(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122301
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
A47J27/00 109B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025937
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】八幡 健志
(72)【発明者】
【氏名】村上 誠
(72)【発明者】
【氏名】貞平 匡史
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055BA61
4B055GB11
4B055GB17
4B055GC21
4B055GC31
4B055GD02
4B055GD05
(57)【要約】
【課題】米の食味を良好に維持することができる炊飯器を提供する。
【解決手段】本開示に係る炊飯器は、米及び水が収容される容器と、容器を加熱する加熱部と、容器に収容された水を容器に収容された米に吸水させる吸水工程、及び加熱部を制御して吸水工程において米に吸水されずに容器に残存する残水を沸騰させる沸騰維持工程を含む炊飯工程を行う制御部と、を備える。制御部は、米に含まれる水分含量と、米に含まれる蛋白質含量と、米に含まれるアミロース含量とを取得し、水分含量と蛋白質含量とアミロース含量とに基づいて、吸水工程の実行時間と、吸水工程における容器に収容された水の水温と、沸騰維持工程における加熱部への供給電力との少なくとも1つを予め設定された値から変更する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米及び水が収容される容器と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記容器に収容された水を前記容器に収容された米に吸水させる吸水工程、及び前記加熱部を制御して前記吸水工程において米に吸水されずに前記容器に残存する残水を沸騰させる沸騰維持工程を含む炊飯工程を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
米に含まれる水分含量と、米に含まれる蛋白質含量と、米に含まれるアミロース含量とを取得し、
前記水分含量と前記蛋白質含量と前記アミロース含量とに基づいて、前記吸水工程の実行時間と、前記吸水工程における前記容器に収容された水の水温と、前記沸騰維持工程における前記加熱部への供給電力との少なくとも1つを予め設定された値から変更する炊飯器。
【請求項2】
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より大きいとの条件を満たし、且つ、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きいとの条件と前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きいとの条件との少なくとも一方を満たす場合に、前記吸水工程の前記実行時間を予め設定された時間より長くする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より小さい場合に、前記加熱部を制御して前記吸水工程における前記容器に収容された水の前記水温を予め設定された温度より高くする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より小さい場合に、前記沸騰維持工程における前記加熱部への前記供給電力を予め設定された電力より低くする請求項1から3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より小さく、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より小さく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より小さい場合に、前記吸水工程の前記実行時間を予め設定された時間より短くする請求項1から4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記制御部は、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、前記吸水工程の前記実行時間を予め設定された時間より長くする請求項1から5のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記制御部は、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、前記沸騰維持工程における前記加熱部への前記供給電力を予め設定された電力より低くする請求項1から6のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記容器内と外部空間とを連通する穴を開閉可能に動作する圧力弁を更に備え、
前記炊飯工程は、蒸らし工程を更に含み、
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より大きく、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より小さく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より小さい場合に、前記沸騰維持工程及び前記蒸らし工程の少なくとも一方において、前記圧力弁を制御して、前記容器内の圧力を予め設定された値より低くする処理、及び前記容器内の圧力が前記外部空間より高くされる時間を予め設定された時間より短くする処理の少なくとも一方を実行する請求項1から7のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記容器内と外部空間とを連通する穴を開閉可能に動作する圧力弁を更に備え、
前記炊飯工程は、蒸らし工程を更に含み、
前記制御部は、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、前記沸騰維持工程及び前記蒸らし工程の少なくとも一方において、前記圧力弁を制御して、前記容器内の圧力を予め設定された値より高くする処理、及び前記容器内の圧力が前記外部空間より高くされる時間を予め設定された時間より長くする処理の少なくとも一方を実行する請求項1から8のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項10】
前記容器内と外部空間とを連通する穴を開閉可能に動作する圧力弁を更に備え、
前記炊飯工程は、蒸らし工程を更に含み、
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より小さく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、前記沸騰維持工程及び前記蒸らし工程の少なくとも一方において、前記圧力弁を制御して、前記容器内の圧力を予め設定された値より高くする処理、及び前記容器内の圧力が前記外部空間より高くされる時間を予め設定された時間より長くする処理の少なくとも一方を実行する請求項1から9のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項11】
外部との通信機能を有する通信部を更に備え、
前記制御部は、前記炊飯器とは別体で計測された前記水分含量、前記蛋白質含量、及び前記アミロース含量の少なくとも1つを、前記通信部を介して取得する請求項1から10のいずれか1項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
米に十分な吸水をさせることができず米飯に芯が残るという技術問題を解決するための炊飯器が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された炊飯器では、吸水段階において、炊飯器内の米のアミロース含有量が設定アミロース含有量以下であり且つ蛋白質含有量が設定蛋白質含有量以下である場合、米が十分に吸水するように、第1設定加熱パワーで加熱するよう炊飯器の加熱体が制御される。これにより、前記の技術問題の解決が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、米の食味を良好に維持することができる炊飯器を提供することを目的とする。
にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の炊飯器は、
米及び水が収容される容器と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記容器に収容された水を前記容器に収容された米に吸水させる吸水工程、及び前記加熱部を制御して前記吸水工程において米に吸水されずに前記容器に残存する残水を沸騰させる沸騰維持工程を含む炊飯工程を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
米に含まれる水分含量と、米に含まれる蛋白質含量と、米に含まれるアミロース含量とを取得し、
前記水分含量と前記蛋白質含量と前記アミロース含量とに基づいて、前記吸水工程の実行時間と、前記吸水工程における前記容器に収容された水の水温と、前記沸騰維持工程における前記加熱部への供給電力との少なくとも1つを予め設定された値から変更する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、米の食味を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示に係る実施の形態1の炊飯器の斜視図。
【
図3】炊飯器のハードウェア構成を例示するブロック図。
【
図4】米に含まれる各成分の含量に対する吸水工程の時間と吸水工程時の水温と沸騰維持工程時の加熱部への供給電力と沸騰維持工程時の容器内の圧力とを示す表。
【
図6】炊飯工程における鍋内の温度、加熱部の電力量、鍋内の圧力、及び圧力弁の開閉状態の関係を示すグラフ。
【
図8】本開示に係る実施の形態2の炊飯器と米保管器とを模式的に示す図。
【
図9】本開示に係る実施の形態2の炊飯器と米計量器とを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至った経緯)
米飯の食味を向上させるために、吸水工程の実行時間、吸水工程における容器に収容された水の温度、及び沸騰維持工程の実行時間を調整することが考えられる。吸水工程の実行時間が長くされることにより、米への吸水が十分にされて、米の硬さが低減される。吸水工程における容器に収容された水の温度が高くされることにより、割れ米の発生率が低くなり、炊飯された米飯の食感が改善される。沸騰維持工程の実行時間が長くされることにより、米の糊化を促進することができる。
【0009】
しかし、特許文献1に開示された炊飯器のように、米のアミロース含有量及び蛋白質含有量だけに基づいて、前記の調整が実行される場合、以下に詳述するように、炊飯された米飯の食味向上効果が低くなるおそれがある。
【0010】
例えば、米が高湿度の環境下で保管されている場合、米の含水量は高くなる。この場合、米は新たに吸水され難い状態である。この米のアミロース含有量及び蛋白質含有量が高い場合、特許文献1に開示された炊飯器は、米の吸水を促進させるような加熱体の制御を実行しない。つまり、吸水工程における容器に収容された水の温度が高くされない。米が低温の水を吸水することによって、割れ米の発生率が高くなるおそれがある。
【0011】
前記の一例からわかるように、米の保管状態によっては、米のアミロース含有量及び蛋白質含有量に基づいて決定された制御とは逆の制御を実行した方が良いことがある。このように、米に含まれる成分に基づいた制御には、更なる改善が求められる。
【0012】
そこで、本発明者らは、米の食味を良好に維持することができる炊飯器の構成を見出し、本開示に至った。
【0013】
本開示の第1態様の炊飯器は、
米及び水が収容される容器と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記容器に収容された水を前記容器に収容された米に吸水させる吸水工程、及び前記加熱部を制御して前記吸水工程において米に吸水されずに前記容器に残存する残水を沸騰させる沸騰維持工程を含む炊飯工程を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
米に含まれる水分含量と、米に含まれる蛋白質含量と、米に含まれるアミロース含量とを取得し、
前記水分含量と前記蛋白質含量と前記アミロース含量とに基づいて、前記吸水工程の実行時間と、前記吸水工程における前記容器に収容された水の水温と、前記沸騰維持工程における前記加熱部への供給電力との少なくとも1つを予め設定された値から変更する。
【0014】
この構成によれば、蛋白質含量及びアミロース含量だけでなく、2つの情報に水分含量を加えた3つの情報に基づいて、吸水工程の実行時間、吸水工程における容器内の水温、及び沸騰維持工程における加熱部への供給電力の制御値が変更される。つまり、水分含量を考慮して制御値を変更することができる。そのため、この構成によれば、蛋白質含量及びアミロース含量のみに基づいて制御値の変更がされる構成よりも、米の食味を良好に維持するように制御値を変更することができる。
【0015】
本開示の第2態様の炊飯器において、
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より大きいとの条件を満たし、且つ、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きいとの条件と前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きいとの条件との少なくとも一方を満たす場合に、前記吸水工程の前記実行時間を予め設定された時間より長くしてもよい。
【0016】
米に含まれる水分含量が大きい程、容器内の米への吸水が抑制される。そのため、この構成の水分含量に関する条件が満たされると、容器内の米への吸水が抑制される。また、米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量が大きい程、容器内の米は硬く粘りの少ない食感となる。そのため、この構成の蛋白質含量及びアミロース含量に関する条件が満たされると、容器内の米は硬く粘りの少ない食感となる。この場合、制御部が吸水工程の実行時間を長くする。これにより、容器内の米への吸水を多くすることができる。その結果、容器内の米を柔らかく粘りの多い食感とすることができる。
【0017】
本開示の第3態様の炊飯器において、
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より小さい場合に、前記加熱部を制御して前記吸水工程における前記容器に収容された水の前記水温を予め設定された温度より高くしてもよい。
【0018】
米に含まれる水分含量が小さい程、容器内の米が乾燥して硬くなる。そのため、この構成の水分含量に関する条件が満たされると、容器内に割れ米が多くなるおそれがある。この場合、制御部が吸水工程における容器内の水温を高くすることによって、容器内の割れ米を少なくすることができる。
【0019】
本開示の第4態様の炊飯器において、
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より小さい場合に、前記沸騰維持工程における前記加熱部への前記供給電力を予め設定された電力より低くしてもよい。
【0020】
米に含まれる水分含量が小さい程、容器内の米への吸水が促進される。そのため、この構成の水分含量に関する条件が満たされると、容器内の米への吸水が促進される。これにより、続く沸騰維持工程時に容器内の残水量が少なくなる。その結果、沸騰維持工程において、米の糊化が抑制される。この構成によれば、制御部が沸騰維持工程における加熱部への供給電力を低くする。これにより、沸騰維持工程の実行時間が長くなる。その結果、容器内の米の糊化を促進することができる。
【0021】
本開示の第5態様の炊飯器において、
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より小さく、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より小さく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より小さい場合に、前記吸水工程の前記実行時間を予め設定された時間より短くしてもよい。
【0022】
米に含まれる水分含量が小さい程、容器内の米への吸水が促進される。そのため、この構成の水分含量に関する条件が満たされると、容器内の米への吸水が促進される。また、米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量が小さい程、容器内の米は柔らかく粘りの多い食感となる。そのため、この構成の蛋白質含量及びアミロース含量に関する条件が満たされると、容器内の米は柔らかく粘りの多い食感となる。この場合、容器内の米への吸水が促進されると、容器内の米は過剰に柔らかく粘りの多い食感となる。よって、この場合、制御部が吸水工程の実行時間を短くする。これにより、容器内の米への過剰な吸水を抑制することができる。また、容器内の米が過剰に柔らかく粘りの多い食感となることを抑制することができる。
【0023】
本開示の第6態様の炊飯器において、
前記制御部は、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、前記吸水工程の前記実行時間を予め設定された時間より長くしてもよい。
【0024】
米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量が大きい程、容器内の米は硬く粘りの少ない食感となる。そのため、この構成の蛋白質含量及びアミロース含量に関する条件が満たされると、容器内の米は硬く粘りの少ない食感となる。この場合、制御部は吸水工程の実行時間を長くする。これにより、米への吸水量が増える。その結果、容器内の米が硬く粘りの少ない食感となることを抑制することができる。
【0025】
本開示の第7態様の炊飯器において、
前記制御部は、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、前記沸騰維持工程における前記加熱部への前記供給電力を予め設定された電力より低くしてもよい。
【0026】
米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量が大きい程、容器内の米は硬く粘りの少ない食感となる。そのため、この構成の蛋白質含量及びアミロース含量に関する条件が満たされると、容器内の米は硬く粘りの少ない食感となる。この場合、制御部は沸騰維持工程における加熱部への供給電力を低くする。これにより、沸騰維持工程の実行時間が長くなる。その結果、容器内の米の糊化が促進されることによって、容器内の米が硬く粘りの少ない食感となることを抑制することができる。
【0027】
本開示の第8態様の炊飯器は、
前記容器内と外部空間とを連通する穴を開閉可能に動作する圧力弁を更に備えていてもよく、
本開示の第8態様の炊飯器において、
前記炊飯工程は、蒸らし工程を更に含んでいてもよく、
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より大きく、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より小さく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より小さい場合に、前記沸騰維持工程及び前記蒸らし工程の少なくとも一方において、前記圧力弁を制御して、前記容器内の圧力を予め設定された値より低くする処理、及び前記容器内の圧力が前記外部空間より高くされる時間を予め設定された時間より短くする処理の少なくとも一方を実行してもよい。
【0028】
米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量が小さい程に米の柔らかく粘りの多い食感となり、水分含量が大きい程に容器内の米の含水量が大きくなる。そのため、この構成の各情報の条件が満たされると、容器内の米が過剰に柔らかく且つ過剰な粘りを有する。これにより、容器内の米の食感が悪化する。この場合、容器内の圧力を低くする処理及び容器内が加圧される時間を短くする処理の少なくとも一方が実行される。これにより、容器内の米を過剰な柔らかさ及び過剰な粘りを低減することができ、容器内の米の食感が改善する。
【0029】
本開示の第9態様の炊飯器は、
前記容器内と外部空間とを連通する穴を開閉可能に動作する圧力弁を更に備えていてもよく、
本開示の第9態様の炊飯器において、
前記炊飯工程は、蒸らし工程を更に含んでいてもよく、
前記制御部は、前記蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、前記沸騰維持工程及び前記蒸らし工程の少なくとも一方において、前記圧力弁を制御して、前記容器内の圧力を予め設定された値より高くする処理、及び前記容器内の圧力が前記外部空間より高くされる時間を予め設定された時間より長くする処理の少なくとも一方を実行してもよい。
【0030】
米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量の値が大きい程、米が硬く粘りの少ない食感となる。そのため、この構成の各情報の条件が満たされると、容器内の米が過剰に硬くなる。これにより、容器内の米の食感が悪化する。この場合、容器内の圧力を高くする処理及び容器内が加圧される時間を長くする処理の少なくとも一方が実行されることによって、容器内の米を柔らかくすることができ、容器内の米の粘りを増加させることができる。
【0031】
本開示の第10態様の炊飯器は、
前記容器内と外部空間とを連通する穴を開閉可能に動作する圧力弁を更に備えていてもよく、
本開示の第10態様の炊飯器において、
前記炊飯工程は、蒸らし工程を更に含んでいてもよく、
前記制御部は、前記水分含量が予め設定された水分閾値より小さく、且つ前記アミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、前記沸騰維持工程及び前記蒸らし工程の少なくとも一方において、前記圧力弁を制御して、前記容器内の圧力を予め設定された値より高くする処理、及び前記容器内の圧力が前記外部空間より高くされる時間を予め設定された時間より長くする処理の少なくとも一方を実行してもよい。
【0032】
水分含量の値が小さい程に容器内の米の含水量が小さくなり、米に含まれるアミロース含量の値が大きい程に米が硬く粘りの少ない食感となる。そのため、この構成の各情報の条件が満たされると、容器内の米が過剰に硬く且つ容器内の米の粘りが過剰に小さくなる。この場合、容器内の圧力を高くする処理及び容器内が加圧される時間を長くする処理の少なくとも一方が実行されることによって、容器内の米を柔らかくすることができ、容器内の米の粘りを増加させることができる。
【0033】
本開示の第11態様の炊飯器は、
外部との通信機能を有する通信部を更に備えていてもよく、
本開示の第11態様の炊飯器において、
前記制御部は、前記炊飯器とは別体で計測された前記水分含量、前記蛋白質含量、及び前記アミロース含量の少なくとも1つを、前記通信部を介して取得してもよい。
【0034】
この構成によれば、制御部は、炊飯器の外部から水分含量、蛋白質含量、及びアミロース含量を取得する。そのため、炊飯器の内部に水分含量、蛋白質含量、及びアミロース含量を測定する測定部を設ける必要がない。これにより、炊飯器を小型化することができる。
【0035】
(実施の形態1)
[炊飯器]
本開示に係る実施の形態1の炊飯器について説明する。
図1は、本開示に係る実施の形態1の炊飯器の斜視図である。
図2は、
図1のA-A断面を示す模式断面図である。
【0036】
図1及び
図2に示すように、実施の形態1に係る炊飯器100は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納され、米や水などの被調理物が入れられて収容される鍋2とを備えている。鍋2は、容器の一例である。炊飯器本体1の上部には、炊飯器本体1の上部開口部を開閉可能な中空構造の外蓋3が取り付けられている。外蓋3の内側(鍋2の上部開口部を覆う側)には、鍋2の上部開口部を密閉可能な略円盤状の内蓋4が着脱可能に取り付けられている。実施の形態1においては、外蓋3と内蓋4とで、鍋2の開口部を開閉自在に覆う蓋体が構成されている。
【0037】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、上枠1bとコイルベース1cとで構成されている。上枠1bは、収納された鍋2の側壁に対して所定の隙間が空くように配置される筒状部1baと、筒状部1baの上部から外方に突出し炊飯器本体1の上部開口部の内周部に嵌合するフランジ部1bbとを備えている。筒状部1baの上端は、鍋2の上部開口部の周囲に設けられたフランジ部2aを支持している。
【0038】
コイルベース1cは、鍋2の下部の形状に対応して有底筒状に形成され、その上部が上枠1bの筒状部1baの下端部に取り付けられている。コイルベース1cの外周面には、鍋2を加熱(誘導加熱)する加熱部5が取り付けられている。加熱部5は、底内加熱コイル5aと底外加熱コイル5bとで構成されている。底内加熱コイル5aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されている。底外加熱コイル5bは、コイルベース1cを介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。
【0039】
コイルベース1cの底部の中央部分には開口部が設けられている。当該開口部には、鍋2の温度を測定するための鍋温度センサ6が、鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に接触可能に配置されている。鍋2の温度は鍋2内の被調理物の温度と略同じであるので、鍋温度センサ6が鍋2の温度を検知することで、鍋2内の被調理物の温度を検知することができる。鍋温度センサ6は、鍋2に収容された水の温度を検知する水温検知部と言える。
【0040】
外蓋3は、外蓋3の外郭を構成する上外郭部材3aと下外郭部材3bとを備えている。また、外蓋3は、ヒンジ軸3Aを備えている。ヒンジ軸3Aは、外蓋3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部を回動自在に固定されている。ヒンジ軸3Aの周囲には、ねじりコイルばね7が取り付けられている。ねじりコイルばね7は、ヒンジ軸3Aを中心として外蓋3を鍋2の上部開口部から離れる方向(開方向)に弾性的に付勢する。
【0041】
外蓋3の内部には、蓋開放装置8が設けられている。蓋開放装置8は、炊飯器本体1の一部に係合することにより、外蓋3が鍋2の上部開口部を塞いだ状態を保持する。一方、蓋開放装置8は、外蓋3が鍋2の上部開口部を塞いだ状態で外蓋3に設けられた開蓋ボタン8Bが押圧されたとき、フック軸8Aを中心に矢印A1方向に回転する。これにより、蓋開放装置8と炊飯器本体1の一部との係合が外れ、外蓋3が、ねじりコイルばね7の付勢力によりヒンジ軸3Aを中心として鍋2の上部開口部から離れる方向に回転する。これにより、外蓋3が、鍋2の上部開口部を塞いでいない開状態になる。なお、外蓋3は、例えば、鍋2の上部開口部を塞いだ位置からヒンジ軸3Aを中心として90度回転すると、当該回転を停止するように構成されている。
【0042】
上外郭部材3aのヒンジ軸3Aの近傍には、凹部3dが設けられている。凹部3dには、蒸気筒9が着脱可能に取り付けられている。凹部3dの底部には、鍋2内の余分な蒸気を蒸気筒9に向けて排出できるように、蒸気逃がし穴3daが設けられている。蒸気筒9の上壁には、鍋2内の余分な蒸気を炊飯器の外部に排出できるように、蒸気逃がし穴9aが設けられている。鍋2内から蒸気逃がし穴9aまでの蒸気排出経路のいずれかの箇所に、蒸気の温度を検知する蒸気温度センサ(図示せず)が設けられている。
【0043】
内蓋4には、鍋2内の蒸気を排出するための蒸気排出穴4aと、鍋2内と蓋体内とを連通する蒸気排出穴4bとが設けられている。蓋体内は、鍋2内に対する外部空間である。蒸気排出穴4bは、穴の一例である。蒸気排出穴4bの直径は、蒸気排出穴4aの直径よりも大きく、例えば、蒸気排出穴4aの直径の2倍以上に設定されている。蒸気排出穴4aの直径は、例えば4mmであり、蒸気排出穴4bの直径は、例えば10mmである。
【0044】
また、内蓋4には、蒸気排出穴4aを開閉可能な圧力抑制弁10と、蒸気排出穴4bを開閉可能な圧力弁11とが設けられている。
【0045】
圧力抑制弁10は、鍋2内の圧力が大気圧より高い所定値(例えば、1.2気圧)以上に上昇することを抑制する弁である。本実施の形態において、圧力抑制弁10は、ボールにより構成され、自重により蒸気排出穴4aを閉塞する。一方、圧力抑制弁10は、鍋2内の圧力が自重よりも大きくなったとき(例えば、1.2気圧を超えたとき)、鍋2内の圧力のみに押されて蒸気排出穴4aから離れ、蒸気排出穴4aを開放する。なお、圧力抑制弁10は、蒸気排出穴4aを閉塞する閉塞部材と、蒸気排出穴4aを閉塞するように閉塞部材を付勢するバネとで構成されてもよい。この構成によれば、鍋2内の圧力が大気圧より高い所定値以上に上昇したとき、当該圧力によりバネの付勢力に抗して閉塞部材が移動し、蒸気排出穴4aが開放される。
【0046】
圧力弁11は、蒸気排出穴4bを閉塞する閉塞位置と蒸気排出穴4bを開放する開放位置との間で移動するように構成されている。
【0047】
外蓋3には、蒸気排出穴4bを開閉するように圧力弁11を閉塞位置と開放位置との間で移動させる圧力弁移動機構12が設けられている。圧力弁移動機構12は、圧力弁11を所定値(例えば、1.2気圧)よりも大きな圧力で圧力弁11を押圧して、圧力弁11を閉塞位置で保持するように構成されている。これにより、鍋2内の圧力を昇圧(例えば、1.0気圧から1.2気圧に昇圧)することができる。また、圧力弁移動機構12は、鍋2内の圧力が所定値(例えば、1.2気圧)以上になった所定のタイミングで、後述する制御部14の制御により、圧力弁11を閉塞位置から開放位置に移動させるように構成されている。これにより、鍋2内の圧力を減圧(例えば、1.2気圧から1.0気圧に減圧)させることができる。なお、圧力弁移動機構12の具体的な構成については、従来の圧力弁移動機構と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0048】
外蓋3には、表示操作部13が設けられている。表示操作部13は、ディスプレイ13Aと、複数のボタン13Bとを備えている。ディスプレイ13Aには、炊飯時間、鍋2に収容された米の成分、鍋2に収容された水の水温などの各種情報が表示される。複数のボタン13Bが操作されることによって、炊飯の開始、取り消し、予約などの実行が指示される。また、複数のボタン13Bが操作されることによって、鍋2に収容された米の銘柄や成分などの各種情報が入力される。なお、ディスプレイ13Aは、タッチパネルであってもよい。この場合、ディスプレイ13Aは、各種情報の表示の機能に加えて、複数のボタン13Bと同様の機能を有する。ディスプレイ13Aがタッチパネルである場合、表示操作部13は、ボタン13Bを備えていなくてもよい。
【0049】
炊飯器本体1の内部には、炊飯器100の動作を制御する制御部14と、記憶部15とが搭載されている。実施の形態1において、制御部14及び記憶部15は、プリント基板に実装された電子部品として構成されている。
図1において、制御部14は、上外郭部材3aのヒンジ軸3Aの下方に設けられているが他の位置に設けられていてもよい。なお、
図1において、記憶部15の図示は省略されている。記憶部15は、
図3に示されている。
【0050】
炊飯器100の動作は、例えば、吸水工程、沸騰維持工程、及び蒸らし工程を含む炊飯工程である。吸水工程は、鍋2に収容された水を鍋2に収容された米に吸水させる工程である。沸騰維持工程は、吸水工程において米に吸水されずに鍋2に残存する残水を沸騰させる工程である。蒸らし工程は、鍋2に収容された米の内部まで熱を通す工程である。制御部14による炊飯工程の実行は、後述される。
【0051】
図3に示す制御部14は、例えば、
図3に示す記憶部15に記憶されたプログラムを読み込んで実行するプロセッサを備えている。
図3は、炊飯器のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【0052】
制御部14は様々な態様で実現可能である。例えば、制御部14として、ソフトウェアと協働して所定の機能を実現するプロセッサを用いてもよい。制御部14としてプロセッサを用いれば、制御部14は、プログラムを格納している記憶部15からプログラムを読み込んでこれを実行することで、各種処理を実行することができる。記憶部15に格納されたプログラムを変更することで処理内容を変更できるので、制御内容の変更の自由度を高めることができる。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、及び、MPU(Micro-Processing Unit)を含む。また、制御部14としてプログラムの書き換えが不可能なワイヤードロジックを用いてもよい。制御部14としてワイヤードロジックを用いれば、処理速度の向上に有効である。ワイヤードロジックとしては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等がある。また、制御部14は、プロセッサとワイヤードロジックとを組み合わせて実現されてもよい。制御部14を、プロセッサとワイヤードロジックとを組み合わせて実現すれば、ソフトウェア設計の自由度を高めつつ、処理速度を向上することができる。また、制御部14と、制御部14と別の機能を有する回路とを、1つの半導体素子で構成してもよい。別の機能を有する回路としては、例えば、A/D・D/A変換回路などがある。また、制御部14は、1つの半導体素子で構成されてもよいし、複数の半導体素子で構成されてもよい。複数の半導体素子で構成する場合、特許請求の範囲に記載の各制御を、互いに異なる半導体素子で実現してもよい。さらに、半導体素子と抵抗、コンデンサなどの受動部品とを含む構成によって制御部14が構成されてもよい。
【0053】
図3に示すように、制御部14は、加熱部5を制御して鍋2を加熱する。これにより、鍋2と鍋2内の米及び水等の被調理物とが加熱される。また、制御部14は、圧力弁移動機構12を制御する。これにより、圧力弁11が閉塞位置と開放位置との間で移動する。また、制御部14は、鍋温度センサ6から鍋2の温度の情報を取得する。また、制御部14は、後述する成分含量測定部16から、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量の情報を取得する。
【0054】
米に含まれる水分の含量は、米の保管状態に依存する。例えば、米が湿度の高い室内に保管されている場合、米に含まれる水分の含量は多くなり、米が湿度の低い室内に保管されている場合、米に含まれる水分の含量は少なくなる。米に含まれる水分の含量が少ない程、吸水工程において米への吸水が促進されて吸水量が多くなる。また、米に含まれる水分の含量が少ない程、吸水工程における割れ米の発生率が高くなる。米に含まれる水分の含量は、米の保管状態を表す保管情報であると言える。
【0055】
米に含まれる蛋白質の含量と、米に含まれるアミロースの含量は、米の素性を表す。米に含まれる蛋白質の含量と、米に含まれるアミロースの含量とは、素性情報であると言える。
【0056】
米に含まれる蛋白質の含量は、米の素性のうち、主に、育成状態に依存する。例えば、米に含まれる蛋白質の含量は、主に、窒素肥料の施肥量に依存する。米に施肥された窒素肥料の量が多い程、米に含まれる蛋白質の含量は多くなる。米に含まれる蛋白質の含量が多い場合、吸水工程において米の吸水が阻害され、米は硬く粘りの少ない食感となる。米に含まれる蛋白質の含量は、素性情報のうちの育成状態を表す育成状態情報であるとも言える。
【0057】
米に含まれるアミロースの含量は、米の素性のうち、主に、品種特性に依存する。例えば、米に含まれるアミロースの含量は、米の品種毎に異なる。米に含まれるアミロースの含量が多い場合、米は硬く粘りの少ない食感となる。米に含まれるアミロースの含量は、素性情報のうちの遺伝的性質を表す遺伝的性質情報であるとも言える。
【0058】
記憶部15は、炊飯器100の機能を実現するために必要なプログラム及びデータを含む種々の情報を記録する記録媒体である。記憶部15は、例えば、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)などの半導体メモリ装置、ハードディスク等の磁気記憶装置、その他の記憶デバイス単独で又はそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶部15は、種々の情報を一時的に記憶する高速動作可能なSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリを含んでもよい。
【0059】
実施の形態1では、記憶部15に、水分閾値、蛋白質閾値、及びアミロース閾値が記憶されている。水分閾値は、制御部14が取得した米に含まれる水分の含量の情報と比較される。蛋白質閾値は、制御部14が取得した米に含まれる蛋白質の含量の情報と比較される。アミロース閾値は、制御部14が取得した米に含まれるアミロースの含量の情報と比較される。水分閾値、蛋白質閾値、及びアミロース閾値は、多くの実験等によって予め決定される。実施の形態1では、水分閾値は12(%)であり、蛋白質閾値は6.7(%)であり、アミロース閾値は15(%)に決定されている。もちろん、水分閾値、蛋白質閾値、及びアミロース閾値は、前記の値に限らない。
【0060】
図4は、米に含まれる各成分の含量に対する吸水工程の時間と吸水工程時の水温と沸騰維持工程時の加熱部への供給電力と沸騰維持工程時及び蒸らし工程の鍋2内の圧力とを示す表である。制御部14は、
図4に従って、取得した米に含まれる水分、蛋白質、アミロースの各含量を、水分閾値、蛋白質閾値、及びアミロース閾値の各々と比較する。制御部14は、比較結果に応じて、吸水工程の実行時間と吸水工程時の鍋2内の水温と沸騰維持工程時の加熱部への供給電力と沸騰維持工程時及び蒸らし工程時の鍋2内の圧力とを決定する。沸騰維持工程時及び蒸らし工程時の鍋2内の圧力は、沸騰維持工程時及び蒸らし工程時に圧力弁11が閉塞位置とされることによって大気圧より上昇された圧力のことである。以下、吸水工程の実行時間、吸水工程時の鍋2内の水温、沸騰維持工程時の加熱部への供給電力、及び沸騰維持工程時及び蒸らし工程時の鍋2内の圧力は、制御値とも称される。制御部14による
図4に従った処理は、後述される。
【0061】
実施の形態1では、
図2に示すように、炊飯器本体1の内部に、成分含量測定部16が搭載されている。実施の形態1では、成分含量測定部16は、近赤外分光法によって、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量を検出する。なお、成分含量測定部16は、近赤外分光法以外の公知の手段によって、前記の各含量を検出してもよい。
【0062】
成分含量測定部16は、米が収容される筐体と、筐体内へ近赤外線光を照射する光源と、光源から照射され光を検出する検出器とを備える。
【0063】
筐体に収容された米へ向けて、光源から近赤外線光が照射される。検出器は、光源から照射されて筐体内の米において反射した光と光源から照射されて筐体内の米を透過した光との少なくとも一方の光量を検出する。検出器が検出した光量が予め設定された検量モデルに基づいて米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量に変換される。検量モデルは、多数のサンプル米に対する実験によって設定される。
【0064】
実施の形態1において、光量の変換は、成分含量測定部16において実行される。この場合、変換された水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量の情報が制御部14へ出力される。なお、光量の情報への変換は、制御部14において実行されてもよい。制御部14において光量の情報への変換が実行される場合、検出器が検出した光量の情報が制御部14へ出力される。いずれの場合においても、制御部14は、水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量の情報を取得する。
【0065】
実施の形態1では、米は、成分含量測定部16の筐体へ収容されて、水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量を測定された後、手動で鍋2へ移される。なお、筐体から鍋2への米の移送は、以下に例示するような手段によって、炊飯器100によって自動で実行されてもよい。筐体と鍋2とは、管状の送米路によって連通されている。送米路に、ファンが設けられている。制御部14によってファンが駆動されると、送米路内に筐体から鍋2へ向かう空気の流れが形成される。これにより、筐体内の米は送米路へ送り出され鍋2へと送られる。
【0066】
以下、制御部14の制御によって実行される炊飯器100の炊飯工程が説明される。制御部14は、炊飯指示の情報を制御部14の外部から取得すると、炊飯工程を開始する。例えば、炊飯指示の情報は、表示操作部13を介したユーザによる炊飯指示の入力によって制御部14へ送られる。また、例えば、炊飯指示の情報は、スマートフォン及びパーソナルコンピュータ等の外部機器においてユーザによって入力された炊飯指示が、外部機器から炊飯器100の制御部14へ送られてもよい。この場合、炊飯器100と外部機器とは、有線または無線により通信可能に構成されている。
【0067】
図5は、炊飯工程の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、炊飯工程は、前記のような炊飯指示を受け付けると(S10)、実行開始される。炊飯工程は、吸水工程S40と、沸騰維持工程S50と、蒸らし工程S60とを含む。
【0068】
制御部14は、炊飯指示を受け付けると(S10)、吸水工程S40の実行前に、ステップS20,S30を実行する。なお、炊飯指示が実行される前に、米は、成分含量測定部16の筐体から鍋2へ移されており、鍋2に収容された米の量に応じた量の水が鍋2へ入れられている。
【0069】
ステップS20において、制御部14は、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量の情報を、成分含量測定部16から取得する。
【0070】
ステップS30において、制御部14は、吸水工程の実行時間と、吸水工程時の鍋2内の水温と、沸騰維持工程時の加熱部5への供給電力と、沸騰維持工程時及び蒸らし工程時の鍋2内の圧力とを決定する。以下に詳述する。
【0071】
吸水工程の実行時間の標準値は、例えば、米及び水の量、米を柔らかく炊くか硬く炊くかといった米の炊き方等に応じて、決定される。吸水工程時の鍋2内の水温と、沸騰維持工程時の加熱部5への供給電力と、沸騰維持工程時及び蒸らし工程時の鍋2内の圧力との各標準値も、同様にして決定される。実施の形態1では、これらの各標準値が、ステップS20において取得された情報に基づいて変更され得る。各標準値は、あらかじめ設定された値の一例である。制御部14は、以下に詳述するように、
図4の表に従って、前記の変更を実行する。
【0072】
図4の条件1を満たす場合、制御部14は、吸水工程の実行時間(以下、実行時間とも記す。)を標準の実行時間に維持する。また、制御部14は、吸水工程時の鍋2内の水の温度(以下、水温とも記す。)を標準の水温に維持する。また、制御部14は、沸騰維持工程時の加熱部5への供給電力(以下、供給電力とも記す。)を標準の供給電力に維持する。また、制御部14は、沸騰維持工程時及び蒸らし工程時の鍋2内の圧力(以下、圧力とも記す。)を標準の圧力より低くする。条件1は、以下の通りである。つまり、水分の含量が水分閾値より高く、蛋白質の含量が蛋白質閾値より低く、且つアミロースの含量がアミロース閾値より低い。
【0073】
なお、条件1及び以下で説明される条件2~8において、制御部14は、圧力を標準の圧力より高くする代わりに、または圧力を標準の圧力より高くすることに加えて、圧力を標準の圧力に維持する時間を通常時間より長くしてもよい。前記の通常時間は、圧力が標準の圧力に維持されるときに、沸騰維持工程時及び蒸らし工程時に圧力弁11が閉塞位置とされる時間である。通常時間は、あらかじめ設定された時間の一例である。
【0074】
また、条件1及び以下で説明される条件2~8において、制御部14は、圧力を標準の圧力より低くする代わりに、または圧力を標準の圧力より低くすることに加えて、圧力を標準の圧力に維持する時間を通常時間より短くしてもよい。
【0075】
また、条件1及び以下で説明される条件2~8において、各含量が各閾値と等しい場合、各含量が各閾値より高いとみなしてもよいし、各含量が各閾値より低いとみなしてもよい。
【0076】
図4の条件2を満たす場合、制御部14は、実行時間を標準の実行時間より長くする。また、制御部14は、水温を標準の水温に維持する。また、制御部14は、供給電力を標準の供給電力に維持する。また、制御部14は、圧力を標準の圧力に維持する。条件2は、以下の通りである。つまり、水分の含量が水分閾値より高く、蛋白質の含量が蛋白質閾値より低く、且つアミロースの含量がアミロース閾値より高い。
【0077】
図4の条件3を満たす場合、制御部14は、実行時間を標準の実行時間より長くする。また、制御部14は、水温を標準の水温に維持する。また、制御部14は、供給電力を標準の供給電力に維持する。また、制御部14は、圧力を標準の圧力に維持する。条件3は、以下の通りである。つまり、水分の含量が水分閾値より高く、蛋白質の含量が蛋白質閾値より高く、且つアミロースの含量がアミロース閾値より低い。
【0078】
図4の条件4を満たす場合、制御部14は、実行時間を標準の実行時間より長くする。また、制御部14は、水温を標準の水温に維持する。また、制御部14は、供給電力を標準の供給電力より低くする。また、制御部14は、圧力を標準の圧力より高くする。条件4は、以下の通りである。つまり、水分の含量が水分閾値より高く、蛋白質の含量が蛋白質閾値より高く、且つアミロースの含量がアミロース閾値より高い。
【0079】
図4の条件5を満たす場合、制御部14は、実行時間を標準の実行時間より短くする。また、制御部14は、水温を標準の水温より高くする。また、制御部14は、供給電力を標準の供給電力より低くする。また、制御部14は、圧力を標準の圧力に維持する。条件5は、以下の通りである。つまり、水分の含量が水分閾値より低く、蛋白質の含量が蛋白質閾値より低く、且つアミロースの含量がアミロース閾値より低い。
【0080】
図4の条件6を満たす場合、制御部14は、実行時間を標準の実行時間に維持する。また、制御部14は、水温を標準の水温より高くする。また、制御部14は、供給電力を標準の供給電力より低くする。また、制御部14は、圧力を標準の圧力より高くする。条件6は、以下の通りである。つまり、水分の含量が水分閾値より低く、蛋白質の含量が蛋白質閾値より低く、且つアミロースの含量がアミロース閾値より高い。
【0081】
図4の条件7を満たす場合、制御部14は、実行時間を標準の実行時間に維持する。また、制御部14は、水温を標準の水温より高くする。また、制御部14は、供給電力を標準の供給電力より低くする。また、制御部14は、圧力を標準の圧力に維持する。条件7は、以下の通りである。つまり、水分の含量が水分閾値より低く、蛋白質の含量が蛋白質閾値より高く、且つアミロースの含量がアミロース閾値より低い。
【0082】
図4の条件8を満たす場合、制御部14は、実行時間を標準の実行時間より長くする。また、制御部14は、水温を標準の水温より高くする。また、制御部14は、供給電力を標準の供給電力より低くする。また、制御部14は、圧力を標準の圧力より高くする。条件8は、以下の通りである。つまり、水分の含量が水分閾値より低く、蛋白質の含量が蛋白質閾値より高く、且つアミロースの含量がアミロース閾値より高い。
【0083】
図6は、炊飯工程における鍋内の温度、加熱部の電力量、鍋内の圧力、及び圧力弁の開閉状態の関係を示すグラフである。
【0084】
図5及び
図6に示すように、吸水工程S40において、制御部14は、加熱部5を制御して鍋2を加熱する。このとき、制御部14は、ステップS30において決定したように、鍋2内の水温を、標準に維持する、高くする、または低くする。制御部14は、鍋2内の水温を、標準に維持された温度又は変更された温度に保ち、米に吸水させる。なお、このときの温度は、糊化温度以下(例えば55度)に保たれる。制御部14は、鍋2内の温度を、鍋温度センサ6から入力された情報に基づいて認識する。また、制御部14は、吸水工程S40をステップS30において標準に維持された時間又は変更された時間だけ実行する。
【0085】
次の沸騰維持工程S50において、制御部14は、加熱部5を制御して吸水工程S40のときより強く鍋2を加熱し、鍋2内の温度を上昇させ、鍋2内を沸騰状態に移行させる。
【0086】
その後、制御部14は、加熱部5を制御して、鍋2内の温度を上昇させたときより弱く鍋2を加熱する。但し、加熱部5による加熱強度は、鍋2内の水の沸騰が維持される程度に保たれる。
【0087】
沸騰維持工程S50において、制御部14は、ステップS30において標準に維持された電力または変更された電力を加熱部5に供給する。加熱部5に供給される電力が低く変更されている場合、加熱部5に標準の電力が供給される場合より、鍋2内が沸騰状態となるまでの時間が長くなる。逆に、加熱部5に供給される電力が高く変更されている場合、加熱部5に標準の電力が供給される場合より、鍋2内が沸騰状態となるまでの時間が短くなる。
【0088】
沸騰維持工程S50において、制御部14は、圧力弁移動機構12を制御して、圧力弁11を開閉させる。圧力弁11が閉じられることにより、鍋2内の圧力が上昇する。このとき、制御部14は、ステップS30において鍋2内の圧力が標準に維持されている場合に、鍋2内の圧力を標準の圧力まで上昇させる。一方、制御部14は、ステップS30において鍋2内の圧力が変更されている場合に、鍋2内の圧力を変更された圧力まで上昇させる。なお、
図6では、圧力弁11が3回閉じられることによって、鍋2内の圧力が3回上昇しているが、圧力弁11が閉じられる回数は3回に限らない。圧力弁11が開かれると、鍋2内の圧力が一気に大気圧近傍まで低下し、突沸が発生する。突沸によって生じた泡によって、米粒が攪拌される。
【0089】
制御部14は、例えば、圧力弁11を閉塞位置とする時間を長くすることにより、または圧力弁11を閉塞位置とするインターバルを短くすることにより、鍋2内の圧力を高くする。逆に、制御部14は、圧力弁11を閉塞位置とする時間を短くすることにより、または圧力弁11を閉塞位置とするインターバルを長くすることにより、鍋2内の圧力を低くする。
【0090】
鍋2内の水が米に吸収されること及び沸騰することによって、鍋2内の水が無くなると、加熱によって鍋2内の温度は上昇して水の沸点(100℃)より高くなる。制御部14は、鍋2内の温度が水の沸点より高い温度(例えば130℃)に達すると、加熱部5を制御して、鍋2の加熱を停止する。この鍋2の加熱が停止されている期間が蒸らし工程S60である。
【0091】
蒸らし工程S60において、制御部14は、圧力弁11を短時間閉じると共に、加熱部5を制御して鍋2を短時間加熱する。これにより、鍋2を上方から覆う内蓋4の下面に付着している水滴が気化する。実施の形態1において、制御部14は、蒸らし工程S60においても、沸騰維持工程S50と同様に、鍋2内の圧力を、ステップS30において標準に維持された圧力または変更された圧力とする。
【0092】
なお、制御部14は、沸騰維持工程S50及び蒸らし工程S60の一方で圧力を変更する一方で、沸騰維持工程S50及び蒸らし工程S60の他方で圧力を変更しなくてもよい。つまり、制御部14は、沸騰維持工程S50及び蒸らし工程S60の少なくとも一方において、鍋2内の圧力を標準の圧力から変更し得る。
【0093】
[効果]
実施の形態1の炊飯器100によれば、以下の効果を奏することができる。
【0094】
炊飯器100は、米及び水が収容される鍋2と、鍋2を加熱する加熱部5と、鍋2に収容された水を鍋2に収容された米に吸水させる吸水工程、及び加熱部5を制御して吸水工程において米に吸水されずに鍋2に残存する残水を沸騰させる沸騰維持工程を含む炊飯工程を行う制御部14と、を備える。制御部14は、米に含まれる水分含量と、米に含まれる蛋白質含量と、米に含まれるアミロース含量とを取得し、水分含量と蛋白質含量とアミロース含量とに基づいて、吸水工程の実行時間と、吸水工程における鍋2に収容された水の水温と、沸騰維持工程における加熱部5への供給電力との少なくとも1つを予め設定された値から変更する。
【0095】
この構成によれば、蛋白質含量及びアミロース含量だけでなく、2つの情報に水分含量を加えた3つの情報に基づいて、吸水工程の実行時間、吸水工程における鍋2内の水温、及び沸騰維持工程における加熱部5への供給電力の制御値が変更される。つまり、水分含量を考慮して制御値を変更することができる。そのため、この構成によれば、蛋白質含量及びアミロース含量のみに基づいて制御値の変更がされる構成よりも、米の食味を良好に維持するように制御値を変更することができる。
【0096】
制御部14は、水分含量が予め設定された水分閾値より大きいとの条件を満たし、且つ、蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きいとの条件とアミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きいとの条件との少なくとも一方を満たす場合に、吸水工程の実行時間を予め設定された時間より長くする(条件1~3)。
【0097】
米に含まれる水分含量が大きい程、鍋2内の米への吸水が抑制される。そのため、この構成の水分含量に関する条件が満たされると、鍋2内の米への吸水が抑制される。また、米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量が大きい程、鍋2内の米は硬く粘りの少ない食感となる。そのため、この構成の蛋白質含量及びアミロース含量に関する条件が満たされると、鍋2内の米は硬く粘りの少ない食感となる。この場合、制御部14が吸水工程の実行時間を長くする。これにより、鍋2内の米への吸水を多くすることができる。その結果、鍋2内の米を柔らかく粘りの多い食感とすることができる。
【0098】
制御部14は、水分含量が予め設定された水分閾値より小さい場合に、加熱部5を制御して吸水工程における鍋2に収容された水の水温を予め設定された温度より高くする(条件4~7)。
【0099】
米に含まれる水分含量が小さい程、鍋2内の米が乾燥して硬くなる。そのため、この構成の水分含量に関する条件が満たされると、鍋2内に割れ米が多くなるおそれがある。この場合、制御部14が吸水工程における鍋2内の水温を高くすることによって、鍋2内の割れ米を少なくすることができる。
【0100】
制御部14は、水分含量が予め設定された水分閾値より小さい場合に、沸騰維持工程における加熱部5への供給電力を予め設定された電力より低くする(条件4~7)。
【0101】
米に含まれる水分含量が小さい程、鍋2内の米への吸水が促進される。そのため、この構成の水分含量に関する条件が満たされると、鍋2内の米への吸水が促進される。これにより、続く沸騰維持工程時に鍋2内の残水量が少なくなる。その結果、沸騰維持工程において、米の糊化が抑制される。この構成によれば、制御部14が沸騰維持工程における加熱部5への供給電力を低くする。これにより、沸騰維持工程の実行時間が長くなる。その結果、鍋2内の米の糊化を促進することができる。
【0102】
制御部14は、水分含量が予め設定された水分閾値より小さく、蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より小さく、且つアミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より小さい場合に、吸水工程の実行時間を予め設定された時間より短くする(条件4)。
【0103】
米に含まれる水分含量が小さい程、鍋2内の米への吸水が促進される。そのため、この構成の水分含量に関する条件が満たされると、鍋2内の米への吸水が促進される。また、米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量が小さい程、鍋2内の米は柔らかく粘りの多い食感となる。そのため、この構成の蛋白質含量及びアミロース含量に関する条件が満たされると、鍋2内の米は柔らかく粘りの多い食感となる。この場合、鍋2内の米への吸水が促進されると、鍋2内の米は過剰に柔らかく粘りの多い食感となる。よって、この場合、制御部14が吸水工程の実行時間を短くする。これにより、鍋2内の米への過剰な吸水を抑制することができる。また、鍋2内の米が過剰に柔らかく粘りの多い食感となることを抑制することができる。
【0104】
制御部14は、蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きく、且つアミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、吸水工程の実行時間を予め設定された時間より長くする(条件3,7)。
【0105】
米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量が小さい程、鍋2内の米は硬く粘りの少ない食感となる。そのため、この構成の蛋白質含量及びアミロース含量に関する条件が満たされると、鍋2内の米は硬く粘りの少ない食感となる。この場合、制御部14は吸水工程の実行時間を長くする。これにより、米への吸水量が増える。その結果、鍋2内の米が硬く粘りの少ない食感となることを抑制することができる。
【0106】
制御部14は、蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きく、且つアミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、沸騰維持工程における加熱部5への供給電力を予め設定された電力より低くする(条件3,7)。
【0107】
米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量が大きい程、鍋2内の米は硬く粘りの少ない食感となる。そのため、この構成の蛋白質含量及びアミロース含量に関する条件が満たされると、鍋2内の米は硬く粘りの少ない食感となる。この場合、制御部14は沸騰維持工程における加熱部5への供給電力を低くする。これにより、沸騰維持工程の実行時間が長くなる。その結果、鍋2内の米の糊化が促進されることによって、鍋2内の米が硬く粘りの少ない食感となることを抑制することができる。
【0108】
炊飯器100は、鍋2内と外部空間とを連通する蒸気排出穴4bを開閉可能に動作する圧力弁11を更に備える。炊飯工程は、蒸らし工程を更に含む。制御部14は、水分含量が予め設定された水分閾値より大きく、蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より小さく、且つアミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より小さい場合に、沸騰維持工程及び蒸らし工程の少なくとも一方において、圧力弁11を制御して、鍋2内の圧力を予め設定された値より低くする処理、及び鍋2内の圧力が外部空間より高くされる時間を予め設定された時間より短くする処理の少なくとも一方を実行する(条件1)。
【0109】
米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量が小さい程に米の柔らかく粘りの多い食感となり、水分含量が大きい程に鍋2内の米の含水量が大きくなる。そのため、この構成の各情報の条件が満たされると、鍋2内の米が過剰に柔らかく且つ過剰な粘りを有する。これにより、鍋2内の米の食感が悪化する。この場合、鍋2内の圧力を低くする処理及び鍋2内が加圧される時間を短くする処理の少なくとも一方が実行される。これにより、鍋2内の米を過剰な柔らかさ及び過剰な粘りを低減することができ、鍋2内の米の食感が改善する。
【0110】
炊飯器100は、鍋2内と外部空間とを連通する蒸気排出穴4bを開閉可能に動作する圧力弁11を更に備える。炊飯工程は、蒸らし工程を更に含む。制御部14は、蛋白質含量が予め設定された蛋白質閾値より大きく、且つアミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、沸騰維持工程及び蒸らし工程の少なくとも一方において、圧力弁11を制御して、鍋2内の圧力を予め設定された値より高くする処理、及び鍋2内の圧力が外部空間より高くされる時間を予め設定された時間より長くする処理の少なくとも一方を実行する(条件3,7)。
【0111】
米に含まれる蛋白質含量及びアミロース含量の値が大きい程、米が硬く粘りの少ない食感となる。そのため、この構成の各情報の条件が満たされると、鍋2内の米が過剰に硬くなる。これにより、鍋2内の米の食感が悪化する。この場合、鍋2内の圧力を高くする処理及び鍋2内が加圧される時間を長くする処理の少なくとも一方が実行されることによって、鍋2内の米を柔らかくすることができ、鍋2内の米の粘りを増加させることができる。
【0112】
炊飯器100は、鍋2内と外部空間とを連通する蒸気排出穴4bを開閉可能に動作する圧力弁11を更に備える。炊飯工程は、蒸らし工程を更に含む。制御部14は、水分含量が予め設定された水分閾値より小さく、且つアミロース含量が予め設定されたアミロース閾値より大きい場合に、沸騰維持工程及び蒸らし工程の少なくとも一方において、圧力弁11を制御して、鍋2内の圧力を予め設定された値より高くする処理、及び鍋2内の圧力が外部空間より高くされる時間を予め設定された時間より長くする処理の少なくとも一方を実行する(条件5,7)。
【0113】
水分含量の値が小さい程に鍋2内の米の含水量が小さくなり、米に含まれるアミロース含量の値が大きい程に米が硬く粘りの少ない食感となる。そのため、この構成の各情報の条件が満たされると、鍋2内の米が過剰に硬く且つ鍋2内の米の粘りが過剰に小さくなる。この場合、鍋2内の圧力を高くする処理及び鍋2内が加圧される時間を長くする処理の少なくとも一方が実行されることによって、鍋2内の米を柔らかくすることができ、鍋2内の米の粘りを増加させることができる。
【0114】
実施の形態1では、制御部14は、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量の情報に基づいて、標準の実行時間、標準の水温、標準の供給電力、及び標準の圧力の各標準値、つまり4つの標準値を変更している。しかし、制御部14は、3つ以下の標準値を変更してもよい。例えば、制御部14は、標準の実行時間及び標準の水温のみを変更し、標準の供給電力及び標準の圧力を変更しなくてもよい。また、例えば、制御部14は、標準の供給電力のみを変更し、他の3つの標準値を変更しなくてもよい。以上より、制御部14は、実行時間、水温、供給電力、及び圧力の少なくとも1つの標準値を変更してもよい。
【0115】
実施の形態1では、制御部14は、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量を、成分含量測定部16から取得している。しかし、制御部14は、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量を、成分含量測定部16以外から取得してもよい。
【0116】
例えば、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量がユーザによって表示操作部13を介して入力され、制御部14は入力された当該含量を取得してもよい。当該含量は、例えば
図7に示すような米の包装袋17の米銘柄表記171の欄に示されている。
図7は、米包装袋を模式的に示す図である。
【0117】
また、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量は、必ずしもユーザによって入力される必要はない。例えば、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量は、バーコードやQR(Quick Response)コードに含まれており、これらのコードが読み取られることによって、当該含量が制御部14によって取得されてもよい。
【0118】
また、制御部14は、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量を、炊飯器100の外部から取得してもよい。これらの例は、実施の形態2において説明される。
【0119】
実施の形態1では、成分含量測定部16で水分、蛋白質、及びアミロースの各含量を測定された米が、鍋2へ移送される。しかし、成分含量測定部16が鍋2に設けられていてもよい。この場合、例えば、成分含量測定部16の光源と検出器とが内蓋4等に設けられ、光源から鍋2に収容された米へ向けて光が照射される。よって、含量の測定後に米を移送する必要がない。
【0120】
(実施の形態2)
図8を参照しながら、実施の形態2の炊飯器が説明される。
図8は、本開示に係る実施の形態2の炊飯器と米保管器とを模式的に示す図である。以下の説明では、実施の形態1と同一又は同等の構成は、同じ符号を付して説明される。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略される。
【0121】
実施の形態2の炊飯器100Aが実施の形態1の炊飯器100と異なる点は、制御部14が炊飯器100Aの外部から制御値を取得する点である。
【0122】
図8に示すように、炊飯器100Aは、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロース等の含量である制御値を、炊飯器100Aの外部に設置された米保管器200から取得する。そのため、炊飯器100Aは、成分含量測定部16を備えている必要はない。炊飯器100Aは、外部からの制御値の取得のために、無線通信部181を備える。無線通信部は、通信部の一例である。
【0123】
米保管器200は、米が収容される筐体201と、筐体201の上部開口部を開閉可能な蓋202とを備える。米保管器200は、別体の一例である。また、米保管器200は、成分含量測定部16Aと、無線通信部182とを備える。
図8に示す例では、成分含量測定部16Aは筐体201に設けられ、無線通信部182は蓋202に設けられているが、これに限らない。例えば、無線通信部182は、筐体201に設けられていてもよい。
【0124】
成分含量測定部16Aは、筐体201に収容された米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各含量を検出する。成分含量測定部16Aは、実施の形態1において炊飯器100に設けられた成分含量測定部16と同様に、近赤外分光法によって前記の各含量を検出してもよいし、近赤外分光法以外の公知の手段によって前記の各含量を検出してもよい。
【0125】
無線通信部181,182は、外部との通信機能を有しており、例えばBluetooth(登録商標)、RFID(Radio Frequency Identifier)等の無線通信規格に準拠する無線通信方式によって制御信号を送受信する。これにより、無線通信部181,182は、互いに情報を送受信することができる。実施の形態2では、無線通信部182が、成分含量測定部16Aによって検出された米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量を、炊飯器100Aの無線通信部181に送信する。制御部14は、無線通信部181が受信した前記の各含量を取得する。つまり、制御部14は、炊飯器100Aとは別体である米保管器200で計測された水分、蛋白質、及びアミロースの各々の含量を、無線通信部181を介して取得する。
【0126】
なお、炊飯器100Aと米保管器200とは、無線ではなく有線で互いに情報を送受信してもよい。また、制御部14は、水分、蛋白質、及びアミロースのうちの一部の含量を米保管器200から取得し、水分、蛋白質、及びアミロースのうちの残りの含量を炊飯器100Aに設けられた成分含量測定部16から取得してもよい。
【0127】
図8では、炊飯器100Aは、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロース等の含量である制御値を、炊飯器100Aの外部に設置された米保管器200から取得する。しかし、炊飯器100Aへ制御値を送信するものは、
図8に示すような米保管器200に限らない。例えば、
図9に示すような計量器300が、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロース等の含量である制御値を、炊飯器100Aへ送信してもよい。言い換えると、炊飯器100Aは、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロース等の含量である制御値を、炊飯器100Aの外部に設置された計量器300から取得してもよい。この場合、計量器300が別体に相当する。
図9は、本開示に係る実施の形態2の炊飯器と米計量器とを模式的に示す図である。
【0128】
計量器300は、筐体301と、筐体301に設けられた重量計量部302とを備える。重量計量部302は、公知の手段によって重量計量部302に載置された計量カップ303と計量カップ303に収容された米等の被収容物との重量を計量する。
【0129】
図9に示す計量器300は、重量計量部302に成分含量測定部16Bを有する。なお、成分含量測定部16Bは、筐体301の重量計量部302以外の部分に設けられていてもよい。成分含量測定部16Bは、成分含量測定部16,16Aと同様に、近赤外分光法によって前記の各含量を検出してもよいし、近赤外分光法以外の公知の手段によって前記の各含量を検出してもよい。例えば、近赤外分光法によって各含量が測定される場合、計量カップ303は透光性を有する材料で構成され、成分含量測定部16Bの光源から照射され近赤外光は計量カップ303を透過して計量カップ303内の被収容物に到達する。
【0130】
図9に示す計量器300は、無線通信部183を有する。無線通信部183は、
図8に示す無線通信部182と同様に、外部との通信機能を有する。なお、無線通信部183は、米に含まれる水分、蛋白質、及びアミロース等の含量に加えて、計量カップ303によって計量された重量の情報を送信してもよい。
【0131】
炊飯器100Aは、外部との通信機能を有する無線通信部181を更に備え、制御部14は、炊飯器100Aとは別体の米保管器200や計量器300で計測された水分含量、蛋白質含量、及びアミロース含量の少なくとも1つを、無線通信部181を介して取得する。
【0132】
この構成によれば、制御部14は、炊飯器100Aの外部から水分含量、蛋白質含量、及びアミロース含量を取得する。そのため、炊飯器100Aの内部に水分含量、蛋白質含量、及びアミロース含量を測定する成分含量測定部16を設ける必要がない。これにより、炊飯器100Aを小型化することができる。
【0133】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本開示は、米の食味を良好に維持することができるので、例えば、家庭用及び業務用の炊飯器に有用である。
【符号の説明】
【0135】
1 炊飯器本体
2 鍋(容器)
3 外蓋
4 内蓋
5 加熱部
6 鍋温度センサ(水温検知部)
11 圧力弁
12 圧力弁移動機構
13 表示操作部
14 制御部
15 記憶部
16 成分含量測定部
100 炊飯器
181 無線通信部
182 無線通信部
183 無線通信部
200 米保管器
300 計量器