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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122098
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】金属溶湯容器用蓋
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/18 20060101AFI20230825BHJP
   F27B 3/16 20060101ALI20230825BHJP
   B22D 41/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
F27D1/18 A
F27D1/18 E
F27B3/16
B22D41/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025526
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】320005154
【氏名又は名称】日本製鋼所M&E株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】浦本 和孝
(72)【発明者】
【氏名】関 佑太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠
(72)【発明者】
【氏名】古澤 栄二
(72)【発明者】
【氏名】柳 憲治
【テーマコード(参考)】
4E014
4K045
4K051
【Fターム(参考)】
4E014AB00
4K045AA04
4K045AA06
4K045BA01
4K045RA09
4K045RA16
4K045RB02
4K045RB16
4K045RB29
4K051AA05
4K051AA06
4K051AB09
4K051MA05
4K051MA10
4K051MA12
(57)【要約】
【課題】一体の状態で吊り上げ動作、吊り下げ動作、或いは輸送するときに発生する損傷を低減し、複数に分割可能な金属溶湯容器用蓋を提供すること。
【解決手段】金属溶湯容器用蓋1は、金属溶湯を収納する容器に着脱可能な蓋体であって、複数の蓋部材2と、蓋部材2に形成し、蓋部材2のうちの少なくとも二つを互いに接合する接合部3を備える。さらに、接合部3に形成し、吊具15を着脱可能な吊具取付部4を備える。接合部3は、上下方向に沿って蓋部材2の側面に形成し、蓋部材2を平面方向に並べて接合可能である。蓋部材2は、接合部3同士を接合することによって一体化が可能である。蓋部材2を一体化すると、金属溶湯容器用蓋1は、容器を覆うように蓋体中心部5の周りに平面方向へ広がる円盤状である。蓋部材2は、接合部3を分離することによって分離可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯を収納する容器に着脱可能な蓋体であって、
複数の蓋部材と、
前記蓋部材に形成し、該蓋部材のうちの少なくとも二つを互いに接合する接合部と、
前記接合部に形成し、吊具を着脱可能な吊具取付部を備え、
前記容器に設置する底面側を下側とし、前記底面側と反対側である天面側を上側とする上下方向に対して、直交する方向を平面方向とし、
前記接合部は、上下方向に沿って前記蓋部材の側面に形成し、前記蓋部材を前記平面方向に並べて接合可能であり、
前記蓋部材は、前記接合部同士を接合することによって一体化が可能であり、
前記蓋部材を一体化すると、前記容器を覆うように蓋体中心部の周りに前記平面方向へ広がる円盤状であり、
前記蓋部材は、前記接合部を分離することによって分離可能である金属溶湯容器用蓋。
【請求項2】
前記蓋部材を一体化した状態の形状は、前記底面側の外径が前記天面側の外径よりも大きい円錐台状であり、
前記底面側から前記上側に向かって凹部を有する請求項1に記載の金属溶湯容器用蓋。
【請求項3】
前記蓋部材は、鉄皮にキャスタブル耐火物を一体的に形成するものであり、
前記接合部において前記蓋部材が互いに対向する部分は、前記鉄皮同士が接合する部分と、前記キャスタブル耐火物同士が接合する部分を備える請求項1又は2に記載の金属溶湯容器用蓋。
【請求項4】
前記キャスタブル耐火物は、前記上下方向において肉厚部を備え、
前記容器が底面部から前記金属溶湯にガスを吹き込むガス吹き込み口を有するとき、
前記蓋部材を一体化した状態で前記容器に装着すると、前記肉厚部は、前記上下方向において前記ガス吹き込み口に対向する位置にある請求項3に記載の金属溶湯容器用蓋。
【請求項5】
前記接合部の一部は、前記上側に突出するリブを形成し、
前記吊具取付部は、前記リブに形成する請求項1から4のいずれかに記載の金属溶湯容器用蓋。
【請求項6】
前記接合部は、前記平面方向のうちの一方向に沿って延びる請求項1から5のいずれかに記載の金属溶湯容器用蓋。
【請求項7】
前記接合部は、前記平面方向のうちの一方向に沿って少なくとも二つの前記吊具取付部である第一吊具取付部と第二吊具取付部を備え、
前記平面方向において、
前記第一吊具取付部と前記第二吊具取付部とは、前記蓋体中心部を挟んで対称の位置にある請求項6に記載の金属溶湯容器用蓋。
【請求項8】
前記接合部は、少なくとも第一接合部と第二接合部を備え、
前記第一接合部と前記第二接合部は、前記平面方向において前記蓋体中心部を挟んで互いに平行に列をなす請求項6に記載の金属溶湯容器用蓋。
【請求項9】
前記接合部は、前記平面方向のうちの一方向に沿って少なくとも前記吊具取付部である第一吊具取付部と第二吊具取付部を備え、
前記平面方向において、
前記第一吊具取付部と前記第二吊具取付部を結ぶ直線に対して、前記蓋体中心部から前記直線に対して垂線を引くときの交点が、前記第一吊具取付部と前記第二吊具取付部との間に位置する請求項8に記載の金属溶湯容器用蓋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶湯を収納する容器に使用し、複数に分割可能な金属溶湯容器用蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属溶湯を収納する容器に使用する炉蓋が提案されている。例えば、特許文献1に記載の電気炉の炉蓋は、電極孔が厚さ方向に貫設された耐火物製の略円形の電気炉炉蓋において、該炉蓋を、中心孔を有した環状の周枠部と、前記電極孔を有し、該中心孔に嵌合された中心ブロックとで構成し、該周枠部を周方向に複数個に分割した扇形ブロックの集合体とし、該扇形ブロックと中心ブロックとの継目に不定形耐火物を介在させたものである。扇形ブロック同士の継目には、膨張吸収代として、人造石綿などの耐火性繊維を挟むのが好ましいと記載されている。
【0003】
これによれば、電気炉の炉蓋において、電極孔の近傍部分が損傷した場合でも、該電極孔を有する中心ブロックだけを交換することができ、その他の周枠部はそのまま使用を継続することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4-125196
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来例では以下の課題があった。金属溶湯を収納する容器に使用する炉蓋は、サイズと重量が大きい場合がある。炉蓋は、容器に装着する時、或いは輸送するときに吊具によって吊り上げ動作と吊り下げ動作を伴うことが多い。すると、炉蓋は吊具によって引き上げられたときに、継目30に剪断応力が発生して破損するという課題があった。例えば、図18及び図19に示す炉蓋100は、蓋部材200aと蓋部材200bとを継目30において接合している。図18に示すように、吊具15を取り付け可能な吊具取付部40は、継目30とは異なる位置にある。
【0006】
この場合、図19に示すように、炉蓋100を吊具15によって容器23から引き上げると、蓋部材200aと蓋部材200bのぞれぞれにはたらく重力によって継目30に剪断応力が働き、継目30が破断して分離してしまうという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、従来の課題を解決すべくなされたものであり、一体の状態で吊り上げ動作、吊り下げ動作、或いは輸送するときに発生する損傷を低減し、複数に分割可能な金属溶湯容器用蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係る金属溶湯容器用蓋は、金属溶湯を収納する容器に着脱可能な蓋体であって、複数の蓋部材と、前記蓋部材に形成し、該蓋部材のうちの少なくとも二つを互いに接合する接合部と、前記接合部に形成し、吊具を着脱可能な吊具取付部を備え、前記容器に設置する底面側を下側とし、前記底面側と反対側である天面側を上側とする上下方向に対して、直交する方向を平面方向とし、前記接合部は、上下方向に沿って前記蓋部材の側面に形成し、前記蓋部材を前記平面方向に並べて接合可能であり、前記蓋部材は、前記接合部同士を接合することによって一体化が可能であり、前記蓋部材を一体化すると、前記容器を覆うように蓋体中心部の周りに前記平面方向へ広がる円盤状であり、前記蓋部材は、前記接合部を分離することによって分離可能である。
【0009】
これによれば、金属溶湯容器用蓋は接合部によって分離可能なので、蓋部材を複数に分離した状態で輸送することができる。また、吊具取付部は接合部に形成するので、蓋部材を一体化した金属溶湯容器用蓋を、吊具によって吊り上げ動作、吊り下げ動作、或いは輸送するときに接合部が破断することによる損傷を低減することができる。
【0010】
また、前記金属溶湯容器用蓋は、前記蓋部材を一体化した状態の形状が、前記底面側の外径が前記天面側の外径よりも大きい円錐台状であり、前記底面側から前記上側に向かって凹部を有してもよい。
【0011】
この場合、蓋部材を一体化した金属溶湯容器用蓋は、円錐台形状であって底面側から上側に向かって凹部を形成するので、吊具によって吊り上げ動作、吊り下げ動作、或いは輸送するときに蓋部材同士が分離しにくく、接合部が破断することによる損傷を低減することができる。
【0012】
また、前記金属溶湯容器用蓋は、前記蓋部材が、鉄皮にキャスタブル耐火物を一体的に形成するものであり、前記接合部は、前記鉄皮同士が接合する部分と、前記キャスタブル耐火物同士が接合する部分を備えてもよい。
【0013】
この場合、接合部において前記蓋部材が互いに対向する部分は、鉄皮同士が接合する部分と、キャスタブル耐火物同士が接合する部分を備える。よって、同種材質同士が接合するので、膨張係数の違いによって接合部に破断が生じることを防止する。
【0014】
また、前記金属溶湯容器用蓋は、前記キャスタブル耐火物が
前記上下方向において肉厚部を備え、前記容器が底面部から前記金属溶湯にガスを吹き込むガス吹き込み口を有するとき、前記蓋部材を一体化した状態で前記容器に装着すると、前記肉厚部は、前記上下方向において前記ガス吹き込み口に対向する位置にあってもよい。
【0015】
この場合、蓋部材を一体化した金属溶湯容器用蓋は、容器に装着すると肉厚部が上下方向においてガス吹き込み口に対向する位置にある。金属溶湯容器用蓋は、金属溶湯からガスが吹き上がる場合であっても肉厚部の範囲で損傷を留めることができるので、鉄皮にまで損傷が及ぶことを低減できる。よって、鉄皮にキャスタブル耐火物を一体的に形成する金属溶湯容器用蓋は、鉄皮による剛性を維持できるので、一体の状態で吊り上げ動作、吊り下げ動作、或いは輸送するときに発生する損傷を低減することができる。
【0016】
また、前記金属溶湯容器用蓋は、前記接合部の一部が前記上側に突出するリブを形成し、前記吊具取付部を前記リブに形成してもよい。
【0017】
この場合、吊具取付部は接合部の一部であるリブに形成するので、吊具取付部の強度が高くなる。また、吊具取付部は、吊具を容易に着脱することができる。
【0018】
また、前記金属溶湯容器用蓋は、前記接合部が前記平面方向のうちの一方向に沿って延びてもよい。
【0019】
この場合、接合部は一方向に沿って延びるので、吊具によって蓋部材を一体化した金属溶湯容器用蓋を引き上げるときに、接合部にかかる剪断応力を低減することができる。
【0020】
また、前記金属溶湯容器用蓋は、前記接合部が、前記平面方向のうちの一方向に沿って少なくとも二つの前記吊具取付部である第一吊具取付部と第二吊具取付部を備え、前記平面方向において、前記蓋体中心部は、前記第一吊具取付部と前記第二吊具取付部とは、前記蓋体中心部を挟んで対称の位置にあってもよい。
【0021】
この場合、蓋部材を一体化した金属溶湯容器用蓋における蓋体中心部は第一吊具取付部と第二吊具取付部との間に位置するので、吊具によってバランス良く引き上げることができる。また、各吊具取付部にかかる荷重を分散するので、接合部における損傷を低減することができる。
【0022】
また、前記金属溶湯容器用蓋は、前記接合部が少なくとも第一接合部と第二接合部を備え、前記第一接合部と前記第二接合部は、前記平面方向において前記蓋体中心部を挟んで互いに平行に列をなしてもよい。
【0023】
この場合、第一接合部と第二接合部は、平面方向において蓋体中心部を挟んで互いに平行に列をなすので、各接合部に剪断応力が発生することを低減することができる。
【0024】
また、前記金属溶湯容器用蓋は、前記接合部が、前記平面方向のうちの一方向に沿って少なくとも前記吊具取付部である第一吊具取付部と第二吊具取付部を備え、前記平面方向において、前記第一吊具取付部と前記第二吊具取付部を結ぶ直線に対して、前記蓋体中心部から前記直線に対して垂線を引くときの交点が、前記第一吊具取付部と前記第二吊具取付部との間に位置してもよい。
【0025】
この場合、蓋部材を一体化した金属溶湯容器用蓋は、第一吊具取付部と第二吊具取付部を結ぶ直線に対して、蓋体中心部から直線に対して垂線を引くときの交点が、第一吊具取付部と第二吊具取付部との間に位置する。よって、蓋部材を一体化した金属溶湯容器用蓋は、吊具によってバランス良く引き上げることができる。また、各吊具取付部にかかる荷重を分散するので、接合部における損傷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第一実施形態の金属溶湯容器用蓋1aを示す斜視図である。
図2図1に示す金属溶湯容器用蓋1aの蓋部材2を、接合部3aで分離した平面図である。
図3図1における断面I―Iを示す断面図である。
図4図3に対して、接合部3aにおいて蓋部材2を分離した状態を示す。
図5】本発明の第二実施形態の金属溶湯容器用蓋1bを示す斜視図である。
図6図5に示す金属溶湯容器用蓋1bの平面図である。
図7図6に示す金属溶湯容器用蓋1bの蓋部材2を、接合部3bで分離した平面図である。
図8図6における断面II―IIを示す断面図である。
図9図6における断面III-IIIを示す断面図であって、容器23に装着した状態を示す。
図10】本発明の第三実施形態の金属溶湯容器用蓋1cを示す斜視図である。
図11図10に示す金属溶湯容器用蓋1cの平面図である。
図12図10に示す金属溶湯容器用蓋1cの蓋部材2を、第一接合部3c及び第二接合部3dで分離した平面図である。
図13図11における断面IV―IVを示す断面図である。
図14図11における断面V―Vを示す断面図である。
図15】金属溶湯容器用蓋1を真空精錬炉20に装着した状態を示す断面図である。
図16】金属溶湯容器用蓋1を電気炉21に装着した状態を示す断面図である。
図17】金属溶湯容器用蓋1を取鍋22に装着した状態を示す断面図である。
図18】従来例の炉蓋100を示す斜視図である。
図19】従来例の炉蓋100を吊具取付部40において吊具15が吊り上げた状態を示す正面図である。
【0027】
以下、図面を参照し、本発明を具現化した金属溶湯容器用蓋1を説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0028】
<各実施形態に共通の構成>
図1図2を代表例として参照し、本発明に係る金属溶湯容器用蓋1の各実施形態に共通の構成を説明する。なお、ここでは後述する各実施形態の金属溶湯容器用蓋1aから1cまでを総称して金属溶湯容器用蓋1とする。
【0029】
図1を例に示すように、金属溶湯容器用蓋1は、金属溶湯を収納する容器23に着脱可能な蓋体であって、複数の蓋部材2と、蓋部材2に形成し、蓋部材2のうちの少なくとも二つを互いに接合する接合部3を備える。さらに、接合部3に形成し、吊具15を着脱可能な吊具取付部4を備える。ここで、蓋部材2は、後述する各実施形態における第一蓋部材2aから第七蓋部材2gまでを含み、接合部3は、後述する各実施形態における接合部3aから第二接合部3dまでを含む。吊具取付部4は、後述する第一吊具取付部4a、4c、4e、4gと、第二吊具取付部4b、4d、4f、4hを含む。
【0030】
容器23に設置する底面側を下側とし、底面側と反対側である天面側を上側とする上下方向に対して、直交する方向を平面方向とする。接合部3は、上下方向に沿って蓋部材2の側面に形成し、蓋部材2を平面方向に並べて接合可能である。蓋部材2は、接合部3同士を接合することによって一体化が可能である。蓋部材2を一体化すると、金属溶湯容器用蓋1は、容器23を覆うように蓋体中心部5の周りに平面方向へ広がる円盤状である。図2を例に示すように、蓋部材2は、接合部3を分離することによって分離可能である。
【0031】
図1を例に示すように、蓋部材2を一体化した状態の形状は、底面側の外径が天面側の外径よりも大きい円錐台状である。また、図8を例に示すように、底面側から上側に向かって凹部8を有する。
【0032】
次に、図3及び図4を参照して、接合部3の構成を説明する。蓋部材2は、鉄皮6にキャスタブル耐火物7を一体的に形成するものである。接合部3において蓋部材2が互いに対向する部分は、鉄皮6同士が接合する部分と、キャスタブル耐火物7同士が接合する部分を備える。鉄皮6においてキャスタブル耐火物7を形成する側にはアンカー11を取付け、成形後にキャスタブル耐火物7が脱落することを防止する。
【0033】
また、鉄皮6同士が接する部分は、間にパッキン17を挟んだ状態で接合する。キャスタブル耐火物7同士が接する部分は、間にセラミックシート18を挟んだ状態で接合する。パッキン17とセラミックシート18は、接合部3においてドッキングする際のダメージを吸収するためのクッションの働きをする。さらに接合部3において、鉄皮6同士、及びキャスタブル耐火物7同士が擦れ合わないようにする働きをする。なお、鉄皮6同士が接合する部分には、鉄皮6同士が直接接触して接合する場合と、間にパッキン17を挟んだ状態で接合する場合の双方を含むものとする。キャスタブル耐火物7同士を接する部分には、キャスタブル耐火物7同士を直接接触して接合する場合と、間にセラミックシート18を挟んだ状態で接合する場合の双方を含むものとする。
【0034】
図3に示すように、接合するときは、ボルト12とナット13によって締結し、図4に示すように分離するときは、ボルト12をナット13から取り外す。なお、図1の例では一部のナット13についてのみ符号を付すが、図示のように他の箇所もボルト12及びナット13によって接合部3を締結する。
【0035】
金属溶湯容器用蓋1は、蓋部材2が一体になっている状態では、例として直径が約3mでありサイズが大きく重量が重い。金属溶湯容器用蓋1は一体の状態で輸送することが困難な場合がある。従来は、金属溶湯を収納する容器がある現場で炉蓋を施工することが多かったが、炉蓋の品質向上のために予め工場でプレキャストブロック製とする場合がある。その際に、金属溶湯容器用蓋1を輸送可能とするために、蓋部材2をプレキャストブロック製としてパーツ化し、現場で組み立てるよう構成している。
【0036】
キャスタブル耐火物7の材料の種類は特に限定されないが、例えば、アルミナ-シリカ質、アルミナ-マグネシア質、アルミナ-カーボン質、アルミナ-マグネシア-カーボン質、アルミナ-スピネル質のキャスタブル耐火材料を使用することができる。
【0037】
また、例として図9に示すように、キャスタブル耐火物7は、上下方向において肉厚部9を備えてもよい。容器23が底面部から金属溶湯にガス25を吹き込むガス吹き込み口24を有するとき、蓋部材2を一体化した状態で容器23に装着すると、肉厚部9が上下方向においてガス吹き込み口24に対向する位置にあるよう構成してもよい。
【0038】
また、図1等に示すように、接合部3の一部は上側に突出するリブ14を形成する。吊具取付部4は、リブ14に形成する。
【0039】
<各実施形態に共通の効果>
以上説明した各実施形態に共通の構成は、以下の効果を奏する。図2等に示すように、金属溶湯容器用蓋1は、接合部3によって分離可能なので、蓋部材2を複数に分離した状態で輸送することができる。図1等に示すように、吊具取付部4を接合部3に形成するので、蓋部材2を一体化した金属溶湯容器用蓋1を吊具15によって、吊り上げ動作、吊り下げ動作、或いは輸送するときに接合部3が破断することによる損傷を低減することができる。これは、吊具取付部4が接合部3にあるため、吊具15を引き上げたときに発生する引張応力は接合部3の鉛直上に作用し、剪断応力となる応力の成分を生じないためである。
【0040】
また、蓋部材2を一体化した金属溶湯容器用蓋1は、円錐台形状であって底面側から上側に向かって凹部8を形成するので、吊り上げ、吊り下げ、及び輸送時に蓋部材2同士が分離しにくく、接合部3が破断することによる損傷を低減することができる。
【0041】
また、図3等に示すように、蓋部材2は、鉄皮6にキャスタブル耐火物7を一体的に形成するので、寸法精度が高くなり、鉄皮6とキャスタブル耐火物7との間の結合強度が高くなる。接合部3は、鉄皮6同士が接合する部分と、キャスタブル耐火物7同士が接合する部分を備える。すなわち、接合部3は同種材料同士が接合するので、異なる材料同士を接合する場合に膨張係数の違いによって生じる破断を防止する。
【0042】
また、例えば、金属溶湯容器用蓋1は、図15に示す真空精錬炉20に装着する場合がある。真空精錬炉20は、収納する金属溶湯に対してガス吹き込み口24からアルゴンガス等を吹き込む。アルゴンガス等は上昇して金属溶湯容器用蓋1の下側へ吹き上げるため、蓋部材2を構成するキャスタブル耐火物7にダメージを与える場合がある。なお、図15に示す例の真空精錬炉20は、外側容器26の内部に容器23を挿入する。外側容器26の上側に外蓋27に装着する構造で、外蓋27の内側からチェーン28によって金属溶湯容器用蓋1を吊り下げている。
【0043】
これに対して、図9に示すように、蓋部材2を一体化した金属溶湯容器用蓋1は、容器23に装着すると肉厚部9が上下方向においてガス吹き込み口24に対向する位置にある。仮に、キャスタブル耐火物7がアルゴンガス等によって部分的に損傷を受けたとしても、ダメージを受ける部分は肉厚部9なので、厚み方向の全体が損傷する可能性が低くなる。よって、金属溶湯容器用蓋1は、金属溶湯からガス25が吹き上がる場合であっても損傷を低減することができる。
【0044】
また、肉厚部9は、仮に部分的な損傷を受けたとしても肉厚部の範囲で損傷を留めることができるので、鉄皮6にまで損傷が及ぶことを低減する。よって、金属溶湯容器用蓋1は、鉄皮6が損傷することを低減できるので、補修によって引き続き使用することができ、交換頻度を低くすることができる。合わせて、鉄皮6にキャスタブル耐火物7を一体的に形成する金属溶湯容器用蓋1は、鉄皮6による剛性を維持できるので、一体の状態で吊り上げ動作、吊り下げ動作、或いは輸送するときに発生する損傷を低減することができる。
【0045】
また、図1等に示すように吊具取付部4は接合部3を形成するリブ14にあるので、吊具取付部4の強度が高くなる。また、吊具取付部4は、吊具15を容易に着脱することができる。図3及び図4に示すように、接合部3は鉄皮6を接合してリブ14を形成するとより強度が高くなる。
【0046】
<第一実施形態の金属溶湯容器用蓋1aの構成>
次に、各実施形態について説明する。なお、各実施形態に共通の構成において説明した内容は説明を省略する。図1及び図2を参照して、本発明の態様に係る第一実施形態の金属溶湯容器用蓋1aの構成を説明する。金属溶湯容器用蓋1aは、二つの第一蓋部材2aと第二蓋部材2bを備える。
【0047】
図1に示すように、接合部3aは、平面方向のうちの一方向に沿って延びる。また、接合部3aは、平面方向のうちの一方向に沿って少なくとも二つの吊具取付部4である第一吊具取付部4aと第二吊具取付部4bを備える。平面方向において、蓋体中心部5は、第一吊具取付部4aと第二吊具取付部4bとの間に位置する。なお、金属溶湯容器用蓋1aとして一体となった状態では、第一吊具取付部4aと第二吊具取付部4bとが蓋体中心部5を挟んで均等に位置することが望ましい。なお、ここで説明した構成は、後述する第二実施形態の金属溶湯容器用蓋1bと第三実施形態の金属溶湯容器用蓋1cも同様である。
【0048】
図3及び図4に示すように、金属溶湯容器用蓋1aは、第一蓋部材2aと第二蓋部材2bとが一体となった状態で、天面側は接合部3aがリブ14を形成し、他の部分は面を形成する。より具体的には、リブ14は鉄皮6を接合することによって形成し、他の部分はキャスタブル耐火物7同士を接合する。なお、ここで説明した接合部3aの構成は、後述する第二実施形態の金属溶湯容器用蓋1bの接合部3bと第三実施形態の金属溶湯容器用蓋1cの第一接合部3c及び第二接合部3dも同様である。金属溶湯容器用蓋1aは、平面方向において、接合部3aが蓋体中心部5を通り、金属溶湯容器用蓋1aを二等分する。
【0049】
<第一実施形態の金属溶湯容器用蓋1aの効果>
以上説明した第一実施形態の金属溶湯容器用蓋1aは、各実施形態に共通の効果に加えて以下の効果を奏する。接合部3aは一方向に沿って延びるので、吊具15によって第一蓋部材2aと第二蓋部材2bを一体化した金属溶湯容器用蓋1aを引き上げるときに、接合部3aにかかる剪断応力を低減することができる。すなわち、金属溶湯容器用蓋1aを引き上げるときに発生する荷重は、接合部3aに対して鉛直方向に発生し、剪断する方向に及ばないからである。よって、接合部3aに生じる損傷を低減することができる。
【0050】
また、第一蓋部材2aと第二蓋部材2bを一体化した金属溶湯容器用蓋1aにおける蓋体中心部5は、第一吊具取付部4aと第二吊具取付部4bとの間に位置する。よって、金属溶湯容器用蓋1aは、吊具15によってバランス良く引き上げることができる。また、金属溶湯容器用蓋1aを引き上げる荷重は、第一吊具取付部4aと第二吊具取付部4bとに分散するので、局部的な応力集中を防止することで接合部3aにおける損傷を低減することができる。
【0051】
また、金属溶湯容器用蓋1aとして一体となった状態では、第一吊具取付部4aと第二吊具取付部4bとが蓋体中心部5を挟んで均等に位置することが望ましい。この場合、第一吊具取付部4aと第二吊具取付部4bは、平面方向において金属溶湯容器用蓋1aの重心を通る線上であって、重心からの距離が略等しい位置にあるので、吊具15によって吊り上げたときに吊具取付部4に掛かる応力を均等にすることができる。よって、接合部3aに偏った応力が発生することを防止し、破断による損傷を低減することができる。金属溶湯容器用蓋1aは、例として図17に示す取鍋22に使用することができる。なお、図17に示す金属溶湯容器用蓋1は、ガス吹き込み口24からガス25を吹き込む例を示すので、後述する円筒部10を備える。ガス25を吹き込まない場合は、金属溶湯容器用蓋1aを使用することができる。
【0052】
<第二実施形態の金属溶湯容器用蓋1bの構成>
次に、図5から図9までを参照して、本発明の態様に係る第二実施形態の金属溶湯容器用蓋1bの構成を説明する。金属溶湯容器用蓋1bは、金属溶湯容器用蓋1aに対して、天面部に円筒部10と鉄皮枠16を形成する点と、接合部3である接合部3bの構成が異なる。
【0053】
図5及び図6に示すように、金属溶湯容器用蓋1bは、五つの円筒部10を備える。円筒部10は、図15に示す真空精錬炉20に使用する場合に、炉内を真空状態にするために円筒部10から吸入するための開口である。図16に示す電気炉21に使用する場合は、炉内に電極を通すための開口である。なお、円筒部10の数及び位置は任意に形成可能である。使用する炉の種類に応じて、任意の数に形成することができる。
【0054】
また、図9に示すように、金属溶湯容器用蓋1bは、第二蓋部材2bの一部に肉厚部9を形成する。すでに説明したように、金属溶湯容器用蓋1bは肉厚部9を形成することにより、真空精錬炉20又は取鍋22に使用したときに、ガス25によってキャスタブル耐火物7にダメージが加わっても損傷を低減することができる。なお、図16に示すように、ガス25を吹き込むタイプの電気炉21においても同様の効果を奏する。
【0055】
図5及び図6に示すように、接合部3bは、金属溶湯容器用蓋1aの接合部3aと同様に平面方向のうちの一方向に沿って同一直線上に延びるが、蓋体中心部5の円筒部10において分断する。金属溶湯容器用蓋1bの天面側は、平面視において六角形状に繋がり上下方向に延びるリブ状の鉄皮枠16を形成する。鉄皮枠16は、接合部3bに繋がって溶接している。図8に示すように、円筒部10の周りは鉄皮6で覆い、蓋体中心部5における円筒部10の周りの鉄皮6は、接合部3bに繋がって溶接している。なお、円筒部10は、必ずしも蓋体中心部5に無くてもよい。使用する炉の種類によって任意の位置に形成することができる。
【0056】
なお、図8において、接合部3bを締結するボルト12の符号は一箇所にのみ付しているが、図示の他の箇所も同様にボルト12及びナット13によって締結する。後述する図14も同様である。
【0057】
図5及び図6に示すように、第一吊具取付部4cと第二吊具取付部4dは、鉄皮枠16で形成する六角形状の枠の外側に形成する。平面方向において蓋体中心部5は、第一吊具取付部4cと第二吊具取付部4dとの間の略中心に位置する。なお、鉄皮枠16は、必ずしも六角形に形成する必要は無く任意の形状にすることが可能である。例えば、円形でもよいが、鉄皮枠16は平面を繋いだ構成の方が強度は高いので、平面視において直線を繋いだ形状の方が望ましい。
【0058】
図7に示すように、金属溶湯容器用蓋1bは金属溶湯容器用蓋1aと同様に、平面方向に第三蓋部材2cと第四蓋部材2dとに分離可能である。
【0059】
<第二実施形態の金属溶湯容器用蓋1bの効果>
以上説明した第二実施形態の金属溶湯容器用蓋1bは、各実施形態に共通の効果と第一実施形態の金属溶湯容器用蓋1aの効果に加えて以下の効果を奏する。金属溶湯容器用蓋1bは、開口を有する円筒部10を備えるので、図17に示す取鍋22に加えて図15に示す真空精錬炉20と図16に示す電気炉21に使用することができる。
【0060】
また、金属溶湯容器用蓋1bは鉄皮枠16によって接合部3bと蓋体中心部5の円筒部10とが連続的に繋がっている。よって、第三蓋部材2cと第四蓋部材2dのそれぞれに分離した状態と、金属溶湯容器用蓋1bとして一体になった状態のいずれにおいても剛性を高めることができる。
【0061】
また、接合部3bは金属溶湯容器用蓋1aと同様に一方向に沿って延びるので、吊具15によって第三蓋部材2cと第四蓋部材2dを一体化した金属溶湯容器用蓋1bを引き上げるときに、接合部3bにかかる剪断応力を低減することができる。すなわち、金属溶湯容器用蓋1bを引き上げるときに発生する荷重は、接合部3bに対して鉛直方向に発生し、剪断する方向に及ばないからである。よって、接合部3bに生じる損傷を低減することができる。
【0062】
また、第一吊具取付部4cと第二吊具取付部4dは、鉄皮枠16で形成する六角形状の枠の外側に形成する。よって、吊具15は容易に着脱が可能となる。また、第一吊具取付部4cと第二吊具取付部4dは、平面方向においてより外周に近い位置にあるので、より安定して引き上げることができる。
【0063】
<第三実施形態の金属溶湯容器用蓋1cの構成>
次に、図10から図14までを参照して、本発明の態様に係る第三実施形態の金属溶湯容器用蓋1cの構成を説明する。金属溶湯容器用蓋1cは、第五蓋部材2e、第六蓋部材2f、及び第七蓋部材2gの三つに分離可能である。金属溶湯容器用蓋1a及び金属溶湯容器用蓋1bは、接合部3が平面方向のうちの一つの方向に沿って延びる一つの列をなしている。これらに対して、金属溶湯容器用蓋1cは、接合部3が第一接合部3c及び第二接合部3dによって二つの列をなす。
【0064】
図10及び図11に示すように、金属溶湯容器用蓋1cは第五蓋部材2e、第六蓋部材2f、及び第七蓋部材2gが一体となった状態において、第一接合部3c及び第二接合部3dは、平面方向において蓋体中心部5を挟んで列をなす。ここで、第一接合部3cと第二接合部3dとは、互いに平行関係にあることが望ましい。しかしながら、厳密に平行である必要は無く、金属溶湯容器用蓋1cにおいて第一接合部3cが延びる直線と第二接合部3dが延びる直線とが交差しない程度の平行度であってもよい。
【0065】
また、図10及び図11に示すように、第六蓋部材2fのみが蓋体中心部5及び蓋体中心部5の周辺部を含み、第五蓋部材2eと第七蓋部材2gは蓋体中心部5を含まない。さらに、第一接合部3c及び第二接合部3dは、蓋体中心部5及びその周辺部を避けた位置にある。
【0066】
また、図10及び図11に示すように、第一接合部3c及び第二接合部3dは、平面方向のうちの一方向に沿って少なくとも二つの吊具取付部4である第一吊具取付部4e等と、第二吊具取付部4f等を備える。平面方向において、第一吊具取付部4e等と第二吊具取付部4f等を結ぶ直線Lに対して、蓋体中心部5から直線Lに対して垂線Mを引くときの交点Pが、第一吊具取付部4e等と第二吊具取付部4f等との間に位置する。第一吊具取付部4e等には、第一吊具取付部4eと第一吊具取付部4gを含む。第二吊具取付部4f等には、第二吊具取付部4fと第二吊具取付部4hを含む。なお、直線Lは、第一接合部3c及び第二接合部3dと一致する。
【0067】
また、図10及び図11に示すように、金属溶湯容器用蓋1cは金属溶湯容器用蓋1bと同様に、第六蓋部材2fにおいて天面部に円筒部10と鉄皮枠16を形成する。鉄皮枠16は、第一接合部3c及び第二接合部3dに繋がって六角形を形成する。円筒部10は、蓋体中心部5を含めて五つである。ここでも、金属溶湯容器用蓋1bと同様に、平面視における鉄皮枠16の形状は必ずしも六角形で無くてもよい。円筒部10の数と位置は任意である。
【0068】
また、図13に示すように、金属溶湯容器用蓋1cは金属溶湯容器用蓋1bと同様に肉厚部9を形成し、円筒部10の周りは鉄皮6が覆う。
【0069】
<第三実施形態の金属溶湯容器用蓋1cの効果>
以上説明した第三実施形態の金属溶湯容器用蓋1cは、各実施形態に共通の効果に加えて以下の効果を奏する。金属溶湯容器用蓋1cは、第五蓋部材2eから第七蓋部材2gまでの三つの蓋部材2に分離することができる。よって、二つの蓋部材2に分離する構成に比べて分離可能な数が多いので、より大型の金属溶湯容器用蓋1cを形成することができる。
【0070】
また、金属溶湯容器用蓋1cは一体の状態において、第一接合部3cと第二接合部3dが、平面方向において蓋体中心部5を挟んで互いに平行に列をなす。よって、接合部3に剪断応力が発生することを低減することができる。仮に、平面方向において第一接合部3cと第二接合部3dとが交差すると、交差する部分において応力が集中し、破断が発生しやすくなる。これに対して、第一接合部3cと第二接合部3dとは互いに交差しないので、応力集中を防ぐことができる。
【0071】
また、第一接合部3c及び第二接合部3dは、金属溶湯容器用蓋1a等と同様に一方向に沿って延びる。吊具15によって第五蓋部材2eと第六蓋部材2f、及び第七蓋部材2gを一体化した金属溶湯容器用蓋1cを引き上げるときに、第一接合部3c及び第二接合部3dのそれぞれにかかる剪断応力を低減することができる。すなわち、金属溶湯容器用蓋1cを引き上げるときに、第一吊具取付部4eと第二吊具取付部4fに発生する吊り上げ荷重は、第一接合部3cに対して鉛直方向に発生し、剪断する方向に及ばないからである。同様に、第一吊具取付部4gと第二吊具取付部4hに発生する吊り上げ荷重は、第二接合部3dに対して鉛直方向に発生し、剪断する方向に及ばないからである。よって、第一接合部3c及び第二接合部3dに生じる損傷を低減することができる。
【0072】
また、第六蓋部材2fのみが蓋体中心部5及び蓋体中心部5の周辺部を含み、第五蓋部材2eと第七蓋部材2gは蓋体中心部5を含まない。金属溶湯容器用蓋1は、金属溶湯を収納する容器23に使用する場合、金属溶湯からの熱によって平面方向の蓋体中心部5がダメージを受けやすい。すなわち、蓋体中心部5が損傷する場合が多い。これに対し、金属溶湯容器用蓋1cは、第六蓋部材2fのみを交換するか或いは補修することにより、第五蓋部材2eと第七蓋部材2gはそのまま使用することができる。よって、修理又は交換に要する時間と費用を節約することができる。
【0073】
また、第一接合部3c及び第二接合部3dは、蓋体中心部5及びその周辺部を避けた位置にある。上述のように、金属溶湯容器用蓋1は蓋体中心部5及びその周辺において損傷を受けやすいため、蓋体中心部5に接合部3が存在すると破損しやすい場合がある。これに対して、金属溶湯容器用蓋1cは第一接合部3cと第二接合部3dが蓋体中心部5を避けた位置にあるため、接合部3における破損を防止することができる。
【0074】
また、第五蓋部材2eから第七蓋部材2gまでの三つを一体化した金属溶湯容器用蓋1cは、第一吊具取付部4e、4gと第二吊具取付部4f、4hを結ぶ直線Lに対して、蓋体中心部5から直線Lに対して垂線Mを引くときの交点Pが、第一吊具取付部4e、4gと第二吊具取付部4f、4hとの間に位置する。よって、第五蓋部材2eから第七蓋部材2gまでの三つを一体化した金属溶湯容器用蓋1cは、吊具15によってバランス良く引き上げることができる。また、各吊具取付部4にかかる荷重を分散するので、第一接合部3cおよび第二接合部3dにおける損傷を低減することができる。
【符号の説明】
【0075】
1、1a、1b、1c 金属溶湯容器用蓋
2 蓋部材
3、3a、3b 接合部
3c 第一接合部
3d 第二接合部
4 吊具取付部
4a、4c、4e、4g 第一吊具取付部
4b、4d、4f、4h 第二吊具取付部
5 蓋体中心部
6 鉄皮
7 キャスタブル耐火物
8 凹部
9 肉厚部
10 円筒部
11 アンカー
12 ボルト
13 ナット
14 リブ
15 吊具
16 鉄皮枠
17 パッキン
18 セラミックシート
20 真空精錬炉
21 電気炉
22 取鍋
23 容器
24 ガス吹き込み口
25 ガス
26 外側容器
27 外蓋
28 チェーン
30 継目
40 吊具取付部
100 炉蓋
200a 蓋部材
200b 蓋部材
L 直線
M 垂線
P 交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19