(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122049
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】支保工継手構造、支保工連結部材および支保工組立方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
E21D11/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025470
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】507011611
【氏名又は名称】株式会社進富
(71)【出願人】
【識別番号】516152952
【氏名又は名称】構法開発株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129849
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】大西 克則
(72)【発明者】
【氏名】依田 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】関根 一郎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 将史
(72)【発明者】
【氏名】辻川 泰人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】若竹 亮
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155BA06
2D155CA01
2D155FB01
2D155GB01
2D155GB02
2D155GC04
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】支保工施工時の作業性の向上と安全性の向上を図ることを可能とし、かつ、コストの低減化を可能とした、支保工継手構造、支保工連結部材および支保工連結方法を提案する。
【解決手段】対向する左右一対の鋼製支保工3,3同士を連結する支保工継手構造4とこれを使用する支保工連結方法であって、鋼製支保工3の端部に突設された挿入ピン5と、鋼製支保工3の端部において挿入ピン5と並設された受パイプ6とを備えており、一方の鋼製支保工3の挿入ピ5ンが、他方の鋼製支保工3の受パイプ6に挿入されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する左右一対の鋼製支保工同士を連結する支保工継手構造であって、
前記鋼製支保工の端部に突設された挿入ピンと、
前記鋼製支保工の端部において前記挿入ピンと並設された受パイプと、を備えており、
一方の前記鋼製支保工の前記挿入ピンが、他方の前記鋼製支保工の前記受パイプに挿入されていることにより前記鋼製支保工の芯同士を一致していることを特徴とする、支保工継手構造。
【請求項2】
前記鋼製支保工は、H形鋼と、前記H形鋼の先端に溶接された継手板とを有し、
前記継手板には、前記挿入ピンおよび前記受パイプの位置に対応して貫通孔が形成されており、
前記挿入ピンは、前記貫通孔を貫通しているとともに、前記鋼製支保工のウェブの一方の面に溶接されており、
前記受パイプは、一端が前記継手板に溶接されていて、他端が前記ウェブの他方の面に溶接されていることを特徴とする、請求項1に記載の支保工継手構造。
【請求項3】
H形鋼と、前記H形鋼の先端に溶接された支保工用継手板とを有する前記鋼製支保工の前記継手板に支保工連結部材が固定されており、
前記支保工連結部材は、前記鋼製支保工と同等の断面形状のH形鋼からなる本体部と、
前記本体部の前記鋼製支保工側の端面に固定された連結部材用継手板と、
前記本体部の前記鋼製支保工と反対側の端面に固定された支圧板と、を備えており、
前記支圧板には、前記挿入ピンおよび前記受パイプの位置に対応して貫通孔が形成されており、
前記挿入ピンは、前記貫通孔を貫通しているとともに、前記本体部のウェブの一方の面に固定されており、
前記受パイプは、一端が前記支圧板に溶接されていて、多端が前記ウェブの他方の面に固定されていて、
前記連結部材用継手板は、前記支保工用継手板に重ねた状態で、当該支保工用継手板に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の支保工継手構造。
【請求項4】
前記連結部材用継手板には、前記支保工用継手板側に突設されたボルトが固定されており、
前記支保工用継手板には、前記ボルトの位置に対応して、当該ボルトを挿通可能な貫通孔が形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の支保工継手構造。
【請求項5】
対向する左右一対の鋼製支保工の先端に固定されて、前記鋼製支保工同士を連結する支保工連結部材であって、
H形鋼からなる本体部と、
前記本体部の先端に固定された支圧板と、
前記本体部の基端に固定された連結部材用継手板と、
前記本体部のウェブの一方の面に固定された挿入ピンと、
前記ウェブの他方の面に固定された受パイプと、を備え、
前記支圧板には、前記挿入ピンと前記受パイプに対応する位置に、前記挿入ピンを挿通可能な貫通孔が形成されており、
前記挿入ピンは、対向する他の前記鋼製支保工の先端に固定された他の支保工連結部材の受パイプに挿入可能となるように、前記貫通孔を貫通していることを特徴とする、支保工連結部材。
【請求項6】
前記連結部材用継手板には、前記鋼製支保工の端部に形成された支保工用継手板に形成された貫通孔の位置に対応して、ボルトが固定されていることを特徴とする、請求項5に記載の支保工連結部材。
【請求項7】
前記挿入ピンの側面に溝が形成されており、
前記受パイプに、前記溝に挿入可能な係止部材が設けられていることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の支保工連結部材。
【請求項8】
対向する一対の鋼製支保工を連結する支保工組立方法であって、
前記鋼製支保工の先端には、他方の前記鋼製支保工側に突出する挿入ピンと、前記挿入ピンを挿入可能な内径を有した受パイプとが並設されており、
一方の前記鋼製支保工に固定された前記挿入ピンを、他方の前記鋼製支保工に固定された前記受パイプに挿入することで、前記鋼製支保工同士を連結することを特徴とする、支保工組立方法。
【請求項9】
前記挿入ピンおよび前記受パイプが固定された支保工連結部材を前記鋼製支保工の先端に固定する作業を、前記鋼製支保工同士を連結する作業の前に行うことを特徴とする、請求項8に記載の支保工組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支保工継手構造、支保工連結部材および支保工組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NATMによるトンネル施工では、トンネルの掘削により露出した地山面を、支保工により早期に閉塞する。トンネルの支保工には、地山面に吹き付けられた吹付けコンクリートと、地山面に沿って組み立てられた鋼製支保工と、トンネル内側から法線方向に地山内に打設するロックボルト等により構成されているのが一般的である。支保工の設置は、掘削により露出した地山に対して一次吹付けコンクリートを吹き付けた後、鋼製支保工を組み立てて、その後、二次吹付けコンクリートを吹き付けることにより行う。
【0003】
鋼製支保工を組み立てる際には、ドリルジャンボなどの重機を利用して、鋼製支保工を保持しつつ、左右の鋼製支保工を切羽の天端付近において、手作業にてボルトの締結作業を行うのが一般的である。一方、手作業によるボルトの締結は、作業に手間がかかるとともに、支保工が完成する前の露出した地山、または、一次吹付けコンクリートの直下で作業を行う必要がある。
【0004】
そのため、支保工施工時の作業性の向上や、安全性の向上を目的とした施工方法が開示されている。例えば、特許文献1には、左右一対の鋼製支保工のうちの一方の鋼製支保工の端部(継手部)に雄型連結部を、他方の鋼製支保工の端部(継手部)に形成された雌型連結部を設けておき、鋼製支保工を把持可能な一対のハンドを有するエレクター装置を利用して、左右の鋼製支保工の継手部同士を突き合せることで雄型連結部と雌型連結部とを嵌合させるとともに切羽面に沿ってアーチ状に組み立てられた鋼製支保工を建て込むトンネル構築方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のトンネル構築方法では、雄型連結部を雌型連結部に挿入することで、互いに歯合するように構成されている。互いに歯合するように形成された雄型連結部および雌型連結部は、複雑な形状あるいは複数の部材を組み合わせることにより形成されるため、製造時に手間がかかり、その結果、製造コストが高い。
【0007】
本発明は、支保工施工時の作業性の向上と安全性の向上を図ることを可能とし、かつ、コストの低減化を可能とした、支保工継手構造、支保工連結部材および支保工連結方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明の支保工継手構造は、鋼製支保工の端部に突設された挿入ピンと、前記鋼製支保工の端部において前記挿入ピンと並設された受パイプとを備えており、一方の前記鋼製支保工の前記挿入ピンが他方の前記鋼製支保工の前記受パイプに挿入されていることで、対向する左右一対の鋼製支保工の芯同士を一致させた状態で当該鋼製支保工同士を連結するものである。
【0009】
かかる支保工継手構造によれば、挿入ピンを受パイプに挿入するのみで、簡易の鋼製支保工同士を連結できる。そのため、手作業によるボルト締結作業を要することなく、鋼製支保工を把持可能な一対のハンドを有するエレクター装置を利用して鋼製支保工の連結作業を行うことができ、支保工が完成する前の露出した地山、または、一次吹付けコンクリートの直下での人力による作業を省略できる。また、挿入ピンを受パイプに挿入するのみの簡易な構成のため、挿入ピンおよび受パイプの形状を複雑にする必要がなく、製造コストが比較的安価である。
【0010】
このような支保工継手構造としては、H形鋼と、前記H形鋼の先端に溶接された継手板とを有する前記鋼製支保工において、前記継手板には、前記挿入ピンおよび前記受パイプの位置に対応して貫通孔が形成されており、前記挿入ピンは、前記貫通孔を貫通しているとともに、前記鋼製支保工のウェブの一方の面に溶接されており、前記受パイプは、一端が前記継手板に溶接されていて、他端が前記ウェブの他方の面に溶接されたものとすればよい。かかる支保工継手構造では、挿入ピンを受パイプに挿入した状態で、継手板同士を支圧接合する。
【0011】
また、この他の支保工継手構造としては、H形鋼と、前記H形鋼の先端に溶接された支保工用継手板とを有する前記鋼製支保工の支保工用継手板に本発明の支保工連結部材が固定されたものとしてもよい。
本発明の支保工連結部材は、対向する左右一対の鋼製支保工の先端に固定されて、前記鋼製支保工同士を連結するものであって、H形鋼からなる本体部と、前記本体部の先端に固定された支圧板と、前記本体部の基端に固定された連結部材用継手板と、前記本体部のウェブの一方の面に固定された挿入ピンと、前記ウェブの他方の面に固定された受パイプとを備え、前記支圧板には前記挿入ピンと前記受パイプに対応する位置に前記挿入ピンを挿通可能な貫通孔が形成されており、前記挿入ピンは対向する他の前記鋼製支保工の先端に固定された他の支保工連結部材の受パイプに挿入可能となるように前記貫通孔を貫通している。
【0012】
支保工連結部材を使用すれば、挿入ピン及び受パイプを設けるために鋼製支保工に加工を施す必要がない、あるいは、鋼製支保工の加工を最小限に抑えることができる。そのため、鋼製支保工の加工に要する手間を省略できるとともに、費用の低減化を図ることができる。かかる支保工継手構造では、挿入ピンを受パイプに挿入した状態で、支圧板同士を支圧接合する。
【0013】
前記連結部材用継手板に、前記鋼製支保工の端部に形成された支保工用継手板に形成された貫通孔の位置に対応して、ボルトが固定されていれば、支保工用継手板の貫通孔にボルトを挿入し、ナットを螺合することで支保工連結部材を鋼製支保工に固定できる。そのため、支保工連結部材の鋼製支保工への取付作業が容易である。
【0014】
また、前記挿入ピンの側面に溝が形成されている場合には、前記受パイプに前記溝に挿入可能な係止部材が設けられているのが望ましい。このようにすれば、挿入ピンを受パイプに挿入することで、溝と係止部材が係合し、挿入ピンの抜け出しが抑制される。そのため、支保工組み立て時に、何らかの原因により挿入ピンが抜け出すことで、再度、挿入ピンを受パイプに挿入する作業を繰り返す必要がない。
【0015】
また、本発明の支保工組立方法は、対向する一対の鋼製支保工を連結するものであって、前記鋼製支保工の先端には、他方の前記鋼製支保工側に突出する挿入ピンと、前記挿入ピンを挿入可能な内径を有した受パイプとが並設されており、一方の前記鋼製支保工に固定された前記挿入ピンを、他方の前記鋼製支保工に固定された前記受パイプに挿入することで、前記鋼製支保工同士を連結するものである。
【0016】
かかる支保工組立方法によれば、鋼製支保工同士を簡易に連結することが可能となる。また、人力によりボルト締めする必要がないため、鋼製支保工を把持可能な一対のハンドを有するエレクター装置を利用して鋼製支保工の連結作業を行うことができ、支保工が完成する前の露出した地山、または、一次吹付けコンクリートの直下での人力による作業を省略できる。
【0017】
なお、支保工連結部材を使用する場合には、前記挿入ピンおよび前記受パイプが固定された支保工連結部材を前記鋼製支保工の先端に固定する作業を、前記鋼製支保工同士を連結する作業の前に行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明の支保工継手構造、支保工連結部材および支保工連結方法によれば、支保工施工時の作業性の向上と安全性の向上を図ることを可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第一実施形態に係るトンネルの概要を示す図であって、(a)は横断図、(b)は縦断図である。
【
図2】第一実施形態の支保工継手構造を示す図であって、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【
図3】第一実施形態の支保工継手構造の分解図であって、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【
図4】第二実施形態に係るトンネルの概要を示す図であって、(a)は横断図、(b)は縦断図である。
【
図5】第二実施形態の支保工継手構造を示す図であって、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【
図6】第二実施形態の支保工継手構造の分解図であって、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態では、NATMによりトンネル施工を行う場合について説明する。トンネルTは、
図1(a)および(b)に示すように、地山Gを掘削することにより露出した地山面Gsを吹付けコンクリート2や鋼製支保工3などからなる支保工1により閉塞することで安定化を図る。また、トンネル施工時には、必要に応じてフォアポーリング(短尺の先受工)、鏡ボルト工、脚部補強工等の補助工法を併用してもよい。
【0021】
トンネル施工は、まず、地山Gを掘削して、掘削孔(トンネルT)を形成する(掘削工程)。トンネルTの掘削方式は限定されるものではなく、例えば、発破式掘削であってもよいし、機械式掘削であってもよい。1サイクル毎のトンネルTの掘進長は、地山状況(地山等級や土被り等)に応じて決定するが、本実施形態では、1.0~1.2mとする。
【0022】
トンネルTを所定延長(本実施形態では1.0~1.2m)掘削したら、地山Gを掘削することにより露出した地山面Gsに沿って支保工1を形成する。本実施形態の支保工1は、一次吹付けコンクリート21および二次吹付けコンクリート22からなる吹付けコンクリート2と、鋼製支保工3とを備えている。支保工1の施工は、一次吹付け作業、支保工組立作業および二次吹付け作業を備えている。
【0023】
一次吹付け作業では、地山Gの掘削により露出した地山面Gsに一次吹付けコンクリート21を吹き付ける。一次吹付けコンクリート21は、トンネルTの壁面(側面)に加え、切羽Kにも吹き付ける。一次吹付けコンクリート21の吹付け厚さは、適宜決定すればよい。
【0024】
支保工組立作業では、切羽Kの近傍において、一次吹付けコンクリート21の表面(または地山面Gs)に沿って鋼製支保工3を配置する。支保工組立作業では、坑内において、対向する左右一対の鋼製支保工3,3を立ち上げるとともに、頂部において鋼製支保工3同士を連結する。鋼製支保工3同士は、支保工継手構造4を介して連結する。
【0025】
なお、鋼製支保工3は、トンネルTの内壁面に沿うように曲げ加工が施されたH形鋼からなり、鋼製支保工3の上端には継手板31が固定されており、鋼製支保工3の下端には底板32が固定されている。
【0026】
支保工継手構造4は、
図2(a)および(b)に示すように、鋼製支保工3の端部に突設された挿入ピン5と、鋼製支保工3の端部において挿入ピン5と並設された受パイプ6とを備えている。挿入ピン5は、継手板31に溶接されているとともに、鋼製支保工3のウェブ33の一方の面に溶接されている。受パイプ6は、挿入ピン5を挿入可能な内径を有した筒状部材であって、一端が継手板31に溶接されているとともに、他端がウェブ33の他方の面に溶接されている。
【0027】
図3(a)および(b)に示すように、鋼製支保工3の端部に固定された継手板31には、挿入ピン5および受パイプ6の位置に対応して貫通孔34,34が形成されている。貫通孔34は、挿入ピン5を挿通可能な直径(例えば、受パイプ6の内径と同等の直径)を有している。挿入ピン5は、貫通孔34を貫通して他方の鋼製支保工側に突出している。受パイプ6は、貫通孔に面しており、他方の鋼製支保工に向けて開口している。
【0028】
対向する鋼製支保工3,3は、
図2(a)および(b)に示すように、一方の鋼製支保工3の挿入ピン5を、他方の鋼製支保工3の受パイプ6に挿入することにより連結する。挿入ピン5の先端部は、先端に行くにしたがって縮径する円錐状を呈しており、受パイプ6に挿入しやすくなっている。また、挿入ピン5の継手板31からの突出長は、受パイプ6の長さよりも長く、受パイプ6に挿入した際に、先端部(円錐状の部分)が受パイプ6の基端から突出する。
【0029】
鋼製支保工3の組み立てが完了したら、トンネルTの側面に向けて二次吹付けコンクリート22を吹き付ける(二次吹付け作業)。
【0030】
以上、本実施形態の支保工継手構造4およびこれを利用した支保工組立方法によれば、挿入ピン5を受パイプ6に挿入するのみで、簡易の鋼製支保工3同士を連結できる。そのため、手作業によるボルト締結作業を要することなく、鋼製支保工3を把持可能な一対のハンドを有するエレクター装置を利用して鋼製支保工3の連結作業を行うことができ、支保工1が完成する前の露出した地山、または、一次吹付けコンクリート21の直下での人力による作業を省略できる。
【0031】
また、挿入ピン5を受パイプ6に挿入するのみの簡易な構成のため、挿入ピン5および受パイプ6の形状を複雑にする必要がなく、製造コストが比較的安価である。左右に配設された鋼製支保工3同士は、継手板31同士が支圧接合されるため、アーチ状の支保構造としての能力を十分に発揮することができる。
【0032】
また、継手板31の貫通孔34の形成と、ウェブ33への挿入ピン5および受パイプ6の固定のみで完了するため、鋼製支保工3への加工を最小限に抑えることができる。そのため、製造時の手間を低減でき、鋼製支保工3を下降することによる耐力低下の心配もない。
【0033】
<第二実施形態>
第二実施形態では、
図4(a)に示すように、支保工連結部材7を介して鋼製支保工3同士を連結する点で、鋼製支保工3の端面(継手板31)同士を当接させた状態で接合する第一実施形態の支保工継手構造4と異なっている。なお、一次吹付け作業および二次吹付作業の詳細は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0034】
支保工組立作業では、
図4(b)に示すように、切羽Kの近傍において、一次吹付けコンクリート21の表面(または地山面Gs)に沿って鋼製支保工3を配置する。支保工組立作業では、坑内において、対向する左右一対の鋼製支保工3,3を立ち上げるとともに、頂部において鋼製支保工3同士を連結する(
図4(a)参照)。鋼製支保工3同士は、支保工継手構造4を介して連結する。
【0035】
支保工継手構造4は、
図5(a)および(b)に示すように、鋼製支保工3に固定された支保工連結部材7を備えている。支保工連結部材7は、鋼製支保工3の先端部(上端部)に固定されており、支保工連結部材7同士を連結することにより、鋼製支保工3同士が連結される。
【0036】
鋼製支保工3は、トンネルTの内壁面に沿うように曲げ加工が施されたH形鋼と、H形鋼の上端に溶接された継手板(支保工用継手板)31と、H形鋼の下端に溶接された底板32とからなる。継手板31には、一対の貫通孔34,34が形成されている。
【0037】
支保工連結部材7は、
図6(a)および(b)に示すように、H形鋼からなる本体部71と、本体部71の先端に固定された支圧板72と、本体部71の基端に固定された連結部材用継手板73と、支圧板72を貫通しているとともに本体部71のウェブ74の一方の面に溶接された挿入ピン5と、一端が支圧板72に溶接されているとともに他端がウェブ74の他方の面に固定された受パイプ6とを備えている。
【0038】
支圧板72には、挿入ピン5と受パイプ6に対応する位置に、挿入ピン5を挿通可能な貫通孔75が形成されている。挿入ピン5の先端部は、対向する他の鋼製支保工3の先端に固定された他の支保工連結部材7の受パイプ6に挿入可能となるように、支圧板72の貫通孔75を貫通している。また、挿入ピン5の基端部は本体部71(ウェブ74)に溶接されている。受パイプ6は、貫通孔75に面して開口した状態で、本体部71(ウェブ74)に溶接されている。
【0039】
連結部材用継手板73には、継手板31(支保工用継手板)側に突設されたボルト76が固定されている。ボルト76は、鋼製支保工3の端部に形成された継手板31の貫通孔34の位置に対応した位置に固定されている。本実施形態のボルト76は、寸切ボルトを連結部材用継手板73に固定したものである。ボルト76は、本体部71のフランジとウェブ74に囲まれた空間内において、挿入ピン5または受パイプ6の外側(ウェブ74と反対側)に並設されている。
【0040】
支保工組立作業では、まず、鋼製支保工3の継手板31に、支保工連結部材7を固定する。支保工連結部材7の固定は、
図5(a)および(b)に示すように、継手板31の貫通孔34に連結部材用継手板73に固定されたボルト76を挿通させた状態で、継手板31と連結部材用継手板73とを重ね合わせるとともに、当該ボルト76にナット77を螺合することにより行う。
【0041】
鋼製支保工3の先端(継手板31)に支保工連結部材7を固定したら、左右の鋼製支保工3,3を立ち上げて、頂部において鋼製支保工3同士を連結する。対向する鋼製支保工3,3は、一方の支保工連結部材7の挿入ピン5を、他方の支保工連結部材7の受パイプ6に挿入することにより連結する。挿入ピン5の先端部は、先端に行くにしたがって縮径する円錐状を呈しており、受パイプ6に挿入しやすくなっている。
【0042】
挿入ピン5の円錐状の先端部51と、円柱状の一般部52との境界部の側面には、溝53が形成されている。一方、受パイプ6には、係止部材61が取り付けられている。係止部材61の端部は、受パイプ6を貫通しており、挿入ピン5に形成された溝53に挿入可能である。挿入ピン5を受パイプ6に挿入すると、係止部材61が溝53に係止されて、挿入ピン5が抜け出し難くなる。本実施形態の係止部材61は、受パイプ6に形成された孔に端部を貫通させたC字状部材(いわゆるDカンまたはCカン)からなる。
【0043】
以上、本実施形態の支保工継手構造4およびこれを利用した支保工組立方法によれば、鋼製支保工3の上端に支保工連結部材7を取り付けることで、鋼製支保工3同士の連結作業を簡易に行うことが可能となる。そのため、手作業によるボルト締結作業を要することなく、鋼製支保工3を把持可能な一対のハンドを有するエレクター装置を利用して鋼製支保工3の連結作業を行うことができ、支保工1が完成する前の露出した地山、または、一次吹付けコンクリート21の直下での人力による作業を省略できる。
【0044】
支保工連結部材7は、継手板31(支保工用継手板)にボルト76を介して固定することで、鋼製支保工3に固定できるため、鋼製支保工3に対して、大きな加工を要しない。そのため、費用を最小限に抑えることができる。
【0045】
挿入ピン5を受パイプ6に挿入すると、係止部材61の端部が溝53に係止(挿入)されるため、挿入ピン5の受パイプ6からの抜け出しが抑制される。そのため、重機を利用した連結作業において、機械の操作ミス等により挿入ピン5が抜け出すことが防止される。作業の効率化を図ることができる。
【0046】
また、挿入ピン5を受パイプ6に挿入するのみの簡易な構成のため、挿入ピン5および受パイプ6の形状を複雑にする必要がなく、製造コストが比較的安価である。左右に配設された鋼製支保工3同士は、支圧板72同士が支圧接合された一対の支保工連結部材7,7を介して連結されるため、アーチ状の支保構造としての能力を十分に発揮することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 支保工
2 吹付けコンクリート
3 鋼製支保工
31 継手板
33 ウェブ
34 貫通孔
4 支保工継手構造
5 挿入ピン
53 溝
6 受パイプ
61 係止部材
7 支保工連結部材
T トンネル