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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122343
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】光ファイバ用母材
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
C03B37/012 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025996
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】梶川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】福本 良平
(72)【発明者】
【氏名】竹永 勝宏
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021BA02
(57)【要約】
【課題】効率よく光ファイバを製造し得る光ファイバ用母材を提供する。
【解決手段】 光ファイバ用母材1Pは、長手方向に沿って延在する孔25が設けられ、光ファイバ1におけるクラッド20の少なくとも一部となるクラッドガラス体20Pを含むクラッドロッド20Rと、光ファイバ1におけるコア10となるコアガラス体10Pを含む大径ロッド部11R、及び大径ロッド部11Rの一端に接続し大径ロッド部11Rより細い小径ロッド部12Rを含み、孔25に保持されるコアロッド10Rと、を備え、クラッドロッド20Rの一端部は小径ロッド部12Rの少なくとも一部を囲う。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って延在する孔が設けられ、光ファイバにおけるクラッドの少なくとも一部となるクラッドガラス体を含むクラッドロッドと、
前記光ファイバにおける前記クラッドと異なる所定部となる所定のガラス体を含む大径ロッド部、及び前記大径ロッド部の一端に接続し前記大径ロッド部より細い小径ロッド部を含み、前記孔に保持されるガラスロッドと、
を備え、
前記クラッドロッドの一端部は前記小径ロッド部の少なくとも一部を囲う
ことを特徴とする光ファイバ用母材。
【請求項2】
前記クラッドロッドは、前記一端部において前記小径ロッド部の前記大径ロッド部側と反対側に溶着され前記孔の一端を塞ぐ第1封止部と、他端部において前記大径ロッド部の前記小径ロッド部側と反対側に溶着され前記孔の他端を塞ぐ第2封止部と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用母材。
【請求項3】
前記クラッドロッドは、前記一端部を含む前記長手方向に沿った第1区間と、前記第1区間と連接する第2区間とを含み、
前記第1区間の断面における前記クラッドロッドの断面積と前記ガラスロッドの断面積の合計は、前記第2区間の断面における前記クラッドロッドの断面積と前記ガラスロッドの断面積の合計より小さい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ用母材。
【請求項4】
前記クラッドロッドは、前記一端部を含む前記長手方向に沿った第1区間と、前記第1区間と連接する第2区間とを含み、
前記第1区間の断面における前記クラッドロッドの断面積と前記ガラスロッドの断面積の合計は、前記第2区間の断面における前記クラッドロッドの断面積と前記ガラスロッドの断面積の合計より小さく、
前記第1区間における前記孔の直径は、前記第2区間における当該孔の直径より大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用母材。
【請求項5】
前記クラッドロッドにおける前記第1封止部と前記第2封止部との間の本体部は、前記第1封止部側の端から前記第2封止部側に前記長手方向に沿った第1区間と、前記第1区間と連接する第2区間とから成り、
前記第2区間の断面において、前記クラッドロッドに囲われ、前記第2区間において前記ガラスロッドを保持する保持空間に連通する空間の面積は、前記第2区間の断面における前記保持空間の面積より大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ用母材。
【請求項6】
前記第1区間における前記孔の直径は、前記第2区間における当該孔の直径より大きい
ことを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ用母材。
【請求項7】
前記ガラスロッドを複数備え、
前記クラッドロッドに複数の前記ガラスロッドが個別に保持される複数の前記孔が設けられる
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光ファイバ用母材。
【請求項8】
前記ガラスロッドを複数備え、
前記クラッドロッドには、複数の前記ガラスロッドが個別に保持される複数の前記孔と、前記第1区間の少なくとも一部に亘って前記長手方向に沿って延在し複数の前記孔が連通して成す連通孔とが設けられる
ことを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に光ファイバ用母材。
【請求項9】
前記大径ロッド部と前記小径ロッド部とは、同じ材料からなり、
前記大径ロッド部から前記小径ロッド部にかけて屈折率の最大値が一定である
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光ファイバ用母材。
【請求項10】
前記大径ロッド部は、前記小径ロッド部より長い
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の光ファイバ用母材。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ用母材に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを製造するための光ファイバ用母材の製造方法として、例えば、孔開法が知られており、下記特許文献1には、当該方法が開示されている。孔開法では、ドリル等を用いてクラッドとなるクラッドロッドに貫通孔を設け、当該貫通孔内にコアとなるコアロッドを挿入することで、光ファイバ用母材が製造される。この光ファイバ用母材は、両端部をそれぞれ溶断してクラッドロッドの両端部にコアロッドに溶着されて貫通孔の端を塞ぐ封止部をそれぞれ形成する溶断加工が施されたうえで、光ファイバの線引きに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-031427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような光ファイバ用母材の溶断加工には時間を要するため、当該時間を短縮したいとの要望がある。また、溶断加工後の光ファイバ用母材を一端部から線引きする場合、一端部には、クラッドロッドとコアロッドとが溶融して先細り形状の溶融部が形成され、当該溶融部によってクラッドロッドの孔の一端側が塞がれる。線引きが進むにつれて光ファイバ用母材は一端側から短くなり、孔内の空間であるクラッドロッドとコアロッドとの間の空間が小さくなる。当該空間が小さくなると当該空間内の気体の圧力が上昇して製造される光ファイバに気泡が含まれ易くなる。このため、光ファイバに気泡が含まれることを抑制して、光ファイバの生産性を向上したいとの要望もある。したがって、効率よく光ファイバを製造したいとの要望がある。
【0005】
そこで、本発明は、効率よく光ファイバを製造し得る光ファイバ用母材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的の達成のため、本発明の光ファイバ用母材は、長手方向に沿って延在する孔が設けられ、光ファイバにおけるクラッドの少なくとも一部となるクラッドガラス体を含むクラッドロッドと、前記光ファイバにおける前記クラッドと異なる所定部となる所定のガラス体を含む大径ロッド部、及び前記大径ロッド部の一端に接続し前記大径ロッド部より細い小径ロッド部を含み、前記孔に保持されるガラスロッドと、を備え、前記クラッドロッドの一端部は前記小径ロッド部の少なくとも一部を囲うことを特徴とするものである。
【0007】
この光ファイバ用母材の一端部では、クラッドロッドの一端部が小径ロッド部の少なくとも一部を囲い、小径ロッド部は大径ロッド部より細い。このため、この光ファイバ用母材における一端部の単位長さ当たりの熱容量は、小径ロッド部の太さが大径ロッド部の太さと同じ場合と比べて小さい。このため、この光ファイバ用母材は、この場合と比べて、光ファイバ用母材の一端部の溶断加工に要する時間を短くし得る。または、この光ファイバ用母材を大径ロッド部が位置する側の端部から線引きする場合、当該端部には溶融部が形成され、当該溶融部は線引きが進むにつれて小径ロッド部が位置する側の端部に近づく。このため、この光ファイバ用母材によれば、大径ロッド部が位置する側の端部から線引きすることで、ガラスロッドの構成が同じ長さで大径ロッド部のみから成る構成とされる場合と比べて、同じ量だけ線引きが進んだ状態でのクラッドロッドとガラスロッドとの間の空間を大きくできる。このため、この光ファイバ用母材によれば、上記の場合と比べて、この空間内の気体の圧力の上昇量を小さくし得、光ファイバに気泡が含まれることを抑制し得、光ファイバの生産性を向上し得る。
【0008】
前記クラッドロッドは、前記一端部を含む前記長手方向に沿った第1区間と、前記第1区間と連接する第2区間とを含み、前記第1区間の断面における前記クラッドロッドの断面積と前記ガラスロッドの断面積の合計は、前記第2区間の断面における前記クラッドロッドの断面積と前記ガラスロッドの断面積の合計より小さくてもよい。この光ファイバ用母材では、当該光ファイバ用母材の第1区間での単位長さ当たりの熱容量が当該光ファイバ用母材の第2区間での単位長さ当たりの熱容量より小さい。このため、この光ファイバ用母材によれば、第1区間での上記の断面積の合計が、第2区間での当該断面積の合計以上の場合と比べて、光ファイバ用母材における一端部での単位長さ当たりの熱容量を小さくし得る。このため、この光ファイバ用母材によれば、上記の場合と比べて、光ファイバ用母材における一端部での単位長さ当たりの熱容量を小さくし得、光ファイバ用母材の一端部の溶断加工に要する時間を短くし得る。
【0009】
この場合、前記第1区間における前記孔の直径は、前記第2区間における当該孔の直径より大きくてもよい。クラッドロッドの孔の径は、例えば、孔を形成するドリルの直径を変更することで変化させることができる。このため、このような構成によれば、クラッドロッドが作製し難くなることを抑制しつつ光ファイバ用母材の一端部の溶断加工に要する時間を短くし得る。
【0010】
前記クラッドロッドは、前記一端部において前記小径ロッド部の前記大径ロッド部側と反対側に溶着され前記孔の一端を塞ぐ第1封止部と、他端部において前記大径ロッド部の前記小径ロッド部側と反対側に溶着され前記孔の他端を塞ぐ第2封止部と、を有してもよい。
【0011】
この光ファイバ用母材を第2封止部側の端部から線引きする場合、当該端部にはネックダウン部が形成され、当該ネックダウン部は線引きが進むにつれて第1封止部側に近くづく。この光ファイバ用母材では、大径ロッド部より細い小径ロッド部は第1封止部側に位置している。このため、この光ファイバ用母材によれば、第2封止部側の端部から線引きすることで、ガラスロッドが同じ長さで大径ロッド部のみから構成される場合と比べて、同じ量だけ線引きが進んだ状態でのクラッドロッドとガラスロッドとの間の空間を大きくできる。このため、この光ファイバ用母材によれば、上記の場合と比べて、この空間内の気体の圧力の上昇量を小さくし得、光ファイバに気泡が含まれることを抑制し得、光ファイバの生産性を向上し得る。
【0012】
この場合、前記クラッドロッドにおける前記第1封止部と前記第2封止部との間の本体部は、前記第1封止部側の端から前記第2封止部側に前記長手方向に沿った第1区間と、前記第1区間と連接する第2区間とから成り、前記第1区間の断面において、前記クラッドロッドに囲われ、前記第2区間において前記ガラスロッドを保持する保持空間に連通する空間の面積は、前記第2区間の断面における前記保持空間の面積より大きくてもよい。この光ファイバ用母材によれば、第1区間及び第2区間の長さが同じ長さで第1区間の断面における上記の空間の面積が第2区間の断面における上記保持空間の面積以下とされる場合と比べて、同じ量だけ線引きが進んだ状態でのクラッドロッドとガラスロッドとの間の空間を大きくできる。このため、この光ファイバ用母材によれば、上記の場合と比べて、この空間内の気体の圧力の上昇量を小さくし得、光ファイバに気泡が含まれることを抑制し得る。この場合、第1区間における前記孔の直径は、前記第2区間における当該孔の直径より大きいこととしてもよい。
【0013】
或いは、第1封止部と第2封止部とを有する場合、前記クラッドロッドは、前記一端部を含む前記長手方向に沿った第1区間と、前記第1区間と連接する第2区間とを含み、前記第1区間の断面における前記クラッドロッドの断面積と前記ガラスロッドの断面積の合計は、前記第2区間の断面における前記クラッドロッドの断面積と前記ガラスロッドの断面積の合計より小さいこととしてもよい。
【0014】
上記の光ファイバ用母材は、前記ガラスロッドを複数備え、前記クラッドロッドに複数の前記ガラスロッドが個別に保持される複数の前記孔が設けられてもよい。上記の所定のガラス体がコアガラス体である場合にこのような構成にすることで、マルチコアファイバを製造できるようにし得る。
【0015】
クラッドロッドに複数の孔が設けられると共にクラッドロッドが第1区間と第2区間とを含む場合、前記クラッドロッドには、前記第1区間の少なくとも一部に亘って前記長手方向に沿って延在し複数の前記孔が連通して成す連通孔が設けられ、前記長手方向に沿って見る場合に前記第2区間における複数の前記孔の全体が前記連通孔内に位置することとしてもよい。このような構成にすることで、連通孔が設けられない場合と比べて、第1区間での単位長さ当たりの熱容量が小さくなり、光ファイバ用母材の一端部の溶断加工に要する時間を短くし得る。なお、この観点では、長手方向に沿って見る場合に前記第2区間における複数の孔の一部が連通孔内に位置しなくてもよい。
【0016】
クラッドロッドに複数の孔が設けられると共に第1封止部と第2封止部と本体部とから成る場合、前記クラッドロッドには、前記第1区間の少なくとも一部に亘って前記長手方向に沿って延在し複数の前記孔が連通して成す連通孔が設けられてもよい。この光ファイバ用母材によれば、連通孔が設けられない場合と比べて、同じ量だけ線引きが進んだ状態でのクラッドロッドとガラスロッドとの間の空間を大きくできる。このため、この光ファイバ用母材によれば、上記の場合と比べて、この空間内の気体の圧力の上昇量を小さくし得、光ファイバに気泡が含まれることを抑制し得る。また、この光ファイバ用母材によれば、連通孔がない場合と比べて、線引きが進んだ状態でのクラッドロッドと特定のガラスロッドとの間の空間の圧力がクラッドロッドと他のガラスロッドとの間の空間の圧力より高くなることを抑制し得る。なお、長手方向に沿って見る場合に前記第2区間における複数の孔の全体が連通孔内に位置してもよい。
【0017】
前記大径ロッド部と前記小径ロッド部とは、同じ材料からなり、前記大径ロッド部から前記小径ロッド部にかけて屈折率の最大値が一定であることとしてもよい。このようなガラスロッドは、例えば、大径ロッド部を延伸して大径ロッド部の一部から小径ロッド部を形成することで得られる。このようなガラスロッドは、大径ロッド部の一端に、小径ロッド部が溶着されている場合と比べて、大径ロッド部と小径ロッド部との接続部の強度を強くでき、振動等でガラスロッドが接続部で折れることを抑制し得る。
【0018】
前記大径ロッド部は、前記小径ロッド部より長いことが好ましい。このような構成によれば、大径ロッド部が小径ロッド部より短い場合と比べて、長尺の光ファイバを製造できるようにし得る。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、効率よく光ファイバを製造し得る光ファイバ用母材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る光ファイバ用母材によって製造される光ファイバの長手方向に垂直な断面図である。
図2図1に示す光ファイバを製造するための光ファイバ用母材の長手方向に沿った断面図である。
図3図2に示す光ファイバ用母材の長手方向に垂直な断面図である。
図4図2に示す光ファイバ用母材の長手方向に垂直な別の断面図である。
図5図2に示す光ファイバ用母材に溶断加工が施された状態を示す図である。
図6】第1実施形態に係る光ファイバ用母材の製造方法を含む光ファイバの製造方法の工程を示すフローチャートである。
図7】ダミーガラス管溶着工程の様子を示す図である。
図8】エッチング工程の様子を示す図である。
図9】挿入工程後の様子を示す図である。
図10】閉塞工程の様子を示す図である。
図11】第1溶断工程の様子を示す図である。
図12】第1溶断工程後の様子を示す図である。
図13】第2溶断工程の様子を示す図である。
図14】線引工程の様子を示す図である。
図15】第2実施形態における光ファイバ用母材を図4と同様に示す図である。
図16図15に示す光ファイバ用母材のクラッドロッドを示す図である。
図17図15に示す光ファイバ用母材に溶断加工が施された状態を図5と同様に示す図である。
図18】変形例における光ファイバ用母材を図15と同様に示す図である。
図19図18に示す光ファイバ用母材のクラッドロッドを図16と同様に示す図である。
図20図18に示す光ファイバ用母材に溶断加工が施された状態を図17と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る光ファイバ用母材を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、本明細書では、理解を容易にするために、各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光ファイバ用母材によって製造される光ファイバの長手方向に垂直な断面図である。図1に示すように、本実施形態の光ファイバ1は、マルチコアファイバであり、複数のコア10と、それぞれのコア10の外周面を囲むクラッド20と、クラッド20の外周面を被覆する被覆層30とを主な構成として備える。本実施形態では、コア10の数は4つであり、それぞれのコア10は、光ファイバ1の中心軸を中心とした円周上に概ね等間隔で配置されている。また、当該断面におけるコア10の外形及びクラッド20の外形は円形であるが、これらの外形は楕円形等の非円形であってもよい。また、コア10の数は特に制限されるものではなく、例えば、光ファイバ1は、1つのコア10を有するシングルコアファイバであってもよい。
【0023】
コア10の屈折率はクラッド20の屈折率よりも高い。本実施形態では、コア10はゲルマニウム等の屈折率が高くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成り、クラッド20は何ら添加物の無いシリカガラスから成る。なお、コア10が何ら添加物の無いシリカガラスから成り、クラッド20がフッ素(F)等の屈折率が低くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成っていてもよく、屈折率を変化させるドーパントは特に制限されるものではない。
【0024】
被覆層30は、例えば熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の樹脂から成る。
【0025】
図2は、図1に示す光ファイバ1を製造するための光ファイバ用母材の長手方向に沿った断面図である。図2に示すように、光ファイバ用母材1Pは、複数のガラスロッドから成るロッド集合体であり、本実施形態では、コアロッド10Rと、光ファイバ1のクラッド20の少なくとも一部となるクラッドガラス体20Pを含むクラッドロッド20Rと、を主に備える。コアロッド10Rの数は、光ファイバ1のコア10の数と同じ4つである。
【0026】
それぞれのコアロッド10Rは、互いに同様の構成であり、円柱状の大径ロッド部11Rと、大径ロッド部11Rの一端に接続され大径ロッド部11Rより細い円柱状の小径ロッド部12Rとを含む。大径ロッド部11Rは小径ロッド部12Rより長い。また、大径ロッド部11R及び小径ロッド部12Rのそれぞれの直径は、長手方向において概ね一定である。
【0027】
図3は、図2に示す光ファイバ用母材1Pの長手方向に垂直な断面図であり、大径ロッド部11R及び後述するクラッドロッド20Rの第2区間が位置する部位の断面図である。図3に示すように、大径ロッド部11Rは、光ファイバ1におけるクラッド20と異なる所定部としてのコア10となるロッド状のコアガラス体10Pを含む。本実施形態の大径ロッド部11Rは、コアガラス体10Pの外周面がクラッドガラス体20Pと同じガラス体から成る被覆層11RLで被覆されたガラスロッドである。
【0028】
図4は、図2に示す光ファイバ用母材1Pの長手方向に垂直な別の断面図であり、小径ロッド部12R及び後述するクラッドロッド20Rの第1区間が位置する部位の断面図である。図4に示すように、小径ロッド部12Rは、コアガラス体10Pと同じガラス体から成るロッド状の本体部12RBがクラッドガラス体20Pと同じガラス体から成る被覆層12RLで被覆されたガラスロッドである。本体部12RBの一端が大径ロッド部11Rのコアガラス体10Pの一端に接続され、被覆層12RLの一端が大径ロッド部11Rの被覆層11RLに接続される。このため、大径ロッド部11Rと小径ロッド部12Rとは、同じ材料から成る。また、コアガラス体10Pと本体部12RBとが一体に形成され、被覆層11RLと被覆層12RLとが一体に形成されている。
【0029】
図2に示すように、このような大径ロッド部11Rと小径ロッド部12Rとの接続部13Rは、大径ロッド部11R側から小径ロッド部12R側に向かって縮径している。また、大径ロッド部11Rから小径ロッド部12Rにかけて屈折率の最大値が一定である。このようなコアロッド10Rは、例えば、大径ロッド部11Rを延伸して大径ロッド部11Rの一部から小径ロッド部12Rを形成することで得られる。なお、大径ロッド部11Rや小径ロッド部12Rは、被覆層11RL,12RLを有していなくてもよい。また、大径ロッド部11Rは小径ロッド部12Rより長い。
【0030】
本実施形態のクラッドロッド20Rは、クラッドガラス体20Pから成る。クラッドロッド20Rの断面の外形は円形であり、外径は長手方向において概ね一定である。また、クラッドロッド20Rの長さは、コアロッド10Rの長さと概ね同じある。クラッドロッド20Rには、長手方向に沿って延在する4つの孔25が設けられ、これら孔25は4つのコアロッド10Rに1対1で対応している。このため、コアロッド10Rが1つの場合、クラッドロッド20Rに設けられる孔25の数は1つとされる。また、これら孔25は、両端がクラッドロッド20Rの両端面に開口する貫通孔である。
【0031】
それぞれの孔25にはコアロッド10Rが保持され、クラッドロッド20Rの一端部が小径ロッド部12Rの少なくとも一部を囲っている。クラッドロッド20Rの中心軸を基準とした孔25の位置は、光ファイバ1の中心軸を基準としたコア10の位置と概ね相似となる位置である。
【0032】
クラッドロッド20Rは、一端部を含む長手方向に沿った第1区間21と、第1区間21と連接する第2区間22とを含む。第1区間21におけるそれぞれの孔25の直径は、第2区間22における当該孔25の直径より大きい。このため、第1区間21の断面におけるクラッドロッド20Rの断面積は、第2区間22の断面におけるクラッドロッド20Rの断面積より小さい。本実施形態では、第1区間21は、第2区間22より短く、第1区間21が小径ロッド部12Rの一部を囲い、第2区間22が小径ロッド部12Rの他の一部と大径ロッド部11Rとを囲う。上記のように、クラッドロッド20Rの長さは、コアロッド10Rの長さと概ね同じため、クラッドロッド20Rの他端部は、大径ロッド部11Rを囲う。また、第1区間21の断面におけるクラッドロッド20Rの断面積とコアロッド10Rの断面積の合計は、第2区間の断面におけるクラッドロッド20Rの断面積とコアロッド10Rの断面積の合計より小さい。
【0033】
このような光ファイバ用母材1Pは、両端部を溶断してクラッドロッド20Rの両端部のそれぞれに孔25の端を塞ぐ封止部を形成する溶断加工がなされたうえで、使用される。次に、この溶断加工が施された状態の光ファイバ用母材について説明する。
【0034】
図5は、図2に示す光ファイバ用母材1Pに溶断加工が施された状態を示す図であり、溶断加工が施された状態の光ファイバ用母材の長手方向に沿った断面図である。以下では、溶断加工後の光ファイバ用母材1Paと溶断加工前の光ファイバ用母材1Pとを区別し易くするため、溶断加工前の光ファイバ用母材1Pをロッド集合体と言い換えて説明する。
【0035】
図5に示すように、光ファイバ用母材1Paは、ロッド集合体1Pと同様に、4つのコアロッド10Raと、クラッドロッド20Raとを備える。
【0036】
コアロッド10Raは、長さが短くされた点において、ロッド集合体1Pのコアロッド10Rと主に異なる。コアロッド10Raは、大径ロッド部11Raと、小径ロッド部12Raとを有する。大径ロッド部11Raは、ロッド集合体1Pのコアロッド10Rの大径ロッド部11Rの一部であり、小径ロッド部12Raは、ロッド集合体1Pのコアロッド10Rの小径ロッド部12Rの一部である。大径ロッド部11Raは小径ロッド部12Raより長く、大径ロッド部11Raと小径ロッド部12Raとの接続部は、ロッド集合体1Pのコアロッド10Rの接続部13Rである。
【0037】
クラッドロッド20Raは、長さが短くされた点、第1封止部23、第2封止部24、及び本体部20RaBを有する点において、ロッド集合体1Pのクラッドロッド20Rと主に異なる。クラッドロッド20Raには、長手方向に沿って延在する4つの孔25aが設けられ、当該孔25aはロッド集合体1Pのクラッドロッド20Rの孔25の一部である。それぞれの孔25aには、一端部側に小径ロッド部12Raが位置し、他端部側に大径ロッド部11Raが位置するように、コアロッド10Raが保持される。
【0038】
クラッドロッド20Raは、小径ロッド部12Raが位置する側の一端部に第1封止部23を有し、大径ロッド部11Raが位置する側の他端部に第2封止部24を有し、第1封止部23と第2封止部24の間の部位が本体部20RaBである。第1封止部23は、他端側から一端側に向かって外径が縮径した先細り形状に形成され、小径ロッド部12Raの大径ロッド部11Ra側と反対側を囲って当該小径ロッド部12Raに溶着されてそれぞれの孔25aの一端を塞いでおり、小径ロッド部12Raが第1封止部23に接続している。このため、クラッドロッド20Raの一端部は小径ロッド部12Raの少なくとも一部を囲っていると理解できる。また、小径ロッド部12Raにおける第1封止部23に囲われる部位は、他端側から一端側に向かって外径が縮径した先細り形状に形成されている。この第1封止部23の先端部にはシリカガラスから成る支持棒40の一端が溶着され、支持棒40の中心軸とクラッドロッド20Raの中心軸とが概ね一致している。
【0039】
第2封止部24は、一端側から他端側に向かって外径が縮径した先細り形状に形成され、大径ロッド部11Raの小径ロッド部12Raと反対側を囲って当該大径ロッド部11Raに融着してそれぞれの孔25aの他端を塞いでおり、大径ロッド部11Raが第2封止部24に接続している。大径ロッド部11Raにおける第2封止部24に囲われる部位は、一端側から他端側に向かって外径が縮径した先細り形状に形成されている。このように、第1封止部23と第2封止部24によってそれぞれの孔25aの両端が塞がれており、それぞれの孔25a内は閉空間である。これら孔25a内の空間であるクラッドロッド20Raとコアロッド10Raとの間の空間の圧力は大気圧より低く、例えば、10-5Paから10-8Pa程度である。
【0040】
本体部20RaBの外径は長手方向において概ね一定であり、本体部20RaBは、第1封止部23側の端から第2封止部24側に長手方向に沿った第1区間21aと、第1区間21aと連接する第2区間22aとから成る。第1区間21aは、ロッド集合体1Pにおけるクラッドロッド20Rの第1区間21の一部である。第2区間22aは、ロッド集合体1Pにおけるクラッドロッド20Rの第2区間22の一部である。このため、第1区間21aが位置する部位の光ファイバ用母材1Paの断面図は、図4と同様であり、第2区間22aが位置する部位の光ファイバ用母材1Paの断面図は、図3と同様である。
【0041】
第1区間21aの断面において、クラッドロッド20Raに囲われる空間は第1区間21aにおける孔25a内の空間であり、第1区間21aの断面におけるこの空間の断面積は、当該第面における孔25aの面積である。また、第2区間22aにおいてコアロッド10Raを保持する保持空間は、第2区間22aにおける孔25a内の空間であり、第1区間21aにおける孔25a内の空間と連通している。本実施形態では、第1区間21aにおけるそれぞれの孔25aの直径は、第2区間22aにおける当該孔25aの直径より大きい。このため、第1区間21aの断面において、クラッドロッド20Raに囲われ、第2区間22aにおいてコアロッド10Raを保持する保持空間に連通する空間の面積は、第2区間22aの断面におけるこの保持空間の面積より大きいと理解できる。本実施形態では、第1区間21aは、第2区間22aより短く、第1区間21aは小径ロッド部12Raの一部を囲い、第2区間22aは小径ロッド部12Raの他の一部と大径ロッド部11Raの一部とを囲う。
【0042】
また、クラッドロッド20Raは、一端部を含む長手方向に沿った区間であり、第1封止部23と第1区間21aとから成る所定区間21aaと、所定区間に連接する区間であり、第2区間22aから成る特定区間22aaとを含んでいると理解できる。所定区間21aaは、ロッド集合体1Pの第1区間21の一部から成り、特定区間22aaはロッド集合体1Pの第2区間22の一部から成る。そして、本実施形態では、所定区間21aaの断面におけるクラッドロッド20Raの断面積とコアロッド10Raの断面積の合計は、特定区間22aaの断面におけるクラッドロッド20Raの断面積とコアロッド10Raの断面積の合計より小さい。
【0043】
次に、光ファイバ用母材1Paの製造方法、及び、光ファイバ1の製造方法について説明する。
【0044】
図6は、本実施形態に係る光ファイバ用母材1Paの製造方法を含む光ファイバ1の製造方法の工程を示すフローチャートである。図6に示すように、本実施形態の光ファイバ用母材1Paの製造方法は、準備工程P1と、閉塞工程P2と、第1溶断工程P3と、第2溶断工程P4と、を備える。光ファイバ1の製造方法は、製造された光ファイバ用母材1Paを線引きする線引工程P5を備える。
【0045】
<準備工程P1>
本工程は、図2に示すロッド集合体1Pを準備する工程である。本実施形態の本工程は、ガラス部材準備工程P11と、ダミーガラス管溶着工程P12と、エッチング工程P13と、挿入工程P14と、を含む。
【0046】
<ガラス部材準備工程P11>
本工程は、複数のガラス部材を準備する工程である。本実施形態において準備する複数のガラス部材は、ロッド集合体1Pが備える4つのコアロッド10R、及びクラッドロッド20Rである。事前にこれら部材を、純水やエタノール、フッ酸等を用いて洗浄しておいても良い。
【0047】
<ダミーガラス管溶着工程P12>
本工程は、準備工程P1で準備したクラッドロッド20Rの両端面のそれぞれにダミーガラス管を溶着する工程である。本実施形態のダミーガラス管は、外径がクラッドロッド20Rの外径と概ね同じでシリカガラスから成る円筒状の管である。以下では、クラッドロッド20Rの一端部側の端面に溶着されるダミーガラス管を第1ガラス管とし、他端部側の端面に溶着されるダミーガラス管を第2ガラス管として説明する。
【0048】
図7は、本工程の様子を示す図である。不図示の旋盤によってクラッドロッド20Rを当該クラッドロッド20Rの中心軸が概ね水平となる状態で当該中心軸周りに回転させながらクラッドロッド20Rの一端部を酸水素バーナによって加熱する。次に、クラッドロッド20Rの一端部側の端面に一方の端面が所定の間隔をあけて対向するように配置される第1ガラス管41を不図示の旋盤によって当該第1ガラス管41の中心軸周りに回転させる。クラッドロッド20Rと第1ガラス管41との回転は同期されており、この状態で、クラッドロッド20Rの一端部と第1ガラス管41のクラッドロッド20R側の端部とを酸水素バーナ50によって加熱する。次に、クラッドロッド20Rの一端部側の端面に第1ガラス管41の一方の端面を突き合わせ、クラッドロッド20Rと第1ガラス管41とが概ね同軸となるように第1ガラス管41をクラッドロッド20Rの一端部側の端面に溶着させる。また、第1ガラス管41と同様にして、クラッドロッド20Rの他端部側の端面に第2ガラス管を溶着させる。第1ガラス管41及び第2ガラス管が溶着された状態において、クラッドロッド20Rのそれぞれの孔25の一方側の端は第1ガラス管41の内部空間に開口し、それぞれの孔25の他方側の端は第2ガラス管の内部空間に開口している。
【0049】
<エッチング工程P13>
本工程は、クラッドロッド20Rにおけるそれぞれの孔25を規定する内周面をエッチングする工程である。図8は、本工程の様子を示す図である。本実施形態では、不図示の旋盤によってガラス管41,42が溶着されたクラッドロッド20Rを中心軸が概ね水平となる状態で当該中心軸周りに回転させつつ、六フッ化硫黄(SF6)ガス等のエッチングガスを第2ガラス管42からクラッドロッド20Rの孔25内に流す。この際、酸水素バーナ50をクラッドロッド20Rの長手方向に沿ってトラバースさせてクラッドロッド20Rを加熱する。このようにして、孔25を規定する内周面をエッチングする。なお、エッチングの方法は特に制限されるものではなく、例えば、フッ化水素酸(HF)等のエッチング液によってエッチングを行ってもよい。
【0050】
<挿入工程P14>
本工程は、ガラス部材準備工程P11で準備したコアロッド10Rをクラッドロッド20Rの孔25に挿入する工程である。図9は、本工程後の様子を示す図である。本実施形態では、まず、酸水素バーナ50を用いて第1ガラス管41の一部を溶断し、当該第1ガラス管41を短くする。次に、4つのコアロッド10Rのそれぞれにおける小径ロッド部12Rの少なくとも一部がクラッドロッド20Rの一端部によって囲われるように、それぞれのコアロッド10Rを当該コアロッド10Rに対応する孔25内に挿入する。こうして、図2に示す光ファイバ用母材であるロッド集合体1Pを得る。なお、当該ロッド集合体1Pは、クラッドロッド20Rに第1ガラス管41及び第2ガラス管42が溶着された状態である。また、クラッドロッド20Rの長さとコアロッド10Rの長さとが概ね同じため、大径ロッド部11Rの小径ロッド部12R側と反対側の端部がクラッドロッド20Rの他端部によって囲われる。
【0051】
<閉塞工程P2>
本工程は、孔25の一端側の開口の少なくとも一部を塞ぐように、クラッドロッド20Rの一端側の端面に閉塞部材を取り付ける工程である。図10は、本工程の様子を示す図である。本実施形態では、閉塞部材はシリカガラスから成る円柱状のダミーロッド43とされ、ダミーロッド43の直径は、第1ガラス管41の内径より小さい。図10に示すように、クラッドロッド20Rの一端側の端面にダミーロッド43の一方の端面が接するようにダミーロッド43を第1ガラス管41の内部空間に挿入する。クラッドロッド20Rの中心軸とダミーロッド43の中心軸とは概ね一致しており、本実施形態では、この状態においてそれぞれの孔25の一端側の開口の全体がダミーロッド43によって覆われている。次に、不図示の旋盤によってロッド集合体1P及びダミーロッド43を中心軸が概ね水平となる状態で当該中心軸周りに同期回転させながらロッド集合体1Pの一端部とダミーロッド43のロッド集合体1P側の端部と第1ガラス管41とを酸水素バーナ50によって加熱する。そして、第1ガラス管41をダミーロッド43に溶着させると共に、ロッド集合体1Pの一端にダミーロッド43を溶着させる。こうして、クラッドロッド20Rの一端側の端面にダミーロッドを取り付け、その結果、本実施形態では、クラッドロッド20Rのそれぞれの孔25の一端側の開口の全体がダミーロッド43と第1ガラス管41とによって塞がれる。
【0052】
<第1溶断工程P3>
本工程は、ロッド集合体1Pの一端部を溶断し、クラッドロッド20Rの一端部に孔25の一端側を塞ぐ第1封止部23を形成する工程である。図11は、本工程の様子を示す図であり、図12は、本工程後の様子を示す図である。図11に示すように、第2ガラス管42に接続される不図示の真空ポンプによってロッド集合体1Pのクラッドロッド20Rのそれぞれの孔25内を真空引きしつつ、不図示の旋盤によってロッド集合体1Pをクラッドロッド20Rの中心軸が概ね水平となる状態で当該中心軸周りに回転させる。この状態において、ロッド集合体1Pの一端部を酸水素バーナ50によって加熱してクラッドロッド20Rの一端部を外周面側から蒸発させ、クラッドロッド20Rの一端部に外径が小さくされたくびれ部26を形成する。そして、第2ガラス管42とダミーロッド43とを長手方向に離れるように相対的に移動させ、くびれ部26を起点にしてロッド集合体1Pの一端部を溶断し、図12に示すように、第1封止部23を形成する。上記のように、クラッドロッド20Rの一端部が小径ロッド部12Rの少なくとも一部を囲うため、溶断されるロッド集合体1Pの一端部には、小径ロッド部12Rの少なくとも一部が位置する。このため、形成される第1封止部23は小径ロッド部12Rに溶着される。本実施形態では、クラッドロッド20Rの第1区間21の一部が第1封止部23とならずにクラッドロッド20Rに残るように、ロッド集合体1Pの一端部を溶断し、第1封止部23の先端に支持棒40の一端を溶着させる。
【0053】
<第2溶断工程P4>
本工程は、ロッド集合体1Pの他端部を溶断し、クラッドロッド20Rの他端部に孔25の他端側を塞ぐ第2封止部24を形成する工程である。図13は、本工程の様子を示す図である。図13に示すように、第1溶断工程P3と同様に、不図示の真空ポンプによってそれぞれの孔25内を真空引きしつつ、不図示の旋盤によってロッド集合体1Pを回転させる。この状態において、ロッド集合体1Pの他端部を酸水素バーナ50によって加熱し、クラッドロッド20Rの他端部に外径が小さくされたくびれ部27を形成する。そして、第2ガラス管42と支持棒40とを長手方向に離れるように相対的に移動させ、くびれ部27を起点にしてロッド集合体1Pの他端部を溶断し、第2封止部24を形成する。上記のように、クラッドロッド20Rの他端部が大径ロッド部11Rの小径ロッド部12R側と反対側の端部を囲うため、形成される第2封止部24は大径ロッド部11Rの小径ロッド部12R側と反対側に溶着される。
【0054】
このように第2封止部24が形成されることで、ロッド集合体1Pのクラッドロッド20Rが光ファイバ用母材1Paのクラッドロッド20Raとなり、ロッド集合体1Pのクラッドロッド20Rの孔25が光ファイバ用母材1Paのクラッドロッド20Raの孔25aとなり、ロッド集合体1Pのコアロッド10Rが光ファイバ用母材1Paのコアロッド10Raとなり、図5に示す光ファイバ用母材1Paを得る。
【0055】
<線引工程P5>
本工程は、光ファイバ用母材1Paを線引きして光ファイバ1を得る工程である。図14は、本工程の様子を示す図である。図14に示すように、本工程では、光ファイバ用母材1Paにおける大径ロッド部11Raが位置する側の端部を紡糸炉60で加熱して、当該端部にクラッドロッド20Raとコアロッド10Raとが溶融して一体化された先細り形状の溶融部NDを形成し、当該溶融部NDの先端からガラスを線引きする。この溶融部NDは、クラッドロッド20Raの孔25aの第1封止部23側と反対側の端を塞いでいる。溶融部NDから線引きされたガラスは、すぐに固化して、コアガラス体10Pがコア10となり、クラッドガラス体20Pがクラッド20となり、コア10とクラッド20とから構成される光ファイバ裸線1Nとなる。被覆装置70によってこの光ファイバ裸線1Nの外周面上に被覆層30を設けて、図1に示す光ファイバ1が得られる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバ用母材であるロッド集合体1Pは、クラッドロッド20Rと、ガラスロッドとしてのコアロッド10Rとを備える。クラッドロッド20Rには、長手方向に沿って延在する孔25が設けられる。コアロッド10Rは、大径ロッド部11R、及び大径ロッド部11Rの一端に接続し大径ロッド部11Rより細い小径ロッド部12Rを含み、孔25に保持される。クラッドロッド20Rの一端部は小径ロッド部12Rの少なくとも一部を囲う。小径ロッド部12Rは大径ロッド部11Rより細いため、ロッド集合体1Pにおける一端部の単位長さ当たりの熱容量は、小径ロッド部12Rの太さが大径ロッド部11Rの太さと同じ場合と比べて小さい。このため、本実施形態のロッド集合体1Pは、この場合と比べて、ロッド集合体1Pの一端部の溶断加工に要する時間を短くし得、効率よく光ファイバ用母材1Paを製造し得る。
【0057】
本実施形態のロッド集合体1Pでは、クラッドロッド20Rは、一端部を含む長手方向に沿った第1区間21と、第1区間21と連接する第2区間22とを含み、第1区間21の断面におけるクラッドロッド20Rの断面積とコアロッド10Rの断面積の合計は、第2区間22の断面におけるクラッドロッド20Rの断面積とコアロッド10Rの断面積の合計より小さい。このため、本実施形態のロッド集合体1Pでは、ロッド集合体1Pの第1区間21での単位長さ当たりの熱容量が当該ロッド集合体1Pの第2区間22での単位長さ当たりの熱容量より小さい。このため、本実施形態のロッド集合体1Pによれば、第1区間21での上記の断面積の合計が第2区間22での当該断面積の合計以上の場合と比べて、ロッド集合体1Pにおける一端部での単位長さ当たりの熱容量を小さくし得る。このため、本実施形態のロッド集合体1Pによれば、上記の場合と比べて、ロッド集合体1Pにおける一端部での単位長さ当たりの熱容量を小さくし得、ロッド集合体1Pの一端部の溶断加工に要する時間を短くし得る。なお、第1区間21でのクラッドロッド20Rの断面積は、第2区間22での当該断面積以上であってもよい。
【0058】
本実施形態のロッド集合体1Pでは、第1区間21における孔25の直径は、第2区間22における当該孔25の直径より大きい。クラッドロッド20Rの孔25の径は、例えば、孔を形成するドリルの直径を変更することで変化させることができる。このため、本実施形態のロッド集合体1Pによれば、クラッドロッド20Rが作製し難くなることを抑制しつつロッド集合体1Pの一端部の溶断加工に要する時間を短くし得る。なお、第1区間21におけるそれぞれの孔25の直径は、第2区間22における当該孔25の直径以下であってもよい。
【0059】
また、本実施形態の光ファイバ用母材1Paは、クラッドロッド20Raと、ガラスロッドとしてのコアロッド10Raとを備える。クラッドロッド20Raには、長手方向に沿って延在する孔25aが設けられる。コアロッド10Raは、大径ロッド部11Ra、及び大径ロッド部11Raの一端に接続し大径ロッド部11Raより細い小径ロッド部12Raを含み、孔25aに保持される。クラッドロッド20Raの一端部は小径ロッド部12Raの一部を囲う。本実施形態の光ファイバ用母材1Paを大径ロッド部11Raが位置する側の端部から線引きする場合、図14に示すように、当該端部には、溶融部NDが形成される。溶融部NDは、孔25aの他端側を塞ぐと共に、線引きが進むにつれて小径ロッド部12Raが位置する側の端部に近くづく。このため、本実施形態の光ファイバ用母材1Paによれば、大径ロッド部11Raが位置する側の端部から線引きすることで、コアロッド10Raの構成が同じ長さで大径ロッド部11Raのみから成る構成とされる場合と比べて、同じ量だけ線引きが進んだ状態でのクラッドロッド20Raとコアロッド10Raとの間の空間を大きくできる。このため、本実施形態の光ファイバ用母材1Paによれば、上記の場合と比べて、この空間内の気体の圧力の上昇量を小さくし得、光ファイバ1に気泡が含まれることを抑制し得、光ファイバ1の生産性を向上し得る。
【0060】
本実施形態の光ファイバ用母材1Paでは、クラッドロッド20Raは、一端部において小径ロッド部12Raの大径ロッド部11Ra側と反対側に溶着され孔25aの一端を塞ぐ第1封止部23を有する。コアロッド10Raに第1封止部23が溶着されていない場合に第1封止部23側と反対側の端部から線引きすると、線引き中にコアロッド10Raの第1封止部23側の端と第1封止部23との距離が変動することがある。この場合、コアガラス体10Pが単位時間あたりに引き出される量が変化しており、光ファイバ1のコア10の直径が長手方向に変動する。しかし、本実施形態の光ファイバ用母材1Paによれば、上記の場合と比べて、コア10の直径が長手方向に変動することを抑制できる。
【0061】
本実施形態の光ファイバ用母材1Paでは、クラッドロッド20Raは、一端部において大径ロッド部11Raの小径ロッド部12Ra側と反対側に溶着され孔25aの他端を塞ぐ第2封止部24を有する。また、クラッドロッド20Raにおける第1封止部23と第2封止部24との間の本体部20RaBは、第1封止部23側の端から第2封止部24側に長手方向に沿った第1区間21aと、第1区間21aと連接する第2区間22aとから成る。第1区間21aの断面において、クラッドロッド20Raに囲われ、第2区間22aにおいてコアロッド10Raを保持する保持空間に連通する空間の面積は、第2区間22aの断面におけるこの収容空間の面積より大きい。このため、本実施形態の光ファイバ用母材1Paによれば、第1区間21a及び第2区間22aの長さが同じ長さで第1区間21aの断面における上記の空間の面積が第2区間22aの断面における上記の保持空間の面積以下とされる場合と比べて、同じ量だけ線引きが進んだ状態でのクラッドロッド20Raとコアロッド10Raとの間の空間を大きくできる。このため、本実施形態の光ファイバ用母材1Paによれば、上記の場合と比べて、この空間内の気体の圧力の上昇量を小さくし得、光ファイバ1に気泡が含まれることを抑制し得る。なお、第1区間21aの断面における上記の空間の面積が第2区間22aの断面における上記の保持空間の面積以下であってもよい。例えば、第1溶断工程P3において、クラッドロッド20Rの第1区間21がクラッドロッド20Rに残らないように、ロッド集合体1Pの一端部を溶断することで、孔25aの径を長手方向で一定にし得、第1区間21aの断面における上記の空間の面積と第2区間22aの断面における上記の保持空間の面積とを同じにし得る。
【0062】
本実施形態の光ファイバ用母材1Paでは、孔25a内の圧力は大気圧より低い。このため、本実施形態の光ファイバ用母材1Paによれば、孔25a内の圧力が大気圧以上である場合と比べて、線引きが進んだ状態でのクラッドロッド20Raとコアロッド10Raとの間の空間の圧力を低くし得、光ファイバ1に気泡が含まれることを抑制し得る。なお、孔25a内の圧力は大気圧以上であってもよい。
【0063】
本実施形態のロッド集合体1P及び光ファイバ用母材1Paは、コアロッド10R,10Raを複数備え、クラッドロッド20R,20Raに複数のコアロッド10R,10Raが個別に保持される複数の孔25,25aが設けられる。このため、上記のように、本実施形態のロッド集合体1P及び光ファイバ用母材1Paによれば、マルチコアファイバである光ファイバ1を製造できるようにし得る。
【0064】
本実施形態のロッド集合体1P及び光ファイバ用母材1Paでは、大径ロッド部11R,11Raと小径ロッド部12R,12Raとは、同じ材料からなり、大径ロッド部11R,11Raから小径ロッド部12R,12Raにかけて屈折率の最大値が一定である。前述したように、このようなコアロッド10R,10Raは、大径ロッド部11R,11Raの一端に、小径ロッド部12R,12Raが溶着されている場合と比べて、接続部13Rの強度を強くでき、振動等でコアロッド10R,10Raが接続部13Rで折れることを抑制し得る。
【0065】
なお、小径ロッド部12R,12Raを構成する材料は特に制限されない。例えば、小径ロッド部12R,12Raは、シリカガラスからなり、大径ロッド部11R,11Raに溶着されてもよい。コア10となるコアガラス体10Pは、ゲルマニウム等の屈折率が高くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成ることがあり、このようなコアガラス体10Pは、シリカガラスより高価である。このため、本実施形態において上記のような構成にすることで、大径ロッド部11R,11Raと小径ロッド部12R,12Raとがコアガラス体10Pを含む場合と比べて、コアロッド10R,10Raを安価にし得る。
【0066】
本実施形態のロッド集合体1P及び光ファイバ用母材1Paでは、大径ロッド部11R,11Raは、小径ロッド部12R,12Raより長い。このため、大径ロッド部11R,11Raが小径ロッド部12R,12Raより短い場合と比べて、長尺の光ファイバ1を製造できるようにし得る。なお、大径ロッド部11R,11Raは、小径ロッド部12R,12Raより短くてもよい。
【0067】
本実施形態のロッド集合体1P及び光ファイバ用母材1Paでは、第1区間21,21aが小径ロッド部12R,12Raのみを囲う。このため、第1区間21,21aが小径ロッド部12R,12Ra及び大径ロッド部11R,11Raの一部を囲う場合と比べて、長尺の光ファイバ1を製造できるようにし得る。また、この観点では、本実施形態のロッド集合体1P及び光ファイバ用母材1Paのように、第1区間21,21aが第2区間22,22aより短いことが好ましい。なお、ロッド集合体1Pの第1区間21に含まれるクラッドロッド20Rの一端部が小径ロッド部12Rの少なくとも一部を囲えばよい。例えば、第1区間21,21aが小径ロッド部12R,12Raと大径ロッド部11R,11Raの一部を囲ってもよく、第2区間22,22aが第1区間21,21aより短くてもよい。
【0068】
また、本実施形態の光ファイバ用母材1Paの製造方法は、準備工程P1と、第1溶断工程P3と、を備える。準備工程P1では、ロッド集合体1Pを準備する。第1溶断工程P3では、ロッド集合体1Pの一端部を加熱して溶断する。本実施形態の製造方法では、クラッドロッド20Rの一端部は小径ロッド部12Rの少なくとも一部を囲うため、ロッド集合体1Pにおける一端部の単位長さ当たりの熱容量は、小径ロッド部の太さが大径ロッド部の太さと同じ場合と比べて小さい。このため、この場合と比べて、第1溶断工程P3に要する時間を短くし得る。また、第1溶断工程P3では、孔25内を真空引きしつつロッド集合体1Pの一端部を加熱して溶断する。このため、ロッド集合体1Pの溶断に要する時間をより短くできる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0070】
図15は、本実施形態における光ファイバ用母材を図4と同様に示す図であり、コアロッド10Rの小径ロッド部12R及びクラッドロッド20Rの第1区間21を含む断面の様子を概略的に示す図であり、図15に示される光ファイバ用母材1Pは溶断加工前のロッド集合体1Pである。また、図16は、図15に示す光ファイバ用母材であるロッド集合体1Pのクラッドロッドを示す図である。図15図16に示すように、本実施形態のクラッドロッド20Rは、第1区間21における孔25の直径が第2区間22における孔25の直径と同じである点、及び第1区間21に連通孔28が設けられる点において、第1実施形態のクラッドロッド20Rと異なる。連通孔28は、第1区間21の全体に亘って長手方向に沿って延在し、複数の孔25が連通して成っている。本実施形態では、長手方向に沿って見る場合に第2区間22における複数の孔25の一部が連通孔28内に位置している。また、連通孔28の中心軸とクラッドロッド20Rの中心軸とが概ね一致しているが、ずれていてもよい。また、連通孔28の直径は、長手方向において概ね一定であるが、長手方向において変化してもよい。また、連通孔28は第1区間21の少なくとも一部に亘って長手方向に沿って延在していればよい。
【0071】
本実施形態の光ファイバ用母材であるロッド集合体1Pによれば、連通孔28が設けられない場合と比べて、第1区間21での単位長さ当たりの熱容量が小さくなり、ロッド集合体1Pの一端部の溶断加工に要する時間を短くし得る。
【0072】
図17は、図15に示す光ファイバ用母材であるロッド集合体1Pに溶断加工が施された状態を図5と同様に示す図である。本実施形態の光ファイバ用母材1Paは、本実施形態のロッド集合体1Pを用いて第1実施形態の光ファイバ用母材の製造方法によって製造し得る。図17に示すように、本実施形態の光ファイバ用母材1Paは、クラッドロッド20Raの第1区間21aにおける孔25aの直径が第2区間22aにおける孔25aの直径と同じである点、及びクラッドロッド20Raの第1区間21aに連通孔28aが設けられる点において、第1実施形態の光ファイバ用母材1Paと異なる。
【0073】
クラッドロッド20Raの第1区間21aは、ロッド集合体1Pのクラッドロッド20Rの第1区間21の一部である。連通孔28aは、ロッド集合体1Pの連通孔28の一部であり、第1区間21aの全体に亘って長手方向に沿って延在し、複数の孔25aが連通して成っている。第1区間21aの断面において、クラッドロッド20Raに囲われる空間は第1区間21aにおける孔25a及び連通孔28a内の空間である。当該空間は、第2区間22aにおいてコアロッド10Raを保持する保持空間である第2区間22aにおける孔25a内の空間と連通している。このため、第1区間21aの断面において、クラッドロッド20Raに囲われ、第2区間22aにおいてコアロッド10Raを保持する保持空間に連通する空間の面積は、第2区間22aの断面におけるこの保持空間の面積より大きいと理解できる。このため、本実施形態の光ファイバ用母材1Paによれば、第1実施形態と同様に、光ファイバ1に気泡が含まれることを抑制し得る。また、本実施形態の光ファイバ用母材1Paによれば、連通孔28aがない場合と比べて、線引きが進んだ状態でのクラッドロッド20Raと特定のコアロッド10Raとの間の空間の圧力がクラッドロッド20Raと他のコアロッド10Raとの間の空間の圧力より高くなることを抑制し得る。なお、連通孔28aは第1区間21aの少なくとも一部に亘って長手方向に沿って延在していればよい。
【0074】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
例えば、上記第2実施形態では、複数の孔25,25aのそれぞれの一部を含む連通孔28,28aが第1区間21,21aに設けられたクラッドロッド20R,20Raを例に説明した。しかし、連通孔28,28aは第1区間21,21aにおける複数の孔25,25aが連通して成っていればよい。例えば、図18図19、及び図20に示すような連通孔28であってもよい。なお、図18は、変形例における光ファイバ用母材を図15と同様に示す図であり、図18に示される光ファイバ用母材1Pは溶断加工前のロッド集合体1Pである。図19は、図18に示す光ファイバ用母材であるロッド集合体1Pのクラッドロッドを図16と同様に示す図である。図20は、図18に示す光ファイバ用母材であるロッド集合体1Pに溶断加工が施された状態を図17と同様に示す図である。本変形例では、第2実施形態と同様に、連通孔28,28aの中心軸とクラッドロッド20R,20Raの中心軸とが概ね一致しており、第1区間21,21aにおける孔は連通孔28,28aのみであり、第1区間21,21aの形状は円筒形状である。そして、長手方向に沿って見る場合に第2区間22,22aにおける複数の孔25,25aの全体が連通孔28,28a内に位置している。本変形例のロッド集合体1Pによれば、第1区間21の強度を弱くし得、一端部の溶断加工に要する時間をより短くし得る。なお、溶断加工に要する時間を短くする観点では、第1区間21に孔25に接続しない別の孔を設けることで、第1区間21でのクラッドロッド20Rの断面積を第2区間22でのクラッドロッド20Rの断面積より小さくしてもよい。また、本変形例の光ファイバ用母材1Paによれば、第2実施形態と同様に、光ファイバ1に気泡が含まれることを抑制し得る。
【0076】
また、上記実施形態の第1溶断工程P3では、小径ロッド部12Rの一部、及びクラッドロッド20Rの第1区間21の一部が残るようにロッド集合体1Pの一端部を溶断していた。しかし、小径ロッド部12Rが孔25内に残らないようにロッド集合体1Pの一端部を溶断してもよい。この場合、製造される光ファイバ用母材1Paは、大径ロッド部11Raが第1封止部23に接続される構成となる。また、第1区間21が残らないようにロッド集合体1Pの一端部を溶断してもよい。この場合、製造される光ファイバ用母材1Paは、クラッドロッド20Raの本体部20RaBが第2区間22aのみから成る構成となる。
【0077】
また、上記実施形態では、クラッドガラス体20Pから成るクラッドロッド20R,20Raを例に説明した。しかし、クラッドロッド20R,20Raは、クラッドガラス体20Pを含んでいればよく、光ファイバ1におけるクラッド20と異なる所定部となる所定のガラス体を更に含んでいてもよい。このような所定部としては、コア10、マーカー、コア10に応力を付与する応力付与部等が挙げられる。また、クラッドロッド20Rには、ガラスロッドが収容されない長手方向に沿って延在する空孔が設けられてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、ガラスロッドとしてのコアロッド10Rを備えるロッド集合体1P及び光ファイバ用母材1Paを例に説明した。しかし、ロッド集合体1P及び光ファイバ用母材1Paが備えるガラスロッドは、光ファイバ1におけるクラッド20と異なる所定部となる所定のガラス体を含む大径ロッド部、及び大径ロッド部の一端に接続し大径ロッド部より細い小径ロッド部を含むガラスロッドであればよい。例えば、ガラスロッドは、大径ロッド部が所定部としてのマーカーとなるガラス体を含むガラスロッドであってもよく、大径ロッド部が所定部としての応力付与部となるガラス体を含むガラスロッドであってもよい。また、ガラスロッドは、コア10となるコアガラス体がコア10を囲う低屈折率層となるガラス体で覆われたガラスロッドであってもよい。また、ガラスロッドが複数である場合、複数のガラスロッドにおける少なくとも1つのガラスロッドの大径ロッド部が含む所定のガラス体は、少なくとも1つの他のガラスロッドの大径ロッド部が含む所定のガラス体と異なっていてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、ガラス部材の加熱に酸水素バーナ50を用いていた。しかし、ガラス部材を加熱する加熱装置は、特に制限されるものではなく、例えば、電気炉等であってもよい。なお、加工無駄を低減する観点では、第1溶断工程P3及び第2溶断工程P4におけるロッド集合体1Pの溶断は、酸水素バーナ50で行うことが好ましい。一般的に、酸水素バーナのヒートスポットは、電気炉のヒートスポットより狭い。このため、酸水素バーナを用いることで、電気炉を用いる場合と比べて、第1溶断工程P3及び第2溶断工程P4において形成するくびれ部26,27を小さくし得、第1封止部23及び第2封止部24の長さを短くし得、加工無駄を低減し得る。加熱源はCO2レーザーのようなガラスの吸収率が高い光でも良い。レーザーを熱源にする場合、ヒートスポットを任意の分布にすることが可能であり、母材のサイズや材質に最適な加熱を実現することが可能となる。
【0080】
また、上記実施形態では、孔25の両端が開口したクラッドロッド20Rを備えるロッド集合体1Pを例に説明した。しかし、孔25の両端は、例えば、樹脂フィルム等で塞がれていてもよい。
【0081】
また、上記実施形態の光ファイバ用母材の製造方法では、ガラス部材準備工程P11と、ダミーガラス管溶着工程P12と、エッチング工程P13と、挿入工程P14とを含む準備工程P1を例に説明した。しかし、準備工程P1はロッド集合体1Pを準備できればよく、特に制限されるものではない。例えば、孔25を規定する内周面がエッチングされたクラッドロッド20Rを準備する場合、エッチング工程P13を省略してもよい。また、第2溶断工程P4の後に第1溶断工程P3をしてもよい。また、閉塞部材としてのダミーロッド43によってクラッドロッド20Rの孔25の一端側の開口の全体を塞ぐ閉塞工程P2を例に説明した。しかし、閉塞工程P2では、孔25の一端側の開口の少なくとも一部を塞げばよく、閉塞部材は特に制限されるものではない。
【0082】
本発明によれば、効率よく光ファイバを製造し得る光ファイバ用母材が提供され、光ファイバに関連する種々の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1・・・光ファイバ
1P・・・光ファイバ用母材(ロッド集合体)
1Pa・・・光ファイバ用母材
10・・・コア
10P・・・コアガラス体
10R,10Ra・・・コアロッド
11R,11Ra・・・大径ロッド部
12R,12Ra・・・小径ロッド部
20・・・クラッド
20P・・・クラッドガラス体
20R,20Ra・・・クラッドロッド
20RaB・・・本体部
21,21a・・・第1区間
22,22a・・・第2区間
23・・・第1封止部
24・・・第2封止部
25,25a・・・孔
28,28a・・・連通孔

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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