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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122015
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】伸縮波形管及びこれを備えた複合管
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/11 20060101AFI20230825BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20230825BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230825BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
F16L11/11
B32B1/08 B
B32B27/32 Z
B32B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025436
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金平 豊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】湯川 雅己
(72)【発明者】
【氏名】中村 晶
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA12
3H111CA47
3H111CB14
3H111DA13
3H111DA15
3H111DB03
4F100AK01B
4F100AK06A
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DA11B
4F100DA13A
4F100DJ01A
4F100GB51
4F100JK08
4F100JK09
4F100JK17B
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】高い伸縮性と耐傷性及び耐扁平性を備える伸縮波形管と製造コストを低く抑えることができる複合管を提供すること。
【解決手段】ポリエチレンを主成分とする樹脂によって凸部11と凹部12とを管軸方向に沿って交互に連設して蛇腹状に成形される伸縮波形管10において、凸部11は、側壁11a円筒状の短円筒部11bとを有し、平均肉厚T1が0.4mm以上1.0mm未満、短円筒部11bの幅が2.5mm以上3.5mm未満であり、凹部12は、管軸方向に隣接する2つの凸部11の側壁11aによって最大幅Wgが0.5mm以上1.5mm未満のV溝状に形成され、凸部11と凹部12の1ピッチPの長さが3.5mm以上4.5mm未満であるとともに、1ピッチPの長さに対する凹部12の最大幅Wgの割合が25%以上である。また、伸縮波形管10と可撓性樹脂管20によって複合管1が構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性樹脂管の外周を被覆し、ポリエチレンを主成分とする樹脂によって径方向外側に凸となる凸部と径方向内側に凹となる凹部とを管軸方向に沿って交互に連設して蛇腹状に成形される伸縮波形管であって、
前記凸部は、管軸に対して傾斜する一対の側壁と該側壁によって連結された円筒状の短円筒部とを有し、平均肉厚が0.4mm以上1.0mm未満、前記短円筒部の幅が2.5mm以上3.5mm未満であり、
前記凹部は、管軸方向に隣接する2つの前記凸部の前記側壁によって最大幅が0.5mm以上1.5mm未満のV溝状に形成され、
管軸方向に隣接する前記凸部と前記凹部の1ピッチの長さが3.5mm以上4.5mm未満であるとともに、この1ピッチの長さに対する前記凹部の最大幅の割合が25%以上であることを特徴とする伸縮波形管。
【請求項2】
多層構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の伸縮波形管。
【請求項3】
前記樹脂は、発泡倍率が1.05倍~4倍の発泡ポリエチレンであることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮波形管。
【請求項4】
前記樹脂は、低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の伸縮波形管。
【請求項5】
前記発泡ポリエチレンは、外層に近づくに連れて発泡倍率が内層のそれよりも連続的に低くなることを特徴とする請求項3または4に記載の伸縮波形管。
【請求項6】
前記発泡ポリエチレンは、内層から外層に掛けて発泡倍率が不連続的に変化することを特徴とする請求項3または4に記載の伸縮波形管。
【請求項7】
前記樹脂は、一部にポリエチレン以外の樹脂を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の伸縮波形管。
【請求項8】
前記可撓性樹脂管を同心状に保持する複数の保持突起を内周面から径方向内方に向かって突設したことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の伸縮波形管。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の伸縮波形管と、該伸縮波形管の内部に略同心状に配置された前記可撓性樹脂管とで構成されることを特徴とする複合管。
【請求項10】
前記伸縮波形管の内周部と前記可撓性樹脂管の外周部との間に、平均値が4mm以上の径方向隙間が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンを主成分とする樹脂によって蛇腹状に成形された伸縮波形管と該伸縮波形管によって外周が被覆された複合管に関する。
【背景技術】
【0002】
給水・給湯用の可撓性樹脂管は、架橋ポリエチレンやポリブデンなどによって構成されているために表面が柔らかく、このために外周が被覆管によって覆われて保護されている。このように可撓性樹脂管を被覆管によって保護すれば、例えば、配管作業において建物の構造体に該可撓性樹脂管が擦れても、該可撓性樹脂管の表面の傷付きが被覆管によって防がれる。
【0003】
ところで、被覆管に関しては、今までに種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、蛇腹状の波形管によって構成された被覆管が提案されている。ここで、波形管は、管軸方向に交互に配置された断面半円弧状の山部及び谷部と、これらの山部と谷部とを連ねるとともに管軸と略直交する連接部とを有しており、その断面形状が波形をなしている。このような波形管は、厚さが薄くても硬いため、可撓性樹脂管を保護することができる。
【0004】
波形管には、可撓性樹脂管を保護する機能の他に、管軸方向の伸縮性が要求される。これは、可撓性樹脂管の端部をヘッダ、給水栓、給湯栓などの継手部に接続する際に、波形管の端部を可撓性樹脂管の端部から離れる方向にずらして該波形管を軸方向に縮め、可撓性樹脂管の端部を露出させる必要があるためである。特許文献1によれば、波形管の山部の肉厚(例えば、0.25mm)を谷部と連接部の肉厚(例えば、0.5mm)よりも薄くすることによって、山部の弾性変形を容易とし、当該波形管を管軸方向に伸縮可能としている。
【0005】
また、特許文献2には、波形管と、この波形管と可撓性樹脂管との間に介在する中間材とを備えた二重管構造の被覆管が提案されている。ここで、波形管は、管軸方向に交互に配された短円筒状の山部及び谷部と、これらの山部と谷部とを連ねるとともに管軸と略直交する連接部とを有している。ここで、波形管は、低密度ポリエチレンによって構成されており、しかも、薄肉(例えば、厚さ0.1~0.4mm)であるため、管軸方向の伸縮性を高めることができるが、耐傷性が低いために単独で可撓性樹脂管を保護することができない。すなわち、特許文献2において提案された波形管によって構成された被覆管においては、中間材によって可撓性樹脂管の保護機能を確保している。また、中間材が発泡剤によって構成されているため、被覆管は、保温機能も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-093547号公報
【特許文献2】WO2018/123779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、可撓性樹脂管を保護するための波形管によって構成された被覆管には、可撓性樹脂管の保護機能と管軸方向の伸縮性とが求められる。また、近年では、被覆管に保温機能(断熱機能)も求められてきている。
【0008】
特許文献1において提案された波形管は、硬質ポリエチレンによって構成されているために基本的に高い耐傷性を有し、樹脂管保護機能に優れている反面、管軸方向の伸縮性に劣るという欠点を有している。
【0009】
波形管の伸縮性をより高めようとして山部の肉厚をさらに薄くすると、耐傷性の低下を招く。したがって、特許文献1において提案された波形管では、伸縮性と耐傷性とを両立させることは困難であり、保温機能も劣る。
【0010】
また、特許文献2において提案された波形管によって構成された被覆管では、施工現場で被覆管が引きずられたりすると、波形管の耐傷性が低いために破れ易く、破れた箇所から中間材が露出して外観を損なう。また、波形管が破れた後の継続的な引きずりによって中間材が傷付くと、可撓性樹脂管の傷付きに繋がる可能性もある。さらに、中間材の抵抗のために波形管の伸縮性を高めるには限度がある。そして、被覆管は、波形管と中間材との二重構造を有しているために製造コストが増大してしまうという問題もある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、高い伸縮性と耐傷性及び耐扁平性を有する伸縮波形管と、該伸縮波形管を備えた製造コストの低い複合管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、可撓性樹脂管の外周を被覆し、ポリエチレンを主成分とする樹脂によって径方向外側に凸となる凸部と径方向内側に凹となる凹部とを管軸方向に沿って交互に連設して蛇腹状に成形される伸縮波形管であって、前記凸部は、管軸に対して傾斜する一対の側壁と該側壁によって連結された円筒状の短円筒部とを有し、平均肉厚が0.4mm以上1.0mm未満、前記短円筒部の幅が2.5mm以上3.5mm未満であり、前記凹部は、管軸方向に隣接する2つの前記凸部の前記側壁によって最大幅が0.5mm以上1.5mm未満のV溝状に形成され、管軸方向に隣接する前記凸部と前記凹部の1ピッチの長さが3.5mm以上4.5mm未満であるとともに、この1ピッチの長さに対する前記凹部の最大幅の割合が25%以上であることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、伸縮波形管を柔軟なポリエチレンを主成分とする樹脂によって成形したため、該伸縮波形管の収縮性が高められ、可撓性樹脂管の継手部などへの接続作業に際しては、伸縮波形管の端部を管軸方向に押圧してこれを押し縮めることによって、可撓性樹脂管の接続側の端部を容易に露出させることができ、該可撓樹性脂管を継手部などに簡単に短時間で接続することができる。
【0014】
また、凸部の平均肉厚を0.4mm以上1.0mm未満に設定したため、該凸部に十分な削り代を確保することができ、当該伸縮波形管の耐傷性が高められる。
【0015】
外荷重に対する伸縮波形管の扁平潰れを抑えて当該伸縮波形管に高い耐扁平性を確保するには、凸部と凹部の繰り返しピッチが狭い方が望ましく、有限要素法による解析の結果、凸部の短円筒部の幅を2.5mm以上3.5mm未満、凹部の最大幅を0.5mm以上1.5mm未満、管軸方向に隣接する凸部と凹部の1ピッチの長さが3.5mm以上4.5mm未満、この1ピッチの長さに対する凹部の最大幅の割合を25%以上に設定することによって、当該伸縮波形管に十分な耐扁平性を確保することができることが明らかになった。
【0016】
ここで、伸縮波形管は、多層構造を有していても良い。また、伸縮波形管を構成する樹脂は、発泡倍率が1.05倍~4倍の発泡ポリエチレンであっても良く、低密度ポリエチレンであっても良い。また、伸縮波形管を構成する樹脂は、一部にポリエチレン以外の樹脂を含むものであっても良い。
【0017】
伸縮波形管を発泡ポリエチレンで構成した場合、発泡ポリエチレンは、外層に近づくに連れて発泡倍率が内層のそれよりも連続的に低くなるものであっても良く、内層から外層にかけて発泡倍率が不連続的に変化するものであっても良い。
【0018】
さらに、可撓性樹脂管を同心状に保持する複数の保持突起を伸縮波形管の内周面から径方向内方に向かって突設しても良く、このような構成を採用することによって、伸縮波形管と可撓性樹脂管との間に断熱空気層を安定的に形成することができる。
【0019】
また、本発明は、以上のように構成された伸縮波形管と、該伸縮波形管の内部に略同心状に配置された可撓性樹脂管とで複合管を構成したことを特徴としている。ここで、伸縮波形管の内周部と可撓性樹脂管の外周部との間に形成される径方向隙間の平均値は、4mm以上に設定されている。
【0020】
本発明に係る複合管によれば、伸縮波形管と可撓性樹脂管との間に中間材が存在せず、両者間には4mm以上の径方向隙間が形成され、この径方向隙間が断熱空気層を構成しているため、可撓性樹脂管の保温性が高められて該可撓性樹性管を流れる流体の温度変化が小さく抑えられる。また、複合管は、中間材を有していないために構造が単純化して製造が簡単化し、当該複合管の製造コストが低く抑えられる。
【0021】
ところで、本発明に係る複合管は、前述のように伸縮波形管と可撓樹脂管との間に中間材が存在せず、両者間には4mm以上の径方向隙間(断熱空気層)が形成されているため、伸縮波形管が外部荷重を受けると径方向に変形して該伸縮波形管に扁平潰れが発生し易いという問題がある。この点に関して、有限要素法を用いた解析を行った結果、伸縮波形管の凸部と凹部の繰り返しピッチの長さが小さい方が耐扁平に対して有効であることが分かった。
【0022】
また、解析の結果、伸縮波形管の凸部と凹部の諸元(凸部の平均肉厚、短円筒部の幅、凹部の最大幅、凸部と凹部の1ピッチの長さ、この1ピッチの長さに対する凹部の最大幅の割合)を前述のように設定することによって、当該伸縮波形管に高い耐扁平性と伸縮性及び耐傷性が得られることが分かった。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高い伸縮性と耐傷性及び耐扁平性を確保することができる伸縮波形管と、該伸縮波形管を備えた製造コストの低い複合管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る複合管端部の半裁側断面図である。
図2】本発明に係る伸縮波形管端部の半裁側断面図である。
図3図2のA部拡大詳細図である。
図4】本発明に係る複合管において伸縮波形管を押し縮めて可撓性樹脂管の端部を露出させた状態を示す半裁部分側断面図である。
図5】本発明の別形態に係る複合管の破断部分側面図である。
図6図5のB-B線断面図である。
図7】複合管に対する耐傷性試験方法を示す斜視図である。
図8】各種伸縮波形管の凹凸モデルと扁平強度比を表形式で示す図である。
図9】各種伸縮波形管の諸元と扁平率荷重の解析結果を表形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は本発明に係る複合管端部の半裁側断面図であり、図示の複合管1は、丸パイプ状の可撓性樹脂管20と、該可撓性樹脂管20の外周を覆って当該可撓性樹脂管20を保護する蛇腹状の伸縮波形管10とで構成されている。
【0027】
上記可撓性樹脂管20は、架橋ポリエチレン、ポリブテン、ポリエチレン、耐熱性ポリエチレンまたはこれらを複合した樹脂、金属強化複合樹脂などによって構成されており、温度95℃以下の水の輸送に使用されるものである。
【0028】
また、前記伸縮波形管10は、ポリエチレンを主成分とする樹脂、例えば、引張降伏強度が20MPa以下の低密度ポリエチレン(LDPE)を主原料とするパリソンをブロー成形又はバキューム成形によって拡径することによって得られる。この場合、主成分であるポリエチレンである低密度ポリエチレン(LDPE)に添加剤として必要に応じて適切なカラーマスターバッチなどを加えて成形しても良い。
【0029】
さらに、伸縮波形管10を構成する樹脂の原料には、発泡倍率が1.05倍~4倍、好ましくは発泡倍率が1.2~2.5倍の発泡倍率の発泡ポリエチレンが用いられても良い。そして、伸縮波形管10を多層構造としても良く、その材料として発泡ポリエチレンを用いる場合には、発泡ポリエチレンは、外層に近づくに連れて発泡倍率が内層のそれよりも連続的に低くなるものであっても、内層から外層にかけて発泡倍率が非連続的に変化するものであっても良い。さらに、伸縮波形管は、一部にポリエチレン以外の樹脂、例えば、ポリブテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、塩化ビニルなどを単体で或いはこれらを組み合わせたものを含んでいても良い。
【0030】
なお、本明細書において、樹脂の「主成分」とは、混合体における質量基準の含有率が最も多い成分を言うものとする。
【0031】
次に、本発明に係る伸縮波形管10の構成の詳細を図2及び図3に基づいて以下に説明する。
【0032】
図2は本発明に係る伸縮波形管端部の半裁側断面図、図3図2のA部拡大詳細図であり、図示の伸縮波形管10は、径方向外側に凸となる円環状の凸部11と径方向内側に凹となる円環溝状の凹部12とを管軸方向(図2及び図3の左右方向)に沿って交互に連設して蛇腹状に成形されている。ここで、図3に詳細に示すように、各凸部11は、管軸Sに対して傾斜する一対の側壁11aと該側壁11aによって連結された管軸Sと同軸の円筒状の短円筒部11bとを有し、その断面は、幅が径方向外方に向かって狭くなる台形状とされている。また、隣接する凸部11の間に形成される凹部12は、隣接する2つの凸部11の一方の側壁11aとこれらの側壁11aの内端部同士を接続する管軸Sと同軸の円筒状の短円筒部12aとによって画成されており、その断面形状は、径方向内方に向かって幅が狭くなるV溝状とされている。
【0033】
ここで、各凸部11は、平均肉厚T1がT1=0.4mm以上1.0mm未満(本実施の形態では、0.5mm(図3参照))、短円筒部11bの幅W1がW1=2.5mm以上3.5mm未満(本実施の形態では、3.0mm(図3参照))に設定されている。また、各凹部12は、最大幅WgがWg=0.5mm以上1.5mm未満(本実施の形態では、1.3mm(図3参照))に設定されている。そして、管軸方向に隣接する凸部11と凹部12の1ピッチの長さPがP=3.5mm以上4.5mm未満(本実施の形態では、4.3mm)に設定されるとともに、この1ピッチの長さPに対する凹部12の最大幅Wgの割合Wg/PがWg/P-=25%以上(本実施の形態では、1.3/4.3=30.2%)に設定されている。なお、本実施の形態では、図3に示すように、凹部12を画成する短管部12aの厚さT2をT2=0.58mm、凹部12の深さ(凸部11の端管部11bの内径と凹部12の短管部12aの外径との差の1/2)HをH=1.5mmに設定している。
【0034】
以上のように構成された伸縮波形管10は、ポリエチレンを主成分とする柔軟な樹脂によって構成されているため、その伸縮性が高められ、可撓性樹脂管20の継手部などへの接続作業に際しては、図4に示すように、収縮波形管10の端部を管軸方向(図4の右方)に押圧してこれを押し縮めることによって、可撓性樹脂管20の接続側の端部を容易に露出させることができる。このため、可撓性樹脂管20を継手部などに簡単に短時間で接続することができる。
【0035】
なお、実際には、伸縮波形管10に管軸方向の押圧力が加えられると、該伸縮波形管10が押圧方向(管軸方向)に収縮し、押圧力が解除されると、伸縮波形管10は、自らの弾性復元力によって元の長さに戻ろうとするが、十分には元の長さには戻らない。しかし、この収縮波形管10は、これを押圧方向とは逆方向に引っ張って元の長さに戻すことができる程度の伸縮性を有している。
【0036】
ところで、前述のように、収縮波形管10を熱伝導率の低い発泡ポリエチレンで構成することによって、該伸縮波形管10の断熱性と保温性が高められるため、可撓性樹脂管20を流れる流体の温度変化が小さく抑えられる。また、発泡ポリエチレンは、高い吸音性を有するため、例えば、ウォーターハンマー音を吸収することができる。特に、樹脂を発泡倍率が1.05倍~4倍の発泡ポリエチレンで構成することによって、樹脂の見掛けの弾性率が下がり、同じ厚さであれば樹脂が柔軟化する。但し、発泡化で樹脂の耐傷性は低下するが、伸縮波形管10の凸部11の平均肉厚T1を図3に示すようにT1--=0.4mm以上1.0mm未満としたため、該伸縮波形管10の傷付きの際の削り代が十分確保されて当該伸縮波形管10の破れなどの損傷や外観性の低下が防がれる。
【0037】
また、伸縮波形管10を構成する樹脂として発泡ポリエチレンを用いた場合、前述のように外層に近づくに連れて発泡倍率が内層のそれよりも連続的に低くなるようにしても、内層から外層にかけて発泡倍率が非連続的に変化するようにしても良い。このようにすることによって、当該伸縮波形管10の耐傷性に関しての優位性が期待される。
【0038】
さらに、伸縮波形管10を多層構造とし、例えば、表層を高密度ポリエチレン(HDPE)、中間層を低密度ポリエチレン(LDPE)、内側表層の可撓性樹脂管20と触れる部分のみをオレフィン系エラストマーとするなど、ポリエチレンが主成分となる樹脂である限り、ポリエチレン以外の樹脂を用いても良い。その他、前述のように、伸縮波形管10は、一部にポリエチレン以外の樹脂、例えば、ポリブテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、塩化ビニルなどを単体で或いはこれらを組み合わせたものを含んでいても良い。
【0039】
ところで、以上のように構成された伸縮波形管10によって外周が保護された図1に示す複合管1においては、伸縮波形管10の内周部と可撓性樹脂管20の外周部との間に形成される径方向隙間δの平均値は、4mm以上に設定しても良い。
【0040】
このとき、図1に示す複合管1によれば、伸縮波形管10と可撓性樹脂管20との間に中間材が存在せず、両者間には4mm以上の径方向隙間が形成され、この径方向隙間δが断熱空気層を構成しているため、可撓性樹脂管20の保温性が高められて該可撓性樹脂管20を流れる流体の温度変化が小さく抑えられる。また、複合管1は、中間材を有していないために構造が単純化して製造が簡単化し、当該複合管1の製造コストが低く抑えられる。
【0041】
ここで、図5及び図6に本発明の別形態に係る複合管1’を示す。
【0042】
すなわち、図5は本発明の別形態に係る複合管の破断部分側面図、図6図5のB-B線断面図であり、図示の複合管1’においては、可撓樹性脂管20を同心状に保持する複数の保持突起13’を管軸方向に一定の間隔ごとに伸縮波形管10’の内周面から径方向内方に向かって一体に突設している。なお、本実施の形態では、伸縮波形管10’の内周面から4つの保持突起13’を周方向に等角度ピッチ(90°ピッチ)で突設したが、この保持突起13’の数は、複数であれば任意であるが、その機能を考慮すると3つ以上が望ましい。
【0043】
上記複合管1’において、上述のように伸縮波形管10’の内周面に突設された複数の保持突起13’によって可撓樹性脂管20’を同心状に保持する構成を採用すれば、可撓樹性脂管20’と伸縮波形管10‘との間に一定の断熱空気層を形成することができ、複合管1’に高い断熱性と保温性を確保することができる。また、保持突起13’の形態や現場における保持突起13’の向きによっては、伸縮波形管10’の耐扁平性の補強となることが期待される。
【0044】
ところで、図1に示す複合管1においては、前述のように伸縮波形管10と可撓性樹脂管20との間に中間材が存在せず、両者間には4mm以上の径方向隙間(断熱空気層)δが形成されているため、被覆管である伸縮波形管10が外部荷重を受けると該伸縮波形管10が径方向に変形して扁平潰れが発生し易いという問題がある。この点に関して、有限要素法を用いて解析を行った結果、伸縮波形管10の凸部11と凹部12の繰り返しピッチPの長さが短いことが耐扁平性に対して有効であることが分かった。
【0045】
具体的には、伸縮波形管10の凸部11と凹部12の諸元(凸部11の平均肉厚T1、短円筒部11bの幅W1、凹部の最大幅Wg、凸部11と凹部12の1ピッチPの長さ、この1ピッチPの長さに対する凹部12の最大幅Wgの割合Wg/P)を図3に示すように設定することによって、当該伸縮波形管10に高い耐扁平性と伸縮性及び耐傷性が得られることが分かった。
【0046】
[試験及び解析結果]
ここで、各種複合管と伸縮波形管に対して行った各種試験(伸縮性試験と耐傷性試験及び耐扁平性試験)及び耐扁平性に対する解析結果について説明する。
【0047】
試験に用いた本発明に係る伸縮波形管10は、凸部11の幅W1=3.103mm、凹部12の最大幅Wg=1.293mm、凹部12の深さ=2.195mm、凹部12のR部の外面の径R=0.5mmの金型を用い、低密度ポリエチレン(LDPE)と無機系発泡剤から成るパリソンをバキューム成形することによって得られた。なお、無機系発泡剤とは、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)である。
【0048】
(伸縮性試験)
伸縮性試験は、本発明に係る伸縮波形管と従来の伸縮波形管1,2に対して行われたが、これらの伸縮波形管の諸元(外径、凸部の厚さ及び材質)と試験結果は表1に示す通りである。
【0049】
【表1】
なお、収縮性試験は、表1に示す3種の伸縮波形管によって被覆された複合管について専用治具を用い、圧縮試験機によって長さ200mmの伸縮波形管を50mm収縮させるために必要な荷重(50mm収縮荷重)を測定することによって行われ、その結果は、表1に示す通りである。
【0050】
表1に示すように、従来の伸縮波形管1,2の50mm収縮荷重がそれぞれ67N、44Nであるのに対して、本発明に係る収縮波形管の500mm収縮荷重は、31Nと小さい値を示し、本発明に係る収縮波形管は、高い収縮性を有していることが実証された。
【0051】
(耐傷性試験)
耐傷性試験は、本発明に係る収縮波形管(表1に示す諸元と同じもの)10と架橋ポリエチレン(PEX)製の可撓樹脂管20とで構成された複合管1に対して図7に示す方法によって行われた。
【0052】
すなわち、図7は耐傷性試験方法を示す斜視図であり、同図に示すように、耐傷性試験は、固定されたコンクリートブロック100の1つの孔100aに複合管1を通し、該複合管1の表面を孔100aの上縁に擦れさせ、手秤50で確認しながら15kgfの力で複合管1を引き上げたときの該複合管1の外観(断熱保護部の外観)を目視で確認し、破れて穴が開かない場合を〇(良)、穴が開いた場合を×(不可)とした。その結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
表2に示すように、本発明に係る伸縮波形管10とこれによって被覆された複合管1は、高い耐傷性を示すことが実証された。これは、本発明に係る伸縮波形管10の凸部11の平均厚さを0.4mm以上に設定したことに起因している。
【0054】
(耐扁平性試験と解析)
伸縮波形管10の許容扁平率を10%としたときの押込み力を7kg/m(63N/m)と想定し、圧縮試験機を用いて検証した結果、外径30.5mmの伸縮波形管10を10%扁平させる際の荷重として、351N/m~501N/mの結果が得られた。この値は、想定荷重(63N/m)の5倍以上のレベルであることから、本発明に係る伸縮波形管10の耐扁平性は十分に高い確証を得た。
【0055】
ここで、図8及び図9に示す各種諸元の凸部と凹部を備える6種類の伸縮波形管(No.1~No.6)に対して耐扁平性を解析した結果について説明する。具体的には、各種伸縮波形管の扁平率が33%となる押込み力(33%扁平荷重)を有限要素法を用いて算出した。その結果は、図8及び図9に示す通りである。以下、6種類の伸縮波形管(No.1~No.6)についてそれぞれ説明する。
【0056】
1)No.1の伸縮波形管:
No.1の伸縮波形管は、本実施の形態に係る理想形態のものであって、凸部と凹部の諸元は、図3に示すものと同じである。解析の結果、このNo.1の伸縮波形管に対する扁平率33%の荷重(凸凹1ピッチ)と扁平率33%の荷重(100mm換算)は、図9に示すように、それぞれ19.67N、457.52Nである。
【0057】
2)No.2の伸縮波形管:
No.2の伸縮波形管は、No.1の理想形態のものに対して厚肉であって、解析の結果、このNo.2の伸縮波形管に対する扁平率33%の荷重(凸凹1ピッチ)と扁平率33%の荷重(100mm換算)は、図9に示すように、それぞれ36.37N、845.82Nであり、No.1の伸縮波形管の値を100%としたときに185%の値となる。この伸縮波形管においては、厚肉化は、耐扁平性に対しては有効ではあるが、伸縮荷重が増大するという問題がある。伸縮荷重は、通常、施工で問題とならない範囲(例えば、60N以下)から肉厚を0.4mm~1.0mmに設定すべきである。
【0058】
3)No.3の伸縮波形管:
No.3の伸縮波形管は、No.1の理想形態のものに対して凸部の幅(凸幅)が大きく、解析の結果、このNo.3の伸縮波形管に対する扁平率33%の荷重(凸凹1ピッチ)と扁平率33%の荷重(100mm換算)は、図9に示すように、それぞれ21.33N、367.78Nであり、No.1の伸縮波形管の値を100%としたときに80%の値となる。この伸縮波形管においては、単位長さ当たりの側壁厚さが小さいと耐扁平性が低下する。凹凸の1ピッチは、実用上、最短となることが望ましい。凸部が肉厚1mmであっても潰れない寸法として、凸幅は、3mmを中心幅とすることが望ましい。
【0059】
4)No.4の伸縮波形管:
No.4の伸縮波形管は、No.1の理想形態のものに対して凹部の幅(凹幅)が大きく、解析の結果、このNo.3の伸縮波形管に対する扁平率33%の荷重(凸凹1ピッチ)と扁平率33%の荷重(100mm換算)は、図9に示すように、それぞれ23.63N、429.64Nであり、No.1の伸縮波形管の値を100%としたときに94%の値となる。この伸縮波形管においては、単位長さ当たりの側壁の厚さが小さいと耐扁平性が低下する。凹幅大は凸幅大よりも耐扁平性低下の割合は小さいが、何れにしても凹凸の1ピッチは、実用上、最短となることが望ましい。
【0060】
5)No.5の伸縮波形管:
No.5の伸縮波形管は、No.1の理想形態のものに対して凸部と凹部の幅(凸+凹幅)が小さく、解析の結果、このNo.5の伸縮波形管に対する扁平率33%の荷重(凸凹1ピッチ)と扁平率33%の荷重(100mm換算)は、図9に示すように、それぞれ12.73N、592.29Nであり、No.1の伸縮波形管の値を100%としたときに129%の値となる。この伸縮波形管においては、単位長さ当たりの側壁の数が多いために耐扁平性が向上する。しかし、凸部が狭いと、凸部に樹脂が充満するために伸縮抵抗が増大する。したがって、肉厚程度の余裕代を見込んだ凸幅が必要である。
【0061】
6)No.6の伸縮波形管:
No.6の伸縮波形管は、No.1の理想形態のものに対して凸部と凹部の幅(凸+凹幅)が大きく、解析の結果、このNo.6の伸縮波形管に対する扁平率33%の荷重(凸凹1ピッチ)と扁平率33%の荷重(100mm換算)は、図9に示すように、それぞれ24.18N、374.87Nであり、No.1の伸縮波形管の値を100%としたときに82%の値となる。この伸縮波形管においては、単位長さ当たりの側壁の数が少ないたに耐扁平性が低下する。この伸縮波形管の耐荷重がNo.3の伸縮波形管のそれよりも若干高いのは解析条件の設定などによるものと考えられるが、何れにしても凹凸の1ピッチは、実用上、最短となることが望ましい。
【0062】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、高い伸縮性と耐傷性及び耐扁平性を備える伸縮波形管と、製造コストを低く抑えることができる複合管を得ることができる。
【0063】
なお、図1図4においては、便宜上、凹部12の形状を断面台形状としたが、本来は、短円筒部12aに代えてR形状部とし、凹部12の断面形状をU字状とすることが望ましい(図5参照)。この場合、R形状部の肉厚は、凸部11の肉厚よりも厚い方が望ましい。
【0064】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1,1’ 複合管
10,10’ 伸縮波形管
11 凸部
11a 凸部の側壁
11b 凸部の短円筒部
12 凹部
12a 凹部の端円筒部
13’ 保持突起
20,20’ 可撓性樹脂管
P 凸部と凹部のピッチ
T1 凸部の平均肉厚
T2 凹部の肉厚
W1 凸部の短円筒部の幅
wg 凹部の最大幅
δ 伸縮波形管と可撓性樹脂管との径方向隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9