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特開2023-12235機械学習装置、データ処理システム、推論装置及び機械学習方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012235
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】機械学習装置、データ処理システム、推論装置及び機械学習方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/04 20060101AFI20230118BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230118BHJP
【FI】
B01D33/04 A
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115756
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】591162022
【氏名又は名称】巴工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 光司
(72)【発明者】
【氏名】荻原 徹也
【テーマコード(参考)】
4D116
5L096
【Fターム(参考)】
4D116BB11
4D116BC62
4D116BC67
4D116DD01
4D116GG12
4D116KK01
4D116QA24D
4D116QA24G
4D116QA57C
4D116QA57F
4D116QC20A
4D116QC20B
4D116QC20C
4D116QC22
4D116QC23
4D116QC32
4D116QC32A
4D116QC34D
4D116QC39
4D116QC50
4D116QC51
4D116RR01
4D116RR04
4D116RR14
4D116RR21
4D116RR22
4D116VV12
5L096AA06
5L096CA04
5L096DA02
5L096HA09
5L096HA11
5L096JA11
5L096JA18
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】ベルト型濃縮機における動作制御を自動で行うことを可能とする、機械学習装置、データ処理システム、推論装置及び機械学習方法を提供すること。
【解決手段】本開示の機械学習装置は、ベルト型濃縮機のためのものであって、無端ベルト上を搬送される被処理液を撮像した第1の画像データを含む入力データと、入力データに対応付けられたベルト型濃縮機の制御パラメータを含む出力データとで構成される学習用データセットを複数組記憶するものであって、制御パラメータは、被処理液に含まれる添加物の添加率と、無端ベルトの走行速度と、被処理液の供給量のうちの少なくとも1つを含む、学習用データセット記憶ユニットと;学習用データセットを複数組入力することで、入力データと出力データとの相関関係を推論する学習モデルを学習する学習ユニットと;学習ユニットによって学習された学習モデルを記憶する学習済モデル記憶ユニットと;を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラと、前記複数のローラに巻回された無端ベルトと、前記複数のローラのうちの少なくとも1つを駆動する駆動部と、を備え、前記無端ベルト上に所定の添加物を含む被処理液を供給して前記被処理液を濃縮するベルト型濃縮機のための機械学習装置であって、
前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液を所定画角から撮像した第1の画像データを含む入力データと、前記入力データに対応付けられた前記ベルト型濃縮機の制御パラメータを含む出力データとで構成される学習用データセットを複数組記憶する学習用データセット記憶ユニットであって、前記制御パラメータは、前記被処理液に含まれる前記添加物の添加率と、前記無端ベルトの走行速度と、前記被処理液の前記無端ベルト上への供給量のうちの少なくとも1つを含む、前記学習用データセット記憶ユニットと;
前記学習用データセットを複数組入力することで、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推論する学習モデルを学習する学習ユニットと;
前記学習ユニットによって学習された前記学習モデルを記憶する学習済モデル記憶ユニットと;を備える、
機械学習装置。
【請求項2】
前記入力データは、前記無端ベルトで前記被処理液が濃縮されて得られた濃縮被処理液を所定画角から撮像した第2の画像データをさらに含む、
請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
前記入力データは、前記無端ベルト上に供給される前の前記被処理液を所定画角から撮像した第3の画像データをさらに含む、
請求項1又は請求項2に記載の機械学習装置。
【請求項4】
前記入力データは、前記添加物が添加される前の被処理液を所定画角から撮像した第4の画像データをさらに含む、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項5】
前記入力データは、前記無端ベルトで分離された分離液を所定画角から撮像した第5の画像データをさらに含む、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項6】
前記学習ユニットは、
前記学習用データセット内の画像データを入力することで、前記画像データの特徴量を推論する第1の学習モデルを学習する第1の学習ユニットと;
前記画像データの特徴量を入力することで、前記制御パラメータを推論する第2の学習モデルを学習する第2の学習ユニットと;を備える、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項7】
前記入力データは、前記被処理液の濃度、前記無端ベルトで前記被処理液が濃縮されて得られた濃縮被処理液の濃度、及び前記無端ベルトで分離された分離液の濃度のうちの少なくとも1つからなる付加変数をさらに含む、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項8】
前記学習ユニットは、
前記学習用データセット内の画像データを入力することで、前記画像データの特徴量を推論する第1の学習モデルを学習する第1の学習ユニットと;
前記画像データの特徴量と、前記付加変数を入力することで、前記制御パラメータを推論する第3の学習モデルを学習する第3の学習ユニットと;を備える、
請求項7に記載の機械学習装置。
【請求項9】
前記ベルト型濃縮機は、前記無端ベルト上の搬送面に当接して前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液の濃縮作用を補助する複数の濃縮補助部材をさらに備え、
前記制御パラメータは、前記濃縮補助部材の数と、前記濃縮補助部材の前記搬送面への当接位置のうちの少なくとも1つをさらに含む、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項10】
前記ベルト型濃縮機は、前記添加物を含まない被処理液に前記添加物を混合するための混合弁をさらに備え、
前記制御パラメータは、前記混合弁の弁開度をさらに含む、
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項11】
前記ベルト型濃縮機は、前記無端ベルトの搬送面の下流側位置に、その一辺が当接するように設けられた傾斜板をさらに備え、
前記制御パラメータは、前記傾斜板の傾斜角度をさらに含む、
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項12】
前記ベルト型濃縮機は、前記無端ベルトを洗浄するために前記無端ベルトに洗浄水を供給する洗浄ノズルをさらに備え、
前記制御パラメータは、前記洗浄ノズルから供給される前記洗浄水の供給圧力をさらに含む、
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項13】
前記ベルト型濃縮機は、前記無端ベルト上の搬送面に当接して前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液の濃縮作用を補助する複数の濃縮補助部材をさらに備え、
前記第1の画像データは、前記複数の濃縮補助部材のうち、前記無端ベルト上の前記被処理液の搬送方向における最も上流側に位置するものよりも下流側を搬送される前記被処理液を所定画角から撮像したものである、
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項14】
複数のローラと、前記複数のローラに巻回された無端ベルトと、前記複数のローラのうちの少なくとも1つを駆動する駆動部と、を備え、前記無端ベルト上に所定の添加物を含む被処理液を供給して前記被処理液を濃縮するベルト型濃縮機に用いられるデータ処理システムであって、
前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液を所定画角から撮像した第1の画像データを少なくとも含む画像データを取得するための画像データ取得ユニットと;
前記請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の機械学習装置によって生成された学習済モデルに、前記画像データ取得ユニットが取得した画像データを入力することで、前記ベルト型濃縮機の制御パラメータを推論する推論ユニットと;を備える、
データ処理システム。
【請求項15】
前記被処理液の濃度、前記無端ベルトで前記被処理液が濃縮されて得られた濃縮被処理液の濃度、及び前記無端ベルトで分離された分離液の濃度のうちの少なくとも1つからなる付加変数を取得するための付加変数取得ユニットをさらに備え、
前記推論ユニットは、前記学習済モデルに、前記画像データに加えて前記付加変数を入力することで、前記ベルト型濃縮機の制御パラメータを推論する、
請求項14に記載のデータ処理システム。
【請求項16】
複数のローラと、前記複数のローラに巻回された無端ベルトと、前記複数のローラのうちの少なくとも1つを駆動する駆動部と、を備え、前記無端ベルト上に所定の添加物を含む被処理液を供給して前記被処理液を濃縮するベルト型濃縮機に用いられる推論装置であって、
前記推論装置は、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液を所定画角から撮像した第1の画像データを取得する処理と;
前記第1の画像データが入力されると、前記ベルト型濃縮機の制御パラメータを推論する処理であって、前記制御パラメータは、前記被処理液に含まれる前記添加物の添加率と、前記無端ベルトの走行速度と、前記被処理液の前記無端ベルト上への供給量のうちの少なくとも1つで構成される、処理と;を実行するように構成される、
推論装置。
【請求項17】
複数のローラと、前記複数のローラに巻回された無端ベルトと、前記複数のローラのうちの少なくとも1つを駆動する駆動部と、を備え、前記無端ベルト上に所定の添加物を含む被処理液を供給して前記被処理液を濃縮するベルト型濃縮機のための、コンピュータを用いた機械学習方法であって、
前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液を所定画角から撮像した第1の画像データを含む入力データと、前記入力データに対応付けられた前記ベルト型濃縮機の制御パラメータを含む出力データとで構成される学習用データセットを複数組記憶するステップであって、前記制御パラメータは、前記被処理液に含まれる前記添加物の添加率と、前記無端ベルトの走行速度と、前記被処理液の前記無端ベルト上への供給量のうちの少なくとも1つを含む、ステップと;
前記学習用データセットを複数組入力することで、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推論する学習モデルを学習するステップと;
学習された前記学習モデルを記憶するステップと;を備える、
機械学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はベルト型濃縮機に適用可能な機械学習装置、データ処理システム、推論装置及び機械学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水、産業排水、又はし尿等の処理施設において、透水性のベルトを用いて被処理液をろ過・濃縮するベルト型濃縮機が従来から用いられている(例えば、特許文献1参照)。このようなベルト型濃縮機の運転に際しては、例えば運転員(オペレータ)が濃縮前後の被処理液の状態を目視で確認することで、運転状態の手動調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-026865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、運転員が目視により手動で運転制御を行う場合、結果として得られる被処理液の濃縮結果は、当該手動調整を行う運転員の熟練度合いに大きく影響される。また、手動調整の度に運転員がベルト型濃縮機の側まで移動する、あるいはベルト型濃縮機の運転中はその近くに常駐する必要がある。
【0005】
上述した点に鑑み、本開示は、ベルト型濃縮機における動作制御を自動で行うことを可能とする、機械学習装置、データ処理システム、推論装置及び機械学習方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係る機械学習装置は、複数のローラと、前記複数のローラに巻回された無端ベルトと、前記複数のローラのうちの少なくとも1つを駆動する駆動部と、を備え、前記無端ベルト上に所定の添加物を含む被処理液を供給して前記被処理液を濃縮するベルト型濃縮機のための機械学習装置であって、前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液を所定画角から撮像した第1の画像データを含む入力データと、前記入力データに対応付けられた前記ベルト型濃縮機の制御パラメータを含む出力データとで構成される学習用データセットを複数組記憶する学習用データセット記憶ユニットであって、前記制御パラメータは、前記被処理液に含まれる前記添加物の添加率と、前記無端ベルトの走行速度と、前記被処理液の前記無端ベルト上への供給量のうちの少なくとも1つを含む、前記学習用データセット記憶ユニットと;前記学習用データセットを複数組入力することで、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推論する学習モデルを学習する学習ユニットと;前記学習ユニットによって学習された前記学習モデルを記憶する学習済モデル記憶ユニットと;を含むものである。
【0007】
このような機械学習装置によれば、ベルト型濃縮機の無端ベルト上の被処理液を撮像した第1の画像データから、ベルト型濃縮機を動作させるのに適した制御パラメータを推論可能な学習済モデルを提供することができるようになる。
【0008】
また、本開示の第2の態様に係る機械学習装置は、上記第1の態様に係る機械学習装置において、前記入力データは、前記無端ベルトで前記被処理液が濃縮されて得られた濃縮被処理液を所定画角から撮像した第2の画像データをさらに含む。
【0009】
このような機械学習装置によれば、無端ベルト上の被処理液を撮像した第1の画像データに加えて、濃縮処理液を撮像した第2の画像データから、ベルト型濃縮機を動作させるのに適した制御パラメータを推論可能な学習済モデルを提供することができるようになる。そして、第1の画像データのみから制御パラメータを推論する学習済モデルを学習する場合に比べて、学習に必要な学習用データセットの数を削減することが期待できる。
【0010】
また、本開示の第3の態様に係る機械学習装置は、上記第1又は第2の態様に係る機械学習装置において、前記入力データは、前記無端ベルト上に供給される前の前記被処理液を所定画角から撮像した第3の画像データをさらに含む。
【0011】
このような機械学習装置によれば、無端ベルト上の被処理液を撮像した第1の画像データに加えて、無端ベルト上に供給される前の被処理液を撮像した第3の画像データから、ベルト型濃縮機を動作させるのに適した制御パラメータを推論可能な学習済モデルを提供することができるようになる。そして、第1の画像データのみから制御パラメータを推論する学習済モデルを学習する場合に比べて、学習に必要な学習用データセットの数を削減することが期待できる。
【0012】
また、本開示の第4の態様に係る機械学習装置は、上記第1乃至第3の態様のいずれかに係る機械学習装置において、前記入力データは、前記添加物が添加される前の被処理液を所定画角から撮像した第4の画像データをさらに含む。
【0013】
このような機械学習装置によれば、無端ベルト上の被処理液を撮像した第1の画像データに加えて、添加物が添加される前の被処理液を撮像した第4の画像データから、ベルト型濃縮機を動作させるのに適した制御パラメータを推論可能な学習済モデルを提供することができるようになる。そして、第1の画像データのみから制御パラメータを推論する学習済モデルを学習する場合に比べて、学習に必要な学習用データセットの数を削減することが期待できる。
【0014】
また、本開示の第5の態様に係る機械学習装置は、上記第1乃至第4の態様のいずれかに係る機械学習装置において、前記入力データは、前記無端ベルトで分離された分離液を所定画角から撮像した第5の画像データをさらに含む。
【0015】
このような機械学習装置によれば、無端ベルト上の被処理液を撮像した第1の画像データに加えて、分離液を撮像した第5の画像データから、ベルト型濃縮機を動作させるのに適した制御パラメータを推論可能な学習済モデルを提供することができるようになる。そして、第1の画像データのみから制御パラメータを推論する学習済モデルを学習する場合に比べて、学習に必要な学習用データセットの数を削減することが期待できる。
【0016】
また、本開示の第6の態様に係る機械学習装置は、上記第1乃至第5の態様のいずれかに係る機械学習装置において、前記学習ユニットは、前記学習用データセット内の画像データを入力することで、前記画像データの特徴量を推論する第1の学習モデルを学習する第1の学習ユニットと;前記画像データの特徴量を入力することで、前記制御パラメータを推論する第2の学習モデルを学習する第2の学習ユニットと;を含む。
【0017】
このような機械学習装置によれば、第1の画像データからベルト型濃縮機の制御パラメータを推測するに際し、学習ユニットを2つに分割することで、それぞれの学習ユニットにおいて生成される学習済モデルを得るために必要な学習用データセットの数を相対的に削減することが期待できる。
【0018】
また、本開示の第7の態様に係る機械学習装置は、上記第1乃至第5の態様のいずれかに係る機械学習装置において、前記入力データは、前記被処理液の濃度、前記無端ベルトで前記被処理液が濃縮されて得られた濃縮被処理液の濃度、及び前記無端ベルトで分離された分離液の濃度のうちの少なくとも1つからなる付加変数をさらに含む。
【0019】
このような機械学習装置によれば、学習用データセットを構成する入力データのデータ数が増えることで、学習ユニットにおいて生成される学習済モデルを得るために必要な学習用データセットの数を相対的に削減することが期待できる。
【0020】
また、本開示の第8の態様に係る機械学習装置は、上記第7の態様に係る機械学習装置において、前記学習ユニットは、前記学習用データセット内の画像データを入力することで、前記画像データの特徴量を推論する第1の学習モデルを学習する第1の学習ユニットと;前記画像データの特徴量と、前記付加変数を入力することで、前記制御パラメータを推論する第3の学習モデルを学習する第3の学習ユニットと;を含む。
【0021】
このような機械学習装置によれば、第1の画像データからベルト型濃縮機の制御パラメータを推測するに際し、学習ユニットを2つに分割し、且つそのうちの一方の学習ユニットにおいて学習される学習用データセットの入力データのデータ数が増えることで、それぞれの学習ユニットにおいて生成される学習済モデルを得るために必要な学習用データセットの数をさらに相対的に削減することが期待できる。
【0022】
また、本開示の第9の態様に係る機械学習装置は、上記第1乃至第8の態様のいずれかに係る機械学習装置において、前記ベルト型濃縮機は、前記無端ベルト上の搬送面に当接して前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液の濃縮作用を補助する複数の濃縮補助部材をさらに含み、前記制御パラメータは、前記濃縮補助部材の数と、前記濃縮補助部材の前記搬送面への当接位置のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0023】
このような機械学習装置によれば、学習済モデルによって、濃縮補助部材の数と、濃縮補助部材の搬送面への当接位置のうちの少なくとも1つをさらに推論することが可能となり、ベルト型濃縮機の調整をより細やかに行うことができるようになる。
【0024】
また、本開示の第10の態様に係る機械学習装置は、上記第1乃至第9の態様のいずれかに係る機械学習装置において、前記ベルト型濃縮機は、前記添加物を含まない被処理液に前記添加物を混合するための混合弁をさらに含み、前記制御パラメータは、前記混合弁の弁開度をさらに含む。
【0025】
このような機械学習装置によれば、学習済モデルによって、混合弁の弁開度をさらに推論することが可能となり、ベルト型濃縮機の調整をより細やかに行うことができるようになる。
【0026】
また、本開示の第11の態様に係る機械学習装置は、上記第1乃至第10の態様のいずれかに係る機械学習装置において、前記ベルト型濃縮機は、前記無端ベルトの搬送面の下流側位置に、その一辺が当接するように設けられた傾斜板をさらに含み、前記制御パラメータは、前記傾斜板の傾斜角度をさらに含む。
【0027】
このような機械学習装置によれば、学習済モデルによって、傾斜板の傾斜角度をさらに推論することが可能となり、ベルト型濃縮機の調整をより細やかに行うことができるようになる。
【0028】
また、本開示の第12の態様に係る機械学習装置は、上記第1乃至第11の態様のいずれかに係る機械学習装置において、前記ベルト型濃縮機は、前記無端ベルトを洗浄するために前記無端ベルトに洗浄水を供給する洗浄ノズルをさらに含み、前記制御パラメータは、前記洗浄ノズルから供給される前記洗浄水の供給圧力をさらに含む。
【0029】
このような機械学習装置によれば、学習済モデルによって、洗浄水の供給圧力をさらに推論することが可能となり、ベルト型濃縮機の調整をより細やかに行うことができるようになる。
【0030】
また、本開示の第13の態様に係る機械学習装置は、上記第1乃至第12の態様のいずれかに係る機械学習装置において、前記ベルト型濃縮機は、前記無端ベルト上の搬送面に当接して前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液の濃縮作用を補助する複数の濃縮補助部材をさらに含み、前記第1の画像データは、前記複数の濃縮補助部材のうち、前記無端ベルト上の前記被処理液の搬送方向における最も上流側に位置するものよりも下流側を搬送される前記被処理液を所定画角から撮像したものである。
【0031】
このような機械学習装置によれば、第1の画像データとして、濃縮補助部材の作用によって濃縮動作が促進された後の被処理液の状態を含むように撮像を行うことで、学習によって得られた学習済モデルの推論精度を高くすることができる。
【0032】
また、本開示の第14の態様に係るデータ処理システムは、複数のローラと、前記複数のローラに巻回された無端ベルトと、前記複数のローラのうちの少なくとも1つを駆動する駆動部と、を含み、前記無端ベルト上に所定の添加物を含む被処理液を供給して前記被処理液を濃縮するベルト型濃縮機に用いられるものであって、前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液を所定画角から撮像した第1の画像データを少なくとも含む画像データを取得するための画像データ取得ユニットと;前記請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の機械学習装置によって生成された学習済モデルに、前記画像データ取得ユニットが取得した画像データを入力することで、前記ベルト型濃縮機の制御パラメータを推論する推論ユニットと;を含むものである。
【0033】
このようなデータ処理システムによれば、ベルト型濃縮機の無端ベルト上の被処理液を撮像した第1の画像データからベルト型濃縮機を動作させるのに適した制御パラメータを推論可能なデータ処理システムを提供できる。
【0034】
また、本開示の第15の態様に係るデータ処理システムは、上記第14の態様に係るデータ処理システムにおいて、前記被処理液の濃度、前記無端ベルトで前記被処理液が濃縮されて得られた濃縮被処理液の濃度、及び前記無端ベルトで分離された分離液の濃度のうちの少なくとも1つからなる付加変数を取得するための付加変数取得ユニットをさらに含み、前記推論ユニットは、前記学習済モデルに、前記画像データに加えて前記付加変数を入力することで、前記ベルト型濃縮機の制御パラメータを推論する。
【0035】
このようなデータ処理システムによれば、ベルト型濃縮機の無端ベルト上の被処理液を撮像した第1の画像データとベルト型濃縮機の付加変数とからベルト型濃縮機を動作させるのに適した制御パラメータを推論可能なデータ処理システムを提供できる。
【0036】
また、本開示の第16の態様に係る推論装置は、複数のローラと、前記複数のローラに巻回された無端ベルトと、前記複数のローラのうちの少なくとも1つを駆動する駆動部と、を備え、前記無端ベルト上に所定の添加物を含む被処理液を供給して前記被処理液を濃縮するベルト型濃縮機に用いられるものであって、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液を所定画角から撮像した第1の画像データを取得する処理と;前記第1の画像データが入力されると、前記ベルト型濃縮機の制御パラメータを推論する処理であって、前記制御パラメータは、前記被処理液に含まれる前記添加物の添加率と、前記無端ベルトの走行速度と、前記被処理液の前記無端ベルト上への供給量のうちの少なくとも1つで構成される、処理と;を実行するように構成されるものである。
【0037】
このような推論装置によれば、ベルト型濃縮機の無端ベルト上の被処理液を撮像した第1の画像データからベルト型濃縮機を動作させるのに適した制御パラメータを推論可能な推論装置を提供できる。
【0038】
また、本開示の第16の態様に係る機械学習方法は、複数のローラと、前記複数のローラに巻回された無端ベルトと、前記複数のローラのうちの少なくとも1つを駆動する駆動部と、を備え、前記無端ベルト上に所定の添加物を含む被処理液を供給して前記被処理液を濃縮するベルト型濃縮機のための、コンピュータを用いたものであって、前記無端ベルト上を搬送される前記被処理液を所定画角から撮像した第1の画像データを含む入力データと、前記入力データに対応付けられた前記ベルト型濃縮機の制御パラメータを含む出力データとで構成される学習用データセットを複数組記憶するステップであって、前記制御パラメータは、前記被処理液に含まれる前記添加物の添加率と、前記無端ベルトの走行速度と、前記被処理液の前記無端ベルト上への供給量のうちの少なくとも1つを含む、ステップと;前記学習用データセットを複数組入力することで、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推論する学習モデルを学習するステップと;学習された前記学習モデルを記憶するステップと;を含むものである。
【0039】
このような機械学習方法によれば、ベルト型濃縮機の無端ベルト上の被処理液を撮像した第1の画像データから、ベルト型濃縮機を動作させるのに適した制御パラメータを推論可能な学習済モデルを提供することができるようになる。
【発明の効果】
【0040】
本開示によれば、ベルト型濃縮機における動作制御の少なくとも一部を自動で行うことを可能とする、機械学習装置、データ処理システム、推論装置及び機械学習方法を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本開示の第1の実施の形態に関連するベルト型濃縮機の一例を示す概略構造図である。
図2図1に示すベルト型濃縮機の無端ベルトの上面部分の一例を拡大して示した概略説明図である。
図3図1に示すベルト型濃縮機の作動時における、無端ベルトの上面部分を撮像した画像である。
図4】本開示の第1の実施の形態に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。
図5】本開示の第1の実施の形態に係る機械学習装置において実施される教師あり学習のためのニューラルネットワークモデルの一例を示す図である。
図6】本開示の第1の実施の形態に係る機械学習方法の一例を示すフローチャートである。
図7】本開示の第1の実施の形態に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。
図8】本開示の第1の変形例に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。
図9】本開示の第1の変形例に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。
図10】本開示の第2の変形例に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。
図11】本開示の第2の変形例に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。
図12】本開示の第3の変形例に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。
図13】本開示の第3の変形例に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。
図14】本開示の第4の変形例に係るベルト型濃縮機における無端ベルトの上面の一部の構成の一例を示した概略説明図である。
図15】本開示の第5の変形例に係るベルト型濃縮機における混合弁の一例を示した要部説明図である。
図16】本開示の第6の変形例に係るベルト型濃縮機における無端ベルトの上面側部分の構成の一例を示した概略説明図である。
図17】本開示の第2の実施の形態に関連するベルト型濃縮機の一例を示す概略構造図である。
図18図17に示すベルト型濃縮機の作動時における、ランプ上を搬送される濃縮汚泥を撮像した画像である。
図19】本開示の第2の実施の形態に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。
図20】本開示の第2の実施の形態に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。
図21】本開示の第3の実施の形態に関連するベルト型濃縮機の一例を示す概略構造図である。
図22図21に示すベルト型濃縮機の作動時における、無端ベルト上に供給される前の凝集汚泥を撮像した画像である。
図23】本開示の第3の実施の形態に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。
図24】本開示の第3の実施の形態に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。
図25】本開示の第4の実施の形態に関連するベルト型濃縮機の一例を示す概略構造図である。
図26】本開示の第4の実施の形態に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。
図27】本開示の第4の実施の形態に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。
図28】本開示の第5の実施の形態に関連するベルト型濃縮機の一例を示す概略構造図である。
図29】本開示の第5の実施の形態に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。
図30】本開示の第5の実施の形態に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明を実施するための一乃至複数の実施の形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0043】
<第1の実施の形態>
本開示の第1の実施の形態に係る機械学習装置等を説明する前に、当該機械学習装置等に関連するベルト型濃縮機について簡単に説明する。本実施の形態に係る機械学習装置、データ処理システム、推論装置及び機械学習方法は、以下に示すような、固形物を含む被処理液の固形成分の濃縮に用いられるベルト型濃縮機に適用可能なものである。ただし、本開示に係るベルト型濃縮機は、以下に説明する構造に限定されるものではない。
【0044】
図1は、本開示の第1の実施の形態に関連するベルト型濃縮機の一例を示す概略構造図である。本実施の形態に係るデータ処理システム等が適用されるベルト型濃縮機1は、図1に示すように、固形物を含む被処理液としての供給汚泥SL0の固形成分を濃縮して、濃縮被処理液としての濃縮汚泥SL2を得ることができるものとすることができる。このベルト型濃縮機1としては、図1に示すように、複数のローラ3、4と、無端ベルト5と、駆動部6と、を少なくとも含む。加えて、このベルト型濃縮機1は、上述した複数のローラ3、4等の少なくとも一部を収容するための本体ケース2を更に含むことができる。なお、本実施の形態においてはベルト型濃縮機1として供給汚泥SL0の濃縮を行うものを例示しているが、濃縮対象となる被処理液は汚泥に限定されるものではなく、他の流体であってもよい。
【0045】
本体ケース2は、複数のローラ3、4及び無端ベルト5の少なくとも一部をその内部に収容し、水平面に沿った一方向(図1中のY方向)に長尺な筐体とすることができる。本体ケース2には、図示は省略するがその内部を視認するための窓やメンテナンスのための扉等が設けられていてよい。
【0046】
複数のローラ3、4は、所定の径を有し、本体ケース2内に回転自在に設けられたものであってよい。この複数のローラとして、本実施の形態においては実質的に同一径の2個のローラ3、4が採用されており、この2個のローラ3、4は、本体ケース2の長手方向両端部に隣接する位置にそれぞれ配設されている。
【0047】
無端ベルト5は、透水性を有する樹脂材料(例えばポリエステル)で構成された所定の幅を有する環状の帯状部材で構成することができる。また、この無端ベルト5は、2個のローラ3、4に巻回されて、これらのローラ3、4の回転に追随して動作するものであってよい、ローラ3、4に巻回された無端ベルト5は、本体ケース2の長手方向に沿って長尺となるように支持され、そのうちの上側に位置するベルト面(以下、この部分を「上面」あるいは「搬送面」という)が、後述する凝集汚泥SL1が供給される面を構成する。この無端ベルト5は透水性を有しているため、無端ベルト5の上面に凝集汚泥SL1が供給されると、凝集汚泥SL1に含まれる液体成分はこの無端ベルト5を透過可能である。したがって、無端ベルト5上に供給された凝集汚泥SL1は、無端ベルト5上を搬送される際、内部の液体成分が無端ベルト5によってろ過されることで、無端ベルト5上に残った凝集汚泥SL1中の固形成分が濃縮(重力濃縮)される。
【0048】
駆動部6は、無端ベルト5を動作させるためのモータ等からなる駆動機構であってよい。本実施の形態においては、この駆動部6は凝集汚泥SL1の搬送方向下流側に位置する一のローラ4に連結されて、このローラ4を回転駆動することにより、無端ベルト5を任意の走行速度で動作させ得る。無端ベルト5の走行速度は、無端ベルト5のろ材としての機能等によって調整されるものであるが、例えば8~40m/minの速度で走行させるとよい。上記の構造により、本実施の形態においては、一方のローラ4は駆動ローラとして機能し、他方のローラ3は従動ローラとして機能する。なお、駆動部6の具体的な構成や取付構造については上述の例に示すものに限定されない。
【0049】
本実施の形態に係るベルト型濃縮機1は、上述した構成に加えて、無端ベルト5上に凝集汚泥SL1を供給するための供給部10と、濃縮汚泥SL2を本体ケース2外に排出する濃縮汚泥排出部20と、無端ベルト5により分離(ろ過)された分離液としてのろ液FIを本体ケース2外に排出するろ液排出部30とをさらに含むことができる。
【0050】
供給部10は、供給汚泥SL0に添加物としての薬剤が添加されることで、供給汚泥SL0に含まれる固形物が凝集された凝集汚泥SL1を無端ベルト5上に供給するための部材であってよい。この供給部10は、供給汚泥供給源11と、薬剤供給源12と、供給汚泥用ポンプ13と、薬剤用ポンプ14と、供給汚泥用配管15と、薬剤用配管16と、混合弁17と、凝集槽18と、汚泥投入シュート19とを含むことができる。
【0051】
供給部10の上記構成のうち、供給汚泥供給源11と供給汚泥用ポンプ13と供給汚泥用配管15により、ベルト型濃縮機1の処理対象物である供給汚泥SL0の混合弁17への供給が実現できる。同様に、供給部10の上記構成のうち、薬剤供給源12と薬剤用ポンプ14と薬剤用配管16により、供給汚泥SL0に添加される薬剤の混合弁17への供給が実現できる。ここで、供給汚泥SL0とは、例えば液体中に固形物成分を含有するスラリー(懸濁液)であってよい。また、薬液とは、例えばスラリーに投与することでスラリー中に含まれる固形成分をフロック状に変化させる凝集剤、特に高分子凝集剤又は無機凝集剤であってよい。
【0052】
混合弁17は、供給汚泥用配管15と薬剤用配管16とが接続され、両配管を介して供給された供給汚泥SL0と薬剤とを混合させるものであってよい。凝集槽18は、混合弁17から供給された供給汚泥SL0と薬剤との混合流体を一時的に滞留させることで、薬剤の作用による供給汚泥SL0内の固形成分のフロック凝集を促進させ得る槽であってよい。また、この凝集槽18は、混合弁17に接続された流入口181と汚泥投入シュート19に連結された流出口182と、流出口182と混合弁17とを連結する連結管183とをさらに含むことができる。汚泥投入シュート19は、凝集槽18の流出口182と無端ベルト5とを繋ぐように配置され、無端ベルト5の上面に沿って延び且つ緩やかに下降するように高さ方向(図1中のZ方向)に対して傾斜した板体で構成できる。供給汚泥SL0は、混合弁17と凝集槽18を通過することにより、固形成分が凝集された凝集汚泥SL1として、汚泥投入シュート19を介して無端ベルト5上に供給されることとなる。
【0053】
濃縮汚泥排出部20は、凝集汚泥SL1が無端ベルト5上を搬送されることにより重力濃縮されることで得られる濃縮汚泥SL2を、ベルト型濃縮機1外に排出するための構成であってよい。この濃縮汚泥排出部20は、無端ベルト5の下流側端部から落下する濃縮汚泥SL2を受ける濃縮汚泥受け部21と、この濃縮汚泥受け部21の底部に設けられ濃縮汚泥SL2を本体ケース2外に排出する濃縮汚泥排出口22と、濃縮汚泥排出口22に接続されて濃縮汚泥SL2を所望の位置に搬送する濃縮汚泥用配管23と、自重等により無端ベルト5から分離・落下せず、無端ベルト5の表面に付着した濃縮汚泥SL2を無端ベルト5から物理的に分離するためのスクレーパ24とを少なくとも含むことができる。濃縮汚泥用配管23を介して搬送される濃縮汚泥SL2は、例えば他の脱水設備や焼却設備等に搬送されてよい。
【0054】
ろ液排出部30は、無端ベルト5上の凝集汚泥SL1からろ過されて分離された液体成分を含むろ液FIを、ベルト型濃縮機1外に排出するための構成であってよい。このろ液排出部30は、無端ベルト5の上面でろ過されたろ液FIを受けるろ液受け部31と、このろ液受け部31の底部に設けられたろ液FIを本体ケース2外に排出するろ液排出口32と、ろ液排出口32に接続されたろ液用配管33と、ろ液用配管33内を搬送されたろ液FIを貯留するろ液貯留槽34とを少なくとも含むことができる。なお、ろ液貯留槽34に一時的に貯留されたろ液FIは、後に浄水設備等に搬送されるとよい。
【0055】
また、本実施の形態に係るベルト型濃縮機1は、その動作を制御するために、複数の制御ユニットを含むことができる。具体的には、薬剤用ポンプ14を制御して供給汚泥SL0に対する薬剤の供給量を制御する第1の制御ユニット41と、駆動部6を制御してローラ4の回転数を可変することにより、無端ベルト5の走行速度を制御する第2の制御ユニット42と、供給汚泥用ポンプ13を制御して供給汚泥SL0の供給量、ひいては凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量を制御する第3の制御ユニット43とを少なくとも含むことができる。これら第1乃至第3の制御ユニット41~43は、それぞれ単独で、あるいはこれらの制御ユニットを含むメインコントロールユニットMC(図4等参照)からの指示等に基づいて、対応する構成要素(アクチュエータ)の制御を実行することができる。なお、メインコントロールユニットMCとは、ベルト型濃縮機1内の各種センサ及びアクチュエータに接続されて、ベルト型濃縮機1の一連の制御を一元管理するものであってよく、本実施の形態においては上述した制御ユニット41~43や後述する監視システムM10等をその内部に含んでいるものを例示している。また、このメインコントロールユニットMCは、データを格納するための図示しないデータベースや、運転員による入力動作等を実現するためのGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を含むことができる。本実施の形態においては、理解を容易にするために、制御対象ごとに上述した複数の制御ユニット41~43を設けたものを例示しているが、ベルト型濃縮機1における全ての制御をメインコントロールユニットMCによって実現することも可能である。なお、以下においては、第1の制御ユニット41により制御される、供給汚泥SL0と薬剤とが混合してなる凝集汚泥SL1に含まれる薬剤の供給量の割合(添加率)を「凝集汚泥SL1の薬注率」ともいう。
【0056】
以上の構成を含むベルト型濃縮機1による汚泥濃縮処理は、概ね以下の通りに実行される。先ず、供給汚泥用ポンプ13を動作させて供給汚泥SL0の凝集槽18への供給を開始すると共に、薬剤用ポンプ14を動作させて供給汚泥SL0への薬剤の添加を開始する。薬剤が添加された供給汚泥SL0は、混合弁17を通過するタイミング及び凝集槽18内に貯留されたタイミングでその固形成分がフロック状に凝集され、凝集汚泥SL1となる。この凝集汚泥SL1は、凝集槽18の流出口182から汚泥投入シュート19を介して無端ベルト5上に供給され、無端ベルト5上にて、重力濃縮が開始される。凝集汚泥SL1は、無端ベルト5上を搬送されつつ重力濃縮が進行することで、凝集汚泥SL1中の液体成分であるろ液FIがろ過・分離され、無端ベルト5上に残った凝集汚泥SL1の固形成分が濃縮汚泥SL2となる。このようにして得られた濃縮汚泥SL2は無端ベルト5の下流端から濃縮汚泥排出部20へ、また、分離されたろ液FIは無端ベルト5を透過してろ液排出部30へ、それぞれ送られる。濃縮汚泥排出部20に排出される濃縮汚泥SL2は、例えば供給汚泥SL0の濃度が0.6~0.8%である場合、その濃度が4%程度までろ過・濃縮可能なものであるとよい。
【0057】
<機械学習装置>
上述の汚泥濃縮処理は、供給汚泥SL0の状態や周囲環境、ベルト型濃縮機の能力等に合わせてベルト型濃縮機1の各種制御パラメータを調整することで、望ましい濃縮処理を実現することができる。上述したベルト型濃縮機1において、上記調整の対象となる制御パラメータは、少なくとも各制御ユニット41~43が制御するもの、すなわち、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量(あるいは供給速度)の3つを挙げることができる。そこで、以下には、この制御パラメータを運転員の判断等に依存することなく自動的に推定することを可能とする推論モデル(学習済モデル)を学習することができる、本実施の形態に係る機械学習装置100について説明する。なお、本実施の形態においては、推定する制御パラメータとして、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量の3つを採用しているものを例示するが、本開示はこれに限定されるものではない。具体的には、上記3つの制御パラメータのうち少なくとも1つを含んでいればよく、例えば、制御パラメータを無端ベルト5の走行速度のみとしたり、無端ベルト5の走行速度と凝集汚泥SL1の供給量の2つとしたり、あるいは、上記3つの制御パラメータ以外の他の制御パラメータを追加したりすることもできる。
【0058】
本実施の形態に係る機械学習装置100の詳細を説明する前に、この機械学習装置100において用いられる学習用データセットの一部としての第1の画像データを取得するための手段について説明する。本実施の形態に係るベルト型濃縮機1は、図1に示すように、無端ベルト5の上面を搬送される凝集汚泥SL1の濃縮状態を監視するための第1の監視システムM10を含むことができる。また、これに関連して、本実施の形態に係るベルト型濃縮機1は、オプションとして、無端ベルト5の上面に当接して無端ベルト5上を搬送される凝集汚泥SL1の濃縮作用を補助する複数の濃縮補助部材としてのプロー(鋤)50を含むことができる。なお、図1においては、プロー50を凝集汚泥SL1の搬送方向に沿って等間隔に3個配置した例が示されている。
【0059】
図2は、図1に示すベルト型濃縮機の無端ベルトの上面部分の一例を拡大して示した概略説明図であって、図2(A)は概略正面図であり、図2(B)は概略平面図であり、図2(C)は無端ベルト5上を凝集汚泥SL1が搬送される状態を示した説明図である。なお、図2(C)においては、凝集汚泥SL1の搬送状態を理解しやすくするために、各プロー50-1~50-5に含まれる、プロー本体51以外の構成の図示を省略している。第1の監視システムM10は、図1及び図2に示すように、本体ケース2の天面部分に取り付けられ、その撮像面が無端ベルト5の上面に向くように配設された撮像手段、詳しくは第1のカメラM11を主に含むことができる。第1のカメラM11は、少なくとも二次元画像を撮像可能な周知のカメラで構成することができる。そして、ベルト型濃縮機1の駆動時にこの第1のカメラM11を動作させることにより、無端ベルト5の上面を搬送される凝集汚泥SL1の画像を含む第1の画像データを取得することができる。なお、第1のカメラM11の画角としては、無端ベルト5の上面が撮像可能な範囲内で適宜調整可能であるが、例えば無端ベルト上の搬送面に対して実質的に直角に設定することができる。
【0060】
また、プロー50は、例えば図2に示すように、ベルト型濃縮機1の無端ベルト5の上面に、無端ベルト5の搬送方向(Y方向)に沿って所定間隔を空けて5個(なお、図2においては、これらのプローを50-1~50-5として区別して示している)配置することができる。各プロー50-1~50-5は、図2(A)に示すように、複数個のプロー本体51と、プロー本体51を支持する支持アーム52と、プロー本体51と支持アーム52とを連結する連結部材53とを含むことができる。
【0061】
プロー本体51は、無端ベルト5の上面(搬送面)に上方から当接し、無端ベルト5上を搬送される凝集汚泥SL1を掻き分ける(あるいは鋤く)ように機能する部材であって良い。このプロー本体51は、矩形状の板体の一辺を略垂直に連結してなる平面視L字状の部材で構成することができる。このプロー本体51は、その屈曲点の外側が無端ベルト5の搬送方向上流側に向くように、その高さ方向(Z方向)における下端を無端ベルト5上面に当接させて配設されている。図2に示す例においては、搬送方向上流側から見て奇数番目のプロー50-1、50-3及び50-5には、プロー本体51が無端ベルト5の幅方向に沿って所定間隔を空けて3つ設けられ、搬送方向上流側から見て偶数番目のプロー50-2及び50-4には、プロー本体51の幅方向に沿って所定間隔を空けて2つ設けられたものが例示されている。また、無端ベルト5の幅方向端部には、無端ベルト5上を搬送される凝集汚泥SL1の落下を防止するための側壁55が設けられているとよい。
【0062】
図3は、図1に示すベルト型濃縮機の作動時における、無端ベルトの上面部分を撮像した画像である。各プロー本体51は、図2(B)に示すように、無端ベルト5の幅方向(X方向)のみならず、搬送方向に沿って隣接する他のプロー本体51に対して、所定の間隔を空けて配設されている。加えて、この各プロー本体51は、搬送方向に沿って隣接する他のプロー本体51に対し無端ベルト5の幅方向における位置がずらされていることは、特に留意すべき事項である。このように隣接するプロー50-1~50-5に含まれるプロー本体51の位置が幅方向に対してずらされていることにより、無端ベルト5上を搬送される凝集汚泥SL1は、図2(C)及び図3に示すように、その搬送が進むにつれてプロー本体51により複数回掻き分けられることになる。そして、無端ベルト5上を搬送される凝集汚泥SL1は、このプロー本体51に掻き分けられる度に高さ方向(Z方向に)に高く積み重なるように移動されつつ搬送されることとなり、重力濃縮が補助され促進され得る。
【0063】
支持アーム52は、無端ベルト5の幅方向に沿って、無端ベルト5を横切るように延在する棒状の部材であってよい。この支持アーム52の端部は本体ケース2に支持されているとよい。また連結部材53は、一端部が支持アーム52に取り付けられることでプロー本体51を無端ベルト5に当接した状態で支持することができるものであってよい。上述した支持アーム52は、無端ベルト5の搬送方向(Y方向)に対して移動可能な構造を有していると好ましい。また、連結部材53は、支持アーム52に対して着脱可能、あるいは支持アーム52を軸に回動可能な構成を有していると好ましい。
【0064】
上述したプロー50を含むベルト型濃縮機1の第1のカメラM11においては、その撮像領域IAが、図2(B)に示すように、無端ベルト5の搬送方向における最も上流側に位置するプロー50-1よりも搬送方向下流側を搬送される凝集汚泥SL1を少なくとも撮像するように、その配置及び画角が調整されることが好ましい。このように第1のカメラM11の撮像領域IA内に、プロー50-1よりも下流側の領域が含まれることにより、プロー本体51によって掻き分けられた後の凝集汚泥SL1の状態を撮像することができる。ここで、上述したようなベルト型濃縮機1において、無端ベルト5上を搬送される凝集汚泥SL1の濃縮動作が良好に行われている場合は、図3(A)及び図2(C)に示したもののように、プロー本体51による掻き分け動作が円滑に行われる。この場合、プロー本体51の無端ベルト5の搬送方向における下流側には、図2(C)に示すような、凝集汚泥SL1の実質的に存在せず、無端ベルト5の表面が露出した領域Aが無端ベルト5の搬送方向に沿って延在するように形成される傾向がある。他方、凝集汚泥SL1の濃縮動作が不良である場合には、図3(B)に示したもののように、上述した領域Aが相対的に小さいあるいはほとんど形成されない傾向がある。これは、プロー本体51によって掻き分けられた後の凝集汚泥SL1の水分量が多く流動性が高いために、領域A部分に流入すること等に起因して生じる。したがって、第1のカメラM11の撮像領域IAを上述のように設定することで、第1のカメラM11が撮像する第1の画像データには、上述した領域Aの生成状態に関する情報を含めることができる。なお、上述した通り、プロー50は本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1の必須の構成ではない。本実施の形態に係るベルト型濃縮機1がプロー50を有しないものであった場合には、第1のカメラM11による撮像領域IAは、無端ベルト5上を搬送される凝集汚泥SL1を含む領域であれば任意の領域に調整することができる。
【0065】
図4は、本開示の第1の実施の形態に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係る機械学習装置100は、図4に示すように、学習用データセット取得ユニット101と、学習用データセット記憶ユニット102と、学習ユニット103と、学習済モデル記憶ユニット104とを含むことができる。なお、図4においては、その理解を容易にするために、メインコントロールユニットMCと第1の監視システムM10とを別々に図示したものを例示しているが、第1の監視システムM10はその少なくとも一部がメインコントロールユニットMC内に含まれていてもよい。
【0066】
学習用データセット取得ユニット101は、例えば有線又は無線の通信回線を介して接続されたコンピュータPC1から学習(トレーニング)用データセットを構成する複数のデータを取得可能なインタフェースユニットであってよい。コンピュータPC1は、例えば上述したベルト型濃縮機1のメインコントロールユニットMCの一部を構成するコンピュータ、あるいは当該メインコントロールユニットMCに通信可能に接続されたコンピュータであってよい。なお、本実施の形態に係るコンピュータPC1としては、図4に示すように、メインコントロールユニットMCに通信可能に接続されたものを例示している。また、このコンピュータPC1は、ベルト型濃縮機1の種々の情報を取得可能なものであってよい。そのために、コンピュータPC1、ベルト型濃縮機1のメインコントロールユニットMCに加えて、第1の監視システムM10にも通信可能に接続されているとよい。このコンピュータPC1は、プロセッサやメモリ、通信インタフェース等を備えた周知のコンピュータで構成することができる。
【0067】
学習用データセット取得ユニット101で取得されたデータで構成される学習用データセットとは、入力データとして、第1の監視システムM10によって撮像された第1の画像データを含み、出力データ(以下、「教師データ」ともいう)として、ベルト型濃縮機1の上述した3つの制御パラメータ、具体的には凝集汚泥SL1の薬注率、無端ベルト5の走行速度及び凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量を含むものであってよい。
【0068】
学習用データセット記憶ユニット102は、学習用データセット取得ユニット101で取得した学習用データセットを構成する複数のデータを、関連する入力データと出力データとを関連付けて1つの学習用データセットとし格納することが可能な、揮発性あるいは不揮発性の記録媒体で構成することができる。なお、本実施の形態においては、機械学習装置100内で入力データと出力データとを関連付けて学習用データセットとするものを例示したが、当該関連付けは例えばコンピュータPC1により事前に行われていてもよい。また、この学習用データセット記憶ユニット102を構成する記録媒体の具体的な構成については適宜調整することができる。例えば、図4においては、説明の都合上、この学習用データセット記憶ユニット102と後述する学習済モデル記憶ユニット104とを別々の記憶手段として示しているが、これらは単一の記憶媒体(RAMやROM等の各種メモリや、データベース等)によって構成することもできる。
【0069】
学習ユニット103は、学習用データセット記憶ユニット102に記憶された複数の学習用データセットを用いて機械学習(例えば深層学習)を実行し、学習済モデルを生成するものである。本実施の形態においては、後に詳しく説示するように、機械学習の具体的な手法としてニューラルネットワークを用いた教師あり学習を採用している。ただし、機械学習の具体的な手法については、これに限定されるものではなく、入出力の相関関係を学習用データセットから学習することができるものであれば他の学習手法を採用することも可能である。例えば、アンサンブル学習(ランダムフォレスト、ブースティング等)を用いることもできる。
【0070】
学習済モデル記憶ユニット104は、学習ユニット103で生成された学習済モデルを記憶するための記録媒体で構成することができる。この学習済モデル記憶ユニット104に記憶された学習済モデルは、要求に応じて、インターネットを含む通信回線や記憶媒体を介して実システムへ適用される。実システム(データ処理システムや推論装置)に対する学習済モデルの具体的な適用態様については、後に詳述する。
【0071】
ところで、学習用データセット記憶ユニット102に格納される学習用データセットは、上述したように、1つの画像データと、この1つの画像データに対応する1乃至複数の制御パラメータとで構成されている。他方、学習ユニット103において1つの学習済モデルを生成するためには、多くの学習用データセット(例えば数千~数万セット)を用いて学習を行う必要があるのが通常である。そこで、多量の学習用データセットを比較的短時間で準備するために、この学習用データセット記憶ユニット102において、データオーギュメンテーション(data augmentation)を実施することが好ましい。このデータオーギュメンテーションの具体的な方法としては、例えば、第1の監視システムM10で取得された1つの矩形の原画像データから、当該原画像データよりも小さな正方形の部分画像データをランダムにa個(例えば100個)抽出し、抽出されたa個の部分画像データそれぞれと原画像データに対応付けられた制御パラメータとを関連付けることで、a個の学習用データセットを取得するものであってよい。
【0072】
また、本実施の形態に係るベルト型濃縮機1において学習用データセットを準備する際には、教師データとなる最適な制御パラメータを特定する必要がある。この最適な制御パラメータを特定する方法としては、例えば第1の監視システムM10により取得された第1の画像データとそのときの実際の制御パラメータとを参酌し、運転員が手動で特定する方法を採用することができる。この場合、教師データとなる最適な制御パラメータを特定する運転員には熟練の技術者、あるいは複数の技術者を割り当てることが、学習ユニット103における学習効率を高める上で好ましい。
【0073】
次に、上述のようにして得られた複数の学習用データセットを用いた、学習ユニット103における学習手法の一例を簡単に説明する。図5は、本開示の第1の実施の形態に係る機械学習装置において実施される教師あり学習のためのニューラルネットワークモデルの一例を示す図である。図5に示すニューラルネットワークモデルにおけるニューラルネットワークは、入力層にあるl個のニューロン(x1~xl)、第1中間層にあるm個のニューロン(y11~y1m)、第2中間層にあるn個のニューロン(y21~y2n)、及び出力層にあるo個のニューロン(z1~zo)から構成されている。第1中間層及び第2中間層は、隠れ層とも呼ばれるものであり、ニューラルネットワークとしては、第1中間層及び第2中間層の他に、さらに複数の隠れ層を有するものであってもよく、あるいは第1中間層のみを隠れ層とするものであってもよい。
【0074】
また、入力層と第1中間層との間、第1中間層と第2中間層との間、第2中間層と出力層との間には、層間のニューロンを接続するノードが張られており、それぞれのノードには、重みwi(iは自然数)が対応づけられている。
【0075】
ニューラルネットワークモデルにおけるニューラルネットワークは、学習用データセットを用いて学習する。具体的には、入力データ(第1の画像データ)を入力層のニューロンに対応づけ、出力層にあるニューロンの値を、一般的なニューラルネットワークの出力値の算出方法で、つまり、出力側のニューロンの値を、当該ニューロンに接続される入力側のニューロンの値と、出力側のニューロンと入力側のニューロンとを接続するノードに対応づけられた重みwiとの乗算値の数列の和として算出することを、入力層にあるニューロン以外の全てのニューロンに対して行う方法を用いることで、算出する。そして、算出された出力層にあるo個のニューロンz1~zoの値と、学習用データセットの一部を構成する教師データt1~toの値(制御パラメータの値)とを、それぞれ比較して誤差を求め、求められた誤差が小さくなるように、各ノードに対応づけられた重みwiを調整する(バックプロパゲーション)ことを反復する。そして、上述した一連の工程を予め設定された所定回数反復実施する、あるいは前記誤差が許容値より小さくなること等の所定の条件が満たされるまで継続する。これにより、入力データと出力データとの間の相関関係が学習された学習済モデルが得られる。
【0076】
<機械学習方法>
上記に関連して、本開示の第1の実施の形態は機械学習方法を含む。図6は、本開示の第1の実施の形態に係る機械学習方法の一例を示すフローチャートである。以下に示す機械学習方法においては、上述した機械学習装置100に基づいて説明を行うが、前提となる構成については上記機械学習装置100に限定されない。また、この機械学習方法はコンピュータを用いることで実現されるものであるが、コンピュータとしては種々のものが適用可能であり、例えばベルト型濃縮機1のメインコントロールユニットMCを構成するコンピュータ、ネットワーク上に配されたサーバ装置、クラウドベースのデータ処理プラットフォーム、あるいは図4に示すコンピュータPC1等を挙げることができる。また、このコンピュータの具体的構成については、例えば、少なくともCPUやGPU等からなる演算装置と、揮発性又は不揮発性メモリ等で構成される記憶装置と、ネットワークや他の機器に通信するための通信装置と、これら各装置を接続するバスとを含むものを採用することができる。
【0077】
本実施の形態に係る機械学習方法に含まれる教師あり学習による学習方法は、図6に示すように、機械学習を行うための事前準備として、先ず、所望の数の学習用データセットを準備し、準備した複数個の学習用データセットを学習用データセット記憶ユニット102に記憶する(ステップS11)。ここで準備する学習用データセットの数については、最終的に得られる学習済モデルに求められる推論精度等を考慮して設定するとよい。また、学習用データセットを準備する方法については、その一例を上に示しているため、ここではその説明を省略する。
【0078】
ステップS11が完了すると、次いで学習ユニット103における学習を開始すべく、学習前のニューラルネットワークモデルを準備する(ステップS12)。ここで準備される学習前のニューラルネットワークモデルとしては、例えば、その構造が上記図5で示した構造を有し、各ノードの重みが初期値に設定されたものであってよい。そして次に、学習用データセット記憶ユニット102に記憶された複数個の学習用データセットから、例えばランダムに一の学習用データセットを選択する(ステップS13)。そして、当該一の学習用データセットに含まれる入力データを、準備された学習前のニューラルネットワークモデルの入力層(図3参照)に入力する(ステップS14)。なお、学習用データセット内の入力データを学習前のニューラルネットワークモデルの入力層に入力する手法としては、種々のものを採用することができる。具体例としては、第1の画像データのピクセルごとの輝度値及び/又は色値(例えばRGB値)を各入力層のニューロンに入力する方法を採用することができる。また、入力データとしての第1の画像データを入力層に入力する前段階で、データの数を調整するための次元削減処理やノイズ除去等の所定の前処理を実行してもよい。
【0079】
ここで、上記ステップS14の結果として生成された出力層(図5参照)の制御パラメータは、学習前のニューラルネットワークモデルによって生成されたものであるため、多くの場合望ましい結果とは異なる値である。そこで次に、ステップS13において取得された一の学習用データセット中の教師データとしての制御パラメータと、ステップS13において生成された出力層の制御パラメータとを用いて、機械学習を実施する(ステップS15)。ここで行う機械学習とは、例えば、教師データを構成する制御パラメータと出力層に出力された制御パラメータとを比較し、両者の誤差を検出し、この誤差が小さくなるような出力結果が得られるよう、学習前のニューラルネットワークモデル内の各ノードに対応付けられた重みを調整する処理(バックプロパゲーション)であってよい。また、学習前のニューラルネットワークモデルの出力層に出力される制御パラメータの数及び形式は、学習対象としての学習用データセット中の教師データと同様の数及び形式であるとよい。したがって、例えば学習用データセット中の教師データとしての制御パラメータが3つの制御パラメータに対応するデータで構成されている場合には、ニューラルネットワークモデルが出力層に出力する制御パラメータも3つの制御パラメータに対応する形式のデータである。
【0080】
ステップS15において機械学習が実施されると、さらに機械学習を継続する必要があるか否かを、例えば学習用データセット記憶ユニット102内に記憶された未学習の学習用データセットの残数に基づいて特定する(ステップS16)。そして、機械学習を継続する場合(ステップS16でNo)にはステップS13に戻り、機械学習を終了する場合(ステップS16でYes)には、ステップS17に移る。上記機械学習を継続する場合には、学習中のニューラルネットワークモデルに対してステップS13~S15の工程を、未学習の学習用データセットを用いて繰り返し実施する。最終的に生成される学習済モデルの精度は、一般にこの回数に比例して高くなる傾向がある。なお、このステップS16における学習の継続の要否の判断については、上述した未学習の学習用データセットの残数によるものに限定されない。他の具体例としては、例えば学習用データセット記憶ユニット102内等に、学習用データセットと同様のデータ構成を有する評価用データセットを1乃至複数個予め準備しておき、学習途中の学習モデルにて当該評価用データセットを用いた模擬的な推論を実行し、その推論精度を評価することによって上記判断を行ってもよい。
【0081】
機械学習を終了する場合(ステップS16でYes)には、各ノードに対応付けられた重みが一連の工程によって調整されたニューラルネットワークを学習済モデルとして学習済モデル記憶ユニット104に記憶する(ステップS17)。そして、一連の学習プロセスを終了する。ここで記憶された学習済モデルは、種々のデータ処理システムに適用され使用され得るものであるが、当該データ処理システムの詳細については後述する。
【0082】
上述した機械学習装置100の学習プロセス及び機械学習方法においては、1つの学習済モデルを生成するために、1つの(学習前の)ニューラルネットワークモデルに対して複数回の機械学習処理を繰り返し実行することでその精度を向上させ、データ処理システムに適用するに足る学習済モデルを得るものを説示しているが、本開示はこの取得方法に限定されない。例えば、所定回数の機械学習を実施した学習済モデルを一候補として複数個学習済モデル記憶ユニット104に格納しておき、この複数個の学習済モデル群にその妥当性を評価するための評価用データセットを入力して出力層(のニューロンの値)を生成し、出力層で特定された制御データの精度を比較検討して、データ処理システムに適用する最良の学習済モデルを1つ選定するようにしてもよい。なお、ここでいう評価用データセットは、上でも述べた通り、学習に用いた学習用データセットと同様のデータセットで構成され、且つ学習に用いられていないものとすることができる。
【0083】
オプションとして、上記ステップS12において準備されるノードの重みが初期値に設定された学習前のニューラルネットワークモデルに代えて、例えば任意の画像認識のために予め生成された学習済モデルを利用することもできる。この場合には、いわゆるファインチューニング又は転移学習により所望の学習済モデルを生成することとなる。そのため、上述した通常の機械学習プロセスに比して少ない学習用データセットの数で高精度の学習済モデルを生成できる。
【0084】
以上説明した通り、本実施の形態に係る機械学習装置及び機械学習方法を適用することにより、ベルト型濃縮機1から取得される画像データから、所望の制御パラメータを導出することが可能な学習済モデルを得ることができる。
【0085】
<データ処理システム>
次に、図7を参照して、上述した機械学習装置及び機械学習方法によって生成された学習済モデルの適用例について説示する。図7は、本開示の第1の実施の形態に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係るデータ処理システム150としては、上述したベルト型濃縮機1のメインコントロールユニットMC内に搭載された態様のものを例示するが、これに限定されない。
【0086】
データ処理システム150は、図7に示すように、少なくとも画像データ取得ユニット151と、推論ユニット152とを含み、これに加えて、学習済モデル記憶ユニット153と調整ユニット154とを含むことができる。なお、図7においては、メインコントロールユニットMCのうち、データ処理システム150に関連する構成のみを示し、メインコントロールユニットMCに含まれる、データ処理システム150とは直接関連しない構成についてはその説示を省略している。
【0087】
画像データ取得ユニット151は、第1の監視システムM10の第1のカメラM11が撮像した第1の画像データを取得するためのものである。なお、図7においては、その理解を容易にするために、メインコントロールユニットMC内に第1の監視システムM10が配置されたものを例示しているが、第1の監視システムM10とメインコントロールユニットMCとは別の構成要素であってもよい。
【0088】
推論ユニット152は、例えば上述した機械学習装置100で学習された学習済モデルに、画像データ取得ユニット151が取得した第1の画像データを入力することで、ベルト型濃縮機1の1乃至複数の制御パラメータを推論するものである。この推論ユニット152で用いられる学習済モデルを格納するために、本実施の形態に係るデータ処理システム150は、学習済モデル記憶ユニット153を含むとよい。この学習済モデル記憶ユニット153は、1乃至複数個の学習済モデルを格納可能な周知の記憶媒体で構成することができる。また、この学習済モデル記憶ユニット153に格納される学習済モデルとしては、その用途や各種条件(例えば季節、天候及び温度・湿度といった周囲環境条件、あるいは供給汚泥SL0の種類や状態等)毎に複数個記憶されていると好ましい。そしてまた、推論ユニット152による推論処理を実行するに際しては、学習済モデル記憶ユニット153に格納された複数個の学習済モデルから一の学習済モデルを選択するとよい。ここで、推論に用いる学習済モデルの選択は、各種センサ等を用いて自動的に選択できるようにしてもよいし、運転員によって手動で選択できるようにしてもよい。
【0089】
調整ユニット154は、ベルト型濃縮機1における動作制御を実現するために調整される制御ユニットを調整するためのものであってよい。具体的には、第1乃至第3の制御ユニット41~43を動作させる制御パラメータとしての推論ユニット152の推論結果を、対応する制御ユニットへ送信するものとすることができる。
【0090】
上述した構成を含むデータ処理システム150により、ベルト型濃縮機1を動作させる制御パラメータを調整する際は、以下の処理を実行すればよい。すなわち、先ず画像データ取得ユニット151において、第1の監視システムM10において所望のタイミングで撮像された第1の画像データを取得する。次いで、第1の画像データを、推論ユニット152において予め準備された学習済モデルの入力層に入力することで、1乃至複数の制御パラメータ(本実施の形態においては3つのパラメータ)を推論する。そして、推論結果としての3つの制御パラメータを、調整ユニット154を介して対応する各制御ユニット41~43に送り、各制御ユニット41~43が対応するアクチュエータを動作させることで、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量とを調整する。
【0091】
第1の監視システムM10において第1の画像データを撮像するタイミング、及びベルト型濃縮機1の上述した制御パラメータの調整を行うタイミングは、自動的に特定することも、手動で設定することも可能である。また、上記調整は、例えばベルト型濃縮機1が作動している場合には常に行うようにしてもよいし、同様に、ベルト型濃縮機1の作動を開始した時、供給汚泥SL0の種類が変更された時、あるいは予め設定された所定時間が経過した時といった任意のタイミングでのみ行うようにしてもよい。
【0092】
上述のデータ処理システム150によれば、第1の画像データから所望の制御パラメータを自動的に推論することができる。したがって、本実施の形態に係るデータ処理システム150を含むベルト型濃縮機1においては、その動作制御のための好ましい制御パラメータの値を、運転員の判断等に依存することなく自動で特定することができる。したがって、ベルト型濃縮機1に対する運転員による運転状態の監視や手動によるアクチュエータの動作調整の必要性を大幅に少なくすることができる。
【0093】
<推論装置>
本開示は、上述したデータ処理システム150の態様によるもののみならず、制御パラメータの推論のみを行う推論装置の態様で提供することもできる。その場合、推論装置としては、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを含み、このうちのプロセッサが、推論のための一連の処理を実行するものとすることができる。当該一連の処理とは、無端ベルト5の上面を搬送される凝集汚泥SL1を撮像した第1の画像データを取得する処理と、この第1の画像データが入力されることでベルト型濃縮機1の制御パラメータ、すなわち凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量のうちの少なくとも1つを推論する処理とを含む。このような推論装置の態様を用いることで、データ処理システムを実装する場合に比して簡単に種々のベルト型濃縮機に適用することができる。
【0094】
<第1の変形例>
上記第1の実施の形態においては、第1の画像データから制御パラメータを推論することが可能な1つの学習済モデルを取得するための機械学習装置100及び機械学習方法、あるいは1つの学習済モデルを用いて第1の画像データから制御パラメータを推論することが可能なデータ処理システム150及び推論装置について説明を行った。しかし、第1の画像データと制御パラメータとの間には相関関係は認められるものの、両者の相関度合いは特定することが困難である。ところで、一般に、ニューラルネットワークモデルの機械学習プロセスにおいて、学習用データセットの入力データと出力データとの間の相関の度合いが高いと、それに比例して、十分な精度の推論が可能な学習済モデルを得るまでに必要な学習用データセットの数は少なくて済む傾向があることが知られている。したがって、上記第1の実施の態様においては、第1の画像データと制御パラメータとの間の相関関係を学習するためには、その相関度合いによっては、学習用データセットを比較的多く準備する必要が生じることもあり得る。そこで、より少ない学習用データセットの数で十分な精度の推論が可能な学習済モデルを生成することが期待できる手法として、第1の画像データから制御パラメータを推論するために、2つの学習済モデルを利用したものを、本開示の第1の実施の形態の第1の変形例として、以下に説明する。なお、以下に示す第1の変形例に係る機械学習装置100A及びデータ処理システム150Aの各構成要素のうち、第1の実施の形態に係る機械学習装置100及びデータ処理システム150の各構成要素と共通するものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。また、以下に示す第1の変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置は、第1の実施の形態に係るものと同様に、図1に示すベルト型濃縮機1に適用した場合を例にとり説明される。さらに、後述する全ての変形例は、矛盾が生じない範囲において本変形例にさらに適用することが可能なものである。
【0095】
図8は、本開示の第1の変形例に係る機械学習装置100Aの一例を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係る機械学習装置100Aは、図8に示すように、学習用データセット記憶ユニットとして第1の学習用データセット記憶ユニット1021と第2の学習用データセット記憶ユニット1022とを含み、学習ユニットとして第1の学習ユニット1031と第2の学習ユニット1032とを含む点以外は、第1の実施の形態に係る機械学習装置100と同様の構成とすることができる。また、これに関連して、学習用データセット取得ユニット101において取得される複数のデータも第1の実施の形態のものとは異なっている。
【0096】
本変形例に係る学習用データセット取得ユニット101が取得する複数のデータは、例えばコンピュータPC1から取得するものであるが、この複数のデータは、第1の画像データと1乃至複数の制御パラメータとに加えて、更に第1の画像データの特徴量を含んでいる。この第1の画像データの特徴量としては、例えば撮像対象である無端ベルト5の上面を搬送される凝集汚泥SL1から特定される種々の情報を採用することができる。具体的には、例えば凝集汚泥SL1に含まれるフロック凝集体の大きさ、色値、密度等を1又は複数含むことができる。この特徴量は、例えば無端ベルト5の上面を搬送される凝集汚泥SL1を実際にサンプリングして各種測定器等を用いて測定・分析することにより、あるいは運転員による目視での判断により、特定することができる。また、上述した特徴量を測定等するために、本実施の形態に係る第1の監視システムM10は、第1のカメラM11によって撮像された凝集汚泥SL1をサンプリング抽出する手段や、このサンプリング抽出された凝集汚泥SL1を測定・分析するための測定器等を別途採用することもできる。なお、第1の画像データの特徴量は上述のものに限定されず、例えば無端ベルト5の状態等を示す値であってもよい。
【0097】
学習用データセット取得ユニット101において取得された複数のデータは、それぞれの対応関係を考慮しつつ、2つの学習用データセットとして第1の学習用データセット記憶ユニット1021及び第2の学習用データセット記憶ユニット1022内に別々に格納される。第1の学習用データセット記憶ユニット1021に格納される第1の学習用データセットは、上述した第1の画像データを第1の入力データとして含み、この第1の画像データの特徴量、詳しくは第1の画像データの撮像対象としての凝集汚泥SL1の特徴量を第1の出力データとして含むものであってよい。また、第2の学習用データセット記憶ユニット1022に格納される第2の学習用データセットは、第1の画像データの特徴量を第2の入力データとして含み、第2の入力データに対応付けられた制御パラメータを第2の出力データとして含むものであって良い。なお、このように複数のデータから2つの学習用データセットを分割生成する際は、例えば、同一の凝集汚泥SL1に関連付けられた第1の画像データ、第1の画像データの特徴量及び制御パラメータを、第1の画像データと第1の画像データの特徴量とのセットと、第1の画像データの特徴量と制御パラメータとのセットに分割して、それぞれを一の第1及び第2の学習用データセットとすればよい。なお、この際分割した後の一の第1及び第2の学習用データセット同士は、それぞれが後述する異なる学習ユニットにおいて参照されるものであるため、その関連性を維持した形式で格納されていなくてよい。
【0098】
第1の学習用データセット記憶ユニット1021及び第2の学習用データセット記憶ユニット1022にそれぞれ格納された第1及び第2の学習用データセットは、それぞれ別の学習ユニットにのみ参照されるものであってよい。第1の学習ユニット1031は、第1の学習用データセットを複数組入力することで、第1の入力データと第1の出力データとの相関関係を学習するものである。言い換えれば、この第1の学習ユニット1031は、第1の学習用データセット内の第1の画像データを入力することで、第1の画像データの特徴量を推論することが可能な第1の学習済モデルを得るための学習を行うものである。そして、第2の学習ユニット1032は、第2の学習用データセットを複数組入力することで、第2の入力データと第2の出力データとの相関関係を学習するものである。言い換えれば、この第2の学習ユニット1032は、第2の学習用データセット内の第1の画像データの特徴量を入力することで、制御パラメータを推論することが可能な第2の学習済モデルを得るための学習を行うものである。
【0099】
第1及び第2の学習ユニット1031、1032における具体的な機械学習方法は、学習に用いる学習用データセットは異なるものの、その工程は図6に示した教師あり学習の工程といずれも同様のものを採用することができる。そして、一連の機械学習工程を経て得られた第1及び第2の学習済モデルは、学習済モデル記憶ユニット104内にそれぞれ記憶される。
【0100】
本変形例において学習用データセットを構成するデータに採用している、第1の画像データと第1の画像データの特徴量との間の相関度合い、及び第1の画像データと制御パラメータとの間の相関度合いは、第1の画像データと制御パラメータとの間の相関度合いに比べて高い相関が認められるものといえる。したがって、上述した2つの学習ユニットそれぞれが2つの学習済モデルを得るために必要な学習用データセットの数は、第1の実施の形態に示した学習ユニットが学習済モデルを得るために必要な学習用データセットの数に比べて、少なくすむことが期待できる。
【0101】
図9は、本開示の第1の変形例に係るデータ処理システム150Aの一例を示す概略ブロック図である。本変形例に係るデータ処理システム150Aは、図9に示すように、推論ユニットとして、第1の推論ユニット1521と第2の推論ユニット1522とを含む点以外は上述した第1の実施の形態に係るデータ処理システム150と同様の構成要素を含むものとすることができる。
【0102】
第1の推論ユニット1521は、上述した機械学習装置100Aで生成され学習済モデル記憶ユニット153内に記憶された第1の学習済モデルを用いて推論を実行するものである。したがって、この第1の推論ユニット1521は、画像データ取得ユニット151において取得された第1の画像データが入力されると、この第1の画像データの特徴量を推論する。また、第2の推論ユニット1522は、上述した機械学習装置100Aで生成され学習済モデル記憶ユニット153内に記憶された第2の学習済モデルを用いて推論を実行するものである。したがって、この第2の推論ユニット1522は、第1の推論ユニット1521において推論された第1の画像データの特徴量が入力されると、3つの制御パラメータを出力層に出力する。
【0103】
上述した第1及び第2の推論ユニット1521、1522を含むデータ処理システム150Aが適用されたベルト型濃縮機1において制御パラメータの調整を行う場合は、第1の実施の形態において説示した処理と同様の処理を行えばよい。ただし、制御パラメータの推論は、第1の推論ユニット1521に第1の画像データを入力し、出力された第2画像データの特徴量を第2の推論ユニット1522に入力することで実行されることとなる。本変形例に係る推論装置については、プロセッサによる推論の処理が上述したデータ処理システム150Aにおける推論の処理に対応する点以外は第1の実施の形態に係るものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0104】
以上説明した通り、本変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置によれば、第1の画像データとの相関度合いが制御パラメータに比べて大きな第1の画像データの特徴量を推論した上で、制御パラメータとの相関度合いが第1の画像データに比べて大きな第1の画像データの特徴量を用いて制御パラメータを推論することとなり、それぞれの学習ユニットにおいて、十分な精度の推論が可能な各学習済モデルを生成するために必要な学習用データセットの数を相対的に抑えることが期待できる。
【0105】
<第2の変形例>
上記第1の実施の形態及び第1の変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置においては、学習用データセットの入力データ、あるいは推論ユニットに入力されるデータとして、第1の画像データのみを採用したものについて説明を行った。しかし、第1の画像データのみを入力データとすると、第1の画像データと制御パラメータとの間の相関度合い等によっては、十分な精度の推論が可能な学習済モデルを生成するために必要な学習用データセットの数が多くなる場合がある。そこで、より少ない学習用データセットの数で十分な精度の推論が可能な学習済モデルを生成するための一態様として、学習用データセットの入力データ及び推論ユニットに入力されるデータの数を増やした場合を、第2の変形例として以下に説明する。なお、以下に示す第2の変形例に係る機械学習装置100B及びデータ処理システム150Bの各構成要素のうち、第1の実施の形態に係る機械学習装置100及びデータ処理システム150の各構成要素と共通するものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。また、以下に示す第2の変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置は、第1の実施の形態及び第1の変形例に係るものと同様に、図1に示すベルト型濃縮機1に適用した場合を例にとり説明されている。さらに、上述したあるいは後述する全ての変形例は、矛盾が生じない範囲において本変形例にも適用可能なものである。
【0106】
図10は、本開示の第2の変形例に係る機械学習装置100Bの一例を示す概略ブロック図である。本変形例に係る機械学習装置100Bは、図10に示すように、各構成要素については、学習用データセット記憶ユニットとして第3の学習用データセット記憶ユニット1023を含み、学習ユニットとして第3の学習ユニット1033を含む点以外は上述した第1の実施の形態に係る機械学習装置100と同様であってよい。また、これに関連して、学習用データセット取得ユニット101において取得される複数のデータは第1の実施の形態に係るものとは異なるものである。
【0107】
本変形例に係る学習用データセット取得ユニット101は、図10に示すように、コンピュータPC1に接続されることで、このコンピュータPC1から所望のデータを取得することができる。このコンピュータPC1は、第1の実施の形態に係るコンピュータPC1と同様に、メインコントロールユニットMC及び第1の監視システムM10に接続されているが、これらに加えて、ベルト型濃縮機1の動作状態に対応する数値(以下、「付加変数」あるいは「状態変数」という)を取得可能な監視手段にも接続されていてよい。この監視手段としては、具体的には、供給汚泥濃度センサ61と、濃縮汚泥濃度センサ62と、ろ液濃度センサ63とを採用することができる。なお、図10においては、その理解を容易にするために、メインコントロールユニットMCと第1の監視システムM10及び3つの濃度センサ61~63とを別々に図示したものを例示しているが、第1の監視システムM10及び3つの濃度センサ61~63は、その少なくとも一部がメインコントロールユニットMC内に含まれていてもよい。
【0108】
供給汚泥濃度センサ61は、図1に示すように、供給汚泥SL0のスラリー濃度を測定するためのセンサであって、供給汚泥用配管15に設けることができるものであってよい。この供給汚泥濃度センサ61の測定方法としては、スラリーの濃度測定に適したもの、例えばレーザー光式、マイクロ波式あるいは散乱光式のものを採用することができる。
【0109】
濃縮汚泥濃度センサ62は、図1に示すように、濃縮汚泥SL2のスラリー濃度を測定するためのセンサであって、濃縮汚泥用配管23に設けることができるものであってよい。この濃縮汚泥濃度センサ62の測定方法としては、供給汚泥濃度センサ61と同様に、例えばレーザー光式、マイクロ波式あるいは散乱光式のもの、あるいは粘度計によるものを採用することができる。
【0110】
ろ液濃度センサ63は、図1に示すように、ろ液FIの濃度を測定するためのセンサであって、ろ液用配管33に設けることができるものであってよい。このろ液濃度センサ63の測定方法としては、液体の濃度測定に適したもの、例えば散乱光式、透過光式のものを採用することができる。
【0111】
上述した3つのセンサを用いることにより、本変形例に係るベルト型濃縮機1においては、その動作状態に関連する3つの状態変数、すなわち供給汚泥濃度(被処理液の濃度)、濃縮汚泥濃度(濃縮被処理液の濃度)及びろ液濃度(分離液の濃度)を常時測定することが可能となっている。
【0112】
第1の監視システムM10及び上述した3つの濃度センサ61~63により取得される各種データ、詳しくは、第1の画像データ、供給汚泥濃度、濃縮汚泥濃度及びろ液濃度が、直接、あるいはメインコントロールユニットMCを介してコンピュータPC1に送られ、このコンピュータPC1より、対応する所望の制御パラメータと共に学習用データセット取得ユニット101に送られる。学習用データセット取得ユニット101で取得した学習用データセットを構成する複数のデータは、第1の画像データ、供給汚泥濃度、濃縮汚泥濃度及びろ液濃度を第3の入力データとし、これらのデータに対応付けられた制御パラメータを第3の出力データとする第3の学習用データセットの形式で、第3の学習用データセット記憶ユニット1023に格納される。そして、第3の学習ユニット1033では、第3の学習用データセットを用いて、例えば上述した第1の実施の形態に係る機械学習方法と同様の方法で、機械学習が行われ、得られた第3の学習済モデルが、学習済モデル記憶ユニット104に記憶される。なお、本変形例において説示した、第3の入力データのうち、供給汚泥濃度、濃縮汚泥濃度及びろ液濃度の3つは1つの数値データであるのに対し、第1の画像データは当該画像データを構成する全ピクセルの輝度及び/又は色値の集合体で構成されるものであるため、これらはデータの総数が大きく異なる。したがって、これらの入力データをそのまま入力層に対応付けると、得られる推論結果は第1の画像データの影響を相対的に大きく受けたものとなる。そこで、本変形例においては、第1の画像データ以外の入力データの影響度合いが小さくなりすぎないよう、第3の入力データを入力層に対応付ける前に、データの数を調整するためのデータの前処理を行うと特に好ましい。また、当該前処理は、学習済モデルの一部として得られたニューラルネットワークモデルと共に学習済モデル記憶ユニット104内に記憶することで、推論の際にも同様に実施することができる。
【0113】
図11は、本開示の第2の変形例に係るデータ処理システム150Bの一例を示す概略ブロック図である。本変形例に係るデータ処理システム150Bは、図11に示すように、推論ユニットとして第3の推論ユニット1523を含む点と、付加変数取得ユニット155を含む点以外は上述した第1の実施の形態に係るデータ処理システム150と同様の構成要素を含むものとすることができる。なお、図11においては、メインコントロールユニットMC内に供給汚泥濃度センサ61と、濃縮汚泥濃度センサ62と、ろ液濃度センサ63が配置されたものを例示しているが、これら3つのセンサ61~63とメインコントロールユニットMCとは別の構成要素であってもよい。
【0114】
付加変数取得ユニット155は、図11に示すように、供給汚泥濃度センサ61と、濃縮汚泥濃度センサ62と、ろ液濃度センサ63とに接続され、これらのセンサから、付加変数(状態変数)、具体的には供給汚泥濃度、濃縮汚泥濃度及びろ液濃度を取得するものである。この付加変数取得ユニット155により取得される3つの濃度値は、画像データ取得ユニット151が第1の監視システムM10から取得する第1の画像データの撮像タイミングに対応するタイミングで測定されたものであってよい。
【0115】
上述した付加変数取得ユニット155を含むデータ処理システム150Bが適用されたベルト型濃縮機1において制御パラメータの調整を行う場合は、第1の実施の形態において説示したものと同様の処理を行えばよい。ただし、本変形例においては第1の監視システムM10による第1の画像データの撮像と同時あるいはその前後の所定タイミングにおいて、供給汚泥濃度センサ61と、濃縮汚泥濃度センサ62と、ろ液濃度センサ63による濃度測定が行われ、その測定結果を付加変数取得ユニット155が取得する。そして、画像データ取得ユニット151が取得した1つの画像データと付加変数取得ユニット155が取得した3つの値は、第3の推論ユニット1523において第3の学習済モデルの入力層に対応付けられる。
【0116】
なお、上述した第2の変形例における学習用データセット取得ユニット101は、3つの濃度センサ61~63が測定した3つの濃度値の全てを、第1の画像データと共に取得しているが、本開示はこれに限定されない。詳しくは、3つの濃度センサ61~63が測定する3つの濃度値のうちの少なくとも1つを第1の画像データと共に取得していればよい。その場合には、第3の学習用データセットの第3の入力データは、第1の画像データと、取得した少なくとも1つの濃度値で構成されることとなる。付加変数取得ユニット155により取得される濃度値の数についても同様である。また、本変形例に係る推論装置については、プロセッサによる推論の処理が上述したデータ処理システム150Bにおける推論の処理に対応する点以外は第1の実施の形態に係るものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0117】
以上説明した通り、本変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置によれば、入力データとして第1の画像データに加えて、ベルト型濃縮機における少なくとも1つの状態変数を採用したことで、ニューラルネットワークモデルの学習段階において、入力データと出力データとの間の相関関係を特定しやすくなる。これにより、十分な精度の推論が可能な各学習済モデルを生成するために必要な学習用データセットの数を抑えることが期待できる。
【0118】
<第3の変形例>
上述した通り、第1及び第2の変形例は、いずれも十分な精度の推論が可能な学習済モデルを生成するために必要な学習用データセットの数を少なくすることが期待できる態様を示した例である。そして、両変形例は組み合わせることが可能である。そこで、上述した第1及び第2の変形例において示した技術思想を組み合わせたものを、第3の変形例として以下に説明する。なお、以下に示す第3の変形例に係る機械学習装置100C及びデータ処理システム150Cの各構成要素のうち、第1の実施の形態及び第1乃至第2の変形例に係る、機械学習装置100、100A及び100B、及び、データ処理システム150、150A及び150Bの各構成要素と共通するものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。また、以下に示す第3の変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置は、第1の実施の形態及び第1乃至第2の変形例に係るものと同様に、図1に示すベルト型濃縮機1に適用した場合を例にとり説明されている。さらに、上述したあるいは後述する実施の形態において述べられた全ての変形例は、矛盾が生じない範囲において本実施の形態にも適用可能なものである。
【0119】
図12は、本開示の第3の変形例に係る機械学習装置100Cの一例を示す概略ブロック図である。本変形例に係る機械学習装置100Cは、図12に示すように、学習用データセット記憶ユニットとして、第1の学習用データセット記憶ユニット1021と第4の学習用データセット記憶ユニット1024とを含み、学習ユニットとして第1の学習ユニット1031と第4の学習ユニット1034とを含む点以外は、第1の実施の形態に係る機械学習装置100と同様であってよい。また、これに関連して、学習用データセット取得ユニット101において取得される複数のデータも第1の実施の形態とは異なっている。なお、上記第4の学習ユニット1034は、本開示の「第3の学習ユニット」に対応するものである。
【0120】
本実施の形態に係る学習用データセット取得ユニット101は、図12に示すように、コンピュータPC1に接続され、このコンピュータPC1から所望のデータを取得する。このコンピュータPC1は、第2の変形例に係るコンピュータPC1と同様に、メインコントロールユニットMC及び第1の監視システムM10に加えて、供給汚泥濃度センサ61と、濃縮汚泥濃度センサ62と、ろ液濃度センサ63にも接続されている。コンピュータPC1に接続された、メインコントロールユニットMC、第1の監視システムM10、供給汚泥濃度センサ61、濃縮汚泥濃度センサ62及びろ液濃度センサ63の具体的な構成は、上述した第1の実施の形態又は第1及び第2の変形例において例示したものと同様であってよい。そして、本変形例における学習用データセット取得ユニット101が取得する複数のデータは、第1の画像データと、制御パラメータとに加えて、更に3つの状態変数、すなわち供給汚泥濃度、濃縮汚泥濃度及びろ液濃度を含むことができる。なお、本変形例においては、第2の変形例と同様に、コンピュータPC1は、供給汚泥濃度センサ61、濃縮汚泥濃度センサ62及びろ液濃度センサ63の全てに接続されたものを例示しているが、これらのうちの少なくとも1つに接続していればよい。これに関連して、本変形例においても、学習用データセット取得ユニット101において取得される状態変数は、供給汚泥濃度、濃縮汚泥濃度及びろ液濃度のうちの少なくとも1つとすることができる。
【0121】
学習用データセット取得ユニット101において取得された複数のデータは、それぞれの対応関係を考慮しつつ、2つの学習用データセットとして第1の学習用データセット記憶ユニット1021及び第4の学習用データセット記憶ユニット1024内に別々に格納される。第1の学習用データセット記憶ユニット1021に格納される第1の学習用データセットは、第1の変形例において示したものと同様に、第1の画像データを第1の入力データとして含み、この第1の画像データの特徴量、詳しくは第1の画像データの撮像対象としての凝集汚泥SL1の特徴量を第1の出力データとして含むものであってよい。また、第4の学習用データセット記憶ユニット1024に格納される第4の学習用データセットは、第1の画像データの特徴量と、供給汚泥濃度と、濃縮汚泥濃度と、ろ液濃度とを第4の入力データとして含み、第4の入力データに対応付けられた制御パラメータを第4の出力データとして含むものであってよい。
【0122】
第1の学習用データセット記憶ユニット1021及び第4の学習用データセット記憶ユニット1024にそれぞれ格納された第1及び第4の学習用データセットは、それぞれ別の学習ユニットにのみ参照されるものとすることができる。第1の学習ユニット1031は、第1の変形例において説示したものと同様に、第1の学習用データセットを複数組入力することで、第1の入力データと第1の出力データとの相関関係を学習するものである。言い換えれば、この第1の学習ユニット1031は、第1の学習用データセット内の第1の画像データを入力することで、第1の画像データの特徴量を推論することが可能な第1の学習済モデルを得るための学習を行うものである。そして、第4の学習ユニット1034は、第4の学習用データセットを複数組入力することで、第4の入力データと第4の出力データとの相関関係を学習するものである。言い換えれば、この第4の学習ユニット1034は、第4の学習用データセット内の第1の画像データの特徴量と、供給汚泥濃度と、濃縮汚泥濃度と、ろ液濃度とを入力することで、制御パラメータを推論することが可能な第4の学習済モデルを得るための学習を行うものである。
【0123】
第1及び第4の学習ユニット1031、1034における具体的な機械学習方法は、各学習に用いる学習用データセットは異なるものの、その工程は図6に示した教師あり学習の工程といずれも同様である。そして、一連の機械学習工程を経て得られた第1及び第4の学習済モデルは、学習済モデル記憶ユニット104内にそれぞれ記憶される。
【0124】
図13は、本開示の第3の変形例に係るデータ処理システム150Cの一例を示す概略ブロック図である。本変形例に係るデータ処理システム150Cは、図13に示すように、推論ユニットとして第1の推論ユニット1521と第4の推論ユニット1524とを含み、且つ付加変数取得ユニット155を含む点以外は上述した第1の実施の形態に係るデータ処理システム150と同様の構成要素を含むものとすることができる。
【0125】
付加変数取得ユニット155は、図13に示すように、供給汚泥濃度センサ61と、濃縮汚泥濃度センサ62と、ろ液濃度センサ63とに接続され、これらのセンサから、供給汚泥濃度と、濃縮汚泥濃度と、ろ液濃度とを取得するものである。また、第1の推論ユニット1521は、上述した機械学習装置100Cで生成され学習済モデル記憶ユニット153内に記憶された第1の学習済モデルを用いて推論を実行するものである。したがって、この第1の推論ユニット1521は、画像データ取得ユニット151において取得された第1の画像データが入力されると、この第1の画像データの特徴量を出力層に出力することができる。さらに、第4の推論ユニット1524は、上述した機械学習装置100Cで生成され学習済モデル記憶ユニット153内に記憶された第4の学習済モデルを用いて推論を実行するものである。したがって、この第4の推論ユニット1524は、第1の推論ユニット1521において推論された第1の画像データの特徴量と、付加変数取得ユニット155が取得した供給汚泥濃度、濃縮汚泥濃度及びろ液濃度とが入力されると、制御パラメータを出力層に出力することができる。
【0126】
上述した付加変数取得ユニット155と第1及び第4の推論ユニット1521、1524とを含むデータ処理システム150Cが適用されたベルト型濃縮機1において、制御パラメータの調整を行う場合は、第1の実施の形態において説示したものと同様の処理を行えばよい。ただし、本変形例においては第1の監視システムM10による第1の画像データの撮像と同時あるいはその前後の所定タイミングにおいて、供給汚泥濃度センサ61と、濃縮汚泥濃度センサ62と、ろ液濃度センサ63による濃度測定が行われ、その測定結果を付加変数取得ユニット155にて取得する。また、第1の推論ユニット1521の入力層に、画像データ取得ユニット151が取得した第1の画像データを入力して、第1の画像データの特徴量を得る。そして、第1の推論ユニット1521で推論された第1の画像データの特徴量と、付加変数取得ユニット155が取得した3つの濃度値とを第4の推論ユニット1524に入力することで、制御パラメータを得ることとなる。本変形例に係る推論装置については、プロセッサによる推論の処理が上述したデータ処理システム150Cにおける推論の処理に対応する点以外は第1の実施の形態に係るものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0127】
以上説明した通り、本変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置によれば、十分な精度の推論が可能な各学習済モデルを生成するために必要な学習用データセットの数を、上述した第1及び第2の変形例よりも更に抑えることが期待できる。
【0128】
<第4の変形例>
上述した第1の実施の形態や、第1乃至第3の変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置における制御パラメータとしては、いずれも、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量のうちの少なくとも1つを採用することを例示したが、本開示はこれに限定されない。そこで、以下には第1の実施の形態の更なる変形例として、異なる制御パラメータを採用したものをいくつか列記する。
【0129】
上述のベルト型濃縮機1は、上述した通り、オプションとして、プロー50を含むことができる。そこで、以下には、第4の変形例として、学習用データセットの出力データあるいは学習済モデルの推論結果を構成するデータとして、上述した3つの制御パラメータ(すなわち、凝集汚泥SL1の薬注率、無端ベルト5の走行速度及び凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量)のうちの少なくとも1つに加えて、制御パラメータにプロー50の数及び位置のうちの少なくとも1つを採用したものを説示する。
【0130】
図14は、本開示の第4の変形例に係るベルト型濃縮機1における無端ベルト5の上面の一部の構成の一例を示した概略説明図であって、図14(A)は概略平面図、図14(B)は図14(A)に示すプロー本体の配置及び数を変更した状態を示す概略平面図である。本変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置に関連するプロー50(50-1~50-5)は、例えば図2及び図14(A)に示すように、ベルト型濃縮機1の無端ベルト5の上面に、無端ベルト5の搬送方向(Y方向)に沿って所定間隔を空けて5個配置することができる。
【0131】
ここで、本変形例に係るベルト型濃縮機においては、このプロー50及びプロー50に含まれるプロー本体51の数や配置を変更することが可能である。つまり、例えば図14(A)には、2個あるいは3個のプロー本体51を含む5個のプロー50-1~50-5を搬送方向に沿って所定の間隔D1を空けて設けた、合計13個のプロー本体51が無端ベルト5上に当接しているものが例示されているが、これを変更することができる。具体的には、例えば図14(B)に示したもののように、2個あるいは3個のプロー本体51を含むプローを4個のみ配置し、且つ搬送方向における各プロー本体51の間隔D2を上述した間隔D1よりも大きくした、合計10個のプロー本体51が無端ベルト5上に当接しているもの等に変更することができる。
【0132】
上述した構成に関連して、本変形例に係るベルト型濃縮機に適用される機械学習装置及び機械学習方法においては、学習用データセットの一部としての出力データとして、プロー本体51の数と、プロー本体51の無端ベルト5への当接位置の少なくとも一方を追加的に採用することができる。これにより、機械学習装置及び機械学習方法に係る学習モデルは、第1の画像データと、プロー本体51の数とプロー本体51の無端ベルト5への当接位置の少なくとも一方を含む制御パラメータとの相関関係を学習することとなる。したがって、本変形例に係るベルト型濃縮機に適用されるデータ処理システム及び推論装置は、上述の学習によって生成された学習済モデルを用いることにより、第1の画像データから、プロー本体51の数とプロー本体51の無端ベルト5への当接位置の少なくとも一方を含む制御パラメータを推論することが可能となる。
【0133】
上述のデータ処理システム及び推論装置において推論された制御データに基づいて、ベルト型濃縮機におけるプロー50又はプロー本体51の数と、プロー本体51の無端ベルト5への当接位置の少なくとも一方を調整するために、本変形例に係るプロー50は作動機構を有することが好ましい。当該作動機構としては、プロー50あるいはプロー本体51の位置を移動させることが可能な種々の機構を採用することができる。例えば、支持アーム52を搬送方向(Y方向)、無端ベルト5の幅方向(X方向)及び高さ方向(Y方向)に移動させることが可能なアクチュエータを、支持アーム52あるいは支持アーム52に対して連結部材53を回動させる回動機構を、あるいは支持アーム52に対して連結部材53をスライドさせるスライド機構等を単独であるいは組み合わせて採用することができる。また、ベルト型濃縮機1におけるプロー50及びプロー本体51の数とプロー本体51の無端ベルト5への当接位置の少なくとも一方の調整は、上述したアクチュエータ等を用いるのではなく、運転員によって手動で実現されてもよい。この場合には、プロー50を本体ケース2に対して着脱自在且つ無端ベルト5の搬送方向に沿って移動自在とする、及び/又はプロー本体51が固定される連結部材53を、支持アーム52に対して着脱自在且つ無端ベルト5の幅方向に沿って移動自在とした上で、推論結果を運転員に通知して調整作業を促すようにすればよい。
【0134】
本変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置は、制御パラメータが、プロー50及びプロー本体51の数、及びプロー本体51の無端ベルト5への当接位置の少なくとも一方を含む点を除き、上述した第1の実施の形態に係るものと概ね同様である。よって、第1の実施の形態として説示したものと共通する点についてはその説明を省略している。
【0135】
<第5の変形例>
上記第1の実施の形態においてはその具体的な構成についての説明を省略したが、上述のベルト型濃縮機1における混合弁17は、オプションとして、供給汚泥SL0と薬剤の混合度合いを調整可能な機構を含むものを採用することができる。以下には、第5の変形例として、学習用データセットの出力データあるいは学習済モデルの推論結果を構成するデータとして、第1の実施の形態において例示した3つの制御パラメータのうちの少なくとも1つに加えて、混合弁の弁開度を採用したものを説示する。
【0136】
図15は、本開示の第5の変形例に係るベルト型濃縮機における混合弁の一例を示した要部説明図である。本変形例に係るベルト型濃縮機1の混合弁70は、図15に示すように、供給汚泥用配管15と凝集槽18の流入口181から延びる連結管183の間に設けられてよい。この混合弁70は、その内部に形成された混合室71と、混合室71内に配置された弁体72と、弁体72を動作させるためのレバー73と、混合室71の上流側に配設され且つ薬剤用配管16に接続されて混合室71内に薬剤を導入する薬剤導入部材74とを含むことができる。
【0137】
上記構成のうち、弁体72は、混合室71内の壁面に隣接した位置に設けられた支軸75を中心として回転可能な板状の部材で構成することができる。そして、この弁体72はレバー73を動作させることに追従して回動し、この弁体72による混合弁70の弁開度を調整することにより、混合室71内の通路面積を変化させる。これにより、当該通路を通過する流体への撹拌力を変化させて、供給汚泥SL0の凝集の程度を調整することを可能としている。一般に、混合弁70の弁開度が小さい、言い換えれば弁体72と混合室71の内壁面とで画定される通路面積が狭いほど、この部分で生じる撹拌作用が増して供給汚泥SL0の薬剤による凝集度合が上昇する。なお、混合弁70の弁構造は上述したものに限定されない。例えば、混合室71内に混合室71の延在方向に直交する方向に動作するシャッター状の部材を設け、当該部材を挿抜方向に動作させることで、通路面積を変化させる構造を採用してもよい。
【0138】
上述した構成に関連して、本変形例に係るベルト型濃縮機に適用される機械学習装置及び機械学習方法においては、学習用データセットの一部としての出力データとして、混合弁70の弁開度を追加的に採用することができる。これにより、機械学習装置及び機械学習方法に係る学習モデルは、第1の画像データと、混合弁70の弁開度を含む制御パラメータとの相関関係を学習することとなる。したがって、本変形例に係るベルト型濃縮機に適用されるデータ処理システム及び推論装置は、上述の学習によって生成された学習済モデルを用いることにより、第1の画像データから、混合弁70の弁開度を含む制御パラメータを推論することが可能となる。
【0139】
データ処理システム及び推論装置において推論された制御データに基づいて、ベルト型濃縮機における混合弁70の弁開度を調整するために、本変形例に係るレバー73を、図示しないアクチュエータ及び制御ユニットに接続すると好ましい。このようなアクチュエータ及び制御ユニットを設けることにより、混合弁70の弁開度は自動的に調整することができるようになる。なお、上述したアクチュエータ及び制御ユニットによる調整動作は、上述した第4の変形例において説明したものと同様に、運転員による手動操作に代替可能である。
【0140】
本変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置は、制御パラメータが混合弁70の弁開度を含む点を除き、上述した第1の実施の形態に係るものと概ね同様である。よって、第1の実施の形態として説示したものと共通する点についてはその説明を省略している。
【0141】
<第6の変形例>
上記第1実施の形態においてはその構成についての説明を省略したが、上述のベルト型濃縮機1においては、オプションとして、無端ベルト5の上面の搬送方向下流側に、傾斜板を構成するランプ80を採用することができる。以下には、第6の変形例として、学習用データセットの出力データあるいは学習済モデルの推論結果を構成するデータとして、上述した実施の形態において例示した3つの制御パラメータのうちの少なくとも1つに加えて、ランプ80の傾斜角度を採用したものを説示する。
【0142】
図16は、本開示の第6の変形例に係るベルト型濃縮機における無端ベルトの上面側部分の構成の一例を示した要部概略説明図であって、図16(A)は無端ベルトの下流側部分を上方から見た概略図であり、図16(B)は図16(A)に示した部分を正面方向から見た概略図である。本変形例に係るランプ80は、図1図16(A)及び図16(B)に示すように、その幅方向長さが無端ベルト5の幅方向長さと実質的に同一な、当該幅方向に長尺な板状体で構成することができる。このランプ80の搬送方向下流側に位置する端辺には、ランプ80を動作させるための駆動軸81が取り付けられていてよい。また、ランプ80の搬送方向上流側に位置する端辺は、無端ベルト5の搬送面に当接したランプ先端82とすることができる。駆動軸81は、無端ベルト5の幅方向に沿って延在し、その端部が図示しないアクチュエータに接続されることで、ランプ80の下流側の端辺と共に上下方向に移動することができる。この駆動軸81が移動することにより、ランプ80の傾斜角度θ1が変化する。なお、ランプ先端82はランプ80の傾斜角度に関わらず常に無端ベルト5の搬送面に当接していることが好ましい。よって、ランプ80の駆動軸81による移動は、ランプ先端82の当接位置を実質的な中心とした回転動作であることが好ましい。
【0143】
上述した構成を含むランプ80は、無端ベルト5上を搬送される凝集汚泥SL1の搬送方向への移動をせき止めるように機能する。ここでせき止められた凝集汚泥SL1は、後続の他の凝集汚泥SL1に押されるかたちで傾斜したランプ80を上るように移動し、ランプ80を上りきったところで濃縮汚泥排出部20に落下することとなる。ランプ80を上るように移動する凝集汚泥SL1は、自重の作用で濃縮がさらに促進されるため、このランプ80は、濃縮の効率を向上させるように機能している。一般に、ランプ80の傾斜角度θ1が大きければ、ランプ80による濃縮促進作用も大きくなる。
【0144】
上述した構成に関連して、本変形例に係るベルト型濃縮機に適用される機械学習装置及び機械学習方法においては、学習用データセットの一部としての出力データとして、ランプ80の傾斜角度θ1を追加的に採用することができる。これにより、機械学習装置及び機械学習方法に係る学習モデルは、第1の画像データと、ランプ80の傾斜角度θ1を含む制御パラメータとの相関関係を学習することとなる。したがって、本変形例に係るベルト型濃縮機に適用されるデータ処理システム及び推論装置は、上述の学習によって生成された学習済モデルを用いることにより、第1の画像データから、ランプ80の傾斜角度θ1を含む制御パラメータを推論することが可能となる。
【0145】
上記データ処理システム及び推論装置において推論された制御データに基づいて、ベルト型濃縮機1におけるランプ80の傾斜角度θ1を自動的に調整するために、駆動軸81に接続されるアクチュエータを図示しない制御ユニットを用いて制御可能とすると好ましい。なお、ここで述べたアクチュエータ及び制御ユニットによる調整動作は、上述した第4の変形例において説明したものと同様に、運転員による手動操作に代替可能である。
【0146】
本変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置は、制御パラメータがランプ80の傾斜角度θ1を含む点を除き、上述した本実施の形態に係るものと概ね同様である。よって、本実施の形態として説示したものと共通する点についてはその説明を省略している。
【0147】
<第7の変形例>
上記第1の実施の形態においてはその構成についての説明を省略したが、上述のベルト型濃縮機1においては、オプションとして、無端ベルト5の内側であってローラ3に隣接する位置に、無端ベルト5の下面に付着した汚泥等を除去するための洗浄ノズル90を採用することができる。以下には、第4の変形例として、学習用データセットの出力データあるいは学習済モデルの推論結果を構成するデータとして、上述した実施の形態において例示した3つの制御パラメータのうちの少なくとも1つに加えて、洗浄ノズル90から供給される洗浄水CLの供給圧力を採用したものを説示する。
【0148】
本変形例に係る洗浄ノズル90は、図1に示すように、無端ベルト5の内側に配されており、無端ベルト5の下面、すなわち無端ベルト5の搬送面とは反対側の面に対し、その裏側から洗浄水CLを供給可能となっているとよい。この洗浄ノズル90としては、例えば無端ベルト5の幅方向に沿って延在する長尺な配管の下側面の適所に、洗浄水CLを供給可能な噴射口が形成されたもので構成することができる。この配管で構成された洗浄ノズル90は、その一端が本体ケース2の外部に延在しており、洗浄水用ポンプ91及び洗浄水供給源92に接続されている。この洗浄水用ポンプ91を制御することにより、洗浄ノズル90から供給される洗浄水CLの供給圧力を調整することができる。この洗浄水用ポンプ91の制御は、図示しない制御ユニットによって自動的に行えるようにするとよい。
【0149】
洗浄ノズル90の下側領域には、図1に示すように、洗浄水排出部93が配設されている。この洗浄水排出部93は、洗浄ノズル90から噴射された洗浄水CLと洗浄水CLによって無端ベルト5からの取り除かれた汚泥等を受ける洗浄水受け部94と、この洗浄水受け部94の底部に設けられ洗浄水CL等を本体ケース2外に排出する洗浄水排出口96と、洗浄水排出口96から排出された洗浄水CL等を貯留する洗浄水貯留槽97とを少なくとも含むことができる。また、洗浄水受け部94はろ液受け部31に隣接しているため、互いが受ける液体が混ざらないように、両受け部の境界部分に隔壁95を設けるとよい。
【0150】
以上の構成により、スクレーパ24では無端ベルト5から分離しきれなかった汚泥等によって無端ベルト5が目詰まりし、ベルト型濃縮機1の性能が低下した場合等に、無端ベルト5の目詰まりを解消することができる。具体的には、洗浄水用ポンプ91を動作させて洗浄水CLを洗浄ノズル90に供給することにより、洗浄水CLを、洗浄ノズル90の噴射口から無端ベルト5の下面の裏側へ所定の供給圧力で噴射する。この洗浄水CLの噴射により、無端ベルト5に付着した汚泥等が無端ベルト5の内部から無端ベルト5の表側へ押し出される。無端ベルト5から押し出された汚泥等は洗浄水CLと共に洗浄水受け部94に落下し、洗浄水排出口96を介して洗浄水貯留槽97に送られ、貯留されることとなる。なお、洗浄水貯留槽97に一時的に貯留された汚泥等を含む洗浄水CLは、例えば供給汚泥用配管15に戻されて再度ベルト型濃縮機1により濃縮が行われると好ましい。このように再度の濃縮を実行すれば、ベルト型濃縮機1のSS回収率(固形物回収率)が向上する。
【0151】
上述した構成に関連して、本変形例に係るベルト型濃縮機に適用される機械学習装置及び機械学習方法においては、学習用データセットの一部としての出力データとして、洗浄ノズル90から供給される洗浄水CLの供給圧力を追加的に採用することができる。これにより、機械学習装置及び機械学習方法に係る学習モデルは、第1の画像データと、洗浄ノズル90から供給される洗浄水CLの供給圧力を含む制御パラメータとの相関関係を学習することとなる。したがって、本変形例に係るベルト型濃縮機に適用されるデータ処理システム及び推論装置は、上述の学習によって生成された学習済モデルを用いることにより、第1の画像データから、洗浄ノズル90から供給される洗浄水CLの供給圧力を含む制御パラメータを推論することが可能となる。
【0152】
本変形例に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置は、制御パラメータとしてランプ80の傾斜角度θ1を含む点を除き、上述した第1の実施の形態に係るものと概ね同様である。よって、第1の実施の形態において説示したものと共通する点についてはその説明を省略している。
【0153】
上述した第4乃至第7の変形例に示した通り、本開示の機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置において学習に用いられるあるいは推論される制御パラメータは、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量のみならず、ベルト型濃縮機が備える構成要素に合わせて種々のパラメータを採用することができる。なお、上記各変形例において例示した構成要素、例えばプロー50やランプ80等は、本開示に係るベルト型濃縮機においては任意に採用可能な構成である。また、上記第4乃至第7の変形例においては、制御パラメータとして、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量の少なくとも1つに加えて、さらに1つ又は2つの制御パラメータを採用したものを例示しているが、加える制御パラメータの数は1つ又は2つに限定されない。したがって、本開示においては、制御パラメータとして、凝集汚泥SL1の薬注率、無端ベルト5の走行速度及び凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量のうちの少なくとも1つと、プロー本体51の数、プロー本体51の無端ベルト5への当接位置、混合弁70の弁開度、ランプ80の傾斜角度及び洗浄水CLの供給圧力のうちの少なくとも1つを含んでいればよい。
【0154】
<第2の実施の形態>
上述した第1の実施の形態及び第1乃至第7の変形例において、学習用データセットの入力データあるいは推論ユニットに入力されるデータに含まれる画像データは、いずれも第1の画像データのみである。しかし、上記入力データ等として採用可能な画像データは第1の画像データ以外にも存在する。そこで、以下には第2の実施の形態として、入力データ等に含まれる画像データとして、第1の画像データに加えて、濃縮汚泥SL2を撮像した第2の画像データを含むものについて説明する。なお、以下に示す第2の実施の形態に係る機械学習装置200及びデータ処理システム250の各構成要素のうち、第1の実施の形態に係る機械学習装置100及びデータ処理システム150の各構成要素と共通するものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0155】
図17は、本開示の第2の実施の形態に関連するベルト型濃縮機の一例を示す概略構造図である。本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1Aは、図17に示すように、濃縮汚泥用配管23の適所に、この濃縮汚泥用配管23内を通過する濃縮汚泥SL2を監視するための第2の監視システムM20を含む点以外は、図1に示したベルト型濃縮機1と概ね同様の構成を含むものであってよい。したがって、本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1Aの構成要素のうち、上述したベルト型濃縮機1と同様のものには同一の符号を付してその説明を省略するものとする。
【0156】
第2の監視システムM20は、図17に示すように、無端ベルト5上で濃縮された後の濃縮汚泥SL2を監視するためのものであって、少なくとも第2のカメラM21を含むことができる。第2のカメラM21は、少なくとも二次元画像を撮像可能な周知のカメラで構成することができる。また、この第2のカメラM21は、ランプ80を通過する直前の濃縮汚泥SL2を撮像するために、その撮像面をランプ80の駆動軸81付近に向くように本体ケース2に取り付けられている。なお、本実施の形態においては、第2のカメラM21の取付位置は上述のものに限定されない。具体的には、例えば濃縮汚泥用配管23の、濃縮汚泥用配管23内を通過する濃縮汚泥SL2を撮像可能な位置や、濃縮汚泥受け部21上の濃縮汚泥SL2を撮像可能な位置に取り付けることもできる。
【0157】
第2のカメラM21の撮像対象である、ランプ80上を搬送される濃縮汚泥SL2を撮像した画像の一例を図18に示す。図18の画像から分かる通り、ランプ80上を搬送される濃縮汚泥SL2は、無端ベルト3上で液体成分がろ過されたことにより、例えば図3の画像に含まれる凝集汚泥SL1に比べて含有する固形成分の濃度が上昇しており、それに付随して粘度も上昇していることが外観から認識できる。第2のカメラM21は、濃縮が完了した濃縮汚泥SL2を撮像するために、その画角をランプ80の駆動軸81に向けて調整されていることが好ましい。
【0158】
図19は、本開示の第2の実施の形態に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係る機械学習装置200は、図19に示すように、学習用データセット取得ユニット101と、第5の学習用データセット記憶ユニット1025と、第5の学習ユニット1035と、学習済モデル記憶ユニット104とを含むものとすることができる。
【0159】
本実施の形態に係る学習用データセット取得ユニット101は、第1の監視システムM10によって取得された第1の画像データと、第2の監視システムM20によって取得された第2の画像データと、これらの画像データに対応付けられる制御パラメータとを取得することができる。本実施の形態においても、制御パラメータとしては、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量のうちの少なくとも1つを採用することができる。また、この学習用データセット取得ユニット101が取得する複数のデータは、メインコントロールユニットMC、第1の監視システムM10及び第2の監視システムM20に接続されたコンピュータPC1を介して取得すればよい。なお、図19においては、その理解を容易にするために、メインコントロールユニットMCと第1の監視システムM10及び第2の監視システムM20とを別々に図示したものを例示しているが、第1の監視システムM10及び第2の監視システムM20はその少なくとも一部がメインコントロールユニットMC内に含まれていてもよい。
【0160】
第5の学習用データセット記憶ユニット1025は、第1の実施の形態に係る学習用データセット記憶ユニット102と同様に、学習用データセット取得ユニット101で取得した学習用データセットを構成する複数のデータを、関連する入力データと出力データとを関連付けて1つの学習用データセットとし、格納するためのデータベースとすることができる。他方、この第5の学習用データセット記憶ユニット1025内に格納される第5の学習用データセットは、第1の画像データ及び第2の画像データを第5の入力データとし、第5の入力データとしての画像データに対応付けられた制御パラメータを第5の出力データとしたものとすることができる。
【0161】
第5の学習ユニット1035は、第5の学習用データセット記憶ユニット1025に記憶された第5の学習用データセットを複数組入力することで、第5の入力データと第5の出力データとの間の相関関係を学習するものである。本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様、機械学習の具体的な手法としてニューラルネットワークを用いた教師あり学習を採用することができる。この第5の学習ユニット1035における具体的な機械学習方法は、学習に用いる学習用データセットが異なるものの、その工程は第1の実施の形態に係る機械学習方法と同様である。また、学習済モデル記憶ユニット104は、第5の学習ユニット1035で生成された学習済モデルを記憶するためのデータベースである。
【0162】
図20は、本開示の第2の実施の形態に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係るデータ処理システム250は、図20に示すように、主に画像データ取得ユニット151と、第5の推論ユニット1525とを含み、加えて、学習済モデル記憶ユニット153と、調整ユニット154とを含むことができる。なお、上述した各構成要素のうち、画像データ取得ユニット151、学習済モデル記憶ユニット153及び調整ユニット154は、上述した第1の実施の形態に係るデータ処理システム150のものと同様のものであってよい。ただし、画像データ取得ユニット151は、第1の画像データに加えて、第2の画像データを取得することができる。そのため、第1の監視システムM10と第2の監視システムM20の両方に接続されている。
【0163】
第5の推論ユニット1525は、学習済モデル記憶ユニット153に格納された第5の学習済モデルを参酌することができる。これにより、画像データ取得ユニット151で取得した第1及び第2の画像データが入力されると、調整ユニット154にて調整を行う制御パラメータを推論することができる。
【0164】
上述した構成を含むデータ処理システム250により、ベルト型濃縮機1Aを動作させる制御パラメータを調整する際は、以下の処理を実行すればよい。すなわち、先ず画像データ取得ユニット151において、第1の監視システムM10及び第2の監視システムM20において所望のタイミングで撮像された第1の画像データ及び第2の画像データを取得する。次いで、第1の画像データ及び第2の画像データを、第5の推論ユニット1525において予め準備された第5の学習済モデルの入力層に入力することで、1乃至複数(例えば3つ)の制御パラメータを推論する。そして、推論結果としての3つの制御パラメータを、調整ユニット154を介して対応する各制御ユニット41~43に送り、各制御ユニット41~43が対応するアクチュエータを動作させることで、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量とを調整する。なお、第1の画像データの撮像タイミングと、第2の画像データの撮像タイミングとは、例えば同一の対象物を撮像するよう調整されると好ましい。また、本変形例に係る推論装置については、プロセッサによる推論の処理が上述したデータ処理システム250における推論の処理に対応する点以外は第1の実施の形態に係るものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0165】
以上説明した通り、本実施の形態に係る機械学習装置200及び機械学習方法によれば、入力データとして2つの画像データを採用することで、画像データが1つのみの場合に比べて入力データと出力データとの間の相関関係が学習しやすくなることが期待できる。よって、比較的少ない学習用データセットの数で、十分な精度の推論が可能な各学習済モデルを生成することができる。また、本実施の形態に係るデータ処理システム250及び推論装置によれば、第1及び第2の画像データという2つの画像データのみから、ベルト型濃縮機1Aの好ましい制御パラメータを推定できるため、このデータ処理システム250を比較的簡単にベルト型濃縮機1AのメインコントロールユニットMCに適用することができる。そして、制御パラメータの調整を運転員の判断に依存することなく簡単に行うことができるようになる。
【0166】
オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第1の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第2の画像データから制御パラメータを推論するに際し、複数の学習済モデルを用いて推論を行うものとすることができる。ただし、本実施の形態においては、学習及び推論に第1の画像データのみならず第2の画像データをも利用されるため、両画像データそれぞれに、その特徴量との相関関係を学習する必要がある。したがって、本実施の形態において第1の変形例を適用する場合には、機械学習装置として、第1の画像データと第1の画像データの特徴量(具体的には凝集汚泥SL1の情報としてのフロック凝集体の大きさ、色値、密度等)との相関関係を学習するものと、第2の画像データと第2の画像データの特徴量(具体的には濃縮汚泥の色値、密度、濃度等)との相関関係を学習するものと、第1の画像データの特徴量及び第2の画像データの特徴量と制御パラメータとの相関関係を学習するものの、3つの学習ユニットを準備するとよい。そして、機械学習方法としては、上述した3つの相関関係を学習するとよい。また、データ処理システム及び推論装置としては、上述した3つの学習ユニットで学習された学習済モデルを用いて推論を行う3つの推論ユニットを準備し、対応するデータを順次入力することで、制御パラメータを推論すればよい。
【0167】
また、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第2の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第2の画像データに加えて、ベルト型濃縮機1Aの状態変数を学習及び推論に用いることができる。なお、本実施の形態において学習及び推論に用いられる状態変数としては、供給汚泥濃度及びろ液濃度のうちの少なくとも1つを採用するとよい。なお、ベルト型濃縮機1Aの状態変数としては、上記2つに加えて濃縮汚泥濃度を挙げることができるが、濃縮汚泥濃度は第2の画像データと比較的高い相関が認められるものであるため、他の状態変数に比して学習及び推論における影響力が小さいことが予測される。よって、本実施の形態における第2の変形例としては、状態変数として濃縮汚泥濃度を採用しなくてもよい。これに関連して、本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1Aは、図17に示すように、濃縮汚泥濃度センサ62を有していなくてよい。
【0168】
さらに、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第3の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第2の画像データに加えて、ベルト型濃縮機1Aの状態変数を学習及び推論に用い、且つ第1及び第2の画像データ及び状態変数から制御パラメータを推論するに際し、複数の学習済モデルを用いて推論を行うものとすることができる。具体的には、本実施の形態において第3の変形例を適用する場合には、機械学習装置として、第1の画像データと第1の画像データの特徴量との相関関係を学習するものと、第2の画像データと第2の画像データの特徴量との相関関係を学習するものと、第1の画像データの特徴量、第2の画像データの特徴量及び状態変数(例えば供給汚泥濃度とろ液濃度)と制御パラメータとの相関関係を学習するものの、3つの学習ユニットを準備するとよい。そして、機械学習方法としては、上述した3つの相関関係を学習するとよい。また、データ処理システム及び推論装置としては、上述した3つの学習ユニットで学習された学習済モデルを用いて推論を行う3つの推論ユニットを準備し、対応するデータを順次入力することで、制御パラメータを推論すればよい。
【0169】
さらにまた、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第4乃至7の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置において学習に用いられるあるいは推論される制御パラメータとして、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量の少なくとも1つに加えて、プロー本体51の数、プロー本体51の無端ベルト5への当接位置、混合弁70の弁開度、ランプ80の傾斜角度及び洗浄水CLの供給圧力のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0170】
<第3の実施の形態>
次に、学習用データセットの入力データあるいは推論ユニットに入力されるデータに含まれる画像データとして、第1の画像データに加えて、無端ベルト5上に供給される前の凝集汚泥SL1を撮像した第3の画像データを含むものを、本開示の第3の実施の形態として以下に説明する。なお、以下に示す第3の実施の形態に係る機械学習装置300及びデータ処理システム350の各構成要素のうち、第1の実施の形態に係る機械学習装置100及びデータ処理システム150の各構成要素と共通するものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0171】
図21は、本開示の第3の実施の形態に関連するベルト型濃縮機の一例を示す概略構造図である。本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1Bは、図21に示すように、無端ベルト5上に供給される前の凝集汚泥SL1を監視するための第3の監視システムM30を含む点以外は、図1に示したベルト型濃縮機1と実質的に同様の構成を含むものであってよい。したがって、本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1Bの構成要素のうち、上述したベルト型濃縮機1と同様のものには同一の符号を付してその説明を省略するものとする。
【0172】
第3の監視システムM30は、図21に示すように、無端ベルト5上に供給される凝集汚泥SL1の主にフロック凝集状態を監視するためのものであって、少なくとも第3のカメラM31を含むことができる。第3のカメラM31は、少なくとも二次元画像を撮像可能な周知のカメラで構成することができる。また、この第3のカメラM31は、凝集槽18の流出口182から流出する直前の凝集汚泥SL1を撮像するために、例えば凝集槽18の上部に、その撮像面を凝集槽18内に貯留された凝集汚泥SL1の表面に向けて取り付けることができる。この第3のカメラM31の具体的な撮像方法については適宜設定することができるが、凝集槽18の天板に所定の大きさの窓を設け、この窓を介して凝集汚泥SL1を撮像する方法を採用することができる。なお、本実施の形態においては、第3のカメラM31を凝集槽18に取り付けた例を示したが、取付位置はこれに限定されない。具体的には、例えば本体ケース2内の、汚泥投入シュート19上を移動する凝集汚泥SL1を撮像可能な位置に取り付けることもできる。
【0173】
第3のカメラM31の撮像対象である、凝集槽18に貯留された凝集汚泥SL1を撮像した画像の一例を図22に示す。図22の画像から分かる通り、凝集槽18に貯留された凝集汚泥SL1は、その表面領域にあるものから流出口182から無端ベルト5上へ送られる。したがって、凝集槽18内の凝集汚泥SL1の表面部分を撮像することにより、無端ベルト5上に供給される直前の凝集汚泥SL1のフロック凝集状態を撮像することができる。
【0174】
図23は、本開示の第3の実施の形態に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係る機械学習装置300は、図23に示すように、学習用データセット取得ユニット101と、第6の学習用データセット記憶ユニット1026と、第6の学習ユニット1036と、学習済モデル記憶ユニット104とを含むものとすることができる。
【0175】
本実施の形態に係る学習用データセット取得ユニット101は、第1の監視システムM10によって取得された第1の画像データと、第3の監視システムM30によって取得された第3の画像データと、これらの画像データに対応付けられる制御パラメータを取得することができる。本実施の形態においても、制御パラメータとしては、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量のうちの少なくとも1つを採用することができる。また、この学習用データセット取得ユニット101が取得する複数のデータは、メインコントロールユニットMC、第1の監視システムM10及び第3の監視システムM30に接続されたコンピュータPC1を介して取得すればよい。なお、図23においては、その理解を容易にするために、メインコントロールユニットMCと第1の監視システムM10及び第3の監視システムM30とを別々に図示したものを例示しているが、第1の監視システムM10及び第3の監視システムM30はその少なくとも一部がメインコントロールユニットMC内に含まれていてもよい。
【0176】
第6の学習用データセット記憶ユニット1026は、第1の実施の形態に係る学習用データセット記憶ユニット102と同様に、学習用データセット取得ユニット101で取得した学習用データセットを構成する複数のデータを、関連する入力データと出力データとを関連付けて1つの学習用データセットとし、格納するためのデータベースとすることができる。他方、この第6の学習用データセット記憶ユニット1026内に格納される第6の学習用データセットは、第1の画像データ及び第3の画像データを第6の入力データとし、第6の入力データとしての画像データに対応付けられた制御パラメータを第6の出力データとしたものとすることができる。
【0177】
第6の学習ユニット1036は、第6の学習用データセット記憶ユニット1026に記憶された第6の学習用データセットを複数組入力することで、第6の入力データと第6の出力データとの間の相関関係を学習するものである。本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様、機械学習の具体的な手法としてニューラルネットワークを用いた教師あり学習を採用することができる。この第6の学習ユニット1036における具体的な機械学習方法は、学習に用いる学習用データセットが異なるものの、その工程は第1の実施の形態に係る機械学習方法と同様である。また、学習済モデル記憶ユニット104は、第6の学習ユニット1036で生成された学習済モデルを記憶するためのデータベースである。
【0178】
図24は、本開示の第3の実施の形態に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係るデータ処理システム350は、図24に示すように、主に画像データ取得ユニット151と、第6の推論ユニット1526とを含み、加えて、学習済モデル記憶ユニット153と、調整ユニット154とを含むことができる。上述した各構成要素のうち、画像データ取得ユニット151、学習済モデル記憶ユニット153及び調整ユニット154は、上述した第1の実施の形態に係るデータ処理システム150のものと同様のものであってよい。ただし、画像データ取得ユニット151は、第1の画像データに加えて、第3の画像データを取得することができる。そのため、第1の監視システムM10と第3の監視システムM30の両方に接続されている。
【0179】
第6の推論ユニット1526は、学習済モデル記憶ユニット153に格納された第6の学習済モデルを参酌することができる。これにより、画像データ取得ユニット151で取得した第1及び第3の画像データが入力されると、調整ユニット154にて調整を行う制御パラメータを推論することができる。
【0180】
上述した構成を含むデータ処理システム350により、ベルト型濃縮機1Bを動作させる制御パラメータを調整する際は、以下の処理を実行すればよい。すなわち、先ず画像データ取得ユニット151において、第1の監視システムM10及び第3の監視システムM30において所望のタイミングで撮像された第1の画像データ及び第3の画像データを取得する。次いで、第1の画像データ及び第3の画像データを、第6の推論ユニット1526において予め準備された第6の学習済モデルの入力層に入力することで、1乃至複数(例えば3つ)の制御パラメータを推論する。そして、推論結果としての3つの制御パラメータを、調整ユニット154を介して対応する各制御ユニット41~43に送り、各制御ユニット41~43が対応するアクチュエータを動作させることで、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量とを調整する。なお、第1の画像データの撮像タイミングと、第3の画像データの撮像タイミングとは、例えば同一の対象物を撮像するよう調整されると好ましい。また、本変形例に係る推論装置については、プロセッサによる推論の処理が上述したデータ処理システム350における推論の処理に対応する点以外は第1の実施の形態に係るものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0181】
以上説明した通り、本実施の形態に係る機械学習装置300及び機械学習方法によれば、入力データとして2つの画像データを採用することで、画像データが1つのみの場合に比べて入力データと出力データとの間の相関関係が学習しやすくなることが期待できる。よって、比較的少ない学習用データセットの数で、十分な精度の推論が可能な各学習済モデルを生成することができる。また、本実施の形態に係るデータ処理システム350及び推論装置によれば、第1及び第3の画像データという2つの画像データのみから、ベルト型濃縮機1Bの好ましい制御パラメータを推定できるため、このデータ処理システム350を比較的簡単にベルト型濃縮機1BのメインコントロールユニットMCに適用することができる。そして、制御パラメータの調整を運転員の判断に依存することなく簡単に行うことができるようになる。
【0182】
オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第1の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第3の画像データから制御パラメータを推論するに際し、複数の学習済モデルを用いて推論を行うものとすることができる。ただし、本実施の形態においては、学習及び推論に第1の画像データのみならず第3の画像データをも利用されるため、両画像データそれぞれに、その特徴量との相関関係を学習する必要がある。したがって、本実施の形態において第1の変形例を適用する場合には、機械学習装置として、第1の画像データと第1の画像データの特徴量との相関関係を学習するものと、第3の画像データと第3の画像データの特徴量(具体的には凝集槽18の表面の凝集汚泥SL1の色値、密度、フロック凝集体の平均サイズ等)との相関関係を学習するものと、第1の画像データの特徴量及び第3の画像データの特徴量と制御パラメータとの相関関係を学習するものの、3つの学習ユニットを準備するとよい。そして、機械学習方法としては、上述した3つの相関関係を学習するとよい。また、データ処理システム及び推論装置としては、上述した3つの学習ユニットで学習された学習済モデルを用いて推論を行う3つの推論ユニットを準備し、対応するデータを順次入力することで、制御パラメータを推論すればよい。
【0183】
また、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第2の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第3の画像データに加えて、ベルト型濃縮機1Bの状態変数を学習及び推論に用いることができる。なお、本実施の形態において学習及び推論に用いられる状態変数としては、供給汚泥濃度、濃縮汚泥濃度及びろ液濃度のうちの少なくとも1つを採用するとよい。
【0184】
さらに、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第3の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第3の画像データに加えて、ベルト型濃縮機1Bの状態変数を学習及び推論に用い、且つ第1及び第3の画像データ及び状態変数から制御パラメータを推論するに際し、複数の学習済モデルを用いて推論を行うものとすることができる。具体的には、本実施の形態において第3の変形例を適用する場合には、機械学習装置として、第1の画像データと第1の画像データの特徴量との相関関係を学習するものと、第3の画像データと第3の画像データの特徴量との相関関係を学習するものと、第1の画像データの特徴量、第3の画像データの特徴量及び状態変数(例えば供給汚泥濃度、濃縮汚泥濃度及びろ液濃度)と制御パラメータとの相関関係を学習するものの、3つの学習ユニットを準備するとよい。そして、機械学習方法としては、上述した3つの相関関係を学習するとよい。また、データ処理システム及び推論装置としては、上述した3つの学習ユニットで学習された学習済モデルを用いて推論を行う3つの推論ユニットを準備し、対応するデータを順次入力することで、制御パラメータを推論すればよい。
【0185】
さらにまた、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第4乃至7の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置において学習に用いられるあるいは推論される制御パラメータとして、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量の少なくとも1つに加えて、プロー本体51の数、プロー本体51の無端ベルト5への当接位置、混合弁70の弁開度、ランプ80の傾斜角度及び洗浄水CLの供給圧力のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0186】
<第4の実施の形態>
次に、学習用データセットの入力データあるいは推論ユニットに入力されるデータに含まれる画像データとして、第1の画像データに加えて、薬剤が添加され混合される前の供給汚泥SL0を撮像した第4の画像データを含むものを、本開示の第4の実施の形態として以下に説明する。なお、以下に示す第4の実施の形態に係る機械学習装置400及びデータ処理システム450の各構成要素のうち、第1の実施の形態に係る機械学習装置100及びデータ処理システム150の各構成要素と共通するものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0187】
図25は、本開示の第4の実施の形態に関連するベルト型濃縮機の一例を示す概略構造図である。本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1Cは、図25に示すように、このベルト型濃縮機1Cの処理対象物である供給汚泥SL0を監視するための第4の監視システムM40を含む点以外は、図1に示したベルト型濃縮機1と実質的に同様の構成を含むものであってよい。したがって、本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1Cの構成要素のうち、上述したベルト型濃縮機1と同様のものには同一の符号を付してその説明を省略するものとする。
【0188】
第4の監視システムM40は、図25に示すように、薬剤が添加される前の処理液としての供給汚泥SL0を監視するためのものであって、少なくとも第4のカメラM41を含むことができる。第4のカメラM41は、少なくとも二次元画像を撮像可能な周知のカメラで構成することができる。また、この第4のカメラM41は、供給汚泥用配管15内を通過する供給汚泥SL0を撮像するために、その撮像面を供給汚泥用配管15内部に向けて取り付けられている。この第4のカメラM41の具体的な撮像方法については適宜設定することができるが、例えば供給汚泥用配管15の第4のカメラM41を取り付ける箇所に周知のサイトグラスを設け、このサイトグラスが備える窓を介して供給汚泥SL0を撮像する方法を採用することができる。
【0189】
図26は、本開示の第4の実施の形態に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係る機械学習装置400は、図26に示すように、学習用データセット取得ユニット101と、第7の学習用データセット記憶ユニット1027と、第7の学習ユニット1037と、学習済モデル記憶ユニット104とを含むものとすることができる。
【0190】
本実施の形態に係る学習用データセット取得ユニット101は、第1の監視システムM10によって取得された第1の画像データと、第4の監視システムM40によって取得された第4の画像データと、これらの画像データに対応付けられる制御パラメータを取得することができる。本実施の形態においても、制御パラメータとしては、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量のうちの少なくとも1つを採用することができる。また、この学習用データセット取得ユニット101が取得する複数のデータは、メインコントロールユニットMC、第1の監視システムM10及び第4の監視システムM40に接続されたコンピュータPC1を介して取得すればよい。なお、図26においては、その理解を容易にするために、メインコントロールユニットMCと第1の監視システムM10及び第4の監視システムM40とを別々に図示したものを例示しているが、第1の監視システムM10及び第4の監視システムM40はその少なくとも一部がメインコントロールユニットMC内に含まれていてもよい。
【0191】
第7の学習用データセット記憶ユニット1027は、第1の実施の形態に係る学習用データセット記憶ユニット102と同様に、学習用データセット取得ユニット101で取得した学習用データセットを構成する複数のデータを、関連する入力データと出力データとを関連付けて1つの学習用データセットとし、格納するためのデータベースとすることができる。他方、この第7の学習用データセット記憶ユニット1027内に格納される第7の学習用データセットは、第1の画像データ及び第4の画像データを第7の入力データとし、第7の入力データとしての画像データに対応付けられた制御パラメータを第7の出力データとしたものとすることができる。
【0192】
第7の学習ユニット1037は、第7の学習用データセット記憶ユニット1027に記憶された第7の学習用データセットを複数組入力することで、第7の入力データと第7の出力データとの間の相関関係を学習するものである。本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様、機械学習の具体的な手法としてニューラルネットワークを用いた教師あり学習を採用することができる。この第7の学習ユニット1037における具体的な機械学習方法は、学習に用いる学習用データセットが異なるものの、その工程は第1の実施の形態に係る機械学習方法と同様である。また、学習済モデル記憶ユニット104は、第7の学習ユニット1037で生成された学習済モデルを記憶するためのデータベースである。
【0193】
図27は、本開示の第4の実施の形態に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係るデータ処理システム450は、図27に示すように、主に画像データ取得ユニット151と、第7の推論ユニット1527とを含み、加えて、学習済モデル記憶ユニット153と、調整ユニット154とを含むことができる。上述した各構成要素のうち、画像データ取得ユニット151、学習済モデル記憶ユニット153及び調整ユニット154は、上述した第1の実施の形態に係るデータ処理システム150のものと同様のものであってよい。ただし、画像データ取得ユニット151は、第1の画像データに加えて、第4の画像データを取得することができる。そのため、第1の監視システムM10と第4の監視システムM40の両方に接続されている。
【0194】
第7の推論ユニット1527は、学習済モデル記憶ユニット153に格納された第7の学習済モデルを参酌することができる。これにより、画像データ取得ユニット151で取得した第1及び第4の画像データが入力されると、調整ユニット154にて調整を行う制御パラメータを推論することができる。
【0195】
上述した構成を含むデータ処理システム450により、ベルト型濃縮機1Cを動作させる制御パラメータを調整する際は、以下の処理を実行すればよい。すなわち、先ず画像データ取得ユニット151において、第1の監視システムM10及び第4の監視システムM40において所望のタイミングで撮像された第1の画像データ及び第4の画像データを取得する。次いで、取得した第1の画像データ及び第4の画像データを、第7の推論ユニット1527において予め準備された第7の学習済モデルの入力層に入力することで、1乃至複数(例えば3つ)の制御パラメータを推論する。そして、推論結果としての3つの制御パラメータを、調整ユニット154を介して対応する各制御ユニット41~43に送り、各制御ユニット41~43が対応するアクチュエータを動作させることで、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量とを調整する。なお、第1の画像データの撮像タイミングと、第4の画像データの撮像タイミングとは、例えば同一の対象物を撮像するよう調整されると好ましい。また、本変形例に係る推論装置については、プロセッサによる推論の処理が上述したデータ処理システム450における推論の処理に対応する点以外は第1の実施の形態に係るものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0196】
以上説明した通り、本実施の形態に係る機械学習装置400及び機械学習方法によれば、入力データとして2つの画像データを採用することで、画像データが1つのみの場合に比べて入力データと出力データとの間の相関関係が学習しやすくなることが期待できる。よって、比較的少ない学習用データセットの数で、十分な精度の推論が可能な各学習済モデルを生成することができる。また、本実施の形態に係るデータ処理システム450及び推論装置によれば、第1及び第4の画像データという2つの画像データのみから、ベルト型濃縮機1Cの好ましい制御パラメータを推定できるため、このデータ処理システム450を比較的簡単にベルト型濃縮機1CのメインコントロールユニットMCに適用することができる。そして、制御パラメータの調整を運転員の判断に依存することなく簡単に行うことができるようになる。
【0197】
オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第1の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第4の画像データから制御パラメータを推論するに際し、複数の学習済モデルを用いて推論を行うものとすることができる。ただし、本実施の形態においては、学習及び推論に第1の画像データのみならず第4の画像データをも利用されるため、両画像データそれぞれに、その特徴量との相関関係を学習する必要がある。したがって、本実施の形態において第1の変形例を適用する場合には、機械学習装置として、第1の画像データと第1の画像データの特徴量との相関関係を学習するものと、第4の画像データと第4の画像データの特徴量(具体的には供給汚泥SL0の色値、密度等)との相関関係を学習するものと、第1の画像データの特徴量及び第4の画像データの特徴量と制御パラメータとの相関関係を学習するものの、3つの学習ユニットを準備するとよい。そして、機械学習方法としては、上述した3つの相関関係を学習するとよい。また、データ処理システム及び推論装置としては、上述した3つの学習ユニットで学習された学習済モデルを用いて推論を行う3つの推論ユニットを準備し、対応するデータを順次入力することで、制御パラメータを推論すればよい。
【0198】
また、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第2の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第4の画像データに加えて、ベルト型濃縮機1Cの状態変数を学習及び推論に用いることができる。なお、本実施の形態において学習及び推論に用いられる状態変数としては、濃縮汚泥濃度及びろ液濃度のうちの少なくとも1つを採用するとよい。なお、ベルト型濃縮機1Cの状態変数としては、上記2つに加えて供給汚泥濃度を挙げることができるが、供給汚泥濃度は第4の画像データと比較的高い相関が認められるものであるため、他の状態変数に比して学習及び推論における影響力が小さいことが予測される。よって、本実施の形態における第2の変形例としては、状態変数として供給汚泥濃度を採用しなくてもよい。これに関連して、本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1Cは、図25に示すように、供給汚泥濃度センサ61を有していなくてよい。
【0199】
さらに、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第3の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第4の画像データに加えて、ベルト型濃縮機1Cの状態変数を学習及び推論に用い、且つ第1及び第4の画像データ及び状態変数から制御パラメータを推論するに際し、複数の学習済モデルを用いて推論を行うものとすることができる。具体的には、本実施の形態において第3の変形例を適用する場合には、機械学習装置として、第1の画像データと第1の画像データの特徴量との相関関係を学習するものと、第4の画像データと第4の画像データの特徴量との相関関係を学習するものと、第1の画像データの特徴量、第4の画像データの特徴量及び状態変数(例えば供給汚泥濃度、濃縮汚泥濃度及びろ液濃度)と制御パラメータとの相関関係を学習するものの、3つの学習ユニットを準備するとよい。そして、機械学習方法としては、上述した3つの相関関係を学習するとよい。また、データ処理システム及び推論装置としては、上述した3つの学習ユニットで学習された学習済モデルを用いて推論を行う3つの推論ユニットを準備し、対応するデータを順次入力することで、制御パラメータを推論すればよい。
【0200】
さらにまた、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第4乃至7の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置において学習に用いられるあるいは推論される制御パラメータとして、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量の少なくとも1つに加えて、プロー本体51の数、プロー本体51の無端ベルト5への当接位置、混合弁70の弁開度、ランプ80の傾斜角度及び洗浄水CLの供給圧力のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0201】
<第5の実施の形態>
次に、学習用データセットの入力データあるいは推論ユニットに入力されるデータに含まれる画像データとして、第1の画像データに加えて、無端ベルト5で分離されたろ液を撮像した第5の画像データを含むものを、本開示の第5の実施の形態として以下に説明する。なお、以下に示す第5の実施の形態に係る機械学習装置500及びデータ処理システム550の各構成要素のうち、第1の実施の形態に係る機械学習装置100及びデータ処理システム150の各構成要素と共通するものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0202】
図28は、本開示の第5の実施の形態に関連するベルト型濃縮機の一例を示す概略構造図である。本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1Dは、図28に示すように、無端ベルト5により分離されろ液排出部30に排出されるろ液FIを監視するための第5の監視システムM50を含む点以外は、図1に示したベルト型濃縮機1と実質的に同様の構成を含むものであってよい。したがって、本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1Dの構成要素のうち、上述したベルト型濃縮機1と同様のものには同一の符号を付してその説明を省略するものとする。
【0203】
第5の監視システムM50は、図28に示すように、ろ液FIを監視するためのものであって、少なくとも第5のカメラM51を含むことができる。第5のカメラM51は、少なくとも二次元画像を撮像可能な周知のカメラで構成することができる。また、この第5のカメラM51は、ろ液用配管33内を通過するろ液FIを撮像するために、その撮像面をろ液用配管33内部に向けて取り付けられている。この第5のカメラM51の具体的な撮像方法については適宜設定することができるが、例えば上述した第4のカメラM41と同様に、ろ液用配管33の任意の箇所に周知のサイトグラスを設け、このサイトグラスが備える窓を介してろ液用配管33内のろ液FIを撮像する方法を採用することができる。
【0204】
図29は、本開示の第5の実施の形態に係る機械学習装置の一例を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係る機械学習装置500は、図29に示すように、学習用データセット取得ユニット101と、第8の学習用データセット記憶ユニット1028と、第8の学習ユニット1038と、学習済モデル記憶ユニット104とを含むものとすることができる。
【0205】
本実施の形態に係る学習用データセット取得ユニット101は、第1の監視システムM10によって取得された第1の画像データと、第5の監視システムM50によって取得された第5の画像データと、これらの画像データに対応付けられる制御パラメータを取得することができる。本実施の形態においても、制御パラメータとしては、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量のうちの少なくとも1つを採用することができる。また、この学習用データセット取得ユニット101が取得する複数のデータは、メインコントロールユニットMC、第1の監視システムM10及び第5の監視システムM50に接続されたコンピュータPC1を介して取得すればよい。なお、図29においては、その理解を容易にするために、メインコントロールユニットMCと第1の監視システムM10及び第5の監視システムM50とを別々に図示したものを例示しているが、第1の監視システムM10及び第5の監視システムM50はその少なくとも一部がメインコントロールユニットMC内に含まれていてもよい。
【0206】
第8の学習用データセット記憶ユニット1028は、第1の実施の形態に係る学習用データセット記憶ユニット102と同様に、学習用データセット取得ユニット101で取得した学習用データセットを構成する複数のデータを、関連する入力データと出力データとを関連付けて1つの学習用データセットとし、格納するためのデータベースとすることができる。他方、この第8の学習用データセット記憶ユニット1028内に格納される第8の学習用データセットは、第1の画像データ及び第5の画像データを第8の入力データとし、第8の入力データとしての画像データに対応付けられた制御パラメータを第8の出力データとしたものとすることができる。
【0207】
第8の学習ユニット1038は、第8の学習用データセット記憶ユニット1028に記憶された第8の学習用データセットを複数組入力することで、第8の入力データと第8の出力データとの間の相関関係を学習するものである。本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様、機械学習の具体的な手法としてニューラルネットワークを用いた教師あり学習を採用することができる。この第8の学習ユニット1038における具体的な機械学習方法は、学習に用いる学習用データセットが異なるものの、その工程は第1の実施の形態に係る機械学習方法と同様である。また、学習済モデル記憶ユニット104は、第8の学習ユニット1038で生成された学習済モデルを記憶するためのデータベースである。
【0208】
図30は、本開示の第5の実施の形態に係るデータ処理システムの一例を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係るデータ処理システム550は、図30に示すように、主に画像データ取得ユニット151と、第8の推論ユニット1528とを含み、加えて、学習済モデル記憶ユニット153と、調整ユニット154とを含むことができる。上述した各構成要素のうち、画像データ取得ユニット151、学習済モデル記憶ユニット153及び調整ユニット154は、上述した第1の実施の形態に係るデータ処理システム150のものと同様のものであってよい。ただし、画像データ取得ユニット151は、第1の画像データに加えて、第5の画像データを取得することができる。そのため、第1の監視システムM10と第5の監視システムM50の両方に接続されている。
【0209】
第8の推論ユニット1528は、学習済モデル記憶ユニット153に格納された第8の学習済モデルを参酌することができる。これにより、画像データ取得ユニット151で取得した第1及び第5の画像データが入力されると、調整ユニット154にて調整を行う制御パラメータを推論することができる。
【0210】
上述した構成を含むデータ処理システム550により、ベルト型濃縮機1Dを動作させる制御パラメータを調整する際は、以下の処理を実行すればよい。すなわち、先ず画像データ取得ユニット151において、第1の監視システムM10及び第5の監視システムM50において所望のタイミングで撮像された第1の画像データ及び第5の画像データを取得する。次いで、第1の画像データ及び第5の画像データを、第8の推論ユニット1528において予め準備された第8の学習済モデルの入力層に入力することで、1乃至複数(例えば3つ)の制御パラメータを推論する。そして、推論結果としての3つの制御パラメータを、調整ユニット154を介して対応する各制御ユニット41~43に送り、各制御ユニット41~43が対応するアクチュエータを動作させることで、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量とを調整する。なお、第1の画像データの撮像タイミングと、第5の画像データの撮像タイミングとは、例えば同一の対象物を撮像するよう調整されると好ましい。また、本変形例に係る推論装置については、プロセッサによる推論の処理が上述したデータ処理システム550における推論の処理に対応する点以外は第1の実施の形態に係るものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0211】
以上説明した通り、本実施の形態に係る機械学習装置500及び機械学習方法によれば、入力データとして2つの画像データを採用することで、画像データが1つのみの場合に比べて入力データと出力データとの間の相関関係が学習しやすくなることが期待できる。よって、比較的少ない学習用データセットの数で、十分な精度の推論が可能な各学習済モデルを生成することができる。また、本実施の形態に係るデータ処理システム550及び推論装置によれば、第1及び第5の画像データという2つの画像データのみから、ベルト型濃縮機1Dの好ましい制御パラメータを推定できるため、このデータ処理システム550を比較的簡単にベルト型濃縮機1DのメインコントロールユニットMCに適用することができる。そして、制御パラメータの調整を運転員の判断に依存することなく簡単に行うことができるようになる。
【0212】
オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第1の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第5の画像データから制御パラメータを推論するに際し、複数の学習済モデルを用いて推論を行うものとすることができる。ただし、本実施の形態においては、学習及び推論に第1の画像データのみならず第5の画像データをも利用されるため、両画像データそれぞれに、その特徴量との相関関係を学習する必要がある。したがって、本実施の形態において第1の変形例を適用する場合には、機械学習装置として、第1の画像データと第1の画像データの特徴量との相関関係を学習するものと、第5の画像データと第5の画像データの特徴量(具体的にはろ液FIの色値、密度等)との相関関係を学習するものと、第1の画像データの特徴量及び第5の画像データの特徴量と制御パラメータとの相関関係を学習するものの、3つの学習ユニットを準備するとよい。そして、機械学習方法としては、上述した3つの相関関係を学習するとよい。また、データ処理システム及び推論装置としては、上述した3つの学習ユニットで学習された学習済モデルを用いて推論を行う3つの推論ユニットを準備し、対応するデータを順次入力することで、制御パラメータを推論すればよい。
【0213】
また、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第2の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第5の画像データに加えて、ベルト型濃縮機1Dの状態変数を学習及び推論に用いることができる。なお、本実施の形態において学習及び推論に用いられる状態変数としては、供給汚泥濃度及び濃縮汚泥濃度のうちの少なくとも1つを採用するとよい。なお、ベルト型濃縮機1Dの状態変数としては、上記2つに加えてろ液濃度を挙げることができるが、ろ液濃度は第5の画像データと比較的高い相関が認められるものであるため、他の状態変数に比して学習及び推論における影響力が小さいことが予測される。よって、本実施の形態における第2の変形例としては、状態変数としてろ液濃度を採用しなくてもよい。これに関連して、本実施の形態に関連するベルト型濃縮機1Dは、図28に示すように、ろ液濃度センサ63を有していなくてよい。
【0214】
さらに、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第3の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、第1及び第5の画像データに加えて、ベルト型濃縮機1Dの状態変数を学習及び推論に用い、且つ第1及び第5の画像データ及び状態変数から制御パラメータを推論するに際し、複数の学習済モデルを用いて推論を行うものとすることができる。具体的には、本実施の形態において第3の変形例を適用する場合には、機械学習装置として、第1の画像データと第1の画像データの特徴量との相関関係を学習するものと、第5の画像データと第5の画像データの特徴量との相関関係を学習するものと、第1の画像データの特徴量、第5の画像データの特徴量及び状態変数(例えば供給汚泥濃度と濃縮汚泥濃度)と制御パラメータとの相関関係を学習するものの、3つの学習ユニットを準備するとよい。そして、機械学習方法としては、上述した3つの相関関係を学習するとよい。また、データ処理システム及び推論装置としては、上述した3つの学習ユニットで学習された学習済モデルを用いて推論を行う3つの推論ユニットを準備し、対応するデータを順次入力することで、制御パラメータを推論すればよい。
【0215】
さらにまた、オプションとして、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理装置及び推論装置は、第1の実施の形態と同様に、上記第4乃至7の変形例に示すような変形が可能である。すなわち、本実施の形態に係る機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置において学習に用いられるあるいは推論される制御パラメータとして、凝集汚泥SL1の薬注率と、無端ベルト5の走行速度と、凝集汚泥SL1の無端ベルト5上への供給量の少なくとも1つに加えて、プロー本体51の数、プロー本体51の無端ベルト5への当接位置、混合弁70の弁開度、ランプ80の傾斜角度及び洗浄水CLの供給圧力のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0216】
上述した第2乃至第5の実施の形態においては、学習用データセットの入力データあるいは推論ユニットに入力されるデータに含まれる画像データとして、2つの画像データを用いる場合について例示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、学習用データセットの入力データあるいは推論ユニットに入力されるデータに含まれる画像データとして、3つ以上の画像データを採用することも可能である。具体的には、第1の画像データと、第2乃至第5の画像データのうちの2つ以上とを学習用データセットの入力データ及び推論ユニットに入力されるデータに採用することができる。なお、このように学習用データセットの入力データあるいは推論ユニットに入力されるデータに含まれる画像データとして、3つ以上の画像データを採用した場合における機械学習装置、機械学習方法、データ処理システム及び推論装置の具体的な構造等については、上述した各実施の形態の説明に基づいて、当業者であればその構成等を理解することができるため、ここでは説明を省略する。同様に、学習用データセットの入力データあるいは推論ユニットに入力されるデータに含まれる画像データとして3つ以上の画像データを採用した場合においても、上述した第1乃至第7の変形例に示した変形は可能である。このような変形についても、上述した各実施の形態及び変形例の説明に基づいて、当業者であればその構成等を理解することができるため、ここでは説明を省略する。
【0217】
オプションとして、上記実施の形態においては、学習済モデルを得るために、学習ユニット103、1031~1038においてバッチ学習により学習を行った場合を説示しているが、本開示はこれに限定されない。例えば、バッチ学習により学習された学習済モデルを、オンライン学習を行うことで更なる精度向上を図ってもよい。その場合には、画像データ取得ユニット151及び付加変数取得ユニット155が取得した画像データ及び付加変数と、推論ユニット152によって推論された制御パラメータであって、特に調整ユニット154における調整の結果、濃縮結果が改善された時の制御パラメータとを一組のオンライン学習用データセットとして図示しないデータベースに一時的に格納しておき、任意のタイミングで格納された当該オンライン学習用データセットによる機械学習処理(例えば図6に示した方法によるもの)を実行すれば良い。
【0218】
また、上述のデータ処理システム150、250、350、450、550はメインコントロールユニットMC内に適用されているが、これに代えて、例えばメインコントロールユニットMCに通信可能に接続された他のコンピュータや、メインコントロールユニットMCにネットワークを介して接続されたサーバ装置、クラウドベースのデータ処理プラットフォーム等に適用することも可能である。ただし、本実施の形態に係るベルト型濃縮機は、その処理内容(被処理液の種類や単位時間当たりの処理量等)や周辺環境(気候等)が装置毎に大きく異なる場合が通常であるため、あらゆるベルト型濃縮機に適用できるような汎用的な学習済モデルを生成すること等は効率的でない。したがって、データ処理システム150、250、350、450、550及び上述した機械学習プロセスは、ベルト型濃縮機毎に適用して運用することが現実的であり好ましい。
【0219】
上述した実施の形態は一例を示したものに過ぎず、以って本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。また、本開示において、各構成要素は、矛盾が生じない限りは1つのみ存在しても2つ以上存在してもよい。
【符号の説明】
【0220】
1、1A~1D ベルト型濃縮機
3、4 ローラ
5 無端ベルト
6 駆動部
10 供給部
20 濃縮汚泥排出部
30 ろ液排出部
41~43 第1~第3の制御ユニット
50、50-1~50-5 プロー(濃縮補助部材)
51 プロー本体
61 供給汚泥濃度センサ
62 濃縮汚泥濃度センサ
63 ろ液濃度センサ
80 ランプ
90 洗浄ノズル
100、100A~100C、200、300、400、500 機械学習装置
101 学習用データセット取得ユニット
1011~1018 第1~第8の学習用データセット取得ユニット
102 学習用データセット記憶ユニット
103 学習ユニット
104 学習済モデル記憶ユニット
150、150A~150C、250、350、450、550 データ処理システム
151 画像データ取得ユニット
152 推論ユニット
1521~1528 第1~第8の推論ユニット
153 学習済モデル記憶ユニット
154 調整ユニット
155 付加変数取得ユニット
SL0 供給汚泥(被処理液)
SL1 凝集汚泥(被処理液)
SL2 濃縮汚泥(濃縮被処理液)
FI ろ液(分離液)
MC メインコントロールユニット
M10~M50 第1~第5の監視システム
M11~M51 第1~第5のカメラ
IA 撮像領域
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