(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122109
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】連結式給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/355 20220101AFI20230825BHJP
【FI】
F24H1/10 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025555
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】芝 光真
(57)【要約】
【課題】応答性の向上と給湯装置の劣化進行抑制を両立することができる連結式給湯システムを提供すること。
【解決手段】給水配管(1)と給湯配管(2)の間に並列に設置された複数の燃焼式の給湯装置(11~14)と、給湯使用量に応じて作動させる給湯装置(11~14)の台数を変更する制御手段(15)を備えた連結式給湯システム(10)において、複数の給湯装置(11~14)に対して、給湯開始時に作動させる1台のメイン給湯装置と、メイン給湯装置以外の追加作動させるためのサブ給湯装置とが設定され、制御手段(15)は、作動中の給湯装置のうちの最後に作動開始させた給湯装置の給湯使用量が規定値以上となった場合に1台の未作動のサブ給湯装置を追加作動させて給湯し、複数の給湯装置による給湯運転状況を学習記憶して給湯使用量が増加する高負荷時間帯を設定すると共に、この高負荷時間帯ではサブ給湯装置を追加作動させるための規定値を低下させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水配管と給湯配管の間に並列に設置された複数の燃焼式の給湯装置と、給湯使用量に応じて作動させる前記給湯装置の台数を変更する制御手段を備えた連結式給湯システムにおいて、
複数の前記給湯装置に対して、給湯開始時に作動させる1台のメイン給湯装置と、前記メイン給湯装置以外の追加作動させるためのサブ給湯装置とが設定され、
前記制御手段は、作動中の前記給湯装置のうちの最後に作動開始させた給湯装置の加熱能力が規定値以上となった場合に1台の未作動の前記サブ給湯装置を追加作動させて給湯し、複数の前記給湯装置による給湯運転状況を学習記憶して給湯使用量が増加する高負荷時間帯を設定すると共に、この高負荷時間帯では前記サブ給湯装置を追加作動させるための前記規定値を低下させることを特徴とする連結式給湯システム。
【請求項2】
前記高負荷時間帯は、複数の前記給湯装置を流れる最大通水量に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の連結式給湯システム。
【請求項3】
前記高負荷時間帯は、複数の前記給湯装置を流れる通水量の増加率に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の連結式給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の給湯装置と、これら複数の給湯装置の作動台数を制御するシステム制御装置を備え、給湯使用量に応じた加熱能力にするために、作動台数を変更して給湯する連結式給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般家庭用の給湯装置として、運転効率が高いヒートポンプ熱源機によって加熱した湯水を貯湯タンクに貯湯し、この貯湯した湯水を給湯に使用する貯湯給湯装置が使用されている。このような貯湯給湯装置では、ユーザの使用実態に合わせて貯湯するため、例えば特許文献1のように使用実績に基づいて最適な運転モードを判定する技術が知られている。
【0003】
一方、例えば寮、宿泊施設、スポーツジム等では、複数の利用者のシャワー使用等のために給湯使用が集中して給湯使用量が短時間で急激に増加する場合があり、給湯使用量が一旦低下後に再び急増する場合もある。そして、給湯使用の時刻や人数が日毎に大きく変動し、特許文献1のように使用実績に基づいて過不足なく貯湯することが困難なので、このような施設では、給湯使用量に応じて加熱能力を調整するために燃焼式の給湯装置の作動台数を変更して給湯する連結式給湯システムが利用されている。連結式給湯システムは、設定された目標温度の湯水を給湯配管に給湯し、給湯使用者が温度調整機能付きの給湯栓から所望の温度の湯水を使用する。
【0004】
連結式給湯システムは、給湯使用量(目標温度の湯水の出湯流量)に応じて作動中の給湯装置の加熱能力を調整すると共に、給湯装置の作動台数を変更するので、大量の給湯だけでなく作動台数が1台の少量の給湯にも対応することができる。このような連結式給湯システムとしては、例えば特許文献2のように、給湯量(給水管からの供給水量及び各給湯装置の供給熱量)に基づいて、作動台数を変更するように構成された連結式給湯システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-89208号公報
【特許文献2】特開2007-292383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の連結式給湯システムは、作動中の給湯装置だけでは加熱能力が不足して目標温度で給湯できない場合に、給湯装置を追加作動させる。このとき、作動中の給湯装置は既にその最大加熱能力に到達している場合が多く、追加作動させる給湯装置は着火から加熱能力を増加させて給湯が安定するまである程度時間を要するので、給湯使用量の急増に対してその応答性に課題がある。
【0007】
ここで、特許文献2の連結式給湯システムは、各給湯装置における予め設定された高、中、低の3段階の給湯量に基づいて、作動中の給湯装置の給湯量が高になる場合に作動台数を増加させ、作動中の給湯装置の給湯量が低になる場合に作動台数を減少させる。従って、給湯使用量の急増に対して、作動中の給湯装置の給湯量を増加させながら次の給湯装置を追加駆動させることができ、応答性が向上する。
【0008】
その一方で、特許文献2の連結式給湯システムの各給湯装置は、給湯運転の大部分において給湯量が中の状態になるように制御され、作動台数を増加させずに給湯可能な給湯使用量の場合でも作動台数が増加する傾向がある。そのため、各給湯装置の累積作動時間の増加及び劣化の進行が速くなり、連結式給湯システムのメンテナンス時期又は交換時期が早まる虞がある。
【0009】
本発明の目的は、応答性の向上と給湯装置の劣化進行抑制を両立することができる連結式給湯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明の連結式給湯システムは、給水配管と給湯配管の間に並列に設置された複数の燃焼式の給湯装置と、給湯使用量に応じて作動させる前記給湯装置の台数を変更する制御手段を備えた連結式給湯システムにおいて、複数の前記給湯装置に対して、給湯開始時に作動させる1台のメイン給湯装置と、前記メイン給湯装置以外の追加作動させるためのサブ給湯装置とが設定され、前記制御手段は、作動中の前記給湯装置のうちの最後に作動開始させた給湯装置の加熱能力が規定値以上となった場合に1台の未作動の前記サブ給湯装置を追加作動させて給湯し、複数の前記給湯装置による給湯運転状況を学習記憶して給湯使用量が増加する高負荷時間帯を設定すると共に、この高負荷時間帯では前記サブ給湯装置を追加作動させるための前記規定値を低下させることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、連結式給湯システムは、給湯開始時にはメイン給湯装置を作動させて給湯し、作動中の給湯装置のうち作動開始が最後の給湯装置の加熱能力が規定値以上になると、作動台数を1台増加させて給湯する。この連結式給湯システムの制御装置は、学習記憶した給湯運転状況から給湯使用量が増加する時間帯を高負荷時間帯として設定し、この高負荷時間帯では作動台数を増加させるための判定基準となる規定値を、高負荷時間帯以外での規定値から低下させる。これにより、高負荷時間帯では、作動中の給湯装置のうち作動開始が最後の給湯装置の加熱能力を増加させながら、サブ給湯装置を追加作動させることができる。従って、高負荷時間帯ではサブ給湯装置の作動開始のタイミングを早めることができるので、給湯使用量の増加に対して素早く対応することができ、応答性が向上する。また、高負荷時間帯以外では、規定値が高負荷時間帯よりも高いので、作動台数の増加を抑制して給湯装置の劣化の進行を抑制することができる。
【0012】
請求項2の発明の連結式給湯システムは、請求項1の発明において、前記高負荷時間帯は、複数の前記給湯装置を流れる最大通水量に基づいて設定されることを特徴としている。
上記構成によれば、学習記憶された給湯運転状況のうち、最大通水量に基づいて作動台数を増加させる必要がある時間帯を高負荷時間帯として設定する。従って、高負荷時間帯でサブ給湯装置の作動開始のタイミングを早めたため作動台数が増加し易い状態の給湯運転状況に基づいて、一層適切に高負荷時間帯を設定することができる。
【0013】
請求項3の発明の連結式給湯システムは、請求項1の発明において、前記高負荷時間帯は、複数の前記給湯装置を流れる通水量の増加率に基づいて設定されることを特徴としている。
上記構成によれば、学習記憶された給湯運転状況のうち、通水量の増加率に基づいて、作動台数を速く増加させることが好ましい時間帯を高負荷時間帯として設定する。従って、高負荷時間帯でサブ給湯装置の作動開始のタイミングを早めたため作動台数が増加し易い状態の給湯運転状況に基づいて、一層適切に高負荷時間帯を設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の連結式給湯システムによれば、応答性の向上と給湯装置の劣化進行抑制を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例に係る連結式給湯システムを示す図である。
【
図2】実施例に係る連結式給湯システムを構成する給湯装置の説明図である。
【
図3】学習記憶した給湯使用実績に基づく高負荷時間帯設定の例を示す図である。
【
図5】通常時間帯における加熱能力の増減推移の説明図である。
【
図6】高負荷時間帯における加熱能力の増加推移の説明図である。
【
図7】高負荷時間帯における加熱能力の減少推移の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0017】
図1に示すように、給水配管1には矢印Wで示すように上水が供給され、この給水配管1から導入される上水を目標温度に加熱して複数の給湯栓F1~Fmが装備された給湯配管2に供給するように、連結式給湯システム10が設置されている。この連結式給湯システム10は、複数(ここでは4台)の給湯装置11~14と、これら給湯装置11~14に作動台数の制御を行うために通信接続された制御手段としてシステム制御装置15を有する。システム制御装置15は、連結式給湯システム10の例えば出湯温度の設定操作を行う操作リモコン15aを有する。複数の給湯装置11~14は、給水配管1と給湯配管2の間に並列に接続され、どの給湯装置11~14からでも複数の給湯栓F1~Fmに給湯することができる。複数の給湯栓F1~Fmは、例えば上水と混合して温度調整する機能を有し、給湯使用者は所望の温度に調整して使用する。尚、連結式給湯システム10を構成する給湯装置の台数は4台に限定されず、2台以上であればよい。
【0018】
次に給湯装置11~14ついて説明するが、これら給湯装置11~14は同じ構成なので、給湯装置11について説明し、給湯装置12~14の説明を省略する。
図2に示すように、給湯装置11は、燃焼部21での燃料ガスの燃焼熱を利用して熱交換部22を流動する湯水を加熱するように構成された燃焼式の給湯装置である。この給湯装置11は、熱交換部22に上水を供給する給水部23と、熱交換部22で加熱された湯水の温度を調整して出湯する出湯部24を有する。
【0019】
燃焼部21は、複数の燃焼区画を有するバーナ25と、このバーナ25への燃料ガスの供給流量を調整する燃料調整弁26と、燃焼用空気を供給する燃焼ファン27と、放電を利用してバーナ25に点火する点火装置28を有する。バーナ25は、複数の燃焼区画に対応する開閉弁25a~25dを備えている。
【0020】
給水部23は、給水配管1と熱交換部22とを接続する給水通路29と、給水通路29を開閉する給水弁30と、上水の温度(給水温度)を検知する給水温度センサ31と、熱交換部22に供給される上水の流量(給水流量)を検知する給水流量センサ32を有する。
【0021】
出湯部24は、熱交換部22と給湯配管2とを接続する出湯通路34と、給水弁30の下流側で給水通路29から分岐されて出湯通路34に接続されたバイパス通路35と、バイパス流量調整弁36を有する。バイパス流量調整弁36は、給水通路29からバイパス通路35に流入させる上水の流量を調整する。出湯通路34には、熱交換部22で加熱された湯水の温度を検知する第1出湯温度センサ37と、加熱された湯水にバイパス通路35からの上水を混合して温度調整された湯水の温度(出湯温度)を検知する第2出湯温度センサ38と、出湯流量調整弁39が装備されている。出湯流量調整弁39は、給湯配管2に供給する湯水の出湯流量を調整することによって給水配管1から導入される上水の流量を調整する、即ち給湯装置11の通水量を調整する水量調整手段である。
【0022】
給湯装置11は、システム制御装置15と連携して給湯装置11の給湯運転を制御する制御部40を有する。制御部40は、給水流量センサ32の検知流量と、給水温度センサ31及び第1、第2出湯温度センサ37,38の夫々の検知温度を取得する。そして、制御部40は、これらの検知流量と検知温度に基づいて、燃焼ファン27の回転数、燃料調整弁26の開度及び開閉弁25a~25dの開閉の制御によって加熱能力を変更、調整すると共に、バイパス流量調整弁36の開度を調整する。これにより、設定された目標温度の湯水を給湯配管2に供給する給湯運転が行われる。
【0023】
例えば給湯使用量が大きいため、目標温度の湯水を供給できない場合には、制御部40は出湯流量調整弁39の開度を調整して通水量を低下させることにより、目標温度の湯水を供給できるようにする。給湯装置11の通水量は、給水流量センサ32の検知流量とバイパス流量調整弁36の開度と出湯流量調整弁39の開度に基づいて、制御部40によって算出される。
【0024】
システム制御装置15は、給湯運転の作動候補である複数の給湯装置11~14のうちの1台(例えば給湯装置11)をメイン給湯装置に設定し、メイン給湯装置以外の給湯装置(例えば給湯装置12~14)をサブ給湯装置に設定する。メイン給湯装置は、給湯開始時に最初に作動させる給湯装置である。サブ給湯装置は、給湯開始時には作動させず、給湯中に追加作動させるための給湯装置である。メイン給湯装置は1台なので、サブ給湯装置台数NはN=3となる。
【0025】
サブ給湯装置の設定時には、例えば第1サブ給湯装置、第2サブ給湯装置、第3サブ給湯装置のように、作動優先順位が最も高いメイン給湯装置以外のサブ給湯装置の作動優先順位(追加作動の順番)が設定される。また、複数の給湯装置11~14の間の累積作動時間の差、又は作動負荷の差を小さくするために、システム制御装置15は、メイン給湯装置及びサブ給湯装置を入れ替えるローテーション設定を、例えば定期的に又は累積作動時間に応じて行う。
【0026】
メイン給湯装置の制御部40は、給水弁30を開いた状態にすると共に、出湯流量調整弁39の開度を例えば全開にする。サブ給湯装置の制御部40は、給水弁30を閉じた状態にすると共に、出湯流量調整弁39の開度を全開よりも小さい例えば半開にする。給湯栓F1~Fmの何れかが開けられて、メイン給湯装置の給水流量が所定の作動開始流量以上になると、メイン給湯装置のみで給湯運転が開始される。
【0027】
システム制御装置15は、メイン給湯装置の例えば加熱能力が規定値以上となって追加作動条件が成立し、且つ作動候補の中に未作動のサブ給湯装置がある場合に、そのうちの作動優先順位が最も高い1台の未作動のサブ給湯装置を追加作動させる。導入される上水が作動している複数の給湯装置に分散されるので、システム制御装置15は、例えば先に作動開始した給湯装置の加熱能力が維持されるように、作動開始が最後の給湯装置の出湯流量調整弁39の開度を調整させる。
【0028】
給湯運転中のシステム制御装置15は、例えば
図3に示すような複数の給湯装置11~14による給湯運転の状況を学習記憶する。学習記憶する給湯運転状況には、例えば作動台数、通水量、加熱能力、時刻等が含まれている。そして、学習記憶した給湯運転状況に基づいて、例えば給湯使用量が多い時間帯を高負荷時間帯として設定する。ここでは給湯使用量が多いため、例えば作動台数が3台以上の時間帯を高負荷時間帯として設定する。
【0029】
システム制御装置15は、高負荷時間帯では高負荷時間帯モードをONにし、通常時間帯(高負荷時間帯以外の時間帯)では高負荷時間帯モードをOFFにする。尚、システム制御装置15は、例えば連結式給湯システム10の稼働初日の場合や学習記憶した給湯運転状況が初期化された場合には、高負荷時間帯を設定するための学習記憶した給湯運転状況が無いので、少なくとも1日分の給湯運転状況が学習記憶されるまで通常時間帯として給湯運転を行う。
【0030】
システム制御装置15は、高負荷時間帯(高負荷時間帯モードONのとき)のサブ給湯装置の追加作動条件を、通常時間帯(高負荷時間帯モードOFFのとき)の追加作動条件よりも緩和する。この規定値を、通常時間帯では通常時間帯規定値(例えば最大加熱能力)とし、高負荷時間帯では通常時間帯規定値よりも低い高負荷時間帯規定値(例えば最大加熱能力の50%)にすることによって、即ち高負荷時間帯では規定値を通常時間帯よりも低下させることによって追加作動条件を緩和する。
【0031】
作動台数の代わりに、複数の給湯装置11~14の合計通水量の最大値(最大通水量)に基づいて、所定の基準通水量F0以上の時間帯を高負荷時間帯に設定することができる。また、複数の給湯装置11~14の合計通水量から算出した通水量増加率(例えば単位時間内の合計通水量の最大増加量)が所定の基準増加率I0以上である時間帯を、高負荷時間帯として設定することもできる。高負荷時間帯モードONの場合には作動台数が増加し易いので、最大通水量又は通水量増加率に基づいて高負荷時間帯を設定することにより、一層適切に高負荷時間帯を設定することができる。
【0032】
例えば給湯栓F1が開けられて、メイン給湯装置の給水流量センサ32が所定の作動開始流量以上の流量を検知すると、メイン給湯装置が作動を開始して給湯運転を行うと共に、システム制御装置15による作動台数制御が開始される。この作動台数制御について、
図4のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0033】
作動台数制御が開始されると、S1において、サブ給湯装置台数Nを取得してS2に進む。そしてS2において、給湯運転開始直後のメイン給湯装置のみが作動を開始した状態なので、サブ給湯装置作動台数nをゼロにしてS3に進む。
【0034】
S3において、高負荷時間帯設定がOFFか否か判定する。S3の判定がYesの場合はS4に進み、S4において通常時間帯規定値を規定値として設定してS6に進む。これにより規定値が、例えば給湯装置の最大加熱能力に設定される。尚、通常時間帯規定値は、最大加熱能力より低くてもよい。
【0035】
一方、S3の判定がNoの場合はS5に進み、S5において高負荷時間帯規定値を規定値として設定してS6に進む。これにより規定値が、通常時間帯規定値よりも低い例えば給湯装置の最大加熱能力の50%に設定される。尚、高負荷時間帯規定値は、通常時間帯規定値よりも低く、且つ作動開始流量における加熱能力よりも高ければよい。
【0036】
S6において、最後に作動開始した給湯装置の加熱能力が規定値以上となったか否か判定する。サブ給湯装置の追加作動条件の判定ステップである。システム制御装置15は、給湯運転状況の学習記憶のために取得している給湯運転に関する各種データに基づいて、給湯装置11~14の加熱能力が規定値以上となったことを判定する。最後に作動開始した給湯装置は、メイン給湯装置のみが作動している場合にはメイン給湯装置であり、サブ給湯装置も作動している場合には作動中のサブ給湯装置のうちの作動開始が最後のサブ給湯装置である。
【0037】
S6の判定がYesの場合はS7に進む。そしてS7において、サブ給湯装置作動台数nがサブ給湯装置台数Nよりも小さいか否か判定する。追加作動可能な未作動のサブ給湯装置の有無を判定するステップである。S7の判定がYesの場合はS8に進み、S8において未作動のサブ給湯装置のうちの1台を追加作動させてS9に進む。そしてS9において、サブ給湯装置作動台数nを1増加させてS10に進む。このとき、追加作動指令を受けたサブ給湯装置の制御部40が、そのサブ給湯装置の給水弁30を開けることによって作動を開始する。
【0038】
一方、S6の判定がNoの場合は、サブ給湯装置を追加作動させずにS10に進む。また、S7の判定がNoの場合は、追加作動可能な未作動のサブ給湯装置が無いので、サブ給湯装置を追加作動させずにS10に進む。
【0039】
S10において、作動中の給湯装置のうち最後に作動開始した給湯装置の給水流量が、作動開始流量未満となったか否か判定する。給湯使用量が減少した場合には、作動中の給湯装置の通水量が減少するので、この減少分の調整のために最後に作動開始した給湯装置の出湯流量調整弁39の開度を優先的に調整させ、加熱能力を減少させる。このとき、給水流量が作動開始流量未満まで低下すると安定した給湯運転が困難になるので、最後に作動開始した給湯装置を停止させるための作動停止条件を判定するステップである。
【0040】
S10の判定がNoの場合はS3に戻る。S10の判定がYesの場合はS11に進み、S11において最後に作動開始した給湯装置の作動を停止させてS12に進む。システム制御装置15の作動停止を指示された給湯装置の制御部40は、その給湯装置の給水弁30を閉じて作動を停止する。
【0041】
S12において、サブ給湯装置作動台数nがゼロか否か判定する。S12の判定がNo(n>0)の場合はS13に進み、S13においてサブ給湯装置作動台数nを1減少させ、少なくともメイン給湯装置が作動しているのでS3に戻る。一方、S12の判定がYes(n=0)の場合は、S11でメイン給湯装置の作動を停止させたことになるので、S14に進む。そしてS14において給湯運転を終了して作動台数制御を終了する。
【0042】
次に、通常時間帯の給湯運転における加熱能力の推移の例を
図5に基づいて説明する。
通常時間帯では、メイン給湯装置のみ作動開始させた(a)の状態で給湯運転が開始された後、加熱能力を増加させてメイン給湯装置が通常時間帯規定値U0に到達(追加作動条件が成立)した場合に1台のサブ給湯装置(第1サブ給湯装置)を追加作動させて(b)の状態に移行する。さらに追加作動条件の成立によって第2サブ給湯装置を追加作動させた(c)の状態を経て、第3サブ給湯装置を追加作動させて複数の給湯装置11~14の全台が最大加熱能力で作動する(d)の状態まで加熱能力を増加させることが可能である。
【0043】
一方、例えば(d)の状態から給湯流量が減少する場合には、作動中の給湯装置のうち最後に作動開始させた給湯装置(第3サブ給湯装置)の出湯流量調整弁39の開度を小さくさせることにより加熱能力を優先的に低下させる。そして、この第3給湯装置の給水流量が作動開始流量未満となった(作動停止条件が成立した)場合に作動を停止させる。さらに加熱能力を低下させて、作動開始の順番と逆順で加熱能力を低下させて作動台数を減少させることにより、(c)、(b)の状態を経て(a)の状態に移行し、メイン給湯装置の給水流量が作動開始流量未満となった場合に給湯運転を終了する。尚、給湯中に給湯使用量の増減がある場合にも、作動中の給湯装置のうち最後に作動開始させた給湯装置の加熱能力を調整し、追加作動条件、作動停止条件に従って作動台数を変更する。
【0044】
次に、高負荷時間帯の給湯運転における加熱能力の増加推移の例を
図6に基づいて説明する。
高負荷時間帯では、メイン給湯装置のみ作動させた(a)の状態で給湯運転が開始された後、加熱能力を増加させてメイン給湯装置の加熱能力が高負荷時間帯規定値H0以上になった(追加作動条件が成立した)場合に、1台のサブ給湯装置(第1サブ給湯装置)を追加作動させて(b)の状態に移行する。さらに追加作動条件の成立によって第2サブ給湯装置を追加作動させた(c)の状態を経て、第3サブ給湯装置を追加作動させて複数の給湯装置11~14の全台が最大加熱能力で作動する(d)の状態まで加熱能力を増加させることが可能である。
【0045】
このように高負荷時間帯では、作動中の給湯装置のうち最後に作動開始した給湯装置が加熱能力を増加させている間に次のサブ給湯装置の作動を開始させる。従って、高負荷時間帯では、連結式給湯システム10の加熱能力の増加が通常時間帯よりも速くなり、応答性が向上する。
【0046】
次に、高負荷時間帯の給湯運転における加熱能力の減少推移の例を
図7に基づいて説明する。
例えば(a)の状態から給湯流量が減少する場合には、作動中の給湯装置のうち最後に作動開始させた給湯装置(第3サブ給湯装置)の出湯流量調整弁39の開度を小さくさせて加熱能力を優先的に低下させて(b)の状態に移行する。このとき、給水流量が作動開始流量未満とならないように(作動停止条件が成立しないように)低下させる。さらに加熱能力を低下させる場合には、作動開始の順番と逆順で作動停止条件が成立しないように加熱能力を低下させて作動台数を維持して、例えば(c)の状態に移行する。作動台数を維持することにより、給湯使用量が急増した場合に作動中の給湯装置の加熱能力を速く増加させることができ、通常時間帯よりも応答性が向上する。特に、複数の給湯使用者の大部分が入れ替わって給湯使用量の増減が激しい場合に、加熱能力を素早く増加させることができる。
【0047】
(c)の状態からさらに加熱能力を低下させる場合には、作動中の給湯装置のうち最後に作動開始した給湯装置(第3サブ給湯装置)の作動を停止させ、作動中の他の給湯装置の加熱能力を調整して(d)の状態に移行する。このように作動開始の順番と逆順で作動台数を1台ずつ減少させながら作動中の給湯装置の加熱能力を調整して連結式給湯システム10の加熱能力を低下させ、図示を省略するが、メイン給湯装置の給水流量センサ32の検知流量が作動開始流量未満となった場合に給湯運転を終了する。尚、作動中の給湯装置が同じ加熱能力になるように加熱能力を増減させることもできる。
【0048】
上記連結式給湯システム10の作用、効果について説明する。
連結式給湯システム10は、給湯開始時にはメイン給湯装置を作動させて給湯し、作動中の給湯装置のうち作動開始が最後であった給湯装置の加熱能力が規定値以上になると、作動台数を1台増加させて給湯する。この連結式給湯システム10のシステム制御装置15は、学習記憶した給湯運転状況から給湯使用量が増加する時間帯を高負荷時間帯として設定し、この高負荷時間帯では作動台数を増加させるための判定基準となる規定値を、高負荷時間帯以外での規定値から低下させる。これにより、高負荷時間帯では、作動中の給湯装置のうち作動開始が最後であった給湯装置の加熱能力を増加させながらサブ給湯装置を追加作動させることができる。従って、サブ給湯装置の作動開始のタイミングを早めて給湯使用量の増加に対して素早く対応することができ、応答性が向上する。また、高負荷時間帯以外では、規定値が高負荷時間帯よりも高いので、作動台数の増加を抑制して給湯装置の劣化の進行を抑制することができる。
【0049】
複数の給湯装置を流れる最大通水量に基づいて高負荷時間帯が設定される場合には、高負荷時間帯モードがONの状態でサブ給湯装置の作動開始のタイミングを早めたため、作動台数が増加し易い状態の給湯運転状況でも、一層適切に高負荷時間帯を設定することができる。また、複数の給湯装置を流れる通水量の増加率に基づいて高負荷時間帯が設定される場合には、高負荷時間帯モードがONの状態で作動台数が増加し易い状態の給湯運転状況でも、一層適切に高負荷時間帯を設定することができる。
【0050】
システム制御装置15が複数の給湯装置11~14の給湯運転の制御を行ってもよい。また、例えばインターネット回線を介して連結式給湯システム10に接続された外部制御装置が高負荷時間帯の設定を行うようにしてもよい。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。