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特開2023-12205弁駆動装置のステムブッシュの摩耗計測装置及び摩耗計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012205
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】弁駆動装置のステムブッシュの摩耗計測装置及び摩耗計測方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 51/00 20060101AFI20230118BHJP
   G01N 3/56 20060101ALI20230118BHJP
   G01M 13/003 20190101ALI20230118BHJP
   F16K 31/04 20060101ALN20230118BHJP
【FI】
F16K51/00 F
G01N3/56 K
G01M13/003
F16K31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115711
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森 正和
(72)【発明者】
【氏名】丸山 武志
(72)【発明者】
【氏名】岡 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】森 真幸
(72)【発明者】
【氏名】河野 友輝
【テーマコード(参考)】
2G024
3H062
3H066
【Fターム(参考)】
2G024AA15
2G024BA21
2G024CA06
2G024DA03
3H062AA02
3H062BB33
3H062CC01
3H062EE06
3H066AA01
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】弁駆動装置の機種ごとに特殊な治具を用いることなくステムブッシュの摩耗量を計測可能な摩耗計測装置及び摩耗計測方法を提供する。
【解決手段】ステム11に螺合したステムブッシュ12をモータ13の作動により回転させて、弁体14をステム11と共にステム11の軸方向に移動させる弁駆動装置15のステムブッシュ12の摩耗量を計測する摩耗計測装置10において、モータ13の作動を検出するモータ作動検出手段27と、ステム11及び弁体14を具備する進退部材26のステム11の軸方向の移動を検出する進退検出手段28と、モータ作動検出手段27及び進退検出手段28からそれぞれ検出データを得て、モータ13の作動開始から進退部材26が移動し始めるまでの移動前時間を基にステムブッシュ12の摩耗量を求める摩耗量演算手段30とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムに螺合したステムブッシュをモータの作動により回転させて、弁体を該ステムと共に該ステムの軸方向に移動させる弁駆動装置の該ステムブッシュの摩耗量を計測する摩耗計測装置において、
前記モータの作動を検出するモータ作動検出手段と、
前記ステム及び前記弁体を具備する進退部材の該ステムの軸方向の移動を検出する進退検出手段と、
前記モータ作動検出手段及び前記進退検出手段からそれぞれ検出データを得て、前記モータの作動開始から前記進退部材が移動し始めるまでの移動前時間を基に前記ステムブッシュの摩耗量を求める摩耗量演算手段とを備えることを特徴とする摩耗計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の摩耗計測装置において、前記進退検出手段が取り付けられたセンサ支持機構を更に備え、該センサ支持機構は、前記ステムブッシュを収容する前記弁駆動装置のケーシングに固定されて、前記進退検出手段を前記ステムの移動を検出可能な位置に配することを特徴とする摩耗計測装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の摩耗計測装置において、前記摩耗量演算手段は、前記弁駆動装置の各構成品の設計値から予め導出された、前記移動前時間と前記ステムブッシュの摩耗量の関係式を用いて、該ステムブッシュの摩耗量を求めることを特徴とする摩耗計測装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の摩耗計測装置において、前記モータ作動検出手段は、前記モータに通電される電流を計測して前記モータの作動を検出することを特徴とする摩耗計測装置。
【請求項5】
ステムに螺合したステムブッシュをモータの作動により回転させて、弁体を該ステムと共に該ステムの軸方向に移動させる弁駆動装置の該ステムブッシュの摩耗量を計測する摩耗量計測方法において、
前記モータの作動の検出、並びに、前記ステム及び前記弁体を具備する進退部材の該ステムの軸方向の移動の検出を行うステップと、
前記モータの作動開始から前記進退部材が移動し始めるまでの移動前時間を導出するステップと、
前記移動前時間を基に前記ステムブッシュの摩耗量を求めるステップとを有することを特徴とする摩耗計測方法。
【請求項6】
請求項5記載の摩耗計測方法において、前記ステムブッシュを収容する前記弁駆動装置のケーシングからスピンドルカバーを取り外し、該ケーシングの該スピンドルカバーを取り外した箇所に、前記進退検出手段が取り付けられたセンサ支持機構を固定するステップを更に有することを特徴とする摩耗計測方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の摩耗計測方法において、前記弁駆動装置の各構成品の設計値から予め導出した、前記移動前時間と前記ステムブッシュの摩耗量の関係式を用いて、該ステムブッシュの摩耗量を求めることを特徴とする摩耗計測方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の摩耗計測方法において、前記モータの作動を、該モータに通電される電流の計測によって検出することを特徴とする摩耗計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁駆動装置が具備するステムブッシュの摩耗計測装置及び摩耗計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
仕切り弁や球型弁等の弁体がステムと共に進退する弁駆動装置は、ステムに噛み合ったステムブッシュがモータの回転力を与えられ回転して、ステム及び弁体を進退させる。ステムがステンレス鋼等の硬質金属により形成されるのに対し、ステムブッシュは真鍮等の軟質金属により形成されることから、摩耗は実質的にステムではなくステムブッシュに生じる。ステムブッシュの摩耗が進むと、ステムブッシュからステムが脱落する等の問題が招来するため、ステムブッシュの摩耗量は定期的に計測される。
【0003】
ステムブッシュの摩耗量の計測には、螺子ゲージを用いる方法がある。螺子ゲージは、ステムブッシュに対応した設計になっている必要があり、ステムブッシュの機種(規格)ごとに対応する螺子ゲージを用意しなければならない。
螺子ゲージを用いない方法として、特許文献1には、ステムブッシュ(ステムナット)と共に回転するドライブスリーブの回転角度、ドライブスリーブの軸方向のガタ成分、及び、ステムの動きだしをそれぞれ検出して、ステムブッシュの摩耗量を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-261587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、ドライブスリーブの軸方向のガタ成分の検出のために螺旋状の特殊な治具を必要とし、しかも、その治具を弁駆動装置の機種ごとに設計しなければならないという問題がある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、弁駆動装置の機種ごとに特殊な治具を用いることなくステムブッシュの摩耗量を計測可能な摩耗計測装置及び摩耗計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る摩耗計測装置は、ステムに螺合したステムブッシュをモータの作動により回転させて、弁体を該ステムと共に該ステムの軸方向に移動させる弁駆動装置の該ステムブッシュの摩耗量を計測する摩耗計測装置において、前記モータの作動を検出するモータ作動検出手段と、前記ステム及び前記弁体を具備する進退部材の該ステムの軸方向の移動を検出する進退検出手段と、前記モータ作動検出手段及び前記進退検出手段からそれぞれ検出データを得て、前記モータの作動開始から前記進退部材が移動し始めるまでの移動前時間を基に前記ステムブッシュの摩耗量を求める摩耗量演算手段とを備える。
【0007】
前記目的に沿う第2の発明に係る摩耗計測方法は、ステムに螺合したステムブッシュをモータの作動により回転させて、弁体を該ステムと共に該ステムの軸方向に移動させる弁駆動装置の該ステムブッシュの摩耗量を計測する摩耗量計測方法において、前記モータの作動の検出、並びに、前記ステム及び前記弁体を具備する進退部材の該ステムの軸方向の移動の検出を行うステップと、前記モータの作動開始から前記進退部材が移動し始めるまでの移動前時間を導出するステップと、前記移動前時間を基に前記ステムブッシュの摩耗量を求めるステップとを有する。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明に係る摩耗計測装置及び第2の発明に係る摩耗計測方法は、モータの作動の検出、並びに、ステム及び弁体を具備する進退部材のステムの軸方向の移動の検出を行い、モータの作動開始から進退部材が移動し始めるまでの移動前時間を基にステムブッシュの摩耗量を求めるので、ドライブスリーブの軸方向のガタ成分の検出、即ち、弁駆動装置の機種ごとに設計される特殊な治具を用いた検出を行うことなくステムブッシュの摩耗量を計測可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る摩耗計測装置が使用される弁駆動装置の説明図である。
図2】同摩耗計測装置の一部省略説明図である。
図3】同摩耗計測装置の一部省略説明図である。
図4】モータ電流、移動前時間、及び、ステムブッシュの摩耗の関係を示す説明図である。
図5】摩耗量導出用の一次関数の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図2図3に示すように、本発明の一実施の形態に係る摩耗計測装置10は、ステム11に螺合したステムブッシュ12をモータ13の作動により回転させて、弁体14をステム11と共にステム11の軸方向(軸心方向)に移動させる弁駆動装置15のステムブッシュ12の摩耗量を計測する装置である。以下、詳細に説明する。
【0011】
摩耗計測装置10によってステムブッシュ12の摩耗量が計測される弁駆動装置15は、図1に示すように、ケーシング16を有し、ケーシング16に、ウォーム17と、ウォーム17に噛み合ったウォームホイル18と、ウォームホイル18が取り付けられた筒状のスリーブ19と、スリーブ19内に固定されたステムブッシュ12が収容されている。
【0012】
ステムブッシュ12は、円筒状の部材であり、内側に雌螺子構造が形成され、軸心を中心に回転する。棒状のステム11は、雄螺子領域を具備し、ステムブッシュ12の軸心と軸心が一致した状態で、雄螺子領域がステムブッシュ12の雌螺子構造に噛み合って、鉛直に配置されている。ケーシング16には、ステム11が挿通した貫通孔20が下部(一側)に形成され、上部(他側)にスピンドルカバー21によって閉じられた貫通孔22が形成されている。ステム11の上端部は貫通孔22より低い位置にあって、貫通孔22はステム11の延長線上に設けられている。
【0013】
スピンドルカバー21は、スピンドルカバー21を貫通した状態でケーシング16の貫通孔22の周囲に形成された複数の螺子穴23に先端部がそれぞれ螺合した複数の螺子部材24によって、ケーシング16の上部に固定されている。
本実施の形態では、貫通孔22が、図1図3に示すように、円形であり、ケーシング16には、貫通孔22の外側の0°位置、90°位置、180°位置、270°位置にそれぞれ螺子穴23が形成され、螺子部材24は4本である。
【0014】
弁駆動装置15は、図2に示すように、外部電源25からの通電により作動するモータ13、及び、ギア等によって構成され、モータ13の回転力をウォーム17に伝える図示しない動力伝達機構を更に有している。モータ13の回転力がウォーム17に伝えられることによって、ウォームホイル18、スリーブ19及びステムブッシュ12が一体的に回転し、ステム11の下端部(一端部)に連結された弁体14及びステム11は昇降(ステム11の軸方向に移動)する。
本実施の形態では、ステムブッシュ12が真鍮を素材として形成され、ステム11がステンレス鋼によって形成され、また、ステムブッシュ12の回転に伴ってステム11の軸方向に進退する進退部材26が、ステム11及び弁体14等を具備して構成されている。
【0015】
摩耗計測装置10は、図2図3に示すように、モータ13の作動を検出するモータ作動検出手段27と、進退部材26(本実施の形態では、ステム11)の昇降を検出する進退検出手段28と、進退検出手段28を支持するセンサ支持機構29と、モータ作動検出手段27及び進退検出手段28からそれぞれ検出データを得て、ステムブッシュ12の摩耗量を求める摩耗量演算手段30を備えている。
【0016】
本実施の形態において、モータ作動検出手段27は、図2に示すように、外部電源25とモータ13を接続する電源供給回路31を流れる電流の値を計測するクランプメータである。モータ13は、図4に示すように、モータ13への通電の開始により(モータ13の電流の立ち上がり時に)作動を開始する。モータ作動検出手段27は、モータ13に通電される電流を計測してモータ13の作動を検出する。なお、モータ13の代わりに、通電される電流値が所定値に達した時点で作動を開始するモータを採用する場合、モータ作動検出手段27は、当該電流値が所定値に達した時点を、モータ13作動開始時として検出するように設定される。
【0017】
進退検出手段28は、図2図3に示すように、計測対象物までの距離を計測する非接触式のセンサであり、例えば、レーザ変位センサを進退検出手段28として採用可能である。
センサ支持機構29は、図3に示すように、摩耗計測装置10によりステムブッシュ12の摩耗量を計測する際に、対象となる弁駆動装置15のケーシング16に取り付けら(固定さ)れて、進退検出手段28をステム11の軸方向の移動を検出可能な位置に配置する。
【0018】
センサ支持機構29は、ケーシング16に固定されるベース部材32及びベース部材32に蝶ボルト33によって固定されるアーム部材34を有している。ベース部材32は、長尺の金属板の一側端部が直角に折り曲げられて形成され、その折り曲げられた一側端部には長孔35が設けられ、一側端部を除く長尺領域には長手方向に長い長孔36が設けられている。
【0019】
アーム部材34は、L字状の金属板の一側端部が直角に折り曲げられて形成され、その折り曲げられた一側端部が進退検出手段28を支持する保持部37として機能し、一側端部を除く長尺領域には長手方向に長い長孔38が形成されている。アーム部材34は、長孔36、38を貫通した蝶ボルト33に図示しないナットが装着されて、ベース部材32に取り付けられている。ベース部材32に取り付けられたアーム部材34は、長尺領域がベース部材32の長尺領域に対して垂直となるように配される。
【0020】
アーム部材34が取り付けられたベース部材32をケーシング16に固定するにあたり、まず、ケーシング16からスピンドルカバー21が取り外される。ベース部材32は、長孔35を貫通した蝶ボルト39の先端部が、スピンドルカバー21が取り外されたケーシング16の0°位置に形成された螺子穴23に螺合されることによって、立設状態でケーシング16に固定される。アーム部材34は、ベース部材32がケーシング16に固定されることによって水平となる。
【0021】
アーム部材34の高さ位置が、ベース部材32の長孔36に対する蝶ボルト33の位置を変えることにより調整されて、進退検出手段28は所定の高さ位置に配される。ベース部材32に対するアーム部材34の水平位置が、アーム部材34の長孔38に対する蝶ボルト33の位置を変えることにより調整されて、進退検出手段28は貫通孔22の中心の真上(ステム11の真上でもある)に配される。
【0022】
摩耗計測装置10は、図2図3に示すように、長尺の金属板の両側端部にそれぞれ長孔40、41が形成され、中央に貫通孔42が形成されたベース台43と、ベース台43に固定された逆U字状のガイド部材44と、貫通孔42及びガイド部材44に形成された貫通孔45を挿通した状態でベース台43及びガイド部材44に進退自在に取り付けられるロッド46とを更に具備している。
【0023】
ベース台43は、長孔40を貫通した蝶ボルト47の先端部がケーシング16の90°位置に形成された螺子穴23に螺合され、長孔41を貫通した蝶ボルト48の先端部がケーシング16の270°位置に形成された螺子穴23に螺合されることによって、貫通孔22の径方向に配された状態でケーシング16に固定される。ベース台43は、長孔40、41がベース台43の長手方向に長く、90°位置に形成された螺子穴及び270°位置に形成された螺子穴の距離がケーシング16とは異なるケーシングに対しても固定可能な設計となっている。
【0024】
蝶ボルト47の長孔40の貫通位置及び蝶ボルト48の長孔41の貫通位置は、貫通孔42、45が貫通孔22の中心の真上に配されるように調整され、これにより、ベース台43及びガイド部材44に取り付けられたロッド46は、下端部(一端部)がステム11の上端部(他端部)に接して、ステム11と共に昇降(ステム11の軸方向に進退)するように配置される。
【0025】
また、ロッド46の上端部(他端部)には、進退検出手段28の直下に配される円盤状の受台49が連結されている。進退検出手段28は、直接的な計測対象が受台49であり、受台49に対してレーザを照射して受台49の変位を計測し、計測した受台49の変位から進退部材26の移動を検出する。なお、進退検出手段28の代わりに、受台49に接触して受台49の変位を計測する接触式のリニアセンサを進退検出手段として採用してもよい。
【0026】
ベース台43、ガイド部材44、ロッド46及び受台49は必ずしも必要ではない。例えば、ステムの上端部がケーシングの上部に形成された貫通孔より上方に突出している弁駆動装置に対しては、ベース台43、ガイド部材44、ロッド46及び受台49を使用せず、進退検出手段28の直接的な計測対象をステムの上端部とすればよい。
【0027】
摩耗量演算手段30は、CPU及びメモリを有して構成することができ、図2に示すように、モータ作動検出手段27及び進退検出手段28に接続されている。
ここで、モータ13からモータ13の回転力がステム11まで伝わる経路上に設けられたギア等の部材にはバックラッシュがあることから、図4に示すように、モータ13が作動を開始してからステム11(進退部材26)が移動を開始するまでにはタイムラグがある。以下、モータ13の作動開始から進退部材26が移動し始めるまでの時間(時間長)を、「移動前時間」と言う。
【0028】
移動前時間は、弁駆動装置15の使用によるステムブッシュ12の雌螺子構造の螺子山の摩耗(以下、単に「ステムブッシュ12の摩耗」とも言う)が進むほど長くなる。即ち、移動前時間はステムブッシュ12の摩耗量に応じた長さとなる。そのため、未使用(新品)の弁駆動装置15の移動前時間に対する弁駆動装置15の使用により長くなった移動前時間の差分(以下、この差分を「使用による延長時間」とも言う)は、ステムブッシュ12の摩耗量の増加に伴い長くなる。よって、使用による延長時間を基にして、ステムブッシュ12の摩耗量を導出可能である。
【0029】
本実施の形態では、未使用(新品)の弁駆動装置15の移動前時間、ステム11の雄螺子領域の螺子山のピッチ、及び、モータ13作動時のステムブッシュ12の回転数(回転速度)等から、図5に示すように、使用による延長時間の計測値を基にしてステムブッシュ12の摩耗量を算出できる一次関数(移動前時間とステムブッシュ12の摩耗量の関係式の一例)を予め導出し、この一次関数を摩耗量演算手段30に記憶させている。以下、当該一次関数を、「摩耗量導出用の一次関数」とも言う。
【0030】
弁駆動装置の機種ごとにユニークな摩耗量導出用の一次関数が存在する。摩耗量演算手段30には、複数の弁駆動装置の機種にそれぞれ対応する複数の摩耗量導出用の一次関数が記憶されている。利用者は、摩耗計測装置10の設定時に、ステムブッシュの摩耗を計測する弁駆動装置に対応した摩耗量導出用の一次関数を、摩耗量演算手段30に接続された図示しない入力デバイスの操作により選択する。
【0031】
摩耗量演算手段30は、モータ作動検出手段27及び進退検出手段28からそれぞれ検出データを得て、選択された摩耗量導出用の一次関数を用いて、移動前時間を基にステムブッシュ12の摩耗量を求める。よって、摩耗量演算手段30は、弁駆動装置15の各構成品の設計値から予め導出された、移動前時間とステムブッシュ12の摩耗量の関係式を用いて、ステムブッシュ12の摩耗量を求めることとなる。なお、移動前時間とステムブッシュ12の摩耗量の関係式は、一定期間使用した摩耗計測装置10についてステムブッシュ12の摩耗量と移動前時間とを実測して導出することもできる。
【0032】
次に、摩耗計測装置10による使用中の弁駆動装置15を対象としたステムブッシュ12の摩耗量を計測する摩耗量計測方法について説明する。
まず、ケーシング16からスピンドルカバー21を取り外し、ケーシング16のスピンドルカバー21を取り外した箇所に、センサ支持機構29及びベース台43を固定するステップから始められる。
【0033】
そして、ベース台43及びベース台43に固定されたガイド部材44に、受台49が連結されたロッド46を下端部がステム11の上端部に接するように取り付け、受台49の真上に進退検出手段28が配されるようにセンサ支持機構29を調整する。
次に、モータ13を正転させて受台49(進退部材26)の移動(本実施の形態では、受台49が進退検出手段28から離れる向きの移動)を確認した後、モータ13への通電を一旦止める。その後、モータ13への通電を開始してモータ13を逆転させ、モータ作動検出手段27によるモータ13の作動の検出、並びに、進退部材26の昇降(本実施の形態では、上昇)の検出を行うステップとなる。なお、図1の拡大図には、進退部材26が上昇する際のステム11及びステムブッシュ12の様子(ステム11の螺子山の下側がステムブッシュ12の螺子山の上側に接触している様子)が記載されている。
【0034】
本実施の形態では、モータ13の作動を、モータ13に通電される電流の計測によって検出しているが、これには限定されない。例えば、モータ13に印加される電圧の計測により、モータ13の作動を検出するようにしてもよい。
そして、モータ13の逆転の作動開始から進退部材26が移動し始めるまでの移動前時間を摩耗量演算手段30が導出するステップと、摩耗量演算手段30により移動前時間を基にステムブッシュ12の摩耗量を導出するステップとが順に続く。
【0035】
ここで、本実施の形態におけるステムブッシュ12の摩耗量の導出は、ステムブッシュ12以外の部材に摩耗がないことを前提としている。この点、摩耗したステムブッシュ12の摩耗量を対象に、当該摩耗量を実測した値と、本実施の形態の摩耗量計測方法により導出した摩耗量とを比較する実験を行い、双方の摩耗量が等しくなることを確認している。これは、ステムブッシュ12以外の部材の摩耗量が、ステムブッシュ12の摩耗量に対して極めて少ないこと、モータ13からステムブッシュ12に至るまでの減速比が大きく(例えば、100倍)、ステムブッシュ12の摩耗量の計測に対して、ステムブッシュ12以外の部材の摩耗量の影響が小さいことが考えられる。
【0036】
また、本実施の形態では、摩耗の無いステムブッシュ12の摩耗量を0%、螺子山が完全に消失したステムブッシュ12の摩耗量を100%として、ステムブッシュ12の摩耗量50%を、使用中のステムブッシュ12を新たなステムブッシュ12に替える値としている。このようにステムブッシュ12の摩耗量を計測して、ステムブッシュ12の交換を行うような運用によって、予め定めた周期ごとにメンテナンスを行うTBM(Time Based Maintenance)ではなく、設備状態に基づきメンテナンスを行うCBM(Condition Based Maintenance)を実施することができる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、弁駆動装置のケーシングに固定されるセンサ支持機構を用いる代わりに、弁駆動装置のケーシング以外の部材に固定されるセンサ支持機構を用いることができる。
また、進退検出手段により弁体の軸方向の移動を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10:摩耗計測装置、11:ステム、12:ステムブッシュ、13:モータ、14:弁体、15:弁駆動装置、16:ケーシング、17:ウォーム、18:ウォームホイル、19:スリーブ、20:貫通孔、21:スピンドルカバー、22:貫通孔、23:螺子穴、24:螺子部材、25:外部電源、26:進退部材、27:モータ作動検出手段、28:進退検出手段、29:センサ支持機構、30:摩耗量演算手段、31:電源供給回路、32:ベース部材、33:蝶ボルト、34:アーム部材、35、36:長孔、37:保持部、38:長孔、39:蝶ボルト、40、41:長孔、42:貫通孔、43:ベース台、44:ガイド部材、45:貫通孔、46:ロッド、47、48:蝶ボルト、49:受台
図1
図2
図3
図4
図5