IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社椿本チエインの特許一覧

特開2023-122252充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム
<>
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図1
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図2
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図3
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図4
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図5
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図6
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図7
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図8
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図9
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図10
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図11
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図12
  • 特開-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122252
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230825BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230825BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20230825BHJP
   B60L 53/62 20190101ALI20230825BHJP
   B60L 55/00 20190101ALI20230825BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J13/00 301A
B60L53/66
B60L53/62
B60L55/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025847
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 涼
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小山 晋吾
【テーマコード(参考)】
5G064
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G064DA11
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA05
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC11
5H125AC23
5H125BC01
5H125BC24
5H125BE02
5H125CC06
5H125DD02
(57)【要約】
【課題】充放電開始前の設定値を適切にできる充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】充放電装置は、車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置であって、前記車両内で前記蓄電池における充放電を制御する車載制御装置と通信接続する通信部と、前記車載制御装置との間で所定のシーケンスに基づいてデータを前記通信部から送受信する制御部とを備え、前記制御部は、前記通信部による通信接続が確立した後に、設定されている入力又は出力が可能な電流値を含むデータを前記車載制御装置へ送信し、前記電流値に応じて前記車載制御装置から送信される放電又は充電の電流上限値を含む情報を前記通信部により受信し、前記電流値と、受信した前記電流上限値とが合致するか否かを判断し、合致しないと判断した場合、前記電流上限値に基づき前記電流値を再設定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置であって、
前記車両内で前記蓄電池における充放電を制御する車載制御装置と通信接続する通信部と、
前記車載制御装置との間で所定のシーケンスに基づいてデータを前記通信部から送受信する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記通信部による通信接続が確立した後に、設定されている入力又は出力が可能な電流値を含むデータを前記車載制御装置へ送信し、
前記電流値に応じて前記車載制御装置から送信される放電又は充電の電流上限値を含む情報を前記通信部により受信し、
前記電流値と、受信した前記電流上限値とが合致するか否かを判断し、
合致しないと判断した場合、前記電流上限値に基づき前記電流値を再設定する
充放電装置。
【請求項2】
前記制御部は、
送信した入力可能電流値が、前記車載制御装置から受信した放電電流上限値よりも大きいか否かを判断し、
前記入力可能電流値を前記放電電流上限値以下の値に設定し、
前記通信部による通信接続を再確立し、再設定後の前記入力可能電流値を再送する
請求項1に記載の充放電装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記車両に対して最初に前記通信部による通信接続を確立した後に、入力可能電流値として設定可能な最大値を含むデータを前記車載制御装置へ送信し、
最大値に応じて前記車載制御装置から送信された放電電流上限値を、入力可能電流値として設定する
請求項1又は2に記載の充放電装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記車両に対して最初に前記通信部による通信接続を確立した後に、前記車載制御装置から送信される放電電流上限値が、所定期間内に変化するか否かを判断し、
前記所定期間内に変化しないと判断された場合に、前記放電電流上限値以下の値を、入力可能電流値として設定する
請求項1又は2に記載の充放電装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記車両の車種に応じて入力又は出力が可能な電流値を記憶部に記憶し、
記憶してある前記電流値を含むデータを前記車載制御装置へ送信する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の充放電装置。
【請求項6】
車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置が、
前記車両内で前記蓄電池における充放電を制御する車載制御装置と通信接続し、
前記車載制御装置との間で、所定のシーケンスに基づき、設定されている入力又は出力が可能な電流値を含むデータを前記車載制御装置へ送信し、
前記電流値に応じて前記車載制御装置から送信される放電又は充電の電流上限値を含む情報を受信し、
前記電流値と、受信した前記電流上限値とが合致するか否かを判断し、
合致しないと判断した場合、前記電流上限値に基づき前記電流値を再設定する
充放電制御方法。
【請求項7】
車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置に搭載されるコンピュータに、
前記車両内で前記蓄電池における充放電を制御する車載制御装置と通信接続し、
前記車載制御装置との間で、所定のシーケンスに基づき、設定されている入力又は出力が可能な電流値を含むデータを前記車載制御装置へ送信し、
前記電流値に応じて前記車載制御装置から送信される放電又は充電の電流上限値を含む情報を受信し、
前記電流値と、受信した前記電流上限値とが合致するか否かを判断し、
合致しないと判断した場合、前記電流上限値に基づき前記電流値を再設定する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車に備えられている蓄電池の電池容量は比較的大容量である。これらの車両の蓄えられた電力を、電気自動車の駆動以外に、例えば家庭内の負荷へ供給することを可能とするV2H(Vehicle to Home )を実現する技術が提案されている。V2Hに限らず、より規模の大きい建物への電力供給を可能とするV2B(Vehicle to Building )、電力網への供給を可能とするV2G(Vehicle to Grid )を含むV2Xを実現する技術が提案されている。これらの技術により、災害発生によって停電状態となったとしても、移動が可能な電気自動車に蓄えられた電力を供給して生活を維持したり、工場の稼働を維持したりすることが期待できる。V2Xを実現する場合、EMS(Energy Management System)等、全体の状態を把握する上位装置からの制御を受けて計画的に充放電できることが望ましい。
【0003】
V2Xの実現には、車両の蓄電池に接続される充放電用ケーブルを有し、車両における充放電の制御と、上位装置からの制御との間で、充放電制御を実施することができる充放電装置の配備が必要になる。充放電装置は、固有の車種の車両に対応するのみならず、多様なメーカ製の電気自動車の略全てに対応し、上位装置からの制御と、車両内での蓄電池における充放電を制御する多様な車載制御装置との間を仲介する必要がある。
【0004】
特許文献1には、多様な車種について、上位装置(EMS)に対する充放電の即応性を発揮するため、車載制御装置との間の通信接続状態を維持する充放電装置が開示されている。特許文献1には、充放電装置は、通信接続状態を維持するための制御内容を車種に応じて変えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6773207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上位装置の制御に基づいて車両の蓄電池から放電する場合、放電電流値は、放電開始前に設定される値から変更できない規定がある。しかしながら、車両の蓄電池から実際に放電する際の放電電流値は、車両によって仕様が異なり、充放電中に不変である保証はない。例えば、放電中の放電電流値は、放電開始時に最初から最大値であるとは限らず、ゼロから徐々に最大値まで上がるような制御がされるものがある。また、電池容量の低下により、仕様に対して実際に出力できる電流値が変動する可能性もある。
【0007】
本発明は、斯かる事情を鑑みてなされたものであり、充放電開始前の設定値を適切にできる充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態の充放電装置は、車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置であって、前記車両内で前記蓄電池における充放電を制御する車載制御装置と通信接続する通信部と、前記車載制御装置との間で所定のシーケンスに基づいてデータを前記通信部から送受信する制御部とを備え、前記制御部は、前記通信部による通信接続が確立した後に、設定されている入力又は出力が可能な電流値を含むデータを前記車載制御装置へ送信し、前記電流値に応じて前記車載制御装置から送信される放電又は充電の電流上限値を含む情報を前記通信部により受信し、前記電流値と、受信した前記電流上限値とが合致するか否かを判断し、合致しないと判断した場合、前記電流上限値に基づき前記電流値を再設定する。
【0009】
本開示の一実施形態の充放電制御方法は、車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置が、前記車両内で前記蓄電池における充放電を制御する車載制御装置と通信接続し、前記車載制御装置との間で、所定のシーケンスに基づき、設定されている入力又は出力が可能な電流値を含むデータを前記車載制御装置へ送信し、前記電流値に応じて前記車載制御装置から送信される放電又は充電の電流上限値を含む情報を受信し、前記電流値と、受信した前記電流上限値とが合致するか否かを判断し、合致しないと判断した場合、前記電流上限値に基づき前記電流値を再設定する。
【0010】
本開示の一実施形態のコンピュータプログラムは、車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置に搭載されるコンピュータに、前記車両内で前記蓄電池における充放電を制御する車載制御装置と通信接続し、前記車載制御装置との間で、所定のシーケンスに基づき、設定されている入力又は出力が可能な電流値を含むデータを前記車載制御装置へ送信し、前記電流値に応じて前記車載制御装置から送信される放電又は充電の電流上限値を含む情報を受信し、前記電流値と、受信した前記電流上限値とが合致するか否かを判断し、合致しないと判断した場合、前記電流上限値に基づき前記電流値を再設定する、処理を実行させる。
【0011】
本開示の充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラムでは、所定のシーケンスに基づき、充放電装置から車載制御装置へ、入力可能電流値が送信され、車載制御装置からその電流値に応じた放電電流上限値が送信される。出力可能電流値と、充電電流上限値との関係であっても以下同様である。入力可能電流値と、放電電流上限値とが合致しない場合、所定のシーケンスが経過していてもその後、充放電を開始することができない。しかしながら、本開示の充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラムでは、充放電装置が、車載制御装置から受信した放電電流上限値に基づいて入力可能電流値を再設定する。充放電装置は、再度所定のシーケンスによって再設定後の入力可能電流値を送信する。この場合、充放電装置の入力可能電流値と、車載制御装置における放電電流上限値とが合致する可能性が高く、以後、スムーズに充放電が可能になる。
【0012】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記制御部は、送信した入力可能電流値が、前記車載制御装置から受信した放電電流上限値よりも大きいか否かを判断し、前記入力可能電流値を前記放電電流上限値以下の値に設定し、前記通信部による通信接続を再確立し、再設定後の前記入力可能電流値を再送する。
【0013】
充放電装置は、所定のシーケンスで車載制御装置へ送信した入力可能電流値が、車載制御装置から受信した放電電流上限値よりも大きい場合に、その後、通信接続を維持したまま放電を開始できない。本開示の充放電装置では、入力可能電流値が放電電流上限値よりも大きい場合、通信接続をリセットした後に、前記放電電流上限値に基づき再設定した入力可能電流値を送信する。この場合、その後に入力可能電流値が放電電流上限値よりも大きくなる可能性は低く、以後スムーズに放電が可能になる。
【0014】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記制御部は、前記車両に対して最初に前記通信部による通信接続を確立した後に、入力可能電流値として設定可能な最大値を含むデータを前記車載制御装置へ送信し、最大値に応じて前記車載制御装置から送信された放電電流上限値を、入力可能電流値として設定する。
【0015】
本開示の充放電装置では、最初に入力可能電流値として最大値を車載制御装置へ送信する。この場合、入力可能電流値が放電電流上限値よりも大きいと判定される可能性が高いが、送信する入力可能電流値を上限として最大の放電電流上限値を車載制御装置が送信してくることを用い、実際に最大の入力可能電流値を設定し直すことができる。
【0016】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記制御部は、前記車両に対して最初に前記通信部による通信接続を確立した後に、前記車載制御装置から送信される放電電流上限値が、所定期間内に変化するか否かを判断し、前記所定期間内に変化しないと判断された場合に、前記放電電流上限値以下の値を、入力可能電流値として設定する。
【0017】
本開示の充放電装置では、所定期間内に、車載制御装置から送信されてくる放電電流上限値に変化がない場合に初めて、入力可能電流値を放電電流上限値に基づき再設定する。起動してから放電電流上限値を少しずつ上昇させ、逐一送信してくる車載制御装置に対しても、適切に、より大きな入力可能電流値を設定することが可能である。
【0018】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記制御部は、前記車両の車種に応じて入力又は出力が可能な電流値を記憶部に記憶し、記憶してある前記電流値を含むデータを前記車載制御装置へ送信する。
【0019】
本開示の充放電装置では、接続される車両の車種を識別するデータに対応付けて、入力又は出力が可能な電流値を記憶しておき、これを利用して所定のシーケンスを実行する。車種の選択を受け付けるか、あるいは充放電装置が車種を推定してもよい。充放電装置は、入力又は出力が可能な電流値と、車載制御装置から送信される放電又は充電の電流上限値とが合致しない場合は、車種別の入力又は出力が可能な電流値の記憶を更新し、以後使用してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、充放電開始前の設定値を、車両の車載制御装置から得られる情報に合わせて再設定できる。したがって、多様な車両それぞれに合わせて、所定のシーケンスに沿って適切な設定値で充放電を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】充放電装置を含む充放電システムの概要図である。
図2】充放電装置及び車両の接続構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7】第3実施形態の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】第3実施形態の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】充放電装置の構成を示すブロック図である。
図10】第4実施形態の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11】第4実施形態の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12】変形例の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13】変形例の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、充放電装置1を含む充放電システム200の概要図である。家庭、事業所等の建物に配置されている負荷21、発電装置23、及び充放電装置1を含む。電力系統Eからの供給電力は電力線PLにより、分電盤28で負荷21、発電装置23へ分岐されるとともに、充放電装置1を介して接続される車両Vにも分岐される。充放電装置1は、分電盤28を介し、通信線CLによって上位装置29と接続されている。
【0024】
上位装置29は、電力系統Eからの負荷21への電力の授受、及び発電装置23からの負荷21群への電力授受を制御する。第1実施形態において上位装置29は、サーバ装置として外部に設けられ、地域の電力の授受を制御するEMSとして説明するが、分電盤28に設置されて建物内での発電充放電を制御するものであってもよいし、充放電装置1に内蔵されていてもよい。
【0025】
充放電システム200は他の一例では、公共施設である駐車場に設置された蓄電装置22、発電装置23、及び、充放電装置1を含む。この一例においても電力系統Eからの供給電力は電力線PLにより、分電盤28で、蓄電装置22、及び発電装置23へ分岐されるとともに、複数の充放電装置1を介して接続される各車両Vへ分岐される。充放電システム200は、その他、燃料電池を含んでもよい。他の一例でも上位装置29は、サーバ装置として外部に設けられているものして説明するが、分電盤28に設置されて公共施設内での発電充放電を制御するものであってもよいし、充放電装置1それぞれに内蔵されて充放電を制御するものであってもよい。
【0026】
図2は、充放電装置1及び車両Vの接続構成を示すブロック図である。車両Vは、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、又は燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle )である。
【0027】
車両Vは、その駆動に用いることが可能な大容量の蓄電装置30を備える。車両Vは、蓄電装置30に接続される電力線VPLへのコネクタ35と、蓄電装置30における充放電を制御する車載制御装置32とを備える。電力線VPLには、車両V側の充放電回路に含まれるDCリレー33が介装されており、車載制御装置32がDCリレー33のON及びOFFを制御する。コネクタ35には車載制御装置32と通信接続するための通信端子が含まれている。
【0028】
充放電装置1は、充放電回路10、制御部11、車両通信部12、電源部13、操作部14、サーバ通信部17及び上位通信部16を備える。充放電回路10は、双方向インバータ、各種リレー等の多様な回路素子を含む。充放電回路10は、車両Vと接続するコネクタ15と接続されるDCリレー10aと、電力系統Eと接続される電力線PLに介装された解列リレー10bとを含む。充放電回路10は、DCリレー10aを介してコネクタ15と電力線PLによって接続されている。
【0029】
制御部11は、充放電回路10に含まれる回路素子を制御し、車両Vの蓄電装置30に対する充放電の切り替え、電流量、及び電圧量を制御する。制御部11はCPU(Central Processing Unit)及び不揮発性メモリを含み、CPUは不揮発性メモリに記憶されたコンピュータプログラム1Pに基づく制御処理を実行して充放電回路10を制御する。
【0030】
制御部11の不揮発性メモリに記憶されているコンピュータプログラム1Pは、コンピュータから読み取り可能な記憶媒体8に記憶されていたコンピュータプログラム8PをCPUが読み出してメモリに記憶したものであってもよい。
【0031】
車両通信部12は、コネクタ15及びコネクタ35を介して車載制御装置32と通信接続が可能である。車両通信部12の通信接続のプロトコルは車両V、コネクタ15,35に対応する充放電方式に準拠していればよく、異なる充放電方式に適用するように複数のプロトコルに対応していずれかを選択的に実行できてもよい。本実施形態では車両通信部12は、CAN(Controller Area Network)によって車載制御装置32と通信する。PLCによって通信が実現されてもよい。
【0032】
電源部13は、UPS(Uninterruptible Power Systems)回路及び起動用蓄電池を含み、制御部11へ電力を供給する。電源部13は、停電時には起動用蓄電池から充放電装置1の起動に必要な電力を供給する。電源部13は、電力系統E、発電装置23又は車両Vからの電力を起動用蓄電池に充電してもよい。
【0033】
操作部14は、ディスプレイ、ディスプレイ内蔵タッチパネル、及び物理ボタンを含み、充放電装置1の外装に露出してユーザからのSTART(起動)及びSTOP(終了)を含む操作を受け付ける。制御部11は、操作部14にて受け付けられた操作に基づいて充放電回路10を制御してもよい。操作部14は、ランプを含み、状態に応じた色又はパターンで点灯するように制御部11によって制御される。
【0034】
上位通信部16は、上位装置29と通信線CLを介して通信を実現する。上位通信部16は例えば、Ethernet(登録商標)に準拠した通信線CLに対応する通信モジュールであってもよいし、ECHONET /ECHONETLite (登録商標)対応の通信線CLに対応する通信モジュールであってもよい。上位通信部16は、PLCにより通信を実現してもよい。
【0035】
上述のように構成される充放電装置1の充放電回路10は、図1及び図2に示すように、コネクタ15が車両Vのコネクタ35と接続された状態において、DCリレー10a及び車両V側のDCリレー33を介して車両Vの蓄電装置30と電力線PLにより接続されている。充放電回路10は、図1及び図2に示すように、解列リレー10b及び分電盤28を介して電力系統E、及び連系機器(蓄電装置22、発電装置23等)と電力線PLによって接続されている。充放電装置1は、電力系統Eと、車両Vの蓄電装置30、及び連系機器との間の電力の授受を制御する。充放電回路10は、解列リレー10b、DCリレー10a、及びDCリレー33が全てONの状態の場合に、電力線PLを介して蓄電装置30の蓄電装置22や負荷への放電、又は電力系統Eからの蓄電装置30への充電を実施できる。
【0036】
充放電装置1の制御部11は、車両通信部12を介して車載制御装置32と情報を送受信し、上位通信部16を介して上位装置29と情報を送受信し、それらの情報に基づいて充放電回路10を制御する。充放電装置1の制御部11は特に、充放電を実行する前に、車載制御装置32との間で所定の接続シーケンスを実行し、充放電開始が可能な状態となる。所定の接続シーケンスは例えば、CHAdeMO (登録商標)等の充放電制御規格で規定されている。
【0037】
多様な車両Vを充放電の対象とした充放電装置1では、所定の接続シーケンスにおいて、充放電装置1における放電時の最大電流値である入力可能電流値と、車両Vの蓄電装置30にて規定される放電時の最大電流値である放電電流上限値とを合致させる必要がある。充放電装置1が、特定のメーカの車両V、特定の車種の車両Vのみを対象とする場合、この入力可能電流値と放電電流上限値との齟齬は起こらないが、1台の充放電装置1が多様な車両Vを充放電の対象とする場合、入力可能電流値を適宜変更することが可能であることが好ましい。
【0038】
本開示の充放電装置1の制御部11は、車両Vの蓄電装置30からの放電を行なう場合、車載制御装置32との情報授受により、最適な入力可能電流値を設定する。以下、充放電装置1の制御部11による処理手順を説明する。なお、充電における充放電装置1側の出力可能電流値と、車両V側の充電電流上限値について同様の処理を行なってもよい。
【0039】
図3及び図4は、第1実施形態の制御部11による処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部11は、上位装置29からの起動指示、操作部14からの指示、あるいはスケジュールに基づく電源部13からの電力供給開始を受けて起動すると、以下の処理を開始する。
【0040】
充放電装置1の制御部11は、車両Vとの接続前状態であることを上位通信部16から上位装置29へ通知する(ステップS101)。制御部11は、コネクタ15及びコネクタ35の接続、即ち車両Vとの接続を確認すると(ステップS102)、コネクタ15及びコネクタ35のロックをONとする(ステップS103)。接続の確認は、所定の信号の授受が可能であるか否かの判断によって可能である。接続されていない場合は、エラーとなり開始処理を実行できない。
【0041】
制御部11は、車両通信部12によって車載制御装置32との通信接続を確立させる(ステップS104)。通信接続が確立されると制御部11は、車載制御装置32へ、設定してある入力可能電流値を含む情報を車両通信部12から送信する(ステップS105)。ステップS105において制御部11は、入力可能電流値の他に、出力可能電流値等の充放電装置1側の充放電電力に関する情報も送信する。
【0042】
制御部11は、入力可能電流値を送信したことに応じて、車載制御装置32から送信される放電電流上限値を含む車両情報を車両通信部12から受信する(ステップS106)。ステップS106において制御部11は、放電電流上限値の他に、車両Vの識別データ、車種、充電容量及び充電率(SOC:State Of Charge )等を受信する。車種は、EV、HEV、PHEV、FCV等である。車種がFCVである場合には、車両Vは放電専用車である。車種がEV、HEV、又はPHEVでも充電のみ可能な場合がある。
【0043】
制御部11は、ステップS106で受信した放電電流上限値と、設定してある入力可能電流値とを比較し、入力可能電流値が、放電電流上限値よりも大きいか否かを判断する(ステップS107)。
【0044】
入力可能電流値が放電電流上限値よりも大きいと判断された場合(S107:YES)、制御部11は、車両通信部12によって車載制御装置32との通信接続を切断する(ステップS108)。制御部11は、入力可能電流値を、設定し直す(ステップS109)。なおステップS109における再設定には、回数の制限、期間の制限を設け、所定回数以上の再設定が続いた場合には、制御部11はエラーで終了するようにしてもよい。
【0045】
ステップS109において制御部11は、ステップS106で受信した放電電流上限値と等しい値に設定する。制御部11は、ステップS106で受信した放電電流上限値から所定値分小さい値を、入力可能電流値として設定し直してもよい。
【0046】
制御部11は、設定し直した後に処理をステップS104へ戻し、再度通信接続を確立させる。
【0047】
入力可能電流値が、放電電流上限値以下であると判断された場合(S107:NO)、制御部11は、車両Vとの通信接続を完了したことを、上位通信部16から上位装置29へ通知する(ステップS110)。上位装置29に対する車両Vとの接続完了通知には、設定された入力可能電流値が含まれる。蓄電装置30の充電容量及び充電率に基づき特定される充放電可能電力が含まれてもよい。
【0048】
制御部11は、充放電装置1側のDCリレー10aと、車両V側のDCリレー33とをONにさせ、車両V側のDCリレー33をONのまま維持して、任意のタイミングで充電又は放電の開始、出力を変更できる“接続待機状態”で待機する(ステップS111)。
【0049】
制御部11は、充放電装置1側のリレーである充放電回路10の解列リレー10bをON(DCリレー10aはON状態のまま)とし、上位装置29又は操作部14から指示された電力設定に応じて充放電を開始又は続行する(ステップS112)。なお第1実施形態では、充放電装置1における入力可能電流値の設定についての処理について説明しているため、ステップS112において制御部11は「放電」の開始又は続行を制御する。
【0050】
制御部11は、上位装置29、車載制御装置32、あるいは操作部14から充放電の終了の指示を受けたか否かを判断する(ステップS113)。
【0051】
終了の指示を受けたと判断された場合(S113:YES)、制御部11は、終了シーケンスを開始して車両通信部12から車載制御装置32へ停止を通知する(ステップS114)。制御部11は、充放電装置1側のリレーである充放電回路10のDCリレー10a及び解列リレー10bをいずれもOFFとすると共に、車両V側との通信を切断する(ステップS115)。制御部11は、コネクタ15及びコネクタ35のロックをOFFとし(ステップS116)、上位通信部16から上位装置29へ停止状態を通知し(ステップS117)、処理を終了する。その後、制御部11は、シャットダウン又はスリープ状態へ移行してよい。
【0052】
なお制御部11は、ステップS115の通信切断で処理を終了し、操作部14にてロック解除の操作がされるまでコネクタをロックしたままとしてもよい。コネクタがロックされた状態である間は、メモリに記憶される入力可能電流値の設定データは、直近のステップS109で再設定されたものである。つまり、ロックされていて同一の車両Vが接続されたままである間は、通信接続を切断した後も、直近に設定した入力可能電流値を使用する。これにより、接続されている車両Vを使用する場合に適した入力可能電流値をそのまま使用できる。
【0053】
終了の指示を受けていないと判断された場合(S113:NO)、制御部11は、車載制御装置32から放電電流上限値の変更がされたか否かを判断する(ステップS118)。ステップS118において制御部11は、車載制御装置32から放電電流上限値を受信したか否かを判断する。その他に制御部11は、車載制御装置32から停止の通知を受けてもよい。ステップS118の処理は、ステップS112にて放電の開始前に必ず実行されるようにしてもよい。充放電の開始前に、
【0054】
制御部11は、電流値の変更がされたと判断された場合(S118:YES)、充放電の停止を車両通信部12から車載制御装置32へ通知し(ステップS119)、処理をステップS108へ戻す。この場合制御部11は、ステップS118で受信した放電電流上限値を用い、ステップS109で入力可能電流値を設定し直す(S109)。
【0055】
制御部11は、電流値の変更がされないと判断された場合(S118:NO)、処理をステップS112へ戻し、充放電を継続する。
【0056】
制御部11は、車両Vと通信接続を確立させた後、接続されている間は、所定の接続シーケンスを実行する際に設定してある入力可能電流値を設定し直せないという制約に対し、図3及び図4のフローチャートに示した処理手順をとることによって、可能な限り大きな電力での放電を可能とする。
【0057】
例えば、充放電装置1の制御部11のメモリには、充放電装置1自身の仕様から入力可能電流値を「100A」と設定し設定データが記憶されているとする。この場合、制御部11はステップS105において「100A」と設定した入力可能電流値を含む情報を車載制御装置32へ送信する。車載制御装置32は、その時点における蓄電装置30のSOC又は電池最大容量等の状態によって、放電電流上限値を「80A」と設定して送信する場合がある。この場合、入力可能電流値が放電電流上限値よりも大きいため、従来の入力可能電流値が変更不可である場合には、このまま充放電の運転が、エラーとなって終了していた。ユーザや管理者が操作部14にて入力可能電流値を再設定するなどして再起動するなどの対応が必要であった。
【0058】
第1実施形態における充放電装置1の制御部11は、車両Vから送信してくる放電電流上限値に応じて入力可能電流値を自動的に再設定して再度所定の接続シーケンスを実行する処理を実行する。これにより、入力可能電流値の設定によって充放電が開始前にエラーで終了してしまう可能性を低減できる。そして、第1実施形態の充放電装置1では、蓄電装置30の電池容量が変化するなどして、設定されている入力可能電流値より小さい放電電流上限値を持つ車両Vも、放電の対象として使用することができる。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態の充放電システム200は、充放電装置1における入力可能電流値を設定する手順が第1実施形態における手順と異なる点以外は、第1実施形態と同様である。共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。以下、入力可能電流値を設定する手順についてフローチャートを参照して説明する。
【0060】
図5及び図6は、第2実施形態の制御部11による処理手順の一例を示すフローチャートである。図5及び図6のフローチャートに示す処理手順のうち、図3及び図4のフローチャートに示した手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
第2実施形態において制御部11は、ステップS107において入力可能電流値は放電電流上限値よりも大きいと判断した場合(S107:YES)、車載制御装置32との通信を切断する(S108)。第2実施形態において制御部11は、ステップS106で受信した放電電流上限値は、前回受信して記憶してある放電電流上限値と同一であるか否かを判断する(ステップS121)。
【0062】
同一であると判断された場合(S121:YES)、制御部11は、ステップS106で受信した放電電流上限値に設定して(S109)、処理をステップS104へ戻す。
【0063】
同一でないと判断された場合(S121:NO)、制御部11は、今回受信した放電電流上限値を記憶し(ステップS122)、入力可能電流値は再設定せずに、処理をステップS104へ戻す。
【0064】
なおステップS121にて制御部11は、同一でないと判断された回数が何回目であるか、所定回数以上であるか否かについて判断し、所定回数以上である場合には、直近の記憶してある放電電流上限値を入力可能電流値としてもよい。所定回数同一の放電電流上限値が受信できる場合、その値は収束した値であるためである。また、ステップS121において制御部11は、最初にステップS101で接続前状態を通知してからの期間を計測し、所定期間以上経過しているか否かを判断し、所定期間以上経過している場合には、直近で受信した放電電流上限値を入力可能電流値として設定してもよい。所定期間以内に放電電流上限値は「上限値」に到達しなければならない規定があるとすれば、所定期間後の値は、真に「上限値」であるためである。
【0065】
例えば、車載制御装置32が、最初に入力可能電流値を受信したことに応じて真に最大の放電電流上限値を送信するのではなく、徐々にその値を変更しながら送信する場合がある。このようなふるまいをする車両Vでは、車載制御装置32が例えば、最初に放電電流上限値を「10A」、3秒後に「70A」、5秒後に「100A」と送信する(例えば、20A/秒のペースで上昇する)。この場合、制御部11は、最初の「10A」を、ステップS109にて入力可能電流値として設定することは好ましくない。第2実施形態の図5及び図6のフローチャートに示した処理手順により、このようなふるまいをする車両Vであっても最終的に上昇した放電電流上限値を入力可能電流値として適切に設定することができる。
【0066】
ただし、ステップS107で延々と入力可能電流値は放電電流上限値であると繰り返し判断されてしまうことがないように、ステップS109の再設定の回数に上限や期間の上限を設定するとよい。また、一度ステップS107で入力可能電流値は放電電流上限値であると判断された場合、例えば5秒待機してからステップS104へ処理を戻すことにより、上昇が止まった放電電流上限値を入力可能電流値と設定することも可能である。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態の充放電システム200は、充放電装置1における入力可能電流値を設定する手順が第1実施形態における手順と異なる点以外は、第1実施形態と同様である。共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。以下、入力可能電流値を設定する手順についてフローチャートを参照して説明する。
【0068】
図7及び図8は、第3実施形態の制御部11による処理手順の一例を示すフローチャートである。図7及び図8のフローチャートに示す処理手順のうち、図3及び図4のフローチャートに示した手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0069】
制御部11は、ステップS104で最初に車載制御装置32との通信接続を確立すると(S104)、入力可能電流値として最大に設定可能な値、あるいは所定の大きな値を、入力可能電流値に設定する(ステップS131)。制御部11は、最大値が設定された入力可能電流値を含む情報を、車両通信部12から送信する(ステップS105)。
【0070】
この場合、ステップS106において、最大値である入力可能電流値に応じて、車載制御装置32から車両V側で設定可能な最大値の放電電流上限値を含む車両情報が送信されるので、制御部11はこれを受信する(S106)。
【0071】
ステップS105及びステップS106において、制御部11は、例えば入力可能電流値を車載制御装置32へ送信する際のデータのフォーマットから、入力可能電流値を「255A」と非現実的な数値として設定して送信することができる。この場合、車載制御装置32は、その時点での最大の放電電流上限値を送信する。というのも、充放電装置1と車載制御装置32との車両情報の授受の規約において、車載制御装置32は、充放電装置1からの入力可能電流値に対し、これを上限とした最大値である放電電流上限値を送信するケースがあるためである。
【0072】
制御部11は、ステップS107において当然に、入力可能電流値は放電電流上限値よりも大きいと判断し(S107:YES)、車載制御装置32との通信を切断し(S108)、入力可能電流値を、ステップS106で受信した放電電流上限値に設定する(S109)。以後の処理は第1実施形態における処理手順と同様である。
【0073】
これにより、制御部11は、真に最大の放電電流上限値を車載制御装置32から取得でき、充放電装置1から負荷21側へ最大の入力可能電流値で電力を提供できる。第3実施形態における最大の入力可能電流値の設定は、第2実施形態に示した手順においても、適用可能である。
【0074】
(第4実施形態)
第4実施形態では、制御部11は、メモリに車種を識別するデータに対応付けて入力可能電流値を記憶しておく。図9は、第4実施形態における充放電装置1の構成を示すブロック図である。図9は、充放電装置1と車両Vとの接続構成をも示す。図9に示すように、充放電装置1は、制御部11のメモリに、車種別の入力可能電流値のデータを記憶している。
【0075】
制御部11は、この車種別の入力可能電流値のデータを用いて入力可能電流値を設定する。図10及び図11は、第4実施形態の制御部11による処理手順の一例を示すフローチャートである。図10及び図11のフローチャートに示す処理手順のうち、図3及び図4のフローチャートに示した手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0076】
制御部11は、上位装置29からの起動指示、操作部14からの指示、あるいはスケジュールに基づく電源部13からの電力供給開始を受けて起動すると、車種の選択を受け付け(ステップS141)、接続前状態であることを通知する(S101)。ステップS141において制御部11は、操作部14にてリストからユーザによる車種の選択を受け付け、選択された車種に対応する識別するデータをメモリに記憶する。
【0077】
その後制御部11は、ステップS104で最初に車載制御装置32との通信接続を確立すると(S104)、ステップS141で受け付けた車種を識別するデータに対応付けられている入力可能電流値を読み出す(ステップS142)。制御部11は、読み出した入力可能電流値を含む情報を、車両通信部12から送信する(S105)。この場合、車種に適切な入力可能電流値が設定されているから、ステップS107で入力可能電流値は放電電流上限値よりも大きいと制御部11が判断する可能性は低い。以後、制御部11は、ステップS108の処理を、スムーズに続けることができる可能性が高い。
【0078】
第4実施形態では、充放電装置1の制御部11は、車種の選択をユーザから操作部14にて受け付けるものとして説明した。しかしながら、車種の選択の方法はこれに限らない。例えば、制御部11は、最初のステップS141に代替して、上位装置29からの車種の通知を受けてもよい。
【0079】
更に、車種の選択に代替して、制御部11は、ステップS102-S106の処理によって車種を推定し、再度入力可能電流値を再設定してもよい。例えば、ステップS106で受信できる車両情報の内容等によって車種の推定が可能である。ステップS102で車載制御装置32とのCAN通信における最初の通信信号を受信し、制御部11は、その初回の通信信号の内容又はふるまいによって車種を推定してもよい。あるいは制御部11は、ステップS102の車載制御装置32からの最初の通信信号の受信時に放電電流上限値を受信できる場合、このステップS102で受信した放電電流上限値を以後使用してもよい。なお、車種の推定方法として例えば特許6737390号を援用できる。その他の推定方法を採用してもよい。
【0080】
これにより、接続される車両Vそれぞれに適した入力可能電流値を設定し、車両Vの車載制御装置32から適切な放電電流上限値を受信して所定の接続シーケンスを完了させて充放電処理を実行できる。
【0081】
(変形例)
第4実施形態では、車種別に記憶された入力可能電流値のデータを使用することとした。以下に説明する変形例では、この車種別の入力可能電流値のデータを、制御部11にて作成する。図12及び図13は、変形例の制御部11による処理手順の一例を示すフローチャートである。図12及び図13のフローチャートに示す処理手順のうち、図3及び図4のフローチャートに示した処理手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0082】
変形例においても制御部11は、上位装置29からの起動指示、操作部14からの指示、あるいはスケジュールに基づく電源部13からの電力供給開始を受けて起動すると、車種の選択を受け付け(ステップS151)、接続前状態であることを通知する(S101)。
【0083】
制御部11は、ステップS104で最初に車載制御装置32との通信接続を確立すると(S104)、ステップS151で受け付けた車種を識別するデータに対応付けられている入力可能電流値を読み出す(ステップS152)。
【0084】
識別データに対応付けられている入力可能電流値は、変形例においては、当初(学習前)は初期値である。したがって、ステップS107で入力可能電流値は放電電流上限値よりも大きいと制御部11が判断する可能性がある。ステップS107において、制御部11は、入力可能電流値は放電電流上限値よりも大きいと判断した場合(S107:YES)、通信接続を切断し(S108)、ステップS106で受信した放電電流上限値が、前回受信した放電電流上限値と同一か否かを判断する(ステップS153)。ステップS153において、起動(コネクタロック)してから初回の判断では、前回受信した放電電流上限値は存在しないので、制御部11は前回と同一でないと判断する。
【0085】
制御部11は、同一であると判断した場合(S153:YES)、変動しなくなった放電電流上限値を、入力可能電流値に改めて設定し(S109)、ステップS151で受け付けた車種を識別するデータに対応付けて、再設定した入力可能電流値をメモリに記憶する(ステップS154)。制御部11は、処理をステップS104へ戻し、再接続を実行する。
【0086】
同一でないと判断された場合(S153:NO)、車載制御装置32から送信される放電電流上限値が上昇中である可能性があるため、制御部11は、受信した放電電流上限値を記憶しておき(ステップS155)、処理をステップS104へ戻す。
【0087】
この場合、全ての車種について入力可能電流値を全て初期値「100A」として設定してあったとしても、接続された実績のある車両Vについては、実際の入力可能電流値を記録しておくことができる。これにより、充放電装置1は、ある車種に対する入力可能電流値は「100A」、他の車種に対する入力可能電流値は「120A」等と徐々に学習することができる。次に同一の車種の車両Vが接続された場合に、充放電装置1は、適切な入力可能電流値を設定できる可能性が高まる。
【0088】
上述の第1実施形態から第4実施形態及び変形例において、充放電システム200は、上位装置29からの指示を受ける構成とした。しかしながら、充放電システム200において上位装置29との接続は必須ではなく、上位装置29からの指示、即ちEMSによる充放電の制御がされない状態での制御でも同様に、適切な入力可能電流値を設定する。上位装置29が接続されない場合、上述の処理上位装置29への状態通知、上位装置29からの指示の受信は省略される。
【0089】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 充放電装置
11 制御部
12 車両通信部
14 操作部
1P,9P コンピュータプログラム
30 蓄電装置
32 車載制御装置
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13