(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122299
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
A47J27/00 109B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025935
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】貞平 匡史
(72)【発明者】
【氏名】八幡 健志
(72)【発明者】
【氏名】村上 誠
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055BA61
4B055CD15
4B055DB01
4B055GB11
4B055GB17
4B055GC21
4B055GC31
4B055GD02
4B055GD05
(57)【要約】
【課題】本開示は、米の食味を良好に維持することができる炊飯器を提供する。
【解決手段】本開示における炊飯器は、米及び水が収容される容器と、容器を加熱する加熱部と、容器に収容された水を容器に収容された米に吸水させる吸水工程、及び加熱部を制御して吸水工程において米に吸水されずに容器に残存する残水を沸騰させる沸騰維持工程を含む炊飯工程を行う制御部と、を備える。制御部は、米の素性を表す素性情報と、米の保管状態を表す保管情報とを取得し、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量を容器に収容された米の量に応じて予め設定された設定範囲内とするための制御値を、容器に収容された米の量と、素性情報と、保管情報とに基づいて決定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米及び水が収容される容器と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記容器に収容された水を前記容器に収容された米に吸水させる吸水工程、及び前記加熱部を制御して前記吸水工程において米に吸水されずに前記容器に残存する残水を沸騰させる沸騰維持工程を含む炊飯工程を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
米の素性を表す素性情報と、米の保管状態を表す保管情報とを取得し、
前記沸騰維持工程の開始時における前記残水の残水量を前記容器に収容された米の量に応じて予め設定された設定範囲内とするための制御値を、前記容器に収容された米の量と、前記素性情報と、前記保管情報とに基づいて決定する炊飯器。
【請求項2】
前記制御値は、前記吸水工程の実行時間を含む請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記素性情報は、米に含まれる蛋白質の含量を含み、
前記制御部は、前記蛋白質の含量が多いほど、前記吸水工程の前記実行時間を長くする請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記素性情報は、米に含まれるアミロースの含量を含み、
前記制御部は、前記アミロースの含量が多いほど、前記吸水工程の前記実行時間を長くする請求項2または3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記保管情報は、米に含まれる水分の含量を含み、
前記制御部は、前記水分の含量が多いほど、前記吸水工程の前記実行時間を長くする請求項2から4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記保管情報は、米の銘柄に応じた水分の含量と、米の実際の水分の含量との差分含水量を含み、
前記制御部は、前記差分含水量が少ないほど、前記吸水工程の前記実行時間を長くする請求項2から4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記容器に収容された水の温度を検知する水温検知部を更に備え、
前記制御値は、前記吸水工程における前記容器に収容された水の水温を含み、
前記制御部は、前記吸水工程において、前記加熱部を制御して、前記容器に収容された水を前記水温とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記素性情報は、米に含まれる蛋白質の含量を含み、
前記制御部は、前記蛋白質の含量が多いほど、前記水温を高くする請求項7に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記素性情報は、米に含まれるアミロースの含量を含み、
前記制御部は、前記アミロースの含量が多いほど、前記水温を高くする請求項7または8に記載の炊飯器。
【請求項10】
前記保管情報は、米に含まれる水分の含量を含み、
前記制御部は、前記水分の含量が多いほど、前記水温を高くする請求項7から9のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項11】
前記保管情報は、米の銘柄に応じた水分の含量と、米の実際の水分の含量との差分含水量を含み、
前記制御部は、前記差分含水量が少ないほど、前記水温を高くする請求項7から9のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項12】
外部との通信機能を有する通信部を更に備え、
前記制御部は、前記炊飯器とは別体で計測された前記素性情報及び前記保管情報の少なくとも一方を、前記通信部を介して取得する請求項1から11のいずれか1項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
米に十分な吸水をさせることができず米飯に芯が残るという技術問題を解決するための炊飯器が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された炊飯器では、吸水段階において、炊飯器内の米のアミロース含量が設定アミロース含量以下であり且つ蛋白質含量が設定蛋白質含量以下である場合、米が十分に吸水するように、第1設定加熱パワーで加熱するよう炊飯器の加熱体が制御される。これにより、前記の技術問題の解決が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、米の食味を良好に維持することができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の炊飯器は、
米及び水が収容される容器と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記容器に収容された水を前記容器に収容された米に吸水させる吸水工程、及び前記加熱部を制御して前記吸水工程において米に吸水されずに前記容器に残存する残水を沸騰させる沸騰維持工程を含む炊飯工程を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
米の素性を表す素性情報と、米の保管状態を表す保管情報とを取得し、
前記沸騰維持工程の開始時における前記残水の残水量を前記容器に収容された米の量に応じて予め設定された設定範囲内とするための制御値を、前記容器に収容された米の量と、前記素性情報と、前記保管情報とに基づいて決定する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、米の食味を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示に係る実施の形態1の炊飯器の斜視図。
【
図3】炊飯器のハードウェア構成を例示するブロック図。
【
図6】炊飯工程における鍋内の温度、加熱部の電力量、鍋内の圧力、及び圧力弁の開閉状態の関係を示すグラフ。
【
図8】本開示に係る実施の形態2の炊飯器と米保管器とを模式的に示す図。
【
図9】本開示に係る実施の形態2の炊飯器と米計量器とを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至った経緯)
米飯の食味を向上させる手段の一つは、吸水工程の終了時(次の工程である沸騰維持工程の開始時)において、容器内に残存する水量(米に吸水されていない水量)が適量とされることである。
【0009】
しかし、特許文献1に開示された炊飯器のように、米のアミロース含量及び蛋白質含量だけで米の吸水が十分であるか否かが判断される場合、以下に詳述するように、炊飯された米飯の食味向上効果が低くなるおそれがある。
【0010】
アミロース含量は、米の遺伝要素等によって変化する。蛋白質含量は、米に付与された肥料の量等によって変化する。つまり、アミロース含量及び蛋白質含量は、米の素性に由来する。しかし、米の吸水特性は、米の素性のみでなく、米の保管状態によっても変化する。
【0011】
例えば、米が低湿度の環境下で保管されている場合、米の水分含量は低くなる。この場合、米は吸水され易い状態である。この米のアミロース含量及び蛋白質含量が低い場合、特許文献1に開示された炊飯器は、米の吸水が促進されるように加熱体を制御する。そうすると、米への吸水が過剰に実行され、沸騰維持工程の開始時において容器内に残存する水量が少なくなってしまう。その結果、米の食味向上が阻害される。
【0012】
そこで、本発明者らは、米の食味を良好に維持することができる炊飯器の構成を見出し、本開示に至った。
【0013】
本開示の第1態様の炊飯器は、
米及び水が収容される容器と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記容器に収容された水を前記容器に収容された米に吸水させる吸水工程、及び前記加熱部を制御して前記吸水工程において米に吸水されずに前記容器に残存する残水を沸騰させる沸騰維持工程を含む炊飯工程を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
米の素性を表す素性情報と、米の保管状態を表す保管情報とを取得し、
前記沸騰維持工程の開始時における前記残水の残水量を前記容器に収容された米の量に応じて予め設定された設定範囲内とするための制御値を、前記容器に収容された米の量と、前記素性情報と、前記保管情報とに基づいて決定する。
【0014】
この構成によれば、米の素性情報と米の保管情報との双方に基づいて制御値が決定される。そのため、米の保管状態に応じて制御値を決定することができる。つまり、この構成によれば、米の素性情報のみによって制御値が決定される構成よりも、良好な制御値を決定することが容易である。その結果、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量を設定範囲内とすることが容易であるため、米の食味を良好に維持することができる。
【0015】
本開示の第2態様の炊飯器において、
前記制御値は、前記吸水工程の実行時間を含んでいてもよい。
【0016】
この構成によれば、米の保管状態に応じて吸水工程の実行時間を決定することができる。つまり、米の保管状態によっては、吸水工程の実行時間を長くして、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量を少なくすることができる。また、米の保管状態によっては、吸水工程の実行時間を短くして、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量を多くすることができる。
【0017】
本開示の第3態様の炊飯器において、
前記素性情報は、米に含まれる蛋白質の含量を含んでいてもよく、
前記制御部は、前記蛋白質の含量が多いほど、前記吸水工程の前記実行時間を長くしてもよい。
【0018】
米に含まれる蛋白質の含量が多い場合、炊飯された米飯は、硬く粘りの少ない食感となるおそれがある。この構成によれば、制御部は、蛋白質の含量が多いほど、吸水工程の実行時間を長くする。これにより、米に含まれる蛋白質の含量が多い場合であっても、米へ十分な吸水を行うことができる。その結果、炊飯された米飯を、柔らかく粘りの多い食感とすることができる。つまり、米の食感を改善することができる。
【0019】
本開示の第4態様の炊飯器において、
前記素性情報は、米に含まれるアミロースの含量を含んでいてもよく、
前記制御部は、前記アミロースの含量が多いほど、前記吸水工程の前記実行時間を長くしてもよい。
【0020】
米に含まれるアミロースの含量が多い場合、炊飯された米飯は、硬く乾燥した食感となるおそれがある。この構成によれば、制御部は、アミロースの含量が多いほど、吸水工程の実行時間を長くする。これにより、米に含まれるアミロースの含量が多い場合であっても、米へ十分な吸水を行うことができる。その結果、炊飯された米飯を、柔らかく粘りの多い食感とすることができる。つまり、米の食感を改善することができる。
【0021】
本開示の第5態様の炊飯器において、
前記保管情報は、米に含まれる水分の含量を含んでいてもよく、
前記制御部は、前記水分の含量が多いほど、前記吸水工程の前記実行時間を長くしてもよい。
【0022】
米に含まれる水分の含量が多い場合、米への吸水が抑制される。この場合、吸水工程において少ない水しか米に吸水されず、沸騰維持工程の開始時において容器内に多くの水が残存する。この構成によれば、制御部は、米に含まれる水分の含量が多いほど、吸水工程の実行時間を短くする。これにより、米に含まれる水分の含量が多い場合に、米への吸水を多くすることができる。その結果、沸騰維持工程の開始時において容器内に残存する水を減少させることができる。
【0023】
本開示の第6態様の炊飯器において、
前記保管情報は、米の銘柄に応じた水分の含量と、米の実際の水分の含量との差分含水量を含んでいてもよく、
前記制御部は、前記差分含水量が少ないほど、前記吸水工程の前記実行時間を長くしてもよい。
【0024】
米に含まれる水分の含量には、米の銘柄に応じた水分の含量と、米の保管状態に応じた水分の含量とがある。この構成によれば、保管情報は差分含水量を含む。差分含水量は、容器に収容された米の実際の水分の含量と、米の銘柄に応じた水分の含量との差である。ここで、米の銘柄に応じた水分の含量は固有値である。つまり、差分含水量は、前記の米の保管状態に応じた水分の含量に相当する。よって、例えば、米が高湿度の環境下で保管されている場合、米に含まれる水分の含量が多くなり、差分含水量は小さくなる。
【0025】
差分含水量が小さい場合、米に含まれる水分の含量が多いため、米への吸水が抑制される。この場合、吸水工程において少ない水しか米に吸水されず、沸騰維持工程の開始時において容器内に多くの水が残存する。この構成によれば、制御部は、差分含水量が少ないほど、吸水工程の実行時間を長くする。これにより、米に含まれる水分の含量が多い場合に、米への吸水を多くすることができる。その結果、沸騰維持工程の開始時において容器内に残存する水を減少させることができる。
【0026】
また、この構成によれば、制御部は、差分含水量に基づいて吸水工程の実行時間を決定する。つまり、この構成では、吸水工程の実行時間を決定するための要素から、米の銘柄に応じた水分の含量(米の保管状態との関連性が低い水分の含量)が除かれている。そのため、米の保管状態に特化した情報に基づいて、吸水工程の実行時間を決定することができる。その結果、吸水工程の実行時間を精度よく決定することができる。
【0027】
本開示の第7態様の炊飯器は、
前記容器に収容された水の温度を検知する水温検知部を更に備えていてもよく、
本開示の第7態様の炊飯器において、
前記制御値は、前記吸水工程における前記容器に収容された水の水温を含んでいてもよく、
前記制御部は、前記吸水工程において、前記加熱部を制御して、前記容器に収容された水を前記水温としてもよい。
【0028】
この構成によれば、米の保管状態に応じて吸水工程時の容器内の水温を決定することができる。つまり、米の保管状態によっては、吸水工程時の容器内の水温を高くすることで容器内の米への吸水を促進することができる。これにより、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量を少なくすることができる。また、米の保管状態によっては、吸水工程時の容器内の水温を高くしないことで容器内の米への吸水を抑制することができる。これにより、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量が少なくなることを抑制することができる。
【0029】
本開示の第8態様の炊飯器において、
前記素性情報は、米に含まれる蛋白質の含量を含んでいてもよく、
前記制御部は、前記蛋白質の含量が多いほど、前記水温を高くしてもよい。
【0030】
米に含まれる蛋白質の含量が多い場合、炊飯された米飯は、硬く粘りの少ない食感となるおそれがある。この構成によれば、制御部は、蛋白質の含量が多いほど、吸水工程時の容器内の水温を高くする。これにより、容器内の米への吸水が促進される。そのため、米に含まれる蛋白質の含量が多い場合であっても、米へ十分な吸水を行うことができる。その結果、炊飯された米飯を、柔らかく粘りの多い食感とすることができる。つまり、米の食感を改善することができる。
【0031】
本開示の第9態様の炊飯器において、
前記素性情報は、米に含まれるアミロースの含量を含んでいてもよく、
前記制御部は、前記アミロースの含量が多いほど、前記水温を高くしてもよい。
【0032】
米に含まれるアミロースの含量が多い場合、炊飯された米飯は、硬く乾燥した食感となるおそれがある。この構成によれば、制御部は、アミロースの含量が多いほど、吸水工程時の容器内の水温を高くする。これにより、容器内の米への吸水が促進される。そのため、米に含まれるアミロースの含量が多い場合であっても、米へ十分な吸水を行うことができ、米の食感が向上される。その結果、炊飯された米飯を、柔らかく粘りの多い食感とすることができる。つまり、米の食感を改善することができる。
【0033】
本開示の第10態様の炊飯器において、
前記保管情報は、米に含まれる水分の含量を含んでいてもよく、
前記制御部は、前記水分の含量が多いほど、前記水温を高くしてもよい。
【0034】
米に含まれる水分の含量が多い場合、米への吸水が抑制される。この場合、吸水工程において少ない水しか米に吸水されず、沸騰維持工程の開始時において容器内に多くの水が残存する。この構成によれば、制御部は、米に含まれる水分の含量が多いほど、吸水工程時の容器内の水温を高くする。これにより、米に含まれる水分の含量が多い場合に、米への吸水を多くすることができる。その結果、沸騰維持工程の開始時において容器内に残存する水を減少させることができる。
【0035】
本開示の第11態様の炊飯器において、
前記保管情報は、米の銘柄に応じた水分の含量と、米の実際の水分の含量との差分含水量を含んでいてもよく、
前記制御部は、前記差分含水量が少ないほど、前記水温を高くしてもよい。
【0036】
米に含まれる水分の含量には、米の銘柄に応じた水分の含量と、米の保管状態に応じた水分の含量とがある。この構成によれば、保管情報は差分含水量を含む。差分含水量は、容器に収容された米の実際の水分の含量と、米の銘柄に応じた水分の含量との差である。ここで、米の銘柄に応じた水分の含量は固有値である。つまり、差分含水量は、前記の米の保管状態に応じた含水量に相当する。よって、例えば、米が高湿度の環境下で保管されている場合、米に含まれる水分の含量が多くなり、差分含水量は小さくなる。
【0037】
差分含水量が少ない場合、米に含まれる水分の含量が多いため、米への吸水が抑制される。この場合、吸水工程において少ない水しか米に吸水されず、沸騰維持工程の開始時において容器内に多くの水が残存する。この構成によれば、制御部は、差分含水量が少ないほど、吸水工程時の容器内の水温を高くする。これにより、米に含まれる水分の含量が多い場合に、米への吸水を多くすることができる。その結果、沸騰維持工程の開始時において容器内に残存する水を減少させることができる。
【0038】
また、この構成によれば、制御部は、差分含水量に基づいて吸水工程時の容器内の水温を決定する。つまり、この構成では、吸水工程時の容器内の水温を決定するための要素から、米の銘柄に応じた水分の含量(米の保管状態との関連性が低い水分の含量)が除かれている。そのため、米の保管状態に特化した情報に基づいて、吸水工程時の容器内の水温を決定することができる。その結果、吸水工程時の容器内の水温を精度よく決定することができる。
【0039】
本開示の第12態様の炊飯器は、
外部との通信機能を有する通信部を更に備えていてもよく、
本開示の第12態様の炊飯器において、
前記制御部は、前記炊飯器とは別体で計測された前記素性情報及び前記保管情報の少なくとも一方を、前記通信部を介して取得してもよい。
【0040】
この構成によれば、制御部は、炊飯器の外部から素性情報や保管情報を取得する。そのため、炊飯器の内部に素性情報や保管情報を測定する測定部を設ける必要がない。これにより、炊飯器を小型化することができる。
【0041】
(実施の形態1)
[炊飯器]
本開示に係る実施の形態1の炊飯器について説明する。
図1は、本開示に係る実施の形態1の炊飯器の斜視図である。
図2は、
図1のA-A断面を示す模式断面図である。
【0042】
図1及び
図2に示すように、実施の形態1に係る炊飯器100は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納され、米や水などの被調理物が入れられて収容される鍋2とを備えている。鍋2は、容器の一例である。炊飯器本体1の上部には、炊飯器本体1の上部開口部を開閉可能な中空構造の外蓋3が取り付けられている。外蓋3の内側(鍋2の上部開口部を覆う側)には、鍋2の上部開口部を密閉可能な略円盤状の内蓋4が着脱可能に取り付けられている。実施の形態1においては、外蓋3と内蓋4とで、鍋2の開口部を開閉自在に覆う蓋体が構成されている。
【0043】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、上枠1bとコイルベース1cとで構成されている。上枠1bは、収納された鍋2の側壁に対して所定の隙間が空くように配置される筒状部1baと、筒状部1baの上部から外方に突出し炊飯器本体1の上部開口部の内周部に嵌合するフランジ部1bbとを備えている。筒状部1baの上端は、鍋2の上部開口部の周囲に設けられたフランジ部2aを支持している。
【0044】
コイルベース1cは、鍋2の下部の形状に対応して有底筒状に形成され、その上部が上枠1bの筒状部1baの下端部に取り付けられている。コイルベース1cの外周面には、鍋2を加熱(誘導加熱)する加熱部5が取り付けられている。加熱部5は、底内加熱コイル5aと底外加熱コイル5bとで構成されている。底内加熱コイル5aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されている。底外加熱コイル5bは、コイルベース1cを介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。
【0045】
コイルベース1cの底部の中央部分には開口部が設けられている。当該開口部には、鍋2の温度を測定するための鍋温度センサ6が、鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に接触可能に配置されている。鍋2の温度は鍋2内の被調理物の温度と略同じであるので、鍋温度センサ6が鍋2の温度を検知することで、鍋2内の被調理物の温度を検知することができる。鍋温度センサ6は、鍋2に収容された水の温度を検知する水温検知部の一例である。
【0046】
外蓋3は、外蓋3の外郭を構成する上外郭部材3aと下外郭部材3bとを備えている。また、外蓋3は、ヒンジ軸3Aを備えている。ヒンジ軸3Aは、外蓋3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部を回動自在に固定されている。ヒンジ軸3Aの周囲には、ねじりコイルばね7が取り付けられている。ねじりコイルばね7は、ヒンジ軸3Aを中心として外蓋3を鍋2の上部開口部から離れる方向(開方向)に弾性的に付勢する。
【0047】
外蓋3の内部には、蓋開放装置8が設けられている。蓋開放装置8は、炊飯器本体1の一部に係合することにより、外蓋3が鍋2の上部開口部を塞いだ状態を保持する。一方、蓋開放装置8は、外蓋3が鍋2の上部開口部を塞いだ状態で外蓋3に設けられた開蓋ボタン8Bが押圧されたとき、フック軸8Aを中心に矢印A1方向に回転する。これにより、蓋開放装置8と炊飯器本体1の一部との係合が外れ、外蓋3が、ねじりコイルばね7の付勢力によりヒンジ軸3Aを中心として鍋2の上部開口部から離れる方向に回転する。これにより、外蓋3が、鍋2の上部開口部を塞いでいない開状態になる。なお、外蓋3は、例えば、鍋2の上部開口部を塞いだ位置からヒンジ軸3Aを中心として90度回転すると、当該回転を停止するように構成されている。
【0048】
上外郭部材3aのヒンジ軸3Aの近傍には、凹部3dが設けられている。凹部3dには、蒸気筒9が着脱可能に取り付けられている。凹部3dの底部には、鍋2内の余分な蒸気を蒸気筒9に向けて排出できるように、蒸気逃がし穴3daが設けられている。蒸気筒9の上壁には、鍋2内の余分な蒸気を炊飯器の外部に排出できるように、蒸気逃がし穴9aが設けられている。鍋2内から蒸気逃がし穴9aまでの蒸気排出経路のいずれかの箇所に、蒸気の温度を検知する蒸気温度センサ(図示せず)が設けられている。
【0049】
内蓋4には、鍋2内の蒸気を排出するための蒸気排出穴4aと、鍋2内と蓋体内とを連通する蒸気排出穴4bとが設けられている。蓋体内は、鍋2内に対する外部空間である。蒸気排出穴4bの直径は、蒸気排出穴4aの直径よりも大きく、例えば、蒸気排出穴4aの直径の2倍以上に設定されている。蒸気排出穴4aの直径は、例えば4mmであり、蒸気排出穴4bの直径は、例えば10mmである。
【0050】
また、内蓋4には、蒸気排出穴4aを開閉可能な圧力抑制弁10と、蒸気排出穴4bを開閉可能な圧力弁11とが設けられている。
【0051】
圧力抑制弁10は、鍋2内の圧力が大気圧より高い所定値(例えば、1.2気圧)以上に上昇することを抑制する弁である。本実施の形態において、圧力抑制弁10は、ボールにより構成され、自重により蒸気排出穴4aを閉塞する。一方、圧力抑制弁10は、鍋2内の圧力が自重よりも大きくなったとき(例えば、1.2気圧を超えたとき)、鍋2内の圧力のみに押されて蒸気排出穴4aから離れ、蒸気排出穴4aを開放する。なお、圧力抑制弁10は、蒸気排出穴4aを閉塞する閉塞部材と、蒸気排出穴4aを閉塞するように閉塞部材を付勢するバネとで構成されてもよい。この構成によれば、鍋2内の圧力が大気圧より高い所定値以上に上昇したとき、当該圧力によりバネの付勢力に抗して閉塞部材が移動し、蒸気排出穴4aが開放される。
【0052】
圧力弁11は、蒸気排出穴4bを閉塞する閉塞位置と蒸気排出穴4bを開放する開放位置との間で移動するように構成されている。
【0053】
外蓋3には、蒸気排出穴4bを開閉するように圧力弁11を閉塞位置と開放位置との間で移動させる圧力弁移動機構12が設けられている。圧力弁移動機構12は、圧力弁11を所定値(例えば、1.2気圧)よりも大きな圧力で圧力弁11を押圧して、圧力弁11を閉塞位置で保持するように構成されている。これにより、鍋2内の圧力を昇圧(例えば、1.0気圧から1.2気圧に昇圧)することができる。また、圧力弁移動機構12は、鍋2内の圧力が所定値(例えば、1.2気圧)以上になった所定のタイミングで、後述する制御部14の制御により、圧力弁11を閉塞位置から開放位置に移動させるように構成されている。これにより、鍋2内の圧力を減圧(例えば、1.2気圧から1.0気圧に減圧)させることができる。なお、圧力弁移動機構12の具体的な構成については、従来の圧力弁移動機構と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0054】
外蓋3には、表示操作部13が設けられている。表示操作部13は、ディスプレイ13Aと、複数のボタン13Bとを備えている。ディスプレイ13Aには、炊飯時間、鍋2に収容された米の成分、鍋2に収容された水の水温などの各種情報が表示される。複数のボタン13Bが操作されることによって、炊飯の開始、取り消し、予約などの実行が指示される。また、複数のボタン13Bが操作されることによって、鍋2に収容された米の銘柄や成分などの各種情報が入力される。なお、ディスプレイ13Aは、タッチパネルであってもよい。この場合、ディスプレイ13Aは、各種情報の表示の機能に加えて、複数のボタン13Bと同様の機能を有する。ディスプレイ13Aがタッチパネルである場合、表示操作部13は、ボタン13Bを備えていなくてもよい。
【0055】
炊飯器本体1の内部には、炊飯器100の動作を制御する制御部14と、記憶部15とが搭載されている。実施の形態1において、制御部14及び記憶部15は、プリント基板に実装された電子部品として構成されている。
図1において、制御部14は、上外郭部材3aのヒンジ軸3Aの下方に設けられているが他の位置に設けられていてもよい。なお、
図1において、記憶部15の図示は省略されている。記憶部15は、
図3に示されている。
【0056】
炊飯器100の動作は、例えば、吸水工程、沸騰維持工程、及び蒸らし工程を含む炊飯工程である。吸水工程は、鍋2に収容された水を鍋2に収容された米に吸水させる工程である。沸騰維持工程は、吸水工程において米に吸水されずに鍋2に残存する残水を沸騰させる工程である。蒸らし工程は、鍋2に収容された米の内部まで熱を通す工程である。制御部14による炊飯工程の実行は、後述される。
【0057】
図3に示す制御部14は、例えば、
図3に示す記憶部15に記憶されたプログラムを読み込んで実行するプロセッサを備えている。
図3は、炊飯器のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【0058】
制御部14は様々な態様で実現可能である。例えば、制御部14として、ソフトウェアと協働して所定の機能を実現するプロセッサを用いてもよい。制御部14としてプロセッサを用いれば、制御部14は、プログラムを格納している記憶部15からプログラムを読み込んでこれを実行することで、各種処理を実行することができる。記憶部15に格納されたプログラムを変更することで処理内容を変更できるので、制御内容の変更の自由度を高めることができる。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、及び、MPU(Micro-Processing Unit)を含む。また、制御部14としてプログラムの書き換えが不可能なワイヤードロジックを用いてもよい。制御部14としてワイヤードロジックを用いれば、処理速度の向上に有効である。ワイヤードロジックとしては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等がある。また、制御部14は、プロセッサとワイヤードロジックとを組み合わせて実現されてもよい。制御部14を、プロセッサとワイヤードロジックとを組み合わせて実現すれば、ソフトウェア設計の自由度を高めつつ、処理速度を向上することができる。また、制御部14と、制御部14と別の機能を有する回路とを、1つの半導体素子で構成してもよい。別の機能を有する回路としては、例えば、A/D・D/A変換回路などがある。また、制御部14は、1つの半導体素子で構成されてもよいし、複数の半導体素子で構成されてもよい。複数の半導体素子で構成する場合、特許請求の範囲に記載の各制御を、互いに異なる半導体素子で実現してもよい。さらに、半導体素子と抵抗、コンデンサなどの受動部品とを含む構成によって制御部14が構成されてもよい。
【0059】
図3に示すように、制御部14は、加熱部5を制御して鍋2を加熱する。これにより、鍋2と鍋2内の米及び水等の被調理物とが加熱される。また、制御部14は、圧力弁移動機構12を制御する。これにより、圧力弁11が閉塞位置と開放位置との間で移動する。また、制御部14は、鍋温度センサ6から鍋2の温度の情報を取得する。また、制御部14は、後述する成分含量測定部16から、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量の情報を取得する。
【0060】
米に含まれる水分の含量は、米の保管状態に依存する。例えば、米が湿度の高い室内に保管されている場合、米に含まれる水分の含量は多くなり、米が湿度の低い室内に保管されている場合、米に含まれる水分の含量は少なくなる。米に含まれる水分の含量が少ない程、吸水工程において米への吸水が促進されて吸水量が多くなる。また、米に含まれる水分の含量が少ない程、吸水工程における割れ米の発生率が高くなる。米に含まれる水分の含量は、米の保管状態を表す保管情報の一例である。
【0061】
米に含まれる蛋白質の含量と、米に含まれるアミロースの含量は、米の素性を表す。米に含まれる蛋白質の含量と、米に含まれるアミロースの含量とは、素性情報の一例である。
【0062】
米に含まれる蛋白質の含量は、米の素性のうち、主に、育成状態に依存する。例えば、米に含まれる蛋白質の含量は、主に、窒素肥料の施肥量に依存する。米に施肥された窒素肥料の量が多い程、米に含まれる蛋白質の含量は多くなる。米に含まれる蛋白質の含量が多い場合、吸水工程において米の吸水が阻害され、米は硬く粘りの少ない食感となる。米に含まれる蛋白質の含量は、素性情報のうちの育成状態を表す育成状態情報であるとも言える。
【0063】
米に含まれるアミロースの含量は、米の素性のうち、主に、品種特性に依存する。例えば、米に含まれるアミロースの含量は、米の品種毎に異なる。米に含まれるアミロースの含量が多い場合、米は硬く粘りの少ない食感となる。米に含まれるアミロースの含量は、素性情報のうちの遺伝的性質を表す遺伝的性質情報であるとも言える。
【0064】
記憶部15は、炊飯器100の機能を実現するために必要なプログラム及びデータを含む種々の情報を記録する記録媒体である。記憶部15は、例えば、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)などの半導体メモリ装置、ハードディスク等の磁気記憶装置、その他の記憶デバイス単独で又はそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶部15は、種々の情報を一時的に記憶する高速動作可能なSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリを含んでもよい。
【0065】
実施の形態1では、記憶部15に、補正用テーブルが記憶されている。
図4は、補正用テーブルを模式的に示す図である。
図4に示すように、補正用テーブルは、実行時間を補正するための実行時間用テーブルと、水温を補正するための水温用テーブルとを有する。実行時間は、吸水工程の実行時間である。水温は、吸水工程時の鍋2内の水の温度である。後述するように、補正用テーブルは、制御部14による実行時間及び水温の補正に使用される。
【0066】
実行時間用テーブル及び水温用テーブルの各々は、米に含まれる水分の含量に関するテーブルと、米に含まれる蛋白質の含量に関するテーブルと、米に含まれるアミロースの含量に関するテーブルとを有する。各テーブルは、3つの範囲と、当該3つの範囲の各々に対応した掛け率とを有する。
【0067】
例えば、水分の含量の範囲Awは13%未満であり、範囲Awのときの掛け率αw1は0.7であり、範囲Awのときの掛け率βw1は0.7である。水分の含量の範囲Bwは13%以上15%未満であり、範囲Bwのときの掛け率αw2は1.0であり、範囲Bwのときの掛け率βw2は1.0である。水分の含量の範囲Cwは15%以上であり、範囲Cwのときの掛け率αw3は1.3であり、範囲Cwのときの掛け率βw3は1.3である。
【0068】
また、例えば、蛋白質の含量の範囲Apは5.5%未満であり、範囲Apのときの掛け率αp1は0.7であり、範囲Apのときの掛け率βp1は0.7である。蛋白質の含量の範囲Bpは5.5%以上6.5%未満であり、範囲Bpのときの掛け率αp2は1.0であり、範囲Bpのときの掛け率βp2は1.0である。蛋白質の含量の範囲Cpは6.5%以上であり、範囲Cpのときの掛け率αp3は1.3であり、範囲Cpのときの掛け率βp3は1.3である。
【0069】
また、例えば、アミロースの含量の範囲Aaは15%未満であり、範囲Aaのときの掛け率αa1は0.7であり、範囲Aaのときの掛け率βa1は0.7である。アミロースの含量の範囲Baは15%以上25%未満であり、範囲Baのときの掛け率αa2は1.0であり、範囲Baのときの掛け率βa2は1.0である。アミロースの含量の範囲Caは25%以上であり、範囲Caのときの掛け率αa3は1.3であり、範囲Caのときの掛け率βa3は1.3である。
【0070】
なお、各含量の範囲は前述した範囲に限らず、各掛け率は前述した値に限らない。
【0071】
吸水工程の実行時間と、吸水工程時の鍋2内の水の温度とは、制御値の一例である。言い換えると、制御値は、吸水工程の実行時間と、吸水工程のときの鍋2内の水の温度とを含む。吸水工程の実行時間と、吸水工程時の鍋2内の水の温度とは、沸騰維持工程の開始時における鍋2に残存する残水の残水量を鍋2に収容された米の量に応じて予め設定された設定範囲内とするため値である。沸騰維持工程の開始時における鍋2に残存する残水の残水量は、鍋2に収容された米の量が多い程、多く設定される。また、沸騰維持工程では、予め設定された電力が加熱部5へ供給される。前記の電力に応じた強さで加熱部5が鍋2を加熱するときに、沸騰維持工程の開始時における鍋2に残存する残水の全てが気体となるまでの時間には、多くの実験等に基づいた好適な範囲が存在する。前記の設定範囲は、鍋2内の残水が沸騰維持工程において好適な範囲の時間で全て気体となるような残水量である。
【0072】
設定範囲の設定の基となる米の量は、例えば、制御部14が吸水工程時の鍋2の温度上昇から推定することによって決定される。吸水工程において、制御部14は、加熱部5を制御して鍋2を加熱して、鍋2内の水の温度を沸騰しない程度の温度(例えば50℃)に上昇させる。このときの温度上昇の速さに基づいて、設定範囲の設定の基となる米の量が制御部14によって推定される。このようにして決定された米の量に応じて設定範囲が決定される。なお、米の量の決定方法は、前記のような温度上昇に基づく方法に限らない。
【0073】
実施の形態1では、
図2に示すように、炊飯器本体1の内部に、成分含量測定部16が搭載されている。実施の形態1では、成分含量測定部16は、近赤外分光法によって、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量を検出する。なお、成分含量測定部16は、近赤外分光法以外の公知の手段によって、前記の各含量を検出してもよい。
【0074】
成分含量測定部16は、米が収容される筐体と、筐体内へ近赤外線光を照射する光源と、光源から照射され光を検出する検出器とを備える。
【0075】
筐体に収容された米へ向けて、光源から近赤外線光が照射される。検出器は、光源から照射されて筐体内の米において反射した光と光源から照射されて筐体内の米を透過した光との少なくとも一方の光量を検出する。検出器が検出した光量が予め設定された検量モデルに基づいて米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量に変換される。検量モデルは、多数のサンプル米に対する実験によって設定される。
【0076】
実施の形態1において、光量の変換は、成分含量測定部16において実行される。この場合、変換された水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量の情報が制御部14へ出力される。なお、光量の情報への変換は、制御部14において実行されてもよい。制御部14において光量の情報への変換が実行される場合、検出器が検出した光量の情報が制御部14へ出力される。いずれの場合においても、制御部14は、水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量の情報を取得する。
【0077】
実施の形態1では、米は、成分含量測定部16の筐体へ収容されて、水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量を測定された後、手動で鍋2へ移される。なお、筐体から鍋2への米の移送は、以下に例示するような手段によって、炊飯器100によって自動で実行されてもよい。筐体と鍋2とは、管状の送米路によって連通されている。送米路に、ファンが設けられている。制御部14によってファンが駆動されると、送米路内に筐体から鍋2へ向かう空気の流れが形成される。これにより、筐体内の米は送米路へ送り出され鍋2へと送られる。
【0078】
以下、制御部14の制御によって実行される炊飯器100の炊飯工程が説明される。制御部14は、炊飯指示の情報を制御部14の外部から取得すると、炊飯工程を開始する。例えば、炊飯指示の情報は、表示操作部13を介したユーザによる炊飯指示の入力によって制御部14へ送られる。また、例えば、炊飯指示の情報は、スマートフォン及びパーソナルコンピュータ等の外部機器においてユーザによって入力された炊飯指示が、外部機器から炊飯器100の制御部14へ送られてもよい。この場合、炊飯器100と外部機器とは、有線または無線により通信可能に構成されている。
【0079】
図5は、炊飯工程の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、炊飯工程は、前記のような炊飯指示を受け付けると(S10)、実行開始される。炊飯工程は、吸水工程S40と、沸騰維持工程S50と、蒸らし工程S60とを含む。
【0080】
制御部14は、炊飯指示を受け付けると(S10)、吸水工程S40の実行前に、ステップS20,S30を実行する。なお、炊飯指示が実行される前に、米は、成分含量測定部16の筐体から鍋2へ移されており、鍋2に収容された米の量に応じた量の水が鍋2へ入れられている。
【0081】
ステップS20において、制御部14は、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量の情報を、成分含量測定部16から取得する。
【0082】
ステップS30において、制御部14は、吸水工程の実行時間と、吸水工程時の鍋2内の水の温度とを決定する。以下に詳述する。
【0083】
吸水工程の実行時間と、吸水工程時の鍋2内の水の温度とは、米及び水の量、米を柔らかく炊くか硬く炊くかといった米の炊き方等に応じて、決定される。実施の形態1では、この吸水工程の実行時間と、吸水工程時の鍋2内の水の温度とが、ステップS20において取得された情報に基づいて補正される。
【0084】
以下に吸水工程の実行時間の補正が説明される。
【0085】
制御部14は、
図4の上段に示す実行時間用テーブルを参照する。制御部14は、ステップS20において取得した米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量の情報を、実行時間用テーブルのうちの対応するテーブルに当てはめる。つまり、制御部14は、取得した水分の含量の情報が3つの範囲Aw,Bw,Cwの何れに属するかを判定し、属する範囲に対応する掛け率α
wを取得する。掛け率α
wは、α
w1,α
w2,α
w3のいずれかである。また、制御部14は、取得した蛋白質の含量の情報が3つの範囲Ap,Bp,Cpの何れに属するかを判定し、属する範囲に対応する掛け率α
pを取得する。掛け率α
pは、α
p1,α
p2,α
p3のいずれかである。また、制御部14は、取得したアミロースの含量の情報が3つの範囲Aa,Ba,Caの何れに属するかを判定し、属する範囲に対応する掛け率α
aを取得する。掛け率α
wは、α
a1,α
a2,α
a3のいずれかである。
【0086】
次に、制御部14は、取得した掛け率αw,αp,αaを以下の式(1)に当てはめて最終的な掛け率αを算出する。なお、式(1)は一例であり、式(1)とは異なる式によって掛け率αが算出されてもよい。
【0087】
α=(αw+αp+αa)/3 ・・・(1)
【0088】
掛け率αが、米及び水の量や米の炊き方等に応じて決定された吸水工程の実行時間に乗算される。これにより、吸水工程の実行時間が補正される。
図4に示す実行時間用テーブルにおいて、つまり実施の形態1において、Aw<Bw<Cwであり且つα
w1<α
w2<α
w3である。つまり、米に含まれる水分の含量が多い程、掛け率α
wが大きくなる。そのため、最終的な掛け率αは大きくなり、吸水工程の実行時間が長く補正される。つまり、制御部14は、米に含まれる水分の含量が多いほど、吸水工程の実行時間を長くする。
【0089】
また、
図4に示す実行時間用テーブルにおいて、つまり実施の形態1において、Ap<Bp<Cpであり且つα
p1<α
p2<α
p3である。つまり、米に含まれる蛋白質の含量が多い程、掛け率α
pが大きくなる。そのため、最終的な掛け率αは大きくなり、吸水工程の実行時間が長く補正される。つまり、制御部14は、米に含まれる蛋白質の含量が多いほど、吸水工程の実行時間を長くする。
【0090】
また、
図4に示す実行時間用テーブルにおいて、つまり実施の形態1において、Aa<Ba<Caであり且つα
a1<α
a2<α
a3である。つまり、米に含まれるアミロースの含量が多い程、掛け率α
aが大きくなる。そのため、最終的な掛け率αは大きくなり、吸水工程の実行時間が長く補正される。つまり、制御部14は、米に含まれるアミロースの含量が多いほど、吸水工程の実行時間を長くする。
【0091】
同様にして、制御部14は、吸水工程時の鍋2内の水の温度を補正する。制御部14は、
図4の下段に示す水温用テーブルを参照する。制御部14は、ステップS20において取得した米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量の情報を、水温用テーブルのうちの対応するテーブルに当てはめ、掛け率β
w,β
p,β
aを取得する。掛け率β
wは、β
w1,β
w2,β
w3のいずれかである。掛け率β
pは、β
p1,β
p2,β
p3のいずれかである。掛け率β
wは、β
a1,β
a2,β
a3のいずれかである。
【0092】
次に、制御部14は、取得した掛け率βw,βp,βaを以下の式(2)に当てはめて最終的な掛け率βを算出する。なお、式(2)は一例であり、式(2)とは異なる式によって掛け率βが算出されてもよい。
【0093】
β=(βw+βp+βa)/3 ・・・(2)
【0094】
掛け率βが、米及び水の量や米の炊き方等に応じて決定された吸水工程時の鍋2内の水の温度に乗算される。これにより、吸水工程時の鍋2内の水の温度が補正される。
図4に示す水温用テーブルにおいて、つまり実施の形態1において、Aw<Bw<Cwであり且つβ
w1<β
w2<β
w3である。つまり、米に含まれる水分の含量が多い程、掛け率β
wが大きくなる。そのため、最終的な掛け率βは大きくなり、吸水工程時の鍋2内の水の温度が高く補正される。つまり、制御部14は、米に含まれる水分の含量が多いほど、吸水工程時の鍋2内の水の温度を高くする。
【0095】
また、
図4に示す水温用テーブルにおいて、つまり実施の形態1において、Ap<Bp<Cpであり且つβ
p1<β
p2<β
p3である。つまり、米に含まれる蛋白質の含量が多い程、掛け率β
pが大きくなる。そのため、最終的な掛け率βは大きくなり、吸水工程時の鍋2内の水の温度が高く補正される。つまり、制御部14は、米に含まれる蛋白質の含量が多いほど、吸水工程時の鍋2内の水の温度を高くする。
【0096】
また、
図4に示す水温用テーブルにおいて、つまり実施の形態1において、Aa<Ba<Caであり且つβ
a1<β
a2<β
a3である。つまり、米に含まれるアミロースの含量が多い程、掛け率β
aが大きくなる。そのため、最終的な掛け率βは大きくなり、吸水工程時の鍋2内の水の温度が高く補正される。つまり、制御部14は、米に含まれるアミロースの含量が多いほど、吸水工程時の鍋2内の水の温度を高くする。
【0097】
図6は、炊飯工程における鍋内の温度、加熱部の電力量、鍋内の圧力、及び圧力弁の開閉状態の関係を示すグラフである。
【0098】
図5及び
図6に示すように、吸水工程S40において、制御部14は、加熱部5を制御して鍋2を加熱する。このとき、制御部14は、鍋2内の水の温度をステップS30において補正した温度に保ち、米に吸水させる。なお、このときの温度は、糊化温度以下(例えば55度)に保たれる。制御部14は、鍋2内の温度を、鍋温度センサ6から入力された情報に基づいて認識する。また、制御部14は、吸水工程S40をステップS30において補正した時間だけ実行する。
【0099】
次の沸騰維持工程S50において、制御部14は、加熱部5を制御して吸水工程S40のときより強く鍋2を加熱し、鍋2内の温度を上昇させ、鍋2内を沸騰状態に移行させる。
【0100】
その後、制御部14は、加熱部5を制御して、鍋2内の温度を上昇させたときより弱く鍋2を加熱する。但し、加熱部5による加熱強度は、鍋2内の水の沸騰が維持される程度に保たれる。
【0101】
沸騰維持工程S50において、制御部14は、圧力弁移動機構12を制御して、圧力弁11を開閉させる。圧力弁11が閉じられることにより、鍋2内の圧力が上昇する。なお、
図6では、圧力弁11が3回閉じられることによって、鍋2内の圧力が3回上昇しているが、圧力弁11が閉じられる回数は3回に限らない。圧力弁11が開かれると、鍋2内の圧力が一気に大気圧近傍まで低下し、突沸が発生する。突沸によって生じた泡によって、米粒が攪拌される。
【0102】
鍋2内の水が米に吸収されること及び沸騰することによって、鍋2内の水が無くなると、加熱によって鍋2内の温度は上昇して水の沸点(100℃)より高くなる。制御部14は、鍋2内の温度が水の沸点より高い温度(例えば130℃)に達すると、加熱部5を制御して、鍋2の加熱を停止する。この鍋2の加熱が停止されている期間が蒸らし工程S60である。
【0103】
蒸らし工程S60において、制御部14は、圧力弁11を短時間閉じると共に、加熱部5を制御して鍋2を短時間加熱する。これにより、鍋2を上方から覆う内蓋4の下面に付着している水滴が気化する。
【0104】
[効果]
実施の形態1の炊飯器100によれば、以下の効果を奏することができる。
【0105】
炊飯器100は、米及び水が収容される鍋2と、鍋2を加熱する加熱部5と、鍋2に収容された水を鍋2に収容された米に吸水させる吸水工程、及び加熱部5を制御して吸水工程において米に吸水されずに鍋2に残存する残水を沸騰させる沸騰維持工程を含む炊飯工程を行う制御部14と、を備える。制御部14は、米の素性を表す素性情報と、米の保管状態を表す保管情報とを取得し、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量を鍋2に収容された米の量に応じて予め設定された設定範囲内とするための制御値を、鍋2に収容された米の量と、素性情報と、保管情報とに基づいて決定する。
【0106】
この構成によれば、米の素性情報と米の保管情報との双方に基づいて制御値が決定される。そのため、米の保管状態に応じて制御値を決定することができる。つまり、この構成によれば、米の素性情報のみによって制御値が決定される構成よりも、良好な制御値を決定することが容易である。その結果、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量を設定範囲内とすることが容易であるため、米の食味を良好に維持することができる。
【0107】
制御値は、吸水工程の実行時間を含む。
【0108】
この構成によれば、米の保管状態に応じて吸水工程の実行時間を決定することができる。つまり、米の保管状態によっては、吸水工程の実行時間を長くして、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量を少なくすることができる。また、米の保管状態によっては、吸水工程の実行時間を短くして、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量を多くすることができる。
【0109】
素性情報は、米に含まれる蛋白質の含量を含み、制御部14は、蛋白質の含量が多いほど、吸水工程の実行時間を長くする。
【0110】
米に含まれる蛋白質の含量が多い場合、炊飯された米飯は、硬く粘りの少ない食感となるおそれがある。この構成によれば、制御部14は、蛋白質の含量が多いほど、吸水工程の実行時間を長くする。これにより、米に含まれる蛋白質の含量が多い場合であっても、米へ十分な吸水を行うことができる。その結果、炊飯された米飯を、柔らかく粘りの多い食感とすることができる。つまり、米の食感を改善することができる。
【0111】
素性情報は、米に含まれるアミロースの含量を含み、制御部14は、アミロースの含量が多いほど、吸水工程の実行時間を長くする。
【0112】
米に含まれるアミロースの含量が多い場合、炊飯された米飯は、硬く乾燥した食感となるおそれがある。この構成によれば、制御部14は、アミロースの含量が多いほど、吸水工程の実行時間を長くする。これにより、米に含まれるアミロースの含量が多い場合であっても、米へ十分な吸水を行うことができる。その結果、炊飯された米飯を、柔らかく粘りの多い食感とすることができる。つまり、米の食感を改善することができる。
【0113】
保管情報は、米に含まれる水分の含量を含み、制御部14は、水分の含量が多いほど、吸水工程の実行時間を長くする。
【0114】
米に含まれる水分の含量が多い場合、米への吸水が抑制される。この場合、吸水工程において少ない水しか米に吸水されず、沸騰維持工程の開始時において鍋2内に多くの水が残存する。この構成によれば、制御部14は、米に含まれる水分の含量が多いほど、吸水工程の実行時間を短くする。これにより、米に含まれる水分の含量が多い場合に、米への吸水を多くすることができる。その結果、沸騰維持工程の開始時において鍋2内に残存する水を減少させることができる。
【0115】
保管情報は、米の銘柄に応じた水分の含量と、米の実際の水分の含量との差分含水量を含み、制御部14は、差分含水量が少ないほど、吸水工程の実行時間を長くする。
【0116】
米に含まれる水分の含量には、米の銘柄に応じた水分の含量と、米の保管状態に応じた水分の含量とがある。この構成によれば、保管情報は差分含水量を含む。差分含水量は、鍋2に収容された米の実際の水分の含量と、米の銘柄に応じた水分の含量との差である。ここで、米の銘柄に応じた水分の含量は固有値である。つまり、差分含水量は、前記の米の保管状態に応じた水分の含量に相当する。よって、例えば、米が高湿度の環境下で保管されている場合、米に含まれる水分の含量が多くなり、差分含水量は小さくなる。
【0117】
差分含水量が小さい場合、米に含まれる水分の含量が多いため、米への吸水が抑制される。この場合、吸水工程において少ない水しか米に吸水されず、沸騰維持工程の開始時において鍋2内に多くの水が残存する。この構成によれば、制御部14は、差分含水量が少ないほど、吸水工程の実行時間を長くする。これにより、米に含まれる水分の含量が多い場合に、米への吸水を多くすることができる。その結果、沸騰維持工程の開始時において鍋2内に残存する水を減少させることができる。
【0118】
また、この構成によれば、制御部14は、差分含水量に基づいて吸水工程の実行時間を決定する。つまり、この構成では、吸水工程の実行時間を決定するための要素から、米の銘柄に応じた水分の含量(米の保管状態との関連性が低い水分の含量)が除かれている。そのため、米の保管状態に特化した情報に基づいて、吸水工程の実行時間を決定することができる。その結果、吸水工程の実行時間を精度よく決定することができる。
【0119】
炊飯器100は、鍋2に収容された水の温度を検知する鍋温度センサ6を更に備え、制御値は、吸水工程における鍋2に収容された水の水温を含み、制御部14は、吸水工程において、加熱部5を制御して、鍋2に収容された水を制御値としての水温とする。
【0120】
この構成によれば、米の保管状態に応じて吸水工程時の鍋2内の水温を決定することができる。つまり、米の保管状態によっては、吸水工程時の鍋2の水温を高くすることで鍋2内の米への吸水を促進することができる。これにより、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量を少なくすることができる。また、米の保管状態によっては、吸水工程時の鍋2内の水温を高くしないことで鍋2内の米への吸水を抑制することができる。これにより、沸騰維持工程の開始時における残水の残水量が少なくなることを抑制することができる。
【0121】
素性情報は、米に含まれる蛋白質の含量を含み、制御部14は、蛋白質の含量が多いほど、制御値としての水温を高くする。
【0122】
米に含まれる蛋白質の含量が多い場合、炊飯された米飯は、硬く粘りの少ない食感となるおそれがある。この構成によれば、制御部14は、蛋白質の含量が多いほど、吸水工程時の鍋2内の水温を高くする。これにより、鍋2内の米への吸水が促進される。そのため、米に含まれる蛋白質の含量が多い場合であっても、米へ十分な吸水を行うことができる。その結果、炊飯された米飯を、柔らかく粘りの多い食感とすることができる。つまり、米の食感を改善することができる。
【0123】
素性情報は、米に含まれるアミロースの含量を含み、制御部14は、アミロースの含量が多いほど、水温を高くする。
【0124】
米に含まれるアミロースの含量が多い場合、炊飯された米飯は、硬く乾燥した食感となるおそれがある。この構成によれば、制御部14は、アミロースの含量が多いほど、吸水工程時の鍋2内の水温を高くする。これにより、鍋2内の米への吸水が促進される。そのため、米に含まれるアミロースの含量が多い場合であっても、米へ十分な吸水を行うことができ、米の食感が向上される。その結果、炊飯された米飯を、柔らかく粘りの多い食感とすることができる。つまり、米の食感を改善することができる。
【0125】
保管情報は、米に含まれる水分の含量を含み、制御部14は、前記水分の含量が多いほど、制御値としての水温を高くする。
【0126】
米に含まれる水分の含量が多い場合、米への吸水が抑制される。この場合、吸水工程において少ない水しか米に吸水されず、沸騰維持工程の開始時において鍋2内に多くの水が残存する。この構成によれば、制御部14は、米に含まれる水分の含量が多いほど、吸水工程時の鍋2内の水温を高くする。これにより、米に含まれる水分の含量が多い場合に、米への吸水を多くすることができる。その結果、沸騰維持工程の開始時において鍋2内に残存する水を減少させることができる。
【0127】
保管情報は、米の銘柄に応じた水分の含量と、米の実際の水分の含量との差分含水量を含み、制御部14は、差分含水量が少ないほど、制御値としての水温を高くする。
【0128】
米に含まれる水分の含量には、米の銘柄に応じた水分の含量と、米の保管状態に応じた水分の含量とがある。この構成によれば、保管情報は差分含水量を含む。差分含水量は、鍋2に収容された米の実際の水分の含量と、米の銘柄に応じた水分の含量との差である。ここで、米の銘柄に応じた水分の含量は固有値である。つまり、差分含水量は、前記の米の保管状態に応じた水分の含量に相当する。よって、例えば、米が高湿度の環境下で保管されている場合、米に含まれる水分の含量が多くなり、差分含水量は小さくなる。
【0129】
差分含水量が小さい場合、米に含まれる水分の含量が多いため、米への吸水が抑制される。この場合、吸水工程において少ない水しか米に吸水されず、沸騰維持工程の開始時において鍋2内に多くの水が残存する。この構成によれば、制御部14は、差分含水量が少ないほど、吸水工程時の鍋2内の水温を高くする。これにより、米に含まれる水分の含量が多い場合に、米への吸水を多くすることができる。その結果、沸騰維持工程の開始時において鍋2内に残存する水を減少させることができる。
【0130】
また、この構成によれば、制御部14は、差分含水量に基づいて吸水工程時の鍋2内の水温を決定する。つまり、この構成では、吸水工程時の鍋2内の水温を決定するための要素から、米の銘柄に応じた水分の含量(米の保管状態との関連性が低い水分の含量)が除かれている。そのため、米の保管状態に特化した情報に基づいて、吸水工程時の鍋2内の水温を決定することができる。その結果、吸水工程時の鍋2内の水温を精度よく決定することができる。
【0131】
実施の形態1では、制御部14は、米の量等に応じて、制御値(実施の形態1では、吸水工程の実行時間、及び吸水工程時の鍋2内の水の温度)を決定する。次に、制御部14は、決定した各制御値を、保管情報(実施の形態1では、米に含まれる水分の含量)と素性情報(実施の形態1では、米に含まれる蛋白質及びアミロースの各含量)とに基づいて補正している。しかし、制御部14は、米の量等と、素性情報と、保管情報と、に基づいて制御値を決定すればよく、制御値を決定するプロセスは任意である。つまり、制御部14は、米の量等に応じて決定した制御値を補正するという手段とは異なる手段で制御値を決定してもよい。
【0132】
例えば、制御部14は、鍋2に収容された米の量と、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量とに基づいて、制御値を決定してもよい。つまり、一旦決定した制御値を補正するのではなく、最終的な制御値をいきなり決定してもよい。
【0133】
また、例えば、制御部14は、式(1)、(2)のような演算式を用いることなく、鍋2に収容された米の量等、素性情報、及び保管情報と、これらの各値に対応した制御値とよりなるテーブルのみを用いて、最終的な制御値を決定してもよい。
【0134】
また、例えば、制御部14は、補正用テーブルのようなデータのテーブルを用いることなく、鍋2に収容された米の量等と、素性情報と、保管情報とによって制御値を算出することができる演算式のみを用いて、最終的な制御値を決定してもよい。
【0135】
実施の形態1では、制御部14は、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量を、成分含量測定部16から取得している。しかし、制御部14は、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量を、成分含量測定部16以外から取得してもよい。
【0136】
例えば、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量がユーザによって表示操作部13を介して入力され、制御部14は入力された当該含量を取得してもよい。当該含量は、例えば
図7に示すような米の包装袋17の米銘柄表記171の欄に示されている。
図7は、米包装袋を模式的に示す図である。
【0137】
また、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量は、必ずしもユーザによって入力される必要はない。例えば、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量は、バーコードやQR(Quick Response)コードに含まれており、これらのコードが読み取られることによって、当該含量が制御部14によって取得されてもよい。
【0138】
また、制御部14は、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量を、炊飯器100の外部から取得してもよい。これらの例は、実施の形態2において説明される。
【0139】
実施の形態1では、素性情報及び育成状態情報の一例として、米に含まれる蛋白質の含量が挙げられている。しかし、素性情報及び育成状態情報は、米に含まれる蛋白質の含量に限らない。例えば、素性情報及び育成状態情報は、米に含まれる脂質の含量であってもよいし、米に含まれるミネラル、ビタミン等の含量であってもよいし、蛋白質、脂質、ミネラル、ビタミン等の含量の合計であってもよい。
【0140】
実施の形態1では、素性情報及び遺伝的性質情報の一例として、米に含まれるアミロースの含量が挙げられている。しかし、素性情報及び遺伝的性質情報は、米に含まれるアミロースの含量に限らない。例えば、素性情報及び遺伝的性質情報は、米に含まれるアミロペクチンの含量であってもよいし、米に含まれるアミロースの含量とアミロペクチンの含量との合計であってもよい。
【0141】
実施の形態1では、米に含まれる蛋白質の含量と米に含まれるアミロースの含量との2つの情報が素性情報に相当している。しかし、素性情報は、1つまたは3つ以上の情報であってもよい。例えば、蛋白質の含量のみが素性情報であってもよい。この場合、制御部14は、米に含まれる水分の含量と、米に含まれる蛋白質の含量とのみに基づいて、制御値(実施の形態1では、吸水工程の実行時間、及び吸水工程時の鍋2内の水の温度)を決定する。
【0142】
実施の形態1では、保管情報の一例として、米に含まれる水分の含量が挙げられている。しかし、保管情報は、米に含まれる水分の含量に限らない。
【0143】
例えば、保管情報は、米の銘柄に応じた水分の含量と、米に実際に含まれる水分の含量との差分含水量であってもよい。
【0144】
米の銘柄に応じた水分の含量は、例えば
図7に示す米の包装袋17の米銘柄表記171の欄に示されている。米の銘柄に応じた水分の含量は固有値である。一方、米に実際に含まれる水分の含量は、例えば成分含量測定部16によって測定される。米が湿度の低い室内に保管されている場合、米に実際に含まれる水分の含量は少なくなる。そのため、差分含水量は大きくなる。逆に、米が湿度の高い室内に保管されている場合、前記とは逆に差分含水量は小さくなる。
【0145】
保管情報が差分含水量である場合、制御部14は、差分含水量が少ないほど、吸水工程の実行時間を長くし、吸水工程時の鍋2内の水の温度を高くする。
【0146】
実施の形態1では、成分含量測定部16で水分、蛋白質、及びアミロースの各含量を測定された米が、鍋2へ移送される。しかし、成分含量測定部16が鍋2に設けられていてもよい。この場合、例えば、成分含量測定部16の光源と検出器とが内蓋4等に設けられ、光源から鍋2に収容された米へ向けて光が照射される。よって、含量の測定後に米を移送する必要がない。
【0147】
(実施の形態2)
図8を参照しながら、実施の形態2の炊飯器が説明される。
図8は、本開示に係る実施の形態2の炊飯器と米保管器とを模式的に示す図である。以下の説明では、実施の形態1と同一又は同等の構成は、同じ符号を付して説明される。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略される。
【0148】
実施の形態2の炊飯器100Aが実施の形態1の炊飯器100と異なる点は、制御部14が炊飯器100Aの外部から制御値を取得する点である。
【0149】
図8に示すように、炊飯器100Aは、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロース等の含量である制御値を、炊飯器100Aの外部に設置された米保管器200から取得する。そのため、炊飯器100Aは、成分含量測定部16を備えている必要はない。炊飯器100Aは、外部からの制御値の取得のために、無線通信部181を備える。無線通信部は、通信部の一例である。
【0150】
米保管器200は、米が収容される筐体201と、筐体201の上部開口部を開閉可能な蓋202とを備える。米保管器200は、別体の一例である。また、米保管器200は、成分含量測定部16Aと、無線通信部182とを備える。
図8に示す例では、成分含量測定部16Aは筐体201に設けられ、無線通信部182は蓋202に設けられているが、これに限らない。例えば、無線通信部182は、筐体201に設けられていてもよい。
【0151】
成分含量測定部16Aは、筐体201に収容された米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量を検出する。成分含量測定部16Aは、実施の形態1において炊飯器100に設けられた成分含量測定部16と同様に、近赤外分光法によって前記の各含量を検出してもよいし、近赤外分光法以外の公知の手段によって前記の各含量を検出してもよい。
【0152】
無線通信部181,182は、外部との通信機能を有しており、例えばBluetooth(登録商標)、RFID(Radio Frequency Identifier)等の無線通信規格に準拠する無線通信方式によって制御信号を送受信する。これにより、無線通信部181,182は、互いに情報を送受信することができる。実施の形態2では、無線通信部182が、成分含量測定部16Aによって検出された米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量を、炊飯器100Aの無線通信部181に送信する。制御部14は、無線通信部181が受信した前記の各含量を取得する。つまり、制御部14は、炊飯器100Aとは別体である米保管器200で計測された水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量を、無線通信部181を介して取得する。
【0153】
なお、炊飯器100Aと米保管器200とは、無線ではなく有線で互いに情報を送受信してもよい。また、制御部14は、水分、蛋白質、及びアミロースのうちの一部の含量を米保管器200から取得し、水分、蛋白質、及びアミロースのうちの残りの含量を炊飯器100Aに設けられた成分含量測定部16から取得してもよい。
【0154】
図8では、炊飯器100Aは、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロース等の含量である制御値を、炊飯器100Aの外部に設置された米保管器200から取得する。しかし、炊飯器100Aへ制御値を送信するものは、
図8に示すような米保管器200に限らない。例えば、
図9に示すような計量器300が、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロース等の含量である制御値を、炊飯器100Aへ送信してもよい。言い換えると、炊飯器100Aは、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロース等の含量である制御値を、炊飯器100Aの外部に設置された計量器300から取得してもよい。この場合、計量器300が別体に相当する。
図9は、本開示に係る実施の形態2の炊飯器と米計量器とを模式的に示す図である。
【0155】
計量器300は、筐体301と、筐体301に設けられた重量計量部302とを備える。重量計量部302は、公知の手段によって重量計量部302に載置された計量カップ303と計量カップ303に収容された米等の被収容物との重量を計量する。
【0156】
図9に示す計量器300は、重量計量部302に成分含量測定部16Bを有する。なお、成分含量測定部16Bは、筐体301の重量計量部302以外の部分に設けられていてもよい。成分含量測定部16Bは、成分含量測定部16,16Aと同様に、近赤外分光法によって前記の各含量を検出してもよいし、近赤外分光法以外の公知の手段によって前記の各含量を検出してもよい。例えば、近赤外分光法によって各含量が測定される場合、計量カップ303は透光性を有する材料で構成され、成分含量測定部16Bの光源から照射され近赤外光は計量カップ303を透過して計量カップ303内の被収容物に到達する。
【0157】
図9に示す計量器300は、無線通信部183を有する。無線通信部183は、
図8に示す無線通信部182と同様に、外部との通信機能を有する。なお、無線通信部183は、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロース等の含量に加えて、計量カップ303によって計量された重量の情報を送信してもよい。
【0158】
炊飯器100Aは、外部との通信機能を有する無線通信部181を更に備え、制御部14は、炊飯器100Aとは別体の米保管器200や計量器300で計測された素性情報及び保管情報の少なくとも一方を、無線通信部181を介して取得する。
【0159】
この構成によれば、制御部14は、炊飯器100Aの外部から素性情報や保管情報を取得する。そのため、炊飯器100Aの内部に素性情報や保管情報を測定する成分含量測定部16を設ける必要がない。これにより、炊飯器100Aを小型化することができる。
【0160】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本開示は、米の食味を良好に維持することができるので、例えば、家庭用及び業務用の炊飯器に有用である。
【符号の説明】
【0162】
1 炊飯器本体
2 鍋(容器)
3 外蓋
4 内蓋
5 加熱部
6 鍋温度センサ(水温検知部)
11 圧力弁
12 圧力弁移動機構
13 表示操作部
14 制御部
15 記憶部
16 成分含量測定部
100 炊飯器
181 無線通信部
182 無線通信部
183 無線通信部
200 米保管器
300 計量器