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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122280
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】車両用ラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/24 20140101AFI20230825BHJP
   E05B 79/08 20140101ALI20230825BHJP
   B62D 25/12 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
E05B83/24 Z
E05B79/08
B62D25/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025891
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】桑原 直也
【テーマコード(参考)】
2E250
3D004
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ42
2E250LL15
3D004AA03
3D004CA21
(57)【要約】
【課題】車両用ラッチ装置において、重量の増加を抑制しながら、トーションスプリングをベースに保持する。
【解決手段】車両用ラッチ装置1は、ストライカ2が進入する溝部11aを有するベース10と、ベース10に設けられたフォーク軸21に回動可能に取り付けられ、ストライカ2に係合可能なフォーク20と、ベース10に設けられたクロー軸31に回動可能に取り付けられ、フォーク20に係合してフォーク20とストライカ2の係合状態を保持するクローレバー30と、フォーク20をストライカ2が解放される方向に付勢するトーションスプリング50と、を備え、ベース10は、ベース10の一部に設けられ、トーションスプリング50の巻回部51の軸方向におけるベース10と反対側の上端部51bを保持するスプリング保持片16を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカが進入する溝部を有するベースと、
前記ベースに設けられたフォーク軸に回動可能に取り付けられ、前記ストライカに係合可能なフォークと、
前記ベースに回動可能に取り付けられ、前記フォークに係合して前記フォークと前記ストライカの係合状態を保持するクローレバーと、
前記フォークを前記ストライカが解放される方向に付勢するトーションスプリングと、を備え、
前記ベースは、前記ベースの一部に設けられ、前記トーションスプリングの巻回部の軸方向における前記ベースと反対側の上端部を保持するスプリング保持片を有する車両用ラッチ装置。
【請求項2】
前記トーションスプリングは、前記巻回部の前記スプリング保持片とは反対側が前記軸方向に圧縮された状態でスプリング保持片に保持されている請求項1に記載の車両用ラッチ装置。
【請求項3】
前記トーションスプリングは、前記巻回部が前記フォーク軸を取り囲むように配置されている請求項1又は請求項2に記載の車両用ラッチ装置。
【請求項4】
前記トーションスプリングは、前記クローレバーを前記フォークと係合する方向に付勢する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用ラッチ装置。
【請求項5】
前記トーションスプリングは、前記巻回部の前記軸方向の前記上端部側から引き出され、かつ、前記スプリング保持片とは反対側に延びて、前記クローレバーに係合される腕部を備える請求項4に記載の車両用ラッチ装置。
【請求項6】
前記フォークと前記クローレバーを前記ベースとの間に挟み込んだ状態で、前記ベースに固定されたセットプレートを備え、
前記セットプレートには、前記フォークの回転軸を挿通させるための挿通孔が設けられ、
前記トーションスプリングの前記巻回部の半径は、前記挿通孔の中心から前記セットプレートの前記スプリング保持片側の端面までの寸法よりも大きく設定されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用ラッチ装置。
【請求項7】
前記トーションスプリングの前記巻回部の半径は、前記挿通孔の中心から前記セットプレートの前記スプリング保持片側の端面までの寸法に対して、大きくなるように設定されている請求項6に記載の車両用ラッチ装置。
【請求項8】
前記ベースは、凹状に形成されて前記フォークが収納される収納部と、前記収納部の開口縁部から側方に突出した取付片とを備え、
前記スプリング保持片は、前記取付片と一体に形成される請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用ラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された車両用ラッチ装置は、ボンネットに取り付けられたストライカに係合可能なフォークと、フォークをロック位置に係止するクローレバーと、フォークをアンロック位置に付勢するとともにフォークの回転軸に挿通される巻回部を有するトーションスプリングとを備える。フォークの回転軸の先端に鍔部を設けることで、トーションスプリングの径方向の位置規制及び軸方向への離脱が阻止されている。
【0003】
特許文献2に開示された車両用ラッチ装置は、フォーク及びクローレバーが回転可能に取り付けられたベースに固定されるとともに、フォーク及びクローレバーの軸方向の位置を規制するためのセットプレートを備える。このセットプレートに、トーションスプリングを取り囲む周壁部を設けると共に、周壁部にトーションスプリングの巻回部から延びる腕部を係合させることで、トーションスプリングの径方向位置規制及び軸方向への離脱が阻止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-180493号公報
【特許文献2】特開2021-059874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載の車両用ラッチ装置では、トーションスプリングの位置規制のための鍔部及び周壁部によって重量が増大する虞がある。
【0006】
本発明は、重量の増大を抑制しながら、トーションスプリングの位置を規制できる車両用ラッチ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ストライカが進入する溝部を有するベースと、前記ベースに設けられたフォーク軸に回動可能に取り付けられ、前記ストライカに係合可能なフォークと、前記ベースに回動可能に取り付けられ、前記フォークに係合して前記フォークと前記ストライカの係合状態を保持するクローレバーと、前記フォークを前記ストライカが解放される方向に付勢するトーションスプリングと、を備え、前記ベースは、前記ベースの一部に設けられ、前記トーションスプリングの巻回部の前記軸方向における前記ベースと反対側の上端部を保持するスプリング保持片を有する車両用ラッチ装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、スプリング保持片がベースの一部に設けられているので、フォーク軸に鍔部を設けたり、セットプレートに周壁部を設ける場合に比べて、重量の増加を抑制しながらトーションスプリングをベースに保持できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用ラッチ装置によれば、重量の増加を抑制しながら、トーションスプリングをベースに保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る車両用ラッチ装置の正面斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る車両用ラッチ装置の背面斜視図。
図3】本発明の実施形態に係る車両用ラッチ装置の分解斜視図。
図4】本発明の実施形態に係る車両用ラッチ装置の正面図。
図5図4におけるV-V線に沿った断面図。
図6図4における矢印VI部分の正面拡大図。
図7】車両用ラッチ装置のフォーク、クローレバー及びセットプレートの関係を示す正面図。
図8図5における矢印VIII部分の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0012】
図1は、本発明に係る車両用ラッチ装置1(以下、ラッチ装置ともいう)を示す。ラッチ装置1は、例えば、自動車の開閉体であるボンネットやトランクをロック及びアンロックする。以下の説明では、開閉体がボンネットである場合について説明する。なお、以下の説明では、後述のベース10における進入溝11aへのストライカ2の進入方向を上下方向といい、上下方向に直交する車両の車体幅方向を幅方向(図4における左右方向)といい、上下方向及び幅方向に直交するベース10の板厚方向を厚さ方向というものとする。
【0013】
ボンネット(図示せず)の前端部には、断面円形状の凹字型のストライカ2が突設されている(図4参照)。ラッチ装置1は、ボンネットが閉じられたときに、内部に進入するストライカ2の先端部を引っかけて係止することにより、ボンネットを閉状態でロックする。
【0014】
ラッチ装置1は、ベース10と、フォーク20と、クローレバー30と、セットプレート40と、トーションスプリング50と、セーフティフック60とを有する。
【0015】
図1及び図4に示すように、ベース10は、例えば金属製のプレート部材である。ベース10は、車体に固定されている。ベース10は、ベース本体部11と、第1及び第2側壁部12,13と、第1及び第2取付片14,15とを有する。ベース本体部11には、ストライカ2が進入する溝部11aが形成されている。
【0016】
図1及び図3に示すように、第1及び第2側壁部12,13は、ベース本体部11の幅方向両側端から厚さ方向正面側(図1中矢印の向き)に立ち上がっている。第1及び第2取付片14,15は、第1及び第2側壁部12,13の厚さ方向正面側の端部から幅方向外側に延びて車体に取り付けられている。
【0017】
図4に示すように、ベース本体部11と第1及び第2側壁部12,13とによって、前方(正面側)に開口する凹状の収納部Sが形成される。換言すると、第1及び第2取付片14,15は、収納部Sの開口縁部から側方に突出している。
【0018】
収納部S内にはフォーク20、クローレバー30、セットプレート40、および、トーションスプリング50が収納されている。第1及び第2取付片14,15には、ラッチ装置1を車体に固定するボルト等の固定部材を取り付けるための取付穴14a,14b,15aが設けられている。
【0019】
図3及び図4に示すように、溝部11aは、ベース本体部11の幅方向中央部に形成され、上下方向に延びて上側が開口している。溝部11aは、ベース本体部11の上下方向中央近傍まで延びている。ベース本体部11は、溝部11aを挟んで幅方向一方側に設けられた第1ベース孔11bと、他方側に設けられた第2ベース孔11cと、溝部11aの下方に設けられた第3ベース孔11dとを有する。
【0020】
図1及び図4に示すように、第1ベース孔11bにはフォーク20の回転軸(フォーク軸)21が正面側から挿通されると共に先端がかしめられてベース本体部11に対して固定されている。フォーク軸21は、後述するフォーク孔21a、及び、第1挿通孔41aに挿通される小径部と、トーションスプリング50の巻回部51が周りに配置されて小径部よりも径が大きい大径部とを有する。この小径部と大径部との段差によって、フォーク20は、ベース本体11と大径部との間に挟持され、フォーク軸21からの抜け出しが阻止される。また、第2ベース孔11cにはクローレバー30の回転軸(クロー軸)31が正面側から挿通されると共に先端がかしめられてベース本体部11に対して固定されている。図1及び図2に示すように、第3ベース孔11dにはセーフティフック60の回転軸(フック軸)61が背面側から挿通されると共に先端がかしめられて固定されている。
【0021】
図2及び図4に示すように、ベース本体部11の第2ベース孔11cの下方には、ベース本体部11を背面側に切り起して形成された突出部11eが設けられている。突出部11eは、セーフティフック60に係合して、セーフティフック60の回動を規制するストッパとして機能する。ベース本体部11の下端には、下方に延びる延設部11fが設けられている。延設部11fの正面側には、フォーク20の位置を検出するフォーク位置センサ9が取り付けられている。
【0022】
図1図3及び図4に示すように、ベース10は、第1取付片14の上下方向中央部から幅方向内側に延びて、トーションスプリング50の巻回部51を保持するためのスプリング保持片16を有する。本実施形態では、スプリング保持片16は、フォーク軸21の外径近傍まで延びて、先端部16aは、フォーク軸21の形状に沿って円弧状に傾斜している。
【0023】
図5に示すように、スプリング保持片16は、巻回部51が保持できればよく、第1取付片14からの突出量D1は、少なくとも巻回部51のスプリング線径D2よりも長く設定されている。図1及び図4に示すように、スプリング保持片16の先端部16aは、直線であってもよいし、幅方向に直交してもよい。
【0024】
図5を参照すると、本実施形態では、フォーク軸21の軸長(厚さ方向の寸法)は、フォーク軸21の頂面21bと、スプリング保持片16の正面側の面16bとが略一致するように設定されている。フォーク軸21の軸長は、フォーク軸21とスプリング保持片16とが厚さ方向にオーバラップするように設定されている。フォーク軸21は、トーションスプリング50の径方向位置を規制すると共に、スプリング保持片16と協働してトーションスプリング50の軸方向の抜け出しを防止している。
【0025】
図1及び図5に示すように、スプリング保持片16は、第1側壁部12を切り起すことで形成されて、第1取付片14と一体である。図1を併せて参照すると、本実施形態では、取付片14の厚さ方向端面(図1において厚さ方向手前側)とスプリング保持片16は面一である。スプリング保持片16は、第1取付片14を曲げ加工で成形する際に、第1側壁部12を同時に切り起して形成されるので、製造コストの削減が図られている。
【0026】
図1図2及び図6を参照すると、スプリング保持片16が切り起された第1側壁部12には、第1側壁部12を幅方向内外に貫通する開口17が形成される。開口17の上下方向寸法D3は、トーションスプリング50の巻回部51の巻径(直径)D4よりも小さく設定されている。
【0027】
図7は、ラッチ装置1のフォーク20、クローレバー30およびセットプレート40の関係を示し、ベース10及びトーションスプリング50が二点鎖線で示されている。
【0028】
図3及び図7を参照すると、フォーク20は、例えば金属製のプレート部材である。フォーク20は、ストライカ2を拘束及び解放する。フォーク20は、ベース本体部11に設けたフォーク軸21に回動自在に取り付けられている。フォーク軸21は、ベース本体部11の溝部11aに対して幅方向一方側に配置されている。フォーク20には、フォーク軸21を挿通するフォーク孔21aと、ストライカ2と噛合し、かつ、溝部11aと交差するU字状の切欠き部22と、クローレバー30の爪部33が係止する凹部23とが形成されている。
【0029】
図7に示すように、フォーク20は、ストライカ2を拘束するロック位置と、ストライカ2を解放したアンロック位置との間を回動可能である。フォーク20は、フォーク軸21の中心軸(以下、第1回動軸ともいう)O1を中心として回動する。アンロック位置でのフォーク20の姿勢は、図7のフォーク20を概ね時計回り方向X1に30°回転させた状態となる。フォーク20には、トーションスプリング50の一端を保持するスプリング係合孔24が形成されている。スプリング係合孔24は、フォーク軸21を挟んで、幅方向にスプリング保持片16とは反対側に位置している。
【0030】
クローレバー30は、例えば金属製のプレート部材である。クローレバー30は、フォーク20と係合してストライカ2が拘束される状態を保持する。クローレバー30は、ベース10に設けたクロー軸31に回動自在に取り付けられている。クロー軸31は、ベース本体部11の溝部11aに対して幅方向他方側に配置されている。
【0031】
図3及び図7を参照すると、クローレバー30は、クローレバー本体部32と、クロー孔31aと、爪部33と、スプリング連結部34と、ロック解除部35とを有する。クローレバー本体部32は、上下方向に延びている。クロー孔31aには、クロー軸31が挿通されている。爪部33は、クローレバー本体部32の上下方向中間部に設けられている。
【0032】
スプリング連結部34は、クローレバー本体部32の上端に位置する。スプリング連結部34は、フォーク軸21を挟んで、幅方向にスプリング保持片16とは反対側に位置している。スプリング連結部34には、トーションスプリング50の他端が保持されている。ロック解除部35は、クローレバー本体部32の下端に位置する。ロック解除部35と車室内側のロック解除レバー(図示しない)との間には、ワイヤ(図示せず)が接続されている。
【0033】
図7に示すように、クローレバー30は、ロック位置にあるフォーク20と係合してフォーク20をロック位置に保持するロック位置と、フォーク20と係合しないアンロック位置との間を回動する。クローレバー30は、クロー軸31の中心軸(以下、第2回動軸ともいう)O2を中心として回動する。
【0034】
図3及び図7を参照すると、セットプレート40は、例えば金属製のプレート部材である。セットプレート40は、フォーク20及びクローレバー30の正面側(ベース本体部11と反対側)の面に重ねて配置されている。図5に示すように、フォーク20及びクローレバー30は、ベース本体部11とセットプレート40との間に挟み込まれている。セットプレート40は、幅方向に延びて、フォーク軸21からクロー軸31に跨って配置されており、セットプレート40によってフォーク軸21及びクロー軸31の抜け止めがなされている。
【0035】
より詳しくは、図3及び図5に示すように、セットプレート40は、フォーク軸21の抜け止めをする第1平板部41と、クロー軸31の抜け止めをする第2平板部42と、第1平板部41と第2平板部42とを連結する連結部43と、連結部43の下端部から厚さ方向に突出する突出部44とを有する。第1平板部41には、フォーク軸21が挿通される第1挿通孔41aが形成されている。第2平板部42には、クロー軸31が挿通される第2挿通孔42aが形成されている。
【0036】
図5に示すように、第1平板部41のフォーク20との接触面と、第2平板部42のクローレバー30との接触面とは、概ね同一平面上に位置している。これにより、セットプレート40によって、フォーク20及びクローレバー30の厚さ方向のがたつきが抑制されている。
【0037】
図7に示すように、トーションスプリング50は、コイル状に巻回された巻回部51と、巻回部51の背面側(軸方向のベース10側)の下端部51a及び正面側(軸方向のベース10側と反対側)の上端部51bから引き出される第1及び第2腕部52,53とを有する。トーションスプリング50の第1腕部52の先端部52aは、フォーク20のスプリング係合孔24に挿入され、第2腕部53の先端部53aはクローレバー30のスプリング連結部34に係合されている。
【0038】
図7に示すように、トーションスプリング50によって、フォーク20には、第1回動軸O1を中心としてフォーク20をアンロック位置方向(時計回り方向)X1に弾性的に付勢する付勢力が付与され、クローレバー30には、第2回動軸O2を中心としてクローレバー30をロック位置方向(反時計回り方向)X2に弾性的に付勢する付勢力が付与されている。これにより、本実施形態では、フォーク20及びクローレバー30に付勢力を付与する付勢部材が、単一のトーションスプリング50で構成されているため、複数の付勢部材を用いる場合に比べて部品点数が削減できる。
【0039】
図8を参照すると、巻回部51は、巻回部51のスプリング保持片16とは反対側(クローレバー30側すなわち図8における左側)の領域51cが厚さ方向(巻回部51の軸が延びる軸方向)に圧縮された状態で、第1平板部41とスプリング保持片16との間に保持される。すなわち、第2腕部53の先端部53aがスプリング連結部34に係止されることで、巻回部51の領域51cが圧縮され、巻回部51のスプリング保持片16側(図8における右側)の領域51dの軸長が広がり、巻回部51がよりスプリング保持片16に対して圧接されている。本実施形態において、巻回部51のスプリング保持片16とは反対側の領域51cは第1回転軸O1よりも幅方向内側の領域であって、巻回部51のスプリング保持片16側の領域51dは第2回転軸O1よりも幅方向外側の領域である。また、巻回部51は、第2腕部53からの反力によって、軸方向上端51bが幅方向のスプリング保持片16側に倒れるように傾斜してフォーク軸21周りに配置されている。
【0040】
図8に示すように、トーションスプリング50は、ベース10の溝部11aに対して幅方向一方側で、フォーク軸21を取り囲むように配置されている。巻回部51における巻径の半径D5は、フォーク軸21の半径D6よりも大きく設定されており、巻回部51がフォーク軸21に挿通されている。
【0041】
図8に示すように、巻回部51の半径D5は、セットプレート40の第1挿通孔41aの中心(フォーク20の第1回転軸O1)からセットプレート40のスプリング保持片16側(第1側壁部12側)の端面41cまでの寸法D7よりも大きくなるように設定されている。
【0042】
図8に示すように、巻回部51の軸方向におけるベース10側の下端部(セットプレート40に接触する基端部)51aの第1側壁部12側の領域51dが、セットプレート40のスプリング保持片16側(第1側壁部12側)の端面41cよりも外側に位置している。そのため、巻回部51の基端部51aは、セットプレート40の接触面41bよりもベース10側(図8における下側)に位置し、巻回部51の内周部が、セットプレート40の第1側壁部12側の端面41cに圧接される。
【0043】
図3及び図8に示すように、巻回部51の径方向位置が、幅方向外側に向うずれが生じた場合においても、巻回部51の第1側壁部12側の部分は、第1側壁部12の開口17にはまり込むことで、巻回部51のフォーク軸21からの離脱が抑制されるようになっている。また、開口17を設けることで、スプリング保持片16と巻回部51の係合代を広く採ることができる、すなわち、スプリング保持片16の幅方向の長さを長くできるため、巻回部51のフォーク軸21からの離脱をより抑制することができる。
【0044】
図2及び図3に示すように、セーフティフック60は、一端に操作部62、他端にフック63を有する略V字状を有する。セーフティフック60の中間において、ベース10の背面側で、ベース10に設けたフック軸61に回動自在に取り付けられている。セーフティフック60は、例えば、引張コイルスプリング64により時計回り方向X1に弾性的に付勢され、ストッパ11eに当接してフック63がベース10の溝部11aの開口を閉じるように保持されている。
【0045】
図7に示すように、ボンネットを閉じた状態では、フォーク20は、凹部23にクローレバー30の爪部33が係止されることにより、切欠き部22がストライカ2と噛合し、かつ、溝部11aと交差した位置に保持されている。ロック状態から、例えばロック解除レバー(図示せず)を操作してワイヤを左方向に引くと、クローレバー30はクロー軸31を中心にトーションスプリング50の付勢力に抗して時計回り方向X1に回動する。
【0046】
クローレバー30の爪部33がフォーク20の凹部23から離脱し、トーションスプリング50の付勢力によってフォーク20がフォーク軸21を中心に時計回り方向X1に回動する。フォーク20の回動によって、ストライカ2が溝部11aから離脱する方向(上方)に押圧され、ボンネットを押し上げる。
【0047】
フォーク20がその回動ストロークだけ回動し、フォーク20の切欠き部22とストライカ2との噛合が解除されると、ストライカ2は上方に移動する。その結果、ボンネットはさらに押し上げられる。フォーク20はトーションスプリング50によって時計回り方向X1に弾性的に付勢されているので、溝部11aの入口を解放した状態に保持される。
【0048】
リフトアップしたボンネットと車体との隙間から手を差し入れ、セーフティフック60の操作部62を上方に引き上げると、セーフティフック60は、反時計回り方向X2に回動してそのフック63が左方向に移動し、溝部11aが解放される。これにより、ストライカ2が溝部11aから離脱可能になるため、ストライカ2と一体のボンネットの先端を持ち上げれば、ボンネットが開く。セーフティフック60の操作部62から手を離すと、セーフティフック60は引張コイルスプリング64の付勢力により時計回り方向X1に回動して、フック63が溝部11aを閉じた状態に戻る。
【0049】
ボンネットを閉じるためにボンネットの先端を押し下げると、ストライカ2はセーフティフック60のフック63の傾斜した先端に衝突し、セーフティフック60を引張コイルスプリング64の付勢力に抗して反時計回り方向X2に回動させ、開いた溝部11aに進入する。ストライカ2は、さらにフォーク20の切欠き部22に衝突して、フォーク20をトーションスプリング50の付勢力に抗して反時計回り方向X2に回動させ、切欠き部22と噛合し、フォーク20を反時計回り方向X2にさらに回動させる。
【0050】
フォーク20の回動により、クローレバー30の爪部33がフォーク20の端面を摺接して凹部23に係止されると、フォーク20の切欠き部22が溝部11aと交差するため、ストライカ2は切欠き部22と溝部11aで囲まれた空間に閉じ込められてロック状態となる。このとき、セーフティフック60は、引張コイルスプリング64の付勢力によって時計回り方向X1に回動して、フック63によって溝部11aの上端の開口がふさがれた状態となる。
【0051】
上記実施形態に係る、車両用ラッチ装置1によれば、次の作用効果を奏する。
【0052】
図1及び図3に示すように、スプリング保持片16がベース10の一部、より詳しくは、第1側壁部12に設けられているので、フォーク軸21に鍔部を設けたり、セットプレート40に周壁部を設ける場合に比べて、重量の増加を抑制しながらトーションスプリング50をベース10に保持できる。
【0053】
図8に示すように、トーションスプリング50は、巻回部51のスプリング保持片16とは反対側の領域51cが圧縮された状態で、スプリング保持片16とセットプレート40との間に保持されているので、トーションスプリング50の巻回部51はセットプレート40とスプリング保持片16とに弾性的に押し付けられている。これにより、トーションスプリング50の軸方向の抜け出し及び径方向移動が抑制されて、トーションスプリング50の巻回部51のスプリング保持片16とは反対側の領域51cが圧縮されない状態でスプリング保持片16に保持されている場合に比べて、トーションスプリング50のベース10からの脱落を抑制しやすい。
【0054】
トーションスプリング50は、巻回部51がフォーク軸21を取り囲むように配置されているので、トーションスプリング50の径方向位置をより確実に規制することができ、トーションスプリング50のベース10からの離脱が抑制される。
【0055】
トーションスプリング50は、クローレバー30をフォーク20と係合する方向に付勢するので、クローレバー30を付勢するための付勢部材を別途設ける場合に比べて、車両用ラッチ装置1の重量の増大を抑制できる。
【0056】
トーションスプリング50は、巻回部51からスプリング保持片16とは反対側(図7における左側)に延びてクローレバー30に係合される第2腕部53を備えるので、トーションスプリング50がスプリング保持片16に加えて、クローレバー30によってベース10に保持される。これにより、スプリング保持片16から離脱するような巻回部51の径方向のずれを抑制できる。
【0057】
図5に示すように、第2腕部53は、巻回部51の軸方向上端51b側から引き出されるので、トーションスプリング50がベース10に組付けられた状態で、巻回部51のスプリング保持片16とは反対側(図5における左側)が軸方向に圧縮される。これにより、巻回部51のスプリング保持片16側(第1側壁部12側すなわち図5における右側)の軸長が広がる。その結果、巻回部51がよりスプリング保持片16に対して圧接されやすく、トーションスプリング50のベース10からの離脱が抑制できる。
【0058】
図8に示すように、トーションスプリング50の巻回部51の半径D5は、セットプレート40の第1挿通孔41aの中心O1からセットプレート40のスプリング保持片16側(第1側壁部12側)の端面41cまでの寸法D7よりも大きく設定されている。より詳しくは、半径D5は、第1挿通孔41aの中心O1からセットプレート40のスプリング保持片16側の端面41cまでの寸法D7よりも大きくなるように設定されている。
【0059】
これにより、組付け状態において、セットプレート40に接触する巻回部51の基端部51aにおけるスプリング保持片16側(第1側壁部12側すなわち図5における右側)の領域51dが、セットプレート40のスプリング保持片16側の端面41cよりも外側に位置する。そのため、巻回部51のスプリング保持片16側の領域51dは、セットプレート40の接触面41bよりもベース10側まで延びて、セットプレート40のスプリング保持片16側の端面41cの縁に係合する。その結果、トーションスプリング50の径方向及び軸方向の位置が規制されて、トーションスプリング50の位置規制のためのフォーク軸21の軸長を短縮でき、車両用ラッチ装置1を軽量化できる。
【0060】
半径D5が、第1挿通孔41aの中心O1からセットプレート40のスプリング保持片16側の端面41cまでの寸法D7に対して、小さい場合、巻回部51がセットプレートの接触面41b上に配置されるので、巻回部51の径方向の位置規制が図りにくい。
【0061】
図8に示すように、スプリング保持片16は、第1取付片14と面一に形成されるので、ベース10の収納部Sに対して第1取付片14を折り曲げ成形する際に、スプリング保持片16を同時に起こして形成することができる、加工工数の削減によってコストが抑制できる。
【0062】
本実施形態においては、スプリング保持片16がベース10の第1側壁部12を切り起すことによって形成される構成について説明したが、これに限られるものではなく、例えばベース10のベース本体部11の一部や、側壁部に連続して設けられたリブ等を切り起すことで形成されてもよい。
【0063】
本実施形態においては、トーションスプリング50は、巻回部51のスプリング保持片16とは反対側の領域51cを圧縮させた状態で組付けられ、かつ、スプリング保持片16とは反対側(図5における左側)の巻回部51が軸方向に圧縮されることによってスプリング保持片16側(図5における右側)の巻回部51が広がって圧接される構成について説明したが、これに限られるものではなく、巻回部51がスプリング保持片16とベース10(本実施形態においては、セットプレート40)の間に保持されていればよい。
【0064】
本実施形態においては、巻回部51がセットプレート40の第1側壁部12側の端面41cとスプリング保持片16との間に保持される構成について説明したが、これに限られるものではなく、巻回部51は、セットプレート40の接触面41bとスプリング保持片16との間に保持されてもよいし、セットプレート40を設けずにフォーク20の正面側の面とスプリング保持片16との間に保持されてもよい。
【0065】
本実施形態においては、フォーク軸21の軸長がスプリング保持片16の厚さ方向位置まで延びる構成について説明したが、これに限られるものではなく、巻回部51がセットプレート40の第1側壁部12側の端面41cとスプリング保持片16との間に保持される構成においては、径方向の位置が規制できるので、フォーク軸21の軸長をより短くしてもよい。例えば、フォーク軸21の軸長は、厚さ方向にスプリング保持片16の底面(図8中下面)まで届かない長さであってもよく、クロー軸31を流用してもよい。
【0066】
本実施形態においては、トーションスプリング50が、フォーク20とクローレバー30の両方に弾性的に付勢力を作用させる構成について説明したが、これに限られるものではなく、フォーク20とクローレバー30を付勢する付勢部材は、それぞれに設けられてもよい。
【0067】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 車両用ラッチ装置
2 ストライカ
10 ベース
11a 溝部
14 第1取付片(取付片)
16 スプリング保持片
20 フォーク
21 フォーク軸
30 クローレバー
31 クロー軸
40 セットプレート
41a 第1挿通孔(挿通孔)
41c 端面
50 トーションスプリング
51 巻回部
53 第2腕部
D5 半径
D7 寸法
S 収納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8