(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122219
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】加熱冷却装置及び加熱冷却方法
(51)【国際特許分類】
F28G 9/00 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
F28G9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025792
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】井城 ひなた
(57)【要約】
【課題】冷却水による蒸気生成装置への悪影響を防止しつつ、処理対象物の加熱冷却処理におけるエネルギー効率を高めた加熱冷却装置及び加熱冷却方法を提供する。
【解決手段】本発明は、処理槽と、熱交換器と、熱交換器の一次側流路に加熱蒸気を供給し且つ使用済加熱蒸気を回収して再利用する蒸気供給装置と、熱交換器の一次側流路に冷却水を供給し且つ使用済冷却水を回収して再利用する冷却水供給装置と、制御装置と、を備え、処理槽に収容された処理対象物を、熱交換器において加熱蒸気により加熱された前記熱媒体で加熱する加熱工程、加熱工程の後、処理対象物を、熱交換器において前冷却水により冷却された熱媒体で冷却する冷却工程、および冷却工程の後、熱交換器の一次側流路に残った冷却水を排出し且つ洗浄水で一次側流路を洗浄する排水洗浄工程、を実施するように構成された。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を収容し且つ熱媒体で前記処理対象物を加熱及び冷却する処理槽と、
互いに熱交換可能な一次側流路及び二次側流路を有する熱交換器と、
前記熱交換器の一次側流路に加熱蒸気を供給し且つ該一次側流路でから排出される使用済加熱蒸気を回収して再利用する蒸気供給装置と、
前記熱交換器の一次側流路に冷却水を供給し且つ該一次側流路から排出される使用済冷却水を回収して再利用する冷却水供給装置と、
制御装置と、を備え、
前記処理槽に収容された前記処理対象物を、前記熱交換器において前記加熱蒸気により加熱された前記熱媒体で加熱する加熱工程、
前記加熱工程の後、前記処理対象物を、前記熱交換器において前記冷却水により冷却された前記熱媒体で冷却する冷却工程、および
前記冷却工程の後、前記熱交換器の一次側流路に残った前記冷却水を排出し且つ洗浄水で一次側流路を洗浄する排水洗浄工程、を実施するように構成されたことを特徴とする加熱冷却装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記排水洗浄工程において、前記洗浄水によって前記熱交換器内の熱媒体を冷却し、該熱媒体を前記熱交換器から前記処理槽へと供給し、前記処理対象物を冷却するように構成された、請求項1記載の加熱冷却装置。
【請求項3】
処理対象物を収容し且つ熱媒体で前記処理対象物を加熱及び冷却する処理槽と、
互いに熱交換可能な一次側流路及び二次側流路を有する熱交換器と、
前記熱交換器の一次側流路に加熱蒸気を供給し且つ該一次側流路から排出される使用済加熱蒸気を回収して再利用する蒸気供給装置と、
前記熱交換器の一次側流路に冷却水を供給し且つ該一次側流路から排出される使用済冷却水を回収して再利用する冷却水供給装置と、
を備えた加熱冷却装置を用いて処理対象物を加熱及び冷却する加熱冷却方法であって、
前記処理槽に収容された前記処理対象物を、前記熱交換器において前記加熱蒸気により加熱された前記熱媒体で加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記処理対象物を、前記熱交換器において前記冷却水により冷却された前記熱媒体で冷却する冷却工程と、
前記冷却工程の後、前記熱交換器の一次側流路に残った前記冷却水を排出し且つ洗浄水で一次側流路を洗浄する排水洗浄工程と、を備えたことを特徴とする加熱冷却方法。
【請求項4】
前記排水洗浄工程において、前記洗浄水によって前記熱交換器内の熱媒体を冷却し、該熱媒体を前記熱交換器から前記処理槽へと供給し、前記処理対象物を冷却する、請求項3記載の加熱冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物を処理槽内で加熱した後に冷却する際に用いられる冷却水を回収可能な加熱冷却装置及び加熱冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品などの処理対象物を製造する際に、処理対象物を加熱した後に冷却する加熱冷却装置が使用される(特許文献1参照)。この加熱冷却装置は、収容した処理対象物に熱媒体を噴射可能なスプレーノズルが設けられた処理槽、加熱蒸気を供給可能なボイラ、及び、冷却水を供給可能なクーリングタワーを備える。また、加熱冷却装置は、一次側流路にボイラ又はクーリングタワーが切り替え可能に接続され且つ二次側流路にスプレーノズルが接続される熱交換器等を備える。この加熱冷却装置では、例えば、処理対象物の加熱殺菌処理を行い、さらに冷却処理を行った後、処理対象物を処理槽から取り出し、次の処理対象物を処理槽に収容し、この処理対象物の加熱殺菌処理及び冷却処理を行う。
【0003】
具体的に、処理対象物に対する加熱殺菌処理では、ボイラからの蒸気を熱交換器の一次側流路に供給することで熱交換器の二次側流路を通って循環する熱媒体を加熱し、加熱された熱媒体をスプレーノズルから処理対象物に向け噴射する。所定の温度及び時間で加熱殺菌処理を行った後、続く冷却処理では、クーリングタワーで冷却された冷却水を熱交換器の一次側流路に供給することで熱交換器の二次側流路を通って循環する熱媒体を冷却し、冷却された熱媒体をスプレーノズルから処理対象物に向け噴射する。処理対象物を所定の温度まで冷却すると、この処理対象物を処理槽から取り出し、次の処理対象物を処理槽に収容する。
【0004】
次の処理対象物に対する加熱殺菌処理では、ボイラから熱交換器の一次側流路に蒸気を供給開始してから所定時間が経過するまで、熱交換器の一次側流路に残留する冷却水を外部に排出させる。これは、冷却水には、クーリングタワーのスケール防止剤等の薬剤が含まれているため、この冷却水がボイラに流入してボイラを損傷することを防止するためである。所定時間が経過した後、蒸気の凝縮により熱交換器の一次側流路に生じたドレンは、スケール防止剤等の薬剤が含まれずボイラで回収可能となるため、回収してボイラに供給する。その後、この処理対象物に対しても冷却処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記加熱冷却装置では、蒸気の供給開始から所定時間が経過するまでの間において、熱交換器の一次側流路から排出されたドレンを冷却水とともに外部に排出しており、熱エネルギーの回収効率が十分ではなかった。
【0007】
本発明は、冷却水による蒸気生成装置への悪影響を防止しつつ、処理対象物の加熱冷却処理におけるエネルギー効率を高めた加熱冷却装置及び加熱冷却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加熱冷却装置は、処理対象物を収容し且つ熱媒体で前記処理対象物を加熱及び冷却する処理槽と、互いに熱交換可能な一次側流路及び二次側流路を有する熱交換器と、前記熱交換器の一次側流路に加熱蒸気を供給し且つ該一次側流路から排出される使用済加熱蒸気を回収して再利用する蒸気供給装置と、前記熱交換器の一次側流路に冷却水を供給し且つ該一次側流路から排出される使用済冷却水を回収して再利用する冷却水供給装置と、制御装置と、を備え、前記処理槽に収容された前記処理対象物を、前記熱交換器において前記加熱蒸気により加熱された前記熱媒体で加熱する加熱工程、前記加熱工程の後、前記処理対象物を、前記熱交換器において前記冷却水により冷却された前記熱媒体で冷却する冷却工程、および前記冷却工程の後、前記熱交換器の一次側流路に残った前記冷却水を排出し且つ洗浄水で一次側流路を洗浄する排水洗浄工程、を実施するように構成されたことを特徴とする。
【0009】
冷却水供給装置がいわゆる冷却塔である場合は、冷却水にはスケール防止剤が含まれている。本発明では、この冷却水を用いた冷却工程の後、熱交換器の一次側流路に残った冷却水を排出し且つ洗浄水で一次側流路を洗浄する排水洗浄工程を実施するようにしたため、次の加熱工程では、蒸気の供給と同時に凝縮水を蒸気供給装置へと回収し再利用することができ、従来と比較してエネルギー効率を高めることが可能となる。
【0010】
また、前記加熱冷却装置は、前記制御装置は、前記排水洗浄工程において、前記洗浄水によって前記熱交換器内の熱媒体を冷却し、該熱媒体を前記熱交換器から前記処理槽へと供給し、前記処理対象物を冷却するように構成されてもよい。
【0011】
一般に、冷却塔等の冷却水供給装置から供給される冷却水よりも排水洗浄工程で使用される洗浄水としての上水の方が低温であるため、該洗浄水で熱交換器内を洗浄すると同時に熱媒体を冷却し、処理対象物を冷却することにより、冷却に要する時間を短縮し、一バッチの処理時間を短縮することが可能となる。
【0012】
本発明の加熱冷却方法は、処理対象物を収容し且つ熱媒体で前記処理対象物を加熱及び冷却する処理槽と、互いに熱交換可能な一次側流路及び二次側流路を有する熱交換器と、前記熱交換器の一次側流路に加熱蒸気を供給し且つ該一次側流路から排出される使用済加熱蒸気を回収して再利用する蒸気供給装置と、前記熱交換器の一次側流路に冷却水を供給し且つ該一次側流路から排出される使用済冷却水を回収して再利用する冷却水供給装置と、を備えた加熱冷却装置を用いて処理対象物を加熱及び冷却する加熱冷却方法であって、前記処理槽に収容された前記処理対象物を、前記熱交換器において前記加熱蒸気により加熱された前記熱媒体で加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後、前記処理対象物を、前記熱交換器において前記冷却水により冷却された前記熱媒体で冷却する冷却工程と、前記冷却工程の後、前記熱交換器の一次側流路に残った前記冷却水を排出し且つ洗浄水で一次側流路を洗浄する排水洗浄工程と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
かかる構成では、冷却水供給装置がいわゆる冷却塔である場合は、冷却水にはスケール防止剤が含まれている。本発明では、この冷却水を用いた冷却工程の後、熱交換器の一次側流路に残った冷却水を排出し且つ洗浄水で一次側流路を洗浄する排水洗浄工程を実施するようにしたため、次の加熱工程では、蒸気の供給と同時に凝縮水を蒸気供給装置へと回収し再利用することができ、従来と比較してエネルギー効率を高めることが可能となる。
【0014】
前記加熱冷却方法では、前記排水洗浄工程において、前記洗浄水によって前記熱交換器内の熱媒体を冷却し、該熱媒体を前記熱交換器から前記処理槽へと供給し、前記処理対象物を冷却してもよい。
【0015】
一般に、冷却塔等の冷却水供給装置から供給される冷却水よりも洗浄工程で使用される洗浄水としての上水方が低温であるため、該洗浄水で熱交換器内を洗浄すると同時に熱媒体を冷却し、処理対象物を冷却することにより、冷却に要する時間を短縮し、一バッチの処理時間を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本発明によれば、冷却水による蒸気生成装置への悪影響を防止しつつ、処理対象物の加熱冷却処理におけるエネルギー効率を高めた加熱冷却装置及び加熱冷却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る加熱冷却装置の模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る加熱冷却方法の全体の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、前記処理手順における冷却工程及び排水洗浄工程の具体的な処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図3を参照しつつ説明する。本実施形態に係る加熱冷却装置1は、
図1に示すように、処理槽2と、熱交換器3と、蒸気供給装置4と、冷却水供給装置5と、制御装置6と、を備える。この加熱冷却装置1は、給水装置7も備える。
【0019】
処理槽2は、処理対象物を収容し且つ熱媒体で処理対象物を加熱及び冷却するものである。処理対象物は、例えば、食品である。具体的には、アルミパウチに収容されたレトルト食品である。この処理槽2内には、処理対象物に対して加熱あるいは冷却された熱媒体としての水を噴射する複数のスプレーノズルが配設されている。さらに、処理槽2には、処理槽2内の給水レベルを検出する水位計と、処理槽2内の温度を検出する温度センサとが設けられている。
【0020】
熱交換器3は、互いに熱交換可能な一次側流路31及び二次側流路32を有する。また、熱交換器3は、一次側流路31に加熱蒸気が供給されると、該加熱蒸気により二次側流路32に流れる熱媒体が加熱される。さらに、熱交換器3は、一次側流路31に冷却水が供給されると、該冷却水により二次側流路32に流れる熱媒体が冷却される。本実施形態の加熱冷却装置1では、熱交換器3は、重ね合わされた複数の伝熱プレートを有するプレート式熱交換器である。
【0021】
蒸気供給装置4は、熱交換器3の二次側流路32を流れる熱媒体を加熱するための蒸気を生成するものである。また、蒸気供給装置4は、熱交換器3の一次側流路31に加熱蒸気を供給し且つ該一次側流路31から排出される使用済加熱蒸気(例えば、一次側流路31で凝縮した凝縮水)を回収して再利用する。例えば、蒸気供給装置4は、ボイラである。
【0022】
冷却水供給装置5は、熱交換器3の二次側流路32を流れる熱媒体を冷却するための冷却水を生成する。また、冷却水供給装置5は、熱交換器3の一次側流路31に冷却水を供給し且つ該一次側流路31から排出される使用済冷却水を回収して再利用する。例えば、冷却水供給装置5は、冷却塔(クーリングタワー)である。この冷却塔は、開放式であっても、密閉式であってもよい。冷却水には、スケール防止剤が含まれている。
【0023】
本実施形態の加熱処理装置1では、熱交換器3の二次側流路32の一端32Aから、処理槽2(具体的には、処理槽2の複数のスプレーノズル)までを接続する配管320が設けられている。例えば、配管320は、二種類の高さ(上側と下側)に配置された処理対象物に対応するため、上流から下流に向かう途中で二本に分岐しており、それぞれに仕切弁102、103が配置されている。なお、配管320は、分岐していなくてもよく、この場合、例えば、上流側の端部と下流側の端部との間の途中に一つの弁が配置される。さらに、処理槽2から、熱交換器3の二次側流路32の他端32Bまでを接続する配管321が設けられている。配管321には、熱媒体循環ポンプP1が配置されている。これら配管320、321により、熱媒体を、熱交換器3の二次側流路32を通して処理槽2と熱交換器3との間で循環させる熱媒体循環流路が構成されている。また、熱媒体循環流路では、熱媒体循環ポンプP1は、処理槽2に貯留された熱媒体を熱交換器3の二次側流路32に送給し、配管320を介して処理槽2の複数のスプレーノズルから噴射する。
【0024】
蒸気供給装置4から、熱交換器3の一次側流路31の一端31Aまでを接続する配管310が設けられている。配管310には、温度調節用蒸気弁104が配置されている。配管310は、蒸気供給装置4より生成された蒸気を熱交換器3の一次側流路31に供給する蒸気供給流路を構成している。
【0025】
熱交換器3の一次側流路31の他端31Bから、蒸気供給装置4までを接続する配管311が設けられている。配管311には、蒸気トラップ弁105が配置されている。配管311は、熱交換器3の一次側流路31から排出される使用済加熱蒸気(例えば、一次側流路31で凝縮した凝縮水(ドレン))を蒸気供給装置4に還流するドレン回収流路を構成している。
【0026】
冷却水供給装置5から、熱交換器3の一次側流路31の一端31Aまでを接続する配管312が設けられている。配管312には、温度調節用冷却弁107が配置されている。また、熱交換器3の一次側流路31の他端31Bから、冷却水供給装置5までを接続する配管313が設けられている。配管313には、冷却水出口弁106が配置されている。配管312、313は、冷却水供給装置5により生成された冷却水を熱交換器3の一次側流路31に供給するとともに、熱交換器3の一次側流路31を通った冷却水を冷却水供給装置5に回収する冷却水循環流路を構成している。
【0027】
給水装置7から、配管321における循環ポンプP1よりも上流側の箇所までを接続する配管322が設けられている。配管322には、上流側から、給水ポンプP2と、給水弁101と、が配置されている。配管322に供給される熱媒体としての水の温度は、例えば、20℃である。
【0028】
給水装置7から、配管313における熱交換器3の一次側流路31の他端31Bと冷却水出口弁106との間の箇所までを接続する配管323が設けられている。配管323には、上流側から、給水ポンプP2と、注入弁110と、が配置されている。熱交換器3の一次側流路31の一端31Aから、加熱冷却装置1の外部までを接続する配管314が設けられている。配管314には、蒸気遮断弁111が配置されている。配管323、314により、洗浄水で熱交換器3の一次側流路31を洗浄する洗浄流路が構成されている。
【0029】
この加熱冷却装置1の外部から、熱交換器3の一次側流路31の一端31Aまでを接続する配管315が設けられている。配管315には、エアー押し弁108が配置されている。熱交換器3の一次側流路31の他端31Bから、加熱冷却装置1の外部までを接続する配管316が設けられている。配管316には、残水ブロー弁109が配置されている。配管315、316により、熱交換器3の一次側流路31に残った冷却水や洗浄水を排出する(具体的には、加熱冷却装置1の外部に排出する)残留水排出流路が構成されている。
【0030】
制御装置6は、加熱冷却装置1が備える各構成要素を制御するように構成されている。具体的には、制御装置6による加熱冷却装置1が備える各構成要素の制御により、加熱冷却装置1は、処理槽2に収容された処理対象物を、熱交換器3において加熱蒸気により加熱された熱媒体で加熱処理する加熱工程、加熱工程の後、処理対象物を、熱交換器3において冷却水により冷却された熱媒体で冷却する冷却工程、および、冷却工程の後、熱交換器3の一次側流路31に残った冷却水を排出し且つ洗浄水で一次側流路を洗浄する排水洗浄工程、を実施するように構成されている。
【0031】
また、制御装置6による加熱冷却装置1が備える各構成要素の制御により、加熱冷却装置1は、排水洗浄工程において、洗浄水によって熱交換器3内の熱媒体を冷却し、該熱媒体を熱交換器3から処理槽2へと供給し、処理対象物を冷却するように構成されている。
【0032】
制御装置6は、給水弁101、給水ポンプP2、熱媒体循環ポンプP1、温度調節用蒸気弁104、温度調節用冷却弁107、及び、冷却水出口弁106等の各弁やポンプを、処理対象物の加熱冷却処理手順に従って制御する制御盤を備える。また、制御装置6は、温度センサが検出する処理槽2内の温度をモニターしており、この温度が予め定められた設定温度に到達したか否かを判定するように構成されている。本実施形態の加熱冷却装置1では、制御装置6は、水位計が検出する処理槽2内の給水レベルをモニターしており、この給水レベルが予め定められた所定の水位に到達したか否かを判定するように構成されている。
【0033】
この制御盤は、例えば、マイクロコンピュータによって構成することができる。マイクロコンピュータは、CPU、制御プログラムを格納する記憶部等を含んで構成されている。CPUが前記の制御プログラムを実行することにより制御装置6が上記制御を行う。
【0034】
次に、本実施の形態における加熱冷却方法について
図2及び
図3を参照して説明する。この加熱冷却方法は、処理対象物を収容し且つ熱媒体で加熱及び冷却する処理槽2と、互いに熱交換可能な一次側流路31及び二次側流路32を有する熱交換器3と、熱交換器3の一次側流路31に加熱蒸気を供給し且つ該一次側流路31で凝縮した凝縮水を回収する蒸気供給装置4と、熱交換器3の一次側流路31に冷却水を供給し且つ回収する冷却水供給装置5と、を備えた加熱冷却装置1を用いて処理対象物を加熱及び冷却する加熱冷却方法である。以下、具体的には、上述の加熱処理装置1を用いた加熱冷却方法について説明する。この加熱冷却方法は、
図2に示すように、以下に示す各工程を含む。
1)処理槽2に収容された処理対象物を、熱交換器3において加熱蒸気により加熱された熱媒体で加熱する加熱工程S1。
2)加熱工程S1の後、処理対象物を、熱交換器3において冷却水により冷却された熱媒体で冷却する冷却工程S2。
3)冷却工程S2の後、熱交換器3の一次側流路31に残った冷却水を排出し且つ洗浄水で一次側流路を洗浄する排水洗浄工程S3。
4)排水洗浄工程S3の後、熱交換器3の一次側流路31に残った洗浄水を排出する洗浄水排水工程S4。
【0035】
加熱工程S1では、制御装置6は、熱媒体循環ポンプP1を起動し、温度調節用蒸気弁104を開動作させ、温度調節用冷却弁107を閉状態にすることにより、蒸気供給装置4から熱交換器3の一次側流路31に蒸気の供給を開始すると共に、処理槽2内の熱媒体を、熱交換器3の二次側流路32を介して処理槽2内に循環させる。これにより、処理槽2に収容された処理対象物を、熱交換器3において加熱蒸気により加熱された熱媒体で加熱する。このとき、熱交換器3の一次側流路31から排出される使用済加熱蒸気(例えば、一次側流路31で凝縮した凝縮水(ドレン))がドレン回収流路で回収され蒸気供給装置4に還流される。なお、本実施形態の加熱処理方法では、処理槽2内の設定温度は120℃であり、処理槽2内の圧力は大気圧より高く設定されている。また、この加熱方法では、処理対象物の調理及び殺菌を行う。
【0036】
さらに、制御装置6は、温度センサからの検出信号に基づいて処理槽2内の温度が予め定められた設定温度に到達したかを判定する。ここで、処理槽2内の温度が設定温度に到達していないとき、制御装置6は、温度調節用蒸気弁104の開状態および熱媒体循環ポンプP1の運転状態を保持する。一方、処理槽2内の温度が設定温度に到達した状態で予め定められた設定時間(例えば、20分~30分)が経過しとき、制御装置6は、温度調節用蒸気弁104を閉にし、熱媒体循環ポンプP1を停止して、加熱工程S1を終了する。
【0037】
本実施形態の加熱冷却方法において、冷却水循環工程S21では、制御装置6は、温度調節用蒸気弁104を閉動作させ、温度調節用冷却弁107及び冷却水出口弁106を開状態にすることにより、冷却水供給装置5から熱交換器3の一次側流路31に冷却水の供給を開始すると共に、処理槽2内の熱媒体を、熱交換器3の二次側流路32を介して処理槽2内に循環させる(
図1及び
図3参照)。これにより、処理対象物を、熱交換器3において冷却水により冷却された熱媒体で冷却する。このとき、熱交換器3の一次側流路31から排出された冷却水が回収され冷却水供給装置5に還流される。なお、冷却水供給装置5から供給される冷却水の温度は、30℃乃至40℃程度であり、熱交換器3の一次側流路31を通った冷却水の温度は、約70℃前後から35℃前後まで低下する。
【0038】
制御装置6は、冷却水循環工程S21を温度センサからの検出信号に基づいて処理槽2内の温度が予め定められた切替温度に到達するまで実施する。処理槽2内の温度が切替温度に到達したとき(ステップS22においてYes)、排水洗浄工程S3(具体的には、洗浄工程S3の後述する冷却水排出工程)を実施する。この切替温度は、例えば、40~45℃である。
【0039】
本実施形態の加熱冷却方法では、排水洗浄工程S3は、例えば、熱交換器3の一次側流路31に残った冷却水を排出する冷却水排出工程S31と、洗浄流路を用いて一次側流路31を洗浄水により洗浄する洗浄工程S32と、を含む。この加熱冷却方法では、排水洗浄工程S3(本実施形態では、洗浄工程S32)において、制御装置6が、熱媒体循環流路に熱媒体を循環させることで、洗浄水によって熱交換器3内で冷却された該熱媒体を熱交換器3から処理槽2へと供給し、処理対象物を冷却する。
【0040】
具体的には、冷却水排出工程S31では、熱交換器3の一次側流路31に残った冷却水を排出する際に、エアブローを実施してもよい。この場合、冷却水排出工程S31では、制御装置6は、温度調節用冷却弁107及び冷却水出口弁106を閉動作させ、エアー押し弁108及び残水ブロー弁109を開状態にすることにより、エアー供給装置から熱交換器3の一次側流路31に、加熱冷却装置1の外部からエアーの供給を開始することで、エアブローにより、残留水排出流路を介して熱交換器3の一次側流路31に残った冷却水を排出する。
【0041】
次いで、洗浄工程S32では、制御装置6は、エアー押し弁108及び残水ブロー弁109を閉動作させ、給水ポンプP2を起動させ、注入弁110及び蒸気遮断弁111を開状態にすることにより、熱交換器3の一次側流路31に給水装置7から給水する、即ち、洗浄水を供給する。このとき、配管323を介した洗浄水を配管314を介して排出して、一次側流路31の底側から洗浄することにより、一次側流路31に冷却水が残留しにくい。なお、洗浄工程S32において、熱交換器3の一次側流路31にバブリングを行うことにより、洗浄効果をさらに向上させてもよい。
【0042】
制御装置6は、洗浄工程S32を、所定の時間(洗浄停止時間)に到達するまで実施する。このとき、制御装置6は、給水ポンプP2を起動させたまま、注入弁110及び蒸気遮断弁111の開状態を保持する。この洗浄停止時間は、例えば、3分である。洗浄工程S32の実施時間が所定の時間(洗浄停止時間)に到達したとき(ステップS33においてYes)、制御装置6は、洗浄水排水工程S4を実施する。このように、洗浄工程S32を時間制御により実施するが、洗浄工程S32を温度制御(処理槽2内の温度が予め定められた冷却停止温度に到達するまで実施する制御)を行ってもよい。
【0043】
洗浄水排水工程S4では、制御装置6は、給水ポンプP2を停止し、注入弁110及び蒸気遮断弁111を閉動作させ、エアー押し弁108及び残水ブロー弁109を開状態にすることにより、エアー供給装置から熱交換器3の一次側流路31にエアーの供給を開始することで、残留水排出流路を介して熱交換器3の一次側流路31に残った洗浄水を排出する。
【0044】
また、本実施形態の加熱冷却処理を繰り返し行う場合、所定の処理対象物に対して、一連の処理(工程S1~S4)を行った後、処理槽2内からの熱媒体の排出、処理槽2内を大気圧にする処理、処理対象物の取り出し等を行い、処理槽2に次に加熱冷却処理を行う処理対象物を収容し、次の処理対象物に対して一連の処理(工程S1~S4)を行う。
【0045】
以上の加熱冷却装置1によれば、上述のように、冷却水供給装置5がいわゆる冷却塔である場合は、冷却水にはスケール防止剤が含まれている。この冷却水が、ボイラ等の蒸気供給装置4に流入すると、蒸気供給装置4が損傷するおそれがある。そのため、冷却水を含むドレンを回収して、蒸気供給装置4に供給することは困難である。本実施形態では、この冷却水を用いた冷却工程の後、熱交換器3の一次側流路31に残った冷却水を排出し且つ洗浄水で一次側流路31を洗浄する排水洗浄工程を実施するようにしたため、次の加熱工程では、蒸気の供給と同時に凝縮水を蒸気供給装置4へと回収し再利用することができ、従来と比較してエネルギー効率を高めることが可能となる。
【0046】
本実施形態の加熱冷却装置1では、一般に、冷却塔等の冷却水供給装置5から供給される冷却水よりも排水洗浄工程で使用される洗浄水としての上水の方が低温であるため、該洗浄水で熱交換器3内を洗浄すると同時に熱媒体を冷却し、処理対象物を冷却することにより、冷却に要する時間を短縮し、一バッチの処理時間を短縮することが可能となる。
【0047】
なお、本発明の加熱冷却装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0048】
例えば、上記実施形態の加熱処理装置では、ドレン回収流路により回収したドレンを蒸気供給装置4に還流していたが、このドレンを別の用途に使用してもよい。例えば、このドレンを、冷却水供給装置5に供給してもよく、この場合、冷却水循環流路にドレン回収流路を接続すればよい。
【0049】
上記実施形態の加熱処理方法では、制御装置6は、冷却停止温度(本来、処理対象物を冷却するべき設定温度)に到達する前の温度(切替温度)まで、冷却工程S2を行っていたが、冷却停止温度に到達するまで、冷却工程S2を行ってもよい。この場合、制御装置6は、排水洗浄工程S3において、洗浄工程S32を、熱交換器3の一次側流路31から冷却水が残留しない程度まで洗浄できるように予め設定した所定時間だけ行えばよい。また、このように洗浄工程S32を行い、加熱冷却処理を繰り返し行う場合、洗浄水排水工程S4を行っている間、処理槽2内に貯留されている熱媒体を排出し、処理槽2内の加圧空気を処理槽2外へ排出して処理槽2内を大気圧にした上で、処理槽2内の処理対象物を取り出し、処理槽2に次に加熱冷却処理を行う次の処理対象物を収容する。さらに、洗浄水排水工程S4が完了した後、次の処理対象物に対して一連の処理(工程S1~S4)を行ってもよい。これにより、加熱冷却処理を繰り返し行う場合の処理時間を短縮することができる。
【0050】
上記実施形態の加熱処理装置では、処理対象物は食品であったが、処理対象物は医薬品等であってもよい。また、実施の形態では、加熱処理工程S1によって処理対象物の調理及び殺菌を行ったが、加熱処理工程S1によって被処理物の調理のみ、あるいは、殺菌のみを行ってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…加熱冷却装置、2…処理槽、3…熱交換器、4…蒸気供給装置、5…冷却水供給装置、6…制御装置、7…給水タンク、8…エアー供給装置、9…残水ブロー、20…配管、31…一次側流路、31A…一端、31B…他端、32…二次側流路、32A…一端、32B…他端、310、311、312、313、314、315、316、320、321、322、323…配管、101…給水弁、102、103…仕切弁、104…温度調節用蒸気弁、105…蒸気トラップ弁、106…冷却水出口弁、107…温度調節用冷却弁、108…エアー押し弁、109…残水ブロー弁、110…注入弁、111…蒸気遮断弁、P1…熱媒体循環ポンプ、P2…給水ポンプ