(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122104
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】電動モータ及び電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/18 20060101AFI20230825BHJP
H02K 3/46 20060101ALI20230825BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H02K3/18 J
H02K3/46 B
H02K1/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025545
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠
【テーマコード(参考)】
5H601
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601AA13
5H601BB11
5H601CC01
5H601CC13
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601EE03
5H601EE04
5H601EE18
5H601EE22
5H601EE23
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB48
5H601GD02
5H601GD07
5H601GD12
5H601GD18
5H601GD22
5H601JJ06
5H603AA04
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB10
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB04
5H603CB05
5H603CB23
5H603CB24
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD21
5H603CE01
5H603FA01
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604PB03
5H604QA01
5H604QB17
(57)【要約】
【課題】電動モータの絶縁性能を向上させる。
【解決手段】ロータの回転軸線に対して径方向に延びるティース101~112をロータの周方向に沿って順次配列して有するステータコア100を備え、三相巻線300が相毎に異なる複数のティースに巻き回された電動モータにおいて、各相巻線301,302,303はロータの周方向で3つのティース毎に巻き回され、U相巻線301が巻き回されるティース間の渡り線U
1-2,U
2-3,U
3-4は、インバータ室側端面100Aに近接して配置され、V相巻線302が巻き回されるティース間の渡り線V
1-2,V
2-3,V
3-4及びW相巻線303が巻き回されるティース間の渡り線W
1-2,W
2-3,W
3-4は、インバータ室側端面100Aの反対側の背圧室側端面100Bに近接して配置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転軸線に対して径方向に延びるティースを前記ロータの周方向に沿って順次配列して複数有するステータコアを備え、三相巻線が相毎に異なる複数の前記ティースに巻き回された電動モータであって、
各相巻線は前記ロータの周方向で3つのティース毎に巻き回され、第1相の巻線が巻き回される前記ティース間の第1相渡り線は、前記ロータの回転軸線の方向で前記ステータコアの一方の端部に近接して配置され、第2相の巻線が巻き回される前記ティース間の渡り線及び第3相の巻線が巻き回される前記ティース間の第2相渡り線は、前記一方の端部の反対側の端部に近接して配置されている、電動モータ。
【請求項2】
前記第2相渡り線と前記第3相渡り線とが前記径方向で離間するように配置されている、請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記第2相渡り線は、前記第1相の巻線及び前記第3相の巻線が巻き回される前記ティースの先端部に沿うように配置され、前記第3相渡り線は、前記第1相の巻線及び前記第2相の巻線が巻き回される前記ティースの基端部に沿うように配置されている、請求項2に記載の電動モータ。
【請求項4】
前記ステータコアと前記三相巻線との間に電気絶縁性のボビンが介在し、前記ボビンは、前記ティースの先端部に対向する部分に、前記第2相渡り線が前記回転軸線へ向かう方向で当接するように形成された先端突出部を有するとともに、前記ティースの基端部に対向する部分に、前記第3相渡り線が前記回転軸線へ向かう方向で当接するように形成された基端突出部を有する、請求項3に記載の電動モータ。
【請求項5】
前記第1相の巻線、前記第2相の巻線及び前記第3相の巻線が最初に巻き回されるティースにおける巻き始めの巻線端部は、前記一方の端部から引き出されている、請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の電動モータ。
【請求項6】
前記第1相の巻線、前記第2相の巻線及び前記第3相の巻線が最後に巻き回されるティースにおける巻き終わりの巻線端部は、前記一方の端部から引き出されて結線され、前記三相巻線の中性点を形成する、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の電動モータ。
【請求項7】
前記第1相渡り線は、前記第2相の巻線及び前記第3相の巻線が巻き回される前記ティースの先端部又は基端部に沿うように配置されている、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の電動モータ。
【請求項8】
前記ステータコアと前記三相巻線との間に電気絶縁性のボビンが介在し、前記ボビンは、前記ティースの先端部又は基端部と対向する部分に、前記第1相渡り線が前記回転軸線へ向かう方向で当接するように形成された突出部を有する、請求項7に記載の電動モータ。
【請求項9】
前記ステータコアは、前記ティースを別体のステータヨークに固定して構成された、請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の電動モータ。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1つに記載の電動モータを動力源として用いる電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相巻線をステータコイルとして有する電動モータ及びこれを動力源とする電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータとして、例えば特許文献1に記載されるように、ロータの回転軸線に対して径方向に延びるティースをロータの周方向に沿って複数有するステータコアを備え、三相巻線が相毎に異なる複数のティースに巻き回されたものが知られている。この電動モータでは、各相巻線はロータの周方向で3つのティース毎に巻き回され、各相巻線が巻き回されるティース間の渡り線が、ロータの回転軸線の方向においてステータコアの一方の端部で縛り糸により纏められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両空調装置の冷凍サイクルに適用される電動圧縮機では、電気自動車の大容量バッテリに伴う急速充電への対応や、出力密度向上、損失低減等を目的として、例えば1kV以上の高電圧化に対応することが求められている。このため、電動圧縮機に動力源として用いられる電動モータについても絶縁性能の強化が望まれる。
【0005】
各相巻線が巻き回されるティース間の渡り線では異なる相間で電位差が大きくなるが、特許文献1では三相全ての渡り線が相互に接触ないし近接しているため、特に高電圧を印加する場合には、異なる相の渡り線間で絶縁破壊が発生するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、絶縁性能を向上させた電動モータ及び電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の電動モータは、ロータの回転軸線に対して径方向に延びるティースをロータの周方向に沿って順次配列して複数有するステータコアを備え、三相巻線が相毎に異なる複数のティースに巻き回されるものであって、各相巻線はロータの周方向で3つのティース毎に巻き回され、第1相の巻線が巻き回されるティース間の第1相渡り線は、ロータの回転軸線の方向でステータコアの一方の端部に近接して配置され、第2相の巻線が巻き回されるティース間の渡り線及び第3相の巻線が巻き回されるティース間の第2相渡り線は、一方の端部の反対側の端部に近接して配置されている。また、本発明の電動圧縮機では、上記の電動モータを動力源として用いている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電動モータ及び電動圧縮機によれば、絶縁性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電動圧縮機を適用した冷凍サイクルの一例を示す説明図である。
【
図2】電動圧縮機を回転軸線方向に切断して模式的に示す断面図である。
【
図4】
図3のステータコアに装着したボビンの一例を示す平面図である。
【
図6】ティースに対する三相巻線の配置例を示す巻線配置図である。
【
図10】ボビンの第1変形例を示す部分底面図である。
【
図11】ボビンの第2変形例を示す部分底面図である。
【
図12】ティースに対する三相巻線の従来の配置例を示す巻線配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための実施形態について、添付図面を参照して詳述する。
図1は、電動圧縮機を用いた冷凍サイクルの一例を示す。
【0011】
冷凍サイクル1は、冷媒が循環する冷媒配管2に対して、電動圧縮機3、凝縮器4、膨張弁5及び蒸発器6をこの順番で配設して構成された蒸気圧冷凍サイクルである。電動圧縮機3は、蒸発器6で得られた低温・低圧の気体冷媒を吸入し、これを圧縮して高温・高圧の気体冷媒を生成し吐出する。凝縮器4は、電動圧縮機3から吐出された高温・高圧の気体冷媒を冷却して低温・高圧の液体冷媒にする。膨張弁5は、低温・高圧の液体冷媒を減圧して低温・低圧の液体冷媒にする。蒸発器6は、低温・低圧の液体冷媒を気化させて低温・低圧の気体冷媒にする。このような冷凍サイクル1は、車載式又は定置式を問わず、エアコンディショナーやヒートポンプ等、様々な機器に適用可能である。
【0012】
図2は、電動圧縮機3の一例を示す。電動圧縮機3は、概略的には、ハウジング10と、スクロールユニット20と、スクロールユニット20の動力源である電動モータ30と、電動モータ30を駆動するインバータ40と、を備えている。
【0013】
ハウジング10は、筒状のフロントハウジング11及びセンターハウジング12の各一端部を互いに締結し、センターハウジング12の他端部にリアハウジング13を締結して閉塞し、フロントハウジング11の他端部にインバータカバー14を締結して閉塞した中空体である。ハウジング10は、例えばアルミニウム合金等の金属で形成されている。センターハウジング12は筒状の周壁部12Aの内部空間を一端部側と他端部側とに隔てる第1隔壁12Bを有し、フロントハウジング11は筒状の周壁部11Aの内部空間を一端部側と他端部側とに隔てる第2隔壁11Bを有している。
【0014】
リアハウジング13とセンターハウジング12との締結により形成される内部空間には、スクロールユニット20が収容されている。
【0015】
スクロールユニット20は、互いに噛み合わされる固定スクロール21及び旋回スクロール22を有している。固定スクロール21は、円板形状の底板21Aと、底板21Aの一面から立設し、立設方向からみてインボリュート形状(渦巻形状)を有するラップ21Bと、を含んでいる。旋回スクロール22は、固定スクロール21と同様に、円板形状の底板22Aと、底板22Aの一面から立設し、立設方向からみてインボリュート形状を有するラップ22Bと、を含んでいる。
【0016】
固定スクロール21は、その底板21Aがセンターハウジング12の他端部の開口を塞いで周壁部12Aに固定されている。この固定スクロール21に旋回スクロール22が噛み合わされて、固定スクロール21のラップ21Bの先端部は旋回スクロール22の底板22Aに対して摺動可能に接触し、旋回スクロール22のラップ22Bの先端部は固定スクロール21の底板21Aに対して摺動可能に接触している。また、旋回スクロール22の底板22Aは固定スクロール21の底板21Aに対して平行となる。旋回スクロール22の底板22Aと第1隔壁12Bとの間には、底板22Aと平行かつ摺動可能に、円環薄板状のスラストプレート23が配置されて固定されている。したがって、旋回スクロール22は、スラストプレート23と固定スクロール21との間で摺動可能となっている。
【0017】
旋回スクロール22は、ラップ21B及び22Bの周方向の角度が互いにずれた状態で、そのラップ21B,22Bの側面が互いに部分的に接触するように、後述のクランク機構に取り付けられている。したがって、固定スクロール21のラップ21Bと旋回スクロール22のラップ22Bとの間には、圧縮室H1として機能する三日月形状の密閉空間が形成されている。
【0018】
旋回スクロール22は、後述するクランク機構に連結されて、固定スクロール21の軸心周りに公転旋回可能となっている。旋回スクロール22が固定スクロール21に対して公転旋回運動を行うことで、圧縮室H1をラップ21B,22Bの外周端部から内終端部へ移動させ、その容積が徐々に減少する。これにより、ラップ21B,22Bの外終端部から圧縮室H1に取り込んだ気体冷媒が圧縮される。
【0019】
スクロールユニット20で圧縮されて得られた高温・高圧の気体冷媒は、固定スクロール21の底板21Aのうちラップ21Bの内周端部付近を貫通する吐出通路(吐出孔)L2を介して、リアハウジング13と固定スクロール21の底板21Aとによって区画された空間である吐出室H2に吐出される。吐出通路L2の出口には、吐出室H2から圧縮室H1への逆流を抑制すべく、例えばリードバルブからなる逆止弁24が付設されている。高温・高圧の気体冷媒は、吐出室H2で圧力脈動が低減された後、リアハウジング13に穿設された吐出ポートP2を介して、凝縮器4に向けて吐出される。なお、図示省略するが、吐出室H2の他に、高温・高圧の気体冷媒中に含まれる潤滑油を分離する気液分離室が設けられている。
【0020】
センターハウジング12とフロントハウジング11との締結により形成される内部空間は、電動モータ30を収容すると共に、フロントハウジング11に穿設された吸入ポートP1を介して、蒸発器6から低温・低圧の気体冷媒を吸入して一時的に貯留する吸入室H3となる。
【0021】
吸入室H3からスクロールユニット20のラップ21B及び22Bの外終端部へ気体冷媒を供給するために、センターハウジング12(例えば第1隔壁12B)には冷媒導入通路L1が形成されている。
【0022】
センターハウジング12の第1隔壁12Bの中央部は、吸入室H3側へ膨出して膨出部12Cが形成されている。この膨出部12Cと底板22Aのうちラップ22Bが形成されるラップ面に対して反対側の端面(背面)との間に、膨出部12Cと底板22Aの背面とが円環薄板状のスラストプレート23の貫通孔を介して対向して、背圧室H4が形成されている。背圧室H4には、上記の気液分離室で高温・高圧の気体冷媒から分離された潤滑油が戻される。
【0023】
電動モータ30は、例えば三相永久磁石同期電動機等の三相交流電動機であり、永久磁石が周方向に順次配設された略円柱状ないし略円筒状のロータ31と、ロータ31の外周面と対向する後述のティースがロータ31の周方向に沿って複数配列されたステータ32と、を有している。ステータ32のティースには、ステータコイルとして後述の三相巻線が巻き回されている。
【0024】
ロータ31には、その径方向中心で径方向と垂直方向に延びる駆動軸33が固定されている。駆動軸33の一端部は、すべり軸受34を介して、フロントハウジング11の第2隔壁11Bから吸入室H3側へ突設する支持部11Cに回転可能に支持されている。駆動軸33の他端部は、膨出部12Cに形成された貫通孔を貫通し、背圧室H4に設置されたベアリング35によって回転可能に支持されている。これにより、ロータ31は、回転軸線X周りに、ステータ32に対して相対的に回転する。
【0025】
ステータ32は、三相巻線を相毎にインバータ40へ接続するための接続端子36を備えている。接続端子36は第2隔壁11Bを気密に貫通し、接続端子36と第2隔壁11Bとの間には絶縁処理が施されている。インバータ40からの接続端子36を介した通電によって三相巻線に回転磁界が発生すると、ロータ31に回転力が発生し、後述のクランク機構に駆動軸33を介して電動モータ30の回転出力が伝達される。
【0026】
駆動軸33の他端部と旋回スクロール22とは、クランク機構50により連結されている。クランク機構50は、駆動軸33の他端部に設けられたクランク33Aに偏心状態で取り付けられた偏心ブッシュ51が、すべり軸受け52を介して、旋回スクロール22の底板22Aの背面に突出形成された略円筒形状のボス部の内周面に回転可能に支持されて構成されている。駆動軸33が回転軸線X周りに回転することで、旋回スクロール22は、固定スクロール21の軸心周りで公転旋回運動を行う。なお、駆動軸33の他端部には、回転軸線Xに対して偏心して旋回する旋回スクロール22により発生するアンバランスを低減すべく、バランサウェイト53が取り付けられている。
【0027】
旋回スクロール22の自転を阻止する自転阻止機構として、スラストプレート23には、ここから旋回スクロール22に向けて延びる、複数の自転阻止ピン60が圧入固定されている。複数の自転阻止ピン60は、回転軸線X周りに等間隔に配置されている。また、底板22Aの背面のうち、スラストプレート23から突出する自転阻止ピン60に対向する部分には、それぞれ円形溝22Cが形成され、自転阻止ピン60の先端部は円形溝22C内に延びている。旋回スクロール22が公転旋回運動を行うときに、複数の自転阻止ピン60の先端部は旋回スクロール22の円形溝22Cに内接し、これにより旋回スクロール22の自転が阻止される。
【0028】
フロントハウジング11とインバータカバー14との締結により形成される内部空間は、インバータ40を収容するインバータ室H5となる。インバータ40は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子を含む三相ブリッジ回路を備え、この三相ブリッジ回路により外部の直流電源から入力した直流電流を三相交流電流に変換する電力変換装置である。三相ブリッジ回路は、図示省略するが、2つのスイッチング素子が直列に接続された各相アームを外部の直流電源と接続される正側母線及び負側母線の間に並列に接続し、各相アームの2つのスイッチング素子間を対応相のステータコイルの接続端子36に接続して構成されている。インバータ40は、上記のスイッチング素子等の電子部品が実装された電子部品実装基板として構成され、フロントハウジング11(例えば第2隔壁11B)からインバータ室H5側へ立設するボス部11Dにねじ固定されている。なお、例えばスイッチング素子等、インバータ40の一部は、吸入室H3内の低温・低圧の気体冷媒による吸熱作用を利用して放熱効果を高めるべく、第2隔壁11B上に設置されてもよい。
【0029】
次に、
図3~
図6を参照して、電動モータ30におけるステータ32の構成について説明する。ステータ32は、ステータコア100、ボビン200及び三相巻線300を備えている。
図3は、ステータコア100の一例を示している。
図4は、
図3のステータコア100に装着したボビン200の一例を示している。
図5は、
図4のA-A線における断面図を示している。
図6は、ティース101~112に対する三相巻線300の配置例を示している。
【0030】
図3に示すように、ステータコア100は、電磁鋼板を積層して形成され、12個のティース101~112と、環状のステータヨーク120と、を備えている。12個のティース101~112は、ロータ31の回転軸線Xに対して径方向に延び、ロータ31の周方向に沿って等間隔(30deg間隔)に配置され、環状のステータヨーク120の内周部に嵌合固定されている。すなわち、ティース101~112はステータヨーク120に対して分割して構成され、これにより巻き線工程における製造効率を向上させている。12個のティース101~112は共通の形状を有し、例えば、ティース103は、ロータ31の外周面と対向する先端部103A、ステータヨーク120と嵌合する基端部103B、及び、先端部103Aと基端部103Bとの間で三相巻線300が巻き回される巻回部103Cを含む。
【0031】
以下、ティース101,102,104~112のそれぞれについて、参照符号に「A」を付したものは当該ティースの先端部を示し、「B」を付したものは当該ティースの基端部を示し、「C」を付したものは当該ティースの巻回部を示し、それぞれ、先端部103A、基端部103B及び巻回部103Cと同様の形状を有しているものとして説明を省略する。
【0032】
図4及び
図5に示すように、ボビン200は、ステータコア100に装着され、概ね、ロータ31の外周面と対向する先端部101A~112Aの対向面及び周方向側面、並びに、ステータヨーク120の外周面を除く部分を被覆する電気絶縁性の部材である。前述のように、ティース101~112がステータヨーク120に対して分割されているため、ボビン200もティース101~112に対応して分割されている。すなわち、ボビン200は、ティース101~112に対応して分割された12個のボビン片201~212を有している。
【0033】
12個のボビン片201~212は共通の形状を有し、例えば、ティース103に対応するボビン片203は、巻回部103Cに外嵌する筒体の両端に外方に延びるフランジが形成されている断面略コ字状の巻線収容部203Aを有している。また、ボビン片203は、先端部103Aに回転軸線Xの方向で対向する部分に先端突出部203B,203Cを有している。先端突出部203Bは、回転軸線Xの方向でステータコア100の一方の端面となるインバータ室側端面100Aから回転軸線Xの方向へ、巻線収容部203Aのフランジよりも大きく突出している。先端突出部203Cは、インバータ室側端面100Aと反対側の端面となる背圧室側端面100Bから回転軸線Xの方向へ、巻線収容部203Aのフランジよりも大きく突出している。さらに、ボビン片203は、基端部103Bに回転軸線Xの方向で対向する部分に基端突出部203D,203Eを有している。基端突出部203Dは、インバータ室側端面100Aから回転軸線Xの方向へ、巻線収容部203Aのフランジよりも大きく突出している。基端突出部203Eは、背圧室側端面100Bから回転軸線Xの方向へ、巻線収容部203Aのフランジよりも大きく突出している。先端突出部203B,203C及び基端突出部203D,203Eのいずれも、突出端から所定距離の位置までが回転軸線Xから離間する方向に膨出して、回転軸線Xの方向で段差Gが設けられている。なお、先端突出部203B,203C及び基端突出部203D,203Eは巻線収容部203Aのフランジと一体となっていてもよい。
【0034】
以下、ボビン片201,202,204~212のそれぞれについて、参照符号に「A」を付したものは当該ボビン片の巻線収容部を示し、「B」又は「C」を付したものは当該ボビン片の先端突出部を示し、「D」又は「E」を付したものは当該ボビン片の基端突出部を示し、それぞれ、巻線収容部203A、先端突出部203B,203C及び基端突出部203D,203Eと同様の形状を有しているものとして説明を省略する。
【0035】
図6に示すように、三相巻線300は、U相巻線301、V相巻線302及びW相巻線303を含む。U相巻線301はティース103及びこれから3つのティース毎に巻き回され、V相巻線302はティース102及びこれから3つのティース毎に巻き回され、W相巻線303はティース101及びこれから3つのティース毎に巻き回されている。すなわち、U相巻線301は、ティース103に巻き回されてなるU相コイルU1、ティース106に巻き回されてなるU相コイルU2、ティース109に巻き回されてなるU相コイルU3、ティース112に巻き回されてなるU相コイルU4を含む。V相巻線302は、ティース102に巻き回されてなるV相コイルV1、ティース105に巻き回されてなるV相コイルV2、ティース108に巻き回されてなるV相コイルV3、ティース111に巻き回されてなるV相コイルV4を含む。W相巻線303は、ティース101に巻き回されてなるW相コイルW1、ティース104に巻き回されてなるW相コイルW2、ティース107に巻き回されてなるW相コイルW3、ティース110に巻き回されてなるW相コイルW4を含む。
【0036】
U相コイルU1,U2,U3,U4の巻き始め及び巻き終わりの巻線端部は、いずれもインバータ室側端面100Aを越えて外方へ引き出されている。これにより、U相巻線301のうち、U相コイルU1とU相コイルU2とを接続する渡り線U1-2、U相コイルU2とU相コイルU3とを接続する渡り線U2-3、及び、U相コイルU3とU相コイルU4とを接続する渡り線U3-4は、インバータ室側端面100Aに近接して配置される。
【0037】
V相コイルV1及びW相コイルW1の巻き始めの巻線端部、並びに、V相コイルV4及びW相コイルW4の巻き終わりの巻線端部は、インバータ室側端面100Aを越えて外方へ引き出されている。一方、V相コイルV1及びW相コイルW1の巻き終わりの巻線端部、V相コイルV4及びW相コイルW4の巻き始めの巻線端部、並びに、V相コイルV2,V3及びW相コイルW2,W3の巻き始め及び巻き終わりの巻線端部は、背圧室側端面100Bを越えて外方へ引き出されている。これにより、V相巻線302のうち、V相コイルV1とV相コイルV2とを接続する渡り線V1-2、V相コイルV2とV相コイルV3とを接続する渡り線V2-3、及び、V相コイルV3とV相コイルV4とを接続する渡り線V3-4は、背圧室側端面100Bに近接して配置される。また、W相巻線303のうち、W相コイルW1とW相コイルW2とを接続する渡り線W1-2、W相コイルW2とW相コイルW3とを接続する渡り線W2-3、及び、W相コイルW3とW相コイルW4とを接続する渡り線W3-4は、背圧室側端面100Bに近接して配置される。
【0038】
このように、U相巻線301の渡り線U1-2,U2-3,U3-4とV相巻線302の渡り線V1-2,V2-3,V3-4及びW相巻線303の渡り線W1-2,W2-3,W3-4とは、インバータ室側端面100Aと背圧室側端面100Bとに振り分けられて配置されている。
【0039】
U相コイルU1の巻き始めの巻線端部は、インバータ接続線Usとして、前述のようにインバータ室側端面100Aを越えて外方へ引き出されている。V相コイルV1の巻き始めの巻線端部は、インバータ接続線Vsとして、前述のようにインバータ室側端面100Aを越えて外方へ引き出されている。W相コイルW1の巻き始めの巻線端部は、インバータ接続線Wsとして、前述のようにインバータ室側端面100Aを越えて外方へ引き出されている。インバータ接続線Us,Vs,Wsは、対応相の接続端子36に接続される。
【0040】
U相コイルU4の巻き終わりの巻線端部は、中性点接続線U4-Nとしてインバータ室側端面100Aを越えて外方へ引き出される。V相コイルV4の巻き終わりの巻線端部は、中性点接続線V4-Nとしてインバータ室側端面100Aを越えて外方へ引き出される。W相コイルW4の巻き終わりの巻線端部は、中性点接続線W4-Nとしてインバータ室側端面100Aを越えて外方へ引き出される。中性点接続線U4-N,V4-N,W4-Nは互いに結線されて、これにより三相巻線300の中性点Nが形成されている。
【0041】
次に、
図7~
図9を参照して、ステータ32における三相巻線300の具体的な配置態様について説明する。
図7は、インバータ室側端面100Aに正対する方向からみたステータ32の一例を示している。
図8は、背圧室側端面100Bに正対する方向からみたステータ32の一例を示している。
【0042】
U相巻線301の渡り線U
1-2,U
2-3,U
3-4は、
図7の太実線で示すように配置されている。すなわち、渡り線U
1-2は、W相コイルW2が配設されたティース104の先端部104A、及び、V相コイルV2が配設されたティース105の先端部105Aに沿うように配置されている。渡り線U
2-3は、W相コイルW3が配設されたティース107の先端部107A、及び、V相コイルV3が配設されたティース108の先端部108Aに沿うように配置されている。渡り線U
3-4は、W相コイルW4が配設されたティース110の先端部110A、及び、V相コイルV4が配設されたティース111の先端部111Aに沿うように配置されている。
【0043】
U相巻線301の渡り線U1-2は、先端突出部203B,204B,205Bへ径方向外方から当接して、先端部103A,104A,105Aから径方向内方への逸脱によるロータ31との干渉が規制されている。U相巻線301の渡り線U2-3は、先端突出部206B,207B,208Bと径方向外方から当接して、先端部106A,107A,108Aから径方向内方への逸脱によるロータ31との干渉が規制されている。U相巻線301の渡り線U3-4は、先端突出部209B,210B,211Bと径方向外方から当接して、先端部109A,110A,111Aから径方向内方への逸脱によるロータ31との干渉が規制されている。
【0044】
U相巻線301の渡り線U
1-2は、
図9に示すように、先端突出部203Bの段差Gによって、回転軸線Xの方向へ逸脱しないようになっている。これは、U相巻線301の渡り線U
1-2,U
2-3,U
3-4とこれらが当接する先端突出部204B~211Bとの間についても同様である。
【0045】
中性点接続線U4-N,V4-N,W4-Nは、ティース101~112の基端部101B~112Bに沿うように配置されている。例えば、中性点接続線W4-Nは基端突出部210D,211D,212Dに径方向外方から当接し、中性点接続線V4-Nは基端突出部211D,212Dに径方向外方から当接し、中性点接続線U4-Nは基端突出部212Dに径方向外方から当接して配置される。中性点Nを形成すべく結線された中性点接続線U4-N,V4-N,W4-Nは、インバータ接続線Us,Vs,Wsと交差しない範囲で、いずれかの基端突出部(例えば212D)に絡げられてもよい。
【0046】
なお、U相巻線301の渡り線U1-2,U2-3,U3-4は、V相巻線302及びW相巻線303が巻き回されていないティースの先端部に代えて、かかるティースの基端部に沿うように配置されてもよい。
【0047】
V相巻線302の渡り線V
1-2,V
2-3,V
3-4は、
図8の太破線で示すように配置されている。また、W相巻線303の渡り線W
1-2,W
2-3,W
3-4は、
図8の太実線で示すように配置されている。
図8から明らかなように、V相巻線302の渡り線V
1-2,V
2-3,V
3-4及びW相巻線303の渡り線W
1-2,W
2-3,W
3-4は径方向で離間するように配置されている。
【0048】
すなわち、V相巻線302の渡り線V1-2は、U相コイルU1が配設されたティース103の先端部103A、及び、W相コイルW2が配設されたティース104の先端部104Aに沿うように配置されている。V相巻線302の渡り線V2-3は、U相コイルU2が配設されたティース106の先端部106A、及び、W相コイルW3が配設されたティース107の先端部107Aに沿うように配置されている。V相巻線302の渡り線V3-4は、U相コイルU3が配設されたティース109の先端部109A、及び、W相コイルW4が配設されたティース110の先端部110Aに沿うように配置されている。
【0049】
また、W相巻線303の渡り線W1-2は、W相コイルW1が配設されたティース101の基端部101B、V相コイルV1が配設されたティース102の基端部102B、及び、U相コイルU1が配設されたティース103の基端部103Bに沿うように配置されている。W相巻線303の渡り線W2-3は、W相コイルW2が配設されたティース104の基端部104B、V相コイルV2が配設されたティース105の基端部105B、及び、U相コイルU2が配設されたティース106の基端部106Bに沿うように配置されている。W相巻線303の渡り線W3-4は、W相コイルW3が配設されたティース107の基端部107B、V相コイルV3が配設されたティース108の基端部108B、及び、U相コイルU3が配設されたティース109の基端部109Bに沿うように配置されている。
【0050】
V相巻線302の渡り線V1-2は、先端突出部203C,204Cへ径方向外方から当接して、先端部103A,104Aから径方向内方への逸脱によるロータ31との干渉が規制されている。V相巻線302の渡り線V2-3は、先端突出部206C,207Cと径方向外方から当接して、先端部106A,107Aから径方向内方への逸脱によるロータ31との干渉が規制されている。V相巻線302の渡り線V3-4は、先端突出部209C,210Cと径方向外方から当接して、先端部109A,110Aから径方向内方への逸脱によるロータ31との干渉が規制されている。
【0051】
W相巻線303の渡り線W1-2は、基端突出部201E,202E,203Eへ径方向外方から当接して、基端部101B,102B,103Bから径方向内方への逸脱によるV相コイルV1及びU相コイルU1との干渉が規制されている。W相巻線303の渡り線W2-3は、基端突出部204E,205E,206Eへ径方向外方から当接して、基端部104B,105B,106Bから径方向内方への逸脱によるV相コイルV2及びU相コイルU2との干渉が規制されている。W相巻線303の渡り線W3-4は、基端突出部207E,208E,209Eへ径方向外方から当接して、基端部107B,108B,109Bから径方向内方への逸脱によるV相コイルV3及びU相コイルU3との干渉が規制されている。
【0052】
V相巻線302の渡り線V
1-2は、
図9に示すように、先端突出部203Cの段差Gによって、回転軸線Xの方向へ逸脱しないようになっている。これは、V相巻線302の渡り線V
1-2,V
2-3,V
3-4とこれらが当接する先端突出部204C,206C,207C,209C,210Cとの間についても同様である。また、W相巻線303の渡り線W
1-2は、
図9に示すように、基端突出部203Eの段差Gによって、回転軸線Xの方向へ逸脱しないようになっている。これは、W相巻線303の渡り線W
1-2,W
2-3,W
3-4とこれらが当接する基端突出部201E,202E,204E~209Eとの間についても同様である。
【0053】
前述のようにU相巻線301の渡り線U1-2,U2-3,U3-4を配置しても、U相コイルU1~U4の巻き始めの巻線端部及び巻き終わりの巻線端部の引き出し方向は同じである。したがって、U相コイルU1~U4の巻線ターン数を殆ど同一とすることができる。しかし、前述のようにV相巻線302の渡り線V1-2,V2-3,V3-4及びW相巻線303のW相巻線303の渡り線W1-2,W2-3,W3-4を配置すると、V相コイルV1~V4及びW相コイルW1~W4の中に、巻き始めの巻線端部及び巻き終わりの巻線端部の引き出し方向が同じものと異なるものとが混在してしまう。具体的には、V相コイルV2,V3及びW相コイルW2,W3の巻き始めの巻線端部及び巻き終わりの巻線端部の引き出し方向は同じであるが、V相コイルV1,V4及びW相コイルW1,W4の巻き始めの巻線端部及び巻き終わりの巻線端部の引き出し方向は異なっている。このように巻き始めの巻線端部及び巻き終わりの巻線端部の引き出し方向が同じものと異なるものとが混在するV相コイルV1~V4及びW相コイルW1~W4の各相コイルにおいて、単純に巻線ターン数を揃えることは困難である。このため、V相コイルV1~V4及びW相コイルW1~W4の巻線ターン数は、V相コイルV1~V4の平均巻線ターン数及びW相コイルW1~W4の平均巻線ターン数がU相コイルU1~U4の平均巻線ターン数と同じになるように調整されている。
【0054】
例えば、V相コイルV2,V3及びW相コイルW2,W3が1ターン単位で巻線ターン数を設定できるのに対し、V相コイルV1,V4及びW相コイルW1,W4では、0.5ターンの端数が生じるものとする。また、U相コイルU1~U4の巻線ターン数が10ターンであるとする。この場合には、V相コイルV2,V3及びW相コイルW2,W3の巻線ターン数を10ターンとし、V相コイルV1,V4の巻線ターン数を9.5ターンと10.5ターンとし、W相コイルW1,W4の巻線ターン数を9.5ターンと10.5ターンとする。
【0055】
V相コイルV1~V4及びW相コイルW1~W4の巻線ターン数の調整だけでは、U相コイルU1~U4への平均巻線ターン数への合わせ込みが困難である場合には、V相巻線302の渡り線V
1-2,V
2-3,V
3-4の配置やV相巻線302の渡り線V
1-2,V
2-3,V
3-4の配置を変更することで対応可能である。例えば、
図8に示すように、V相コイルV1の巻き終わりの巻線端部は、先端突出部202Cを経由せずに先端突出部203Cに当接しているが、これに代えて、当該巻線端部をW相コイルW1の方向へ引き出して先端突出部202Cを回り込むようにしてから先端突出部203Cに当接させてもよい。これにより、V相コイルV1の実質的な巻線ターン数を増加させることができる。また、
図8に示すように、W相コイルW1の巻き終わりの巻線端部は、基端突出部201Eに回り込ませてから基端突出部202Eに当接しているが、これに代えて、当該巻線端部を基端突出部202Eへ直接当接させてもよい。これにより、W相コイルW1の実質的な巻線ターン数を減少させることができる。
【0056】
このように構成される電動モータ30によれば、従来の電動モータと比較して、以下の点で絶縁性能を向上させることができる。
【0057】
先ず、ティース101~112に対する三相巻線300の従来の配置例を示す
図12を参照すると、U相巻線301の渡り線U
1-2,U
2-3,U
3-4、V相巻線302の渡り線V
1-2,V
2-3,V
3-4及びW相巻線303の渡り線W
1-2,W
2-3,W
3-4が、全てインバータ室側端面100Aに近接して配置されている。これに対し、電動モータ30では、U相巻線301の渡り線U
1-2,U
2-3,U
3-4とV相巻線302の渡り線V
1-2,V
2-3,V
3-4及びW相巻線303の渡り線W
1-2,W
2-3,W
3-4とは、インバータ室側端面100Aと背圧室側端面100Bとに振り分けられて配置されている。したがって、電動モータ30では、従来と比較して、U相巻線301の渡り線U
1-2,U
2-3,U
3-4とV相巻線302の渡り線V
1-2,V
2-3,V
3-4及びW相巻線303の渡り線W1-2,W
2-3,W
3-4との間における絶縁距離を長くすることができ、電動モータ30の絶縁性能を向上することが可能となる。
【0058】
また、電動モータ30では、インバータ接続線Us,Vs,Ws及び中性点接続線U4-N,V4-N,W4-Nは、渡り線の配置数が背圧室側端面100Bよりも少ないインバータ室側端面100Aを越えて外方に引き出されているので、渡り線と干渉する可能性は低くなる。
【0059】
さらに、電動モータ30では、背圧室側端面100Bに近接して配置されたV相巻線302の渡り線V1-2,V2-3,V3-4及びW相巻線303の渡り線W1-2,W2-3,W3-4は、径方向で離間するように配置されている。このため、V相巻線302の渡り線V1-2,V2-3,V3-4とW相巻線303の渡り線W1-2,W2-3,W3-4との間における絶縁距離も長くすることができ、電動モータ30の絶縁性能をさらに向上させることが可能となる。
【0060】
ところで、
図8に示すように、V相巻線302の渡り線V
1-2は、先端突出部203C,204Cに径方向外方から当接可能となっているだけであるので、V相コイルV2に近い位置では、先端突出部204Cから径方向外方へ離れて、W相コイルW2やW相巻線303の渡り線W
1-2と干渉しやすくなる。また、
図7に示すように、U相巻線301の渡り線U
1-2は、先端突出部204B,205Bに径方向外方から当接可能となっているだけであるので、U相コイルU2に近い位置では、先端突出部205Bから径方向外方へ離れて、V相コイルV2と干渉しやすくなる。これは、電動モータ30の極対数が大きくなってティース間隔が減少したときに特に顕著となる。このため、V相巻線302の渡り線V
1-2は、V相コイルV2に近い位置でも、できるだけ先端部104Aに沿って配置されていることが好ましい。また、U相巻線301の渡り線U
1-2は、U相コイルU2に近い位置でも、できるだけ先端部105Aに沿って配置されていることが好ましい。渡り線V
2-3,V
3-4や渡り線U
2-3,U
3-4についても同様である。このような問題を解消すべく、
図10及び
図11を参照して、ボビン200の変形例について説明する。
【0061】
図10は、ボビン200の第1変形例を示し、
図8のティース104とその周囲を含む部分を拡大したものに基づいている。本変形例に係るボビン200では、先端突出部204C1が先端突出部204Cと同様の位置に設けられているが、V相巻線302の渡り線V
1-2が径方向外方から当接するだけでなく、径方向内方からも当接するように形成されている点で異なる。例えば、先端突出部204C1は、先端部104Aに対応する部分で周方向に沿って延びてV相巻線302の渡り線V
1-2が嵌合する溝構造とすることができる。これにより、V相巻線302の渡り線V
1-2を径方向内方からも先端突出部204C1と当接して、V相コイルV2の直前まで、先端部104Aに沿って配置することができる。なお、渡り線V
2-3,V
3-4や渡り線U
1-2,U
2-3,U
3-4についても先端突出部204C1と同様に径方向外方及び径方向内方で当接する先端突出部が設けられる。
【0062】
図11は、ボビン200の第2変形例を示し、
図8のティース104とその周囲を含む部分を拡大したものに基づいている。本変形例に係るボビン200では、先端突出部204Cに加えて、ティース104の先端部10Aに対向する部分のうちV相コイルV2に比較的近い位置で、先端突出部204C2が立設している。V相巻線302の渡り線V
1-2は、径方向外方から先端突出部204Cに当接することに変わりはないが、先端突出部204Cと当接した後、先端突出部204C2に径方向内方から当接するように配置されている。これにより、V相巻線302の渡り線V
1-2は、V相コイルV2の直前まで先端部104Aに沿って配置されることになる。なお、渡り線V
2-3,V
3-4や渡り線U
1-2,U
2-3,U
3-4についても先端突出部204C2と同様に径方向内方で当接する先端突出部が設けられる。
【0063】
以上、好ましい実施形態及びその変形例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、以下のように種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【0064】
ボビン200の変形例として、V相巻線302の渡り線V1-2が径方向内方からも当接する先端突出部204C1,C2について説明したが、これに代えて、先端部104Aに対向する部分のうちV相コイルV2に比較的近い位置に、V相巻線302の渡り線V1-2を絡げる絡げピンを設けてもよい。このような絡げピンは、先端突出部201C~212Cの全体に適用されるだけでなく、先端突出部201B~212Bや基端突出部201D~212D,201E~212Eに代えて設けられてもよい。
【0065】
ステータコア100において、ティース101~112がステータヨーク120から分割されるものとして説明したが、ティース101~112とステータヨーク120とが一体成形されていてもよい。これに伴い、ボビン200も、各ティースに対応したボビン片に分割される代わりに、ステータコア100をインバータ室側端面100Aから覆うボビン片と、ステータコア100を背圧室側端面100Bから覆うボビン片と、に分割されてもよい。
【0066】
ステータコア100は、12個のティース101~112を備えているものとして説明したが、6個、9個あるいは15個以上の3の倍数のティースを備えているものとしてもよい。これに伴い、ボビン片の個数も12個から増減させてもよい。
【0067】
電動モータ30を動力源として利用する利用対象を電動圧縮機3として説明したが、これに限らず、例えば、電動モータ30をブロワーモータとして利用する空気調和装置を対象としてもよい。
【0068】
電動モータ30は、ロータ31の外周面に永久磁石を配設した表面磁石型、又は、ロータ31の内部に永久磁石を埋め込んだ埋込磁石型のいずれでもよく、また、ロータ31に永久磁石を配設しないリラクタンスモータであってもよい。
【0069】
電動モータ30は、ステータ32の内側にロータ31を配置したインナーロータ型として説明したが、ステータ32の外側にロータ31を配置したアウターロータ型としてもよい。
【0070】
電動圧縮機3の圧縮方式として、スクロールユニット20を用いたスクロール方式を説明したが、これに限らず、電動モータ30の回転出力を利用するものであれば、いかなる圧縮方式も採用可能である。例えば、ケーシング内のロータを電動モータ30の回転出力により回転させて、ケーシングとロータとの間に形成された圧縮室の容積を連続的に変化させるロータリー方式を採用してもよい。
【0071】
なお、上記の実施形態及び変形例で説明した各技術的思想及びこれに基づく変形態様は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合せて使用することができる。
【符号の説明】
【0072】
3…電動圧縮機、30…電動モータ、31…ロータ、100…ステータコア、100A…インバータ室側端面(ステータコアの一方の端部)、100B…背圧室側端面(ステータコアの反対側の端部)、101~112…ティース、101A~112A…ティースの先端部、101B~112B…ティースの基端部、120…ステータヨーク、200…ボビン、201B~212B,201C~212C…先端突出部、201D~212D,201E~212E…基端突出部、300…三相巻線、301…U相巻線(第1相の巻線)、302…V相巻線(第2相の巻線)、303…W相巻線(第3相の巻線)、U1-2,U2-3,U3-4…渡り線(第1相渡り線)、V1-2,V2-3,V3-4…渡り線(第2相渡り線)、W1-2,W2-3,W3-4…渡り線(第3相渡り線)、X…回転軸線