(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122370
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】梁、及び、建物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/26 20060101AFI20230825BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
E04B1/26 G
E04B1/58 508T
E04B1/58 508N
E04B1/58 505N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026038
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB12
2E125AC04
2E125AC23
2E125AC29
2E125AG43
2E125AG45
2E125BA02
2E125BA22
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】コンクリート柱または鋼製柱と木梁との接合状態が地震力を負担しにくいピン接合と同様の動きをする梁の構造と、この梁を用いた耐震性が確保された建物を提供する。
【解決手段】梁2は、コンクリート柱1の柱梁接合部11に対抗するように配置された木梁21と、柱梁接合部11から木梁21方向へ突出する突出部22と、突出部22の木梁21側の面に取付けられたベースプレート23と、ベースプレート23に、ベースプレート23から木梁21側に突出するように設けられた、プレート面が木梁21の幅方向に垂直なガセットプレート24とを備える。ガセットプレート23は、木梁21の突出部22側に設けられたスリット21aに挿入・固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート柱または鋼製柱の柱梁接合部に対抗するように配置された木梁と、
前記柱梁接合部から前記木梁方向へ突出する突出部と、
前記突出部の前記木梁側の面に取付けられたベースプレートと、
前記ベースプレートに、前記ベースプレートから前記木梁側に突出するように設けられた
、プレート面が前記木梁の幅方向に垂直なガセットプレートとを備え、
前記ガセットプレートは、前記木梁の前記突出部側に設けられたスリットに挿入されている梁。
【請求項2】
一端が前記突出部内に埋設されて前記木梁の長さ方向に延長する棒状部材を設けるとともに、前記棒状部材の他端側に前記ベースプレートを取付けたことを特徴とする請求項1に記載の梁。
【請求項3】
コンクリート柱または鋼製柱の柱梁接合部に対抗するように配置された木梁と、
前記柱梁接合部から前記木梁方向へ突出する突出部と、
前記木梁の長さ方向に延長する、一端が前記突出部内に埋設され、他端が前記木梁内に埋設される棒状部材と、
前記突出部の前記木梁側の面に配置されたベースプレートと、
前記ベースプレートから前記木梁側に突出するように設けられた、プレート面が前記木梁の幅方向に垂直なガセットプレートとを備え、
前記ガセットプレートは、前記木梁の前記突出部側に設けられたスリットに挿入されている梁。
【請求項4】
コンクリート柱または鋼製柱の柱梁接合部に対抗するように配置された木梁と、
前記柱梁接合部から前記木梁方向へ突出する突出部と、
前記木梁の長さ方向に延長する、一端が前記突出部内に埋設され、他端が前記木梁内に埋設される棒状部材とを備え、
前記突出部の下端側に、前記木梁側に突出する梁受け部が設けられている梁。
【請求項5】
前記棒状部材を前記突出部の上下方向の複数個所に配置するとともに、上側に配置された前記棒状部材の体積を下側に配置された前記棒状部材の体積よりも大きくしたことを特徴とする請求項2~請求項4のいずれかに記載の梁。
【請求項6】
前記突出部の側面側に木質板を取付けたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の梁。
【請求項7】
前記請求項1~請求項6のいずれかに記載の梁を小梁として組み込んだ建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木梁が組み込まれた梁と、この梁を用いた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート柱と木梁とを接合する方法として、全ネジボルトや異形鉄筋などの棒状部材を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、棒状部材の一端をコンクリート柱の仕口部に埋設し、他端を木梁に設けられて木梁の材軸方向に延びる挿入穴に挿入・固定している。この挿入穴には、挿入穴の軸方向に間隔を空けて配置された複数の拡張充填溝が設けられており、この拡張充填溝にエポキシ樹脂等の充填材を充填することで、棒状部材を挿入穴内に固定している。
この接合方法によれば、コンクリート柱と木梁との接合強度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、コンクリート柱と木梁との接合条件が剛接合に近いので、地震力が作用した場合には、木梁にも曲げモーメントや剪断力が作用するため、木梁の耐久性が必ずしも十分とはいえなかった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、コンクリート柱または鋼管柱と木梁との接合状態が地震力を負担しにくいピン接合と同様の動きをする梁の構造と、この梁を用いた耐震性が確保された建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンクリート柱または鋼製柱に接合される梁であって、コンクリート柱の柱梁接合部に対抗するように配置された木梁と、前記柱梁接合部から前記木梁方向へ突出する突出部と、前記突出部の前記木梁側の面に取付けられたベースプレートと、前記ベースプレートに、前記ベースプレートから前記木梁側に突出するように設けられた、プレート面が前記木梁の幅方向に垂直なガセットプレートとを備え、前記ガセットプレートは、前記木梁の前記突出部側に設けられたスリットに挿入されていることを特徴とする。
このように、木梁を突出部に疑似ピン接合する(ピン接合と同様の動きをする)構成としたので、地震時における梁への負担を軽減させることができるとともに、使用する木質部材の量を節約することができる。
なお、コンクリート柱は鉄筋コンクリート柱、鋼管コンクリート柱、及び、鉄筋鉄骨コンクリート柱を含むものとし、鋼製柱は鋼管柱、鉄骨柱を含むものとする。
また、一端が前記突出部内に埋設されて前記木梁の長さ方向に延長する棒状部材を設けるとともに、前記棒状部材の他端側に前記ベースプレートを取付けたので、ベースプレートを突出部に確実に取付けることができる。
また、梁を、コンクリート柱または鋼製柱の柱梁接合部に対抗するように配置された木梁と、前記柱梁接合部から前記木梁方向へ突出する突出部と、前記木梁の長さ方向に延長する、一端が前記突出部内に埋設され、他端が前記木梁内に埋設される棒状部材と、前記突出部の前記木梁側の面に配置されたベースプレートと、前記ベースプレートから前記木梁側に突出するように設けられた、プレート面が前記木梁の幅方向に垂直なガセットプレートとを備えた構成としたので、木梁と突出部との接合条件(固定度)をピン、半固定、固定と自由に設定することができる。
また、梁を、コンクリート柱または鋼製柱の柱梁接合部に対抗するように配置された木梁と、前記柱梁接合部から前記木梁方向へ突出する突出部と、前記木梁の長さ方向に延長する、一端が前記突出部内に埋設され、他端が前記木梁内に埋設される棒状部材とを備えた構成としてもよい。
また、前記棒状部材を前記突出部の上下方向の複数個所に配置するとともに、上側に配置された前記棒状部材の体積を下側に配置された前記棒状部材の体積よりも大きくしたので、長期荷重を負担する木梁の変形を小さくすることができる。したがって、木梁の断面積を小さくできる。
また、前記突出部の側面側に木質板を取付けたので、梁を軽量化することができるとともに、換気や排気に用いられる貫通口の口径を小さくすることができる。
また、建物を構築する際に、前記梁を小梁として組み込んだので、建物の耐久性を確保しつつ、地震時における梁への負担を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態1に係る梁の構造を示す図である。
【
図2】本発明の梁を適用した建物の一例を示す図である。
【
図3】本実施の形態2に係る梁の構造を示す図である。
【
図4】本実施の形態3に係る梁の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1(a),(b)は本実施の形態1に係る梁の構造を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は横断面図である。各図において1は柱、2は梁である。
以下、柱1の延長方向である(a)図の上下方向を上下方向、梁2の延長方向である(a)図の左右方向を前後方向、梁2の幅方向である(b)図の上下方向を左右方向とする。また、(a)図及び(b)図の右側の梁2の柱1側を前側とする。
柱1は鉄筋コンクリートから構成されている。なお、柱1をコンクリートもしくは鋼管内にコンクリートを充填した鋼管コンクリートから構成してもよい。
梁2は、木梁21と、突出部22と、ベースプレート23と、ガセットプレート24と、ドリフトピン25と、上部スラブ26とを備える。
木梁21は、柱1の柱梁接合部11に対抗するように配置されて柱1に直交する方向(前後方向)に延長する断面が矩形の木材で、柱1側には、スリット21aと複数のドリフトピン挿入孔21bとが形成されている。木梁21は突出部22にピン接合される。
スリット21aは、木梁21の幅方向中心から前後方向に延長して柱1側に開口する平面視矩形の溝で、このスリット21aには、ガセットプレート24が挿入される。
ドリフトピン挿入孔21bは左右方向に延長する貫通孔で、このドリフトピン挿入孔21bには、ドリフトピン25が打ち込まれる。
突出部22は、柱1の柱梁接合部11から木梁21方向へ突出する鉄筋コンクリートから成る直方体状の部材で、柱1と一体に構築される。なお、符号22hは、換気や排気に用いられる貫通口で、符号12は、柱1に前後の突出部22,22を構築する際に配置された梁筋である。また、柱1及び突出部22の他の配筋については省略した。
ベースプレート23は突出部22の木梁21側の面に取付けられた厚さ方向が木梁21の延長方向に垂直な平板状の部材で、鋼板から構成される。本例では、一端が突出部22に埋設されて木梁21の長さ方向に延長する棒状部材である固定用アンカーボルト27の他端側(木梁21側の端部)にベースプレート23を溶接することで、ベースプレート23を突出部22に取付けている。また、本例では、固定用アンカーボルト27をベースプレート23の上面側中央と下面側中央とに各1本ずつ設けているが、ベースプレート23の四隅に設けてもよい。
なお、
図1(c)に示すように、木梁21の突出部22側に固定用アンカーボルト27の受けスペースとしての凹部21sを設けるとともに、固定用アンカーボルト27を、ベースプレート23を貫通させ、上記の凹部21sにて、ベースプレート23に、座金27mとナット27nとを用いて固定してもよい。あるいは、ベースプレート23をモルタル等で突出部22に固定してもよい。
ガセットプレート24は、鋼板から構成される、プレート面が木梁21の幅方向に垂直な平板状の部材で、突出部22側にてベースプレート23に溶接等で固定されている。ガセットプレート24は、木梁21に形成されスリット21aに収納され、ドリフトピン25により木梁21に接合される。
ドリフトピン25は、先端部の径がドリフトピン挿入孔21bの径よりも小さな棒状の部材で、木梁21のドリフトピン挿入孔21bに打ち込まれて、ガセットプレート24と木梁21とをピン接合する。
上部スラブ26は、木梁21と突出部22の接合後に、木梁21と突出部22との上部に打設された鉄筋コンクリートから構成される。
【0009】
次に、本発明の梁2の構築方法について説明する。
まず、柱1の構築時に、柱1の柱梁接合部11に突出部22を構築する。
そして、突出部22に固定用アンカーボルト27の一端側を埋設した後、固定用アンカーボルト27の他端側に、予めガセットプレート24が取付けられたベースプレート23を溶接等により取付ける。
次に、木梁の21のスリット21aにガセットプレート24を挿入した後、ドリフトピン挿入孔21bにドリフトピン25を打ち込んで、木梁21を突出部22にピン接合する。
最後に、木梁21と突出部22との上部に型枠を設け、この型枠内にコンクリートを打設することで、上部スラブ26を構築する。
なお、固定用アンカーボルト27の他端側に予めガセットプレート24が取付けられたベースプレート23を溶接等により取付けたガセットプレートユニットを予め作製しておき、このガセットプレートユニットの固定用アンカーボルト27を突出部22のコンクリート打設前に突出部22のコンクリート打設予定箇所にセットした後、突出部22のコンクリートを打設するようにしてもよい。
【0010】
本発明の梁2は、上記のように、木梁21が柱1と一体に構築されて柱1と剛接合された突出部22にピン接合されているので、地震力等が作用した場合には、木梁21には曲げモーメントが発生せずその分変形する。すなわち、梁2は、突出部22と柱1とは剛接合されているものの、全体としては小梁として機能する。したがって、梁2を、建物の小梁として使用すれば、プレミア住居等、販売上有利な位置に木質部材を構造体として組み込むことができる。これにより、耐震性を確保しつつ、仕上げ材のみに木材を使用する場合に比較して、使用する木材の量を節約することができる。
図2は、本発明の梁2を適用した建物3の一例を示す図で、建物3は3階建て部分31と7階建て部分32とから構成され、3階建て部分31は、一般のRC集合住宅と同様に、全てRCフレームと小梁とスラブとで構成される。一方、7階建て部分32は、4階(4F)の床レベルまでは、3階部分31と同様にRCフレームと小梁とスラブとで構成され、4階(4F)以上では、柱33をRC柱とし、梁34を本発明の木梁21を備えた梁2とした。また、屋上部分35は各階の天井部分よりも厚さの厚いスラブから構成した。
これにより、4階以上の梁34を、ヒンジを用いることなく、RC柱(柱33)にピン接合される小梁とすることができる。
【0011】
実施の形態2.
図3(a),(b)は本実施の形態2に係る梁2Aの構造を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は横断面図である。
梁2Aは、木梁21Aと、突出部22と、ベースプレート23と、ガセットプレート24と、ドリフトピン25と、上部スラブ26と、接合用アンカーボルト28とを備える。
木梁21Aは、スリット21aとドリフトピン挿入孔21bに加えて、柱1側にアンカーボルト挿入孔21cが形成されている以外は実施の形態1の木梁21と同じである。また、突出部22などの実施の形態1と同符号のものは、実施の形態1と同じ構成であるので、その説明を省略する。
接合用アンカーボルト28は、一端が突出部22内に埋設され、他端が木梁21A内に埋設されて木梁21の長さ方向に延長する棒状の部材で、木梁21Aと突出部22とを接合する。接合用アンカーボルト28の他端は、柱1側に形成されたアンカーボルト挿入孔21cに挿入され、接着剤でアンカーボルト挿入孔21cに固定される。
本例では、接合用アンカーボルト28は突出部22の上面側中央と下面側中央とに各1本ずつ設けた。
なお、木梁21Aと突出部22とを接合する棒状の部材としては接合用アンカーボルト28に限定されるものではなく、鉄筋や鋼棒であってもよいが、接合用アンカーボルト28を用いた方が、突出部22や木梁21Aとの結合の度合いが高いので、接合用アンカーボルト28を用いることが好ましい。
また、本例では、ガセットプレート24の幅寸法(上下方向の長さ寸法)を実施の形態1よりも小さくしている。具体的には、ガセットプレート24が2本の接合用アンカーボルト28の内側に配置されるような幅寸法とした。なお、ガセットプレート24の幅寸法を実施の形態1と同じにするなど、長くしてもよいが、その場合には、接合用アンカーボルト28をドリフトピン25の間を通すように配置するこというまでもない。
このように、本例の梁2Aでは、木梁21Aを突出部22にピン接合するとともに、接合用アンカーボルト28により接合している。これにより、木梁21Aと突出部22との接合条件(固定度)をピン、半固定、固定と自由に設定することができる。
具体的には、ガセットプレート24の幅寸法を大きくするとともに、接合用アンカーボルト28の径を細くすれば、接合条件はピン接合に近い状態となり、反対に、ガセットプレート24の幅寸法を小さくするとともに、接合用アンカーボルト28の径を太くするか、もしくは、接合用アンカーボルト28の本数を多くすれば、接合条件は固定状態に近い状態となる。
【0012】
実施の形態3.
図4(a),(b)は本実施の形態3に係る梁2Bの構造を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は横断面図である。
梁2Bは、木梁21Bと、突出部22Bと、接合用アンカーボルト28とを備える。
木梁21Bは、スリット21aと複数のドリフトピン挿入孔21bとが形成されていないこと、及び、突出部22B側の下部に切り欠き部21kが形成されている以外は実施の形態2の木梁21Aと同じである。
突出部22Bには、下側の部分を木梁21B側に延長した延長部22kが設けられており、木梁21Bには、延長部22kを収納するための切り欠き部21kが設けられている。
接合用アンカーボルト28は、実施の形態2と同様に、一端が突出部22内に埋設され、他端が木梁21内に埋設される棒状の部材で、本例では、延長部22kの上側に2本設けられて、木梁21Bと突出部22Bとを接合する。
このように、本例の梁2Bでは、木梁21Bの上部側にて接合用アンカーボルト28により接合しているので、木梁21Bと突出部22Bとの接合条件(固定度)をピン、半固定、固定と自由に設定することができる。
具体的には、延長部22kの厚さを厚くするか、もしくは、接合用アンカーボルト28の設置位置を上側にすれば、接合条件はピン接合に近い状態となる。反対に、延長部22kの厚さを薄くするか、接合用アンカーボルト28の径を太くするか、もしくは、接合用アンカーボルト28の本数を多くすれば、接合条件は固定状態に近い状態となる。
【0013】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0014】
例えば、前記実施の形態1では、梁2の突出部22の幅寸法を木梁21,21A,21Bの幅寸法と同じにしたが、
図5(a)の側面図及び
図5(b)の横断面図に示すように、突出部22の幅寸法を木梁21の幅寸法よりも短くするとともに、突出部22の側面に木板等の仕上げ材29を取付けてもよい。木材はRCに比べて剛性が小さいので、RCから成る突出部22の幅を小さくしても木材から成る木梁21を十分に支持することができる。これにより、梁2を軽量化することができる。
なお、実施の形態2,3に示した梁2A,2Bにおいても仕上げ材を取付ける構成としてもよい。
また、
図5(c)に示すように、突出部22がなく、木梁21を直接柱1に接合した場合には、木梁21に貫通口22h’を形成する際に、耐火時間に応じた耐火被覆が必要になる。そのため、同図の斜線で示す耐火被覆層の厚さをdとすると、貫通口22h’の口径φ’は、必要な口径をφとするとφ’=φ+2dとなる。
これに対して、突出部22の幅方向両側に仕上げ材29を取付けた構成では、仕上げ材29の内側(突出部22)はコンクリートなので、貫通口22hの耐火被覆層を不要とできる。したがって、
図5(d)に示すような、口径φの小さな貫通口22hを設けることができる。
【0015】
また、前記実施の形態1では、ベースプレート23の上面側中央に設けた固定用アンカーボルト27の長さ寸法と下面側中央に設けた固定用アンカーボルト27の長さ寸法とを同じにしたが、
図6(a)に示すように、上面側の固定用アンカーボルト27aの長さ寸法を下面側の固定用アンカーボルト27bの長さ寸法よりも大きくすれば、長期荷重を負担する木梁21のたわみ量を小さくすることができるので、木梁21の断面積を小さくできる。
なお、木梁21のたわみ量を小さくするには、上面側の固定用アンカーボルト27aの断面積の総量を下面側の固定用アンカーボルト27bの断面積の総量よりも大きくしてもよい。あるいは、上面側の固定用アンカーボルト27aの長さ寸法と断面積の両方を、下面側の固定用アンカーボルト27bの長さ寸法と断面積の総量よりも大きくしてもよい。要は、上面側の固定用アンカーボルト27aの体積を下面側の固定用アンカーボルト27bの体積よりも大きくすれば、木梁21のたわみ量を小さくすることができる。
なお、本例では、固定用アンカーボルト27を上面側中央と下面側中央とに各1本ずつ設けているが、上面側の固定用アンカーボルト27aと下面側の固定用アンカーボルト27bの本数が複数の場合には、複数ある上面側の固定用アンカーボルト27aの全ての上面側の固定用アンカーボルト27aの断面積の総量を、下面側の固定用アンカーボルト27bのどの下面側の固定用アンカーボルト27bの断面積の総量よりも大きくする必要はなく、全ての上面側の固定用アンカーボルト27aの断面積の総量の合計を全ての下面側の固定用アンカーボルト27bの断面積の総量の合計よりも大きくすればよい。
また、
図3に示した実施の形態2の接合用アンカーボルト28についても、
図6(b)に示すように、上面側の接合用アンカーボルト28aの長さを下面側の接合用アンカーボルト28bの長さより長くすれば、木梁21の耐久性能を向上させることができる。同図では、突出部22側の長さを長くしているが、
図6(c)に示すように、突出部22側の長さと木梁21A側の長さの両方を長くすれば木梁21のたわみ量を更に小さくすることができる。なお、突出部22側の長さと木梁21A側の長さの一方のみを長くする場合には、突出部22側の長さを長くすることが好ましい。
なお、
図4に示した実施の形態3の接合用アンカーボルト28についても、
図6(d)に示すように、上面側の接合用アンカーボルト28aの長さを下面側の接合用アンカーボルト28bの長さより長くすれば、同様の効果を得ることができる。
【0016】
前記実施の形態1~3では、柱1を鉄筋コンクリート柱としたが、
図7(a),(b)に示すように、柱1を鋼製柱としてもよい。このとき、柱梁接合部11から木梁21方向へ突出する突出部も鋼棒や鉄板等の鋼材で構成される。
以下、鋼製柱を柱3、鋼棒や鉄板等の鋼材で構成される突出部を突出部4とする。
ここでは、柱3を角型鋼管で構成した。角型鋼管は内部に中空部を有する断面が矩形状の管状の部材で、鋼材から構成される。なお、柱3を丸型鋼管やH型鋼から構成してもよい。
突出部4は、上下のダイヤフラム(通しダイヤフラム)41a,41bと、突出部材としてのH型鋼42と、前後の固定板43a,43bと、補強板44a,44bと、上下の連結棒45a,45bと、を備える。
上下のダイヤフラム41a,41bと角型鋼管(柱3)とは突合せ溶接等により一体化されている。
H型鋼42は、柱3側の端部が上下のダイヤフラム41a,41bと突合せ溶接等により一体化されており、木梁21側の端部がベースプレート23の上端部と下端部と溶接等により連結されている。具体的には、H型鋼42を、その延長方向が柱3の木梁21側の面に垂直になるように配置するとともに、H型鋼42の上フランジ42aは上側のダイヤフラム41aとベースプレート23の上端部に、下フランジ42bは下側のダイヤフラム41bとベースプレート23の下端部にそれぞれ溶接される。
前後の固定板43a,43bは板面が木梁21側の面に垂直な鉄板で、両端がそれぞれH型鋼管42の上下のフランジ42a,42bの内側に取付けられている。
また、固定板43a,43bはH型鋼管42のウェブ42cの左右にそれぞれ配置されており、この固定板43a,43bに連結棒45a,45bの柱3側の端部が固定されている。なお、固定板43bを省略して固定板を1枚としてもよい。
補強板44a,44bは、板面が上下方向に垂直な鉄板で固定板43a,43bの間に固定板43a,43bを連結するように配置されて固定板43a,43bを補強する。
【0017】
上下の連結棒45a,45bは、実施の形態1のベースプレート23を突出部22に取付けるための固定用アンカーボルト27と同様の機能を有する棒状の部材で、本例では、上下の連結棒45a,45bを鋼棒等により構成するとともに、上下の連結棒45a,45bをH型鋼材42のウェブ42cの左右に配置した。上記のように、連結棒45a,45bの柱3側の端部は前側の固定板43aと後側の固定板43bとにナット46で固定される。なお、
図7(a),(b)では、連結棒45a,45bを固定板43a,43bの前側と後側にてナット46で固定しているが、ナット46による固定は、固定板43a,43bの前側のみ、または、後側のみであってもよい。
また、連結棒45a,45bの木梁21側の端部はベースプレート23を貫通し、ベースプレート23の柱3側と木梁21側にてナット47でベースプレート23に固定される。これにより、ベースプレート23とガセットプレート24とは突出部4に固定されたことになる。
図7(b)では、木梁21側のナット47を締結するスペース47sを確保するため、木梁21の幅を左右の連結棒45a(もしくは、連結棒45b)の間隔より狭くしているが、
図7(c)に示すように、木梁21の突出部4側に連結棒45a,45bの受けスペースとしての凹部21sを設けるとともに、連結棒45a,45bを上記の凹部21sにてナット47で固定するようにすれば、木梁21の幅を左右の連結棒45a(もしくは、連結棒45b)の間隔よりも広くすることができる。
なお、上記のスペース47sには後から耐火被覆47Kが設けられる。
【符号の説明】
【0018】
1 柱、2 梁、11 柱梁接合部、12 梁筋、
21 木梁、21a スリット、21b ドリフトピン挿入孔、21s 凹部、
22 突出部、23 ベースプレート、24 ガセットプレート、
25 ドリフトピン、26 上部スラブ、27 固定用アンカーボルト、
27m 座金、27n ナット。