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特開2023-122013ワーク保持チャックおよびワーク加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122013
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ワーク保持チャックおよびワーク加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/117 20060101AFI20230825BHJP
   B23B 31/40 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B23B31/117 610A
B23B31/40
B23B31/117 610C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025430
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】513310209
【氏名又は名称】内田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】内田 成俊
(72)【発明者】
【氏名】久米 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】内田 典孝
(72)【発明者】
【氏名】内田 知宏
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032FF11
3C032MM02
3C032MM05
(57)【要約】
【課題】拡縮のための力を低下させながら拡縮量を増加させることができるワーク保持チャックおよびワーク加工装置を提供する。
【解決手段】ワーク保持チャック100は、チャック本体101を備えている。チャック本体101は、円筒状に形成して構成されており、外周部にチャック部102が形成されるとともに内周部に肉厚部103および薄肉部105が形成されている。チャック部102は、円曲面で構成されている。肉厚部103は、周方向に沿って等間隔に6つ形成されている。薄肉部105は、チャック本体101の最外周部分に肉厚部103よりも薄肉に形成されており、周方向に沿って等間隔に6つ形成されている。また、薄肉部105の周方向の中央部には、小肉厚部110が形成されている。小肉厚部110は、薄肉部105表面からチャック本体101の径方向内側に向かって半円状に突出して形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された被加工物を着脱自在に保持するワーク保持チャックであって、
円筒状に形成されたチャック本体と、
前記チャック本体の外周部に形成されて前記被加工物の内周部を押圧するチャック部と、
前記チャック本体の内周部に周方向に沿って少なくとも3つ以上形成されて同チャック本体の径方向内側に張り出す肉厚部と、
前記少なくとも3つ以上形成された肉厚部の各内側面に前記チャック本体の軸方向に沿って内径が連続的に変化するテーパ状に形成されたテーパ部と、
周方向に互いに隣接する2つの前記肉厚部の間に同肉厚部よりも薄肉に形成された薄肉部とを備え、
前記薄肉部は、
前記肉厚部以下の張り出し量で前記チャック本体の径方向内側に張り出す小肉厚部を備えることを特徴とするワーク保持チャック。
【請求項2】
筒状に形成された被加工物を着脱自在に保持するワーク保持チャックであって、
円筒状に形成されたチャック本体と、
前記チャック本体の内周部に形成されて前記被加工物の外周部面を押圧するチャック部と、
前記チャック本体の外周部に周方向に沿って少なくとも3つ以上形成されて同チャック本体の径方向外側に張り出す肉厚部と、
前記少なくとも3つ以上形成された肉厚部の各外側面に前記チャック本体の軸方向に沿って外径が連続的に変化するテーパ状に形成されたテーパ部と、
周方向に互いに隣接する2つの前記肉厚部の間に同肉厚部よりも薄肉に形成された薄肉部とを備え、
前記薄肉部は、
前記肉厚部以下の張り出し量で前記チャック本体の径方向外側に張り出す小肉厚部を備えることを特徴とするワーク保持チャック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したワーク保持チャックにおいて、
前記小肉厚部は、
前記薄肉部に対して曲面を介して隆起していることを特徴とするワーク保持チャック。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したワーク保持チャックにおいて、
前記小肉厚部は、
前記互いに隣接する2つの前記肉厚部間の中央部分に形成されていることを特徴とするワーク保持チャック。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したワーク保持チャックにおいて、
前記小肉厚部は、
前記張り出し量が前記肉厚部の張り出し量の1/10以下であることを特徴とするワーク保持チャック。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載したワーク保持チャックにおいて、
前記小肉厚部は、
前記肉厚部とは反対側の面に凹状に窪んだ逃がし部を備えていることを特徴とするワーク保持チャック。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載したワーク保持チャックにおいて、
前記肉厚部と前記薄肉部とは、曲面で繋がっていることを特徴とするワーク保持チャック。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載したワーク保持チャックにおいて、
前記チャック本体は、
軸方向に貫通して延びる切欠き部によって同軸方向から見てC字状に形成されていることを特徴とするワーク保持チャック。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載したワーク保持チャックを保持するワーク保持具と、
前記ワーク保持チャックにおける前記テーパ部に嵌合するテーパ状に形成された装置側テーパ部と、
前記装置側テーパ部に対して前記ワーク保持チャックを相対変位させるチャック変位手段とを備えることを特徴とするワーク加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工の対象となる被加工物を着脱自在に把持するワーク保持チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機械加工の対象となる被加工物を着脱自在に把持するワーク保持チャックがある。例えば、下記特許文献1には、ワークの基準穴内に挿し込まれる円筒状の拡縮部がこの拡縮部内に挿し込まれるセンターピンによって径方向に拡縮する位置決めピンを備えたクランプ装置が開示されている。この場合、円筒状に形成された位置決めピンは、円筒体の内部に溝を形成することで外径が拡縮するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-123016号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された位置決めピンにおいては、溝を形成した部分の剛性が低下するために深さの深い溝または幅の広い溝を形成することが難しく、拡縮部を拡縮させるために大きな力が必要になるとともに拡縮量も少ないという問題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、拡縮のための力を低下させながら拡縮量を増加させることができるワーク保持チャックおよびワーク加工装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、筒状に形成された被加工物を着脱自在に保持するワーク保持チャックであって、円筒状に形成されたチャック本体と、チャック本体の外周部に形成されて被加工物の内周部を押圧するチャック部と、チャック本体の内周部に周方向に沿って少なくとも3つ以上形成されて同チャック本体の径方向内側に張り出す肉厚部と、少なくとも3つ以上形成された肉厚部の各内側面にチャック本体の軸方向に沿って内径が連続的に変化するテーパ状に形成されたテーパ部と、周方向に互いに隣接する2つの肉厚部の間に同肉厚部よりも薄肉に形成された薄肉部とを備え、薄肉部は、肉厚部以下の張り出し量でチャック本体の径方向内側に張り出す小肉厚部を備えることにある。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、筒状に形成された被加工物を着脱自在に保持するワーク保持チャックであって、円筒状に形成されたチャック本体と、チャック本体の内周部に形成されて被加工物の外周部面を押圧するチャック部と、チャック本体の外周部に周方向に沿って少なくとも3つ以上形成されて同チャック本体の径方向外側に張り出す肉厚部と、少なくとも3つ以上形成された肉厚部の各外側面にチャック本体の軸方向に沿って外径が連続的に変化するテーパ状に形成されたテーパ部と、周方向に互いに隣接する2つの肉厚部の間に同肉厚部よりも薄肉に形成された薄肉部とを備え、薄肉部は、肉厚部以下の張り出し量でチャック本体の径方向外側に張り出す小肉厚部を備えることにある。
【0008】
このように構成した本発明の特徴によれば、ワーク保持チャックは、テーパ部を有する肉厚部と肉厚部との間に薄肉部を有するとともにこの薄肉部に肉厚部の張り出し量以下の張り出し量の小肉厚部を形成したことで薄肉部の剛性低下を抑えつつ変形し易くしているため、拡縮のための力を低下させながら拡縮量を増加させることができる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記ワーク保持チャックにおいて、小肉厚部は、薄肉部に対して曲面を介して隆起していることにある。
【0010】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ワーク保持チャックは、小肉厚部が薄肉部に対して曲面を介して隆起しているため、薄肉部の変形時における薄肉部と小肉厚部との間の損傷を抑えて変形させ易くすることができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記ワーク保持チャックにおいて、小肉厚部は、互いに隣接する2つの肉厚部間の中央部分に形成されていることにある。
【0012】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ワーク保持チャックは、小肉厚部が互いに隣接する2つの肉厚部間の中央部分に形成されているため、薄肉部のいびつな変形または偏った変形を抑えて均一に変形させることで被加工物を精度良く保持することができる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記ワーク保持チャックにおいて、小肉厚部は、張り出し量が肉厚部の張り出し量の1/10以下であることにある。
【0014】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ワーク保持チャックにおいて、小肉厚部は、張り出し量が肉厚部の張り出し量の1/10以下に形成されているため、互いに隣接する肉厚部同士を接近した位置に配置させ易くなって肉厚部におけるテーパ部の面積を大きくすることができチャック本体を精度良く拡縮させることができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記ワーク保持チャックにおいて、小肉厚部は、肉厚部とは反対側の面に凹状に窪んだ逃がし部を備えていることにある。
【0016】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ワーク保持チャックは、小肉厚部における肉厚部とは反対側の面に凹状に窪んだ逃がし部が形成されているため、逃がし部による小肉厚部の薄肉化および逃がし部の溝幅の拡縮によってチャック本体全体の拡縮量を増加させることができる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、前記ワーク保持チャックにおいて、肉厚部と薄肉部とは、曲面で繋がっていることにある。
【0018】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ワーク保持チャックは、肉厚部と薄肉部とが曲面で繋がっているため、薄肉部の変形時における薄肉部と肉厚部との間の損傷を抑えて変形させ易くすることができる。
【0019】
また、本発明の他の特徴は、前記ワーク保持チャックにおいて、チャック本体は、軸方向に貫通して延びる切欠き部によって同軸方向から見てC字状に形成されていることにある。
【0020】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、前記ワーク保持チャックは、チャック本体が軸方向に貫通して延びる切欠き部によって同軸方向から見てC字状に形成されているため、チャック本体をより拡縮させ易くすることができるとともに、拡縮量も増加させることができる。
【0021】
また、本発明は、ワーク保持チャックの発明として実施できるばかりでなく、このワーク保持チャックを保持することができるワーク加工装置の発明としても実施できるものである。
【0022】
具体的には、ワーク加工装置は、請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載したワーク保持チャックを保持するワーク保持具と、ワーク保持チャックにおけるテーパ部に嵌合するテーパ状に形成された装置側テーパ部と、装置側テーパ部に対してワーク保持チャックを相対変位させるチャック変位手段とを備えるとよい。これによれば、ワーク加工装置は、上記したワーク保持チャックと同様の作用効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(A),(B)は、本発明の第1実施形態に係るワーク保持チャックの構成の概略を示しており、(A)はワーク保持チャックの平面図であり、(B)は(A)のB-B線から見たワーク保持チャックの縦断面図である。
図2図1の破線円2で囲まれた部分を拡大したワーク保持チャックの部分拡大図である。
図3図1に示すワーク保持チャックをワーク保持具に装着した状態を示す断面図である。
図4図2に示すワーク保持チャックの外径が拡大した状態を示す部分拡大図である。
図5】(A),(B)は、本発明の第2実施形態に係るワーク保持チャックの構成の概略を示しており、(A)はワーク保持チャックの平面図であり、(B)は(A)のB-B線から見たワーク保持チャックの縦断面図である。
図6図5に示すワーク保持チャックをワーク保持具に装着した状態を示す断面図である。
図7】第1実施形態に係るワーク保持チャックの変形例を示すワーク保持チャックの部分拡大図である。
図8】第1実施形態に係るワーク保持チャックの他の変形例を示すワーク保持チャックの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るワーク保持チャックの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1(A),(B)は、本発明の第1実施形態に係るワーク保持チャック100の構成の概略を示しており、(A)はワーク保持チャック100の平面図であり、(B)は(A)のB-B線から見たワーク保持チャック100の縦断面図である。
【0025】
このワーク保持チャック100は、歯切り盤、旋盤または研削機などの工作機械(図示せず)において回転駆動する主軸に取り付けられて筒状の被加工物WKを着脱自在に保持する器具である。また、ワーク保持チャック100は、フライス盤またはマシニングセンタなどの工作機械(図示せず)においてワークテーブル上で筒状の被加工物WKの求心位置決めをすることもできる。
【0026】
ワーク保持チャック100は、チャック本体101を備えている。チャック本体101は、チャック部102、肉厚部103および薄肉部105がそれぞれ形成される部分であり、鋼材などの金属材料を円筒状に形成して構成されている。このチャック本体101には、外周部にチャック部102が形成されるとともに、内周部に肉厚部103および薄肉部105がそれぞれ形成されている。また、チャック本体101の軸方向の長さは、加工中における被加工物WKを安定的に保持できる長さに形成されている。
【0027】
チャック部102は、円筒状の被加工物WKの内周面を押圧することで被加工物WKを保持する部分であり、断面形状が円形の曲面(以下、これを「円曲面」ということがある)で構成されている。このチャック部102は、円筒状に形成された被加工物WKの内径よりも若干小さい外径、すなわち、隙間ばめの寸法公差で表面が滑らかに形成されている。
【0028】
肉厚部103は、チャック本体101の剛性を確保するとともにテーパ部104が形成される部分であり、チャック本体101の内周部に軸方向に延びるとともに周方向に沿って断続的に形成されている。本実施形態においては、肉厚部103は、チャック本体101の軸方向の全長に亘って形成されているとともに、周方向に沿って等間隔に6つ形成されている。
【0029】
テーパ部104は、後述するチャック作動軸201が押し付けられる部分であり、チャック本体101の一方(図1(B)において上側)の端部から他方(図1(B)において下側)の端部に向かって内径が連続的に小さくなるテーパ形状に形成されている。この場合、テーパ部104を構成するテーパ角は、チャック作動軸201の装置側テーパ部202に密着するように同装置側テーパ部202のテーパ角に対応している。このテーパ部104の軸心は、チャック部102を構成する円筒体の軸心に一致している。
【0030】
薄肉部105は、図2に示すように、チャック本体101の外径を拡大または収縮させる部分であり、チャック本体101の内周部に軸方向に延びるとともに周方向に沿って断続的に形成されている。この場合、薄肉部105は、周方向に沿って断続的に形成された各肉厚部103の間にそれぞれ形成されている。本実施形態においては、薄肉部105は、チャック本体101の軸方向の全長に亘って形成されているとともに、周方向に沿って等間隔に6つ形成されている。
【0031】
また、薄肉部105は、チャック本体101の最外周部分に肉厚部103よりも薄肉に形成されている。この場合、薄肉部105は、肉厚が薄い程変形し易くなるが剛性が低下するため、チャック本体101の外径に対して0.5%以上かつ6%以下の肉厚が好適である。より具体的には、薄肉部105の厚さは、チャック本体101の外径が20mm以上かつ50mm以下の場合には、0.1mm以上かつ5mm以下がよいが、より好ましくは0.1mm以上かつ1mm以下がよい。
【0032】
また、薄肉部105のチャック本体101の中心Oに対する形成角αは、肉厚部103のチャック本体101の中心Oに対する形成角βに対して異なる角度でもよいし同じ角度でもよい。したがって、薄肉部105は、径方向外側の周方向の長さLαが肉厚部103の径方向外側の周方向の長さLβと異なっていてもよいし同じ長さでもよい。この場合、薄肉部105の径方向外側の周方向の長さLαは、薄肉部105における両端部(境界部106との接合点)を結ぶ直線または円弧の長さである。また、肉厚部103の径方向外側の周方向の長さLβは、肉厚部103における両端部(境界部106との接合点)を結ぶ直線または円弧の長さである。
【0033】
また、薄肉部105は、周方向の両端部がそれぞれ肉厚部103に対して円曲面状の境界部106を介して繋がっている。そして、薄肉部105の周方向の中央部には、小肉厚部110が形成されている。
【0034】
小肉厚部110は、図2に示すように、薄肉部105の剛性を高める部分であり、薄肉部105表面からチャック本体101の径方向内側(本実施形態においては中心O側)に向かって突出して形成されている。この場合、小肉厚部110は、チャック本体101の軸方向に沿って連続的または断続的に延びて形成されている。本実施形態においては、小肉厚部110は、断面形状が半円状の突起物がチャック本体101の軸方向に沿って連続的に延びて形成されている。
【0035】
この小肉厚部110の薄肉部105からの張出量(高さ)T1は、肉厚部103がチャック作動軸201を保持する部分、すなわち、テーパ部104に達しない範囲で設定される。この場合、小肉厚部110の張出量T1は、肉厚部103の高さT2の1/10以下が好適である。より具体的には、小肉厚部110の張出量T1は、チャック本体101の外径が20mm以上かつ50mm以下の場合には、0.1mm以上かつ10mm以下がよいが、より好ましくは0.1mm以上かつ5mm以下がよい。なお、小肉厚部110の張出量T1は、薄肉部105の厚さよりも大きく設定することで薄肉部105の剛性を極めて高くすることができる。
【0036】
また、小肉厚部110のチャック本体101の中心Oに対する形成角γは、薄肉部105の形成角α未満の角度で形成される。この場合、小肉厚部110の形成角γは、薄肉部105の形成角αの1/2以下がよく、より好ましくは1/5以下がよい。また、小肉厚部110は、周方向の両端部がそれぞれ薄肉部105に対して円曲面状の境界部111を介して繋がっている。この小肉厚部110は、6つの薄肉部105に対してそれぞれ同じ形状で形成されている。
【0037】
このように構成されたワーク保持チャック100は、切削加工および放電加工などからなる機械加工によって製作される。この場合、ワーク保持チャック100は、熱処理によって硬度を向上させておくとよい。
【0038】
(ワーク保持具200の構成)
上記のように構成されたワーク保持チャック100は、被加工物WKを加工する工作機械に対してワーク保持具200を介して取り付けられる。ここで、工作機械は、バイト、カッター、ドリル、エンドミル、パンチ、砥石またはレーザを加工工具Sとして被加工物WKに対して切削加工、塑性加工または除去加工を行う加工装置である。
【0039】
ワーク保持具200は、図3に示すように、ワーク保持チャック100を作動させて被加工物WKを保持させるための器具であり、主として、チャック作動軸201、押圧カラー204および操作子206をそれぞれ備えて構成されている。
【0040】
チャック作動軸201は、ワーク保持チャック100を支持するとともに、このワーク保持チャック100を介して被加工物WKを保持するための部品であり、鋼材などの金属材料を円筒状に形成して構成されている。このチャック作動軸201は、主として、装置側テーパ部202、カラー案内部203、雄ネジ部205、スプリング保持部207、フランジ部209および主軸接続部210がそれぞれ一体的に形成されて構成されている。
【0041】
装置側テーパ部202は、ワーク保持チャック100を摺動自在な状態で保持しつつワーク保持チャック100の外径を拡縮させるための部分であり、チャック作動軸201の軸方向の中央部に形成されている。より具体的には、装置側テーパ部202は、スプリング保持部207側からカラー案内部203に向かって内径が連続的に小さくなるテーパ形状に形成されている。この場合、装置側テーパ部202を構成するテーパ角は、ワーク保持チャック100の内周部に形成されたテーパ部104に密着するように同テーパ部104のテーパ角に対応している。また、装置側テーパ部202の軸心は、チャック作動軸201を構成する円筒体の軸心に一致している。
【0042】
カラー案内部203は、押圧カラー204をチャック作動軸201の軸方向に往復摺動自在に保持する部分であり、装置側テーパ部202に隣接する位置に円筒状に形成されている。押圧カラー204は、装置側テーパ部202に嵌合するワーク保持チャック100を装置側テーパ部202の軸方向の奥側(図示左側)に押すための部品であり、鋼材などの金属材料を円筒状に形成して構成されている。
【0043】
雄ネジ部205は、操作子206がネジ嵌合する部分であり、カラー案内部203に隣接する位置でチャック作動軸201における一方(図示右側)の端部に円筒状に形成されている。操作子206は、押圧カラー204を装置側テーパ部202側に押すための部品であり、鋼材などの金属材料からなる円筒体の内周面に雄ネジ部205にネジ嵌合する雌ネジが形成されて構成されている。
【0044】
スプリング保持部207は、スプリング208を伸縮自在な状態で保持する部分であり、装置側テーパ部202に対してカラー案内部203とは反対側に隣接する位置に円筒状に形成されている。スプリング208は、装置側テーパ部202上を摺動するワーク保持チャック100に対して弾性力を付与する部品であり、鋼材などの金属材料製のコイルスプリングで構成されている。このスプリング208は、一方(図示右側)の端部がリング状のスペーサ208aを介してワーク保持チャック100を押圧するとともに他方(図示左側)の端部がフランジ部209を押圧している。
【0045】
フランジ部209は、筒状に形成された被加工物WKの一方(図示左側)の端部が突き当てられて軸方向の位置を規定するための部分である。このフランジ部209は、スプリング保持部207に対して装置側テーパ部202とは反対側に隣接する位置にチャック作動軸201の径方向に円板状に張り出して形成されている。
【0046】
主軸接続部210は、チャック作動軸201を工作機械の主軸(図示せず)に接続する部分であり、チャック作動軸201における一方(図示左側)の端部に円筒状に形成されている。この主軸接続部210が工作機械における主軸に接続されることでワーク保持具200全体が軸線周りに回転駆動する。
【0047】
(ワーク保持チャック100の作動)
次に、上記のように構成したワーク保持チャック100の作動について説明する。このワーク保持チャック100は、上記したワーク保持具200を介して工作機械に取り付けられて機械加工が行われる。
【0048】
まず、作業者は、ワーク保持チャック100を用意してワーク保持具200に取り付ける。具体的には、作業者は、ワーク保持チャック100をワーク保持具200の雄ネジ部205側から差し入れて装置側テーパ部202にテーパ部104を密着させる。この場合、ワーク保持チャック100の先端部(図示左側端部)は、スプリング208にスペーサ208aを介して接触する。
【0049】
次に、作業者は、押圧カラー204をワーク保持具200の雄ネジ部205側から差し入れてカラー案内部203に配置してワーク保持チャック100後端部(図示右側端部)に突き当てる。次に、作業者は、操作子206を雄ネジ部205にねじ込んで軽く締め付ける。これにより、ワーク保持チャック100は、押圧カラー204によってスプリング208側に押されることでテーパ部104が装置側テーパ部202に押し付けられる。この場合、ワーク保持チャック100は、操作子206の締付け力が小さいため外径が変化することはない。これにより、作業者は、ワーク保持チャック100をワーク保持具200に取り付けることができる。
【0050】
次に、作業者は、ワーク保持具200に被加工物WKを取り付ける。この場合、被加工物WKは、筒状に形成されているとともに内周部にワーク保持チャック100のチャック部102の外径よりも若干大きな内径の被保持部Hが形成されている。作業者は、被加工物WKを雄ネジ部205側から差し入れて先端部(図示左側端部)がフランジ部209に突き当てる。これより、被加工物WKは、被保持部Hがワーク保持チャック100におけるチャック部102上に位置した状態で位置決めさせる。
【0051】
次に、作業者は、ワーク保持チャック100によって被加工物WKを保持する。具体的には、作業者は、操作子206を雄ネジ部205に更にねじ込んで締め付ける。これにより、ワーク保持チャック100は、押圧カラー204によってスプリング208の弾性力に抗しながら押されることでテーパ部104が装置側テーパ部202に強く押し付けられる。すなわち、雄ネジ部205および操作子206は、本願発明におけるチャック変位手段に相当する。
【0052】
この場合、ワーク保持チャック100は、装置側テーパ部202によって肉厚部103が径方向外側に押される。これにより、ワーク保持チャック100は、図4に示すように、薄肉部105が円曲面状態から平面状態に弾性変形する。この場合、ワーク保持チャック100は、薄肉部105に小肉厚部110が形成されているため弾性変形時における損傷が抑えられる。これにより、ワーク保持チャック100は、チャック部102の外径が拡大するため、被加工物WKにおける被保持部Hを径方向外側に押圧することで被加工物WKを保持することができる。すなわち、作業者は、ワーク保持チャック100によって被加工物WKをワーク保持具200上で保持させることができる。
【0053】
そして、作業者は、工作機械を操作することで被加工物WKに対して切削または研削などの機械加工を行うことができる。この被加工物WKに対する機械加工は、本発明に直接関らないため、その説明は省略する。
【0054】
次に、作業者は、被加工物WKに対する加工が終了した場合には、被加工物WKをワーク保持具200から取り外す。具体的には、作業者は、雄ネジ部205に対する操作子206の締付け力を緩める。これにより、ワーク保持チャック100は、スプリング208の弾性力によって操作子206側に変位する。この場合、ワーク保持チャック100は、装置側テーパ部202による肉厚部103への押圧力が弱まる。
【0055】
これにより、ワーク保持チャック100は、薄肉部105が平面状態から円曲面状態に形状が戻る。この場合、ワーク保持チャック100は、薄肉部105に小肉厚部110が形成されているため弾性変形時における損傷が抑えられる。これにより、ワーク保持チャック100は、チャック部102の外径が縮小するため、被加工物WKにおける被保持部Hに対する径方向外側への押圧が弱まることで被加工物WKの保持状態が解除される。したがって、作業者は、被加工物WKをワーク保持チャック100およびワーク保持具200から抜き去ることで被加工物WKをワーク保持具200から取り外すことができる。
【0056】
また、作業者は、ワーク保持チャック100をワーク保持具200から取り外すこともできる。具体的には、作業者は、雄ネジ部205に対する操作子206の締付け力をさらに緩めて操作子206を雄ネジ部205から取り外す。そして、作業者は、押圧カラー204をチャック作動軸201上から抜き去った後、ワーク保持チャック100をチャック作動軸201上から抜き去ることでワーク保持チャック100をワーク保持具200から取り外すことができる。
【0057】
上記作動説明からも理解できるように、上記第1実施形態によれば、ワーク保持チャック100は、テーパ部104を有する肉厚部103と肉厚部103との間に薄肉部105を有するとともにこの薄肉部105に肉厚部103の張り出し量以下の張り出し量の小肉厚部110が形成されているため、薄肉部105の剛性低下を抑えつつ変形し易くして拡縮のための力を低下させながら拡縮量を増加させることができる。
【0058】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るワーク保持チャック300について図5(A),(B)および図6をそれぞれ参照しながら説明する。上記第1実施形態においては、ワーク保持チャック100は、筒状に形成された被加工物WKの内周部を保持するように構成した。しかし、本第2実施形態におけるワーク保持チャック300は、筒状または棒状に形成された被加工物WKの外周部を保持する点において上記第1実施形態と異なる。したがって、本第2実施形態においては、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明して、両実施形態において共通する部分および対応する部分については適宜説明を省略する。
【0059】
このワーク保持チャック300は、チャック本体301、チャック部302、肉厚部303、テーパ部304、薄肉部305、境界部306および小肉厚部310をそれぞれ備えている。
【0060】
チャック本体301は、上記第1実施形態におけるチャック本体101に対応する部品であり、鋼材などの金属材料を円筒状に形成して構成されている。このチャック本体301には、内周部にチャック部302が形成されるとともに、外周部に肉厚部303および薄肉部305がそれぞれ形成されている。
【0061】
チャック部302は、上記第1実施形態におけるチャック部102に対応する部分であるが、チャック部102とは異なり被加工物WKの外周面を押圧することで被加工物WKを保持するために円筒状に構成されている。
【0062】
肉厚部303は、上記第1実施形態における肉厚部103に対応する部分であるが、肉厚部103とは異なりチャック本体301の外周部に軸方向に延びるとともに周方向に沿って断続的に形成される。本実施形態においては、肉厚部303は、チャック本体301の軸方向の全長に亘って形成されているとともに、周方向に沿って等間隔に6つ形成されている。
【0063】
テーパ部304は、上記第1実施形態におけるテーパ部104に対応する部分であるが、テーパ部104とは異なりチャック本体301の一方(図4(B)において上側)の端部から他方(図4(B)において下側)の端部に向かって外径が連続的に小さくなるテーパ形状に形成されている。
【0064】
薄肉部305は、上記第1実施形態における薄肉部105に対応する部分であるが、薄肉部105とは異なりチャック本体301の外周部に軸方向に延びるとともに周方向に沿って断続的に形成される。この場合、薄肉部305は、周方向に沿って断続的に形成された各肉厚部303の間にそれぞれ形成されている。本実施形態においては、薄肉部305は、チャック本体301の軸方向の全長に亘って形成されているとともに、周方向に沿って等間隔に6つ形成されている。
【0065】
また、薄肉部305は、チャック本体101の最内周部分に肉厚部303よりも薄肉に形成されている。そして、薄肉部305の周方向の中央部には、小肉厚部310が形成されている。この場合、薄肉部305は、チャック本体301の径方向外側の表面における小肉厚部310の両側がそれぞれ円曲面に形成されるとともに周方向の両端部がそれぞれ肉厚部303に対して円曲面状の境界部306を介して繋がっている。
【0066】
連結部307は、チャック本体301を後述するチャック引込み具420に連結する部分である。具体的には、連結部307は、チャック本体301の内周部におけるチャック部102とは反対側の開口部に開口する雌ネジで構成されている。
【0067】
小肉厚部310は、上記第1実施形態における小肉厚部110に対応する部分であるが、小肉厚部110とは異なり薄肉部305表面からチャック本体301の径方向外側(本実施形態においてはチャック本体301の中心Oに対して放射状)に向かって突出して形成されている。本実施形態においては、小肉厚部310は、断面形状が角部が丸みのある方形の突起物がチャック本体301の軸方向に沿って連続的に延びて形成されている。また、小肉厚部310は、周方向の両端部がそれぞれ薄肉部305に対して円曲面状の境界部311を介して繋がっている。
【0068】
(ワーク保持具400の構成)
上記のように構成されたワーク保持チャック300は、被加工物WKを加工する工作機械(図示せず)に対してワーク保持具400を介して取り付けられる。ワーク保持具400は、図6に示すように、上記第1実施形態と同様に、ワーク保持チャック300を作動させて被加工物WKを保持させるための器具であり、主として、チャック作動軸401およびチャック引込み具420をそれぞれ備えて構成されている。
【0069】
チャック作動軸401は、ワーク保持チャック300を支持するとともに、このワーク保持チャック300を介して被加工物WKを保持するための部品であり、鋼材などの金属材料を円筒状に形成して構成されている。このチャック作動軸401は、主として、装置側テーパ部402および主軸接続部410がそれぞれ一体的に形成されて構成されている。
【0070】
装置側テーパ部402は、ワーク保持チャック300を摺動自在な状態で保持しつつワーク保持チャック300の内径を拡縮させるための部分であり、チャック作動軸401の内周部に形成されている。より具体的には、装置側テーパ部402は、一方(図示右側)の端部から他方(図示左側)に向かって内径が連続的に小さくなるテーパ形状に形成されている。この場合、装置側テーパ部402を構成するテーパ角は、ワーク保持チャック300の外表面に形成されたテーパ部304に密着するように同テーパ部304のテーパ角に対応している。また、装置側テーパ部402の軸心は、チャック作動軸401を構成する円筒体の軸心に一致している。
【0071】
主軸接続部410は、チャック作動軸401を工作機械の主軸(図示せず)に接続する部分であり、チャック作動軸401における一方(図示左側)の端部に径方向に円板状に張り出して形成されている。この主軸接続部410が工作機械における主軸に接続されることでワーク保持具400全体が軸線周りに回転駆動する。
【0072】
チャック引込み具420は、ワーク保持チャック300のテーパ部304を装置側テーパ部402に対して押し付けまたは離隔させるための部品であり、鋼材などの金属材料を軸状に形成して構成されている。このチャック引込み具420は、先端部にワーク保持チャック300の連結部307にねじ込まれる雄ネジ部421が形成されているとともに、この雄ネジ部421の終端部に固定壁422が形成されている。
【0073】
固定壁422は、雄ネジ部421にねじ込まれたチャック本体301が突き当たることでチャック引込み具420とチャック本体301とを連結するための部分であり、径方向に円板状に張り出して形成されている。このチャック引込み具420は、軸方向に往復変位するように工作機械に取り付けられている。また、このチャック引込み具420は、本発明に係るチャック変位手段に相当する。
【0074】
(ワーク保持チャック300の作動)
次に、上記のように構成したワーク保持チャック300の作動について説明する。このワーク保持チャック300は、上記したワーク保持具400を介して工作機械に取り付けられて機械加工が行われる。
【0075】
まず、作業者は、ワーク保持チャック300を用意してワーク保持具400に取り付ける。具体的には、作業者は、ワーク保持チャック300をチャック作動軸401内に挿し込んで連結部307をチャック引込み具420の雄ネジ部421にねじ込んで固定壁422に押し付けて固定する。これにより、作業者は、ワーク保持チャック300をワーク保持具400を介して工作機械に取り付けることができる。
【0076】
次に、作業者は、ワーク保持具400に被加工物WKを取り付ける。この場合、被加工物WKは、筒状に形成されていてもよいし中実の棒状に形成されていてもよいが、外周部にワーク保持チャック300のチャック部302の内径よりも若干小さな外径の被保持部Hが形成されている。作業者は、ワーク保持チャック300のチャック部302が形成された孔内に被加工物WKの被保持部Hをテーパ部304側から差し入れる。
【0077】
次に、作業者は、ワーク保持チャック100によって被加工物WKを保持する。具体的には、作業者は、工作機械を操作してチャック引込み具420を図示左側に変位させることでワーク保持チャック300をチャック作動軸401内に引き込む。これにより、ワーク保持チャック300は、テーパ部304が装置側テーパ部402に強く押し付けられる。
【0078】
この場合、ワーク保持チャック300は、装置側テーパ部402によって肉厚部303が径方向内側に押される。これにより、ワーク保持チャック300は、薄肉部305が円曲面状態から更に湾曲した状態に弾性変形する。この場合、ワーク保持チャック300は、薄肉部305に小肉厚部310が形成されているため弾性変形時における損傷が抑えられる。これにより、ワーク保持チャック300は、チャック部302の内径が収縮するため、被加工物WKにおける被保持部Hを径方向内側に押圧することで被加工物WKを保持することができる。すなわち、作業者は、ワーク保持チャック300によって被加工物WKをワーク保持具400内で保持させることができる。
【0079】
そして、作業者は、工作機械を操作することで被加工物WKに対して切削または研削などの機械加工を行うことができる。この被加工物WKに対する機械加工は、本発明に直接関らないため、その説明は省略する。
【0080】
次に、作業者は、被加工物WKに対する加工が終了した場合には、被加工物WKをワーク保持具400から取り外す。具体的には、作業者は、工作機械を操作してチャック引込み具420を図示右側に変位させることでワーク保持チャック300をチャック作動軸401外に押し出す。
【0081】
これにより、ワーク保持チャック300は、装置側テーパ部402による肉厚部303への押圧力が弱まるため、薄肉部305が湾曲状態から円曲面状態に形状が戻る。この場合、ワーク保持チャック300は、薄肉部305に小肉厚部310が形成されているため弾性変形時における損傷が抑えられる。これにより、ワーク保持チャック300は、チャック部302の外径が拡大するため、被加工物WKにおける被保持部Hに対する径方向内側への押圧が弱まることで被加工物WKの保持状態が解除される。したがって、作業者は、被加工物WKをワーク保持チャック300およびワーク保持具400から抜き去ることで被加工物WKをワーク保持具400から取り外すことができる。
【0082】
また、作業者は、ワーク保持チャック300をワーク保持具400から取り外すこともできる。具体的には、作業者は、チャック引込み具420の雄ネジ部421からワーク保持チャック300の連結部307のネジ嵌合を解消してワーク保持チャック300をチャック作動軸401内から引き出すことでワーク保持チャック300をワーク保持具400から取り外すことができる。
【0083】
上記作動説明からも理解できるように、上記第2実施形態によれば、ワーク保持チャック300は、テーパ部304を有する肉厚部303と肉厚部303との間に薄肉部305を有するとともにこの薄肉部305に肉厚部303の張り出し量以下の張り出し量の小肉厚部310が形成されているため、薄肉部305の剛性低下を抑えつつ変形し易くして拡縮のための力を低下させながら拡縮量を増加させることができる。
【0084】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、変形例の説明においては、新たに符号を付さない上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付している。
【0085】
例えば、上記各実施形態においては、肉厚部103,303、テーパ部104,304および薄肉部105,305は、それぞれ6つずつ形成されている。しかしながら、肉厚部103,303、テーパ部104,304および薄肉部105,305は、少なくとも3つずつ形成されていればよい。
【0086】
また、上記各実施形態においては、小肉厚部110,310は、薄肉部105,305に対して円曲面を介して隆起するように構成した。これにより、ワーク保持チャック100,300は、薄肉部105,305の変形時における薄肉部105,305と小肉厚部110,310との間の損傷を抑えて変形させ易くすることができる。しかし、小肉厚部110,310は、薄肉部105,305に対して2つの平面が鈍角、直角または鋭角で繋がった尖った形状を介して隆起するように構成することもできる。
【0087】
また、上記各実施形態においては、小肉厚部110,310は、周方向に互いに隣接する2つの肉厚部103,303間の中央部分に形成した。これにより、ワーク保持チャック100,300は、薄肉部105,305のいびつな変形または偏った変形を抑えて均一に変形させることで被加工物WKを精度良く保持することができる。しかし、小肉厚部110,310は、周方向に互いに隣接する2つの肉厚部103,303の間のうちの一方の肉厚部103,303側に偏った位置に設けることもできる。また、小肉厚部110,310は、周方向に互いに隣接する2つの肉厚部103,303間に2つ以上に形成することもできる。
【0088】
また、上記各実施形態においては、薄肉部105,305は、チャック部102,302の裏側に形成した。しかし、薄肉部105,305は、チャック部102,302よりも径方向内側または径方向外側に形成することもできる。
【0089】
また、上記各実施形態においては、肉厚部103,303と薄肉部105,305とは、曲面状の境界部106,306を介して繋がっている。これにより、ワーク保持チャック100,300ため、薄肉部105,305の変形時における薄肉部105,305と肉厚部103,303との間の損傷を抑えて変形させ易くすることができる。しかし、肉厚部103,303と薄肉部105,305とは、2つの平面が鈍角、直角または鋭角で繋がった尖った形状を介して繋がるように構成することもできる。
【0090】
また、上記各実施形態においては、小肉厚部110における肉厚部103とは反対側の面は、チャック部102として円曲面に形成されている。しかし、小肉厚部110は、図7に示すように、小肉厚部110における肉厚部103とは反対側の面に凹状に窪んだ逃がし部112を形成することができる。これによれば、ワーク保持チャック100は、逃がし部112による小肉厚部110の薄肉化および逃がし部112の溝幅の拡縮によってチャック本体101全体の拡縮量を増加させることができる。なお、小肉厚部310においても、小肉厚部110と同様に、小肉厚部110における肉厚部103とは反対側の面に凹状に窪んだ逃がし部を形成することができる。
【0091】
また、上記各実施形態においては、チャック本体101は、周方向に途切れることなく繋がった円筒状に形成した。しかし、チャック本体101は、図8に示すように、軸方向に貫通して延びる切欠き部113によって同軸方向から見てC字状に形成することもできる。この場合、切欠き部113は、肉厚部103に代えて薄肉部105または小肉厚部110に設けることもできる。これによれば、ワーク保持チャック100,300は、チャック本体101,301をより拡縮させ易くすることができるとともに、拡縮量も増加させることができる。なお、チャック本体301においても、チャック本体301と同様に、軸方向に貫通して延びる切欠き部によって同軸方向から見てC字状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0092】
WK…被加工物、H…被保持部、O…チャック本体の中心、α…薄肉部のチャック本体の中心に対する形成角、β…肉厚部のチャック本体の中心に対する形成角、γ…小肉厚部のチャック本体の中心に対する形成角γ、Lα…薄肉部の径方向外側の周方向の長さ、Lβ…肉厚部の径方向外側の周方向の長さ、T1…小肉厚部の薄肉部からの張出量、T2…肉厚部の薄肉部からの高さ、S…工具、
100…ワーク保持チャック、101…チャック本体、102…チャック部、103…肉厚部、104…テーパ部、105…薄肉部、106…境界部、
110…小肉厚部、111…境界部、112…逃がし部、113…切欠き部、
200…ワーク保持具、201…チャック作動軸、202…装置側テーパ部、203…カラー案内部、204…押圧カラー、205…雄ネジ部、206…操作子、207…スプリング保持部、208…スプリング、208a…スペーサ、209…フランジ部、210…主軸接続部、
300…ワーク保持チャック、301…チャック本体、302…チャック部、303…肉厚部、304…テーパ部、305…薄肉部、306…境界部、307…連結部、
310…小肉厚部、311…境界部、
400…ワーク保持具、401…チャック作動軸、402…装置側テーパ部、
410…主軸接続部、
420…チャック引込み具、421…雄ネジ部、422…固定壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8