(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122241
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】熱膨張性耐火成形体
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20230825BHJP
A62C 2/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
E04B1/94 N
E04B1/94 H
A62C2/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025831
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000101905
【氏名又は名称】イイダ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】日江井 稔
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001FA51
2E001FA71
2E001GA48
2E001HF12
2E001JA19
(57)【要約】
【課題】建築部材の隙間に挿入される熱膨張性耐火成形体を隙間に挿入する際の作業性を向上できるようにする。
【解決手段】本開示の一態様は、建築部材の隙間に挿入される熱膨張性耐火成形体である。熱膨張性耐火成形体は、筒状部と、抵抗部と、を備える。筒状部は、内側に中空部を有する筒状に構成される。抵抗部は、筒状部の高さ方向に交わる交差方向での断面を塞がないように形成される第1抵抗部と、筒状部の高さ方向に交わる交差方向での断面を塞ぐように形成される第2抵抗部と、を備え、筒状部が外力によって変形する際に変形の抵抗となるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築部材の隙間に挿入される熱膨張性耐火成形体であって、
内側に中空部を有する筒状に構成された筒状部と、
前記中空部にて前記筒状部に接続され、前記筒状部が外力によって変形する際に該変形の抵抗となるように構成された抵抗部と、
を備え、
前記抵抗部は、
前記筒状部の高さ方向に交わる交差方向での断面を塞がないように形成される第1抵抗部と、
前記筒状部の前記高さ方向に交わる交差方向での断面を塞ぐように形成される第2抵抗部と、
を有する、熱膨張性耐火成形体。
【請求項2】
請求項1に記載の熱膨張性耐火成形体であって、
前記第1抵抗部は、前記中空部の少なくとも一部を仕切る
ように構成された熱膨張性耐火成形体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の熱膨張性耐火成形体であって、
前記第1抵抗部は、両端部が前記筒状部に接続されることで、前記中空部を複数に分割する
ように構成された熱膨張性耐火成形体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の熱膨張性耐火成形体であって、
複数の前記第1抵抗部を備え、
前記複数の第1抵抗部は、前記中空部にて交わるように接続される
ように構成された熱膨張性耐火成形体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の熱膨張性耐火成形体であって、
前記筒状部は、外周面のうちの他の部位よりも外周側に突出する突出部、
をさらに備える熱膨張性耐火成形体。
【請求項6】
請求項5に記載の熱膨張性耐火成形体であって、
前記突出部は、前記筒状部の外周面に沿って延びる方向を長手方向とする帯状に構成され、
前記長手方向に直交する方向を幅方向、前記筒状部の外周面から突出する方向を厚み方向とし、前記突出部における前記厚み方向の長さをT、前記幅方向の長さをWとして、
前記突出部は、W≧Tとなる
ように構成された熱膨張性耐火成形体。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の熱膨張性耐火成形体であって、
前記突出部は前記中空部を取り囲むような無端環状に構成される
ように構成された熱膨張性耐火成形体。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の熱膨張性耐火成形体であって、
前記第1抵抗部は、前記第2抵抗部から前記筒状部の端部まで延びる
ように構成された熱膨張性耐火成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築部材の隙間に挿入される熱膨張性耐火成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、耐火ボード等の建築部材の隙間に挿入して使用される熱膨張性耐火成形体が開示されている。熱膨張性耐火成形体は火災時の熱によって膨張し、熱によって収縮する耐火ボード間の隙間が拡大しにくいように作用することで、延焼を抑制するように機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建築部材の隙間は一様でない場合がある。建築部材は現場作業によって配置されるため、作業の精度にばらつきが生じるためである。例えば、建築部材の隙間が予定寸法よりも狭い場合、熱膨張性耐火成形体を建築部材の隙間へ挿入する際の作業性が悪いという課題が見出された。
【0005】
本開示の1つの局面は、建築部材の隙間に挿入される熱膨張性耐火成形体を隙間に挿入する際の作業性を向上できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、建築部材の隙間に挿入される熱膨張性耐火成形体である。熱膨張性耐火成形体は、筒状部と、抵抗部と、を備える。筒状部は、内側に中空部を有する筒状に構成される。抵抗部は、筒状部の高さ方向に交わる交差方向での断面を塞がないように形成される第1抵抗部と、筒状部の高さ方向に交わる交差方向での断面を塞ぐように形成される第2抵抗部と、を備え、筒状部が外力によって変形する際に変形の抵抗となる。
【0007】
このような構成によれば、中空部が存在しない構成よりも筒状部が変形しやすく構成できるので、建築部材の隙間への挿入性を向上させることができる。また、筒状部は中空部により、火炎等による熱が筒状部に伝わりやすくすることができる。また、抵抗部が筒状部の変形の抵抗となるため、筒状部の変形に対する反発力を大きくすることができ、熱膨張性耐火成形体の取付保持の安定性を向上させることができる。
【0008】
本開示の一態様では、第1抵抗部は、中空部の少なくとも一部を仕切るように構成されてもよい。
このような構成によれば、熱膨張性耐火成形体の取付保持の安定性を向上させることができる。
【0009】
本開示の一態様では、第1抵抗部は、両端部が筒状部に接続されることで、中空部を複数に分割してもよい。
このような構成によれば、第1抵抗部の両端部が筒状部に接続される構成になるため、筒状部の変形に対する反発力を大きくすることができる。よって、熱膨張性耐火成形体の取付保持の安定性をさらに向上させることができる。
【0010】
本開示の一態様では、複数の第1抵抗部を備えてもよい。複数の第1抵抗部は、中空部にて交わるように接続されてもよい。
このような構成によれば、複数の第1抵抗部が中空部にて交わるように接続されるので、筒状部の変形に対する耐久性を向上させることができる。
【0011】
本開示の一態様は、筒状部は、外周面のうちの他の部位よりも外周側に突出する突出部、をさらに備えてもよい。
このような構成によれば、突出部が建築部材に触れることで、局所的に筒状部を押圧することができる。この際、突出部が押圧されて筒状部が変形しやすくなるため、取付保持の安定性を向上させることができる。
【0012】
本開示の一態様では、突出部は、筒状部の外周面に沿って延びる方向を長手方向とする帯状に構成され、W≧Tとなるように構成されてもよい。ただし、長手方向に直交する方向を幅方向、筒状部の外周面から突出する方向を厚み方向とし、突出部における厚み方向の長さをT、幅方向の長さをWとする。
【0013】
このような構成によれば、突出部の変形が抑制され、筒状部が変形しやすい形状とすることができ、熱膨張性耐火成形体の取付保持のための保持力を得やすくすることができる。
【0014】
本開示の一態様では、突出部は中空部を取り囲むような無端環状に構成されてもよい。
このような構成によれば、突出部が中空部に向けて筒状部を変形させやすい構成とすることができる。よって、熱膨張性耐火成形体の取付保持のための保持力を得やすくすることができる。
【0015】
本開示の一態様では、第1抵抗部は、第2抵抗部から筒状部の端部まで延びるように構成されてもよい。
このような構成によれば、抵抗部によって筒状部の剛性を高めることができる。よって、熱膨張性耐火成形体の取付保持の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】熱膨張性耐火成形体の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】熱膨張性耐火成形体の仮想的な分解図である。
【
図4】熱膨張性耐火成形体のうちの突出部付近の拡大図である。
【
図5】熱膨張性耐火成形体の建築部材への挿入後の状態を示す平面図である。
【
図6】熱膨張性耐火成形体の建築部材への挿入前の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本開示の一態様の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
本開示の一態様の熱膨張性耐火成形体1は、住宅等の建物において、例えば耐火ボード等の建築部材21の隙間22(例えば
図6参照)に挿入されて利用される商品である。熱膨張性耐火成形体1は、火災時等の熱によって膨張し、建築部材21の隙間22を閉塞するように作用することで、建築部材21の隙間22から火炎が伝播することを抑制し、延いては延焼を抑制するように機能する。
【0018】
熱膨張性耐火成形体1は、
図1に示すように、筒状部11と、第1抵抗部12と、第2抵抗部32と、を備える。第1抵抗部12及び第2抵抗部32は、本開示での抵抗部に相当する。第1抵抗部12としては、複数の第1抵抗部12A,12B,12C,12Dを備える。熱膨張性耐火成形体1は、突出部14を備えてもよい。熱膨張性耐火成形体1は、筒状部11、複数の第1抵抗部12A,12B,12C,12D、第2抵抗部32、突出部14が一体に構成される。
【0019】
筒状部11は、熱膨張性耐火成形体1のうちの外周部分を構成する部位である。筒状部11は、外形が略立方体の筒状に構成される。筒状部11は、内側に断面が四角形となる複数の中空部13を有する。なお、筒状部11の外形は、四角形以外であってもよく、隙間22の形状に略一致する外形を備えることが好ましい。
【0020】
複数の中空部13は、それぞれ、筒状部11の内側に形成される。複数の中空部13は、熱膨張性耐火成形体1の上下の面うちの少なくとも一方の面から、熱膨張性耐火成形体1の内部に向かって延びる空間である。
図1においては第2抵抗部32から上方向に中空部13が形成され、熱膨張性耐火成形体1の上側の面が開口する。
【0021】
なお、熱膨張性耐火成形体1は、上側の面に限らず、上側及び下側の面が開口してもよいし、下側の面が開口してもよい。下側の面のみが開口する場合、熱膨張性耐火成形体1は、上下反転した形状になるが、このような形状であってもよい。また、筒状部11の開口が形成される面と該面に対向する面とを繋ぐ方向を高さ方向という。また、中空部13を取り囲む方向を周方向、筒状部11の外周面から突出する方向を厚み方向という。また、周方向と厚み方向とを含む仮想的な平面に沿う方向を交差方向という。
【0022】
複数の第1抵抗部12A,12B,12C,12Dは、以下、まとめて第1抵抗部12とも表記する。なお、複数の第1抵抗部12A,12B,12C,12Dは、本実施形態では4つ備えられるが、少なくとも1つ以上備えられていればよい。
【0023】
第1抵抗部12は、筒状部11が外力によって変形する際に変形の抵抗となるように構成される部位である。第1抵抗部12は、熱膨張性耐火成形体1の取付保持の安定性を向上させるために配置される。
【0024】
なお、取付保持の安定性とは、建築部材21の隙間22に挿入された後の熱膨張性耐火成形体1について、建築部材21からの脱落しにくさの程度を表す。具体的には、取付保持の安定性が高い方が、熱膨張性耐火成形体1が建築部材21に強固に保持され、建築部材21から脱落しにくいことを示す。
【0025】
複数の第1抵抗部12A,12B,12C,12Dは、筒状部11を構成する中空部13の中央部で接続される。換言すれば、複数の第1抵抗部12A,12B,12C,12Dは、筒状部11の内部空間の中央で交わるように接続される。
【0026】
本開示の一態様では、平面視において、第1抵抗部12は、両端部が筒状部11に接続される。両端部とは、
図3における左右方向においては、左側の第1抵抗部12Aのうちの筒状部11と接続された端部12E、及び右側の第1抵抗部12Cのうちの筒状部11と接続された端部12Gを示す。また、
図3における上下方向においては、下側の第1抵抗部12Bのうちの筒状部11と接続された端部12F、及び上側の第1抵抗部12Dのうちの筒状部11と接続された端部12Hを示す。
【0027】
このような第1抵抗部12は、筒状部11のみによって形成される内部空間を、複数の中空部13に分割するように構成される。なお、平面視とは、
図3のように高さ方向の上側から熱膨張性耐火成形体1を見たときの視線である。本実施形態では、中空部13は、4つの第1抵抗部12A,12B,12C,12Dによって4つの領域に分割されている。
【0028】
このような構成によって、複数の第1抵抗部12A,12B,12C,12Dは、中空部13の少なくとも一部を仕切るように構成される。分割されたそれぞれの中空部13は、高さ方向に延びるように構成される。複数の第1抵抗部12は、開口部11B(
図6に示す上端部13A、すなわち
図1では中空部13の上端)から第2抵抗部32まで延びるように構成される。換言すれば、複数の第1抵抗部12は、筒状部11において、交差方向での断面を塞がないように形成される。より詳細には、複数の第1抵抗部12は、筒状部11及び複数の第1抵抗部12を、任意の交差方向で切断したときに、複数の第1抵抗部12と筒状部11との間に中空部13が存在するように形成される。
【0029】
第2抵抗部32は、
図2に示されるように、複数の第1抵抗部12の下端と接続される。第2抵抗部32は、熱膨張性耐火成形体1の下面側(
図6に示す下端部13B側)に配置される。第2抵抗部32の高さ方向の下側面は、熱膨張性耐火成形体1の下面と一致するように構成される。換言すれば、第2抵抗部32は、筒状部11において、交差方向での断面を塞ぐように形成される。より詳細には、第2抵抗部32は、筒状部11及び第2抵抗部32を、任意の交差方向で切断したときに、第2抵抗部32と筒状部11との間に中空部13が存在しないように形成される。
なお、
図2では、抵抗部(複数の第1抵抗部12及び第2抵抗部32)の構造を明確にするために、抵抗部及び筒状部11を分離して図示しているが、製造時及び製造後において抵抗部及び筒状部11が分離することを示唆するわけではない。抵抗部及び筒状部11は、一体になるように製造され、利用されてもよい。
【0030】
突出部14は、
図4に示すように、筒状部11の外周面のうちの通常部位11Aよりも外周側に突出する部位である。通常部位11Aは、筒状部11の立方体の外形を構成する部位である。換言すれば、通常部位11Aは、筒状部11の外周面において、中空部13を取り囲む外周の長さが一様になる部位である。
【0031】
さらに述べると、筒状部11の外周面のうちの中空部13を取り囲む各面のうち、突出部14が配置される領域以外の部位が、通常部位11Aである。一方、突出部14は、筒状部11の外周面において、中空部13を取り囲む外周の長さが一様でなく、高さ方向の位置の変化とともに外周の長さが変化する部位である。
【0032】
突出部14は、
図1に示すように、中空部13の全周を取り囲むように一方向に延びる無端環状、換言すれば周方向に沿って延びる帯状に構成されている。なお、突出部14が延びる方向を長手方向ともいい、長手方向に直交する方向(例えば本実施形態では高さ方向)を幅方向ともいう。突出部14は、高さ方向の上端から下端に向かうにつれて、徐々に外周の長さが変化するように構成される。この構成では、突出部14の外周の長さが急激に変化する場合と比較して、建築部材21の隙間22に挿入される際に、熱膨張性耐火成形体1が建築部材21に引っ掛かりにくくすることができる。
【0033】
ここで、
図4に示すように、突出部14における厚み方向の長さをT、高さ方向の長さ、すなわち、突出部14の幅方向の長さをWとする。突出部14は、熱膨張性耐火成形体1の取付保持のための保持力を得やすくするために、幅方向の長さWは、厚み方向の長さT以上となるように構成される。なお、本実施形態においては、突出部14における厚み方向の長さTは、厚み方向の最大長さを示す。
【0034】
[1-2.使用例]
熱膨張性耐火成形体1は、例えば、
図5~
図7に示すように、木製の板部材として構成された建築部材21に配置される。建築部材21には、孔としての隙間22が形成されており、熱膨張性耐火成形体1は、この隙間22に挿入されて利用される。なお、熱膨張性耐火成形体1は、木製の板部材に限らず、板部材以外の木材、耐火ボード、金属部材等、任意の建築部材21に適用することができる。
【0035】
熱膨張性耐火成形体1は、通常部位11Aの外周が隙間22の内周よりもやや小さく、突出部14の外周が隙間22の内周よりもやや大きくなるように構成されていることが好ましい。
【0036】
このような構成では、
図6に示すように、熱膨張性耐火成形体1は、突出部14が隙間22に圧入される。そして、
図7に示すように、突出部14は隙間22の内周に沿って押圧されて変形し、
図5の矢印にて示すような反発力を生じる。この反発力によって、熱膨張性耐火成形体1は、建築部材21の隙間22にて良好に保持される。
【0037】
また、作業の精度によるばらつきの影響により、建築部材21の隙間22が予定寸法よりもやや狭く、通常部位11Aの外周が隙間22の内周よりもやや大きくなってもよい。この場合、熱膨張性耐火成形体1は中空部13を備えるので、中空部13が狭くなるように筒状部11を変形させながら、隙間22の大きさに合わせて通常部位11Aを隙間22に圧入することができる。
【0038】
なお、熱膨張性耐火成形体1は、火炎等によって加熱されると、筒状部11、並びに第1抵抗部12及び第2抵抗部32が膨張し、中空部13を閉塞するように構成される。また、熱膨張性耐火成形体1は、建築部材21が加熱されることで隙間22が拡大する場合においても、拡大する隙間22を埋めるように膨張する。この結果、隙間22を介して火炎が広がることを抑制することができる。
【0039】
[1-3.製造方法と組成]
熱膨張性耐火成形体1の製造方法及び組成を例示する。
熱膨張性耐火成形体1は、例えば、注入型の加硫成型により製造可能である。熱膨張性耐火成形体1は、ゴム系材料、加硫剤、難燃剤、熱膨張性材料、充填剤等を材料とする一般的な熱膨張性耐火成形体として構成することができる。
【0040】
ゴム系材料としては、例えば、イソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等を採用できる。
【0041】
また、加硫剤としては、例えば、有機過酸化物、硫黄系加硫剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、チアゾール系材料、スルフェンアミド系材料等を採用できる。
また、難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、塩素系難燃剤、無機系難燃剤等を採用できる。
【0042】
また、熱膨張性材料としては、熱膨張黒鉛、メラミン系化合物等を採用できる。また、充填剤としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、クレイ、タルク、酸化チタン、ベントナイト等を採用できる。
【0043】
[1-4.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)本実施形態の一態様は、建築部材21の隙間22に挿入される熱膨張性耐火成形体1である。熱膨張性耐火成形体1は、筒状部11と、第1抵抗部12と、第2抵抗部32と、を備える。筒状部11は、内側に中空部13を有する筒状に構成される。第1抵抗部12は、筒状部11の高さ方向に交わる交差方向での断面が塞がれないように形成される。また、第2抵抗部32は、筒状部11の交差方向での断面を塞ぐように形成される。第1抵抗部12及び第2抵抗部32は、筒状部11が外力によって変形する際に変形の抵抗となるように構成される。
【0044】
このような構成によれば、中空部13が存在しない構成よりも筒状部11が変形しやすく構成できるので、建築部材21の隙間22への挿入性を向上させることができる。また、筒状部11は中空部13により、火炎等による熱が中空部13を通って筒状部11全体に伝わりやすくすることができる。また、第1抵抗部12及び第2抵抗部32が筒状部11の変形の抵抗となるため、筒状部11の変形に対する反発力を大きくすることができ、熱膨張性耐火成形体1の取付保持の安定性を向上させることができる。
【0045】
(1b)本実施形態の一態様では、第1抵抗部12は、中空部13の少なくとも一部を仕切るように構成される。
このような構成によれば、第1抵抗部12が中空部13の一部を仕切ることで筒状部11を補強することができるため、熱膨張性耐火成形体1の取付保持の安定性を向上させることができる。
【0046】
(1c)本実施形態の一態様では、第1抵抗部12は、両端部が筒状部11に接続されることで、中空部13を複数に分割するように構成される。
このような構成によれば、第1抵抗部12の両端部が筒状部11に接続される構成になるため、より強固に筒状部11を補強することができる。よって、より筒状部11の変形に対する反発力を大きくすることができ、熱膨張性耐火成形体1の取付保持の安定性をさらに向上させることができる。
【0047】
(1d)本実施形態の一態様では、複数の第1抵抗部12を備える。複数の第1抵抗部12は、中空部13にて交わるように接続される。このような構成によれば、複数の第1抵抗部12が中空部13にて交わるように接続されるので、筒状部11の変形に対する耐久性を向上させることができる。
【0048】
(1e)本実施形態の一態様は、筒状部11は、外周面のうちの他の部位よりも外周側に突出する突出部14、をさらに備える。
このような構成によれば、突出部14が建築部材21に触れることで、局所的に筒状部11を押圧することができる。この際、突出部14が押圧されて筒状部11が変形しやすくなるため、取付保持の安定性を向上させることができる。
【0049】
(1f)本実施形態の一態様では、突出部14は、周方向に沿って延びる帯状に構成され、「幅方向の長さW」≧「厚み方向の長さT」となるように構成される。
このような構成によれば、突出部14の変形が抑制され、筒状部11が変形しやすい形状とすることができ、熱膨張性耐火成形体1の取付保持のための保持力を得やすくすることができる。
【0050】
(1g)本実施形態の一態様では、突出部14は中空部13を取り囲むような無端環状に構成される。
このような構成によれば、突出部14が中空部13に向けて筒状部11を変形させやすい構成とすることができる。よって、熱膨張性耐火成形体1の取付保持のための保持力を得やすくすることができる。
【0051】
(1h)本開示の一態様では、第1抵抗部12は、第2抵抗部32から筒状部11の端部まで延びるように構成される。
このような構成によれば、第1抵抗部12によって筒状部11の剛性を高めることができる。よって、熱膨張性耐火成形体1の取付保持の安定性を向上させることができる。
【0052】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0053】
(2a)上記実施形態では、突出部14は、中空部13を取り囲むように高さ方向に直交する周方向に沿って、無端環状に構成されたが、これに限定されるものではない。例えば、突出部14は、中空部13の全周を取り囲む必要はなく、少なくとも一部を取り囲むように構成されていてもよい。
また、突出部14は、高さ方向に沿って帯状に形成されてもよい。また、突出部14は、中空部13の周囲を幾重にも取り囲むように、帯状かつ螺旋状に形成されていてもよい。
【0054】
(2b)上記実施形態では、突出部14は、幅方向の長さWは、厚み方向の長さT以上となるように構成されたがこの構成に限られない。例えば、突出部14は、W<Tとなるように構成されてもよい。また、突出部14は、帯状に限らず、点状等、任意の形状であってもよい。
【0055】
(2c)上記実施形態では、熱膨張性耐火成形体1は突出部14を備えたが、突出部14を備えていなくてもよい。なお、この場合、通常部位11Aが隙間22に圧入されるように寸法が設定されていることが好ましい。
【0056】
(2d)上記実施形態では、複数の第1抵抗部12A,12B,12C,12Dが筒状部11を構成する中空部13で交わるように接続されたがこの構成に限られない。例えば、複数の第1抵抗部12A,12B,12C,12Dは、互いに平行に配置される等、交わらないように配置されてもよい。
【0057】
(2e)第1抵抗部12は、平面視において、両端部が筒状部11の内面に接続され、かつ第2抵抗部32から筒状部11の端部まで延びるように構成されたが、この構成に限られない。例えば、第1抵抗部12は、平面視において、片側部のみが筒状部11の内面に接続されてもよい。また、第1抵抗部12は、筒状部11の高さ方向において少なくとも一部に配置されていてもよい。
【0058】
(2f)第1抵抗部12は、筒状部11の内面から突出するリブとして構成されてもよい。つまり、第1抵抗部12は、筒状部11の変形に抵抗することができる任意の形状を採用することができる。
【0059】
(2g)第2抵抗部32は、筒状部11の端部に構成されたが、この構成に限られない。第2抵抗部32は、高さ方向において筒状部11の中間部分、例えば中央に構成されてもよい。また、上記実施形態では、第2抵抗部32は、高さ方向に直交する交差方向に沿って配置されたが、この構成に限られない。例えば、第2抵抗部32は、高さ方向に交わる方向に形成されていればよく、高さ方向に一部又は全部が傾斜するように形成されていてもよい。つまり、第2抵抗部32が、高さ方向と直交する方向、及び高さ方向と一致しない面に沿って形成されていてもよい。換言すれば、交差方向は、高さ方向と直交する方向と一致しない方向であって、高さ方向とも一致しない方向であれば任意の方向を採用できる。
【0060】
(2h)第1抵抗部12、第2抵抗部32及び突出部14の数は、1つでも複数でもよく、任意の数を採用することができる。複数の突出部14を備える場合、複数の突出部14は、一方向に平行に延びる帯状に構成されてもよいし、非平行な異なる複数の方向に延びるように構成されてもよい。また、個々の突出部14は、複数の方向に分岐してもよいし、一方向とは異なる方向に屈曲してもよい。
【0061】
(2i)筒状部11の外周及び内周の断面形状は、四角形に限らず、任意の多角形、円形、楕円形等、任意の形状を採用することができる。また、筒状部11の外周及び内周の形状は、一致している必要はなく、互いに異なる任意の形状を採用することができる。
【0062】
(2j)上記実施形態の筒状部11は、略立方体の形状に構成されているが、この構成に限られない。筒状部11は、例えば、高さ方向よりも、高さ方向と直交する直交方向がより長くなるように構成してもよいし、直交方向よりも高さ方向がより長くなるように構成してもよい。
【0063】
(2k)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0064】
(2l)上述した熱膨張性耐火成形体1の他、当該熱膨張性耐火成形体1を構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1…熱膨張性耐火成形体、11…筒状部、11A…通常部位、12,12A~12D…第1抵抗部、32…第2抵抗部、13…中空部、14…突出部、21…建築部材、22…隙間。