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特開2023-122155(副作用が低減された)グリチルリチン酸誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122155
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】(副作用が低減された)グリチルリチン酸誘導体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/704 20060101AFI20230825BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20230825BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230825BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230825BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230825BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20230825BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230825BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20230825BHJP
【FI】
A61K31/704
A61K31/19
A61P29/00
A61P37/08
A61K8/60
A61K8/36
A23L33/105
A23L27/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025655
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】513234743
【氏名又は名称】宏輝システムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】牧野 利明
(72)【発明者】
【氏名】田下 優奈
(72)【発明者】
【氏名】吉川 展司
【テーマコード(参考)】
4B018
4B047
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD08
4B018MD42
4B018MD61
4B018ME07
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF04
4B018MF10
4B047LB03
4B047LB04
4B047LB09
4B047LG33
4B047LP01
4B047LP05
4B047LP16
4C083AD531
4C083EE09
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA06
4C086NA07
4C086ZB11
4C086ZB13
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA14
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA06
4C206NA07
4C206ZB11
4C206ZB13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】偽アルドステロン症を発症しないか又は発症しにくい、医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品添加物原体を提供する。
【解決手段】18α-グリチルリチン酸、18α-グリチルレチン酸、および18-α-グリチルレチン酸-3-O-モノグルクロニドで示される化合物、その塩、およびそれらの溶媒和からなる群より選択される少なくとも1種を含む、医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品添加物原体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
【化4】

【化5】

【化6】

で示される化合物、その塩、およびそれらの溶媒和からなる群より選択される少なくとも1種を含む、偽アルドステロン症を発症しないか又は発症しにくい、医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品添加物原体。
【請求項2】
ヒトに適用するための、請求項1に記載の医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品添加物原体。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物を0.1~1%含む、抗炎症・抗アレルギーのための、医薬品、医薬部外品あるいは化粧品。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物を0.1~1%含む、甘味を有する食品添加物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副作用が低減されたグリチルリチン酸とその利用方法に関する
【背景技術】
【0002】
グリチルリチン酸は古くから医薬品として利用されてきたマメ科カンゾウ属植物(Glycyrrhiza uralensis, G. glabraあるいはG. inflataなど)の地下部に含まれる主たるサポニンである。現在では、カンゾウ属植物地下部から抽出精製されたグリチルリチン酸は、抗炎症・アレルギーあるいは抗慢性肝炎を適応とする医薬品、あるいは、その抗炎症・アレルギー作用を生かした医薬部外品や化粧品にも配合されている。さらに、その甘味を利用する食品添加物としても使われている。
これまで、グリチルリチン酸は、日本だけでも年間400トン以上が使用されてきているが、安全性における問題があった。すなわち、グリチルリチン酸により惹起される偽アルドステロン症である。
【0003】
そのため、グリチルリチン酸が含まれる漢方処方の場合、服用量に比例して副作用の発現が認められることが知られており(非特許文献1)、グリチルリチン酸を含む医薬品の添付文書には、副作用の発現可能性に留意する記述が求められている。
【0004】
偽アルドステロン症は、高血圧症と低カリウム血症がその症状である。この副作用は、服用されたグリチルリチン酸の代謝物であるグリチルレチン酸、あるいはその硫酸抱合体であるグリチルレチン酸-3-硫酸エステルが、腎臓に存在する11βヒドロキシステロイド脱水素酵素2型を阻害することに起因する。
【0005】
すなわち、本酵素が阻害されることにより、グルココルチコイドの活性体であるコルチゾールが非活性体のコルチゾンに転換されずに、コルチゾールが蓄積される。増加したコルチゾールが尿細管の鉱質コルチコイド受容体に作用してナトリウムの再吸収を促進させ,カリウム排泄を増加させるため低カリウム血症を生じやすくなると考えられている。
【0006】
低カリウム血症が著明になると,1. 心伝導系および心収縮力に影響が現れ不整脈が生じやすくなり,2. ミオパチーによるクレアチニンキナーゼ値の上昇,3. 消化器系への影響として平滑筋融解のための麻痺性腸閉塞,4. 腎臓への影響として尿の濃縮力が障害されて多尿傾向となる。
【0007】
また,偽アルドステロン症は,高血圧,低カリウム血症,代謝性アルカローシス,低カリウム血症性ミオパチーなどの原発性アルドステロン症様の症状・所見を示すが,血漿アルドステロン濃度はむしろ低下する症候群である。低カリウム血症を伴う高血圧症を示すことから,低カリウム血性ミオパチーによると思われる四肢の脱力と,血圧上昇に伴う頭重感などが主な症状となる。
【0008】
このような状況を鑑み、副作用を惹起しない、あるいは副作用発現の可能性が低減されたグリチルリチン酸の誘導体が求められている。
【0009】
ところで、グリチルリチン酸にはその分子における18位の水素の配置に基づく異性体が存在している。通常、カンゾウ属植物が生産するグリチルリチン酸の90%以上は、18β体であるが、ごく一部は18α体である。この18α体の生理活性は、基本的には18β体と共通しているところが多いが、18β体よりも抗炎症・アレルギー作用における比活性が高いことから、18α体を主成分とする医薬品が創製されている。また、18α体は、18β体とは物性において異なるところがある、すなわち、酸性溶液において、18β体のようにゲル化することながないので、比較的酸性の化粧品への配合も可能であるとの優位性もある。
【0010】
とはいえ、これまで知られている偽アルドステロン症発症の原因となる11βヒドロキシステロイド脱水素酵素2型に対する18α-グリチルレチン酸の阻害活性に関しては、充分な検討がなされておらず、不明なところがあった。
【0011】
すなわち、Classen-Houbenら(2009)の論文によれば、18α-グリチルレチン酸は、ラット由来11βヒドロキシステロイド脱水素酵素2型を強く阻害するが、ヒト由来11βヒドロキシステロイド脱水素酵素2型では、その阻害は弱い(非特許文献2)。一方、Sannaら(2016)の論文によれば、18α-グリチルレチン酸は、ラット由来、ヒト由来何れの11βヒドロキシステロイド脱水素酵素2型も同程度に阻害する(非特許文献3)。
【0012】
このように相反する内容を記載した論文が存在していることもあり、これまで18α-グリチルレチン酸やグリチルリチン酸の副作用に関する学界および産業界における明瞭な認識はなかった。また、種差による各異性体の該酵素阻害についても、これまで同様であった。
【0013】
因みに、これまでの18α-グリチルリチン酸の生理活性に関しての論文においても、その活性の強さだけが特長として記されており、副作用に関する言及はなかった(引用論文4-18)。むしろ、18α-グリチルリチン酸と、その代謝物である18α-グリチルレチン酸などの体外排泄が早いことにより、体内蓄積性による副作用軽減が示唆されているに過ぎなかった(引用論文19)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】萬谷直樹ら「甘草の使用量と偽アルドステロン症の頻度に関する文献的調査 日東医誌 Vol.66No.3 197-202,2015
【非特許文献2】D. Classen-Houben et al. ”Selective inhibition of 11β-hydroxysteroid dehydrogenase 1 by 18α-glycyrrhetinic acid but not 18α-glycyrrhetinic acid” Journal of Steroid Biochemistry & Molecular Biology 113 (2009) 248-252
【非特許文献3】PP Sanna et. al.,”11β-hydroxysteroid dehydrogenase inhibition as a new potential therapeutic target for alcohol abuse”Transl Psychiatry (2016) 6, e760
【非特許文献4】Chengxi Cai et. al.,”Clinical Observation of Magnesium Isoglycyrrhizinate in Treatment of HBV-Related Liver Cirrhosis” Traditional Chinese Medicine 中医学, 2016, 5(3), 91-96
【非特許文献5】Yang, et. al.”A melioration of concanavalin A-induced autoimmune hepatitis by magnesium isoglycyrrhizinate through inhibition of CD4+CD25-CD69+ subset proliferation” Drug Design, Development and Therapy 2016:10
【非特許文献6】WU et. al.”Magnesium isoglycyrrhizinate ameliorates doxorubicin-induced acute cardiac and hepatic toxicity via anti-oxidant and anti-apoptotic mechanisms in mice” EXPERIMENTAL AND THERAPEUTIC MEDICINE 15: 1005-1012, 2018
【非特許文献7】ZOU et. al.” Magnesium isoglycy has hepatoprotective effects in an oxaliplatin-induced model of liver injury” INTERNATIONAL JOURNAL OF MOle cular me 2020 dicine 42: 2020-2030, 2018
【非特許文献8】Tang GH et al.,”Magnesium isoglycyrrhizinate inhibits inflammatory response through STAT3 pathway to protect remnant liver function” World J Gastroenterol 2015 November 21; 21(43): 12370-12380
【非特許文献9】Q. Y. TAN ET AL.”Licorice root extract and magnesium isoglycyrrhizinate protect against triptolide-induced hepatotoxicity via up-regulation of the Nrf2 pathway” DRUG DELIVERY 2018, VOL. 25, NO. 1, 1213-1223
【非特許文献10】Qu Y et. al.,”18a-Glycyrrhizin induces apoptosis and suppresses activation of rat hepatic stellate cells” Med Sci Monit, 2012: 18(1): BR24-32
【非特許文献11】Y.He et. al.,” Protective Effect of Magnesium Isoglycyrrhizinate on Ethanol-Induced Testicular Injuries in Mice” Journal of Biomedical Research,2010,24(2):153-160
【非特許文献12】Wenjiao J et. al.,”Magnesium isoglycyrrhizinate shows hepatoprotective effects in a cyclophosphamide-induced model of hepatic injury” Oncotarget, 2017, Vol. 8, (No. 20), pp: 33252-33264
【非特許文献13】Z.W. Xiao et. al.,”Therapeutic effect ofmagnesiumisoglycyrrhizinate in rats on lung injury induced by paraquat poisoning” European Review for Medical and Pharmacological Sciences 2014; 18: 311-320
【非特許文献14】Xinli H et. al.,”Magnesium isoglycyrrhizinate protects hepatic L02 cells from ischemia/reperfusion induced injury” Int J Clin Exp Pathol 2014;7(8):4755-4764
【非特許文献15】Tee et. al.,”Magnesium Isoglycyrrhizinate Ameliorates Fibrosis and Disrupts TGF-β-Mediated SMAD Pathway in Activated Hepatic Stellate Cell Line LX2” September 2018|Volume 9 Article 1018
【非特許文献16】J. Zheng et al.” Protective effects against and potential mechanisms underlying the effect of magnesium isoglycyrrhizinate in hypoxia-reoxygenation injury in rat liver cells” Genetics and Molecular Research 14 (4): 15453-15461 (2015)
【非特許文献17】Q. Yang, et al.” Magnesium isoglycyrrhizinate ameliorates radiation-induced pulmonary fibrosis by inhibiting fibroblast differentiation via the p38MAPK/Akt/Nox4 pathway” Biomedicine & Pharmacotherapy 115 (2019) 108955
【非特許文献18】HUO et al.,“ Optimal ratio of 18α- and 18β-glycyrrhizic acid for preventing alcoholic Hepatitis in Rats“ MENTAL AND THERAPEUTIC MEDICINE 18: 172-178, 2019
【非特許文献19】Xu et al.,“Comparison of the Exposure of Glycyrrhizin and its Metabolites and the Pseudoaldosteronism after Intravenous Administration of Alpha- and Beta-glycyrrhizin in Rat” Drug Research 13: 620-624,2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発明の課題は、副作用のない、あるいは低減されたグリチルリチン酸の誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決するために、通常使用されている18β-グリチルリチン酸の異性体である18α-グリチルリチン酸のアグリコンである18α-グリチルレチン酸による11βヒドロキシステロイド脱水素酵素2型阻害活性を改めて検討し、18α-グリチルリチン酸の安全性を確認し、安全な医薬品、医薬部外品あるいは食品添加物原料となることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。また、18α-グリチルリチン酸の糖部分を切り離したアグリコンだけからなる18α-グリチルレチン酸、あるいは糖を一つだけ残した18-α-グリチルレチン酸-3-O-モノグルクロニドにも、抗炎症・アレルギー作用などがあるので、これらも、本発明において利用することが出来る。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0017】
[1]以下の構造式:
【化1】

【化2】

【化3】

で示される化合物、その塩、およびそれらの溶媒和からなる群より選択される少なくとも1種を含む、偽アルドステロン症を発症しないか又は発症しにくい、医薬品、医薬部外品、化粧品あるいは食品添加物原体。
[2] ヒトに適用するための、請求項1に記載の医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品添加物原体。ヒトに適用するために用いられる、[1]に記載の医薬品、医薬部外品、化粧品あるいは食品添加物原体。
[3] [1]に記載の化合物を0.1~1%含む、抗炎症・抗アレルギーのための、医薬品、医薬部外品あるいは化粧品。
[4] [1]に記載の化合物を0.1~1%含む、甘味を有する食品添加物。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、生体に対する安全性がより高く、抗炎症・アレルギー作用などを生かした医薬品、医薬部外品、化粧品あるいはその甘味を生かした食品添加物を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、18α-グリチルリチン酸、18α-グリチルレチン酸および18α-グリチルレチン酸-3-O-モノグルクロニドとは、カンゾウ属(Glycyrrhiza)に属する植物由来のサポニンである18β-グリチルリチン酸から合成によって得られるサポニンをいう。
【0020】
この18α-グリチルリチン酸を18β-グリチルリチン酸から製造するには、例えば特許公報(1610300号:平成2年7月15日登録)に記されているように、原料の18β-グリチルリチン酸を、2~6N程度の水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウム水溶液中において、70~200℃に、常圧あるいは加圧下に加熱することによって行われる。異性化が60~80%に達したところで反応を打ち切り、その後、生した18α-グリチルリチン酸と18β-グリチルリチン酸とを分離する。それにより、所望の純度の18α-グリチルリチン酸を得る。反応混合物から18α-グリチルリチン酸を単離するには、18α体と18β体と共に、一先ず硫酸あるいは塩酸などの鉱酸によって、pHを1~2にして沈殿させた後、沈殿物を濾取し、その後カラムクロマトグラフィーなどで分画することが出来る。あるいは、18α体だけを単離する方法は、以下の通りである。
【0021】
グリチルリチン酸混合物を濃度0.5~2%程度の希薄水溶液とし、これに鉱酸を加えてpHを約2にした後、爐紙でとかする。この場合、18α体は結晶状に酸析されているから爐紙上に残り、一方、18β体はゲル状に分離していて爐紙を通過するから濾液中に入る。爐紙上の沈殿物にはまだかなりの18β体が混在するので、これを希アンモニア水に溶解した後、再び前記酸析・濾過による分離を行う。このような処理を繰り返すことにより、 18α体の純度は高まり、通常3~5回の繰り返し処理で、18β体の除去は完了する。
【0022】
本発明の剤の生体に適用する用途:
用途としては、医薬品、医薬部外品、化粧品あるいは食品等が挙げられる。ただし、この場合の適用対象としては、望ましくはヒトである。例えば、ラットやマウスなどのげっ歯類の場合は、偽アルドステロン症を発症しないものの、該動物種由来11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素2型の阻害を行うので、望ましくはない。また、ウシ、ウマ、ヒツジあるいはヤギなどの家畜については、これら動物種由来の酵素に対する阻害試験を行っていないので、適切性に関して判断はできない。
【0023】
本発明の剤の形態は、特に限定されず、本発明の剤の用途に応じて、各用途において通常使用される形態を取ることが出来る。
【0024】
形態としては、用途が医薬である場合は、注射剤あるいは経口剤を始め、多様な形態が考慮される。また、医薬部外品の場合は、歯磨き剤などへの添加が考えられる。化粧品の場合は、18β-グリチルリチン酸ジカリウムのそれと同じように、様々な剤形のものへの添加が可能である。食品添加物の場合も、18β体と同様の使用が見込まれる。
【0025】
本発明の18α-グリチルリチン酸の医薬品における投与量は、5~120mg/日/ヒト好ましくは、10~60mg/日/ヒトである。また、この場合、投与は一日に2回から3回までの間で、上記投与量を分割して実施することとなる。
【実施例0026】
被験物質のヒト11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素2型阻害測定方法の概要は、以下の通りである。
すなわち、ラット腎ミクロソーム画分(最終濃度2mg/mL)、1,2,6,7-『HJ-cortisol(Perkin Elmer、Waltham、MA、USA) 20nM、NAD+(富士フィルム) l.2mM、各種サンプルを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH = 6.0) 250μLを調製した。ラット腎ミクロソーム画分(最終濃度2mg/mL)またはヒト腎ミクロソーム画分(SekisuiXenoTech、Kansas City、KA、USA)(最終濃度0.2mg/mL)、1,2,6,7- [3H]-cortisol 20 nM、NAD+ 1.2 mM、各種サンプルを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH=6.0)25μLを調製した。それぞれの混合液を37℃で30分間インキュベートした後、1mg/mL cortisolおよび1mg/mL cortisone(ナカライテスク、京都)を含むメタノール25μLを反応液に加え、反応を停止させた。
【0027】
この液体を薄層クロマトグラフィープレート(Silica Gel 60, Merck、Darmstadt、Germany)に20μLスポット、chloroform:methanol(9:1)で約18cm展開し、cortisolとcortisoneを分離した。UVランプで、cortisoneのスポット(Rf値約0.43)を確認してかきとり、Clear-sol I(ナカライ)3mLを入れたバイアルに移し、液体シンチレーションカウンターで放射活性を測定した。各サンプルはn=4で、その平均士標準偏差をデータとした。IC50値は、阻害率で50%を挟む3ポイントを用いて、対数濃度対阻害率の近似直線で50%を示す濃度を算出した。
【0028】
その結果、表1に記載されている結果が得られた。18β-グリチルレチン酸の場合、ヒト由来およびラット由来酵素何れに対しても、0.2~0.4μMレベルの濃度で50%阻害率となった。それに対して、18α-グリチルレチン酸の場合は、ラット由来酵素では18β体の場合と同様の濃度で50%阻害率となったが、ヒト由来酵素の場合は15.1uMと約70倍高くなり、ヒトにおける偽アルドステロン症起因の恐れが低いことを確認することが出来た。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の18α-グリチルリチン酸は、ヒトに対する安全性が高く、より高活性なグリチルリチン酸誘導体として、医薬品、医薬部外品、化粧品あるいは食品添加物原料として有用である。