎間インプラント100の揺動中は撓んだアーム330,340が椎間インプラント100の係合壁121,122に押し付けられるため、椎間インプラント100の揺動がスムーズではない。
【0038】
これに対し、本実施形態のキット1に含まれる挿入器具3では、ボス45がロッド4に設けられる一方、突起56がロッド4とは別のスリーブ5に設けられているので、スリーブ5が揺動許可位置にあるときは椎間インプラント2をスムーズに揺動させることができる。
【0039】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0040】
例えば、椎間インプラント2の係合壁21,22の一方のみに窪み25が形成され、スリーブ5の先端部52には窪み25と嵌合する突起56が1つだけ設けられてもよい。
【0041】
あるいは、窪み25および突起56の代わりに、椎間インプラント2の係合壁21,22のそれぞれが多角形状の輪郭を有し、その多角形の一辺がスリーブ5の本体51の先端面に当接することで椎間インプラント2の揺動が禁止されてもよい。
【0042】
ただし、この構成では、揺動禁止位置において椎間インプラント2に大きな回転力が付与されたときに椎間インプラント2が揺動するおそれがある。これに対し、前記実施形態のようにスリーブ5の先端部52に設けられた突起56が揺動禁止位置で椎間インプラント2の窪み25と嵌合する構成であれば、椎間インプラント2の揺動を強固に阻止することができる。このように窪み25を含む椎間インプラント2であれば、脊椎固定術用キット17に好適な椎間インプラント2が実現される。
【符号の説明】
【0043】
1 脊椎固定術用キット
2 椎間インプラント
2a 挿入端
2b 係合端
21,22 係合壁
24 ピボット穴
25 窪み
3 挿入器具
4 ロッド
41,42 保持壁
43,44 アーム
45 ボス
5 スリーブ
52 先端部
55 拘束板
56 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11