(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122194
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】内燃機関の排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20230825BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230825BHJP
F01N 13/10 20100101ALI20230825BHJP
【FI】
F01N3/28 301W
F01N3/24 C
F01N13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025747
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000100805
【氏名又は名称】アイシン高丘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】山中 憲征
(72)【発明者】
【氏名】小石川 高久
(72)【発明者】
【氏名】浅野 智
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
【Fターム(参考)】
3G004DA01
3G091AB02
3G091AB06
3G091BA01
3G091BA14
3G091FB09
3G091HA37
3G091HB01
(57)【要約】
【課題】センサの検出結果のばらつきを抑制しつつ排気の圧損の増大を抑制した内燃機関の排気装置を提供することを課題とする。
【解決手段】エンジン10の排気装置2において、下流壁部33は周壁部34及び35を含み、周壁部34は中心軸線Aに交差する側壁部341を含み、周壁部35は側壁部341から下流側に連続し中心軸線Aに沿って触媒30aを下流側に投影した領域に重なる側壁部351を含み、中心軸線A及びBを含む平面に垂直な方向から下流壁部33を見た場合に、側壁部351は側壁部341に対して中心軸線A側に傾いて設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なるタイミングで排気行程が実行される内燃機関の複数の気筒のそれぞれに接続した複数の枝管部、及び前記複数の枝管部が下流側で集合して接続した集合管部、を含む排気マニホールドと、
前記排気マニホールドの前記集合管部の下流側に設けられた触媒と、
前記触媒の下流側に設けられた排気管と、
前記排気管に設けられ、排気の状態を検出するセンサと、
前記触媒と前記排気管とを接続し、排気の流れ方向に沿った前記触媒の第1中心軸線に対して異なる方向に延びた接続壁部と、を備え、
前記接続壁部は、第1周壁部、及び前記第1周壁部から下流側に連続した第2周壁部、を含み、
前記第1周壁部は、前記第1中心軸線に交差する第1側壁部を含み、
前記第2周壁部は、前記第1側壁部から下流側に連続し前記第1中心軸線に沿って前記触媒を下流側に投影した領域に重なる第2側壁部を含み、
前記接続壁部に接続された前記排気管の上流端での第2中心軸線と前記第1中心軸線とを含む平面に垂直な方向から前記接続壁部を見た場合に、前記第2側壁部は前記第1側壁部に対して前記第1中心軸線側に傾いて設けられている、内燃機関の排気装置。
【請求項2】
前記第1周壁部の内径は、下流側に従って縮小する、請求項1の内燃機関の排気装置。
【請求項3】
前記第2周壁部の内径は、前記第1周壁部の内径よりも小さい、請求項1又は2の内燃機関の排気装置。
【請求項4】
前記第1中心軸線に対する前記第1側壁部の傾きは、45°以上であって85°以下である、請求項1乃至3の何れかの内燃機関の排気装置。
【請求項5】
前記第1中心軸線に対して前記第1及び第2側壁部は同一側に傾いている、請求項1乃至4の何れかの内燃機関の排気装置。
【請求項6】
前記第1中心軸線に対して前記第1及び第2側壁部と前記第2中心軸線とは同一側に傾いており、前記第1中心軸線に対する前記第2中心軸線の傾きは、0°よりも大きく、前記第1中心軸線に対する前記第1側壁部の傾き以下である、請求項1乃至5の何れかの内燃機関の排気装置。
【請求項7】
前記第1中心軸線に対する前記第2中心軸線の傾きは、前記第1中心軸線に対する前記第2側壁部の傾きと同じである、請求項1乃至6の何れかの内燃機関の排気装置。
【請求項8】
前記平面に垂直な方向から前記接続壁部を見た場合に、前記第1側壁部は湾曲している、請求項1乃至3の何れかの内燃機関の排気装置。
【請求項9】
前記第1中心軸線に対して前記第2側壁部は平行である、請求項1乃至3の何れかの内燃機関の排気装置。
【請求項10】
前記接続壁部は、前記触媒を収容したケースの一部分である、請求項1乃至9の何れかの内燃機関の排気装置。
【請求項11】
前記触媒は、第1触媒であり、
前記排気管の下流側には第2触媒が設けられており、
前記センサは、前記第1触媒よりも前記第2触媒の近くに設けられている、請求項1乃至10の何れかの内燃機関の排気装置。
【請求項12】
前記センサは、第1センサであり、
前記第2触媒よりも下流側には排気の状態を検出する第2センサが設けられている、請求項11の内燃機関の排気装置。
【請求項13】
前記センサは、空燃比センサ、酸素センサ、温度センサ、二酸化炭素センサ、NOxセンサ、PMセンサ、流量センサ、及び圧力センサの少なくとも一つを含む、請求項1乃至12の何れかの内燃機関の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気装置として、排気マニホールドと、排気マニホールドの下流側に設けられた触媒と、触媒の下流側に設けられた排気管と、排気管に設けられ、排気の状態を検出するセンサと、を備えたものが知られている。このような排気マニホールドは、内燃機関の複数の気筒のそれぞれに接続した枝管部が下流側で集合して集合管部に接続している。またこれらの複数の気筒では、互いに異なるタイミングで排気行程が実行される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気管を流れる排気の流量は、排気管に排気が流入する際の流れ方向などに起因して、排気管の断面内で均一ではなく偏りが生じている場合がある。また、排気は気筒毎に互いに異なるタイミングで互いに異なる枝管部に排出されるため、気筒毎の排気はそれぞれ異なる経路を介して排気管に流入する。従って、上述した排気管の断面内での排気の流量の偏り方も、気筒毎に異なる。よって排気管に設けられたセンサに接触する排気の流量も気筒毎に異なり、この結果、センサの検出結果も気筒毎にばらつくおそれがある。
【0005】
また、このような内燃機関の排気装置に対しては、排気の圧損が抑制されていることが望まれる。排気の圧損が増大すると、内燃機関の背圧が増大して出力性能や燃費に影響を及ぼすおそれがあるからである。
【0006】
そこで本発明は、センサの検出結果のばらつきを抑制しつつ排気の圧損の増大を抑制した内燃機関の排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、互いに異なるタイミングで排気行程が実行される内燃機関の複数の気筒のそれぞれに接続した複数の枝管部、及び前記複数の枝管部が下流側で集合して接続した集合管部、を含む排気マニホールドと、前記排気マニホールドの前記集合管部の下流側に設けられた触媒と、前記触媒の下流側に設けられた排気管と、前記排気管に設けられ、排気の状態を検出するセンサと、前記触媒と前記排気管とを接続し、排気の流れ方向に沿った前記触媒の第1中心軸線に対して異なる方向に延びた接続壁部と、を備え、前記接続壁部は、第1周壁部、及び前記第1周壁部から下流側に連続した第2周壁部、を含み、前記第1周壁部は、前記第1中心軸線に交差する第1側壁部を含み、前記第2周壁部は、前記第1側壁部から下流側に連続し前記第1中心軸線に沿って前記触媒を下流側に投影した領域に重なる第2側壁部を含み、前記接続壁部に接続された前記排気管の上流端での第2中心軸線と前記第1中心軸線とを含む平面に垂直な方向から前記接続壁部を見た場合に、前記第2側壁部は前記第1側壁部に対して前記第1中心軸線側に傾いて設けられている、内燃機関の排気装置によって達成できる。
【0008】
前記第1周壁部の内径は、下流側に従って縮小してもよい。
【0009】
前記第2周壁部の内径は、前記第1周壁部の内径よりも小さくてもよい。
【0010】
前記第1中心軸線に対する前記第1側壁部の傾きは、45°以上であって85°以下であってもよい。
【0011】
前記第1中心軸線に対して前記第1及び第2側壁部は同一側に傾いていてもよい。
【0012】
前記第1中心軸線に対して前記第1及び第2側壁部と前記第2中心軸線とは同一側に傾いており、前記第1中心軸線に対する前記第2中心軸線の傾きは、0°よりも大きく、前記第1中心軸線に対する前記第1側壁部の傾き以下であってもよい。
【0013】
前記第1中心軸線に対する前記第2中心軸線の傾きは、前記第1中心軸線に対する前記第2側壁部の傾きと同じであってもよい。
【0014】
前記平面に垂直な方向から前記接続壁部を見た場合に、前記第1側壁部は湾曲していてもよい。
【0015】
前記第1中心軸線に対して前記第2側壁部は平行であってもよい。
【0016】
前記接続壁部は、前記触媒を収容したケースの一部分であってもよい。
【0017】
前記触媒は、第1触媒であり、前記排気管の下流側には第2触媒が設けられており、前記センサは、前記第1触媒よりも前記第2触媒の近くに設けられていてもよい。
【0018】
前記センサは、第1センサであり、前記第2触媒よりも下流側には排気の状態を検出する第2センサが設けられていてもよい。
【0019】
前記センサは、空燃比センサ、酸素センサ、温度センサ、二酸化炭素センサ、NOxセンサ、PMセンサ、流量センサ、及び圧力センサの少なくとも一つを含んでもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、センサの検出結果のばらつきを抑制しつつ排気の圧損の増大を抑制した内燃機関の排気装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本実施例のエンジンシステムの概略構成図である。
【
図2】
図2Aは、触媒コンバータのケースの下流壁部周辺の拡大図であり、
図2Bは、触媒コンバータのケースの下流壁部内の排気の流れの説明図である。
【
図3】
図3は、比較例であるエンジンシステムの概略構成図である。
【
図4】
図4Aは、比較例での触媒コンバータのケースの下流壁部周辺の拡大図であり、
図4Bは、比較例での触媒コンバータのケースの下流壁部内の排気の流れ方の説明図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、それぞれ本実施例と比較例での空燃比センサへの排気の流れの説明図である。
【
図6】
図6Aは、断面内での空燃比センサの設置位置に相当するセンシング領域を示した図であり、
図6Bは、本実施例と比較例でのセンシング領域を通過する気筒♯1~♯4のそれぞれの排気の流量の、平均値からのずれ割合を示したグラフである。
【
図7】
図7Aは、第1変形例の触媒コンバータのケースの下流壁部周辺の拡大図であり、
図7Bは、第2変形例の触媒コンバータのケースの下流壁部周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[本実施例の構成]
図1は、本実施例のエンジンシステム1の概略構成図である。エンジンシステム1は、エンジン10と排気装置2とを含む。エンジン10は、内燃機関の一例であり、軽油を燃料として用いる圧縮着火式のディーゼルエンジンであるが、これに限定されずガソリンを燃料として用いる火花点火式のガソリンエンジンであってもよい。エンジン10は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程で1燃焼サイクルを構成する4サイクルエンジンである。エンジン10は4つ気筒♯1~♯4を有しているが、複数の気筒を有していればこれに限定されない。気筒♯1~♯4では、気筒♯1、♯3、♯4、及び♯2の順に排気行程が実行され、即ちそれぞれ異なるタイミングで排気が行われる。気筒♯1~♯4のそれぞれには筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁が設けられているが、これに限定されない。例えば、筒内噴射弁に加えて又は筒内噴射弁に代えて、気筒♯1~♯4のそれぞれの吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁が設けられていてもよい。エンジン10には、吸気マニホールドを介して吸気管が接続されている。
【0023】
排気装置2は、排気マニホールド20、触媒コンバータ30、排気管40及び70、触媒コンバータ50、及び空燃比センサ60及び80を含む。排気マニホールド20は、エンジン10に接続され、気筒♯1~♯4のそれぞれから排出された排気が通過する。詳細には、排気マニホールド20は、気筒♯1~♯4のそれぞれに接続された枝管部21~24と、これらが下流側で集合して接続した集合管部25とを含む。触媒コンバータ30は、排気マニホールド20の集合管部25の下流端に接続されている。排気管40は、触媒コンバータ30の下流端に接続されている。触媒コンバータ50は、排気管40の下流端に接続されている。
【0024】
空燃比センサ60は、排気管40に設けられて触媒コンバータ30を通過した排気の空燃比を検出する。空燃比センサ60は、触媒コンバータ30よりも触媒コンバータ50の近くに設置されている。空燃比センサ60は、センサ及び第1センサの一例である。排気管70は触媒コンバータ50の下流端に接続されている。空燃比センサ80は、触媒コンバータ50よりも下流側の排気管70に設けられており、触媒コンバータ50を通過した排気の空燃比を検出する。センサ80は、第2センサの一例である。気筒♯1~♯4のそれぞれから異なるタイミングで排出された排気は、それぞれ排気マニホールド20の枝管部21~24を介して集合管部25以降の下流側を流れる。
【0025】
触媒コンバータ30は、筒状のケース30C内に吸蔵還元型NOx触媒が担持された触媒30aを収容している。触媒コンバータ30については詳しくは後述する。触媒コンバータ50は、筒状のケース50C内に酸化触媒が担持された触媒50aを収容している。触媒30a及び50aは排気の流れ方向に沿ったハニカム状に形成されている。触媒30a及び50aは、それぞれ第1及び第2触媒の一例である。
【0026】
エンジンシステム1には、ECU(Electronic Control Unit)100が設けられている。ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びバックアップRAMなどを備えた電子制御ユニットである。ECU100は、空燃比センサ60及び80と電気的に接続され、それら各種センサの測定値が入力される。ECU100は、空燃比センサ60及び80の検出結果に基づいてエンジン10を制御する。
【0027】
触媒コンバータ30のケース30Cは、中流壁部31、上流壁部32、及び下流壁部33を有している。中流壁部31は上流壁部32から下流側に連続し、下流壁部33は中流壁部31から下流側に連続している。中流壁部31は内径が下流方向で一定であり、触媒30aを保持している。上流壁部32は、内径が下流方向で拡大し、上流壁部32の上流端には排気マニホールド20が接続されている。下流壁部33は、内径が下流方向で縮小し、下流壁部33の下流端に排気管40が接続されている。下流壁部33は、触媒30aと排気管40とを接続する接続壁部の一例である。
図1には、触媒30aの中心軸線Aを示している。中心軸線Aは、中流壁部31内に設けられた触媒30aの流路方向に垂直な断面での中心を通過する線分であり、排気の流れ方向に沿った中心軸に相当する。触媒30aは上述したようにハニカム状に形成されており、詳細には触媒30aはその上流端面から下流端面にまで延びた複数の流路が形成されている。この複数の流路は中心軸線Aに沿って延びている。下流壁部33について以下に詳しく説明する。また、
図1には、下流壁部33に接続された排気管40の上流端での排気管40の中心軸線Bを示している。中心軸線Bは、排気管40の上流端での、流路方向に垂直な断面での中心を通過する線分である。尚、中心軸線A及びBは平行ではない。
【0028】
図2Aは、触媒コンバータ30のケース30Cの下流壁部33周辺の拡大図である。
図2Aは、中心軸線A及びBを含む平面に垂直な方向から下流壁部33周辺を見た場合を示している。下流壁部33は中心軸線Aとは異なる方向に延びている。下流壁部33は、周壁部34及び35を含む。周壁部35は周壁部34から下流側に連続している。周壁部34は内径が下流方向に従って縮小している。周壁部35は内径が略一定である。換言すれば周壁部34は中心軸線Aとは異なる方向に延びた漏斗状であり、周壁部35も中心軸線Aとは異なる方向に延びた円筒状である。周壁部34及び35はそれぞれ第1及び第2周壁部の一例である。
【0029】
周壁部34及び35はそれぞれ、側壁部341と、側壁部341の下流側に連続した351とを含む。側壁部341は、中心軸線Aが交差している。側壁部351は、中心軸線Aから退避しているが、中心軸線Aに沿って触媒30aを下流側に投影した投影領域Pに重なる。尚、側壁部341も投影領域Pに重なっている。側壁部341及び351は、共に内面が内側に凹状となるように湾曲している。側壁部351は、側壁部341に対して中心軸線A側に傾いて設けられている。即ち側壁部351は、側壁部341よりも、中心軸線Aに対して平行に近い。側壁部341及び351は中心軸線Aに対して同一側に傾いている。詳細には、側壁部341は中心軸線Aに対して角度αだけ傾いている。側壁部351は中心軸線Aに対して角度βだけ傾いている。ここで角度αは角度βよりも大きく、側壁部341は側壁部351よりも中心軸線Aに対して大きく傾いている。中心軸線Bは、中心軸線Aに対して側壁部341及び351と同じ側に傾斜しており、中心軸線Aに対して角度γだけ傾いている。本実施例では角度γは角度αよりも小さく、角度βと略同じである。側壁部341及び351はそれぞれ第1及び第2側壁部の一例である。
【0030】
図2Bは、触媒コンバータ30のケース30Cの下流壁部33内の排気の流れの説明図である。図中に示す矢印のように、排気は触媒30aの中心軸線Aに沿って延びた各流路内を流れるため、触媒30aを通過した直後の排気は中心軸線Aの方向に沿って流れる。触媒30aを通過した排気の一部は、側壁部341に衝突して側壁部341の内面に沿って旋回する。この旋回した排気により、触媒30aを通過した排気のうち側壁部341に衝突していない排気の旋回も促進される。従って、排気は排気管40内でも旋回しながら下流側に流れる。
【0031】
このように側壁部341は、中心軸線Aに対して側壁部351よりも大きく傾いている。更に側壁部341は、中流壁部31の外周部上の所定の位置から中心軸線Aに交差する位置にまで延びている。ここで、一般的に円管内を流れる流体の流速は、その円管の中心軸線に近いほど高くなる。このため、触媒30aを通過する排気の流速も、中心軸線Aに近いほど高くなる。従って触媒30aを通過した排気の多くを側壁部341に衝突させることができ、これにより排気の旋回を促進することができる。尚、詳しくは後述するがこのように排気を旋回させることにより、空燃比センサ60の検出結果のばらつきを抑制できる。
【0032】
更に周壁部34の内径は下流側に縮小している。従って、周壁部34の下流側でより半径が小さい旋回流を形成することができ、排気の旋回を促進することができる。また、周壁部35の内径は、周壁部34の内径よりも小さい。これによっても、形成された旋回流の半径を小さい状態に維持することができ、排気の旋回速度を維持することができる。尚、
図2A及び
図2Bの例では、周壁部35の内径は略一定であるが、これに限定されず、下流側に縮小していてもよい。
【0033】
また、側壁部351は、中心軸線Aに対して側壁部341程は大きく傾いていないが、投影領域Pに重なっている。このため、触媒30aを通過した排気のうち、側壁部341には衝突することなく流れる排気を確保することができる。例えば、触媒30aを通過した排気の全てが側壁部341に衝突して旋回したとすると、排気の圧損が増大するおそれがある。本実施例では、中心軸線Aに対して大きくは傾いていない側壁部351を投影領域Pに重なる位置に設けることにより、側壁部341に衝突しない排気を確保することができ、排気の圧損の増大を抑制できる。尚、側壁部351の全体が投影領域Pに重なっていることが好ましい。側壁部351の一部分のみが投影領域Pに重なっている場合には、投影領域Pに占める側壁部341の割合が多い場合であり、この場合には上述したように排気の圧損が増大するおそれがあるからである。
【0034】
中心軸線Aに対する側壁部341の角度αは、小さすぎると排気を旋回させることができず、大きすぎると排気の圧損が増大するおそれがある。ここで中心軸線Aに平行に側壁部341に衝突する排気の入射角と、側壁部341で反射した排気の反射角とが等しいと仮定する。側壁部341で反射した排気の速度成分は、
図2Aに示した側壁部341を示した線分に沿った下流方向成分と、側壁部341を示した線分の法線方向成分との合成で表すことができる。角度αが45°以上の場合には、法線方向成分の大きさは下流方向成分の大きさ以上になる。ここで法線方向成分の大きさは、側壁部341の湾曲した内側面に沿って旋回する排気の旋回速度の大きさに対応する。以上のように旋回速度を確保するために角度αは45°以上が好ましい。但し、角度αが85°よりも大きいと、中心軸線Aに沿って側壁部341に衝突した排気のうち、
図2Aに示した側壁部341の線分に沿って上流方向に流れる排気の流量が増大する。これにより排気の圧損が増大する。このため角度αは85°以下が好ましい。
【0035】
角度βは0°よりも大きい値である。即ち側壁部341及び351は中心軸線Aに対して同一側に傾いている。例えば角度βが0°であり、側壁部351が側壁部341とは中心軸線Aに対して反対側に傾いている場合には、側壁部341と側壁部351との境界付近で排気が大きく剥離し、排気の圧損が増大するおそれがあるからである。
【0036】
以上のように排気の旋回を促進しつつ排気の圧損の増大を抑制した側壁部341及び351は、触媒30aを収容したケース30Cの一部である。このため、側壁部341及び351と同様の機能を有した側壁部を有した配管をケース30Cとは別に設けた場合と比較して、部品の集約化が図られている。また、ケース30Cの一部に側壁部341及び351が形成されていることにより、触媒30aに近い位置で排気を旋回させることができる。これにより、触媒30aを通過した排気が下流側に流れて圧損等により流速が大きく低下する前に、旋回させることができる。これにより、強い旋回流を形成することができる。
【0037】
中心軸線A及びBは互いに異なる方向に延びている。例えば中心軸線A及びBが同一方向に延びた平行の場合、上述したように下流壁部33は中心軸線Aとは異なる方向に延びている。このため、下流壁部33内で中心軸線Aとは異なる方向に流れた排気が、中心軸線Aと平行である中心軸線Bに沿って延びた排気管40内でその内壁に衝突して、排気の圧損が増大するおそれがある。本実施例のように中心軸線Aに対して側壁部341及び351と同じ側に中心軸線Bが傾いていることにより、排気管40内に排気が流入した際に排気の旋回速度の低下を抑制することができる。従って、角度γは0°より大きいことが好ましい。
【0038】
また、角度γは角度α以下であることが好ましい。例えば角度γが角度αより大きい場合とは、中心軸線Aに対する側壁部341の傾きよりも、中心軸線Aに対する中心軸線Bの傾き、即ち中心軸線Aに対する排気管40の傾きの方が大きい場合である。この場合には、中心軸線Aに対して側壁部351よりも排気管40が更に大きく傾いている。このため、下流壁部33内を流れた排気が、排気管40内でその内壁に衝突して、排気の圧損が増大するおそれがある。このため、角度γは角度α以下が好ましい。
【0039】
以上のように、排気の圧損を抑制するために、角度γは0°よりも大きく角度α以下の範囲内にあることが好ましいが、角度γが角度βと略同じであることが更に好ましい。この場合には、周壁部35から排気管40に排気が流入する際の圧損を十分に低減することができるからである。
【0040】
[比較例の構成]
図3は比較例であるエンジンシステム1xの概略構成図である。エンジンシステム1xは排気装置2xを備えている。排気装置2xは触媒コンバータ30xを含む。
図4Aは、比較例での触媒コンバータ30xのケース30Cxの下流壁部33x周辺の拡大図である。
図4Bは、比較例での触媒コンバータ30xのケース30Cxの下流壁部33x内の排気の流れ方の説明図である。
図3、
図4A、及び
図4Bは、それぞれ
図1、
図2A、及び
図2Bに対応している。尚、比較例においては、本実施例と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0041】
図4Aに示すように、下流壁部33xの周壁部34xの側壁部341xは中心軸線Aと交差しない。従って、
図4Bに示すように触媒30aを通過した排気は側壁部341xに沿って排気管40内を流れる。このように比較例では本実施例と異なり、排気が旋回しにくい。
【0042】
[本実施例と比較例との空燃比センサ60への排気の流れの違い]
次に、本実施例と比較例との排気の流れの違いについて説明する。
図5A及び
図5Bはそれぞれ本実施例と比較例での空燃比センサ60への排気の流れの説明図である。
図5A及び
図5Bには、空燃比センサ60の設置位置での排気管40の延びた方向に直交する断面Sをハッチングにより示している。本実施例では、気筒♯1~♯4のそれぞれの排気は排気管40内を旋回しながら断面Sを通過する。比較例では、気筒♯1~♯4のそれぞれの排気は排気管40内を略直線的に流れて断面Sを通過する。ここで本実施例及び比較例の何れも気筒♯1~♯4から排出された排気は、それぞれ枝管部21~24を流れて排気管40に流入する。本実施例では上述したように枝管部21~24のそれぞれを通過した排気は、下流壁部33内で同様に旋回して排気管40内を旋回しながら流れる。このため本実施例では、気筒♯1~♯4のそれぞれの排気の断面S内での流量分布がほぼ均一となる。
【0043】
比較例では、枝管部21~24のそれぞれを通過した排気は、集合管部25内や触媒コンバータ30x内を不均一に流れ、このような不均一を維持したまま排気管40内を流れる。例えば気筒♯1の排気は、枝管部21から集合管部25や触媒コンバータ30x内を一方側の側面に沿って多く流れ、排気管40内においても一方側の側面に沿って多く流れる。これに対して気筒♯4の排気は、枝管部24から集合管部25や触媒コンバータ30x内を他方側の側面に沿って多く流れ、排気管40内においても他方側の側面に沿って多く流れる。このように比較例では、気筒♯1~♯4のそれぞれの排気の断面S内での流量分布が不均一であり、その流量分布も気筒♯1~♯4毎に異なる。
【0044】
図6Aは、断面S内での空燃比センサ60の設置位置に相当するセンシング領域Rを示した図である。
図6Bは、本実施例と比較例でのセンシング領域Rを通過する気筒♯1~♯4のそれぞれの排気の流量の、平均値からのずれ割合を示したグラフである。本実施例での平均値は、本実施例でのセンシング領域Rを通過する気筒♯1~♯4のそれぞれの排気の流量の平均値であり、比較例での平均値は、比較例でのセンシング領域Rを通過する気筒♯1~♯4のそれぞれの排気の流量の平均値である。
図6Bに示すように、センシング領域Rを通過する気筒♯1~♯4のそれぞれの排気の流量のずれ割合の差が、比較例では大きいのに対して本実施例では小さい。上述したように比較例では断面S内で流量分布が不均一であるのに対して、本実施例では断面S内での流量分布がほぼ均一だからである。このため本実施例では、比較例よりも空燃比センサ60により検出される、気筒♯1~♯4のそれぞれの排気の空燃比のばらつきが抑制される。
【0045】
本実施例では
図1に示したように、空燃比センサ60は触媒コンバータ30よりも触媒コンバータ50の近くに設置されている。即ち、下流壁部33から空燃比センサ60までの距離が確保されている。このため、排気が下流壁部33から空燃比センサ60に到達するまでに十分に旋回し、気筒♯1~♯4のそれぞれからの排気が十分に混合される。このため、空燃比センサ60により検出される、気筒♯1~♯4のそれぞれの排気の空燃比のばらつきが抑制される。
【0046】
また、空燃比センサ60の設置位置での流量分布が均一化されているため、空燃比センサ60よりも更に下流側の空燃比センサ80の設置位置での流量分布も均一化されている。このため、空燃比センサ80により検出される、気筒♯1~♯4のそれぞれの排気の空燃比のばらつきも抑制される。
【0047】
[変形例]
次に複数の変形例について説明する。変形例では、上述した実施例と同一の構成については同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
図7Aは、第1変形例の触媒コンバータ30Aのケース30CAの下流壁部33A周辺の拡大図である。
図7Aは、
図2Aに対応している。触媒コンバータ30Aでは、中心軸線A及びBを含む平面に垂直な方向から下流壁部33A周辺を見た場合に、側壁部341Aは外側に凸となるように湾曲している。詳細には、中心軸線A及びBを含む平面に垂直な方向から見た場合において、中心軸線Aに対して、側壁部341Aの稜線上の任意の点での接線が傾いており、この任意の接線の傾きが側壁部341A上流側から下流側にかけて徐々に増大するのが好ましい。これにより、側壁部341Aに衝突した排気の旋回を促進しつつ、排気の圧損の増大をも抑制することができる。尚、中心軸線Aに対する側壁部341Aの稜線上の任意の点での接線の傾きの最大角度は、90°以下であることが好ましい。また、第1変形例においても側壁部351は、側壁部341Aに対して中心軸線A側に傾いて設けられている。
【0048】
図7Bは、第2変形例の触媒コンバータ30Bのケース30CBの下流壁部33B周辺の拡大図である。
図7Bは、
図2Aに対応している。触媒コンバータ30Bでは、中心軸線A及びBを含む平面に垂直な方向から下流壁部33B周辺を見た場合に、側壁部351Bは中心軸線Aに平行である。排気の圧損を抑制するためには、上述した本実施例のように側壁部351が中心軸線Aに対して側壁部341と同じ側に傾いていることが好ましいが、少なくとも側壁部351Bのように中心軸線Aと並行であれば、排気の圧損を抑制できる。
【0049】
上記実施例では空燃比センサ60及び80は排気の状態として排気の空燃比を検出するが、これに限定されない。例えば空燃比センサ60及び80に加えて、又は空燃比センサ60及び80の少なくとも一方の代わりに、排気中の酸素の濃度を検出する酸素センサ、排気の温度を検出する温度センサ、排気中の二酸化炭素の濃度を検出する二酸化炭素センサ、排気中のNOx(窒素酸化物)の濃度を検出するNOxセンサ、排気中のPM(粒子状物質)の濃度を検出するPMセンサ、排気の流量を検出する流量センサ、及び排気の圧力を検出する圧力センサの少なくとも一つを採用してもよい。また、これらのセンサは上述した断面S内のセンシング領域R内に設置することに限定されない。エンジンシステム1は、例えばエンジン車両に搭載してもよいし、ハイブリッド車両に搭載してもよい。
【0050】
また、上記実施例では触媒30aよりも下流側に触媒50aが設けられているが、これに限定されない。即ち、触媒50aが設けられておらず、触媒30aのみが設けられている排気装置であってもよい。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 エンジンシステム
2 排気装置
10 エンジン(内燃機関)
♯1~♯4 気筒
20 排気マニホールド
21~24 枝管部
25 集合管部
30、50 触媒コンバータ
30a 触媒(第1触媒)
30C ケース
33 下流壁部(接続壁部)
34 周壁部(第1周壁部)
35 周壁部(第2周壁部)
341 側壁部(第1側壁部)
351 側壁部(第2側壁部)
40 排気管
50a 触媒(第2触媒)
60 空燃比センサ(センサ、第1センサ)
80 空燃比センサ(第2センサ)
A 中心軸線(第1中心軸線)
B 中心軸線(第2中心軸線)
P 投影領域