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特開2023-122205積層セラミックコンデンサ及び回路基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122205
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ及び回路基板
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230825BHJP
   H01G 2/06 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H01G4/30 513
H01G4/30 512
H01G4/30 201C
H01G4/30 201F
H01G4/30 201K
H01G2/06 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025772
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】武井 重人
(72)【発明者】
【氏名】笹木 隆
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC02
5E001AC09
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC31
5E082EE04
5E082EE16
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ06
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】低背型であり、取り扱い性及び抗折強度を確保することが可能な積層セラミックコンデンサ及び回路基板を提供する。
【解決手段】積層セラミックコンデンサは、セラミック素体と、第1乃至第4外部電極と、を具備する。セラミック素体は、第1乃至第4側面と、2つの側面を接続する第1乃至第4稜部と、第1及び第2内部電極と、を有する。各外部電極は、稜部をそれぞれ覆い、内部電極に接続される。積層セラミックコンデンサは、第1寸法Tが110μm以下であり、第2寸法Lに対する第3寸法Wの比率が、0.5以上0.85未満である。内部電極は、対向部からX軸及びY軸方向外側に傾いて延び、稜部にそれぞれ面する引出部を有する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸に垂直な第1及び第2主面と、
前記第1軸に直交する第2軸に垂直な第1及び第2側面と、
前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に垂直な第3及び第4側面と、
前記第1及び第4側面を接続する第1稜部と、
前記第2及び第3側面を接続する第2稜部と、
前記第1及び第3側面を接続する第3稜部と、
前記第2及び第4側面を接続する第4稜部と、
前記第1軸方向にセラミック層を介して交互に積層された第1及び第2内部電極と、
を有するセラミック素体と、
前記第1及び第2稜部をそれぞれ覆い、前記第1内部電極に接続された第1及び第2外部電極と、
前記第3及び第4稜部をそれぞれ覆い、前記第2内部電極に接続された第3及び第4第外部電極と、
を具備し、
前記第1軸方向における最大寸法である第1寸法が110μm以下であり、
前記第2軸方向における最大寸法である第2寸法に対する前記第3軸方向における最大寸法である第3寸法の比率が、0.5以上0.85未満であり、
前記第1内部電極は、
前記第2内部電極と前記第1軸方向に対向する第1対向部と、
前記第1対向部から前記第2及び第3軸方向に対して外側に傾いて延び、前記第1及び第2稜部にそれぞれ面する一対の第1引出部と、を有し、
前記第2内部電極は、
前記第1対向部と前記第1軸方向に対向する第2対向部と、
前記第2対向部から前記第2及び第3軸方向に対して外側に傾いて延び、前記第3及び第4稜部にそれぞれ面する一対の第2引出部と、を有する
積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記一対の第1引出部各々は、前記第1対向部から、前記第1稜部又は前記第2稜部によって接続される2つの側面に向かって、前記第2及び第3軸方向における外側にそれぞれ延びる一対の第1側縁部をそれぞれ含み、
前記一対の第2引出部各々は、前記第2対向部から、前記第3稜部又は前記第4稜部によって接続される2つの側面に向かって、前記第2及び第3軸方向における外側にそれぞれ延びる一対の第2側縁部をそれぞれ含む
積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
請求項2に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記一対の第1側縁部は、相互に実質的に平行に延び、
前記一対の第2側縁部は、相互に実質的に平行に延びる
積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記第2寸法は、1000μm以下である
積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記第2寸法に対する、前記第2軸方向に隣り合う前記第1及び第4外部電極の間の前記第2軸方向における最小距離の比率は、0.05以上0.95以下である
積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記第3寸法に対する、前記第3軸方向に隣り合う前記第1及び第2外部電極の間の前記第3軸方向における最小距離の比率は、0.05以上0.95以下である
積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記第1外部電極の前記第1側面からの前記第2軸方向における突出寸法は、3μm以上30μm以下である
積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
実装面を有する基板本体と、
前記実装面に実装され、前記実装面と第1軸方向に対向する積層セラミックコンデンサと、
を具備し、
前記積層セラミックコンデンサは、
前記第1軸に垂直な第1及び第2主面と、
前記第1軸に直交する第2軸に垂直な第1及び第2側面と、
前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に垂直な第3及び第4側面と、
前記第1及び第4側面を接続する第1稜部と、
前記第2及び第3側面を接続する第2稜部と、
前記第1及び第3側面を接続する第3稜部と、
前記第2及び第4側面を接続する第4稜部と、
前記第1軸方向にセラミック層を介して交互に積層された第1及び第2内部電極と、
を有するセラミック素体と、
前記第1及び第2稜部をそれぞれ覆い、前記第1内部電極に接続された第1及び第2外部電極と、
前記第3及び第4稜部をそれぞれ覆い、前記第2内部電極に接続された第3及び第4第外部電極と、
を有し、かつ、
前記第1軸方向における最大寸法である第1寸法が110μm以下であり、
前記第2軸方向における最大寸法である第2寸法に対する前記第3軸方向における最大寸法である第3寸法の比率が、0.5以上0.85未満であり、
前記第1内部電極は、
前記第2内部電極と前記第1軸方向に対向する第1対向部と、
前記第1対向部から前記第2及び第3軸方向に対して外側に傾いて延び、前記第1及び第2稜部にそれぞれ面する一対の第1引出部と、を有し、
前記第2内部電極は、
前記第1対向部と前記第1軸方向に対向する第2対向部と、
前記第2対向部から前記第2及び第3軸方向に対して外側に傾いて延び、前記第3及び第4稜部にそれぞれ面する一対の第2引出部と、を有する
回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ及びそれが実装された回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の電子機器の高機能化に伴い、ノイズ除去等の目的で積層セラミックコンデンサが使用されている。積層セラミックコンデンサは、基板に内蔵され、又は基板の表面に実装されること等によって電子機器に搭載される。このため、積層セラミックコンデンサに対しては、基板の構造的な制約や、電子機器に搭載される他の電子部品との関係によって、低背化(薄型化)が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、小型でかつ薄型であっても抗折強度を維持する観点から、積層セラミックコンデンサの長さ方向の寸法Lと幅方向の寸法Wとを比較したとき、0.85≦W/L≦1、かつ、L≦750μmである積層セラミックコンデンサが記載されている。つまり、この積層セラミックコンデンサは、積層方向から見た際に正方形又はそれに近い形状を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-24077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、製造時や製品のユーザの取り扱い性の観点からは、積層セラミックコンデンサの形状は、従来の2端子型に近い、積層方向に直交する方向に長手を有する直方体形状であることが望ましい。その一方で、低背型(薄型)でかつこのような直方体形状とした場合には、十分な抗折強度を確保できない懸念もある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、低背型であり、取り扱い性及び抗折強度を確保することが可能な積層セラミックコンデンサ及びそれが実装された回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミックコンデンサは、セラミック素体と、第1及び第2外部電極と、第3及び第4外部電極と、を具備する。
前記セラミック素体は、
第1軸に垂直な第1及び第2主面と、
前記第1軸に直交する第2軸に垂直な第1及び第2側面と、
前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に垂直な第3及び第4側面と、
前記第1及び第4側面を接続する第1稜部と、
前記第2及び第3側面を接続する第2稜部と、
前記第1及び第3側面を接続する第3稜部と、
前記第2及び第4側面を接続する第4稜部と、
前記第1軸方向にセラミック層を介して交互に積層された第1及び第2内部電極と、
を有する。
前記第1及び第2外部電極は、前記第1及び第2稜部をそれぞれ覆い、前記第1内部電極に接続される。
前記第3及び第4外部電極は、前記第3及び第4稜部をそれぞれ覆い、前記第2内部電極に接続される。
前記積層セラミックコンデンサは、
前記第1軸方向における最大寸法である第1寸法が110μm以下であり、
前記第2軸方向における最大寸法である第2寸法に対する前記第3軸方向における最大寸法である第3寸法の比率が、0.5以上0.85未満である。
前記第1内部電極は、
前記第2内部電極と前記第1軸方向に対向する第1対向部と、
前記第1対向部から前記第2及び第3軸方向に対して外側に傾いて延び、前記第1及び第2稜部にそれぞれ面する一対の第1引出部と、を有する。
前記第2内部電極は、
前記第1対向部と前記第1軸方向に対向する第2対向部と、
前記第2対向部から前記第2及び第3軸方向に対して外側に傾いて延び、前記第3及び第4稜部にそれぞれ面する一対の第2引出部と、を有する。
【0008】
上記構成では、全ての稜部が外部電極によって覆われているため、積層セラミックコンデンサの第2及び第3軸方向の端部が外部電極によって厚く形成されることになり、姿勢の安定性を高めることができる。
また、第2寸法に対する第3寸法の比率が0.5以上0.85未満であるため、第1軸方向から見た平面視における形状が、第2軸方向に長手を有する長方形状となる。これにより、第2軸方向を判別することができ、取り扱い性を高めることができる。また、第2軸方向に長手を有することで、複数の積層セラミックコンデンサを一列に並べて搬送するような場面においても、不具合を抑制することができる。
さらに、一対の第1引出部と一対の第2引出部とが、4つの稜部に向かって斜めに引き出されることにより、第1及び第2内部電極を重ねた形状がX字状となる。これにより、第1寸法が110μm以下である低背型の積層セラミックコンデンサにおいて、抗折強度を高めることができる。
【0009】
前記一対の第1側縁部は、相互に実質的に平行に延び、
前記一対の第2側縁部は、相互に実質的に平行に延びていてもよい。
これにより、抗折強度をより安定して高めることができる。また、第1及び第2引出部が、局所的に幅の細い部分を有さないため、第1及び第2内部電極における電流の抵抗値の上昇を抑制することができる。これにより、積層セラミックコンデンサにおける等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)の上昇を抑制することができる。
【0010】
前記第2寸法は、1000μm以下であってもよい。これにより、積層セラミックコンデンサを小型化することができる。
【0011】
前記第2寸法に対する、前記第2軸方向に隣り合う前記第1及び第4外部電極の間の前記第2軸方向における最小距離の比率は、0.05以上0.95以下であってもよい。
また、前記第3寸法に対する、前記第3軸方向に隣り合う前記第1及び第2外部電極の間の前記第3軸方向における最小距離の比率は、0.05以上0.95以下であってもよい。
これらにより、2つの外部電極間の導通を抑制できるとともに、外部電極の寸法を十分に確保し、内部電極との導通を確保することができる。
【0012】
前記第1外部電極の前記第1側面からの前記第2軸方向における突出寸法は、3μm以上30μm以下であってもよい。
これにより、稜部を十分に被覆できるとともに、積層セラミックコンデンサの小型化に貢献することができる。
【0013】
本発明の他の実施形態に係る回路基板は、第1軸に垂直な実装面を有する基板本体と、前記実装面に実装され、前記実装面と第1軸方向に対向する積層セラミックコンデンサと、を具備する。
前記積層セラミックコンデンサは、セラミック素体と、第1及び第2外部電極と、第3及び第4外部電極と、を有する。
前記セラミック素体は、
前記第1軸に垂直な第1及び第2主面と、
前記第1軸に直交する第2軸に垂直な第1及び第2側面と、
前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に垂直な第3及び第4側面と、
前記第1及び第4側面を接続する第1稜部と、
前記第2及び第3側面を接続する第2稜部と、
前記第1及び第3側面を接続する第3稜部と、
前記第2及び第4側面を接続する第4稜部と、
前記第1軸方向にセラミック層を介して交互に積層された第1及び第2内部電極と、
を有する。
前記第1及び第2外部電極は、前記第1及び第2稜部をそれぞれ覆い、前記第1内部電極に接続される。
前記第3及び第4外部電極は、前記第3及び第4稜部をそれぞれ覆い、前記第2内部電極に接続される。
前記積層セラミックコンデンサは、
前記第1軸方向における最大寸法である第1寸法が110μm以下であり、
前記第2軸方向における最大寸法である第2寸法に対する前記第3軸方向における最大寸法である第3寸法の比率が、0.5以上0.85未満である。
前記第1内部電極は、
前記第2内部電極と前記第1軸方向に対向する第1対向部と、
前記第1対向部から前記第2及び第3軸方向に対して外側に傾いて延び、前記第1及び第2稜部にそれぞれ面する一対の第1引出部と、を有する。
前記第2内部電極は、
前記第1対向部と前記第1軸方向に対向する第2対向部と、
前記第2対向部から前記第2及び第3軸方向に対して外側に傾いて延び、前記第3及び第4稜部にそれぞれ面する一対の第2引出部と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、低背型であり、取り扱い性及び抗折強度を確保することが可能な積層セラミックコンデンサ及びそれが実装された回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す図である。
図2図1のA-A'線に沿った積層セラミックコンデンサの断面図である。
図3図1のB-B'線に沿った積層セラミックコンデンサの断面図である。
図4】上記積層セラミックコンデンサをZ軸方向(第1軸方向)から見た平面図である。
図5】上記積層セラミックコンデンサをX軸方向(第2軸方向)から見た側面図である。
図6】上記積層セラミックコンデンサをY軸方向(第3軸方向)から見た側面図である。
図7】上記積層セラミックコンデンサを実装した本実施形態の回路基板を示す平面図である。
図8】本実施形態の第1比較例に係る積層セラミックコンデンサの構成を示す斜視図である。
図9】上記第1比較例に係る積層セラミックコンデンサをZ軸方向(第1軸方向)から見た平面図である。
図10】積層セラミックコンデンサの包装過程において用いられる搬送装置を用いて、本実施形態の第1比較例に係る積層セラミックコンデンサを搬送している状態を示す図であり、Aは上方から見た平面図、Bは側方から見た側面図である。
図11】上記搬送装置を用いて、本実施形態の積層セラミックコンデンサを搬送している状態を示す図であり、Aは上方から見た平面図、Bは側方から見た側面図である。
図12】本実施形態の第2比較例に係る積層セラミックコンデンサの構成を示す平面図である。
図13】上記搬送装置を用いて、本実施形態の第2比較例に係る積層セラミックコンデンサを搬送している状態を示す、上方から見た平面図である。
図14】上記積層セラミックコンデンサのセラミック素体の断面図であり、Aは第1内部電極の位置でX軸方向(第2軸方向)及びY軸方向(第3軸方向)に平行に切断した態様を示し、Bは第2内部電極の位置でX軸方向(第2軸方向)及びY軸方向(第3軸方向)に平行に切断した態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。X軸、Y軸、及びZ軸は、全図について共通であり、積層セラミックコンデンサ10,20,30に対して固定された固定座標系を規定する。
【0017】
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~6は、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、図1のA-A'線に沿った積層セラミックコンデンサ10の断面図である。図3は、図1のB-B'線に沿った積層セラミックコンデンサ10の断面図である。図4は、積層セラミックコンデンサ10をZ軸方向から見た平面図である。図5は、積層セラミックコンデンサ10をX軸方向から見た側面図である。図6は、積層セラミックコンデンサ10をY軸方向から見た側面図である。
【0018】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14aと、第2外部電極14bと、第3外部電極14cと、第4外部電極14dと、を備えた4端子型の積層セラミックコンデンサである。なお、各外部電極14a,14b,14c,14dを、外部電極14とも称する。また、図1では外部電極14に覆われた部分のセラミック素体11の構成を破線で示している。
【0019】
以下の説明において、X軸方向における外側とは、積層セラミックコンデンサ10をX軸方向に2等分する仮想的なY-Z平面から遠ざかる側を意味する。X軸方向における内側とは、当該仮想的なY-Z平面に近づく側を意味する。
Y軸方向における外側とは、積層セラミックコンデンサ10をY軸方向に2等分する仮想的なX-Z平面から遠ざかる側を意味する。Y軸方向における内側とは、当該仮想的なX-Z平面に近づく側を意味する。
【0020】
セラミック素体11は、X軸に垂直な第1側面S1及び第2側面S2と、Y軸に垂直な第3側面S3及び第4側面S4と、Z軸に垂直な第1及び第2主面M1,M2と、を有する。つまり、セラミック素体11は、略直方体状であり、X-Y平面に沿った矩形の平面形状を有する。なお、各側面S1,S2,S3,S4を側面Sとも称する。また、X軸方向は、Z軸に直交しセラミック素体11の2つの側面Sに垂直な2方向のうち、積層セラミックコンデンサ10の最大寸法が大きい方向とする。
【0021】
セラミック素体11の4つの側面S及び2つの主面M1,M2はいずれも、平坦面として構成される。本実施形態に係る平坦面とは、全体的に見たときに平坦と認識される面であれば厳密に平面でなくてもよく、例えば、表面の微小な凹凸形状や、所定の範囲に存在する緩やかな湾曲形状などを有する面も含まれる。
【0022】
さらに、セラミック素体11は、第1側面S1及び第4側面S4を接続する第1稜部R1と、第2側面S2及び第3側面S3を接続する第2稜部R2と、第1側面S1及び第3側面S3を接続する第3稜部R3と、第2側面S2及び第4側面S4を接続する第4稜部R4と、を有する。各稜部R1,R2,R3,R4を、稜部Rとも称する。
【0023】
これらの稜部Rは、いずれも、Z軸方向に沿って延びている。稜部Rは、典型的には、2つの側面Sを滑らかに接続する凸状の曲面として形成される。しかし、稜部Rは、この構成に限定されず、例えば、2つの側面Sを直接接続する交線であってもよい。
【0024】
第1外部電極14aは、第1稜部R1を覆っており、例えば第1及び第4側面S1,S4及び主面M1,M2の一部に形成されている。第2外部電極14bは、第2稜部R2を覆っており、例えば第2及び第3側面S2,S3及び主面M1,M2の一部に形成されている。第3外部電極14cは、第3稜部R3を覆っており、例えば第1及び第3側面S1,S3及び主面M1,M2の一部に形成されている。第4外部電極14dは、第4稜部R4を覆っており、例えば第2及び第4側面S2,S4及び主面M1,M2の一部に形成されている。
【0025】
本実施形態において、各側面Sには、2つの外部電極14が間隔をあけて配置されている。図1図5及び図6に示すように、各側面S及び各主面M1,M2における外部電極14の平面形状は、長方形状であり得る。なお、外部電極14の形状は図示の例に限定されない。
【0026】
第1及び第2外部電極14a,14bは、同一の極性を有する。第3及び第4外部電極14c、14dは、同一の極性であって第1及び第2外部電極14a,14bと異なる極性を有する。このため、第1及び第2外部電極14a,14b又は第3及び第4外部電極14c、14dの一方をグランド電極、他方をソース電極とすることができる。
【0027】
外部電極14は、電気の良導体により形成されている。外部電極14を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。外部電極14は、例えば、導電性ペーストを焼き付けた焼結膜上に、1又は複数のメッキ膜が形成された構成を有していてもよい。
【0028】
図2及び図3に示すように、セラミック素体11は、X-Y平面に沿った平板状の複数のセラミック層がZ軸方向に積層され、セラミック層の間に内部電極12,13が積層された構成を有する。セラミック素体11は、セラミック層を介してZ軸方向に交互に積層された第1内部電極12及び第2内部電極13を有する。内部電極12,13は、X-Y平面に沿って延びるシート状に構成される。
【0029】
内部電極12,13は、電気の良導体であって、金属導体により形成されている。内部電極12,13を形成する材料としては、例えばニッケル(Ni)を主成分とする金属又は合金が挙げられる。内部電極12,13の層数については、特に限定されず、例えば20~50層とすることができる。各内部電極12,13のZ軸方向に沿った厚み寸法は、例えば0.1μm~1.5μm程度とすることができる。
【0030】
セラミック素体11は、例えば、セラミックグリーンシートを積層して未焼成の積層チップを作製し、この積層チップを焼成することにより形成される。積層チップの内部電極12,13の積層部分は、第1内部電極12に対応する電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極13に対応する電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートと、を交互に積層することにより形成される。電極パターンは、例えば、導電性ペーストを印刷することにより形成される。積層チップにおいて、内部電極12,13の積層部分のZ軸方向上下の領域には、電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートが積層される。
【0031】
図2に示すように、第1内部電極12は、第1対向部121と、一対の第1引出部122と、を含む。第1対向部121は、第2内部電極13の第2対向部131とZ軸方向に対向する。一対の第1引出部122は、第1対向部121から第1稜部R1及び第2稜部R2までそれぞれ延びる。これにより、これらの第1引出部122は、第1及び第2外部電極14a,14bにそれぞれ接続される。
【0032】
図3に示すように、第2内部電極13は、第2対向部131と、一対の第2引出部132と、を含む。第2対向部131は、第1内部電極12の第1対向部121とZ軸方向に対向する部分である。一対の第2引出部132は、第2対向部131から第3稜部R3及び第4稜部R4までそれぞれ延びる。これにより、これらの第2引出部132は、第3及び第4外部電極14c,14dにそれぞれ接続される。
【0033】
積層セラミックコンデンサ10では、第1及び第2外部電極14a,14bと第3及び第4外部電極14c,14dとの間に電圧が印加されると、第1対向部121と第2対向部131との間の複数のセラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、第1及び第2外部電極14a,14bと第3及び第4外部電極14c,14dとの間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0034】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。誘電体セラミックスは、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とすることができる。なお、ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含んでもよい。ペロブスカイト構造を有するセラミック材料としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含む材料が挙げられる。具体的には、例えば、Ba1-x-yCaSrTi1-zZr(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)が挙げられる。
【0035】
なお、誘電体セラミックスは、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Ti,Zr,Ti)O3)、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム((Ba,Ca)(Ti,Zr)O3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)、酸化チタン(TiO2)などの組成系でもよい。
【0036】
内部電極12,13間のセラミック層のZ軸方向に沿った厚み寸法は、所望の静電容量、内部電極12,13の層数やセラミック層の材料、セラミック素体11のサイズ等を考慮して設定でき、例えば0.2μm~2.0μm程度とすることができる。
【0037】
[積層セラミックコンデンサ10の外観形状]
積層セラミックコンデンサ10において、Z軸方向における最大寸法を第1寸法T、X軸方向における最大寸法を第2寸法L、Y軸方向における最大寸法を第3寸法Wと規定する。Z軸方向は、セラミック層及び内部電極12,13の積層方向である。X軸方向は、上述のように、積層セラミックコンデンサ10の長手方向となるため、第2寸法Lは、第3寸法Wよりも大きくなる。
【0038】
本実施形態において、積層セラミックコンデンサ10は、低背型、つまり薄型に構成される。具体的に、積層セラミックコンデンサ10では、Z軸方向における最大寸法である第1寸法Tが110μm以下であり、例えば100μm以下である。これにより、積層セラミックコンデンサ10が狭い実装スペースにも実装可能となる。また、第1寸法Tは、積層セラミックコンデンサ10の抗折強度及び静電容量を確保する観点から、例えば60μm以上であり得る。
【0039】
積層セラミックコンデンサ10の第1寸法Tを上記範囲とするため、セラミック素体11のZ軸方向における最大寸法は、例えば40μm以上80μm以下であり得る。
【0040】
本実施形態において、積層セラミックコンデンサ10では、第2寸法Lに対する第3寸法Wの比率(W/L)が、0.50以上0.85未満である。これにより、Z軸方向から見た積層セラミックコンデンサ10の平面形状が、X軸方向に長手を有する長方形状となる。つまり、積層セラミックコンデンサ10のX軸方向及びY軸方向が外観から明確に判別でき、製造時、包装時及び実装時における取り扱い性の点で有利となる。
【0041】
さらに、例えばW/Lを0.60以上とすることで、内部電極12,13の面積を十分に確保し、積層セラミックコンデンサ10の静電容量の低下を抑制することができる。
【0042】
また、積層セラミックコンデンサ10をより小型化する観点から、第2寸法Lは、例えば1000μm以下、さらに900μm以下であり得る。また、第2寸法Lは、例えば150μm以上であり、静電容量を向上させる等の観点から、例えば350μm以上、500μm以上であり得る。同様に、第3寸法Wは、例えば100μm以上、300μm以上、400μm以上であり得る。
【0043】
加えて、積層セラミックコンデンサ10の基板への実装性の観点からも、寸法T,L,Wの好ましい範囲を規定することができる。
【0044】
図7は、積層セラミックコンデンサ10を実装した回路基板100を示す平面図である。
回路基板100は、例えばBGA(Ball Grid Array)基板として構成される。
【0045】
具体的には、回路基板100は、プリント基板等で構成された基板本体110と、積層セラミックコンデンサ10と、を備える。基板本体110は、第1実装面と、第1実装面の反対側の面である第2実装面(実装面)111と、を有する。積層セラミックコンデンサ10は、第2実装面(実装面)111に実装される。
【0046】
なお、図示はしないが、回路基板100は、第1実装面に実装された集積回路等の電子部品と、電子部品を覆うエポキシ樹脂等の絶縁膜と、をさらに備えていてもよい。この場合、回路基板100は、パッケージ基板となり、積層セラミックコンデンサ10は、一例として、集積回路等のノイズ除去のために設けられる。
【0047】
実装面111は、BGA面として構成され、2方向に配列された複数のハンダボール112を有する。この例では、複数のハンダボール112が同一のサイズを有し、X軸方向及びY軸方向に等間隔に配置されている。つまり、ハンダボール112は、実装面111上に格子状に配置されている。なお、実装面111には、積層セラミックコンデンサ10以外の電子部品が実装されていてもよい。
【0048】
積層セラミックコンデンサ10は、実装面111とZ軸方向に対向するように配置される。図7に示す例では、第2主面M2が実装面111と対向しているが、第1主面M1が実装面111と対向していてもよい。積層セラミックコンデンサ10は、例えば、外部電極14をハンダボール112上に配置し、ハンダボール112を加熱によって溶融させ、冷却したハンダボール112を外部電極14と固着させることで、実装面111に実装される。
【0049】
回路基板100がBGA基板の場合、ハンダボール112の配置にはいくつか規格がある。例えば、ハンダボール112間のピッチPが約0.35mm(350μm)、ハンダボール112の直径Dmが約0.2mm(200μm)となる規格のBGA基板が汎用されている。なお、ピッチPは、隣り合う2つのハンダボール112の中心間の距離である。
【0050】
上記規格の実装面111のハンダボール112各々に積層セラミックコンデンサ10の外部電極14を実装可能とするため、第2寸法Lは、例えば、600μm以上750μm以下であり得る。第3寸法Wは、例えば500μm以上600μm以下であり得る。寸法L,Wをこのような範囲とすることで、上記規格の4個のハンダボール上に積層セラミックコンデンサ10を実装することができ、省スペースな実装を実現することができる。
【0051】
また、ハンダボール112間のピッチPが0.35μmよりも小さい、例えば0.1μm程度のBGA基板であれば、第2寸法Lが150μm以上、第3寸法が100μm以上の積層セラミックコンデンサ10も実装可能である。
【0052】
また、実装面111は、ハンダボール112とは異なる大型のハンダボールを用いて他の基板に実装されることがある。この大型のハンダボールの高さは、例えば110μm程度であることが多い。このため、第1寸法Tを110μm以下、例えば100μm以下とすることで、回路基板100とそれが実装される基板との間に積層セラミックコンデンサ10を配置することができ、省スペースな実装を実現できる。
【0053】
一方、セラミック素体11の表面に形成された外部電極14に関する寸法については、積層セラミックコンデンサ10の小型化等に対応しつつ、2つの外部電極14間の導通等の不具合を抑制する観点から、好ましい範囲を以下のように設定することができる。
【0054】
図6を参照し、各外部電極14のX軸方向における最大寸法DL1は、例えば40μm以上、100μm以上であり、例えば500μm以下、400μm以下であり得る。
【0055】
X軸方向に隣り合う2つの外部電極14の間のX軸方向における最小距離DL2は、例えば50μm以上、70μm以上であり得る。これにより、X軸方向に隣り合う2つの外部電極14間における金属イオンのマイグレーションを抑制し、ショート等の不具合を抑制することができる。また、最小距離DL2は、例えば1000μm以下、400μm以下であり得る。なお、X軸方向に隣り合う2つの外部電極14は、第3側面S3において隣り合う第2及び第3外部電極14b,14c、又は第4側面S4において隣り合う第1及び第4外部電極14a,14dである。
【0056】
図5を参照し、各外部電極14のY軸方向における最大寸法DW1は、例えば40μm以上、80μm以上であり、例えば450μm以下、350μm以下であり得る。
【0057】
Y軸方向に隣り合う2つの外部電極14の間のY軸方向における最小距離DW2は、例えば50μm以上、70μm以上であり得る。これにより、Y軸方向に隣り合う2つの外部電極14間における金属のマイグレーションを抑制し、ショート等の不具合を抑制することができる。また、最小距離DW2は、例えば800μm以下、300μm以下であり得る。なお、Y軸方向に隣り合う2つの外部電極14は、第1側面S1において隣り合う第1及び第3外部電極14a,14c、又は第2側面S2において隣り合う第2及び第4外部電極14b,14dである。
【0058】
図6を参照し、積層セラミックコンデンサ10の第2寸法Lに対する、X軸方向に隣り合う2つの外部電極14の最小距離DL2の比率(DL2/L)は、例えば0.05以上、0.10以上であり、例えば0.95以下、0.90以下であり得る。
【0059】
図5を参照し、積層セラミックコンデンサ10の第3寸法Wに対する、Y軸方向に隣り合う2つの外部電極14の最小距離DW2の比率(DW2/W)は、例えば0.05以上、0.10以上であり、例えば0.95以下、0.70以下であり得る。
【0060】
DL1/L及びDL2/Wを上記範囲とすることにより、2つの外部電極14間が導通してショートすることを抑制できるとともに、2つの外部電極14の寸法を十分に確保し、外部電極14を内部電極12,13と確実に接続させることができる。
【0061】
また、後述するように、積層セラミックコンデンサ10を搬送する際の不具合を抑制するためには、稜部Rが外部電極14によって十分に覆われていることが効果的である。このため、第1外部電極14aの第1側面S1からのX軸方向における突出寸法DL3は、例えば、3μm以上、10μm以上であり、例えば30μm以下、20μm以下であり得る。この場合の突出寸法DL3は、第1側面S1と、第1外部電極14aの最もX軸方向外側に位置する部分と、の間のX軸方向における距離である。なお、第3外部電極14cの第1側面S1からのX軸方向における突出寸法、第2外部電極14b又は第4外部電極14dの第2側面S2からのX軸方向における突出寸法も、突出寸法DL3と同様の範囲とすることができる。
【0062】
この突出寸法DL3は、外部電極14の厚みによって調整することができる。外部電極14の最大厚み寸法は、例えば、3μm以上、10μm以上であり、例えば30μm以下、20μm以下であり得る。
【0063】
積層セラミックコンデンサ10が上述のような外観形状を有することの作用効果について、本実施形態の比較例に係る積層セラミックコンデンサの構成と対比して説明する。なお、以下の比較例において、積層セラミックコンデンサ10と共通する構成については、同一の符号を付す。
【0064】
まず、第1比較例として、稜部Rが外部電極によって覆われていない例を挙げる。
図8及び図9は、本実施形態の第1比較例に係る積層セラミックコンデンサ20の構成を示す図であり、図8は斜視図、図9はZ軸方向から見た平面図である。
【0065】
積層セラミックコンデンサ20は、セラミック素体11と、第1内部電極に接続された第1及び第2外部電極24a,24bと、第2内部電極に接続された第3及び第4外部電極24c,24dと、を有する。各外部電極24a,24b,24c,24dを、外部電極24とも称する。積層セラミックコンデンサ20では、積層セラミックコンデンサ10と異なり、外部電極24が稜部Rを覆っていない。外部電極24は、第1及び第2側面S1,S2よりもX軸方向内側に位置している。
【0066】
第1比較例に係る積層セラミックコンデンサ20は、低背型で自重が軽い上に、稜部Rが外部電極24によって覆われていないため、姿勢が不安定になりやすく、取り扱い上の不具合が生じ得る。
第1比較例に係る積層セラミックコンデンサ20において取り扱い上の不具合が生じる工程として、積層セラミックコンデンサ20を一列に並べて振動を加えながら搬送する工程が挙げられる。このような工程の一例として、積層セラミックコンデンサ20の製造後、包装装置へ搬送する工程について具体的に説明する。
【0067】
図10A,Bは、積層セラミックコンデンサの包装過程において用いられる搬送装置200を用いて、積層セラミックコンデンサ20を搬送している状態を示す図であり、図10Aは上方から見た平面図、図10Bは側方から見た側面図である。なお、図10A,Bにおいて記載しているX軸、Y軸及びZ軸は、問題なく搬送されている搬送方向MDの前方(下流側)の積層セラミックコンデンサ20に対する座標系とする。
【0068】
搬送装置200は、例えば、底板210上に列をなして配置された積層セラミックコンデンサに対して、上下方向の振動を付加することで、搬送方向MDに沿って積層セラミックコンデンサを搬送する。積層セラミックコンデンサ20は、X軸方向と搬送方向MDとが一致するように配置される。搬送装置200は、搬送方向MDの下流側において包装装置(テーピング装置)と接続されており、積層セラミックコンデンサを順に包装装置に提供することができる。
【0069】
搬送装置200において、底板210の両側部には一対の側壁220が配置され、上部にはカバー230が配置される。一対の側壁220間の距離は、積層セラミックコンデンサ20の第3寸法Wの3割程度大きい寸法として設計され得る。また、底板210とカバー230との距離は、積層セラミックコンデンサ20の第1寸法Tの3割程度大きい寸法として設計され得る。
【0070】
通常は、図10Bの搬送方向MDにおける上流及び下流側の積層セラミックコンデンサ20のように、外部電極24が底板210に接した状態で搬送される。一方で、積層セラミックコンデンサ20のように稜部Rが外部電極24によって覆われていない場合は、積層セラミックコンデンサ20のX軸方向端部(搬送方向MDにおける前方部及び後方部)に、第1寸法Tよりも小さい寸法であるセラミック素体11の側面Sが露出する。
【0071】
そのため、搬送装置200から上下振動が加わり、積層セラミックコンデンサ20の姿勢が不安定になると、薄いセラミック素体11の前方部及び後方部同士が上下に重なりやすくなる。例えば、図10Bに示す例では、前方の積層セラミックコンデンサ20と底板210との隙間に、後方の積層セラミックコンデンサ20のセラミック素体11が入り込んでいる。あるいは、後方の積層セラミックコンデンサ20のセラミック素体11が前方の積層セラミックコンデンサ20上に乗り上げることもある。2つの積層セラミックコンデンサ20が、搬送装置200の底板210とカバー230の間に嵌ると、上下振動によっても積層セラミックコンデンサ20の列が動かなくなり、搬送が困難となり得る。
【0072】
また、セラミック素体11の稜部Rの先端の角部と外部電極24とが底板210に支持されることによっても、積層セラミックコンデンサ20の前方部又は後方部が底板210に対して傾きやすくなる。
【0073】
図11A,Bは、搬送装置200を用いて、積層セラミックコンデンサ10を搬送している状態を示す図であり、図11Aは上方から見た平面図、図11Bは側方から見た側面図である。
【0074】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ10では、稜部Rが外部電極14によって覆われているため、積層セラミックコンデンサ10の前方部及び後方部の厚みがセラミック素体11の厚みよりも厚くなる。これにより、前後の積層セラミックコンデンサ10同士が上下に重なりにくくなる。また、稜部Rの先端の角部が底板210に接することがなく、積層セラミックコンデンサ10が底板210に対して大きく傾きにくい。これにより、積層セラミックコンデンサ10が搬送装置200によって安定して搬送され、積層セラミックコンデンサ10同士が上下に重なるような不具合を抑制することができる。
【0075】
次に、第2比較例として、第2寸法Lに対する第3寸法の比率(W/L)が0.85以上1.0以下となる例を挙げる。
図12は、本実施形態の第2比較例に係る積層セラミックコンデンサ30の構成を示す平面図である。
【0076】
積層セラミックコンデンサ30は、セラミック素体31と、第1内部電極に接続された第1及び第2外部電極14a,14bと、第2内部電極に接続された第3及び第4外部電極14c,14dと、を有する。セラミック素体31では、第1実施形態のセラミック素体11とは異なり、第2寸法Lに対する第3寸法の比率(W/L)が0.85以上1.0以下である。つまり、セラミック素体31では、Z軸方向から見た平面形状が正方形状又はそれに近い形状を有する。このような積層セラミックコンデンサ30は、格子状に並んだBGA基板のハンダボールと外部電極14との位置合わせがしやすいという利点があるものの、実質的に長手方向を有さないため、やはり搬送装置200による搬送時等において不具合を生じることがある。
【0077】
図13は、搬送装置200を用いて、積層セラミックコンデンサ30を搬送している状態を示す図であり、上方から見た平面図である。なお、図13において記載しているX軸、Y軸及びZ軸は、問題なく搬送されている搬送方向MDの前方(下流側)の積層セラミックコンデンサ30に対する座標系とする。
【0078】
上述のように、一対の側壁220間の距離は、搬送対象となる積層セラミックコンデンサの第3寸法Wの3割程度大きい寸法として設計され得る。
ここで、Z軸方向から見てほぼ正方形状の平面形状を有する積層セラミックコンデンサ30では、長方形状の平面形状を有する積層セラミックコンデンサ10と比較して、第3寸法Wに対する、Z軸方向から見た平面視における対角線上の稜部R間の長さの比率が小さくなる。このため、図13に示すように、積層セラミックコンデンサ30が振動によってZ軸まわりに回転した際に、対角線上にある一対の稜部Rが側壁220間に嵌りやすくなり、搬送が困難となり得る。
【0079】
これに対し、図11Aに示すように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、積層セラミックコンデンサ30よりも第3寸法Wに対する上記対角線上の稜部R間の長さの比率が大きい。このため、仮に稜部Rが側壁220と接触しても、一対の稜部Rが側壁220間に嵌ることを抑制できる。したがって、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、第2比較例に係る積層セラミックコンデンサ30に対しても、搬送装置200を用いた搬送時の取り扱いにおいて有利となる。
【0080】
さらに、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、積層セラミックコンデンサ30よりも一般的な2端子型の積層セラミックコンデンサに近い形状である。このため、2端子型の積層セラミックコンデンサに慣れたユーザにとっても、導入しやすく、取り扱いが容易になる。
【0081】
加えて、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、積層セラミックコンデンサ30と比較して、長手方向が判別しやすい。つまり、積層セラミックコンデンサ10では、第1及び第2側面S1,S2に垂直なX軸方向と、第3及び第4側面S3,S4に垂直なY軸方向と、を外観から容易に判別することができる。これにより、実装時における姿勢を規定しやすく、実装時の基板上への配置ミス等を防止しやすくなる。
【0082】
また、積層セラミックコンデンサ10が上記方向の判別性を有することで、積層セラミックコンデンサ10の欠陥が生じた際に、X-Y平面内における欠陥部位の位置を特定しやすいという利点もある。これにより、同ロットの他の製品における欠陥部位の特定や、欠陥の原因究明等に役立てることができる。
【0083】
したがって、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、低背型の構成であり、かつ、取り扱い性を向上させることができる。
【0084】
[内部電極の詳細な形状]
本実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、第1寸法Tが110μm以下であり、かつ、W/Lが0.5以上0.85未満という条件を満たしつつ、さらに抗折強度を高める観点から、以下のような特徴的な形状の内部電極12,13を有していてもよい。
【0085】
図14A,Bは、セラミック素体11の断面図である。図14Aは、第1内部電極12の位置でX-Y平面と平行に切断した態様を示し、図14Bは、第2内部電極13の位置でX-Y平面と平行に切断した態様を示す。なお、図14Aにおいて、第2内部電極13の第2側縁部9が重なる位置を破線で示している。
【0086】
図14Aに示すように、第1内部電極12は、第1対向部121と、第1対向部121からX軸方向及びY軸方向に対して外側に傾いて延び、第1及び第2稜部R1,R2にそれぞれ面する一対の第1引出部122と、を有する。
【0087】
図14Bに示すように、第2内部電極13は、第1対向部121とZ軸方向に対向する第2対向部131と、第2対向部131からX軸方向及びY軸方向に対して外側に傾いて延び、第3及び第4稜部R3,R4にそれぞれ面する一対の第2引出部132と、を有する。
【0088】
第1及び第2対向部121,131は、4つの側面S1,S2,S3,S4及び4つの稜部R1,R2,R3,R4から間隔をあけて配置される。つまり、第1及び第2対向部121,131は、これらの側面S及び稜部RよりもX軸方向及びY軸方向において内側に配置される。
【0089】
本実施形態において、第1及び第2対向部121,131は、実質的に矩形の平面形状を有する。第1及び第2対向部121,131は、角ばった矩形でもよいし、矩形の角が丸まった形状でもよい。また、第1及び第2対向部121,131各々は、例えば、X軸方向に平行な2辺と、Y軸方向に平行な2辺と、とを含む。
【0090】
本実施形態において、第1及び第2引出部122,132は、それぞれ、第1及び第2対向部121,131から、X軸方向及びY軸方向に対して斜めの方向に延び、稜部Rに到達する。「第1及び第2引出部122,132が稜部Rに面する」とは、これらの引出部122,132が少なくとも稜部Rの一部に到達していることをいう。
【0091】
図14Aに示す例では、各第1引出部122は、第1対向部121から、第1稜部R1又は第2稜部R2によって接続される2つの側面Sに向かって、X軸方向及びY軸方向における外側に延びる一対の第1側縁部122aを含む。
図14Bに示す例では、各第2引出部132は、第2対向部131から、第3稜部R3又は第4稜部R4によって接続される2つの側面Sに向かって、X軸方向及びY軸方向における外側に延びる一対の第2側縁部132aを含む。
【0092】
具体的に、各側縁部122a,132aは、第1対向部121又は第2対向部131上に位置する基点P1と、側面S上の端点P2と、を含み、端点P2が基点P1よりもX軸方向及びY軸方向における外側に位置している。各側縁部122a,132aは、基点P1及び端点P2が上記関係を有していればよく、例えば直線状であるが、曲線状でもよい。
【0093】
ここで、上記構成の作用効果について説明するため、第1及び第2仮想線VL1,VL2について定義する。第1仮想線VL1は、第1内部電極12を通るX-Y平面と平行な断面において第1及び第2稜部R1,R2を結ぶ仮想線であり、Z軸方向から見た平面視におけるセラミック素体11の対角線の一方に相当する。第2仮想線VL2は、第2内部電極13を通るX-Y平面と平行な断面において第3及び第4稜部R3,R4を結ぶ仮想線であり、Z軸方向から見た平面視におけるセラミック素体11の対角線の他方に相当する。
【0094】
上記構成では、第1引出部122が、第1仮想線VL1に沿って延び、第2引出部132が、第2仮想線VL2に沿って延びることになる。
【0095】
これにより、図14Aに示すように、Z軸方向から見た平面視において、内部電極12,13を重ねた形状が、対角線に相当する第1及び第2仮想線VL1,VL2に沿ったX字状となる。これにより、セラミック素体11のX軸方向及びY軸方向における中央部からセラミック素体11の表面までの距離が長く曲げ応力に対して欠陥が生じやすい、第1及び第2仮想線VL1,VL2上の領域を補強することができる。したがって、本実施形態では、当該領域を補強することで、セラミック素体11の抗折強度を高めることができる。
【0096】
さらに、側縁部122a,132aがいずれもX軸方向及びY軸方向における外側に傾いていることで、引出部122,132の対向部121,131との境界部の幅が狭くなることを抑制できる。例えば、一対の側縁部のうち、一方の側縁部がX軸方向に平行又はY軸方向内側に延び、他方の側縁部がY軸方向に平行又はX軸方向内側に延びていた場合、当該境界部が括れた形状となり、クラック等の起点となりやすくなる。これに対し、上記構成では、当該境界部が括れた形状となりにくいため、この部分を起点とするクラックを抑制することができる。
【0097】
これに加えて、上記構成の積層セラミックコンデンサ10では、対向部121,131から外部電極14までの電流の通路の幅を十分に確保することができる。これにより、内部電極12,13における電流の抵抗の上昇を抑制でき、積層セラミックコンデンサ10における等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)の上昇を抑制することができる。
【0098】
このような作用効果をより一層確実に得るため、一対の第1側縁部122aは、相互に実質的に平行であってもよい。同様に、一対の第2側縁部132aは、相互に実質的に平行であってもよい。
「一対の側縁部が実質的に平行である」とは、直線状の一対の側縁部が平行、又はこれらのなす角度が10度以下となることをいう。
【0099】
これにより、引出部122,132における側縁部122a,132a間の距離(引出幅)をほぼ一定にすることができる。したがって、クラック等の起点となる引出幅が細い部分を形成せずに、セラミック素体11の抗折強度をより安定して高めることができる。また、電流の通路の幅も安定して確保できるため、ESLの上昇を抑制する効果も十分に得ることができる。
【0100】
<他の実施形態>
本発明において、低背型であり、取り扱い性を確保することが可能な積層セラミックコンデンサを提供するという観点からは、内部電極の形状は上述の形状に限定されない。
【0101】
例えば、本発明の他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、セラミック素体と、第1及び第2外部電極と、第3及び第4外部電極と、を備える。
セラミック素体は、第1軸に垂直な第1及び第2主面と、第1軸に直交する第2軸に垂直な第1及び第2側面と、第1軸及び第2軸に直交する第3軸に垂直な第3及び第4側面と、第1及び第4側面を接続する第1稜部と、第2及び第3側面を接続する第2稜部と、第1及び第3側面を接続する第3稜部と、第2及び第4側面を接続する第4稜部と、第1軸方向にセラミック層を介して交互に積層された第1及び第2内部電極と、を有する。
第1及び第2外部電極は、第1及び第2稜部をそれぞれ覆い、第1内部電極に接続される。
第3及び第4外部電極は、第3及び第4稜部をそれぞれ覆い、第2内部電極に接続される。
積層セラミックコンデンサは、第1軸方向における最大寸法である第1寸法が110μm以下であり、第2軸方向における最大寸法である第2寸法に対する第3軸方向における最大寸法である第3寸法の比率が、0.5以上0.85未満である。
上記構成により、第1実施形態と同様に、製造、包装や実装の際の取り扱い性を高めることができる。また、この実施形態においても、第1実施形態の「積層セラミックコンデンサ10の外観形状」で説明した寸法を適宜適用することができる。
【0102】
さらに、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0103】
例えば、外部電極の形状は、図示の例に限定されない。例えば、外部電極は、一方の主面上には形成されていなくてもよい。
また、外部電極の主面上における形状は、長方形状に限定されない。例えば、主面上の外部電極の縁部が、屈曲しておらず、曲線状又は直線状に構成されていてもよい。このような外部電極の下地層は、例えば、稜部を下向きとして導電性ペースト槽に浸漬するディッピングによって形成することができる。
【0104】
<実施例>
本発明の積層セラミックコンデンサの外観形状について好適な範囲を見出すために、外観形状の異なる積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、評価した。
【0105】
[サンプルの作製]
実施例1~12及び比較例1~3の各サンプルを、以下の「共通する製造方法」に沿って作製した。但し、これらのサンプルは、焼成前の各部の寸法やカットサイズ、シートの積層数等を調整することで、製造後において表1及び表2に示す寸法を有するように調整した。なお、表1及び表2に示す寸法は、いずれも、製造後の各部の寸法を示す。
【0106】
(共通する製造方法)
まず、BaTiO3等を含む高誘電体材料を用いてセラミックグリーンシートを作製した。このシート上に、Ni等を含む導電体ペーストを塗布し、第1及び第2内部電極に対応する電極パターンを形成した。第1内部電極に対応する電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極に対応する電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートと、を交互に積層し、その積層体の上下に、電極パターンを含まないセラミックグリーンシートを積層し、圧着した。そして、このセラミックグリーンシートの積層体を1チップ分のサイズにカットして、未焼成のセラミック素体を個片化した。この未焼成のセラミック素体の4つの稜部を覆うように、外部電極の下地用の導電ペーストを塗布した。これを焼成し、焼成された下地膜上に電解メッキを行った。これにより、積層セラミックコンデンサの各サンプルが作製された。
【0107】
(実施例1~3)
第2寸法Lに対する第3寸法Wの比率(W/L)について検討するため、第3寸法W及びW/L及びの異なる、実施例1~3のサンプルを作製した。これらのサンプルの各寸法を、表1に示す。実施例1~3のサンプルは、図1~6に示す構成と同様の基本構成を有するものとした。
【0108】
(比較例1及び2)
第2寸法Lに対する第3寸法Wの比率(W/L)が0.85以上1以下である、比較例1及び2のサンプルを作製した。これらのサンプルの各寸法を、表1に示す。比較例1及び2のサンプルは、第2比較例に係る図12に示す構成と同様の基本構成を有するものとした。
【0109】
(実施例4~9)
第2寸法Lについて検討するため、第2寸法L及び第3寸法Wの異なる、実施例4~9のサンプルを作製した。これらのサンプルの各寸法を、表1に示す。実施例4~9のサンプルは、稜部が外部電極によって完全に覆われており、図1~6に示す構成と同様の基本構成を有するものとした。
【0110】
【表1】
【0111】
(実施例10)
X軸方向に隣り合う2つの外部電極の間のX軸方向における最小距離DL2、及びY軸方向に隣り合う2つの外部電極の間のY軸方向における最小距離DW2の下限値について検討するため、最小距離DL2及びDW2がいずれも70μmである実施例10のサンプルを作製した。このサンプルの各寸法を、表2に示す。実施例10のサンプルは、図1~6に示す構成と同様の基本構成を有するものとした。なお、表2には、比較のため、表1に記載した実施例1のデータも記載している。
【0112】
(実施例11及び12)
第1側面からの外部電極の突出寸法DL3について検討するため、突出寸法DL3の異なる、実施例11及び12のサンプルを作製した。これらのサンプルの各寸法を、表2に示す。これらのサンプルでは、外部電極の製造後の厚みがそれぞれ3μm、30μmとなるように、下地膜の厚み及びメッキ膜の厚みを調整した。実施例11及び12のサンプルは、稜部が外部電極によって完全に覆われており、図1~6に示す構成と同様の基本構成を有するものとした。
【0113】
(比較例3及び4)
稜部が外部電極に覆われていない、比較例3及び4のサンプルを作製した。これらのサンプルは、外部電極の配置及び寸法を変更した以外は、「共通する製造方法」に沿って作製された。これらのサンプルの各寸法を、表2に示す。比較例3及び4のサンプルは、図8及び図9に示す第1比較例と同様の基本構成を有するものとした。
【0114】
比較例3及び4のサンプルにおいて、外部電極のX軸方向外側の端部は、第1及び第2側面からX軸方向内側に、それぞれ80μm及び40μm後退させた。このため、表2に示す比較例3及び4の突出寸法DL3では、外部電極のX軸方向外側の端部が第1及び第2側面からX軸方向内側に後退していることを「-(マイナス)」で表し、突出寸法DL3を-80μm、-40μmと示している。
【0115】
【表2】
【0116】
[方向判別性の評価]
上記実施例及び比較例の各サンプルの10個の外観を光学顕微鏡によって20倍に拡大して観察し、第1及び第2側面と垂直なX軸方向(長手方向)を、第3及び第4側面と垂直なY軸方向に対して判別できるか否か評価した。各実施例及び比較例について、全て判別可能であった場合を「OK」、1個でも判別できなかった場合を「NG」と評価した。この評価結果を、表1及び2に示す。
【0117】
これらの表に示すように、W/Lが0.5以上0.85未満である実施例1~12及び比較例3,4のサンプルは、全て長手方向を判別することができて「OK」と評価された。一方で、W/Lがそれぞれ0.96、1.00である比較例1及び2のサンプルは、いずれにおいても長手方向を判別することができず、「NG」と評価された。
【0118】
[搬送時の不具合についての評価]
上記実施例及び比較例の各サンプルの10000個を順に、図10、11及び13に示すような搬送装置に投入して、搬送過程において不具合が生じないか否か評価した。各実施例及び比較例について、搬送装置に投入後、下流のテーピング装置まで搬送された場合を「OK」、搬送装置において詰まり等が生じて下流のテーピング装置まで搬送が困難だった場合を「NG」と評価した。この評価結果を、表1及び2に示す。
【0119】
外部電極が稜部を覆っていない比較例3及び4では、搬送装置において詰まりが生じてしまい、NGと評価された。比較例3及び4における搬送過程を調査したところ、前後のサンプルが上下に重なってしまった箇所があり、重なった2つのサンプルが搬送装置の底板とカバーの間に嵌った状態となっていた。
【0120】
Z軸方向から見てほぼ正方形状の比較例1及び2では、搬送装置において詰まりが生じてしまい、NGと評価された。これらのサンプルにおける搬送過程を調査したところ、一つのサンプルがZ軸方向を回転軸として回転し、Z軸方向から見て対角線上にある一対の稜部が搬送装置の側壁間に嵌った状態となっていた。
【0121】
実施例1~12のサンプルは、いずれも搬送装置における不具合が生じず、OKと評価された。但し、突出寸法DL3が3μmの実施例11については、全てのサンプルが下流のテーピング装置まで搬送されたものの、やや搬送が遅れる傾向にあった。
【0122】
[総括]
以上のように、W/Lが0.5以上0.85未満である実施例1~12のサンプルは、長手方向を判別することが可能であるとともに、搬送装置における不具合も生じなかった。これにより、実施例1~12のサンプルは、比較例1~4のサンプルと比較して、取り扱い性に優れることがわかった。
【符号の説明】
【0123】
10 積層セラミックコンデンサ
11 セラミック素体
12 第1内部電極
121 第1対向部
122 第1引出部
122a 第1側縁部
13 第2内部電極
131 第2対向部
132 第2引出部
132a 第2側縁部
14,14a,14b,14c,14d 外部電極
S,S1,S2,S3,S4 側面
M1,M2 主面
R,R1,R2,R3,R4 稜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14