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特開2023-122153異常検知システム、及び異常検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122153
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】異常検知システム、及び異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/38 20180101AFI20230825BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20230825BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
F24F11/38
F24F11/49
F25B49/02 570C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025652
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡 恵子
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 久恵
(72)【発明者】
【氏名】國眼 陽子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規和
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 伯之
(72)【発明者】
【氏名】緒方 英治
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260AB04
3L260BA57
3L260BA61
3L260CB09
3L260CB26
3L260CB86
3L260DA10
3L260EA07
3L260EA09
3L260EA22
3L260GA17
(57)【要約】
【課題】複数の室外機、室内機で構成されるVR空調システムにおいて、どの室内機の室内膨張弁が異常かを早期かつ高精度に検知することができる異常検知システム、及び異常検知方法を提供する。
【解決手段】空調機器を監視する監視計算機を有する異常検知システムであって、監視計算機が、室外機がサーモオン、且つ室内機がサーモオフになる条件下で、室内膨張弁の指示開度が一定以下で、且つ室内機の入口側空気温度、と出口側空気温度、の温度差が一定以上となる状態を開き異常状態とし、この開き異常状態の発生に基づいて室内膨張弁に開き異常が発生したと判断する機能を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機器を監視する監視計算機を有する異常検知システムであって、
前記監視計算機は、
室外機がサーモオン、且つ室内機がサーモオフになる条件下で、室内膨張弁の指示開度が所定値以下で、且つ前記室内機の入口側空気温度と出口側空気温度の温度差が所定値以上となる状態を開き異常状態とし、この開き異常状態の発生に基づいて前記室内膨張弁に開き異常が発生したと判断する機能を備えている
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知システムであって、
前記監視計算機は、
所定の期間の間で、前記室内機がサーモオンするサーモオン回数を計数する機能、及び前記開き異常が発生する開き異常発生回数を計数する機能と、
前記サーモオン回数と前記開き異常発生回数から開き異常割合値を求める機能と、
前記開き異常割合値と所定の開き異常割合閾値を比較し、前記開き異常割合値が前記開き異常割合閾値を超えると、前記開き異常の発生を確定させる機能を備えている
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項3】
空調機器を監視する監視計算機を有する異常検知システムであって、
前記監視計算機は、
室外機がサーモオン、且つ室内機がサーモオフになる条件下で、室内膨張弁の指示開度が所定値以下で、且つ前記室内機の入口側空気温度と出口側空気温度の温度差が所定値以上となる状態を開き異常状態とし、この開き異常状態の開き異常発生回数を計数する機能と、
前記開き異常発生回数と所定の開き異常発生回数閾値と比較し、前記開き異常発生回数が前記開き異常発生回数閾値を超えると前記室内膨張弁に開き異常が発生したと判断する機能を備えている
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項4】
空調機器を監視する監視計算機を有する異常検知システムであって、
前記監視計算機は、
室外機がサーモオン、且つ室内機がサーモオンになる条件下で、室内膨張弁の指示開度が所定値以上で、且つ前記室内機の入口側空気温度と出口側空気温度の温度差が所定値以下となる状態を閉じ異常状態とし、この閉じ異常状態の閉じ異常発生回数を計数する機能と、
前記閉じ異常発生回数と所定の閉じ異常発生回数閾値と比較し、前記閉じ異常発生回数が前記閉じ異常発生回数閾値を超えると前記室内膨張弁に閉じ異常が発生したと判断する機能を備えている
ことを特徴とする異常検知システム。
【請求項5】
空調機器を監視する監視計算機を有する異常検知システムの異常検知方法であって、
前記監視計算機は、
室外機がサーモオン、且つ室内機がサーモオフになる条件下で、室内膨張弁の指示開度が所定値以下で、且つ前記室内機の入口側空気温度と出口側空気温度の温度差が所定値以上となる状態を開き異常状態とし、この開き異常状態の発生に基づいて前記室内膨張弁に開き異常が発生したと判断する
ことを特徴とする異常検知システムの異常検知方法。
【請求項6】
請求項5に記載の異常検知システムの異常検知方法であって、
前記監視計算機は、
所定の期間の間で、前記室内機がサーモオンするサーモオン回数を計数すると共に、及び前記開き異常が発生する開き異常発生回数を計数し、
前記サーモオン回数と前記開き異常発生回数の開き異常割合値を求め、
前記開き異常割合値と所定の開き異常割合閾値を比較し、前記開き異常割合値が前記開き異常割合閾値を超えると、開き異常の発生を確定させる
ことを特徴とする異常検知システムの異常検知方法。
【請求項7】
空調機器を監視する監視計算機を有する異常検知システムの異常検知方法であって、
前記監視計算機は、
室外機がサーモオン、且つ室内機がサーモオフになる条件下で、室内膨張弁の指示開度が所定値以下で、且つ前記室内機の入口側空気温度と出口側空気温度の温度差が所定値以上となる状態を開き異常状態とし、この前記開き異常状態の開き異常発生回数を計数し、
前記開き異常発生回数と所定の開き異常発生回数閾値と比較し、前記開き異常発生回数が前記開き異常発生回数閾値を超えると前記室内膨張弁に開き異常が発生したと判断する
ことを特徴とする異常検知システムの異常検知方法。
【請求項8】
空調機器を監視する監視計算機を有する異常検知システムの異常検知方法であって、
前記監視計算機は、
室外機がサーモオン、且つ室内機がサーモオンになる条件下で、室内膨張弁の指示開度が所定値以上で、且つ前記室内機の入口側空気温度と出口側空気温度の温度差が所定値以下となる状態を閉じ異常状態とし、この閉じ異常状態の閉じ異常発生回数を計数し、
前記閉じ異常発生回数と所定の閉じ異常発生回数閾値と比較し、前記閉じ異常発生回数が前記閉じ異常発生回数閾値を超えると前記室内膨張弁に閉じ異常が発生したと判断する
ことを特徴とする異常検知システムの異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異常検知システム、及び異常検知方法に係り、特に空調システムの異常を検知する異常検知システム、及びその異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調システムの異常や故障(以下、代表して異常と表記する)や、その異常の発生の兆候を検知(異常検知)することは、空調システムの点検作業やメンテナンスのコスト低減のために極めて重要である。また、最近では顧客へ空調設備を提供するだけではなく、空調設備の運用や保守を一括して請け負うサービスが、事業化される動きがある。
【0003】
そして、業務用空調システムや冷凍冷蔵機器においては、2015年4月から環境省より「フロン排出抑制法」が施行され、企業が保有するフロンガスを使用する機器に対して“簡易点検”と“定期点検”が義務化されている。このため、空調システムの異常を、早期に正確に把握することがサービス事業を運営する上で重要となってきている。
【0004】
更に、冷媒が循環する配管で連結された、室外機(一台、或いは複数台)と室内機(複数台)で構成される空調システムの異常を検知し、その異常原因を特定して何れの機器に異常を発生しているか特定することが、保守・修理の観点から重要である。このような異常検知を活用することにより、以下に示す環境価値、経済価値、社会価値を提供することができる。
【0005】
つまり、環境価値においては、冷媒(フロン)漏洩の早期検知による漏洩量削減で温暖化防止に寄与できる。また、経済価値においては、空調設備の突発故障による顧客の事業損失を抑制(生産停止・歩留まり・食品廃棄損等)し、また保守メンテナンスを時間基準から状態基準に変更することで、ライフサイクルコストの削減に寄与できる。更に、社会価値においては、医療現場等のミッションクリティカルな空調設備の安定稼動、及び保守人材不足(保守作業員の作業効率向上)の解消に寄与できる。
【0006】
ところで、多数の室外機、室内機で構成されるVRF(Variable refrigerant flow)空調システムにおいて、室内膨張弁の異常発生率は、他の異常原因と比較して高いことが経験的に知られている。そして、早期に室内膨張弁の異常検知ができない場合、消費電力の消耗や圧縮機の破損等が問題となる。そこで、どの室内機の膨張弁が異常かを早期かつ高精度に検知する方式を開発する必要がある。
【0007】
室内膨張弁の異常検知に関して、例えば特開2005-61767公報(特許文献1)には、複数の室内機を有する多室形空気調和機において、流量調整用の室内膨張弁に対して、制御装置から全閉を指示しているにもかかわらず、実際には開度パルスずれのため微開となっているために、異常判定してしまうという誤動作を防止する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-61767公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載の室内膨張弁の異常検知システムは、複数の室内機を有する多室形空気調和機において、流量調整用の室内膨張弁に対して全閉を指示しているにもかかわらず、実際には開度パルスずれによって微開となっているために、異常判定してしまうという誤動作を防止するシステムである。
【0010】
そして、空気温度と冷媒温度を検出する2個の温度センサの温度情報を用い、室内機のサーモオフ直後の温度と、その後の所定時間後の温度との温度差をもとに、室内膨張弁の異常発生数を計数し、更に、圧縮機のサーモオンからサーモオフへの切替回数を計数し、双方の計数値の割合を算出することで異常を判定している。
【0011】
この特許文献1の異常検知システムでは、空気温度と冷媒温度を検出する2個の温度センサの温度情報に基づく温度差で異常を検出するだけで、室内膨張弁の動作に関する情報がなく、正確に室内膨張弁の異常を検出することができないという課題がある。
【0012】
本発明の目的は、複数の室外機、室内機で構成されるVRF空調システムにおいて、どの室内機の室内膨張弁が異常かを早期かつ高精度に検知することができる異常検知システム、及び異常検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の特徴は、
空調機器を監視する監視計算機を有する異常検知システムであって、
監視計算機が、
室外機がサーモオン、且つ室内機がサーモオフになる条件下で、室内膨張弁の指示開度が所定値以下で、且つ室内機の入口側空気温度、と出口側空気温度、の温度差が所定値以上となる状態を開き異常状態とし、この開き異常状態の発生に基づいて室内膨張弁に開き異常が発生したと判断する機能を備えている、
ところにある。
【0014】
また、本発明の第2の特徴は、
空調機器を監視する監視計算機を有する異常検知システムであって、
監視計算機が、
室外機がサーモオン、且つ室内機がサーモオフになる条件下で、室内膨張弁の指示開度が所定値以下で、且つ室内機の入口側空気温度、と出口側空気温度、の温度差が所定値以上となる状態を開き異常状態とし、この開き異常状態の発生回数(以下、開き異常発生回数)を計数する機能と、
開き異常発生回数と所定の開き異常発生回数閾値と比較し、開き異常発生回数が開き異常発生回数閾値を超えると室内膨張弁に開き異常が発生したと判断する機能
を備えている
ところにある。
【0015】
更に本発明の第3の特徴は、
空調機器を監視する監視計算機を有する異常検知システムであって、
監視計算機は、
室外機がサーモオン、且つ室内機がサーモオンになる条件下で、室内膨張弁の指示開度が所定値以上で、且つ室内機の入口側空気温度、と出口側空気温度、の温度差が所定値以下となる状態を閉じ異常状態とし、この閉じ異常状態の発生回数(以下、閉じ異常発生回数)を計数する機能と、
閉じ異常発生回数と所定の閉じ異常発生回数閾値と比較し、閉じ異常発生回数が閉じ異常発生回数閾値を超えると室内膨張弁に閉じ異常が発生したと判断する機能
を備えている
ところにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、室内膨張弁の異常に至る過程で起こる冷媒量変化に基づく室内機の入口側空気温度、と出口側空気温度、との温度差と、室内膨張弁の指示開度の2つから室内膨張弁の異常を検知するため、早期に確実に室内膨張弁の異常を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用される空調システムの異常検知システムの基本構成を示す構成図である。
図2】本発明の実施形態になる空調システムの異常検知システムの処理ブロックを示す制御ブロック図である。
図3】複数の室内機を有する空調システムの構成を説明する説明図である。
図4】室内膨張弁の開き異常を判断する第1の処理を説明するフローチャート図である。
図5】室内膨張弁の開き異常を判断する第2の処理を説明するフローチャート図である。
図6】室内膨張弁の閉じ異常を判断する処理を説明するフローチャート図である。
図7A図4の異常検知システムによる正常時の解析結果例を説明する説明図である。
図7B図4の異常検知システムによる異常時の解析結果例を説明する説明図である。
図8A図6の異常検知システムによる正常時の解析結果例を説明する説明図である。
図8B図6の異常検知システムによる異常時の解析結果例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【実施例0019】
図1は、空調システムにおける異常検知システムの基本構成を示している。空調システムにおける異常検知システムは、空調を行う複数の機器とセンサとを有する空調設備システム100と、空調設備システム100の動作を監視する監視計算機200とで構成されている。
【0020】
空調設備システム100における空調システムは、基本的には室外機と室内機とで構成されており、これらは冷媒配管によって連結されている。室外機は、圧縮機、熱交換機、膨張弁、送風ファン等の機器を備え、また室内機は、熱交換機、膨張弁、送風ファン等の機器を備えている。更に、夫々の機器には、機器の動作状態量(例えば、温度、圧力、電流等)を検出するセンサが設けられている。
【0021】
空調システムは、1台以上の室外機と1台以上の室内機とから構成されているので、夫々の室外機、室内機を構成する複数の機器は、機器種類として把握される。ここで機器種類とは、或る機能を実行する機器の種類である。例えば、機器種類として圧縮機に着目すると、異なる室外機の圧縮機は、圧縮機としてみると「同種機器」であり、同様に、機器種類として膨張弁、送風ファンに着目すると、異なる室外機の膨張弁、送風ファンは、夫々が「同種機器」となる。もちろん室内機についても同様である。
【0022】
動作状態量はセンサから直接的に計測できるセンサ信号や、センサで計測できず、センサ信号に基づいて演算によって求める測定値があるが、基本的には、以下では両方を含めて測定値として説明を行う。尚、センサ信号、或いは測定値として、特別に取り扱う場合は、その旨の記載を行う。
【0023】
また、監視計算機200は、入出力機能を備えるインターフェースと、演算機能を備えるプロセッサ(演算手段)を備えており、プロセッサは、制御プログラムにしたがって以下に述べる本実施形態に係る演算を実行することができる。また、プロセッサの一例としては、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)が考えられるが、所定の演算処理を実行する主体であれば他の半導体デバイスを使用することも可能である。
【0024】
監視計算機200は、空調設備システムに一体的に結合されていても良いし、有線/無線によって接続されたクラウドシステムであっても良い。また、制御プログラムは、制御機能を備えているので、制御機能ブロックとして捉えることができる。
【0025】
図2は、空調システムにおける異常検知システムの構成を示している。空調設備システム100は、複数の顧客サイトに設置され、ネットワークを介してセンサ情報等が監視計算機200に転送される。顧客サイトは、建築物(ビル等の建物)に対応し、例えば、建築物に備えられたVRF空調システム等が対応する。
【0026】
空調設備システム100は、1つ、又は複数の空調システム101と、空調システム101に設置されている複数の機器のセンサ信号102を入力し、監視計算機200へ転送するセンサ信号入力部103から構成されている。空調システム101には、1つ、又は複数の種々の機器にセンサが設置されている。尚、複数の機器のセンサ信号102は、例えば、温度、電流、圧力等に関するものである。
【0027】
監視計算機200は、空調システム101の室内膨張弁の動作異常(開き異常、閉じ異常)を検知し、その異常が生じた室内機を特定する。これらは、プロセッサの制御プログラムで実行される機能である。これらの制御プログラムで実行される処理フローについては、図4図6で説明することになる。
【0028】
監視計算機200は、空調設備システム100から転送された複数の機器のセンサ信号102を、センサ信号抽出部211に入力し、このセンサ信号抽出部211で抽出されたセンサ信号を用いて、室内膨張弁異常(開き異常、閉じ異常)を検知し、その異常室内機を特定するものである。
【0029】
次に、監視計算機200の制御機能について説明する。先ず、監視計算機200の正常状態における「学習モード」について説明する。
【0030】
監視計算機200においては、空調設備システム100から転送された複数の機器のセンサ信号102が、センサ信号抽出部211によって、例えば、室外機サーモオンなど、任意のセンサ信号が抽出される。これらの抽出されたセンサ信号値は、後段の異常条件判断部212に入力される。異常条件判断部212では、各室内膨張弁の異常状態(開き異常、閉じ異常)の判定条件から異常状態を判断する。
【0031】
本実施形態では、センサ信号として、
(1)室外機のサーモオン/サーモオフを判断する室外機サーモオン/サーモオフ情報、
(2)室内機のサーモオン/サーモオフを判断する室内機サーモオン/サーモオフ情報、
(3)室内機の入口側空気の温度を検知する入口側温度センサからの入口側空気温度情報、
(4)室内機の出口側空気の温度を検知する出口側温度センサからの出口側空気温度情報、
(5)室内膨張弁への指示開度(目標開度)である指示開度情報(本実施形態では後述するように、室内膨張弁に与えられる指示開度(目標開度)も利用して異常検知を行うので、指示開度情報は便宜的にセンサ信号として取り扱う)、
を入力としている。
【0032】
ここで、室内膨張弁の指示開度(目標開度)は、種々のパラメータから監視計算機200のプロセッサ(演算手段)で求められるものであり、求められた指示開度(目標開度)は、室内膨張弁の駆動信号として室内膨張弁に与えられる。このため指示開度(目標開度)は、室内膨張弁が本来の要求される取り得るべき弁開度と見做せるものである。
【0033】
したがって、本実施形態では、室内膨張弁の異常を検知する場合に、敢えて特定の指示開度(目標開度)の状態で検知するようにしている。以下の実施形態の説明で明らかになるが、開き異常を検知する場合は、冷媒の流量が減少する指示開度の時であり、閉じ異常を検知する場合は、冷媒の流量が増大する指示開度の時である。
【0034】
異常条件判断部212で判断された異常状態は、後段の異常頻度算出部213に入力される。異常頻度算出部213では、任意期間における各判定条件を満たす異常状態判定回数を計数し、閾値算出部214に入力する。判定条件は、後述のフローチャートで説明する。
【0035】
閾値算出部214は、「学習モード」での異常頻度(回数、或いは割合)に応じた閾値(SL)を算出する。
【0036】
閾値算出部214で算出された閾値(SL)と、異常頻度算出部213で求められた異常頻度(回数あるいは割合)は、異常検知部215で比較される。そして、その比較結果は異常原因判断部216に送られ、「室内膨張弁の異常」、及び「異常室内機」が特定される。ここで、異常状態の判定は、個別の室内機毎に実行されるので、異常室内機を特定することができる。
【0037】
次に、監視計算機200の「監視モード」について説明する。「監視モード」は、「学習モード」が終了した後に実行される。監視計算機200の「監視モード」では、空調設備システム100から転送された複数の機器のセンサ信号102が、センサ信号抽出部211によって、例えば、室外機サーモオンなどのセンサ信号が抽出される。これらの抽出されたセンサ信号値は、後段の異常条件判断部212に入力される。異常条件判断部212では、各室内膨張弁の異常状態(開き異常、閉じ異常)の判定条件から異常状態を判断する。
【0038】
本実施形態の「監視モード」では、上述したセンサ信号と同じセンサ信号を使用しており、
(1)室外機のサーモオン/サーモオフを判断する室外機サーモオン/サーモオフ情報、
(2)室内機のサーモオン/サーモオフを判断する室内機サーモオン/サーモオフ情報、
(3)室内機の入口側空気の温度を検知する入口側温度センサからの入口側空気温度情報、
(4)室内機の出口側空気の温度を検知する出口側温度センサからの出口側空気温度情報、、
(5)室内膨張弁への指示開度(目標開度)である指示開度情報(本実施形態では後述するように、室内膨張弁に与えられる指示開度(目標開度)も利用して異常検知を行うので、指示開度情報は便宜的にセンサ信号として取り扱う)、
を入力としている。
【0039】
ここでも、室内膨張弁の指示開度(目標開度)は、種々のパラメータから監視計算機200のプロセッサ(演算手段)で求められるものであり、求められた指示開度(目標開度)は、室内膨張弁の駆動信号として室内膨張弁に与えられる。このため指示開度(目標開度)は、室内膨張弁が本来の要求される取り得るべき弁開度と見做せるものである。
【0040】
したがって、本実施形態では、室内膨張弁の異常を検知する場合に、敢えて特定の指示開度(目標開度)の状態で検知するようにしている。以下の実施形態の説明で明らかになるが、開き異常を検知する場合は、冷媒の流量が減少する指示開度の時であり、閉じ異常を検知する場合は、冷媒の流量が増大する指示開度の時である。
【0041】
異常条件判断部212で判断された異常状態は、後段の異常頻度算出部213に入力される。異常頻度算出部213では、任意期間における各判定条件を満たす異常状態判定回数を計数し、後段の異常検知部215に入力する。判定条件は、後述のフローチャートで説明する。
【0042】
異常検知部215は、「監視モード」において、異常頻度算出部213で算出された異常頻度(回数あるいは割合)と、閾値算出部214によって「学習モード」の異常頻度(回数あるいは割合)から求めた閾値(SL) とを比較して異常を判定する。
【0043】
そして、その比較結果は異常原因判断部216に送られ、「室内膨張弁の異常」、及び「異常室内機」が特定される。ここで、異常状態の判定は、個別の室内機毎に実行されるので、異常室内機を特定することができる。
【0044】
次に、複数の空調機器を有する空調システムの構成を説明する。図3に示す空調システム101は、例えば、複数の室外機110、120と、複数の室内機140、150、160、170から構成される。これら室外機および室内機の数は、限定されることはなく、その数は増やすことも減らすことも可能である。
【0045】
また、室外機110、120は、同じ種類の同種機器111、121、及び同種機器112、122を有する。例えば、同種機器111~121は熱交換器であり、同種機器112~122は圧縮機であり、これら同じ種類の同種機器はいくつあっても良いものである。
【0046】
同様に、室内機140、150、160、170も、同種機器141、151、161、171、同種機器142、152、162、172、及び同種機器143、153、163、173、を有する。例えば、同種機器141~171は室内膨張弁であり、同種機器142~172は熱交換器であり、同種機器143~173は送風ファンであり、これら同じ種類の同種機器はいくつあっても良いものである。
【0047】
更に、室内機140、150、160、170は、入口側空気温度(Ti)144、154、164、174、及び出口側空気温度(To)145、155、165、175を測定する温度センサを備えている。
【0048】
これら入口側空気温度(Ti)144~174、及び出口側空気温度(To)145~175は、冷房モード、及び暖房モードで温度が逆転するものである。冷房モードでは、入口側空気温度(Ti)が高く、出口側空気温度(To)が低くなる。一方、暖房モードでは、入口側空気温度(Ti)が低く、出口側空気温度(To)が高くなる。
【0049】
室外機110~120、及び室内機140~170で構成される空調システム101は、冷媒が循環する配管201で連結されている。したがって、室外機110~120に設けてあるセンサは、室内機140~170の稼働状態(サーモオン/サーモオフF)の影響を受ける。
【0050】
ここで、室内膨張弁の異常状態(開き異常、閉じ異常)について説明する。先ず室内膨張弁の開き異常とは、室内膨張弁が開き過ぎたままで固定状態となり,冷媒が多く流れて入口/出口の空気温度差が大きい状態である。そのため、プロセッサは、室内膨張弁を閉めるように指令するが、開き過ぎたままの固定状態であることから、冷媒が十分にガス化せず、液体のまま圧縮機に流入する。このため、液圧縮によって圧縮機の破損といった致命的な故障が発生することがあり、開き異常を早期に確実に検出することが重要である。
【0051】
また、室内膨張弁の閉じ異常とは、室内膨張弁が閉まったままで固定状態となり、冷媒が流れずに入口/出口の空気温度差がほぼ「0」、あるいは小さい状態である。そのため、プロセッサは、室内膨張弁を開くように指令するが、閉まったままの固定状態であることから、冷媒が十分に流れることができない。このため、冷房/暖房ともに能力不足となり、圧縮の回転数を高めるという指令がなされるため電力使用量が多くなり、閉じ異常を早期に確実に検出することが重要である。
【0052】
次に、監視計算機200のプロセッサによって実行される、本実施形態の処理フローについて図4図6で説明する。図4、及び図5は、開き異常を検知する場合の処理フローであり、図6は、閉じ異常を検出する場合の処理フローである。
【0053】
図4は、室内膨張弁の開き異常を検知する第1の異常検知システムを示すフローチャート図を示している。以下、処理ステップ毎に説明する。
【0054】
≪ステップS401≫
ステップS401においては、最初に空調システム101から転送された複数の機器のセンサ信号102が、センサ信号入力部103に取り込まれる。また、この処理フローは、所定時間毎のインターバルで実行されるので、センサ信号102はインターバルに対応して、例えば1分間隔、5分間隔、10分間隔、1時間間隔、1日間隔といった周期で得られる。
【0055】
センサ信号は、少なくとも先に説明した通り、(1)室外機サーモオン/サーモオフ情報、(2)室内機サーモオン/サーモオフ情報、(3)室内機の入口側温度情報、(4)室内機の出口側空気温度情報、(5)室内膨張弁への指示開度指示開度情報である。尚、温度情報として、室内機の熱交換器における熱交換される前と、熱交換された後の冷媒の温度を使用しても良い。センサ信号102が入力されると、ステップS402の処理を実行する。
【0056】
≪ステップS402≫
ステップS402においては、複数の室内機毎(N)に、ループ処理1を開始し、室内機の台数分が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。これによって、全ての室内機における異常検知作業を順番に実行でき、また、異常な室内機を特定することができる。ループ処理1が開始されると、ステップS403の処理を実行する。
【0057】
≪ステップS403≫
ステップS403においては、開き異常検知回数(M)、及び室内機サーモオン回数(X)を初期化(0値)する。この処理が実行されるとステップS404の処理を実行する。
【0058】
≪ステップS404≫
ステップS404においては、「学習モード」、或いは「監視モード」の任意の期間において、ループ処理2を開始し、任意の期間が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。任意の期間は、例えば1日、5日、1週間等である。また、ループ処理2が開始されると、ステップS405の処理を実行する。
【0059】
≪ステップS405≫
ステップS405においては、室外機のサーモオン/サーモオフ情報によって、室外機サーモオンの状態にあるかどうかが判断される。室外機サーモオンの状態であればステップS406の処理を実行する。尚、室外機サーモオフに該当する場合は、ステップS410の処理を実行する。ここで、室外機サーモオンとは圧縮機が動作している状態であり、室外機サーモオフは圧縮機が停止している状態である。
【0060】
≪ステップS406≫
ステップS406においては、室内機のサーモオン/サーモオフ情報によって、室内機サーモオフの状態にあるかどうかが判断される。室内機サーモオフの状態であればステップS408の処理を実行する。尚、室内機サーモオンに該当する場合は、ステップS407の処理を実行する。ここで、室内機サーモオンとは、送風ファンが回転し、室内膨張弁が開き動作している状態である。また、室内機サーモオフとは、室内膨張弁が閉じ側で停止している状態で、送風ファンが回転している送風モードである。この状態は、後述するステップS406で、室内膨張弁の開き異常を検出するための判定条件の基礎となる。
【0061】
≪ステップS407≫
ステップS407においては、室内機サーモオンのサーモオン回数(X)をカウントする。この処理が実行されるとステップS410の処理を実行する。
【0062】
≪ステップS408≫
ステップS408においては、異常条件判断部212によって、室内膨張弁の開き異常の判定条件を満たすかどうかの判断を実行する。
【0063】
室内膨張弁の開き異常は、
(1)ステップS406で判定されている室内機サーモオフにおける室内膨張弁の指示開度(目標開度)が「i°以下」(例えば。≦3°)で、
(2)且つ入口側温度センサによる入口側空気温度、(Ti)と、出口側温度センサによる出口側空気温度(To)の温度差が「j℃以上」(例えば、≧3℃)か、
といった判定条件(アンド条件である)を満たすかどうかで判断される。
ここで、室内膨張弁への指示開度(目標開度)は、本処理フローが実行される場合に利用されるものであり、ステップS406での室内機サーモオフの状態における指示開度(目標開度)である。
【0064】
したがって、本来ならば室内機サーモオフなので室内膨張弁が閉じていなければならないのに、入口側空気温度と出口側空気温度の温度差が大きいということは、冷媒が流れていることを示しており、これによって、室内膨張弁の開き異常が発生していることが検知できる。開き異常が検知されると、ステップS409の処理を実行する。尚、室内膨張弁の開き異常の判定条件を満たさない場合(正常な場合)は、ステップS410の処理を実行する。
【0065】
≪ステップS409≫
ステップS409においては、異常頻度算出部213によって、ステップS408の室内膨張弁の開き異常の判定条件を満たす開き異常発生回数(M)を計数する。これは、ループ処理2で規定された所定の期間内における、開き異常の発生回数である。この処理が実行されるとステップS410の処理を実行する。
【0066】
≪ステップS410≫
ステップS410においては、ループ処理2が終了される。この処理が実行されるとステップS411の処理を実行する。
【0067】
≪ステップS411≫
ステップS411においては、異常頻度算出部213によって、室内機サーモオンのサーモオン回数(X)、及び開き異常の判定条件を満たす開き異常発生回数(M)を確定し、プロセッサの所定のRAM領域に格納する。この処理が実行されるとステップS412の処理を実行する。
【0068】
≪ステップS412≫
ステップS412においては、異常頻度算出部213によって、室内機サーモオンのサーモオン回数(X)に対する開き異常の判定条件を満たす開き異常発生回数回数(M)の割合、すなわち、開き異常頻度(M/X)を算出する。
【0069】
「学習モード」の場合、この開き異常頻度(M/X)は、閾値算出部214に入力される。閾値算出部214は、「学習モード」での開き異常頻度(学習時M/X)に応じた開き異常割合閾値(SL)を算出する。「監視モード」の場合、この異常頻度(M/X)は異常検知部215に入力される。
【0070】
ここで、VRF空調システムにおいては、複数の室内機による空調機の運転状態は、複雑かつ多様である。このため、複数の室内機のオン/オフ切り替えによる、立ち上がり/立ち下がりのノイズデータが高頻度に発生する。このノイズデータによる悪影響を、異常頻度(M/X)を求めることでノイズデータの悪影響を低減でき、高精度に室内膨張弁の異常検知が可能となるといった作用、効果を奏することができる。この処理が実行されるとステップS413の処理を実行する。
【0071】
≪ステップS413≫
ステップS413においては、異常頻度算出部213で算出された「監視モード」の開き異常頻度(M/X)と、閾値算出部214によって「学習モード」の開き異常頻度(学習時M/X)から求めた開き異常割合閾値(SL)とを比較して、開き異常が発生したかどうかを判定する。
【0072】
「学習モード」の開き異常頻度(学習時M/X)に対して、「監視モード」の開き異常頻度(M/X)が小さい場合はステップS414の処理を実行する。一方、「学習モード」の開き異常頻度(学習時M/X)に対して、「監視モード」の開き異常頻度(M/X)が大きい場合はステップS415の処理を実行する。
【0073】
≪ステップS414≫
ステップS414においては、異常原因判断部216によって、正常と判断される。この処理が実行されるとステップS416の処理を実行する。
【0074】
≪ステップS415≫
ステップS415においては、異常原因判断部216によって、室内膨張弁の開き異常と判断し、開き異常が発生している異常室内機を特定する。この処理が実行されるとステップS416の処理を実行する。
【0075】
≪ステップS416≫
ステップS416においては、任意の期間のループ処理1が終了される。任意の期間とは、例えば1日、5日、1週間、1カ月、6カ月、1年、1年以上などである。この処理が実行されると室内膨張弁開き異常を判断する異常検知システムフローが終了する。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、室内膨張弁の指示開度と入口側空気温度、と出口側空気温度、との温度差によって開き異常を判定するので、早期に正確に室内膨張弁に開き異常が発生していることを検知することができる。
【実施例0077】
次に、室内膨張弁の開き異常を検知する第2の異常検知システムを説明する。図5は、第2の実施形態のフローチャート図を示している。以下、処理ステップ毎に説明する。
【0078】
≪ステップS501≫
ステップS501においては、最初に空調システム101から転送された複数の機器のセンサ信号102が、センサ信号入力部103に取り込まれる。また、この処理フローは、所定時間毎のインターバルで実行されるので、センサ信号102はインターバルに対応して、例えば1分間隔、5分間隔、10分間隔、1時間間隔、1日間隔といった周期で得られる。
【0079】
センサ信号は、少なくとも先に説明した通り、(1)室外機サーモオン/サーモオフ情報、(2)室内機サーモオン/サーモオフ情報、(3)室内機の入口側温度情報、(4)室内機の出口側空気温度情報、(5)室内膨張弁への指示開度指示開度情報である。尚、温度情報として、室内機の熱交換器における熱交換される前と、熱交換された後の冷媒の温度を使用しても良い。センサ信号102が入力されると、ステップS502の処理を実行する。
【0080】
≪ステップS502≫
ステップS502においては、複数の室内機毎(N)に、ループ処理1を開始し、室内機の台数分が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。これによって、全ての室内機における異常検知作業を順番に実行でき、また、異常な室内機を特定することができる。ループ処理1が開始されると、ステップS503の処理を実行する。
【0081】
≪ステップS503≫
ステップS503においては、「学習モード」、或いは「監視モード」の任意の期間において、ループ処理2を開始し、任意の期間が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。任意の期間は、例えば1日、5日、1週間等である。また、ループ処理2が開始されると、ステップS504の処理を実行する。
【0082】
≪ステップS504≫
ステップS504においては、室外機のサーモオン/サーモオフ情報によって、室外機サーモオンの状態にあるかどうかが判断される。室外機サーモオンの状態であればステップS505の処理を実行する。尚、室外機サーモオフに該当する場合は、ステップS509の処理を実行する。ここで、室外機サーモオンとは圧縮機が動作している状態であり、室外機サーモオフは圧縮機が停止している状態である。
【0083】
≪ステップS505≫
ステップS505においては、室内機のサーモオン/サーモオフ情報によって、室内機サーモオフの状態にあるかどうかが判断される。室内機サーモオフの状態であればステップS506の処理を実行する。尚、室内機サーモオンに該当する場合は、ステップS509の処理を実行する。ここで、室内機サーモオンとは、送風ファンが回転し、室内膨張弁が開き動作している状態である。また、室内機サーモオフとは、室内膨張弁が閉じ側で停止している状態で、送風ファンが回転している送風モードである。室内機サーモオフの状態は、後述するステップS506で、室内膨張弁の開き異常を検出するための判定条件の基礎となる。
【0084】
≪ステップS506≫
ステップS506においては、異常条件判断部212によって、室内膨張弁の開き異常の判定条件を満たすかどうかの判断を実行する。
【0085】
室内膨張弁の開き異常は、
(1)ステップS505で判定されている室内機サーモオフにおける室内膨張弁の指示開度(目標開度)が「i°以下」(例えば。≦3°)で、
(2)且つ入口側温度センサによる入口側空気温度、(Ti)と、出口側温度センサによる出口側空気温度(To)の温度差が「j℃以上」(例えば、≧3℃)か、
といった判定条件(アンド条件である)を満たすかどうかで判断される。
ここで、室内膨張弁への指示開度(目標開度)は、本処理フローが実行される場合に利用されるものであり、ステップS505での室内機サーモオフの状態における指示開度(目標開度)である。
【0086】
したがって、本来ならば室内機サーモオフなので室内膨張弁が閉じていなければならないのに、入口側空気温度と出口側空気温度の温度差が大きいということは、冷媒が流れていることを示しており、これによって、室内膨張弁の開き異常が発生していることが検知できる。開き異常が検知されると、ステップS508の処理を実行する。尚、室内膨張弁の開き異常の判定条件を満たさない場合(正常な場合)は、ステップS507の処理を実行する。
【0087】
≪ステップS507≫
ステップS507においては、開き異常発生回数(C)を初期化(0値)する。この処理が実行されるとステップS509の処理を実行する。
【0088】
≪ステップS508≫
ステップS508においては、異常頻度算出部213によって、ステップS506の室内膨張弁の開き異常の判定条件を満たす連続した回数、すなわち開き異常発生回数(C)を計数する。この処理が実行されるとステップS509の処理を実行する。
【0089】
≪ステップS509≫
ステップS509においては、ループ処理2が終了される。この処理が実行されるとステップS510の処理を実行する。
【0090】
≪ステップS510≫
ステップS510においては、異常頻度算出部213によって、開き異常連続回数(C)を確定し、プロセッサの所定のRAM領域に格納する。
【0091】
「学習モード」の場合、この開き開き異常発生回数(C)は閾値算出部214に入力される。閾値算出部214は、「学習モード」での開き開き異常発生回数(学習時C)に応じた開き異常発生回数閾値(SL)を算出する。また、「監視モード」の場合、この開き異常発生回数(C)は異常検知部215に入力される。この処理が実行されるとステップS511の処理を実行する。
【0092】
≪ステップS511≫
ステップS511においては、異常頻度算出部213で算出された「監視モード」の開き異常発生回数(C)と、閾値算出部214によって「学習モード」の開き異常発生回数(学習時C)から求めた開き異常発生回数閾値(SL) とを比較して開き異常が発生したかどうかを判定する。
【0093】
「学習モード」の開き異常発生回数(学習時C)に対して、「監視モード」の開き異常発生回数(C)が小さい場合はステップS512の処理を実行し、「学習モード」の開き異常発生回数(学習時C)に対して、「監視モード」の開き異常回数回数(C)が大きい場合はステップS513の処理を実行する。
≪ステップS512≫
ステップS512においては、異常原因判断部216によって、正常と判断される。この処理が実行されるとステップS514の処理を実行する。
≪ステップS513≫
ステップS513においては、異常原因判断部216によって、室内膨張弁開き異常と判断し、その異常室内機を特定する。この処理が実行されるとステップS514の処理を実行する。
≪ステップS514≫
ステップS514においては、任意の期間のループ処理1が終了される。任意の期間とは、例えば1日、5日、1週間、1カ月、6カ月、1年、1年以上などである。この処理が実行されると室内膨張弁開き異常を判断する異常検知システムフローが終了する。
【0094】
以上説明した本実施形態によれば、室内膨張弁の指示開度と入口側空気温度、と出口側空気温度、との温度差によって開き異常を判定するので、早期に正確に室内膨張弁に開き異常が発生していることを検知することができる。
【0095】
尚、図5におけるステップS505の判断処理においては、現時点の室内機の状態が、室内機サーモオフの状態にあるとステップS506に移行している。これに対して、意図的、或いは強制的に室内機サーモオフの状態に設定することも可能である。
【0096】
室温が設定値に達せず室内機サーモオンの状態で、本処理フローが起動された時に、ステップS505を設定処理として、室内機サーモオフ(送風モード)とする設定を行う。これによって、プロセッサからは、室内機サーモオフに対応した室内膨張弁の指示開度(目標開度)が、室内膨張弁に駆動信号として送られる。この指示開度情報を読み取って、上述のステップS506以降の処理を実行することができ、早期に正確に室内膨張弁に開き異常が発生していることを検知することができる。
【実施例0097】
次に、室内膨張弁の閉じ異常を検知する第3の異常検知システムを説明する。図6は、第3の実施形態のフローチャート図を示している。以下、処理ステップ毎に説明する。
【0098】
≪ステップS601≫
ステップS601においては、最初に空調システム101から転送された複数の機器のセンサ信号102が、センサ信号入力部103に取り込まれる。また、この処理フローは、所定時間毎のインターバルで実行されるので、センサ信号102はインターバルに対応して、例えば1分間隔、5分間隔、10分間隔、1時間間隔、1日間隔といった周期で得られる。
【0099】
センサ信号は、少なくとも先に説明した通り、(1)室外機サーモオン/サーモオフ情報、(2)室内機サーモオン/サーモオフ情報、(3)室内機の入口側温度情報、(4)室内機の出口側空気温度情報、、(5)室内膨張弁への指示開度指示開度情報である。尚、温度情報として、室内機の熱交換器における熱交換される前と、熱交換された後の冷媒の温度を使用しても良い。センサ信号102が入力されると、ステップS602の処理を実行する。
【0100】
≪ステップS602≫
ステップS602においては、複数の室内機毎(N)に、ループ処理1を開始し、室内機の台数分が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。これによって、全ての室内機における異常検知作業を順番に実行でき、また、異常な室内機を特定することができる。ループ処理1が開始されると、ステップS603の処理を実行する。
【0101】
≪ステップS603≫
ステップS603においては、「学習モード」、或いは「監視モード」の任意の期間において、ループ処理2を開始し、任意の期間が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。任意の期間は、例えば1日、5日、1週間等である。また、ループ処理2が開始されると、ステップS604の処理を実行する。
【0102】
≪ステップS604≫
ステップS604においては、室外機のサーモオン/サーモオフ情報によって、室外機サーモオンの状態にあるかどうかが判断される。室外機サーモオンの状態であればステップS605の処理を実行する。尚、室外機サーモオフに該当する場合は、ステップS609の処理を実行する。ここで、室外機サーモオンとは圧縮機が動作している状態であり、室外機サーモオフは圧縮機が停止している状態である。
【0103】
≪ステップS605≫
ステップS605においては、室内機のサーモオン/サーモオフ情報によって、室内機サーモオンの状態にあるかどうかが判断される。室内機サーモオンの状態であればステップS606の処理を実行する。尚、室内機サーモオフに該当する場合は、ステップS609の処理を実行する。ここで、室内機サーモオンとは、送風ファンが回転し、室内膨張弁が開き動作している状態である。また、室内機サーモオフとは、室内膨張弁が閉じ側で停止している状態で、送風ファンが回転している送風モードである。室内機サーモオンの状態は、後述するステップS606で、室内膨張弁の閉じ異常を検出するための判定条件の基礎となる。
【0104】
≪ステップS606≫
ステップS606においては、異常条件判断部212によって、室内膨張弁の閉じ異常の判定条件を満たすかどうかの判断を実行する。
【0105】
室内膨張弁の閉じ異常は、
(1)ステップS605で判定されている室内機サーモオンにおける室内膨張弁の指示開度(目標開度)が「i°以上」(例えば。≧3°)で、
(2)且つ入口側温度センサによる入口側空気温度、(Ti)と、出口側温度センサによる出口側空気温度(To)の温度差が「j℃以下」(例えば、≦3℃)か、
といった判定条件(アンド条件である)を満たすかどうかで判断される。
ここで、室内膨張弁への指示開度(目標開度)は、本処理フローが実行される場合に利用されるものであり、ステップS605での室内機サーモオンの状態における指示開度(目標開度)である。
【0106】
したがって、本来ならば室内機サーモオンなので室内膨張弁が開いていなければならないのに、入口側空気温度と出口側空気温度の温度差が小さいということは、冷媒が流れていないことを示しており、これによって、室内膨張弁の閉じ異常が発生していることが検知できる。閉じ異常が検知されると、ステップS608の処理を実行する。尚、室内膨張弁の閉じ異常の判定条件を満たさない場合(正常な場合)は、ステップS607の処理を実行する。
【0107】
≪ステップS607≫
ステップS607においては、閉じ異常発生回数(C)を初期化(0値)する。この処理が実行されるとステップS609の処理を実行する。
【0108】
≪ステップS608≫
ステップS608においては、異常頻度算出部213によって、ステップS606の室内膨張弁の閉じ異常の判定条件を満たす回数、すなわち閉じ異常発生回数(C)を計数する。この処理が実行されるとステップS609の処理を実行する。
【0109】
≪ステップS609≫
ステップS609においては、ループ処理2が終了される。この処理が実行されるとステップS610の処理を実行する。
【0110】
≪ステップS610≫
ステップS610においては、異常頻度算出部213によって、閉じ異常発生回数(C)を確定し、プロセッサの所定のRAM領域に格納する。
【0111】
「学習モード」の場合、この閉じ異常発生回数(C)は閾値算出部214に入力される。閾値算出部214は、「学習モード」での閉じ異常発生回数(学習時C)に応じた閉じ異常発生回数閾値(SL)を算出する。また、「監視モード」の場合、この閉じ異常発生回数(C)は異常検知部215に入力される。この処理が実行されるとステップS611の処理を実行する。
【0112】
≪ステップS611≫
ステップS611においては、異常頻度算出部213で算出された「監視モード」の閉じ異常発生回数(C)と、閾値算出部214によって「学習モード」の閉じ異常発生回数(学習時C)から求めた閉じ異常発生回数閾値(SL)とを比較して閉じ異常が発生したかどうかを判定する。
【0113】
「学習モード」の閉じ異常発生回数(学習時C)に対して、「監視モード」の閉じ異常発生回数(C)が小さい場合はステップS612の処理を実行し、「学習モード」の閉じ異常発生回数(学習時C)に対して、「監視モード」の閉じ異常発生回数(C)が大きい場合はステップS613の処理を実行する。
≪ステップS612≫
ステップS612においては、異常原因判断部216によって、正常と判断される。この処理が実行されるとステップS614の処理を実行する。
≪ステップS613≫
ステップS613においては、異常原因判断部216によって、室内膨張弁閉じ異常と判断し、その異常室内機を特定する。この処理が実行されるとステップS614の処理を実行する。
≪ステップS614≫
ステップS614においては、任意の期間のループ処理1が終了される。任意の期間とは、例えば1日、5日、1週間、1カ月、6カ月、1年、1年以上などである。この処理が実行されると室内膨張弁の閉じ異常を判断する異常検知システムフローが終了する。
【0114】
以上説明した本実施形態によれば、室内膨張弁の指示開度と入口側空気温度、と出口側空気温度、との温度差によって閉じ異常を判定するので、早期に正確に室内膨張弁に閉じ異常が発生していることを検知することができる。
【0115】
尚、図6におけるステップS605の判断処理においては、現時点の室内機の状態が、室内機サーモオオン状態にあるとステップS606に移行している。これに対して、意図的、或いは強制的に室内機サーモオンの状態に設定することも可能である。
【0116】
室温が設定値に達して室内機サーモオフの状態で、本処理フローが起動された時に、ステップS605を設定処理として、室内機サーモオンとする設定を行う。これによって、プロセッサからは、室内機サーモオンに対応した室内膨張弁の指示開度(目標開度)が、室内膨張弁に駆動信号として送られる。この指示開度情報を読み取って、上述のステップS606以降の処理を実行することができ、早期に正確に室内膨張弁に閉じ異常が発生していることを検知することができる。
【0117】
尚、図5の開き異常検知と図6の閉じ異常検知は、異なる処理フローで実行されているが、2つの処理を結合することもできる。例えば、ステップS505で「No」(=室内機サーモオン)と判断されると、図6のステップS606以降の処理を実行することができ、また、ステップS605で「No」(=室内機サーモオフ)と判断されると、図5のステップS506以降の処理を実行することができる。
【0118】
次に監視計算機200の「学習モード」、及び「監視モード」の解析結果例について図7A図7B図8A図8Bで説明する。夫々の図には特に、異常頻度算出部213、閾値算出部214、異常検知部215、及び異常原因判断部216の出力を示している。
【0119】
図7Aは、図4に示す異常検知システムによる正常時の解析結果例を説明する説明図である。室内機N700毎に、「学習モード」による学習期間701、及び「監視モード」による監視期間702の時間経過に沿った異常検知グラフ(Grp)が表示されている。
【0120】
異常検知グラフ(Grp)において、横軸は時間(日付)の経過を表し、「ОA」は異常頻度算出部213による開き異常頻度を示し、「SL」は閾値算出部214による閾値(SL)を示している。そして、開き異常頻度(ОA)が閾値(SL)以下であるため、異常検知部215及び異常原因判断部216では、正常と判断していることが理解できる。
【0121】
一方、図7Bは、図4に示す異常検知システムによる開き異常時の解析結果例を説明する説明図である。室内機N700毎に、「学習モード」による学習期間701、及び「監視モード」による監視期間702の時間経過に沿った異常検知グラフ(Grp)が表示されている。
【0122】
異常検知グラフ(Grp)において、横軸は時間(日付)の経過を表し、「ОA」は異常頻度算出部213による開き異常頻度を示し、「SL」は閾値算出部214による閾値(SL)を示している。そして、監視期間702の期間WDにおいて、開き異常頻度(ОA)が閾値(SL)を超えているため、異常検知部215、及び異常原因判断部216では開き異常と判断して、異常室内機の特定結果「室内機N′700」が出力されることが理解できる。
【0123】
図8Aは、図6の異常検知システムによる正常時の解析結果例を説明する説明図である。室内機N800毎に、「学習モード」による学習期間801、及び「監視モード」による監視期間802の時間経過に沿った異常検知グラフ(Grp)が表示されている。
【0124】
異常検知グラフ(Grp)において、横軸は時間(日付)の経過を表し、「CA」は異常頻度算出部213による閉じ異常発生回数を示し、「SL」は閾値算出部214による閾値(SL)を示している。そして、閉じ異常発生回数(CA)が閾値(SL)以下であるため、異常検知部215及び異常原因判断部216では、正常と判断していることが理解できる。
【0125】
一方、図8Bは、図6の異常検知システムによる閉じ異常時の解析結果例を説明する説明図である。室内機N800毎に、「学習モード」による学習期間801、及び「監視モード」による監視期間802の時間経過に沿った異常検知グラフ(Grp)が表示されている。
【0126】
異常検知グラフ(Grp)において、横軸は時間(日付)の経過を表し、「CA」は異常頻度算出部213による閉じ異常頻度を示し、「SL」は閾値算出部214による閾値(SL)を示している。そして、監視期間802の期間WDにおいて、閉じ異常発生回数(CA)が閾値(SL)を超えているため、異常検知部215及び異常原因判断部216では、開き異常と判断して異常室内機の特定結果「室内機N′800」が出力されることが理解できる。
【0127】
また、監視計算機200に接続される表示装置の画面に図7A図7B図8A図8Bの異常検知グラフ(Grp)が表示される。これによれば、異常検知の時間的な推移が読み取れるので、異常発生の予兆を読み取ることが可能となる。また、室内機毎に表示されるため、異常室内機を明確に把握することができる。
【0128】
本発明は、実測値である入口側空気温度、と出口側空気温度、の温度差情報と、室内膨張弁への指示開度(目標開度)情報の2つを用いて室内膨張弁の異常状態を判断することを特徴としている。
【0129】
すなわち、室内機がサーモオフの状態下で、室内膨張弁の指示開度(目標開度)が閉じ側(例えば、≦3°)で、しかも温度差が十分に大きい(例えば、≧3℃)というの判定条件を満たすと開き異常と判断する。
【0130】
また、室内機がサーモオンの状態下で、室内膨張弁の指示開度(目標開度)が開き側(例えば、≧3°)で、しかも温度差が十分に小さい(例えば、≦3℃)という判定条件を満たすと閉じ異常と判断する。
【0131】
このように、本発明によれば、室内膨張弁の指示開度と入口側空気温度、と出口側空気温度、との温度差によって開き異常、及び閉じ異常を判定するので、早期に正確に室内膨張弁に閉じ異常が発生していることを検知することができる。
【0132】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0133】
100…空調システム、102…複数機器のセンサ信号、103…センサ信号入力部、110、120…室外機、140、150、160、170…室内機、142、152、163、172…熱交換器、143、153、163、173…送風ファン、144、154、164、174…入口側空気温度、、145、155、165、175…出口側空気温度、、141、151、161、171…室内膨張弁、200…監視計算機、211…センサ信号抽出部、212…異常条件判断部、213…異常頻度算出部、214…閾値算出部、215…異常検出部、216…異常原因特定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B