(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122314
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】設備保守支援システムおよび設備保守支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20230825BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G05B23/02 302S
G05B23/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025954
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 茂
(72)【発明者】
【氏名】前田 恵
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真之
(72)【発明者】
【氏名】竹林 涼
【テーマコード(参考)】
3C223
5L049
【Fターム(参考)】
3C223FF05
3C223FF16
3C223FF22
3C223FF26
3C223GG01
3C223HH02
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】過去の保守活動の知見を参考にして保守対応方針立案に役立てることができ、熟練者でなくても的確な保守対応を行えるようにする設備保守支援システムを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、設備保守支援システムは、データ関連づけ部と、故障予測部と、設備保守履歴検索部とを具備する。データ関連づけ部は、設備を監視して収集される設備の稼働状況を示す設備監視データと、設備の保守実施時に記録される設備の保守内容を示す設備保守履歴データとを関連づける。故障予測部は、関連づけられたデータを用いた機械学習で生成される予測モデルを用いて、任意の時点での設備監視データから実施すべき設備の保守内容を予測する。設備保守履歴検索部は、関連づけられたデータを用いて、故障予測部による設備の保守内容の予測時に用いられた設備監視データの全部または一部が合致する設備監視データと関連性を有する設備保守履歴データを検索する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備を監視して収集される前記設備の稼働状況を示す設備監視データと、前記設備の保守実施時に記録される前記設備の保守内容を示す設備保守履歴データとの中から、前記設備の保守事例発生時または前記保守事例発生時から一定期間遡った期間の前記設備監視データと、前記保守事例の前記設備保守履歴データとを関連づけるデータ関連づけ部と、
前記データ関連づけ部によって関連づけられたデータを用いた機械学習によって生成される、前記設備監視データを入力として実施すべき前記設備の保守内容を予測する予測モデルを用いて、任意の時点での前記設備監視データから実施すべき前記設備の保守内容を予測する故障予測部と、
前記データ関連づけ部によって関連づけられたデータを用いて、前記故障予測部による前記設備の保守内容の予測時に用いられた前記設備監視データの全部または一部が合致する前記設備監視データと関連性を有する前記設備保守履歴データを検索する設備保守履歴検索部と、
を具備する設備保守支援システム。
【請求項2】
前記故障予測部は、前記設備の保守内容の予測において予測モデルが重視した入力項目を出力し、
前記設備保守履歴検索部は、前記入力項目の全部または一部が合致する前記設備監視データと関連性を有する前記設備保守履歴データを検索し、
前記検索された1以上の前記設備保守履歴データのうち前記設備の保守内容の予測において重視した入力項目の値が合致するデータを重要度の高い事例として優先的に表示する表示部を具備する、
請求項1に記載の設備保守支援システム。
【請求項3】
前記故障予測部は、前記入力項目の重視順位を出力し、
前記表示部は、前記入力項目の中のいずれに合致したかを示す情報を、検索された1以上の前記設備保守履歴データのそれぞれに付加し、かつ、その情報に基づいて決定される順に、検索された1以上の前記設備保守履歴データを表示する、
請求項2に記載の設備保守支援システム。
【請求項4】
前記予測モデルは、前記設備の保守を必要とする部位、前記設備に故障が発生するまでの期間、前記設備の異常な動作状態、の少なくとも1つを予測する請求項1~3のいずれか1項に記載の設備保守支援システム。
【請求項5】
設備を監視して収集される前記設備の稼働状況を示す設備監視データと、前記設備の保守実施時に記録される前記設備の保守内容を示す設備保守履歴データとの中から、前記設備の保守事例発生時または前記保守事例発生時から一定期間遡った期間の前記設備監視データと、前記保守事例の前記設備保守履歴データとを関連づけ、
前記関連づけられたデータを用いた機械学習によって生成される、前記設備監視データを入力として実施すべき前記設備の保守内容を予測する予測モデルを用いて、任意の時点での前記設備監視データから実施すべき前記設備の保守内容を予測し、
前記関連づけられたデータを用いて、前記設備の保守内容の予測時に用いられた前記設備監視データの全部または一部が合致する前記設備監視データと関連性を有する前記設備保守履歴データを検索する、
設備保守支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、設備保守支援システムおよび設備保守支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
設備の異常を検知するだけでなく、異常に対応した保守を支援するための支援技術がある。
たとえば、設備の異常あるいはその予兆を検知し、設備を診断する異常検知・診断方法において、複数センサによって異常を検知して異常の種類を示すキーワードに変換する一方、保守履歴からキーワードを抽出して診断モデルを生成し、実施すべき処置を診断する異常検知・診断方法が提案されている。
【0003】
この異常検知・診断方法では、保守履歴データ群に記載されているキーワードを抽出して異常内容キーワードと保守対応内容キーワードとの対応関係を診断モデルとし、設備に付加した多次元センサの出力を対象とした異常検知に基づき異常キーワードを特定し、診断モデルを用いて保守対応内容キーワードを得ることによって、発生した異常に対してなすべき処置をユーザに示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の異常検知・診断方法においては、設備に付加した多次元センサの出力データと設備保守履歴データとは関連づけられておらず、保守履歴データのみから診断モデルが生成されている。そのため、保守履歴データに記載のない異常の場合は診断を行うことができないという問題があった。
【0006】
また、診断モデルを通じて得られるのはキーワードであり、保守履歴データそのものではないため、現場の保守員の生の声である保守履歴文書を参考にしながら保守対応方針を立案することができなかった。
【0007】
本発明の1つの実施形態は、過去の保守活動の知見を参考にして保守対応方針立案に役立てることができ、熟練者でなくても的確な保守対応を行えるようにする設備保守支援システムおよび設備保守支援方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、設備保守支援システムは、データ関連づけ部と、故障予測部と、設備保守履歴検索部と、を具備する。データ関連づけ部は、設備を監視して収集される設備の稼働状況を示す設備監視データと、設備の保守実施時に記録される設備の保守内容を示す設備保守履歴データとの中から、設備の保守事例発生時または保守事例発生時から一定期間遡った期間の設備監視データと、保守事例の設備保守履歴データとを関連づける。故障予測部は、データ関連づけ部によって関連づけられたデータを用いた機械学習によって生成される、設備監視データを入力として実施すべき設備の保守内容を予測する予測モデルを用いて、任意の時点での設備監視データから実施すべき設備の保守内容を予測する。設備保守履歴検索部は、データ関連づけ部によって関連づけられたデータを用いて、故障予測部による設備の保守内容の予測時に用いられた設備監視データの全部または一部が合致する設備監視データと関連性を有する設備保守履歴データを検索する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の設備保守支援システムの一構成例を示す図。
【
図2A】実施形態の設備保守支援システムにおいて用いられる設備台帳データの一例を示す図。
【
図2B】実施形態の設備保守支援システムにおいて用いられる設備監視データの一例を示す図。
【
図2C】実施形態の設備保守支援システムにおいて用いられる設備保守履歴データの一例を示す図。
【
図2D】実施形態の設備保守支援システムにおいて用いられる設備環境履歴データの一例を示す図。
【
図2E】実施形態の設備保守支援システムにおいて用いられる関連づけデータの一例を示す図。
【
図2F】実施形態の設備保守支援システムの予測用入力データ関連づけ部の一出力例を示す図。
【
図2G】実施形態の設備保守支援システムの故障予測部の出力データの一例を示す図。
【
図2H】実施形態の設備保守支援システムの設備保守履歴検索部の一出力例を示す図。
【
図2I】実施形態の設備保守支援システムの条件入力・表示部の表示画面の一例を示す図。
【
図3A】実施形態の設備保守支援システムのデータ関連づけ部の処理の流れを示すフローチャート。
【
図3B】実施形態の設備保守支援システムの予測モデル学習部の処理の流れを示すフローチャート。
【
図3C】実施形態の設備保守支援システムの故障予測部の処理の流れを示すフローチャート。
【
図3D】実施形態の設備保守支援システムの検索条件生成部および設備保守履歴検索部の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の設備保守支援システム1の一構成例を示す図である。
図1には、設備保守支援システム1が連携する、設備の運用保守に関わる外部システムが併せて示されている。ここでは、設備の運用保守に関わる外部システムとして、たとえば、設備管理システム5、設備監視システム6、設備保守情報システム7および設備環境情報システム8を想定する。設備保守支援システム1および外部システムは、たとえばコンピュータとストレージデバイスとによって構築される情報処理システムである。設備保守支援システム1および外部システムは、コンピュータのプロセッサが各種プログラムを実行することによって各種データ処理部を実現する。各種データ処理部は、電気回路のようなハードウェアとして実現されてもよい。
【0011】
設備管理システム5は、保守管理対象のすべての設備に対し、その設備の種類や設置場所、設備を構成する装置の型式、運用開始時期などが登録されている、設備台帳データ51を管理するシステムである。
図2Aに、設備台帳データ51の一例を示す。
【0012】
図2Aに示すように、ここでは、設備台帳データ51は、「施設名」フィールド、「方向」フィールド、「設備名」フィールド、「設備形式」フィールド、「区間」フィールドなどを含んでいるものと想定する。また、これらの中の「施設名」フィールド、「方向」フィールドおよび「設備名」フィールドの3フィールドの値により、保守管理対象の設備が一意に示されるものと想定する。また、「区間」フィールドの値により、保守管理対象の設備が設置されている周囲の環境が一意に示されるものと想定する。
【0013】
設備監視システム6は、1つまたは複数の監視対象設備3を常時監視し、設備の動作記録、運用状況のセンサ時系列値、設備から上がってくる異常検知発報などを取得して記録する他、保守部門の監視担当者へ必要な情報を通知するシステムである。内部構造は様々な形態が想定されるが、ここでは、一例として、監視対象設備3から状態変化発報情報を受け取る設備状態変化データ抽出部61と、抽出された設備状態変化データの履歴を保存管理する設備監視履歴データ62とを持つ設備監視システム6を想定する。
図2Bに、設備監視履歴データ62の一例を示す。
【0014】
図2Bに示すように、ここでは、設備監視履歴データ62は、「日時」フィールド、「施設名」フィールド、「方向」フィールド、「設備名」フィールド、「状態」フィールドなどを含んでいるものと想定する。設備監視履歴データ62は、保守管理対象の設備を一意に示すことができる3フィールドを含んでいる。
【0015】
設備保守情報システム7は、保守部門2の保守作業者9が設備に対して行った保守対応履歴として、対象設備の個体情報、保守対応日時、保守実施内容などの情報を記録し、必要に応じて参照できるシステムである。
図2Cに、設備保守情報システム7が管理する設備保守履歴データ71の一例を示す。
【0016】
図2Cに示すように、ここでは、設備保守履歴データ71は、「施設名」フィールド、「方向」フィールド、「設備名」フィールド、「日時」フィールド、「故障部位」フィールド、「処理内容」フィールドなどを含んでいるものと想定する。設備保守履歴データ71は、保守管理対象の設備を一意に示すことができる3フィールドを含んでいる。
【0017】
設備環境情報システム8は、設備が設置されている周囲の環境に関する、気象情報その他の状態変動の時系列データを収集する環境情報収集設備4から通知されるデータを記録し、必要に応じて参照できるシステムである。
図2Dに、設備環境情報システム8が管理する設備環境履歴データ81の一例を示す。ここでは、設備環境履歴データ81の一例として、気象データを挙げている。
【0018】
図2Dに示すように、ここでは、設備環境履歴データ81は、「日時」フィールド、「区間」フィールド、「気温」フィールド、「天候」フィールド、「降水雪量」フィールドなどを含んでいるものと想定する。設備環境履歴データ81は、保守管理対象の設備が設置されている周囲の環境を一意に示すことができる「区間」フィールドを含んでいる。
【0019】
外部システムは、別々に存在していてもよいし、設備保守支援システム1も含めて総合的に情報を管理する複合機能システムであってもよい。ただし、外部システムで記録されているデータは、
図2A、2B、2C、2Dで例示した「施設名」フィールド、「方向」フィールドおよび「設備名」フィールドや「区間」フィールドのように、何らかのデータ項目(キーとなるデータ項目、もしくは複合キーとなるデータ項目群、もしくは一定の時刻差を許容する記録時刻の関連づけなど、公知のデータ間の関連づけを行う技術)によって相互に関連づけて取り扱うことが可能なものとする。
【0020】
設備保守支援システム1は、別途稼働している設備管理システム5、設備監視システム6、設備保守情報システム7および設備環境情報システム8の一部もしくはすべてから設備や稼働環境の状態監視データおよび過去の保守履歴データを受け取り、異常発生を設備監視システム6が検知した際の故障部位の予測および過去の類似状況での保守履歴の提示を保守部門2に対して行う。なお、ここでは、過去の監視データについては、
図1に示す通り、設備監視履歴データ62や設備環境履歴データ81などと称するのに対して、リアルタイムの監視データについては、(「履歴」を除いた)設備監視データや設備環境データなどと称することがある。さらに、設備監視データおよび設備環境データを、設備状態変化データと称することがある。
【0021】
これにより、保守部門2では故障現場に行く前に故障内容を予測できると共に、過去の同様な故障での保守内容を確認して対応方針を立案し、故障現場に持参する機材の選定や、効率的な点検修理順序の策定などを行うことが可能となる。
もしくは、明確な異常発生を設備監視システム6が検知していない場合においても定期的に外部システムの最新データから予測を実行し、状態監視データの発生状況が平常時とは異なることを検知して、類似した監視データの内容が発生した後に異常状態が発生した事例の提示を保守部門に対して行うことで、設備監視システム6が明示的に異常をキャッチしていない場合でも保守作業者9に気づきを与えて保守業務の効率化に活かすことが可能となる。
【0022】
次に、設備保守支援システム1の構成について説明する。
図1に示すように、設備保守支援システム1は、データ関連づけ部11、予測モデル学習部12、故障予測モデル13、故障予測部14、検索条件生成部15、設備保守履歴検索部16、条件入力・表示部17、関連づけデータ管理部18および予測用入力データ関連づけ部19を有する。
【0023】
データ関連づけ部11は、設備管理システム5、設備監視システム6、設備保守情報システム7および設備環境情報システム8から得たデータを関連づけ、関連づけ済みのデータ(関連づけデータ18A)を関連づけデータ管理部18に格納する。
図2Eに、関連づけデータ18Aの一例を示す。
【0024】
図2Eに示すように、ここでは、関連づけデータ18Aは、「ID」フィールド、「キー項目」フィールド、「台帳パート」フィールド、「監視パート」フィールド、「環境パート」フィールド、「保守履歴パート」フィールドなどを含んでいるものと想定する。
【0025】
「キー項目」フィールドは、「施設名」フィールド、「方向」フィールド、「設備名」フィールドおよび「日時」フィールドを含んでいる。「台帳パート」フィールドは、「設備型式」フィールドを含んでいる。「監視パート」フィールドは、「状態」フィールドを含んでいる。「環境パート」フィールドは、「区間」フィールド、「気温」フィールド、「天候」フィールド、「降水雪量」フィールドを含んでいる。「保守履歴パート」フィールドは、「故障部位」フィールドと、「処理内容」フィールドとを含んでいる。
【0026】
関連づけは、設備保守履歴データ71の各事例に対して、保守が発生した対象設備の設置年や型式などの設備台帳データ51と、保守発生時点もしくは保守発生時点から一定期間遡った期間での設備監視履歴データ62および設備周囲の環境データ(設備環境履歴データ81)とを関連づけることで行う。具体例として、
図2Aに示した設備台帳データ51と、
図2Bに示した設備監視履歴データ62と、
図2Cに示した設備保守履歴データ71と、
図2Dに示した設備環境履歴データ81と、
図2Eに示した関連づけデータ18Aとを用いて説明する。
図2A、2B、2C、2Dのデータは、
図2Eのキー項目のいくつかをキーにして互いに関連づけることができる。結果として、
図2Eに示すように、保守の対応結果に対し、どのような監視状態で保守が必要になったのか、対象の設備はどこに設置されていて、どんな型式の装置だったのか、を対応づけて確認することができる。本事例では、日時について完全一致するデータ間の関連づけ例となっているが、たとえば保守履歴に記載されている発生日時よりも一定時間前から発生日時までに発報された1つもしくは複数の監視イベントもしくはセンサデータ値を関連づけてもよい。
【0027】
また、設備保守履歴データ71に保守記録が存在しない日時や設備についても設備監視履歴データ62や設備環境履歴データ81が存在する場合、存在しないデータ項目部分の値をNULL値などとした関連づけデータ18Aを作成してもよい。
図2EにおいてはID109とID110に設備保守履歴データ71のデータ項目に値が存在しない関連付けデータの例を示している。
【0028】
図2Eに示す関連づけデータ18Aの場合、設備台帳データ51は、「施設名」フィールド、「方向」フィールドおよび「設備名」フィールドの値によって他のデータとの関連づけが行われ、「設備形式」フィールドの値が関連づけデータ18Aの「台帳パート」フィールドに格納されている。設備監視履歴データ62は、「日時」フィールド、「施設名」フィールド、「方向」フィールドおよび「設備名」フィールドの値によって他のデータとの関連づけが行われ、「状態」フィールドの値が関連づけデータ18Aの「監視パート」フィールドに格納されている。設備保守履歴データ71は、「施設名」フィールド、「方向」フィールド、「設備名」フィールドおよび「日時」フィールドの値によって他のデータとの関連づけが行われ、「故障部位」フィールドおよび「処理内容」フィールドの値が関連づけデータ18Aの「保守履歴パート」フィールドに格納されている。設備環境履歴データ81は、「日時」フィールドおよび「区間」フィールドの値によって他のデータとの関連づけが行われ、「区間」フィールド、「気温」フィールド、「天候」フィールドおよび「降水雪量」フィールドの値が関連づけデータ18Aの「保守履歴パート」フィールドに格納されている。
【0029】
なお、関連づけデータ18Aの「キー項目」フィールドには、設備環境履歴データ81の関連づけに用いられる「区間」フィールドが含まれていないが、「区間」フィールドの値は、「施設名」フィールド、「方向」フィールドおよび「設備名」フィールドの値によって設備監視履歴データ62や設備保守履歴データ71と関連づけられる設備台帳データ51の「区間」フィールドから導き出される。
【0030】
予測モデル学習部12は、関連づけデータ管理部18に格納されている関連づけデータ18Aを用いて機械学習を行う。設備監視データや設備環境データなどの観測可能であって時々刻々変化する情報を入力とし、そこから推定される故障部位、故障時期、保守に必要となる機材など保守対応行動に必要となる情報を予測値として出力する予測モデル(故障予測モデル13)を生成する。たとえば
図2Eの事例では、キー項目、台帳パート、監視パート、環境パート、のデータ項目の全部もしくは一部をそのまま、もしくは加工した多次元の特徴量から、保守履歴パートの故障部位を推定するような機械学習モデルを生成する。予測モデルの学習手法については公知の機械学習技術が多数考案されており、本発明では予測モデルの学習については任意の公知技術を用いるものとする。なお、予測モデル学習部は任意に定める運用ポリシーに従って、任意のタイミングで最新の関連づけデータ管理部18内の関連づけデータ18Aを用いて予測モデルの再学習を行うことを想定する。任意のタイミングとは、例えば1年毎などの定期期間ごとのタイミングや、データ内容の傾向変化に伴って予測結果の精度が低下してきたタイミングなどが考えられる。
【0031】
故障予測モデル13は、予測モデル学習部12によって生成された故障予測モデルを指す。「故障予測モデル」という名称としているが、予測する内容は故障の内容には限定されず、予測モデル学習部12で行う機械学習の方法を変更することで、故障には至っていないが動作が不安定になっている状態などを異常状態、もしくは異常値、リスク値などとして予測するモデルである場合も含まれる。また、故障予測モデル13は、学習条件の異なる複数のモデルを保持してもよい。たとえば
図2Eでは設備名として「TN換気」という設備と「ETC」という設備とに関するデータが記録されているが、TN換気設備に関するデータからTN換気設備用予測モデルを生成し、ETC設備に関するデータからETC設備用予測モデルを生成して、2つの予測モデルを用意してもよい。
【0032】
予測用入力データ関連づけ部19は、故障予測部14が予測を実行する際の入力になるデータを生成する。処理内容はデータ関連づけ部11と類似した内容となるが、保守を行う前の状況で予測を行うことになるため、設備保守履歴データ71に相当するデータは含まず、設備管理システム5、設備監視システム6、設備環境情報システム8から得たデータを関連づける。
図2Fに、予測用入力データ関連づけ部19の一出力例を示す。
【0033】
図2Fに示す例では、「2021/4/1 1:11」に設備監視システム6が検知した1件の「開閉不能」という発報について、設備管理システム5および設備環境情報システム8のデータとの関連づけが行われているが、同時刻もしくは一定時間以内に複数の監視発報が発生した場合には複合発報として集約して関連づけてもよい。
【0034】
故障予測部14は、故障予測モデル13を用いて、設備監視システム6で設備監視データが追加される度、もしくは設備監視システム6で特定のキーワードを持つデータが追加される度、もしくは定期的に、予測用入力データ関連づけ部19が生成した入力データを用いて予測処理を実行し、予測結果、および予測結果を導出する際に重視したデータ項目と重視した度合いの値の一覧(以下「重要特徴量一覧」と呼称)を出力する。
図2Gに、故障予測部14の出力データの一例を示す。
【0035】
図2Gに示す例では、予測結果として「開閉部」を出力し、かつ、予測結果に対する確信度を0~1の範囲で示した値「0.9」を出力し、かつ、重要特徴量一覧として影響度の強い上位から3つの特徴量名称、および予測結果決定に対する影響度値を出力している。
【0036】
重要特徴量一覧の生成には、一般に「AIの説明性」などと呼ばれる技術の利用を想定しており、たとえば公知技術であるSHAP等の技術を用いる。SHAPを用いた場合、予測モデル全体が重視する特徴量と影響度値を出力することができる他、1件の入力に対する予測結果毎に入力内容に応じた重要特徴量と影響度値を出力することもできるが、どちらを用いても良い。上記技術を活用して重要項目一覧を生成することにより、熟練者が予測に重視すべきデータ項目を宣言的にルールとして定めなくとも、機械学習結果を反映して動的に重要特徴量とすべきデータ項目を変化させることができ、後述する設備保守履歴検索部16にてより適切な事例検索が期待できる。
【0037】
予測結果および重視したデータ項目については、複数の結果を出力してもよい。たとえば予測値に対する確信度を算出できる決定木やSVMなどの機械学習アルゴリズムを用いる場合、確信度の高い順に複数の予測結果を出力することができる。
【0038】
検索条件生成部15は、故障予測部14から出力された、予測結果と、予測時に重視したデータ項目一覧とを用いて、設備保守履歴検索部16での検索実行に必要な検索条件を生成する。たとえば故障予測部14の出力が
図2Gに示す内容であった場合、故障予測部14で予測を行った際の全入力データ項目を一致条件とするのでなく、検索条件の一致優先度を「状態」、「天候」、「降水雪量」の順とするという優先条件設定を生成する。また、一致優先度の高いそれぞれのデータ項目について、影響度の値を重要度と解釈し、重要度の値を変換して重み値を設定してもよい。重要度を重みに変換する方法は問わないが、たとえば
図2Gの例で重要特徴量として出力されている3つの項目に付与されている重要度値そのものを重みとして使用した検索条件を生成し、値が一致したデータ項目の重みの合計値が高い検索結果を上位とするといった、総合一致度を算出するような検索手段を用いるなどが考えられる。この場合、「降水雪量」のように連続値をとるデータ項目については、完全一致しない場合でも値の差分に応じて一致度を下げるなどの処理を加えて総合一致度を算出するなどが考えられる。
【0039】
なお、優先条件設定としては、1位よりも上位とする必須条件を設定しても良い。例えば故障予測部14の出力として
図2Gに加えて、入力として使用した
図2Fのデータも併せて出力し、設備名を必須条件とすることが考えられる。この場合、設備保守履歴検索部16の出力はETC設備に関する履歴のみとなり、関係の無い設備の履歴が検索されることを防ぐことができる。
【0040】
また、前述の条件に加えて、予測結果の一致有無を優先条件に加えてもよい。たとえば本実施形態では、予測結果は故障部位の予測値となっているが、予測結果を優先条件1位として、
図2Gの予測値である「開閉部」が故障部位となっていた関連づけデータ18Aに高い総合一致度を与えるようにしてもよい。
【0041】
設備保守履歴検索部16は、検索条件生成部15が作成した条件を用いて関連づけデータ管理部18の検索を行う。検索実行は、少なくとも検索条件生成部15で生成した優先条件設定で必須条件となったデータ項目について故障予測部14の入力データの値と一致することを必須とした検索を行い、必須条件にマッチした事例一覧について、必須条件以外の条件についてどの条件に合致したかを優先条件一致項目一覧として出力する。
図2Hに、設備保守履歴検索部16の一出力例を示す。
【0042】
図2Hは、設備名を必須条件とした上で、優先条件について一致の有無に重要度値を掛け合わせた値を一致度とし、各重要特徴量の一致度の合算値を総合一致度とした例を示している。
【0043】
条件入力・表示部17は、故障予測部14が出力した予測結果と、設備保守履歴検索部16が出力した検索結果とを画面上に出力する。また、保守部門2の担当者が、表示順序を変更したり、検索条件の優先順位を変更したり、などの表示内容調整を行うための条件入力を行う。設備保守履歴検索結果を表示する際には、設備保守履歴検索部16が出力した総合一致度が高い順にリストアップして表示する。リストアップした表示の際に、優先条件一致項目一覧の内容を併せて表示して、リストアップされた各設備保守事例がどのデータ項目について重視されてリストアップされているのかを表示してもよい。さらに、優先条件一致項目一覧から特定の優先条件を選択し、当該優先条件の一致度が高い順に並び変えることも可能とする。
図2Iに、条件入力・表示部17の表示画面の一例を示す。
【0044】
図2Iに示す例では、
図2Fの内容を用いて、予測実行時の観測情報が表示されている(a1)。また、
図2Gの内容を用いて、予測結果の内容が表示されている(a2)。
【0045】
また、条件入力用に、ソートキーを選択するためのプルダウンメニュー(a3)が表示されている。このプルダウンメニューにより、
図2Hに示す設備保守履歴検索部16の出力の各列からソートキーを選択することができる。表示画面上に表示される設備保守履歴検索部16の出力は、ソートキーの選択に応じて表示順序が変化する。
図2Iの例ではソートキーは1つを選択する例となっているが、複数のソートキーを選択できるようにすることも可能であるし、重視項目に表示されている特徴量以外のデータ項目を必須項目として入力して設備保守履歴検索部16における必須条件に追加して検索を実行させるようにしても良い。
【0046】
これまで、保守部門2の担当者は、設備監視システム6の表示内容から状況を判断しつつ自身の記憶から過去の類似保守事例を思い出して故障保守の段取りを立案して、立案した対応に必要な機材を用意して現場へ向かう、という対応を行ってきた。
【0047】
本実施形態の設備保守支援システム1においては、前述した各部の動作により、故障保守対応の段取りを立案するための参考情報が提示されることとなり、記憶に頼らずとも参考情報を確認して効率的な保守作業段取りの立案が可能になる他、経験の少ない担当者であっても適切な判断ができるようになる。
【0048】
図3Aは、データ関連づけ部11の処理の流れ示すフローチャートである。
【0049】
データ関連づけ部11は、設備監視システム6から設備監視履歴データ62を入力する(S101)。データ関連づけ部11は、設備保守情報システム7から設備保守履歴データ71を入力する(S102)。データ関連づけ部11は、設備管理システム5から設備台帳データ51を入力する(S103)。また、データ関連づけ部11は、設備環境情報システム8から設備環境履歴データ81を入力する(S104)。なお、各種データの入力は、
図3Aで示す順序で行うことに限定されない。各種データの入力は、並列的に行われてもよい。
【0050】
データ関連づけ部11は、入力した各種データから、設備個体特定のためのキー項目値を抽出する(S105)。データ関連づけ部11は、キー項目に従い、各種データ(設備監視履歴データ62、設備保守履歴データ71、設備環境履歴データ81、設備台帳データ51)を関連づける(S106)。データ関連づけ部11は、各種データが関連づけられた関連づけデータ18Aを出力する(S107)。
【0051】
図3Bは、予測モデル学習部12の処理の流れを示すフローチャートである。
【0052】
予測モデル学習部12は、関連づけデータ管理部18によって管理されている関連づけデータ18Aを入力する(S201)。予測モデル学習部12は、入力した関連づけデータ18Aを学習データとして用いて、故障予測モデル13を作成するための機械学習を行う(S202)。予測モデル学習部12は、機械学習によって作成した故障予測モデル13を出力する(S203)。
【0053】
図3Cは、予測用入力データ関連づけ部19と故障予測部14の処理の流れを示すフローチャートである。
【0054】
予測用入力データ関連づけ部19は、設備監視システム6から設備状態変化データ(設備監視データ)を入力する(S301)。予測用入力データ関連づけ部19は、故障予測モデル13の種類に応じて、(たとえば一定期間遡ってからの)設備監視履歴データ62を設備監視システム6から入力する(S302)。
【0055】
予測用入力データ関連づけ部19は、入力した設備監視履歴データ62から、設備個体特定のためのキー項目値を抽出する(S303)。予測用入力データ関連づけ部19は、キー項目に該当する設備台帳データ51を設備管理システム5から入力する(S304)。また、予測用入力データ関連づけ部19は、キー項目に該当する設備環境履歴データ81を設備環境情報システム8から入力する(S305)。
【0056】
予測用入力データ関連づけ部19は、キー項目に従い、各種データ(設備監視履歴データ62、設備環境履歴データ81、設備台帳データ51)を関連づける(S306)。故障予測部14は、関連づけられた各種データを用いて、故障予測を実行する(S307)。故障予測部14は、予測結果と、入力項目別重要度とを出力する(S308)。
【0057】
図3Dは、検索条件生成部15および設備保守履歴検索部16の処理の流れを示すフローチャートである。
【0058】
検索条件生成部15は、条件入力・表示部17を介して、表示対象条件を(保守部門2の)ユーザから入力する(S401)。なお、表示対象条件の入力は必須ではない(オプション)。表示対象条件の入力が無い場合、デフォルトの表示対象条件が適用される。
【0059】
検索条件生成部15は、故障予測部14から出力される予測結果および入力項目別重要度を入力する(S402)。検索条件生成部15は、入力した、表示対象条件と、予測結果および入力項目別重要度とに基づき、関連づけデータ管理部18で管理されている関連づけデータ18Aの検索条件を生成する(S403)。
【0060】
設備保守履歴検索部16は、検索条件生成部15が生成した検索条件を用いて、関連づけデータ18Aの検索を実行する(S404)。設備保守履歴検索部16は、入力項目別重要度に基づき、関連づけデータ18Aの検索結果をソートする(S405)。S401の表示対象条件がない場合、この処理はスキップされる(オプション)。設備保守履歴検索部16は、例えば
図2Hに示すような総合一致度によって順序付けられ、関連づけデータ18Aの検索結果を出力する(S406)。設備保守履歴検索部16によって出力された関連づけデータ18Aの検索結果は、条件入力・表示部17を介して、ユーザに提示される。
【0061】
以上のように、本実施形態の設備保守支援システム1は、異常発生時(保守が必要となる状態)もしくは異常発生時の一定期間前から異常発生時までの設備監視データと、異常発生時の保守履歴データとを関連づけて収集・蓄積した関連づけデータ18Aから、設備監視履歴データ62を入力として保守を要する部位を予測する故障予測モデル13を生成し、設備監視履歴データ62の新規データ追加をトリガとして保守を要する部位を予測して提示する、もしくは設備監視データ62に新規データ追加が無くとも一定時間毎に正常稼働時と異なる設備監視データ62の発生状況から異常発生を予測して提示する、とともに、当該部位の保守を行った設備保守履歴データ71から類似状況において異常発生した保守履歴を検索して保守作業者9に提示することにより、過去の保守活動の知見を参考にして保守対応方針立案に役立てることができ、熟練者でなくても的確な保守対応を行えるようにする。
【0062】
また、本実施形態の設備保守支援システム1は、保守履歴を検索して提示する際に、故障予測モデル13が重要視した特徴量の値の類似性に基づいて検索結果をランキング表示することにより、個々の設備の設備監視履歴データ62に含まれる複数のデータ項目の中から予測時に重要視されたデータ項目が類似している保守事例を優先して提示する。これにより、検索結果が多量に存在する場合でも、より類似性の高い状況で発生した保守履歴から順に確認して保守対応方針立案に役立てられる。
【0063】
さらに、本実施形態の設備保守支援システム1は、推論実行時に故障予測モデル13が重要視した特徴量が類似している過去の監視データを検索し、類似状況において過去にどの程度の確率で保守が発生したかを提示することにより、観測された監視データの示す状況が保守対象とどの程度関連深いかを判断して保守対応方針立案に役立てられる。
【0064】
なお、前述の故障予測モデル13は、保守を要する部位を予測するモデルに限定されるものではなく、故障が発生するまでの期間を推定するモデルや、対象となる設備が平時と比べて異常な動作状態になっているかどうかを推定するモデルなどの場合でも同様の効果を得られるものである。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1…設備保守支援システム、5…設備管理システム、6…設備監視システム、7…設備保守情報システム、8…設備環境情報システム、11…データ関連づけ部、12…予測モデル学習部、13…故障予測モデル、14…故障予測部、15…検索条件生成部、16…設備保守履歴検索部、17…条件入力・表示部、18…関連づけデータ管理部、18A…関連づけデータ、19…予測用入力データ関連づけ部、51…施設台帳データ、61…設備状態変化データ抽出部、62…設備監視履歴データ、71…設備保守履歴データ、81…設備環境履歴データ。