(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122333
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】回転検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
G01D5/245 110W
G01D5/245 110L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025981
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】マーカート セバスチャン
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA46
2F077NN02
2F077NN17
2F077NN24
2F077PP11
2F077VV25
(57)【要約】
【課題】軸方向隙間の間隔調整作業を簡素化することができる回転検出装置を提供する。
【解決手段】回転体12を収容するハウジング22と、回転体12と一体的に回転する被検出部30と、被検出部30と軸方向隙間32を空けて軸方向Xに対向する検出部34と、検出部34が設置される設置部材36と、を備えた回転検出装置であって、ハウジング22及び設置部材36の一方に設けられる雌ねじ部46と、ハウジング22及び設置部材36の他方に設けられ雌ねじ部46にねじ込まれる雄ねじ部48と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を収容するハウジングと、前記回転体と一体的に回転する被検出部と、前記被検出部と軸方向隙間を空けて軸方向に対向する検出部と、前記検出部が設置される設置部材と、を備えた回転検出装置であって、
前記ハウジング及び前記設置部材の一方に設けられる雌ねじ部と、
前記ハウジング及び前記設置部材の他方に設けられ前記雌ねじ部にねじ込まれる雄ねじ部と、を備える回転検出装置。
【請求項2】
前記被検出部と前記検出部との間に軸方向隙間を空けた状態で、前記ハウジングと前記設置部材を相対回転不能に固定する固定部材を備える請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記ハウジング及び前記設置部材に挿通される挿通部材である請求項2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記ハウジング及び前記設置部材の少なくとも一方には前記固定部材が挿通される長孔が設けられる請求項3に記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記ハウジング及び前記設置部材のそれぞれには、前記固定部材を装着するための装着部が設けられ、
前記ハウジング及び前記設置部材の少なくとも一方の前記装着部は、周方向に間隔を空けて複数設けられる請求項2から4のいずれかに記載の回転検出装置。
【請求項6】
前記ハウジング及び前記設置部材の一方の前記装着部は等角度間隔で設けられる請求項5に記載の回転検出装置。
【請求項7】
前記ハウジング及び前記設置部材のそれぞれには、前記ハウジング内から配線を引き出す配線通路を形成するための配線穴が設けられる請求項1から6のいずれかに記載の回転検出装置。
【請求項8】
前記配線は、モータ配線を含み、
前記ハウジング及び前記設置部材それぞれの前記配線穴の個数は、前記モータ配線の個数よりも多い請求項7に記載の回転検出装置。
【請求項9】
前記ハウジング及び前記設置部材の一方には、前記ハウジング及び前記設置部材を固定する固定部材を装着するための装着部が等角度間隔で設けられ、
前記設置部材には、前記ハウジング及び前記設置部材のいずれかの前記装着部と同じ等角度間隔で複数の前記配線穴が設けられる請求項7または8に記載の回転検出装置。
【請求項10】
前記ハウジング及び前記設置部材は、前記ハウジング及び前記設置部材の周方向相対位置が複数の固定可能位置のいずれかに配置されるときに固定部材により固定でき、
前記設置部材及び前記ハウジングは、前記複数の固定可能位置のいずれに配置されるときも、前記ハウジングの前記配線穴に対して前記設置部材の前記配線穴が径方向に重なるように構成される請求項7から9のいずれかに記載の回転検出装置。
【請求項11】
前記設置部材に配線を固定する配線固定部材を備える請求項1から10のいずれかに記載の回転検出装置。
【請求項12】
前記検出部を有する検出ユニットを備え、
前記設置部材には、第1タイプの前記検出ユニットと、前記第1タイプの前記検出ユニットとは構成の異なる第2タイプの検出ユニットのいずれも設置可能であり、
本回転検出装置は、前記第1タイプ及び前記第2タイプの前記検出ユニットのいずれが前記設置部材に設置された場合も、前記雌ねじ部に対する前記雄ねじ部のねじ込み量を変更可能である請求項1から11のいずれかに記載の回転検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回転体と一体的に回転する被検出部と、被検出部と軸方向に対向する検出部と、検出部が設置される設置部材と、を備える回転検出装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転検出装置によって目的とする検出特性を得るうえで、回転検出装置の検出部と被検出部との間にある軸方向隙間の間隔調整作業を必要とする場合がある。本願発明者は、この軸方向隙間の間隔調整作業の簡素化を図るうえで、従来技術に関して改良の余地があるとの認識を得た。
【0005】
本開示の目的の1つは、軸方向隙間の間隔調整作業を簡素化することができる回転検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の回転検出装置は、回転体を収容するハウジングと、前記回転体と一体的に回転する被検出部と、前記被検出部と軸方向隙間を空けて軸方向に対向する検出部と、前記検出部が設置される設置部材と、を備えた回転検出装置であって、前記ハウジング及び前記設置部材の一方に設けられる雌ねじ部と、前記ハウジング及び前記設置部材の他方に設けられ前記雌ねじ部にねじ込まれる雄ねじ部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、軸方向隙間の間隔調整作業を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の回転機械の部分的な断面を示す側面図である。
【
図2】第1実施形態の回転検出装置の側面断面図である。
【
図3】第1実施形態の回転検出装置の斜視図である。
【
図7】
図6から設置部材を回転させた状態を示す断面図である。
【
図9】
図9(A)は第1実施形態の回転検出装置の前面図であり、
図9(B)は制御ユニットの機能ブロック図である。
【
図10】第1検出ユニットと設置部材を示す背面図である。
【
図12】第2検出ユニットと設置部材を示す前面図である。
【
図13】第2検出ユニットと設置部材を示す背面図である。
【
図15】第2実施形態の回転検出装置を
図6と同じ視点から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0010】
(第1実施形態)
図1を参照する。回転検出装置10は、回転体12を備える回転機械14に用いられる。以下、回転体12の回転中心線C12に沿った方向を軸方向Xといい、その回転中心線C12を中心とする円の円周方向及び半径方向を単に周方向、径方向という。
【0011】
本実施形態の回転機械14はアクチュエータである。これは、回転体12としてのロータ軸16と、ロータ軸16を回転させるモータ18と、ロータ軸16の回転を減速して被駆動部材に出力する減速機20と、回転体12を収容するハウジング22と、を備える。回転体12は、回転機械14に組み込まれる軸受(不図示)を介して回転自在に支持される。本実施形態のハウジング22は、回転体12の他にモータ18等を収容する。被駆動部材の具体例は特に限定されず、例えば、コンベア、車輪、工作機械、ロボット(産業用ロボット、サービスロボット等)等の被駆動機械の一部である。
【0012】
本実施形態のモータ18は、三相ブラシレスDCモータである。モータ18の具体例は特に限定されず、例えば、ブラシ付きDCモータ、ACモータ(永久磁石モータ、誘導モータ、リラクタンスモータ等)、コアレスモータ等でもよい。モータ18は、ハウジング22に固定されるステータ18aと、ロータ軸16と一体回転可能なロータ18bと、を備える。
【0013】
図2、
図3、
図4を参照する。回転検出装置10は、前述のハウジング22の他に、回転体12(ロータ軸16)と一体的に回転する被検出部30と、被検出部30と軸方向隙間32を空けて軸方向Xに対向する検出部34と、検出部34が設置される設置部材36とを備える。ハウジング22は、回転機械14の一部を兼ねている。ハウジング22は、軸方向片側に向かって開放する筒状の第1周壁部22aを備える。
【0014】
回転検出装置10の被検出部30と検出部34は非接触式ロータリエンコーダを構成する。本実施形態のロータリエンコーダは、検出部34が磁気センサ、被検出部30が磁気スケールとなる磁気式エンコーダである。この具体例は特に限定されず、例えば、検出部34が光学センサ、被検出部30が光学スケールとなる光学式エンコーダ等でもよい。
【0015】
被検出部30は、磁気スケール等の環状のスケールである。本実施形態の被検出部30は、ボルトB1等を用いて回転体12に取り付けられる環状のハブ38に固定される。本実施形態の被検出部30は、ハウジング22に収容される。
【0016】
検出部34は、回転体12とともに被検出部30が回転したときに、所定の物理量(磁場、光量等)の変化を検出することで回転体12の回転を検出可能である。本実施形態の検出部34は、所定の物理量を検出して電気信号に変換するセンサ素子(磁気感応素子等)を内蔵するセンサIC(IC:Integrated Circuit)である。このセンサICは、センサ素子の検出した電気信号を処理することで、その検出結果として、回転体12の回転状態(回転角等)を示す検出信号を生成可能である。
【0017】
このようなロータリーエンコーダを用いる場合、軸方向隙間32の間隔に応じて検出部34による検出特性が変動する。例えば、本実施形態のように磁気式エンコーダを用いる場合、軸方向隙間32の間隔に応じて被検出部30(磁気スケール)の発する磁束の密度、向き等が変動する。これに伴い、検出部34(センサ素子)により検出できる信号強度が変化することで検出特性が変動する。
【0018】
検出部34は、検出ユニット40の一部となる。検出ユニット40は、検出部34の他に、検出部34を実装する回路基板42とを備える。本実施形態の回路基板42は円弧状をなす。
【0019】
設置部材36は、ハウジング22の第1周壁部22aと径方向に重なる位置に設けられる第2周壁部36aと、軸方向Xで被検出部30側(以下、単に軸方向内側ともいう)にある内側面部36bと、軸方向Xで被検出部30とは反対側(以下、単に軸方向外側ともいう)にある外側面部36cと、検出部34が設置される被設置部36dと、を備える。内側面部36bには軸方向内側に向かうに連れて径方向外側に延びるテーパー部36eが形成される。外側面部36cには第2周壁部36aよりも径方向外側に突き出てハウジング22の開口端部と軸方向Xに対向するフランジ部36fが形成される。被設置部36dは、第2周壁部36aから径方向内側に突き出る突出部によって構成される。本実施形態の被設置部36dには検出ユニット40の他の構成部品(回路基板42)を介して検出部34が設置される。
【0020】
回転検出装置10は、ハウジング22に設けられる雌ねじ部46と、設置部材36に設けられる雄ねじ部48とを備える。雌ねじ部46は、ハウジング22の第1周壁部22aの内周部に設けられ、雄ねじ部48は、設置部材36の第2周壁部36aの外周部に設けられる。雌ねじ部46は、ハウジング22の第1周壁部22aにおける反負荷側開口端部の内周部に設けられる。雄ねじ部48は雌ねじ部46にねじ込まれる。雄ねじ部48と雌ねじ部46はねじ機構50を構成する。雌ねじ部46に対する雄ねじ部48のねじ込み量を変更することで、ハウジング22及び設置部材36の軸方向相対位置が変化する。これに伴い、ハウジング22内の回転体12(被検出部30)と設置部材36に設置される検出部34との軸方向相対位置が変化し、被検出部30と検出部34の間の軸方向隙間32の間隔を調整可能となる。
【0021】
図5を参照する。
図5は、後述の
図6の5-5断面図でもある。回転検出装置10は、被検出部30と検出部34との間に軸方向隙間32を空けた状態で、ハウジング22と設置部材36を相対回転不能に固定する固定部材60を備える。固定部材60は、これらを相対回転不能に固定することで、ハウジング22と設置部材36を軸方向Xに相対移動不能に固定する。
【0022】
本実施形態の固定部材60は、ハウジング22の第1挿通孔62A及び設置部材36の第2挿通孔62Bに挿通される挿通部材である。本実施形態の固定部材60(挿通部材)は、ハウジング22及び設置部材36を締結する締結部材としてのブラインドリベット、つまり、リベットである。
【0023】
固定部材60は、第1挿通孔62A及び第2挿通孔62Bに挿通される軸部60aと、径方向外側の挿通孔62Aの周縁部に座する頭部60bと、径方向内側の挿通孔62Bの周縁部に当たることで各挿通孔62A、62Bに対する抜けを規制する抜け規制部60cとを備える。抜け規制部60cは、固定部材60がリベットの場合、軸部60aの端部に設けられるカシメ部によって構成される。抜け規制部60c(カシメ部)は、固定部材60がブラインドリベットとなる場合、軸部60aに形成される中空孔60dにマンドレルを挿通し、そのマンドレルヘッド64を破断させつつマンドレルを径方向外側に引き抜くことで設けられる。抜け規制部60cの具体例は特に限定されず、固定部材60がボルトの場合、抜け規制部60cは、ナット等によって構成されてもよい。
【0024】
ハウジング22及び設置部材36のそれぞれには、固定部材60を装着するための装着部66A、66Bが設けられる。ハウジング22の第1周壁部22aには第1装着部66Aが設けられ、設置部材36の第2周壁部36aには第2装着部66Bが設けられる。第1装着部66Aは、固定部材60が挿通される第1挿通孔62Aを備える。第2装着部66Bは、固定部材60が挿通される第2挿通孔62Bを備える。この他に、径方向外側の装着部66Aは、固定部材60の頭部60bが座する座ぐり孔68を備える。本実施形態において第1挿通孔62Aは丸孔であり、第2挿通孔62Bは長孔70である。本実施形態の長孔70は軸方向Xを長手方向として延びている。本実施形態の固定部材60は、第1挿通孔62Aと第2挿通孔62Bに挿通された状態で、ハウジング22及び設置部材36の各装着部66A、66Bに装着される。
【0025】
図6、
図7を参照する。
図6は、
図5の6-6断面図でもある。
図7は、
図6の状態から設置部材36を切替回転角度θ(後述する)だけ回転させた状態を示す。ハウジング22及び設置部材36は、ハウジング22及び設置部材36の周方向相対位置が固定可能位置に配置されるときに固定部材60により固定できる。この固定可能位置は、ハウジング22の第1装着部66Aと設置部材36の第2装着部66Bに固定部材60を装着できる位置となる。本実施形態での固定可能位置は、固定部材60を挿通できるようにするため、第1装着部66Aの第1挿通孔62Aと第2装着部66Bの第2挿通孔62Bとが径方向に重なる位置となる。
【0026】
本実施形態のハウジング22及び設置部材36は、選択できる固定可能位置の個数が複数(ここでは8個)となるように構成される。これを実現するため、ハウジング22及び設置部材36の少なくとも一方の装着部66A、66Bは周方向に間隔を空けて複数設けられる。本実施形態では、固定可能位置の個数と同数の8個の第1装着部66Aがハウジング22に設けられ、4個の第2装着部66Bが設置部材36に設けられる。つまり、第1装着部66A及び第2装着部66Bのそれぞれを複数設けるうえで、一方の装着部の個数は他方の装着部の個数よりも少なくなる。
【0027】
ハウジング22及び設置部材36は、互いに相対回転させることで、複数の固定可能位置のなかから選択する固定可能位置を順番に切り替えることができる。本実施形態のハウジング22及び設置部材36は、このような固定可能位置の切り替えのための切替回転角度θが一定(ここでは45°)となるように構成される。これを実現するため、ハウジング22及び設置部材36の一方の装着部66A、66B(ここでは第1装着部66A)は、切替回転角度θと同じ第1等角度間隔(ここでは45°)で設けられる。第1装着部66Aは、360°を第1等角度間隔で等分した複数の第1等角度位置P1(ここでは合計8個の第1等角度位置P1)のそれぞれに設けられることになる。また、設置部材36の第2装着部66Bは、第1等角度間隔を空けた複数の第2等角度位置P2のうちの少なくとも一部の第2等角度位置P2に設けられる。複数の第2等角度位置P2は、360°を第1等角度間隔で等分する位置となる。本実施形態では複数の第2等角度位置P2に一つおきで第2装着部66Bが設けられ、90°の等角度間隔で設置部材36に設けられることになる。このように二つ以上の第2等角度位置P2に第2装着部66Bを設けた場合、いずれの固定可能位置にあるときも、複数組(ここでは四組)の第1装着部66Aと第2装着部66Bを径方向に重ねることができる。
【0028】
回転検出装置10は、ハウジング22及び設置部材36を複数の固定可能位置のいずれかの固定可能位置に配置することで軸方向隙間32の間隔を段階的に調整できる。この軸方向隙間32の間隔は、ねじ機構50のねじ込み量に応じた大きさとなり、ねじ込み量が大きくなるほど軸方向隙間32の間隔が小さくなる。この回転検出装置10により段階的に調整できる間隔の幅(ある段階の間隔から次の段階の間隔までの幅)を間隔調整幅という。本実施形態の間隔調整幅は、「ねじ機構50のねじピッチ/固定可能位置の個数」となる。ここでのねじピッチは、雄ねじ部48及び雌ねじ部46それぞれの隣り合うねじ山間の軸方向距離をいう。例えば、ねじ機構50のねじピッチが1.0mm、固定可能位置の個数が八個の場合、間隔調整幅は、0.125mm(=1.0mm/8)となる。つまり、本実施形態の回転検出装置10は、ミリメートル(サブミリメートル)のオーダーの間隔調整幅で段階的に軸方向隙間32の間隔を調整できる。この間隔調整幅を変更するうえでは、ねじピッチ、固定可能位置の個数を変更すればよい。なお、ここでのねじピッチ、固定可能位置の個数、間隔調整幅は一例に過ぎず、その具体例は特に限定されない。
【0029】
以上の回転検出装置10の効果を説明する。
【0030】
(A)回転検出装置10は、ハウジング22に設けられる雌ねじ部46と、設置部材36に設けられる雄ねじ部48とを備える。よって、雌ねじ部46に対する雄ねじ部48のねじ込み量を変更するだけで、軸方向隙間32の間隔を簡単に調整できる。ひいては、軸方向隙間32の間隔調整作業を簡素化することができる。
【0031】
例えば、軸方向隙間32の間隔調整のため、回転検出装置10の各構成部品(ハウジング22、設置部材36、回路基板42等)の加工精度を高める手段も考えられる。これと比べて、本実施形態によれば、各構成部品の加工精度を高めずに済み、加工コストの削減を図ることができる。
【0032】
この他にも、軸方向隙間32の間隔調整のため、回転検出装置10の二つの構成部品(例えば、設置部材36と検出ユニット40)間に間隔調整用シムを配置する手段も考えられる。この場合、回転検出装置10の組み立て→軸方向隙間32の間隔の測定→回転検出装置10の分解→シムの配置という一連の流れが必要となる。この点、本実施形態によれば、回転検出装置10の分解をせずに、ねじ機構50のねじ込み量を変更するだけで、軸方向隙間32の間隔を調整できる。よって、シムを用いる場合と比べて、軸方向隙間32の間隔調整作業を簡素化できるうえ、シムの製造コストを削減することもできる。
【0033】
回転検出装置10は、ハウジング22と設置部材36を相対回転不能に固定する固定部材60を備える。よって、固定部材60によって、ねじ機構50による調整後の間隔で確実に固定できるようになる。
【0034】
固定部材60は、ハウジング22及び設置部材36に挿通される挿通部材である。よって、ハウジング22と設置部材36に挿通部材を挿通するだけの簡素な構成によって、ハウジング22と設置部材36を相対回転不能に固定できる。
【0035】
(B)本実施形態の設置部材36には挿通孔62Bとして長孔70が設けられる。よって、長孔70の長手方向での各挿通孔62A、62Bの相対位置の大きな変動を許容しつつ、各挿通孔62A、62Bに挿通した固定部材60によりハウジング22及び設置部材36を固定できるようになる。
【0036】
このように長孔70は、各挿通孔62A、62Bを径方向に重ねつつ各挿通孔62A、62Bに固定部材60を挿通するうえで、各挿通孔62A、62Bの相対位置の許容できる変動量(以下、許容変動量という)を広げるために設けられる。この許容変動量は、長孔70となる挿通孔を丸孔(径方向から見て長孔70に内接する内接円と同径の丸孔)にする場合と比べて長孔70の長手方向に広げることができる。
【0037】
(C)第1装着部66A及び第2装着部66Bの少なくとも一方は複数設けられる。よって、各装着部66A、66Bの個数が一つのみの場合と比べ、固定可能位置の個数を増やすことができる。これに伴い、前述した軸方向隙間32の間隔調整幅を小さくすることができ、軸方向隙間32の間隔を細かく調整できるようになる。
【0038】
(D)ハウジング22及び設置部材36の一方の装着部66A、66Bは等角度間隔で設けられる。これにより、切替回転角度θが一定となり、軸方向隙間32の間隔調整幅を一定に近づけることができ、正確な間隔調整作業を実現することができる。
【0039】
次に、回転検出装置10の他の特徴を説明する。
図8、
図9を参照する。
図8は、
図7の8-8断面図でもある。回転機械14は、ハウジング22内に配置される第1電気機器とハウジング22外に配置される第2電気機器とを接続する複数の第1配線80を備える。
図3等では、第1配線80を省略している。
図9では、第1配線80の中心線のみを用いて第1配線80を示す。本実施形態の複数の第1配線80は、第1電気機器となるモータ18に接続されるモータ配線81である。モータ配線81は、例えば、モータ18のステータ18aのコイル(不図示)に接続される。モータ配線81は、コイルの各相(ここではU相、V相、W相の三相)に対応して個別に設けられ、自身に対応する相への通電経路となる。本実施形態のモータ配線81は計3個設けられることになる。
【0040】
このモータ配線81は、本実施形態において、第2電気機器となる制御ユニット76の制御部44に電気的に接続される。制御ユニット76は、回転機械14を制御する制御部44を備える。制御部44は、例えば、不図示の回路基板に実装される制御ICである。制御部44は、ドライバ回路を用いてモータ18を駆動することで回転機械14を制御可能である。制御部44は、モータ配線81を通して電力を供給することでモータ18を駆動可能である。制御部44は、第2配線83を介して検出ユニット40の検出部34に電気的に接続される。検出部34は、自身の検出結果となる検出値を制御部44に出力する。制御部44は、検出部34の検出値に基づいてモータ18を駆動する。本実施形態の制御部44は、検出部34の検出値(例えば、回転体12の回転角)が目標値に近づくようにモータ18を駆動するフィードバック制御を行う。
【0041】
制御ユニット76は、図示しないものの、例えば、検出ユニット40の軸方向外側において設置部材36と一体的に設けられる。この他にも、制御ユニット76は、回転検出装置10から分離して設けられてもよい。制御ユニット76は、第1配線80(モータ配線81)が機械的に接続される第1コネクタ76aと、第2配線83が機械的に接続される第2コネクタ76bとを備える。第2配線83は、検出ユニット40の回路基板42に設けられる第3コネクタ84(
図3も参照)に機械的に接続される。
【0042】
複数の配線80は、ハウジング22の内部空間→後述する配線通路88→設置部材36の軸方向外側にある外部空間82を順に経由して、制御ユニット76の第1コネクタ76aに機械的に接続される。これに替えて、検出ユニット40に制御部44を設け、検出ユニット40の第3コネクタ84に機械的に接続することで、その制御部44にモータ18を電気的に接続してもよい。
【0043】
ハウジング22は第1配線穴86Aを備え、設置部材36は第2配線穴86Bを備える。第1配線穴86Aは、ハウジング22の第1周壁部22aを径方向に貫通するとともにハウジング22の軸方向X外側に向かって開放する切欠孔によって構成される。第2配線穴86Bは、設置部材36の第2周壁部36aの外周部において径方向内側に凹むとともに軸方向Xに延びる溝部によって構成される。本実施形態の第2配線穴86Bは、設置部材36の第2周壁部36aの他にフランジ部36fにも形成される。
【0044】
第1配線穴86Aと第2配線穴86Bは、互いに径方向に重なる位置に配置されたとき、ハウジング22内から配線80を引き出す配線通路88を形成する。配線通路88は、ハウジング22の第1配線穴86Aと設置部材36の第2配線穴86Bとによって軸方向Xに連続して広がるように形成される。
【0045】
このように、ハウジング22及び設置部材36のそれぞれの配線穴86A、86Bによって軸方向Xに連続した配線通路88を形成できる。このため、設置部材36に配線穴86A、86Bがない場合と比べ、ハウジング22及び設置部材36の径方向外側を経由する配線80と径方向に重なる軸方向範囲において、回転検出装置10全体の外径寸法を小型化することができる。
【0046】
図6、
図7を参照する。ハウジング22及び設置部材36は、複数の固定可能位置のいずれに配置されるときも、第1配線穴86Aに対して第2配線穴86Bが径方向に重なるように構成される。これにより、いずれの固定可能位置にあるときも、第1配線穴86Aと第2配線穴86Bとの間で配線通路88を形成でき、その配線通路88から配線80を引き出せるようになる。
【0047】
これを実現するうえで、本実施形態の第2配線穴86Bは、固定可能位置の切り替えのための切替回転角度θと同じ第1等角度間隔(ここでは45°)で設置部材36に設けられる。第2配線穴86Bは、360°を第1等角度間隔で等分した複数の第3等角度位置P3(ここでは合計8個の第3等角度位置P3)のそれぞれに設けられることになる。複数の第3等角度位置P3は、第2装着部66Bのある複数の第2等角度位置P2に対して周方向にずれた位置となる。また、第1配線穴86Aは、切替回転角度θと同じ第1等角度間隔を空けた複数の第4等角度位置P4のうちの少なくとも一部の第4等角度位置P4に設けられる。第4等角度位置P4は、360°を第1等角度間隔で等分する位置となる。本実施形態ではモータ配線81の個数と同数の三つの第4等角度位置P4に第1配線穴86Aが設けられる。モータ配線81は個別の第1配線穴86Aの形成する配線通路88を経由する。複数の第4等角度位置P4は、第1装着部66Aのある複数の第1等角度位置P1に対して周方向にずれた位置となる。
【0048】
以上の設置部材36の第2配線穴86Bは、ハウジング22及び設置部材36のいずれかの装着部66A、66Bと同じ等角度間隔で設けられる。本実施形態では、ハウジング22の第1装着部66Aと同じ第1等角度間隔(ここでは45°)で複数の第2配線穴86Bが設けられる。このとき、同じ等角度間隔で設けられるハウジング22の複数の第1装着部66Aと複数の第2配線穴86Bは径方向Xに重ならずに、周方向にずれた位置に設けられる。この他にも、第2配線穴86Bは、設置部材36の第2装着部66Bと同じ等角度間隔で設けられてもよい。
【0049】
図8、
図9を参照する。検出ユニット40は、設置部材36に配線80を固定する配線固定部材90(
図3も参照)を備える。配線固定部材90は、設置部材36に対してハウジング22とは軸方向反対側に配置され、設置部材36の外側面部36cに取り付けられる。設置部材36は配線固定部材90を取り付るための取付部36gを備える。取付部36gは、配線固定部材90をボルトB2により取り付けるための取付孔36hを備える。本実施形態の取付孔36hは雌ネジ孔であり、配線固定部材90を貫通するボルトB2を取付孔36hにねじ込むことで、配線固定部材90を設置部材36に着脱可能に取り付けることができる。本実施形態の配線固定部材90は、配線80を挟み付けることで設置部材36に配線80を固定するクランプである。これを実現するうえで、本実施形態の配線固定部材90は、自身と設置部材36との間に配線80を挟み付ける。この他にも、配線固定部材90は、配線固定部材90単独で配線80を挟み付けてもよい。
【0050】
これにより、意図しない外力が配線80に付与された場合に、配線固定部材90によってその外力に抵抗できるようになる。ひいては、配線80が接続される相手部材に対する配線80の離脱を防止できる。特に、本実施形態のように配線80が外部に露出する環境下にある場合、意図しない外力が配線80に付与され易いため、その対策として有効となる。ここでの相手部材とは、本実施形態でいえば、モータ18(ステータ18a)と制御ユニット76をいう。
【0051】
設置部材36には、第2配線穴86Bの個数と同数の複数の取付部36gが設けられている。複数の取付部36gは、設置部材36の複数の第2配線穴86Bのそれぞれに対応して個別に設けられる。複数の取付部36gは、軸方向Xから見て、自身に対応する第2配線穴86Bよりも径方向内側に配線固定部材90を取り付け可能な位置に設けられる。
【0052】
これにより、いずれの第2配線穴86Bから配線80が引き出された場合でも、その第2配線穴86Bに対応する取付部36gに配線固定部材90を取り付けることで、その配線80を設置部材36に固定することができる。また、配線80が引き出される第2配線穴86Bの個数が複数の場合に、その第2配線穴86Bの個数と同数の配線固定部材90を設置部材36に取り付けることで、個別の第2配線穴86Bから引き出される配線80のそれぞれを設置部材36に固定することができる。
【0053】
なお、設置部材36の軸方向内側の内側面部36bには、第2配線穴86Bの軸方向内側端部から径方向内側に向かって延びる切欠部36iが形成される。これにより、設置部材36の内側面部36bのテーパー部36eと第2配線穴86Bとの間でエッジ部を形成せずに済み、第2配線穴86Bを経由する配線80とエッジ部との接触を避けることができる。
【0054】
次に、前述の回転検出装置10を用いた間隔調整作業の概要を説明する。まず、ハウジング22内から第1配線穴86Aを通して配線80を引き出す配線引出工程を行う。次に、雌ねじ部46に対して雄ねじ部48をねじ込むことで、ハウジング22に設置部材36を仮止めする仮止め工程を行う。次に、軸方向隙間32の間隔を目標間隔範囲内に調整する間隔調整工程を行う。間隔調整工程後には、固定部材60を用いてハウジング22と設置部材36を固定する第1固定工程を行う。また、間隔調整工程後には、第1固定工程と前後して、配線固定部材90を用いて設置部材36に配線80を固定する第2固定工程を行う。第2固定工程では、第1配線穴86Aから引き出しておいた配線80を、第1配線穴86Aと第2配線穴86Bにより形成される配線通路88を通して予め引き出しておく。以上の一連の工程を行うことで間隔調整作業が完了する。
【0055】
前述の間隔調整工程では、軸方向隙間32の間隔が目標間隔範囲内であるか否かを判断するため、隙間ゲージ等を用いて軸方向隙間32の間隔を測定してもよい。この他にも、回転体12を回転させた状態のもと、検出部34(センサ素子)の検出した電気信号の信号強度を測定してもよい。これは、例えば、制御ユニット76と外部端末を接続し、外部端末により専用の測定プログラムを実行することで実現してもよい。この外部端末は、制御ユニット76に接続されるケーブルを介して制御ユニット76の制御部44と電気的に接続される。この測定プログラムは、制御ユニット76の制御部44に回転体12を回転させる指示を行う指示機能と、検出部34の検出した電気信号の信号強度を測定する測定機能とを実行可能である。この場合、電気信号の信号強度が目標強度範囲内にある場合に、軸方向隙間32の間隔が目標間隔範囲内にあると判断する。
【0056】
次に、設置部材36に関する他の特徴を説明する。
図9、
図10、
図11を参照する。設置部材36には、第1タイプの検出ユニット40A(以下、第1検出ユニット40Aともいう)を設置可能である。設置部材36の被設置部36dには、第1検出ユニット40Aを設置するための第1設置孔36jが設けられる。本実施形態では第1設置孔36jは雌ネジ孔となる。設置部材36の被設置部36dは周方向に間隔を空けて複数設けられる。
【0057】
第1検出ユニット40Aは、これまで説明した検出ユニットである。第1検出ユニット40Aは設置部材36の複数の被設置部36dに対して軸方向内側(被検出部30側)に重なる位置に配置される。第1検出ユニット40Aの回路基板42と設置部材36の被設置部36dとの間にはスペーサ100(ここではブッシュ)が配置される。第1検出ユニット40Aは、ボルトB3により、スペーサ100、設置部材36と共締めすることで設置部材36に設置される。本実施形態のボルトB3は、設置部材36の第1設置孔36j(雌ネジ孔)にねじ込まれ、その頭部は第1検出ユニット40Aの軸方向内側に配置される。
【0058】
図12~
図14を参照する。設置部材36には、第1検出ユニット40Aの他に、第1検出ユニット40Aとは構成の異なる第2タイプの検出ユニット40B(以下、第2検出ユニット40Bともいう)も設置可能である。設置部材36の被設置部36dには、第2検出ユニット40Bを設置するための第2設置孔36kが設けられる。本実施形態では第2設置孔36kは雌ねじ孔となる。本実施形態において第1設置孔36j及び第2設置孔36kの一方(ここでは第1設置孔36j)の内径は他方(ここでは第2設置孔36k)の内径より小さい。
【0059】
第2検出ユニット40Bは、検出部34と回路基板42の他に、回路基板42の軸方向外側(被検出部30とは反対側)の外側面部42aを軸方向外側から覆うカバー110と、回路基板42を支持するフレーム112と、を備える。カバー110は、例えば、回路基板42に接着等により取り付けられる。カバー110は、回路基板42の外側面部42aに実装される図示しない電子部品を保護する役割を持つ。フレーム112は、フレーム112を貫通する貫通孔112aを備え、貫通孔112aの内側に回路基板42が配置される。回路基板42は、例えば、フレーム112の貫通孔112aの内周面に設けられるエッジ部112bを食い込ませることで、フレーム112に取り付けられる。
【0060】
第2検出ユニット40Bは、設置部材36の複数の被設置部36dに対して軸方向内側に重なる位置に配置される。第2検出ユニット40Bは、ボルトB4によりフレーム112と設置部材36を共締めすることで設置部材36に設置される。本実施形態のボルトB4は、設置部材36の第2設置孔36kにねじ込まれ、その頭部は第2検出ユニット40Bの軸方向内側に配置される。
【0061】
このように、共通の設置部材36に第1検出ユニット40Aと第2検出ユニット40Bのいずれも設置可能である。また、回転検出装置10は、図示しないものの、第1検出ユニット40A及び第2検出ユニット40Bのいずれが設置部材36に設置された場合も、軸方向隙間32を調整可能である。よって、異なる検出ユニット40を回転検出装置10に用いるうえで設置部材36を共用できる。ひいては、異なる検出ユニット40を用いた回転検出装置10の間で部品点数を削減することができる。
【0062】
なお、第1タイプの検出ユニット40と第2タイプの検出ユニット40とは構成において相違していればよく、その具体例は特に限定されない。また、異なる検出ユニット40を用いた回転検出装置10において、設置部材36の他に、ハウジング22、被検出部30を共用してもよい。回転検出装置10を備える回転機械14として見た場合に、回転機械14において検出ユニット40以外の構成は共用していてもよいともいえる。この他にも、第1タイプの検出ユニット40を用いる場合と第2タイプの検出ユニット40を用いる場合で、被検出部30も異なるタイプの被検出部30を用いてもよい。例えば、第1検出ユニット40Aを用いる場合は第1タイプの被検出部30を用いて、第2検出ユニット40Bを用いる場合は、第1タイプの被検出部30とは構成の異なる第2タイプの被検出部30を用いてもよい。
【0063】
図9~
図11を参照する。回路基板42は、軸方向外側(被検出部30とは反対側)にある外側面部42aと、軸方向内側(被検出部30側)にある内側面部42bとを備える。内側面部42bには検出部34を構成する第1電子部品114A(センサIC)のみが実装され、他の電子部品114B,114Cは回路基板42の外側面部42aに実装される。この他の電子部品114B,114Cは、回路基板42の厚さ方向(軸方向X)での高さ寸法が第1電子部品114Aよりも大きい第2電子部品114Bを含む。これにより、第1電子部品114Aと他の電子部品114B、114cを同じ内側面部42bに実装する場合と比べ、回路基板42を被検出部30に近づけることができ、その分、回転検出装置10の軸方向寸法を小型化できる。
【0064】
(第2実施形態)
図15を参照する。本実施形態のモータ配線81の個数は、第1実施形態と同様に三個である。本実施形態のハウジング22及び設置部材36それぞれの配線穴86A、86Bの個数は、モータ配線81の個数よりも多い。これを実現するうえで、本実施形態において第1配線穴86A及び第2配線穴86Bの個数はそれぞれ八個となる。本実施形態においては、第2配線穴86Bは前述の切替回転角度θと同じ第1等角度間隔(ここでは45°)で設置部材36に設けられ、第1配線穴86Aも第1等角度間隔でハウジング22に設けられる。第2配線穴86Bは、前述の複数(8個)の第3等角度位置P3のそれぞれに設けられ、第1配線穴86Aは、前述の複数(8個)の第4等角度位置P4のそれぞれに設けられることになる。これにより、複数の固定可能位置のいずれに配置されるときも、モータ配線81の個数よりも多い個数の配線通路88を形成できることになる。
【0065】
以上の構成により、配線穴86A、86Bの個数がモータ配線81の個数以下になる場合と比べ、実際に使用できる配線通路88の選択肢を増やすことができる。よって、例えば、回転検出装置10の周辺構造に応じて、複数の配線通路88のなかから周辺構造と干渉し難い配線通路88からモータ配線81を引き出すことで、柔軟に使用する配線通路88を変更することができる。
【0066】
このように、ハウジング22及び設置部材36それぞれの配線穴86A、86Bの個数とモータ配線81の個数との大小関係は特に問わない。この他にも、ハウジング22及び設置部材36それぞれの配線穴86A、86Bの個数が、モータ配線81の個数よりも少なくともよい。この場合、一つの配線穴86A、86Bに複数のモータ配線81を経由させてもよい。また、一つの配線穴86A、86Bにモータ配線81と他の配線80を経由させてもよい。
【0067】
次に、ここまで説明した各構成要素の変形形態を説明する。
【0068】
回転検出装置10が用いられる回転機械14の具体例はアクチュエータに限定されない。回転機械14は、例えば、減速機20を備えずにモータ18を備えるモータ装置であってもよい。この場合、回転機械14は、実施形態のように、ロータリエンコーダ(検出部34)の検出値に基づいてフィードバック制御を行うサーボモータ装置でもよい。
【0069】
回転体12の具体例は特に限定されない。回転体12は、例えば、ロータ軸16に替えて、減速機20の出力軸と一体回転可能でありロータ軸16及び出力軸を貫通する回転軸であってもよい。
【0070】
減速機20の種類の具体例は特に限定されない。例えば、撓み噛合い型減速機、偏心揺動型減速機、単純遊星型減速機等でもよい。撓み噛合い型減速機の種類は特に限定されず、例えば、筒型、シルクハット型、カップ型等のいずれでもよい。偏心揺動型減速機の種類は特に限定されず、例えば、内歯歯車の中心線上にクランク軸が配置されるセンタークランクタイプ、その中心線からオフセットした位置にクランク軸が配置される振り分けタイプ等でもよい。
【0071】
複数の配線80は、モータ18とは別の第1電気機器に接続される異なる種類の配線を含んでいてもよい。ここでの別の第1電気機器とは、例えば、センサ(温度センサ、圧力センサ等)、ブレーキ等の少なくとも一つをいう。
【0072】
(A)の効果との関係では、ハウジング22及び設置部材36の一方に雌ねじ部46が設けられ、他方に雄ねじ部48が設けられていればよい。実施形態とは異なり、設置部材36の第2周壁部36aの内周部に雌ねじ部46が設けられ、ハウジング22の第1周壁部22aの外周部に雄ねじ部48が設けられてもよいということである。この場合、雄ねじ部48は、ハウジング22の第1周壁部22aにおける反負荷側開口端部の外周部に設けられてもよい。
【0073】
回転検出装置10は固定部材60を備えずともよい。回転検出装置10は、軸方向隙間32の間隔の変動を防ぐために設置部材36を覆うカバーを備えていてもよい。
【0074】
固定部材60の具体例は挿通部材に限定されない。固定部材60は、例えば、クランプ、くさび等でもよい。固定部材60が挿通部材(締結部材)となる場合、固定部材60の具体例は特に限定されず、例えば、リベットの他にも、ボルト及びナットの組み合わせ、ボルト等でもよい。固定部材60がボルトを備える場合、第1挿通孔62A及び第2挿通孔62Bのうち内側の挿通孔はボルトをねじ込む雌ねじ孔となってもよい。
【0075】
固定部材60は、特定の周方向相対位置(固定可能位置)にある場合にのみハウジング22及び設置部材36を固定可能である例を説明した。この他にも、固定部材60は、任意の周方向相対位置にあるハウジング22及び設置部材36を固定可能であってもよい。この場合、回転検出装置10は、実施形態とは異なり、軸方向隙間32の間隔を無段階的に調整できることになる。これは、例えば、固定部材60にクランプ、くさび等を用いた場合に実現してもよい。
【0076】
(B)の効果との関係では、ハウジング22及び設置部材36の少なくとも一方に長孔70が設けられていればよい。第1挿通孔62A、第2挿通孔62Bの少なくとも一方が長孔70であればよいともいえる。長孔70の延びる方向(長手方向)は特に限定されず、例えば、ねじ機構50のねじ山に沿った螺旋方向であってもよい。
【0077】
第1装着部66A及び第2装着部66Bの個数は特に限定されない。第1装着部66A及び第2装着部66Bの両方を一個のみとしてもよいし、二個以上の任意の個数としてもよい。
【0078】
(C)の効果との関係では、ハウジング22及び設置部材36の少なくとも一方の装着部66A、66Bが周方向に間隔を空けて複数設けられていればよい。例えば、ハウジング22に複数(例えば、八個)の第1装着部66Aを設け、設置部材36に単数の第2装着部66Bを設けてもよいし、その逆としてもよい。また、複数の装着部66A、66Bのそれぞれは、等角度間隔で設けずに、任意の角度間隔で設けてもよい。
【0079】
(D)の効果との関係では、切替回転角度θと同じ第1等角度間隔で設置部材36に第2装着部66Bを設けてもよい。この場合、ハウジング22において、第1等角度間隔を空けた複数の等角度位置のうちの少なくとも一部の等角度位置に第1装着部66Aを設けてもよい。ハウジング22及び設置部材36の一方に等角度間隔で装着部66A、66Bを設けていればよいともいえる。
【0080】
また、ハウジング22及び設置部材36の一方のみが配線穴86A、86Bを備えてもよいし、両方が配線穴86A、86Bを備えていなくともよい。設置部材36の配線穴86Bは、ハウジング22及び設置部材36のいずれかの装着部と同じ等角度間隔で設けられていなくともよい。
【0081】
回転検出装置10は配線固定部材90を備えていなくともよい。
【0082】
設置部材36には、異なるタイプの検出ユニット40の一方のみを設置可能であってもよい。
【0083】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。実施形態及び変形形態において言及している構造/数値には、製造誤差を考慮すると同一とみなすことができるものも当然に含まれる。
【0084】
実施形態において単数部材により構成された構成要素は複数部材で構成されてもよい。同様に、実施形態において複数部材により構成された構成要素は単数部材で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…回転検出装置、12…回転体、18…モータ、22…ハウジング、30…被検出部、32…軸方向隙間、34…検出部、36…設置部材、40…検出ユニット、46…雌ねじ部、48…雄ねじ部、60…固定部材、66A…装着部、70…長孔、80…配線、81…モータ配線、86A…配線穴、86B…配線穴、88…配線通路、90…配線固定部材。