(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122249
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 13/15 20060101AFI20230825BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
F24F13/15 F
G06F1/20 B
G06F1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025843
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福光 超
(72)【発明者】
【氏名】河野 千怜
(72)【発明者】
【氏名】永廣 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼塚 俊介
(72)【発明者】
【氏名】キム ボンジュン
【テーマコード(参考)】
3L081
【Fターム(参考)】
3L081AA05
3L081FA04
3L081HA04
3L081HB02
(57)【要約】
【課題】 床下に設けられた冷風供給路からサーバ室に冷風を供給する空調システムにおいて、停電時に冷風供給路からサーバ室に高温の空気が流れ込むことを抑制可能な空調システムの一例を開示する。
【解決手段】 逆流防止装置10は、バイメタル12C、13C、及び第1永久磁石12A、13Aと第2永久磁石12B、13Bとの間に作用する磁力を利用して冷風供給路内から多数の吹出口に至る空気通路を開閉する。したがって、停電により電源が消失した場合であっても逆流防止装置10が作動するので、停電により空調システムが停止したときに、冷風供給路からサーバ室に温風が流れ込むことを抑制できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下に設けられた冷風供給路からサーバ室に冷風を供給する空調システムにおいて、
前記冷風供給路の冷風吹出口に至る空気通路を開く位置と当該空気通路を閉じる位置との間で揺動する揺動体と、
前記揺動体に連結された変位可能な第1永久磁石であって、変位したときに当該揺動体を揺動させる力を発揮可能な第1永久磁石と、
前記第1永久磁石を変位させる磁力を発揮する可能な第2永久磁石であって、当該磁力が発揮可能な位置と当該磁力が及ばない位置との間で変位可能な第2永久磁石と、
前記冷風供給路の空気温度に応じて変形する形状変化部材を有し、当該形状変化部材の変形を利用して前記第2永久磁石を変位させる変位機構と
を備える空調システム。
【請求項2】
前記形状変化部材は、線膨張係数の異なる2種類の部材が接合されたバイメタルであることを特徴する請求項1に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、床下に設けられた冷風供給路からサーバ室に冷風を供給する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の空調システムでは、形状記憶合金の形状変化を利用して吹出口の開度を温度に応じて自動調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、床下に設けられた冷風供給路からサーバ室に冷風を供給する空調システムにおいて、停電時に冷風供給路からサーバ室に高温の空気が流れ込むことを抑制可能な空調システムの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
床下に設けられた冷風供給路(3)からサーバ室に冷風を供給する空調システムは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0006】
すなわち、当該構成要件は、冷風供給路(3)の冷風吹出口に至る空気通路を開く位置と当該空気通路を閉じる位置との間で揺動する揺動体(11A)と、揺動体(11A)に連結された変位可能な第1永久磁石(12A)であって、変位したときに当該揺動体(11A)を揺動させる力を発揮可能な第1永久磁石(12A)と、第1永久磁石(12A)を変位させる磁力を発揮する可能な第2永久磁石(12B)であって、当該磁力が発揮可能な位置と当該磁力が及ばない位置との間で変位可能な第2永久磁石(12B)と、冷風供給路(3)の空気温度に応じて変形する形状変化部材(12C)を有し、当該形状変化部材(12C)の変形を利用して第2永久磁石(12B)を変位させる変位機構とである。
【0007】
これにより、当該空調システムでは、停電により電源が消失した場合であっても、形状変化部材(12C)、及び第1永久磁石(12A)と第2永久磁石(12B)との間に作用する磁力を利用して上記の空気通路を閉じることができ得る。したがって、停電により空調システムが停止したときであっても、冷風供給路(3)からサーバ室に高温の空気が流れ込むことを抑制できる。
【0008】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る空調システムを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る逆流防止装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0011】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された空調装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0012】
(第1実施形態)
<1.空調システムの概要(
図1参照)>
本実施形態は、通信機器室やサーバ室等(以下、サーバ室SRという。)に冷風を供給する空調システム1に本開示を適用したものである。サーバ室SRには、少なくとも1つのラックRが設置されている。当該ラックRには、少なくとも1つの情報通信技術用機器(以下、ICT機器と記す。)等が搭載されている。
【0013】
そして、空調機2は、サーバ室SR内から空気を吸い込むとともに、その吸い込まれた空気を冷却した後、冷却後の空気(以下、冷風という。)を冷風供給路3を介してサーバ室SR内に供給する。
【0014】
冷風供給路3は、サーバ室SRの床下に設けられている。そして、冷風供給路3を流通する冷風は、床に設けられた多数の吹出口3Aからサーバ室SR内に吹き出す。空調機2は、冷却器2A及び送風機2B等を少なくとも有する。
【0015】
冷却器2Aは、空気を冷却する。送風機2Bは、サーバ室SR内から空気を吸い込んで当該空気を冷却に供給するとともに、冷風を冷風供給路3に向けて吹き出す。冷風供給路3内には、逆流防止装置10が設置されている。
【0016】
逆流防止装置10は、冷風供給路3に進入した高温の空気がサーバ室SRに流れ込むことを防止するための装置である。なお、高温の空気(以下、温風という。)が冷風供給路3内に進入する理由は、例えば、以下の通りである。
【0017】
すなわち、ICT機器には、CPUやGPU等の演算ユニット(図示せず。)及びファン(図示せず。)等が搭載されている。ファンは、サーバ室SR内の空気を冷却用の空気として演算ユニットに送風する。
【0018】
演算ユニットを冷却して温度が上昇した空気は、温風としてICT機器からサーバ室SR内に排出される。そして、サーバ室内に排出された温風は、空調機2に吸い込まれて冷却された後、再び、サーバ室SR内に戻ってくる。
【0019】
ところで、ICT機器には、無停電電源装置等のバッテリを介して電力が供給されている。このため、停電が発生してもICT機器は停止しない。つまり、停電中であっても、演算ユニットが発熱するため、ファンは、サーバ室SR内から空気を吸引するとともに、温風をサーバ室内に排出する。
【0020】
一方、空調システムの送風機2B及び冷却器2Aは、停電により停止している。このため、ファンの送風作用により、コールドアイルの気圧がホットアイルの気圧より低くなる。なお、コールドアイルとは、サーバ室SR内の空間のうちファンの吸入側をいう。ホットアイルとは、サーバ室SR内の空間のうちファンの排出側をいう。
【0021】
そして、コールドアイルとホットアイルとの気圧差が大きくなると、ホットアイルに存在する温風が空調機2を経由して冷風供給路3に進入する。そして、冷風供給路3に進入した高温の空気がファンにより吸い込まれてコールドアイルに流入する。
【0022】
<2.逆流防止装置の構成(
図2参照)>
<2.1 構成の概要>
逆流防止装置10は、開閉部11、第1アクチュエータ12及び第2アクチュエータ13等を有して構成されている。開閉部11は、冷風供給路3内に設けられている。当該開閉部11は、冷風供給路3内から多数の吹出口3Aに至る空気通路を開閉する。
【0023】
具体的には、開閉部11は、多数枚の帯板状のルーバ(羽根板ともいう。)11A及びワイヤー11Bを有する鎧窓状の部位である。各ルーバ11Aは、多数の吹出口3Aに至る空気通路を開く位置(以下、開位置という。)と当該空気通路を閉じる位置(以下、閉位置という。)との間で揺動する揺動体の一例である。
【0024】
各ルーバ11Aは、紙面下端側を揺動中心として揺動可能である。なお、
図2に示された各ルーバ11Aは、閉位置にあるときを示している。したがって、各ルーバ11Aが開位置になると、各ルーバ11Aは、鉛直方向と略平行な状態となる。
【0025】
ワイヤー11Bは、可撓性を有する線状の部材である。当該ワイヤー11Bは、各揺動中心を連ねた仮想線Loと平行な方向に延びている。そして、各ルーバ11Aは、各揺動中心からずれた位置にてワイヤー11Bにより連結されている。
【0026】
このため、例えば
図2に示される状態(閉位置)において、ワイヤー11Bが、紙面左向きに引かれると、各ルーバ11Aは、開位置となる。各ルーバ11Aが開位置にある状態でワイヤー11Bが、紙面右向きに引かれると、各ルーバ11Aは、閉位置(
図2に示される状態)となる。なお、ストッパ11Cは、ワイヤー11Bの変位量を規制する。
【0027】
第1アクチュエータ12及び第2アクチュエータ13は、各ルーバ11Aを揺動させる力を発生させる装置である。なお、本実施形態では、第1アクチュエータ12は、ワイヤー11Bを紙面左向きに引く力を発生させる。第2アクチュエータ13は、ワイヤー11Bを紙面右向きに引く力を発生させる。
【0028】
<2.2. アクチュエータの構成>
<第1アクチュエータ>
第1アクチュエータ12は、第1永久磁石12A、第2永久磁石12B及びバイメタル12C等を有して構成されている。第1永久磁石12Aは、平行変位可能な状態で、ワイヤー11Bの延び方向一端側に連結されている。
【0029】
つまり、第1永久磁石12Aは、ワイヤー11Bを介して各ルーバ11Aに連結されている。そして、第1永久磁石12Aの平行変位は、シリンダ12D等の案内部材により、ワイヤー11Bの延び方向と平行となるように案内される。
【0030】
第2永久磁石12Bは、第1永久磁石12Aを変位させる磁力を発揮する磁石である。なお、本実施形態に係る第2永久磁石12Bは、第1永久磁石12Aを紙面左向きに変位させる引力を発生させるための磁石である。
【0031】
そして、第2永久磁石12Bは、当該引力が発揮可能な位置(二点鎖線で示される位置)と当該引力が及ばない位置(実線で示される位置)との間で変位可能である。バイメタル12Cは、第2永久磁石12Bを変位させる変位機構を構成するものである。
【0032】
すなわち、バイメタル12Cは、冷風供給路3の空気温度に応じて変形する形状変化部材の一例である。当該変位機構は、バイメタル12Cの変形を利用して第2永久磁石12Bを変位させる。
【0033】
具体的には、バイメタル12Cは、冷風供給路3の空気温度が予め決められた温度(以下、閉鎖温度という。)より高い場合には、第2永久磁石12Bを上記引力が及ばない位置(実線で示される位置)とする。バイメタル12Cは、冷風供給路3の空気温度が閉鎖温度以下の場合には、第2永久磁石12Bを引力が発揮可能な位置(二点鎖線で示される位置)とする。
【0034】
<第2アクチュエータ>
第2アクチュエータ13の構成は、バイメタルの変形の向きを除き、第1アクチュエータ12と同一の構成である。すなわち、第2アクチュエータ13も、第1永久磁石13A、第2永久磁石13B、バイメタル13C及びシリンダ13D等を有して構成されている。
【0035】
なお、第1永久磁石13Aは、ワイヤー11Bの延び方向他端側に連結されている。バイメタル13Cは、冷風供給路3の空気温度が閉鎖温度より高い場合には、第2永久磁石13Bを第1永久磁石13Aとの間で引力が発揮可能な位置とする。
【0036】
バイメタル13Cは、冷風供給路3の空気温度が閉鎖温度以下の場合には、第2永久磁石13Bを第1永久磁石13Aとの間で引力が及ばない位置とする。なお、本実施形態では、バイメタル12Cとバイメタル13Cとは、上下反対に配置された同一仕様のバイメタルである。
【0037】
<2.3 逆流防止装置の作動>
冷風供給路3の空気温度が閉鎖温度より高い場合には、第1永久磁石13Aと第2永久磁石13Bとの間に大きな引力が発生し、第1永久磁石12Aと第2永久磁石12Bとの間の引力が小さくなる。このため、ワイヤー11Bが紙面右側に引かれるため、各ルーバ11Aは、閉位置となる。
【0038】
したがって、ホットアイルに存在する温風が空調機2を経由して冷風供給路3に進入した場合であっても、冷風供給路3に進入した高温の空気がコールドアイルに流入することが抑制される。
【0039】
冷風供給路3の空気温度が閉鎖温度以下の場合には、第1永久磁石12Aと第2永久磁石12Bとの間に大きな引力が発生し、第1永久磁石13Aと第2永久磁石13Bとの間の引力が小さくなる。このため、ワイヤー11Bが紙面右側に引かれるため、各ルーバ11Aは、開位置となる。
【0040】
したがって、空調機2から冷風供給路3に供給された冷風がコールドアイルに流入するので、ファンは、コールドアイルに存在する冷風を冷却空気として演算ユニットに送風する。
【0041】
<3.本実施形態に係る空調システム(特に、逆流防止装置)の特徴>
本実施形態に逆流防止装置10は、バイメタル12C、13C、及び第1永久磁石12A、13Aと第2永久磁石12B、13Bとの間に作用する磁力を利用して冷風供給路3内から多数の吹出口3Aに至る空気通路を開閉する。
【0042】
したがって、停電により電源が消失した場合であっても逆流防止装置10が作動するので、停電により空調システムが停止したときに、冷風供給路3からサーバ室SRに温風が流れ込むことを抑制できる。
【0043】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第1永久磁石12A、13Aと第2永久磁石12B、13Bとの間に作用する引力を利用した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1永久磁石12A、13Aと第2永久磁石12B、13Bとの間に作用する斥力を利用した構成であってもよい。
【0044】
上述の実施形態では、2つのアクチュエータを備える構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、2つのアクチュエータのうちいずれか一方のみを備え、他方には、当該アクチュエータと反対向きの力をワイヤー11Bに作用させる弾性体が配置された構成であってもよい。
【0045】
上述の実施形態では、ワイヤー11Bを介して第1永久磁石12A、13Aが各ルーバ11Aに連結されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、リンク等の剛体を介して第1永久磁石12A、13Aが各ルーバ11Aに連結された構成であってもよい。
【0046】
上述の実施形態に係る変位機構は、バイメタル12C、13Cにより直接的に第2永久磁石12B、13Bを変位させる構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、リンク等を介して第2永久磁石12B、13Bとバイメタル12C、13Cとが間接的に連結された構成の変位機構であってもよい。
【0047】
上述の実施形態では、形状変化部材として、線膨張係数の異なる2種類の部材が接合されたバイメタルを用いた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、形状記憶合金にて形状変化部材が構成されていてもよい。
【0048】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1… 空調システム 2…空調機 2A… 冷却器 2B… 送風機
3… 冷風供給路 3A…吹出口 10… 逆流防止装置 11… 開閉部
11A… ルーバ 11C…ストッパ 11B… ワイヤー
12… 第1アクチュエータ 12A…第1永久磁石 12B… 第2永久磁石
12C… バイメタル 13…第2アクチュエータ 13A… 第1永久磁石
13B… 第2永久磁石 13C…バイメタル