(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122309
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】加工機の温度調整システム
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/14 20060101AFI20230825BHJP
B23Q 15/18 20060101ALI20230825BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20230825BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20230825BHJP
B24B 55/00 20060101ALI20230825BHJP
B24B 49/14 20060101ALI20230825BHJP
G16Y 10/25 20200101ALI20230825BHJP
B23Q 11/10 20060101ALN20230825BHJP
【FI】
B23Q11/14
B23Q15/18
G05B19/404 Z
G05B19/4155 V
B24B55/00
B24B49/14
G16Y10/25
B23Q11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025948
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】板津 武志
【テーマコード(参考)】
3C001
3C011
3C034
3C047
3C269
【Fターム(参考)】
3C001KA05
3C001KB07
3C001TA10
3C001TB03
3C011EE08
3C034AA07
3C034BB15
3C034BB83
3C034BB91
3C034CA19
3C034CB20
3C034DD07
3C047FF03
3C047FF11
3C047FF17
3C269AB07
3C269CC02
3C269EF02
3C269KK08
3C269MN07
3C269MN27
3C269MN28
3C269MN44
3C269QB03
(57)【要約】
【課題】外気温度の相異によることなく高精度での加工機による加工を実現する。
【解決手段】自動取得した天気予報データに基づいて加工機10の稼働日の外気温度の推移を推定する。電子制御装置80の記憶部82には学習器85が記憶されている。学習器85は、外気温度を推移した推定データを入力データとして各制御目標値(目標オイル温度、目標クーラント温度、オイル供給部40の始動時刻、クーラント供給部50の始動時刻、目標内気温度、空調装置60の始動時刻)を出力する態様で学習されている。強化学習部89は、温度センサ90~96によって検出された加工機10の各部の温度および内気温度のばらつきが小さい場合に大きい場合よりも高い報酬を付与する態様で学習器85の強化学習を行う。制御部88は、学習器85から出力される各制御目標値に基づいてオイル供給部40、クーラント供給部50、および空調装置60の作動を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工工具によってワークを加工する加工機と、
前記加工機の温度を第1設定温度に調節する加工機温度調節装置と、
前記加工機が設置された部屋の温度を第2設定温度に調節する空調装置と、
前記加工機における複数箇所の温度を検出する加工機温度検出部と、
前記部屋の内部の温度を検出する内部温度検出部と、
通信ネットワーク網を通じて天気予報データを自動取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得した前記天気予報データに基づいて前記加工機の稼働日における外気温度の推移を推定する温度推定部と、
前記温度推定部によって推定された前記外気温度の推移を入力データとして、前記第1設定温度についての一定の第1制御目標値、および、前記加工機温度調節装置の第1始動タイミング、および、前記第2設定温度についての一定の第2制御目標値、および、前記空調装置の第2始動タイミングを出力する態様で学習された学習器を記憶する学習値記憶部と、
前記加工機温度検出部によって検出された前記複数箇所の温度、および、前記内部温度検出部によって検出された前記内部の温度のばらつきが小さい場合に大きい場合よりも高い報酬を付与する態様で前記学習器の強化学習を行う強化学習部と、
前記学習器から出力される前記第1制御目標値および前記第1始動タイミングに基づいて前記加工機温度調節装置の作動を制御するとともに、前記学習器から出力される前記第2制御目標値および前記第2始動タイミングに基づいて前記空調装置の作動を制御する制御部と、を有する加工機の温度調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工具によってワークを加工する加工機の温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テーブルに固定された加工対象物(いわゆるワーク)の表面を、工具によって加工する加工機が多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工機は温度変化によって若干変形するため、加工機の各部における温度変化の度合いにばらつきが生じると、同加工機の各部における変形の度合いにもばらつきが生じてしまう。この場合には、テーブルの真直度が低下するなどして工具とワークとの位置関係がずれることで、加工機によるワークの加工精度の低下を招くおそれがある。こうした加工精度の低下を抑えるためには、加工機の温度や、同加工機が設置された部屋の温度を管理することが好ましい。そうした温度の管理は、加工機が設置された部屋にエアーコンディショナーなどの空調装置を設置することによって行うことが可能になる。
【0005】
ただし、近年における気候変動の影響等により夏場の最高気温と冬場の最低気温との差が激しくなっている。これにより、加工機が設置された部屋の内部と外部との温度差も大きくなるため、空調装置による適正な温度管理が困難になるおそれがある。そして、この場合には、加工機によるワークの加工精度の低下を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための加工機の温度調整システムは、加工工具によってワークを加工する加工機と、前記加工機の温度を第1設定温度に調節する加工機温度調節装置と、前記加工機が設置された部屋の温度を第2設定温度に調節する空調装置と、前記加工機における複数箇所の温度を検出する加工機温度検出部と、前記部屋の内部の温度を検出する内部温度検出部と、通信ネットワーク網を通じて天気予報データを自動取得するデータ取得部と、前記データ取得部によって取得した前記天気予報データに基づいて前記加工機の稼働日における外気温度の推移を推定する温度推定部と、前記温度推定部によって推定された前記外気温度の推移を入力データとして、前記第1設定温度についての一定の第1制御目標値、および、前記加工機温度調節装置の第1始動タイミング、および、前記第2設定温度についての一定の第2制御目標値、および、前記空調装置の第2始動タイミングを出力する態様で学習された学習器を記憶する学習値記憶部と、前記加工機温度検出部によって検出された前記複数箇所の温度、および、前記内部温度検出部によって検出された前記内部の温度のばらつきが小さい場合に大きい場合よりも高い報酬を付与する態様で前記学習器の強化学習を行う強化学習部と、前記学習器から出力される前記第1制御目標値および前記第1始動タイミングに基づいて前記加工機温度調節装置の作動を制御するとともに、前記学習器から出力される前記第2制御目標値および前記第2始動タイミングに基づいて前記空調装置の作動を制御する制御部と、を有する。
【0007】
上記構成において、外気温度の相異に起因する加工精度の低下を抑えるためには、次のように加工機、加工機温度調節装置および空調装置を運転することが好ましい。すなわち先ず、加工機温度調節装置および空調装置を始動する。そして、加工機が設置された部屋の温度(内気温度)や加工機の各部の温度(加工機温度)が設定温度まで上昇した後に同設定温度一定で保持される態様で、加工機温度調節装置による温度調節と空調装置による温度調節とを実行する。そして、内気温度および加工機の各部温度が一定に保持されている期間において加工機による加工を実行する。これにより、加工機の各部における熱変形量のばらつきを抑えた状態で加工機によるワークの加工を実行することが可能になる。
【0008】
上記構成によれば、上述した好ましい状況、すなわち内気温度や加工機温度が設定温度一定に保持された状態で加工機による加工が実行された状況になるように、学習器を学習させることができる。そして、学習済みの学習器を利用して、天気予報データから予測される稼働日当日の外気温度の推移に見合う値として、第1設定温度(加工機の温度)についての一定の第1制御目標値や、加工機温度調節装置の第1始動タイミング、第2設定温度(内気温度)についての一定の第2制御目標値、空調装置の第2始動タイミングを設定することができる。そのため、天気予報データから予測される当日の外気温度の推移に応じたかたちで、加工機温度調節装置および空調装置を始動することができ、さらには同加工機温度調節装置の作動制御と空調装置の作動制御とを実行することができる。これにより、上述の好ましい状況を実現することができるため、外気温度の相異に起因する加工精度の低下を抑えることができるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる加工機の温度調整システムによれば、外気温度の相異に起因する加工精度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】加工機の温度調整システムの概略構成図である。
【
図3】温度調整システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】好ましい状況における各部温度の推移の一例を示すタイムチャートである。
【
図5】制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】長短期記憶層の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、加工機の温度調整システムの一実施形態について説明する。
(加工機)
図1および
図2に示すように、本実施形態の加工機10は、門型の平面研削盤である。加工機10は、ベッド11を有している。ベッド11の上面にはX方向に延びる一対のレール12が設けられている。ベッド11の上部には、ワークテーブル13が設けられている。ワークテーブル13は、一対のレール12を介して、ベッド11に対してX方向へ往復移動可能になっている。加工機10によって加工対象物(以下、ワークW)を加工する際には、ワークテーブル13上にワークWが支持される。
【0012】
加工機10は、門型のコラム14を有している。コラム14は、ベッド11の両側方において上下方向に延びる一対の立柱部15と、それら立柱部15の上端を繋ぐように架設される梁部16とを有している。コラム14は、ベッド11上のワークテーブル13の走行面を跨ぐように立設されている。
【0013】
コラム14には、クロスバー17が設けられている。クロスバー17は、一対の立柱部15の上下方向の中間部分を繋ぐように、それら立柱部15に架設されている。
クロスバー17の一方(
図1の左側)の側面にはY方向に延びる一対のレール18が設けられている。また、クロスバー17の側部には、支持板19が設けられている。支持板19は、一対のレール18を介して、クロスバー17に対してY方向へ往復移動可能になっている。
【0014】
支持板19の一方(
図1の左側)の側面には、Z方向に延びる一対のレール20が設けられている。また支持板19の側部には、加工ヘッド21が設けられている。加工ヘッド21は、一対のレール20を介して、支持板19に対してZ方向へ往復移動可能になっている。加工ヘッド21には、加工工具としての回転砥石22が装着されている。そして、この回転砥石22がワークWの上面に接触されながら回転されるとともに、ワークテーブル13が往復移動されることにより、ワークWの加工面が研削加工されるようになっている。
【0015】
図1~
図3に示すように、加工機10は、ワークテーブル13をベッド11に対してX方向に移動させるX方向移動部31(
図3)と、支持板19をクロスバー17に対してY方向に移動させるY方向移動部32とを有している。また、加工機10は、支持板19に対して加工ヘッド21をZ方向に移動させるZ方向移動部33を有している。これらX方向移動部31、Y方向移動部32、およびZ方向移動部33はいずれも、2つの部材の相対移動を可能にする移動機構と同移動機構を作動させるアクチュエータとを備えて構成されている。その他、加工機10は、回転砥石22を回転駆動する砥石駆動部34を有している。
【0016】
加工機10による加工に際しては、先ず、Y方向移動部32の作動制御、およびZ方向移動部33の作動制御を通じて、加工ヘッド21がY方向およびZ方向に移動される。これにより、加工機10は、回転砥石22をワークWの加工面上の所望の位置に接触させることの可能な状態になる。そして、この状態で、砥石駆動部34の作動制御を通じて回転砥石22が回転駆動されるとともに、X方向移動部31の作動制御を通じてワークテーブル13およびワークWがX方向に往復移動される。これにより、ワークWの加工面が研削加工される。
【0017】
(オイル供給部)
図1および
図3に示すように、加工機10は、潤滑部位にオイルを供給するオイル供給部40を備えている。オイル供給部40は、オイルを貯留するオイルタンク41とオイルを圧送するオイルポンプ42とを有している。また、オイル供給部40は、オイルの温度を所望の温度に調節する温度調節ユニット43を有している。本実施形態では、外部機器(後述する電子制御装置80)からオイル供給部40に入力される制御指令信号をもとに、同オイル供給部40によるオイル供給を開始したり、オイル温度TOの制御目標値(目標オイル温度TTO)を設定したりすることが可能になる。
【0018】
本実施形態では、目標オイル温度TTOとして、一定値が定められる。これは次の理由による。仮に加工機10の運転中に目標オイル温度TTOを変更すると、加工機10の熱容量に起因して、同加工機10の温度は時間をかけて徐々に変化するようになる。そうした加工機10の温度が変化する過程において、加工機10の各部に温度ばらつき、ひいては熱変形量のばらつきが生じるため、これによる加工精度の低下を招くおそれがある。このことから、加工機10による加工精度の維持のために、加工機10の運転中においては目標オイル温度TTOを一定に保つことが好ましいと云える。
【0019】
(クーラント供給部)
加工機10は、回転砥石22によってワークWを加工する加工部位にクーラントを供給するクーラント供給部50を備えている。クーラント供給部50は、クーラントを貯留するクーラントタンク51とクーラントを圧送するクーラントポンプ52とを有している。また、クーラント供給部50は、クーラントの温度を所望の温度に調節する温度調節ユニット53を有している。後述する電子制御装置80からクーラント供給部50に入力される制御指令信号をもとに、クーラント供給部50によるクーラント供給を開始したり、クーラント温度TCの制御目標値(目標クーラント温度TTC)を設定したりすることが可能になっている。
【0020】
本実施形態では、目標クーラント温度TTCとして、一定値が定められる。これは次の理由による。仮に加工機10の運転中に目標クーラント温度TTCを変更すると、加工機10の熱容量に起因して、同加工機10の温度は時間をかけて徐々に変化するようになる。そうした加工機10の温度が変化する過程において、加工機10の各部に温度ばらつき、ひいては熱変形量のばらつきが生じるため、これによる加工精度の低下を招くおそれがある。このことから、加工機10による加工精度の維持のために、加工機10の運転中においては目標クーラント温度TTCを一定に保つことが好ましいと云える。
【0021】
なお本実施形態では、オイル供給部40およびクーラント供給部50が加工機の温度を第1設定温度に調節する加工機温度調節装置に相当し、目標オイル温度TTOおよび目標クーラント温度TTCが第1設定温度についての一定の第1制御目標値に相当する。
【0022】
(加工機制御装置)
図3に示すように、加工機10は、作業者によって操作される操作盤23と、同加工機10の作動を制御する加工機制御装置24とを有している。加工機制御装置24は、1つ以上のプロセッサからなる演算処理部や、加工機10の作動制御に関する各種のデータを記憶する記憶部を有している。加工機制御装置24は、操作盤23の操作を通じて入力される加工機10の運転にかかる各種情報をもとに、同加工機10の運転にかかる各種制御を実行する。なお各種制御は、X方向移動部31の作動制御や、Y方向移動部32の作動制御、Z方向移動部33の作動制御、砥石駆動部34の作動制御、オイル供給部40の作動制御、クーラント供給部50の作動制御を含んでいる。
【0023】
(空調装置)
本実施形態のシステムは、加工機10が設置された部屋Rの内部の温度(内気温度TI)を調節するための空調装置60を有している。本実施形態では、外部機器(後述する電子制御装置80)から空調装置60に入力される制御指令信号をもとに、同空調装置60の運転を開始したり、内気温度TIについての制御目標値(目標内気温度TTI)を設定したりすることが可能になっている。
【0024】
本実施形態では、目標内気温度TTIとして、一定値が定められる。これは次の理由による。仮に加工機10の運転中に目標内気温度TTIを変更すると、部屋R内の空気の熱容量や加工機10の熱容量に起因して、同加工機10の温度は時間をかけて徐々に変化するようになる。そうした加工機10の温度が変化する過程において、加工機10の各部に温度ばらつき、ひいては熱変形量のばらつきが生じるため、これによる加工精度の低下を招くおそれがある。このことから、加工機10による加工精度の維持のために、加工機10の運転中においては目標内気温度TTIを一定に保つことが好ましいと云える。なお本実施形態では、目標内気温度TTIが、第2設定温度についての一定の第2制御目標値に相当する。
【0025】
ここで、外気温度の相異に起因する加工機10の加工精度の低下を抑えるためには、以下のように加工機10および空調装置60を運転することが好ましい。すなわち先ず、
図4に示すように、加工機10によるワークWの加工開始に先立ち、加工機10のオイル供給部40、クーラント供給部50、および空調装置60を始動する(時刻t1)。そして、加工機10が設置された部屋Rの温度(内気温度TI)や加工機10の各部の温度(加工機温度)が設定温度まで上昇した後に同設定温度一定で保持される態様で、温度調節ユニット43,53による温度制御と空調装置60による温度制御とを実行する。そして、内気温度TIおよび加工機温度が一定に保持されている期間TS(時刻t2~t3)において加工機10による加工を実行する。このように加工機10および空調装置60を運転することで、加工機10の各部における温度のばらつき、ひいては熱変形量のばらつきを抑えた状態で、同加工機10によるワークWの加工を実行することが可能になる。
【0026】
本実施形態の温度調整システムでは、以下のようにして、上述した好ましい状況を実現するようにしている。
先ず、外部機器70から天気予報データを取得するとともに、この天気予報データから、加工機10の稼働日(加工機10によるワークWの加工を実行する日)における外気温度の推移を予測する。そして、この外気温度についての予測データをもとに、加工機10のオイル供給部40、クーラント供給部50、および空調装置60の作動制御にかかる制御目標値(以下の[A]~[F])を算出する。
【0027】
[A]オイル供給部40(温度調節ユニット43を含む)の作動制御にかかるオイル温度TOの制御目標値(目標オイル温度TTO)。
[B]オイル供給部40の始動タイミングについての制御目標値(始動時刻STO)。
【0028】
[C]クーラント供給部50(温度調節ユニット53を含む)の作動制御にかかるクーラント温度TCの制御目標値(目標クーラント温度TTC)。
[D]クーラント供給部50の始動タイミングについての制御目標値(始動時刻STC)。
【0029】
[E]空調装置60の作動制御にかかる内気温度TIの制御目標値(目標内気温度TTI)。
[F]空調装置60の始動タイミングについての制御目標値(始動時刻STI)。
【0030】
なお本実施形態の温度調整システムでは、これら制御目標値として、以下の(条件1)~(条件4)の全てを満たす値が算出されるようになっている。
(条件1)加工機10が設置された工場の始業時刻(例えば、午前8時)よりも前に、同加工機10のオイル供給部40、クーラント供給部50、および空調装置60が始動される。
【0031】
(条件2)加工機10および空調装置60の始動から工場の始業時刻までの間に、加工機10の各部の温度および内気温度TIが所定温度まで上昇する。
(条件3)工場の稼働時間(始業時刻から終業時刻までの時間)において、加工機10の各部の温度および内気温度TIが所定温度で略一定に保たれる。
【0032】
(条件4)工場の稼働時間における内気温度TIは作業者が不快に感じない温度になる。
そして、それら制御目標値をもとに、加工機10のオイル供給部40、クーラント供給部50、および空調装置60を始動させるとともに運転する。
【0033】
(温度調整システム)
以下、上述した好ましい状況を実現するための具体構成について説明する。
本実施形態の温度調整システムは、加工機10の各部の温度や内気温度TIの調節のために加工機10のオイル供給部40、クーラント供給部50、および空調装置60の作動を制御する電子制御装置80を有している。
【0034】
電子制御装置80は、1つ以上のプロセッサからなる演算処理部81や、加工機10および空調装置60の作動制御に関する各種のデータを記憶する記憶部82、外部機器70との通信を行う通信部83などを有している。
【0035】
記憶部82には、オイル供給部40の作動制御や、クーラント供給部50の作動制御、空調装置60の作動制御にかかる各種処理を演算処理部81に実行させるためのプログラム84が記憶されている。演算処理部81は、このプログラム84を実行することにより、オイル供給部40の作動制御や、クーラント供給部50の作動制御、空調装置60の作動制御にかかる各種処理を実行する。記憶部82には、機械学習モデル(以下、学習器85)が記憶されている。この学習器85は、加工機10の作動制御にかかる制御目標値や、空調装置60の作動制御にかかる制御目標値の算出に利用される。なお、学習器85の詳細については後述する。なお本実施形態では、記憶部82が学習値記憶部に相当する。
【0036】
通信部83は、インターネット網などの所定の通信ネットワーク網71を介して、外部機器70(詳しくは、天気予報データを提供する情報提供センターのサーバー)とのデータの送受信を行う通信装置である。本実施形態では、通信部83を介して外部機器70から電子制御装置80に天気予報に関するデータ(以下、天気予報データ)が取り込まれるとともに、その天気予報データが記憶部82に記憶される。
【0037】
(温度センサ)
本実施形態の温度調整システムは、各部の温度を検出するための温度センサ90~96を有している。各温度センサ90~96の出力信号は、電子制御装置80に取り込まれるとともに記憶部82に記憶される。
【0038】
図1および
図2に示すように、加工機10のワークテーブル13には、上部の温度を検出するための温度センサ90が間隔を置いて6つ設けられるとともに、下部の温度を検出するための温度センサ91が間隔を置いて6つ設けられている。加工機10のベッド11には、上部の温度を検出するための温度センサ92が間隔を置いて8つ設けられるとともに、下部の温度を検出するための温度センサ93が間隔を置いて8つ設けられている。なお
図1には、温度センサ90,91をそれぞれ3つのみ示すとともに、温度センサ92,93をそれぞれ4つのみ示している。
【0039】
オイル供給部40には、オイル温度TOを検出するための温度センサ94が設けられている。クーラント供給部50には、クーラント温度TCを検出するための温度センサ95が設けられている。
【0040】
加工機10のコラム14には、同加工機10が設置された部屋Rの内部温度(内気温度TI)を検出するための温度センサ96が設けられている。
なお本実施形態では、温度センサ90~95が加工機における複数箇所の温度を検出する加工機温度検出部に相当し、温度センサ96が部屋Rの内部の温度を検出する内部温度検出部に相当する。
【0041】
電子制御装置80は、加工機10の各部の温度、および内気温度TIを一定に保つための機能部として、データ取得部86や、温度推定部87、制御部88、強化学習部89を有している。
【0042】
(データ取得部)
データ取得部86は、通信ネットワーク網71および通信部83を通じて、外部機器70から天気予報データを取得する。本実施形態では、天気予報データの情報提供は、外部の情報提供センターによって行われる。データ取得部86は、予め定められた所定時刻(例えば、加工機10の各稼働日の午前2時)になると、外部機器70から天気予報データを自動取得する。
【0043】
データ取得部86が取得する天気予報データは、加工機10が設置された施設(工場)を含む所定範囲の地域におけるデータである。この天気予報データは、少なくとも気温情報(最高気温、最低気温など)を含むデータである。天気予報データは、気温情報の他に、天候情報(晴れ、曇り、雨)や湿度情報などを含むデータであってもよい。
【0044】
(温度推定部)
温度推定部87は、データ取得部86によって取得した天気予報データに基づいて、加工機10の稼働日における外気温度の推移を推定する。本実施形態では、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果から、天気予報データをもとに同データの対象日における実際の外気温度の推移を精度良く算出することの可能な関係(例えば、算出モデル)が予め求められている。そして、この関係が電子制御装置80の記憶部82に予め記憶されている。温度推定部87は、データ取得部86が取得する天気予報データに基づいて、記憶部82に記憶されている上記関係から、外気温度の推定値の推移を示す時系列データ(以下、推定データ)を算出する。
【0045】
(制御部)
制御部88は、推定データに基づいて各制御目標値(前記[A]~[F])を算出するとともに、それら制御目標値を制御指令信号として加工機制御装置24や空調装置60に出力する。これにより、始動時刻STOにおいてオイル供給部40を始動させるとともに目標オイル温度TTOに基づいてオイル供給部40(温度調節ユニット43を含む)を運転するといったように、稼働日における加工機10の作動が制御される。また、始動時刻STCにおいてクーラント供給部50を始動させるとともに目標クーラント温度TTCに基づいてクーラント供給部50(温度調節ユニット43を含む)を運転するといったように、稼働日における加工機10の作動が制御される。さらには、空調装置60を始動時刻STIにおいて始動させるとともに目標内気温度TTIに基づき運転するといったように、稼働日における空調装置60の作動が制御される。なお本実施形態では、始動時刻STO,STCが加工機温度調節装置の第1始動タイミングに相当し、始動時刻STIが空調装置の第2始動タイミングに相当する。
【0046】
(学習器)
図5に示すように、制御部88は、前記学習器85を中心に構成されている。本実施形態では、学習器85として、リカレントニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)が採用されている。学習器85は、推定データが入力データとして入力される入力層100、各制御目標値を出力する出力層101、および、入力層100と出力層101との間に位置する複数の隠れ層102を有する。以下では、最下層に位置する隠れ層を隠れ層102-1、最上層に位置する隠れ層を隠れ層102-n(nは1以上の整数)で示す。入力層100は、推定データに基づいて各種演算を行い、その演算結果を隠れ層102-1に出力する。隠れ層102の各々は、時刻t-1の演算結果を戻り値として時刻tの演算に用いる。出力層101は、隠れ層102-nの演算結果を用いて各制御目標値を演算する。
【0047】
入力層100には、前記推定データを正規化したデータが入力される。隠れ層102は、最終的な演算結果として1以上の特徴量を演算する。隠れ層102の各々は、長短期記憶層(LSTM:Long Short Term Memory)で構成されている。
【0048】
図6に示すように、長短期記憶層(以下、LSTM110)は、時刻tの入力x(t)に基づいて時刻tの出力h(t)を演算する。出力h(t)は、上層に対して入力x(t)として入力される。またLSTM110は、出力h(t)を演算する過程においてセル状態C(t)を演算し、その演算したセル状態C(t)に加えて、出力h(t)を示す出力状態h(t)を次サイクルの演算における戻り値として取り扱う。LSTM110は、1つ前の時刻(t-1)における演算結果であるセル状態C(t-1)および出力状態h(t-1)に加えて、時刻(t)における下層からの入力x(t)に基づいて、時刻(t)におけるセル状態C(t)および出力状態h(t)を演算する。LSTM110は、時刻t-1のセル状態C(t-1)を制御する忘却ゲート層111、入力ゲート層112、tanh層113、および、出力ゲート層114を有している。本実施形態の学習器85では、LSTM110の各層111~114での演算において定められる重みベクトルやバイアスベクトルが学習によって更新される。
【0049】
学習器85は、前記推定データをもとに特徴量を抽出するとともに、この特徴量に基づいてオイル供給部40の作動制御や、クーラント供給部50の作動制御、空調装置60の作動制御に関する各制御目標値を演算して出力する態様で学習される。学習器85は、前述した好ましい状況(
図4参照)が実現される態様で学習される。詳しくは、各制御目標値として次のような値が出力される態様で、学習器85は学習される。
【0050】
始動時刻STOとしては、上記好ましい状況でのオイル供給部40の始動からオイル温度TOが略一定の安定状態になるまでの立ち上げ時間TB(
図4の時刻t1~t2)だけ、始業時刻(例えば、午前8時)から遡った時刻(例えば、午前4時)が出力される。目標オイル温度TTOとしては、上記好ましい状況においてオイル温度TOが略一定の安定状態になったときの同オイル温度TOに相当する値が出力される。始動時刻STCとしては、上記好ましい状況でのクーラント供給部50の始動からクーラント温度TCが略一定の安定状態になるまでの立ち上げ時間TB(
図4の時刻t1~t2)だけ、工場の始業時刻から遡った時刻が出力される。目標クーラント温度TTCとしては、上記好ましい状況においてクーラント温度TCが略一定の安定状態になったときの同クーラント温度TCに相当する値が出力される。始動時刻STIとしては、上記好ましい状況での空調装置60の始動から内気温度TIが略一定の安定状態になるまでの立ち上げ時間TB(
図4の時刻t1~t2)だけ、工場の始業時刻から遡った時刻が出力される。目標内気温度TTIとしては、上記好ましい状況において内気温度TIが略一定の安定状態になったときの同内気温度TIに相当する値が出力される。
【0051】
(強化学習部)
強化学習部89は、報酬を用いて学習器85を学習する強化学習を行う。
強化学習部89は、加工機10や空調装置60の運転中に温度センサ90~96によって検出された各部の温度に基づいて報酬を設定する。具体的には、強化学習部89は、加工機10の各部の温度および内気温度TIからなる複数箇所の温度(具体的には、各温度センサ90~96の検出温度)のばらつきが小さいほど、高い報酬を算出する。本実施形態では、そのときどきにおける複数箇所の温度の差(例えば、その最大値と最小値との差)を示す値(以下、温度差ΔT)が小さいほど、強化学習部89によって設定される報酬が高くなる。
【0052】
強化学習部89は、上記温度差ΔTを算出するとともに、同温度差ΔTに基づいて学習係数を設定する。学習係数としては、例えば、温度差ΔTが大きいために報酬を付与しない場合には「1.0」を設定する一方、温度差ΔTが小さいために報酬を付与する場合には「1.0」よりも大きい値を算出する。そして、この学習係数を報酬として、強化学習が実行される。強化学習では、LSTM110の各層111~114での演算において定められている重みベクトルやバイアスベクトルが更新される。
【0053】
(作用)
以下、本実施形態の温度調整システムによる作用について説明する。
先ず、電子制御装置80は、予め定められた所定時刻になると、通信ネットワーク網71を通じて、天気予報データを外部機器70から取り込むとともに記憶部82に記憶する。そして電子制御装置80は、この天気予報データに基づいて、加工機10の稼働日における外気温度の推定値の推移を示す時系列データ(推定データ)を算出する。
【0054】
その後、電子制御装置80は、この推定データに基づいて加工機10のオイル供給部40、クーラント供給部50、および空調装置60の作動制御にかかる各制御目標値(TTO,STO,TTC,STC,TI,STI)を算出する。これら制御目標値の算出は、記憶部82に記憶されている学習済みの学習器85を利用して行われる。
【0055】
そして、電子制御装置80は、各制御目標値を、対応する機器(加工機制御装置24や空調装置60)に制御指令信号として出力する。
加工機制御装置24は、上記制御指令信号が入力されると、稼働日における加工機10のオイル供給部40の作動制御を、始動時刻STOおよび目標オイル温度TTOに基づき実行する。詳しくは、工場の始業時刻(例えば
図4の時刻t2)前の始動時刻STOにおいて(同時刻t1)、オイル供給部40が始動される。そして、オイル供給部40の始動後において(時刻t1以降)、同オイル供給部40の作動制御は、実際のオイル温度TOが目標オイル温度TTOになるように実行される。本実施形態では、こうしたオイル供給部40の作動制御を通じて、実際のオイル温度TOが、始業時刻(時刻t2)の以前に目標オイル温度TTOに到達するようになる。しかも、工場の稼働時間(時刻t2~t3)においては、実際のオイル温度TOが目標オイル温度TTOで略一定に保たれた状態になる。
【0056】
一方、加工機制御装置24は、制御指令信号が入力されると、稼働日における加工機10のクーラント供給部50の作動制御を、始動時刻STCおよび目標クーラント温度TTCに基づき実行する。詳しくは、工場の始業時刻(例えば
図4の時刻t2)前の始動時刻STCにおいて(同時刻t1)、クーラント供給部50が始動される。そして、クーラント供給部50の始動後において(時刻t1以降)、同クーラント供給部50の作動制御は、実際のクーラント温度TCが目標クーラント温度TTCになるように実行される。本実施形態では、こうしたクーラント供給部50の作動制御を通じて、実際のクーラント温度TCが、始業時刻(時刻t2)の以前に目標クーラント温度TTCに到達するようになる。しかも、工場の稼働時間(時刻t2~t3)においては、実際のクーラント温度TCが目標クーラント温度TTCで略一定に保たれた状態になる。
【0057】
他方、空調装置60は、制御指令信号が入力されると、稼働日における空調装置60の作動制御を、始動時刻STIおよび目標内気温度TTIに基づき実行する。詳しくは、工場の始業時刻(例えば
図4の時刻t2)前の始動時刻STIにおいて(同時刻t1)、空調装置60が始動される。そして、空調装置60の始動後において(時刻t1以降)、同空調装置60の作動制御は、実際の内気温度TIが目標内気温度TTIになるように実行される。本実施形態では、こうした空調装置60の作動制御を通じて、実際の内気温度TIが、始業時刻(時刻t2)の以前に目標内気温度TTIに到達するようになる。しかも、工場の稼働時間(時刻t2~t3)においては、実際の内気温度TIが目標内気温度TTIで略一定に保たれた状態になる。
【0058】
このように本実施形態では、工場の始業前において、加工機10のオイル供給部40、クーラント供給部50、空調装置60が自動的に始動および運転されるようになっている。そして、これらオイル供給部40、クーラント供給部50、および空調装置60の事前運転を通じて、工場の始業時刻において予め、加工機10の各部温度や内気温度TIが略一定に保たれた状態にされる。しかも、その後における工場の稼働時間においても、加工機10の各部温度や内気温度TIが略一定に保たれた状態にされる。
【0059】
これにより、工場の稼働時間においては、加工機10の各部の温度ばらつきが小さい状態で、同加工機10によるワークWの加工が行われるようになる。したがって、加工機10によるワークWの加工時における同加工機10の各部の熱変形量のばらつきが抑えられる。これにより、外気温度の相異に起因する加工機10のワークテーブル13の真直度の低下が抑えられるようになり、ひいてはワークWの真直度の低下が抑えられるようになる。したがって本実施形態によれば、外気温度の相異によることなく、高い精度での加工機10によるワークWの加工を実現することができる。
【0060】
本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)本実施形態によれば、前述した好ましい状況、すなわち内気温度TIや加工機10の各部の温度が設定温度一定に保持された状態で加工機10による加工が実行される状況になるように、学習器85を学習させることができる。そして、学習済みの学習器85を利用して、天気予報データから予測される稼働日当日の外気温度の推移(具体的には、推定データ)に見合う値を、加工機10の作動制御や空調装置60の作動制御にかかる各種の制御目標値として設定することができる。
【0061】
したがって、天気予報データから予測される稼働日当日の外気温度の推移に応じたかたちで、オイル供給部40、クーラント供給部50、および空調装置60を始動することができる。しかも、そうした稼働日当日の外気温度の推移に応じたかたちで、オイル供給部40によってオイル温度TOを調節したり、クーラント供給部50によってクーラント温度TCを調節したり、空調装置60によって内気温度TIを調節したりすることもできる。これにより、上述の好ましい状況を実現することができる。そのため、稼働日当日における外気温度の差(一日の最高気温と最低気温との差)や季節間の外気温度の差(夏場の最高気温と冬場の最低気温との差)などの外気温度の相異によることなく、高い精度での加工機10によるワークWの加工を実現することができる。
【0062】
(変更例)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0063】
・外部機器70から天気予報データを取得する態様は、任意に変更することができる。天気予報データを取得するタイミングとしては、加工機10の稼働日当日の始業前の所定時刻を定めることに限らず、前日の終業時刻(例えば、午後5時)の後の所定時刻(例えば、午後11時)などを定めることができる。データ取得部86が取得する天気予報データは、1日分の天気予報データであってもよいし、1週間分の天気予報データであってもよい。外部機器70から1週間分の天気予報データを取得する場合には、天気予報データを取得するタイミングとして、特定の曜日の所定時刻(日曜日の深夜、月曜日の早朝など)を設定してもよい。
【0064】
・稼働日当日の始業前に推定データの算出を実行する場合には、その算出に用いる算出パラメータとして、天気予報データに加えて、加工機10が設置された部屋Rの外部の実際の温度(外気温度)を用いるようにしてもよい。この場合には、部屋Rの外部(詳しくは屋外)に、外気温度を検出するための温度センサを設ければよい。上記構成によれば、推定データの算出に際して、その算出時(あるいは、稼働日当日の算出タイミング以前)における実際の外気温度を考慮することができるため、推定データを精度良く算出することができる。
【0065】
・学習器85の強化学習において、加工機10が設置された部屋Rの外部の実際の温度(外気温度)を考慮するようにしてもよい。同構成によれば、推定データが示す外気温度の推定値と同外気温度の実値との誤差に応じたかたちで、学習器85の強化学習を実行することができる。そのため、学習器85の強化学習を実態に即したかたちで精度良く実行することができるようになる。この場合には、例えば外気温度の推定値と実値との差が小さい場合に同差が大きい場合よりも高い報酬を付与する態様で、学習器85の強化学習を実行することができる。
【0066】
・学習器85の学習のために、強化学習を実行することに合わせて、教師データに基づく教師あり学習を実行するようにしてもよい。
・加工機10の各部の温度を検出するための温度センサを設ける部位は、任意に変更することができる。要は、加工機10によるワークWの加工精度を高めることが可能になる検出部位を各種の実験やシミュレーションの結果などから予め求めて、その検出部位に温度センサを設けるようにすればよい。
【0067】
・内気温度TIを検出するための温度センサを設ける部位は、任意に変更することができる。また、内気温度TIを検出するための温度センサを複数箇所に設けるようにしてもよい。要は、加工機10によるワークWの加工精度を高めることが可能になる検出部位を各種の実験やシミュレーションの結果などから予め求めて、その検出部位に温度センサを設けるようにすればよい。
【0068】
・外気温度の相異に起因する加工機10の加工精度の低下を抑えるための制御として、オイル供給部40の作動制御およびクーラント供給部50の作動制御の一方を実行するとともに、他方を実行しないようにしてもよい。
【0069】
・強化学習にかかる報酬の設定に用いるパラメータとしては、各温度センサ90~96の検出温度の最大値と最小値との差の他、各温度センサ90~96の検出温度の分布(正規分布)における標準偏差など、任意の値を用いることができる。加工機10の各部の温度および内気温度TIからなる複数箇所の温度のばらつきの度合いを示す値であれば、上記パラメータとして用いることができる。
【0070】
・学習器85としては、畳み込みニューラルネットワークなど、リカレントニューラルネットワーク以外のものを採用することができる。
・上記実施形態にかかる温度調整システムは、ワークの表面を砥石によって研削加工する研削加工機の温度調整システムに限らず、歯車加工機の温度調整システムなどにも適用することができる。加工工具によってワークを加工するタイプのあらゆる加工機の温度調整システムに、上記実施形態にかかる温度調整システムは適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
10…加工機
22…回転砥石
24…加工機制御装置
40…オイル供給部
43…温度調節ユニット
50…クーラント供給部
53…温度調節ユニット
60…空調装置
71…通信ネットワーク網
80…電子制御装置
82…記憶部
85…学習器
86…データ取得部
87…温度推定部
88…制御部
89…強化学習部
90~96…温度センサ