(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012218
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】軸継手装置
(51)【国際特許分類】
F16D 7/02 20060101AFI20230118BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20230118BHJP
F16F 1/38 20060101ALI20230118BHJP
B60G 7/02 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
F16D7/02 A
F16C11/04 C
F16F1/38 S
B60G7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115730
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000174611
【氏名又は名称】埼玉機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085637
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 辰也
(72)【発明者】
【氏名】渡部 遼
【テーマコード(参考)】
3D301
3J059
3J105
【Fターム(参考)】
3D301AA75
3D301AA89
3D301CA25
3D301DB02
3J059AE01
3J059BB01
3J059BC06
3J059BD09
3J059CC02
3J059GA02
3J105AA04
3J105AA12
3J105AB06
3J105AC04
3J105BA05
3J105BA15
3J105BC25
3J105DA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】凸球面軸部を使用せずにアウタ部材とインナ部材との間に発生する変位差を吸収することができる軸継手装置を提供すること。
【解決手段】Vロッドの端部に連結されるアウタ部材11と、フレームに連結されるインナ部材20とを備えた軸継手装置10において、アウタ部材11の軸受部12の内周面に形成された雌ねじ14にインナ部材20の軸部21に形成された雄ねじ22を螺入し、アウタ部材11の両端部に形成された取付穴13、13に軸部21に締め付け力を付勢する弾性リング30を嵌着し、アウタ部材11を緩衝スリーブ40を介してVロッドに連結し、インナ部材20をその両端部に形成された連結部23、23によってフレーム2に連結する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受部を有するアウタ部材と、前記軸受部に支持された軸部を有するインナ部材とを備えており、
前記軸受部の内周面に雌ねじが形成され、前記軸部の外周面に雄ねじが形成されており、前記雄ねじが前記雌ねじに螺入されており、
前記アウタ部材の両端部に一対の取付穴がそれぞれ形成されており、前記一対の取付穴に前記インナ部材に締め付け力を付勢する弾性リングがそれぞれ嵌着されている、
ことを特徴とする軸継手装置。
【請求項2】
前記雄ねじが前記軸部の端部に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の軸継手装置。
【請求項3】
前記雄ねじが前記軸部の全長にわたって形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の軸継手装置。
【請求項4】
前記アウタ部材の外周に緩衝スリーブが固着されている、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の軸継手装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸継手装置に関し、例えば、トラックやバスのような後輪二軸自動車の後輪車軸を支持する車軸支持装置に使用して有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、後輪二軸自動車の後輪車軸を支持する車軸支持装置においては、後輪車軸をフレームに対して三次元方向の自由度をもって支持するために、V字形状に形成されたトルクロッドがフレームと後輪車軸との間に架設されるとともに、該トルクロッドの両端および中央が軸継手装置によって回転自在に支持されている。
従来のこの種の車軸支持装置に使用される軸継手装置としては、アウタ部材に形成された中空部(軸受部)とインナ部材に形成された凸球面軸部(軸部)との間にクッション部材が介設されている球面軸継手装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した球面軸継手装置においては、凸球面軸部の製造コストが嵩むという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、凸球面軸部を使用せずにアウタ部材とインナ部材との間に発生する変位差を吸収することができる軸継手装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
軸受部を有するアウタ部材と、前記軸受部に支持された軸部を有するインナ部材とを備えており、
前記軸受部の内周面に雌ねじが形成され、前記軸部の外周面に雄ねじが形成されており、前記雄ねじが前記雌ねじに螺入されており、
前記アウタ部材の両端部に一対の取付穴がそれぞれ形成されており、前記一対の取付穴に前記インナ部材に締め付け力を付勢する弾性リングがそれぞれ嵌着されている、
ことを特徴とする軸継手装置。
【発明の効果】
【0007】
前記した手段によれば、凸球面軸部を使用せずにアウタ部材とインナ部材との間に発生する変位差を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態である軸継手装置が使用された車軸支持装置を示す斜視図である。
【
図3】同じく(A)は側面図、(B)は側面断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態である軸継手装置のアウタ部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に即して本発明の一実施形態を説明する。
【0010】
本実施形態において、本発明の一実施形態である軸継手装置は、後輪二軸自動車の後輪車軸をフレームに対して三次元方向の自由度をもって支持する車軸支持装置、に使用されている。
【0011】
図1に示されているように、本実施形態に係る車軸支持装置は、V字形状に形成されたトルクロッド(以下、Vロッドという)1および軸継手装置10を備えており、Vロッド1は両端部がフレーム2に軸継手装置10、10によって回転自在に支持されているとともに、中央部が車軸3に軸継手装置10によって回転自在に支持されている。
本実施形態である軸継手装置10は、
図1のA部で示されているように、Vロッド1の端部を支持するものとして構成されている。
【0012】
図2および
図3に示されているように、本実施形態である軸継手装置10はVロッド1の端部に連結されるアウタ部材11と、フレーム2に連結されるインナ部材20と、一対の弾性リング30、30と、緩衝スリーブ40と、を備えている。
【0013】
図2~
図4に示されているように、アウタ部材11は鉄系材料によって円柱形状に形成されており、アウタ部材11には円柱形孔形状の軸受部12が同心に開設されている。アウタ部材11の両端部(以下、左右端部とする)には一対の取付穴13、13が同心に配されて円柱形穴形状にそれぞれ形成されている。
軸受部12の内周面における左端部の取付穴13の内側には雌ねじ14が形成されている。
アウタ部材11の外周には緩衝スリーブ40が固着されており(後述する)、アウタ部材11は緩衝スリーブ40を介してVロッド1に連結される(
図1参照)。
【0014】
図2、
図3および
図5に示されているように、インナ部材20は鉄系材料が使用されて略円柱形状に形成されており、インナ部材20の中央部には軸部21が同心に形成されている。軸部21の外径はアウタ部材11の軸受部12の内径よりも極小径に設定されており、軸部21は軸受部12に摺動自在に嵌入されている。
軸部21の外周面には雄ねじ22が中央よりも左端寄りに配されて形成されており、雄ねじ22はインナ部材20の雌ねじ14に螺入されている。
インナ部材20の両端部には一対の連結部23、23が略直方体形状にそれぞれ形成されており、両連結部23、23はアウタ部材11の軸受部12からその両脇へ突出するように設定されている。連結部23には固定孔24が長手方向と直交するように穿設されている。インナ部材20は固定孔24にボルトを挿入されて締結されることにより、フレーム2(
図1参照)に連結される。
インナ部材20の外周には内外で一対の押圧部25、26が左右両側の軸部21と連結部23との境目に配されてそれぞれ突設されており、内外の押圧部25、26の間隔は取付穴13の深さに対応されている。内外の押圧部25、26は断面三角形の環状凸形状にそれぞれ形成されており、内側押圧部25の外向き斜面と外側押圧部26の内向き斜面とが谷面を構成するように設定されている。
【0015】
図2、
図3および
図4に示されているように、弾性リング30は弾性材料(ゴムまたは樹脂)が使用されて円筒形状に形成された弾性部材31と、鉄系材料が使用されて円筒形状に形成された被覆部材32と、から構成されている。
弾性部材31は外径が取付穴13の内径と略等しく、幅(筒芯方向寸法)が取付穴13の深さ(穴芯方向寸法)よりも若干小さく、厚さが厚い円筒形状に形成されている。
被覆部材32は外径が取付穴13の内径と略等しく、幅(筒芯方向寸法)が取付穴13
の深さ(穴芯方向寸法)よりも若干小さく、厚さが薄い円筒形状に形成されている。
被覆部材32は弾性部材31にその外周を被覆するように配されて焼着または接着等の手段により固着されている。
弾性リング30は取付穴13と軸部21との間の環状空間内に弾性部材31が弾性変形されながら取付穴13に嵌着される。
弾性リング30が取付穴13に嵌着された状態において、内側押圧部25の外向き斜面および外側押圧部26の内向き斜面が弾性部材31を斜め内向きに圧縮変形させる。この圧縮変形により、弾性リング30は軸部21に締め付け力を付勢し、インナ部材20に対してインナ部材20の回転に抵抗する力(所謂回転トルク)を発生させる。
弾性部材41は取付穴13と軸部21との間の環状空間を密封するので、泥や雨水等の塵埃が軸受部12および軸部21に浸入するのを防止する。
【0016】
図2、
図3および
図4に示されているように、緩衝スリーブ40は弾性材料(ゴムまたは樹脂)が使用されて円筒形状に形成された弾性部材41と、鉄系材料が使用されて円筒形状に形成された被覆部材42と、から構成されている。
弾性部材41は内径がアウタ部材11の外径と略等しく、幅(筒芯方向寸法)がアウタ部材11の長さ(筒芯方向寸法)と略等しく、厚さが厚い円筒形状に形成されている。
被覆部材42は内径がアウタ部材11の外径よりも大きく、幅(筒芯方向寸法)がアウタ部材11の長さ(筒芯方向寸法)よりも小さく、厚さが薄い円筒形状に形成されている。被覆部材42は弾性部材41にその外周を被覆するように配されて焼着または接着等の手段により固着されている。
緩衝スリーブ40はアウタ部材11にその外周を被覆するように配されて弾性部材41の内周が焼着または接着等の手段により固着されている。
【0017】
ここで、軸継手装置10の組立作業および作用を説明する。
【0018】
軸継手装置10の組立作業に際して、インナ部材20は軸受部12内に雌ねじ14側の開口から挿入されて、雄ねじ22が雌ねじ14に螺入される。雄ねじ22が雌ねじ14に所定の位置まで螺入されると、両側の連結部23、23はアウタ部材11の両端から略等しい長さに突出する。
続いて、一対の弾性リング30、30が両側の取付穴13、13に、取付穴13と軸部21との間の環状空間内に弾性部材31が弾性変形されながら、それぞれ嵌着される。
弾性リング30が取付穴13に嵌着されると、内側押圧部25の外向き斜面および外側押圧部26の内向き斜面が弾性部材31を斜め内向きに圧縮変形させる。この圧縮変形により、弾性リング30は取付穴13に反力をとって蓄力し、相対的に、軸部21に締め付け力を付勢する。その結果、弾性リング30はインナ部材20に対してインナ部材20の回転に抵抗する力(所謂回転トルク)を発生する。
【0019】
組み立てられた軸継手装置10はアウタ部材11がVロッド1に緩衝スリーブ40を介して連結される(
図1参照)。
軸継手装置10がVロッド1に連結された状態において、緩衝スリーブ40はVロッド1とアウタ部材11との間の衝撃を緩和する。
また、Vロッド1に固定された緩衝スリーブ40はアウタ部材11をフローティング支持した状態になるので、インナ部材20はVロッド1に対して三次元の全方位に揺動することができる状態になる。
【0020】
後輪二軸自動車が走行中にローリングした際に、車軸3が左右方向に変位することにより、軸継手装置10のアウタ部材とインナ部材との間に変位差が発生する。
アウタ部材11とインナ部材20との間に発生した変位差による力(回転トルク)が弾性リング30の抵抗力(回転トルク)を超えると、アウタ部材11とインナ部材20とは
雌ねじ14と雄ねじ22との間で相対的に回転する。この回転により、アウタ部材11とインナ部材20との間に発生した変位差は吸収される。
【0021】
本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
【0022】
(1)アウタ部材の軸受部の内周面に形成した雌ねじにインナ部材の軸部の外周面に形成した雄ねじを螺入し、アウタ部材の両端部に形成した一対の取付穴にインナ部材に締め付け力を付勢する弾性リングをそれぞれ嵌着することにより、アウタ部材とインナ部材との間に発生した変位差による力(回転トルク)が弾性リングの抵抗力(回転トルク)を超えると、アウタ部材とインナ部材とは雌ねじと雄ねじとの間で相対的に回転するので、アウタ部材とインナ部材との間に発生した変位差を吸収することができる。
【0023】
(2)凸球面軸部を使用せずにアウタ部材とインナ部材との間に発生する変位差を吸収することができるので、軸継手装置全体としての製造コストを低減することができる。
【0024】
(3)部品点数を4点に減少させることにより、加工工数および組立工数を減少することができるので、軸継手装置全体としての製造コストを低減することができる。
【0025】
(4)取付穴と軸部との間の環状空間を弾性部材によって密封することにより、泥や雨水等の塵埃が軸受部および軸部に浸入するのを防止することができるので、軸継手装置の耐久性を向上させることができる。
【0026】
(5)アウタ部材を緩衝スリーブを介してVロッドに連結することにより、Vロッドとアウタ部材との間の衝撃を緩衝スリーブによって緩和することができる。
【0027】
(6)アウタ部材を緩衝スリーブを介してVロッドに連結することにより、Vロッドに固定された緩衝スリーブによってアウタ部材をフローティング支持することができるので、インナ部材をVロッドに対して三次元の全方位に揺動自在に支持することができる。
【0028】
(7)アウタ部材の軸受部の内周面に雌ねじを設けるとともに、インナ部材の軸部の外周面に雄ねじを設けることにより、インナ部材を抜け止めするためのスナップリング等を廃止することができる。
【0029】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0030】
例えば、雄ねじは軸部の一端部に形成するに限らず、軸部の全長に渡って形成してもよい。
【0031】
緩衝スリーブは省略してもよい。
【0032】
前記実施形態においては、軸継手装置をVロッドの先端部に装備した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、Vロッドの基端部や直線形状のトルクロッドに装備することができるし、後輪二軸車のみならず後輪一軸車の車軸支持装置に適用することができ、車軸支持装置他の用途に使用される軸継手装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…Vロッド(V形状のトルクロッド)、2…フレーム、3…車軸、
10…軸継手装置、11…アウタ部材、12…軸受部、13…取付穴、14…雌ねじ、
20…インナ部材、21…軸部、22…雄ねじ、23…連結部、24…固定孔、25、
26…押圧部、
30…弾性リング、31…弾性部材、32…被覆部材、
40…緩衝スリーブ…、41…弾性部材、42…被覆部材。