(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122371
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 13/00 20060101AFI20230825BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20230825BHJP
H01H 13/52 20060101ALN20230825BHJP
【FI】
H01H13/00 B
H01H36/00 J
H01H13/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026039
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】山上 修凡
(72)【発明者】
【氏名】荒木 公太
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
(72)【発明者】
【氏名】西小野 博昭
【テーマコード(参考)】
5G046
5G206
【Fターム(参考)】
5G046AA02
5G046AB03
5G046AC24
5G046AD02
5G046AD23
5G046AE09
5G206AS27Z
5G206AS33F
5G206AS33H
5G206AS38H
5G206DS02H
5G206FS32H
5G206FU03
5G206GS12
5G206KS07
(57)【要約】
【課題】オン/オフを精度良く判定する。
【解決手段】スイッチ装置1は、絶縁基材10と、絶縁基材10の上面11側に配置され、絶縁基材10に対する位置が変位可能な変位部21を有する可動電極20と、可動電極20との間に絶縁基材10の少なくとも一部を挟んで配置された第1電極30および第2電極40と、第1電極30および第2電極40の各々に接続された制御回路50と、を備える。第1電極30は、変位部21に対向する位置に配置される。第2電極40は、第1電極30から離れて配置されている。制御回路50は、第1電位を第1電極30に印加し、かつ、第1電位とは異なる第2電位を第2電極40に印加して第1電極30と可動電極20との間の静電容量の変化を検出し、この検出結果に基づいてオン/オフの判定を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材と、
前記絶縁基材の上面側に配置され、前記絶縁基材に対する位置が変位可能な変位部を有する可動電極と、
前記可動電極との間に前記絶縁基材の少なくとも一部を挟んで配置された第1電極および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極の各々に接続された制御回路と、を備え、
前記第1電極は、前記変位部に対向する位置に配置され、
前記第2電極は、前記第1電極から離れて配置され、
前記制御回路は、
第1電位を前記第1電極に印加し、かつ、前記第1電位とは異なる第2電位を前記第2電極に印加して、少なくとも前記第1電極と前記可動電極との間の静電容量の容量値の変化を検出し、この検出結果に基づいてオン/オフの判定を行う、
スイッチ装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1電極への充電時に前記第2電位をグランド電位と接続する、
請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記第1電極からの放電時に前記第1電位をグランド電位と接続する、
請求項1または2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記可動電極は、前記絶縁基材の前記上面に沿って広がる第1拡大部を有し、
前記第2電極は、前記第1拡大部に対向する位置に配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記可動電極は、操作体が前記変位部を下方へ押し込んだ場合に、前記操作体に対してクリック感触を発生させ、
前記制御回路は、前記クリック感触の発生時に、前記判定を行う、
請求項1から4のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記第2電極は、平面視において、前記可動電極の外側に広がる第2拡大部を有し、
前記第2拡大部の面積は、平面視において、前記第2電極と前記可動電極とが重なる面積以上であり、
前記制御回路は、前記第2電極と前記操作体との間の静電容量の容量値の変化を検出し、この検出結果に基づいて操作体の接近を検知する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記第1電位および前記第2電位を互いに等しい電位に接続した状態で前記操作体の接近を検知する、
請求項6に記載のスイッチ装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記操作体の接近を検知する検知モードと、前記判定を行う判定モードと、を有し、
前記検知モードにおいて前記操作体の接近を検知した場合に、前記検知モードから前記判定モードに切り替える、
請求項6または7に記載のスイッチ装置。
【請求項9】
前記検知モードにおけるスキャン速度は、前記判定モードにおけるスキャン速度より低い、
請求項8に記載のスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量式のスイッチ装置が知られている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-220473号公報
【特許文献2】特許第5716135号公報
【特許文献3】特許第6667077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のスイッチ装置では、スイッチのオン/オフの判定精度が低いという問題がある。
【0005】
そこで、本開示は、オン/オフを精度良く判定することができるスイッチ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るスイッチ装置は、絶縁基材と、前記絶縁基材の上面側に配置され、前記絶縁基材に対する位置が変位可能な変位部を有する可動電極と、前記可動電極との間に前記絶縁基材の少なくとも一部を挟んで配置された第1電極および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の各々に接続された制御回路と、を備える。前記第1電極は、前記変位部に対向する位置に配置される。前記第2電極は、前記第1電極から離れて配置される。前記制御回路は、第1電位を前記第1電極に印加し、かつ、前記第1電位とは異なる第2電位を前記第2電極に印加して、少なくとも前記第1電極と前記可動電極との間の静電容量の容量値の変化を検出し、この検出結果に基づいてオン/オフの判定を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、オン/オフを精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係るスイッチ装置の構成(オフ)を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係るスイッチ装置の構成(オン)を示す断面図である。
【
図3】
図3は、可動電極の押し込み量に対する容量値および操作体に与える反力を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施の形態1の変形例に係るスイッチ装置の構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係るスイッチ装置の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態2の変形例1に係るスイッチ装置の構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2の変形例2に係るスイッチ装置の構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2の変形例3に係るスイッチ装置の構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態3に係るスイッチ装置の構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態3に係るスイッチ装置の動作を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施例1に係るスイッチ装置の斜視図である。
【
図12】
図12は、実施例1に係るスイッチ装置の分解斜視図である。
【
図13】
図13は、実施例1に係るスイッチ装置の第1電極および第2電極の斜視図である。
【
図14】
図14は、実施例2に係るスイッチ装置の斜視図である。
【
図15】
図15は、実施例2に係るスイッチ装置の分解斜視図である。
【
図16】
図16は、実施例2に係るスイッチ装置の基体ならびに第1電極および第2電極を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、実施例2に係るスイッチ装置の断面図である。
【
図18】
図18は、各実施の形態の変形例に係るスイッチ装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載した従来のスイッチ装置に関し、以下の問題が生じることを見出した。
【0010】
特許文献1および2に開示されたスイッチ装置は、人の指と電極との間に生じる静電容量の変化を検出する。しかしながら、指と電極との間の静電容量は、発汗の有無、または、指の乾燥もしくは濡れた状態などの指の水分状態に依存する。また、指と電極との間の静電容量は、押圧時の指の形状、または、押し方にも依存する。例えば、指の腹で押す場合と、指の爪先で押す場合とでは、静電容量の変化量は異なる。このため、個人差および状態差によって静電容量が安定しないので、オン/オフの判定精度が低下する。
【0011】
また、特許文献3に開示されたスイッチ装置では、弾性体を介して押し釦と一体的に連動する導体とスイッチ電極との間、および、導体とグランド電極との間の変移による各々の容量の変化がスイッチ電極によるスイッチのオン/オフ容量測定に影響する。このため、操作者の押し込み方向によって、計測される容量値が安定しない。このため、オン/オフの判定精度が低下する。
【0012】
そこで、本開示は、オン/オフを精度良く判定することができるスイッチ装置を提供する。
【0013】
例えば、本開示の一態様に係るスイッチ装置は、絶縁基材と、前記絶縁基材の上面側に配置され、前記絶縁基材に対する位置が変位可能な変位部を有する可動電極と、前記可動電極との間に前記絶縁基材の少なくとも一部を挟んで配置された第1電極および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の各々に接続された制御回路と、を備える。前記第1電極は、前記変位部に対向する位置に配置される。前記第2電極は、前記第1電極から離れて配置される。前記制御回路は、第1電位を前記第1電極に印加し、かつ、前記第1電位とは異なる第2電位を前記第2電極に印加して、少なくとも前記第1電極と前記可動電極との間の静電容量の容量値の変化を検出し、この検出結果に基づいてオン/オフの判定を行う。
【0014】
これにより、第1電極と可動電極間の容量測定時の第1電極への電荷の充電時には、可動電極の電位が、第2電極との容量結合によって固定される。このため、操作体との容量、押し込み方向のばらつきの影響、および、外部からのノイズの影響を抑制することができる。これにより、オン/オフを精度良く判定することができる。また、可動電極に対する直接的な電気的接続が不要になるので、塵埃などの異物による可動電極の導通不良または短絡の影響を排除することができる。よって、スイッチ装置の信頼性を高めることができる。
【0015】
また、例えば、前記制御回路は、前記第1電極への充電時に前記第2電位をグランド電位と接続してもよい。
【0016】
これにより、第1電極と可動電極との間の静電容量の測定時における第1電極への充電時には、可動電極の電位が、グランド電位が印加された第2電極を介して固定される。このため、オン/オフを精度良く判定することができる。
【0017】
また、例えば、前記制御回路は、前記第1電極からの放電時に前記第1電位をグランド電位と接続してもよい。
【0018】
これにより、充電された電荷を速やかに放出することができ、次のセンシングまでの期間を短縮することができる。このため、スキャン回数の増加が図れるので、検知精度を向上することができる。
【0019】
また、例えば、前記可動電極は、前記絶縁基材の前記上面に沿って広がる第1拡大部を有してもよい。前記第2電極は、前記第1拡大部に対向する位置に配置されてもよい。
【0020】
これにより、可動電極と第2電極との容量結合を強くすることができるので、可動電極の電位をより強く固定することができる。このため、オン/オフを精度良く判定することができる。
【0021】
また、例えば、前記可動電極は、操作体が前記変位部を下方へ押し込んだ場合に、前記操作体に対してクリック感触を発生させてもよい。前記制御回路は、前記クリック感触の発生時に、前記判定を行ってもよい。なお、クリック感触の発生時とは、前記変位部の前記操作体への反力が極大値となった後、前記絶縁基材に最近接するまでの期間である。
【0022】
これにより、操作体に与えるクリック感触時のオン/オフの判定を最適なタイミングに設定することができ、操作感触の良いスイッチ操作を実現することができる。
【0023】
また、例えば、前記第2電極は、平面視において、前記可動電極の外側に広がる第2拡大部を有してもよい。前記第2拡大部の面積は、平面視において、前記第2電極と前記可動電極とが重なる面積以上であってもよい。前記制御回路は、前記第2電極と前記操作体との間の静電容量の容量値の変化を検出し、この検出結果に基づいて操作体の接近を検知してもよい。
【0024】
これにより、操作体が可動電極の変位部を押し込む前に操作体の接近を検知することができる。例えば、操作体の接近の検知結果に基づいて動作モードを変更することができる。
【0025】
また、例えば、前記制御回路は、前記第1電位および前記第2電位を互いに等しい電位と接続した状態で前記操作体の接近を検知してもよい。
【0026】
これにより、第1電極と第2電極との間での電荷の移動がなくなるため、見かけ上の容量成分を0にすることができる。第1電極と第2電極との間の容量成分は、操作体の接近の検知時にはノイズとなる。つまり、ノイズを抑制することができるので、操作体の近接を検知する第2電極での検知感度を高めることができ、検知精度を高めることができる。
【0027】
また、例えば、前記制御回路は、前記操作体の接近を検知する検知モードと、前記判定を行う判定モードと、を有してもよい。前記検知モードにおいて前記操作体の接近を検知した場合に、前記検知モードから前記判定モードに切り替えてもよい。例えば、前記検知モードにおけるスキャン速度は、前記判定モードにおけるスキャン速度より低くてもよい。
【0028】
これにより、検知モードでは消費電力を低減することができる。判定モードではオン/オフの判定精度を高めることができる。操作体の接近の検知結果に基づいて動作モードを切り替えることで、オン/オフの判定精度の向上と消費電力の低減とを両立させることができる。
【0029】
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0030】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0031】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0032】
また、本明細書において、平行または垂直などの要素間の関係性を示す用語、および、円形などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0033】
また、本明細書において、「上方」および「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)および下方向(鉛直下方)を指すものではなく、各電極の相対的な位置関係により規定される用語として用いる。具体的には、絶縁基材に対して、可動電極が配置された側を「上側」または「上方」とし、第1電極および第2電極が配置された側を「下側」または「下方」としている。また、「上方」および「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0034】
また、本明細書および図面において、x軸、y軸およびz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。絶縁基材の主面に対して直交する方向をz軸方向としている。
【0035】
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞は、特に断りの無い限り、構成要素の数または順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0036】
(実施の形態1)
[構成]
まず、実施の形態1に係るスイッチ装置の構成について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係るスイッチ装置1の構成(オフ)を示す断面図である。
図2は、本実施の形態に係るスイッチ装置1の構成(オン)を示す断面図である。
【0037】
図1および
図2に示されるように、スイッチ装置1は、可動電極20に対する操作体90による押し込み操作によって、オン/オフが切り替わる。オフは、操作体90による可動電極20の押し込み量が閾値未満の状態である。オンは、操作体90による可動電極20の押し込み量が閾値以上の状態である。
【0038】
操作体90は、例えば、人の指であるが、これに限定されない。操作体90は、タッチペンのような棒状部材または所定形状のブロック状部材であってもよい。操作体90は、絶縁体であってもよい。
【0039】
図1および
図2に示されるように、スイッチ装置1は、絶縁基材10と、可動電極20と、第1電極30と、第2電極40と、制御回路50と、を備える。
【0040】
絶縁基材10は、絶縁性を有する平板状の部材である。例えば、絶縁基材10は、絶縁性樹脂を用いて形成された樹脂シートまたは樹脂フィルムである。絶縁基材10は、上面11および下面12を有する。上面11および下面12は、例えば、互いに平行な面である。
【0041】
可動電極20は、絶縁基材10の上面11側に配置されている。可動電極20は、変位部21を有する。変位部21は、絶縁基材10に対する位置が変位可能な部分である。変位部21は、操作体90に押し込まれた場合に、位置が変化する。
【0042】
本実施の形態では、可動電極20は、操作体90による押し込みがない状態では、上方に凸のドーム状に形成されている。可動電極20は、例えば、金属製のメタルドームである。可動電極20の一部であって、絶縁基材10の上面11から最も離れた部位(具体的には、平面視で中央部分)が変位部21である。可動電極20の端部は、絶縁基材10の上面11に固定されている。操作体90による変位部21の押し込みにより、変位部21が徐々に変形し、押し込み量に対する反力値が最初に最大値を超えた時点で、
図2に示されるように、可動電極20が反転形状に移行し、押し込んだ部分(変位部21)が凹む。
【0043】
可動電極20は、操作体90が変位部21を下方へ押し込んだ場合に、操作体90に対してクリック感触を発生させる。クリック感触は、操作体90による押し込み力に対して、可動電極20が操作体90に与える反力の変化によって発生する。押し込み量と反力との関係については、後で説明する。
【0044】
第1電極30は、可動電極20との間に絶縁基材10の少なくとも一部を挟んで配置されている。具体的には、第1電極30は、絶縁基材10の下面12側に配置されている。より具体的には、第1電極30は、下面12に接触して配置された導電性の薄膜である。第1電極30は、可動電極20の変位部21に対向する位置に配置されている。すなわち、上面11または下面12の平面視において、第1電極30の少なくとも一部が変位部21に重なっている。第1電極30と変位部21との間には絶縁基材10の少なくとも一部が配置されているので、変位部21が変位しても、第1電極30と変位部21とは接触しない。
【0045】
第1電極30と可動電極20の変位部21との間の静電容量C1の容量値は、変位部21の変位に応じて変化する。具体的には、変位部21が第1電極30に近づくにつれて、静電容量C1の容量値は大きくなる。
【0046】
第2電極40は、可動電極20との間に絶縁基材10の少なくとも一部を挟んで配置されている。具体的には、第2電極40は、絶縁基材10の下面12側に配置されている。より具体的には、第2電極40は、下面12に接触して配置された導電性の薄膜である。第2電極40は、第1電極30から離れて、可動電極20に対向する位置に配置されている。具体的には、第2電極40は、可動電極20の固定部分、すなわち、可動電極20の端部に対向する位置に配置されている。可動電極20が、平面視における外形に沿って環状に固定されている場合、第2電極40は、第1電極30を囲む環状に形成されている。第2電極40と可動電極20との間には絶縁基材10の少なくとも一部が配置されているので、第2電極40と可動電極20とは接触していない。
【0047】
第2電極40と可動電極20との間の静電容量C2の容量値は、実質的に固定値である。これは、可動電極20のうち、第2電極40が対向する部分(可動電極20の端部)が実質的に変位しないためである。第2電極40に所定の電位を印加することにより、可動電極20と第2電極40との容量結合によって、可動電極20の電位を固定することができる。つまり、操作体90の押し込みによって可動電極20の電位が変動するのを抑制することができる。
【0048】
第1電極30および第2電極40はそれぞれ、例えば、銀、銅などの金属材料を用いて形成された導電性の薄膜である。第1電極30および第2電極40は、導電性カーボンなどを用いて形成されてもよい。第1電極30および第2電極40は、印刷、蒸着、スパッタリング、圧延金属薄膜の接着などによって形成することができる。
【0049】
制御回路50は、第1電極30および第2電極40の各々に接続されている。制御回路50は、第1電極30に第1電位を印加し、第2電極40に第2電位を印加する。第1電位および第2電位は、互いに異なる電位である。上述したように、第2電極40に第2電位を印加することで、可動電極20の電位が固定される。第1電極30と可動電極20との電位差によって、第1電極30と可動電極20との間に充放電される状況を作り出すことができる。例えば、制御回路50は、第1電極30への充電時に第2電位をグランド電位と接続する。また、制御回路50は、第1電極30からの放電時に第1電位をグランド電位と接続する。
【0050】
制御回路50は、静電容量C1の容量値の変化を検出し、この検出結果に基づいてオン/オフ(オンまたはオフ)の判定を行う。具体的な判定処理については、後で説明する。
【0051】
制御回路50は、例えば、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)によって実現される。なお、集積回路は、LSIに限られず、専用回路または汎用プロセッサであってもよい。制御回路50は、例えば、マイクロコントローラで実現される。具体的には、制御回路50は、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、および、プログラムを実行するプロセッサなどを含んでいる。制御回路50は、プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、または、LSI内の回路セルの接続および設定が再構成可能なリコンフィギュラブルプロセッサであってもよい。制御回路50が実行する機能は、ソフトウェアで実現されてもよく、ハードウェアで実現されてもよい。
【0052】
なお、
図1および
図2では、制御回路50は、物理的な構成の断面ではなく、機能的なブロックで図示している。制御回路50は、例えば、絶縁基材10に固定されている。あるいは、制御回路50は、絶縁基材10を収納する筐体(図示せず)の内部に収納され、または、外側面に取り付けられていてもよい。
【0053】
[動作]
続いて、本実施の形態に係るスイッチ装置1の動作について、
図3を用いて説明する。
【0054】
図3は、可動電極20の押し込み量に対する容量値および操作体90に与える反力を示すグラフである。
図3の横軸は、可動電極20の押し込み量、すなわち、変位部21の変位量を表している。押し込み量が0mmの状態は
図1に示される状態に相当し、押し込み量の終点が
図2に示される状態に相当する。
図3の左側の縦軸は、可動電極20と第1電極30との間の静電容量C1の容量値である。
図3の右側の縦軸は、可動電極20が操作体90に与える反力の荷重を表している。
【0055】
図3の破線のグラフで示されるように、操作体90に与える反力は、押し込み量が多くなるにつれて大きくなり、形状の反転直前に最大(ピーク)となり、反転後は小さくなる。このため、操作体90がクリック感触を受けるのは、反力がピークに達した後、絶縁基材10に最近接または当接するまでの期間である。クリック感触の発生期間内に、スイッチ装置1のオン/オフが判定されることが望まれる。本実施の形態では、制御回路50は、クリック感触の発生後、変位部21が絶縁基材10に最近接または当接するまでの期間に、オン/オフの判定を行う。具体的には、
図3に示されるように、オン/オフの判定を行う判定領域として、反力がピークに達したときの押し込み量から、押し込み量の終点に達するまでの領域に設定されている。なお、押し込み量の終点とは、最大の押し込み量に相当し、例えば、変位部21が絶縁基材10の上面11に接したとき(
図2を参照)の押し込み量である。
【0056】
本実施の形態では、制御回路50は、第1電極30へ流入する電荷量を計測することで、少なくとも第1電極30と可動電極20との間の静電容量C1の容量値を算出し、その結果に基づいてオン/オフの判定を行う。例えば、制御回路50は、算出した静電容量C1の容量値と所定の閾値とを比較し、静電容量C1の容量値が閾値より大きい場合にオンされたと判定する。制御回路50は、静電容量C1の容量値が閾値より小さい場合にオンされていない(オフである)と判定する。
【0057】
図3の実線のグラフに示されるように、押し込み量が大きくなるにつれて、変位部21が第1電極30に近づくので、静電容量C1の容量値が大きくなる。オン/オフの判定を行う閾値は、静電容量C1の容量値と比較するための閾値であり、例えば、オン/オフの判定領域内で実線のグラフと交差するように設定される。具体的には、閾値は、反力のピークとなる押し込み量(約0.27)のときの容量値(約7.5×10
-12)以上、取りうる静電容量C1の容量値の最大値(約3.4×10
-11)以下の範囲内で設定される。当該範囲の下限値に近い値に閾値を設定することで、クリック感触を操作体90が受ける期間の早期時点でオンの判定を行うことができる。このため、より操作に対する反応遅れの少ないスイッチ動作を行うことができる。一方で、当該範囲の上限値に近い値に閾値を設定した場合には、当該設定に比し反応に要する所要時間は増加するが、静電容量C1の容量値のばらつきによるオン/オフの判定精度の低下を抑制することができる。
【0058】
なお、可動電極20の種類によっては、反力がピークを過ぎた後、押し込み量の最大値まで反力が漸減する場合だけでなく、押し込み量の最大値の近傍で反力が上昇する場合がある。いずれの場合においても、静電容量C1の容量値に基づくオン/オフの判定が可能である。
【0059】
本実施の形態では、制御回路50は、第1電極30に対する充電と放電とを繰り返す。充電時には、制御回路50は、第2電極40に対して、第1電極30に印加する電位よりも低い電位を印加する。例えば、充電時には、制御回路50は、第2電極40にグランド電位を印加し、第1電極30にグランド電位より高い電位を印加する。充電時に可動電極20の変位部21が押し込まれると静電容量C1の容量値が大きくなるので、第1電極30に流入する電荷量も大きくなる。制御回路50は、充電時に静電容量C1の変化により発生する、第1電極30に流入する電荷量の変化量を計測する。制御回路50は、電荷量の変化量の計測結果に基づいて、静電容量C1の容量値を算出することができる。
【0060】
制御回路50は、充電期間の後に放電を行う。具体的には、制御回路50は、放電時には、第1電極30にグランド電位を印加する。また、制御回路50は、放電時には、第2電極40に所定の電位を印加する。所定の電位は、例えば、グランド電位であるが、正の電位であってもよく、放電条件などに基づいて設定可能である。
【0061】
本実施の形態では、充電時には、可動電極20の電位が、グランド電位が印加された第2電極40を介して固定される。このため、操作体90との容量、および、外部からのノイズの影響を抑制することができる。これにより、オン/オフを精度良く判定することができる。また、可動電極20に対する直接的な電気的接続が不要になるので、塵埃などの異物による可動電極20の導通不良または短絡の影響を排除することができる。よって、スイッチ装置1の信頼性を高めることができる。
【0062】
[変形例]
続いて、実施の形態1の変形例について、
図4を用いて説明する。
図4は、本変形例に係るスイッチ装置2の構成を示す断面図である。
【0063】
図4に示されるように、スイッチ装置2は、
図1に示されるスイッチ装置1と比較して、可動電極20の代わりに、可動電極20a、可撓性フィルム60および粘着層70を備える点が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0064】
可撓性フィルム60は、上方に凸のドーム状の部分を有するフィルム部材である。ドーム状の部分の下面(裏面)に、ドーム形状に沿った可動電極20aが設けられている。
【0065】
可動電極20aは、可撓性フィルム60の下面に設けられた導電層である。実施の形態1と同様に、上方に凸のドーム状に形成されている。例えば、可動電極20aは、銀インキなどの導電材料を印刷などによって塗布することで形成される。
【0066】
可動電極20aの端部であって、第2電極40に対向する部分は、絶縁基材10の上面11には接触していないが、これには限定されない。実施の形態1と同様に、可動電極20aは上面11に接触していてもよい。
【0067】
可撓性フィルム60のドーム状の部分が操作体90に押し込まれることによって、ドーム状の部分の形状が反転する。これにより、可動電極20aは、実施の形態1に係る可動電極20と同等の機能を果たすことができる。
【0068】
可撓性フィルム60は、絶縁性を有する。何らかの要因で可動電極20aに電流が流れたとしても、操作体90に電流が流れるのを抑制することができる。また、可撓性フィルム60は、可動電極20aの保護部材としても機能する。
【0069】
粘着層70は、可撓性フィルム60を絶縁基材10の上面11に固定する部材の一例である。粘着層70は、粘着剤または接着剤を上面11に塗布することで形成される。なお、可撓性フィルム60を固定する手段は、粘着層70には限定されない。
【0070】
以上のようなスイッチ装置2においても、実施の形態1と同様に、オン/オフを精度良く判定することができる。
【0071】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
【0072】
実施の形態2に係るスイッチ装置は、実施の形態1に係るスイッチ装置と比較して、可動電極が絶縁基材の上面に沿って広がる拡大部を有する点が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する場合がある。
【0073】
[構成]
図5は、本実施の形態に係るスイッチ装置101の構成を示す断面図である。
図5に示されるように、スイッチ装置101は、
図1に示されるスイッチ装置1と比較して、可動電極20の代わりに可動電極120を備える。
【0074】
可動電極120は、拡大部122を有する。拡大部122は、絶縁基材10の上面11に沿って広がる第1拡大部の一例である。例えば、拡大部122は、変位部21を含むドーム状の部分の縁に沿って環状に設けられている。拡大部122は、平面視において、第2電極40に対向する位置に配置されている。
【0075】
このように、拡大部122が設けられていることにより、拡大部122と第2電極40とが平面視で重なる面積が大きくなる。このため、拡大部122と第2電極40との容量結合が強くなり、可動電極120の電位が強く固定される。ノイズの影響を抑制することができ、オン/オフの判定精度を高めることができる。
【0076】
[変形例1]
次に、実施の形態2の変形例1について、
図6を用いて説明する。
【0077】
図6は、本変形例に係るスイッチ装置102の構成を示す断面図である。
図6に示されるように、スイッチ装置102は、
図5に示されるスイッチ装置101と比較して、可動電極120の代わりに、可動電極120a、可撓性フィルム60および粘着層70を備える。
【0078】
可動電極120aは、実施の形態1の変形例に係るスイッチ装置2と同様に、可撓性フィルム60のドーム状の部分の下面(裏面)に設けられた導電層である。導電層は、ドーム状の部分だけでなく、当該部分の縁に沿って外側に延びて広がっている。この導電層の広がった部分が、拡大部122aである。
【0079】
拡大部122aが設けられていることにより、拡大部122aと第2電極40とが平面視で重なる面積が大きくなる。このため、拡大部122aと第2電極40との容量結合が強くなり、可動電極120aの電位が強く固定される。ノイズの影響を抑制することができ、オン/オフの判定精度を高めることができる。
【0080】
本変形例では、粘着層70は、拡大部122aを覆っているが、これに限定されない。粘着層70は、拡大部122aと絶縁基材10との間には配置されていなくてもよい。拡大部122aは、絶縁基材10に接触していてもよい。この場合、拡大部122aと第2電極40との距離が短くなるので、容量結合をより強くすることができ、可動電極120aの電位を強く固定することができる。よって、ノイズの影響を抑制することができ、オン/オフの判定精度を高めることができる。
【0081】
[変形例2]
次に、実施の形態2の変形例2について、
図7を用いて説明する。
【0082】
図7は、本変形例に係るスイッチ装置103の構成を示す断面図である。
図7に示されるように、スイッチ装置103は、
図5に示されるスイッチ装置101と比較して、可動電極120の代わりに可動電極120bを備える。
【0083】
可動電極120bは、ドーム状の金属部材120cと、導電層120dと、を含む。金属部材120cは、例えば、上方に凸のドーム形状の金属製のメタルドームであり、実施の形態1の可動電極20と同じである。導電層120dは、実施の形態2の変形例1と同様に、可撓性フィルム60の下面に沿って設けられ、拡大部122aを形成している。導電層120dは、金属部材120cに接触しており、電気的に導通している。つまり、導電層120dと金属部材120cとは、実質的に同一の電位になっている。
【0084】
図7に示される例では、導電層120dは、金属部材120cの頂部、具体的には、変位部21には設けられていないが、これに限定されない。導電層120dは、実施の形態2の変形例1の可動電極120aと同様に、ドーム状に形成されていてもよい。
【0085】
本変形例に係るスイッチ装置103においても、実施の形態2と同様に、拡大部122aによって可動電極120bの電位を強く固定することができる。よって、ノイズの影響を抑制することができ、オン/オフの判定精度を高めることができる。
【0086】
[変形例3]
次に、実施の形態2の変形例3について、
図8を用いて説明する。
【0087】
図8は、本変形例に係るスイッチ装置104の構成を示す断面図である。
図8に示されるように、スイッチ装置104は、
図5に示されるスイッチ装置101と比較して、可動電極120の代わりに可動電極120eを備える。
【0088】
可動電極120eは、頂部(変位部121e)が平坦な形状を有する。可動電極120eは、変位部121eと、拡大部122と、を有する。変位部121eは、絶縁基材10の上面11から離れて位置し、操作体90に押し込まれた場合に、上面11に対して変位する。
【0089】
本変形例では、変位部121eが操作体90に与える反力のピークは、実質的には、変位部121eの押し込み量が最大になったときである。このため、オン/オフの判定のための閾値は、例えば、変位部121eの押し込み量が最大になったときの静電容量C1の容量値に設定することができる。
【0090】
本変形例に係るスイッチ装置104においても、実施の形態2と同様に、拡大部122によって可動電極120eの電位を強く固定することができる。よって、ノイズの影響を抑制することができ、オン/オフの判定精度を高めることができる。
【0091】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。
【0092】
実施の形態3に係るスイッチ装置は、実施の形態1の変形例に係るスイッチ装置と比較して、第2電極が可動電極の外側に広がる拡大部を有する点が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する場合がある。
【0093】
[構成]
図9は、本実施の形態に係るスイッチ装置201の構成を示す断面図である。
図9に示されるように、スイッチ装置201は、
図1に示されるスイッチ装置1と比較して、第2電極40の代わりに第2電極240を備える。また、スイッチ装置201は、可撓性フィルム60および粘着層70を備える。
【0094】
可撓性フィルム60および粘着層70はそれぞれ、実施の形態1の変形例に係る可撓性フィルム60および粘着層70とほぼ同じである。本実施の形態では、粘着層70は、可撓性フィルム60と可動電極20との間にも設けられている。なお、可動電極20の代わりに、実施の形態1の変形例に係る可動電極20aが設けられていてもよい。なお、可撓性フィルム60および粘着層70は、必須の構成ではない。
【0095】
第2電極240は、拡大部241を有する。拡大部241は、平面視において、可動電極20の外側に広がる第2拡大部の一例である。拡大部241は、可動電極20に対する操作体90の接近の検知に利用される。拡大部241の面積は、平面視において、第2電極240と可動電極20とが重なる面積以上である。拡大部241の面積が大きい程、操作体90の接近の検知範囲を広く確保することができる。
【0096】
本実施の形態に係るスイッチ装置201では、制御回路50は、複数の動作モードを有する。具体的には、制御回路50は、オン/オフの判定を行う判定モードと、操作体90の接近を検知する検知モードと、を動作モードとして有する。検知モードは、後述するように省電力化に寄与するので、省電力モードとも称される。判定モードは、スイッチ装置201の通常動作であるので、通常モードとも称される。
【0097】
検知モードにおけるスキャン速度は、判定モードにおけるスキャン速度より遅い。なお、スキャン速度は、単位時間あたりの、静電容量C1に対する充放電の繰り返し回数である。スキャン速度が高い判定モードでは、単位時間あたりの充放電の繰り返し回数が多くなるので、高精度な判定が可能になる。スキャン速度が低い検知モードでは、単位時間あたりの充放電の繰り返し回数が少なくなるので、消費電力を低減することができる。検知モードを有することで、スイッチ装置201の省電力化が可能になる。
【0098】
検知モードでは、制御回路50は、第2電極240と操作体90との間に生じる静電容量C3の容量値の変化を検知する。具体的には、制御回路50は、第2電極240に対する充電と放電とを繰り返す。充電時には、制御回路50は、第2電極240にグランド電位とは異なる所定の電位を印加する。
【0099】
充電時に第2電極240の近くに操作体90が近づいた場合、第2電極240と操作体90との静電容量C3の容量値が大きくなるので、第2電極240に流入する電荷量も大きくなる。制御回路50は、充電時に静電容量C3の容量値の変化により発生する、第2電極240に流入する電荷量の変化量を計測する。すなわち、充電期間がスイッチ装置201のセンシング期間、すなわち、操作体90の接近の検知が可能な期間である。制御回路50は、静電容量C3の容量値と、操作体90用の所定の閾値とを比較し、静電容量C3の容量値が閾値より大きい場合に操作体90の接近が検知されたと判定する。制御回路50は、静電容量C3の容量値が閾値より小さい場合に操作体90は接近していないと判定する。
【0100】
検知モードでは、制御回路50は、充電期間の後に放電を行う。具体的には、制御回路50は、第2電極240にグランド電位を印加する。
【0101】
なお、検知モードでは、制御回路50は、充電時に、第1電極30にグランド電位以外の固定の電位を印加してもよい。あるいは、制御回路50は、第1電極30への電位の印加を行わず、第1電極30をフローティング状態にしてもよい。
【0102】
また、制御回路50は、第1電極30に対して、第2電極240に印加する電位を同じ電位を印加してもよい。これにより、第1電極30と第2電極240との間の見かけ上の容量成分をキャンセルすることができる。当該容量成分は、第2電極240と操作体90との間の静電容量C3にとってはノイズ成分である。このノイズ成分を低減することができるので、操作体90の検知精度を高めることができる。
【0103】
[動作]
次に、本実施の形態に係るスイッチ装置201の動作について、
図10を用いて説明する。
図10は、本実施の形態に係るスイッチ装置201の動作を示すフローチャートである。
【0104】
図10に示されるように、制御回路50は、まず、第2電極240を高速スキャンモードとし、第1電極30を高速スキャンモードで最低限1回動作させる(S10)。具体的には、制御回路50は、第1電極30と第2電極240とに所定の電位を印加して充放電を繰り返すことにより、充電時に第2電極240に流入する電荷量の変化量および第1電極30に流入する電荷量の変化量を計測する。各電極へ流入する電荷量の計測は、例えばスキャンインターバルを利用して行うことができる。開始時には第1電極30を高速スキャンモードで動作させることにより、開始とほぼ同時に可動電極20が押し込まれるような場合にも精度良くオン/オフの判定を行うことができる。
【0105】
なお、開始時、第2電極240は高速でスキャンされることが望ましいが、第1電極30のみ高速スキャンしていれば、必ずしも第2電極240を高速でスキャンする必要はない。
【0106】
反応がない場合(S12でNo)、すなわち、第2電極240に流入する電荷量に対応する静電容量C3の容量値が閾値未満の場合、制御回路50は、検知モードに移行する(S14)。なお、検知モードを実行中の場合は、そのまま検知モードを維持する。検知モードでは、第1電極30を低速スキャンモードで動作させる。
【0107】
反応がある場合(S12でYes)、すなわち、第2電極240に流入する電荷量に対応する静電容量C3の容量値が閾値以上の場合、制御回路50は、判定モード(通常モード)に移行する。本実施の形態に係る判定モードでは、操作体90の接近と、操作体90による可動電極20に対するオン/オフの判定と、を行う。
【0108】
具体的には、反応がある場合(S12でYes)、制御回路50は、第2電極240を高速でスキャンする(S16)。また、制御回路50は、第1電極30を高速でスキャンする(S18)。第2電極240および第1電極30の各々に対するスキャン速度は、検知モードにおけるスキャン速度より高い。
【0109】
なお、必ずしも第2電極240を高速でスキャンする必要はない。すなわち、ステップS16は省略されてもよい。
【0110】
操作体90の接近、および、操作体90による可動電極20に対する押し込みが検知されている限り(S12でYes)、判定モードが維持される。操作体90の接近、および、操作体90による可動電極20に対する押し込みが検知されなくなった場合(S12でNo)、検知モードに移行して、再び操作体90の接近が検知されるまで、検知モードが維持される。
【0111】
以上のように、本実施の形態に係るスイッチ装置201では、制御回路50は、検知モードにおいて操作体90の接近を検知した場合に、検知モードから判定モードに切り替える。すなわち、制御回路50は、第2電極240に対するスキャン速度を低速から高速に切り替える。これにより、可動電極20に対する操作を精度良く検知することができ、オン/オフを精度良く判定することができる。また、操作体90の接近が検知されない場合には、スキャン速度を低速にすることにより、消費電力を低減することができ、省エネルギー化に貢献することができる。
【0112】
なお、本実施の形態では、第2電極240が拡大部241を有する例を示したが、これに限定されない。拡大部241は、第2電極240の、可動電極20に対向する部分とは、分離していてもよい。つまり、拡大部241は、第2電極240とは電気的に接続されていなくてもよい。
【0113】
(実施例)
以下では、上述した各実施の形態1~3の各々に係るスイッチ装置の具体的な実施例について説明する。
【0114】
[実施例1]
まず、実施例1に係るスイッチ装置について、
図11~
図13を用いて説明する。
【0115】
図11は、本実施例に係るスイッチ装置301の斜視図である。
図12は、本実施例に係るスイッチ装置301の分解斜視図である。
図13は、本実施例に係るスイッチ装置301の第1電極330および第2電極340の斜視図である。
【0116】
図11に示されるように、スイッチ装置301は、5つのスイッチ部302a、302b、302c、302dおよび302eを有する。5つのスイッチ部302a~302eはそれぞれが、操作体90によって押し込み可能であり、それぞれについて独立してオン/オフの判定が行われる。例えば、スイッチ部毎に異なる機能が割り当てられている。5つのスイッチ部302a~302eは、一方向に並んで配置されているが、行列状に配置されてもよく、配置は特に限定されない。なお、スイッチ装置301が備えるスイッチ部の個数は、5個に限定されず、1個~4個であってもよく、6個以上であってもよい。
【0117】
図12に示されるように、スイッチ装置301は、絶縁基材310と、5つの可動電極320と、5つの第1電極330と、第2電極340と、可撓性フィルム360と、粘着層370と、電極保護層380と、取付用粘着層385と、補強板390(
図11にのみ図示され、
図12では省略)と、を備える。また、図示されていないが、スイッチ装置301は、制御回路50を備える。可動電極320および第1電極330は、スイッチ装置301が備えるスイッチ部の個数と同じ数だけ設けられている。
【0118】
絶縁基材310は、上述した絶縁基材10に対応する。本実施例では、絶縁基材310は、矩形の平板状に構成されており、平板状の部分から一方向に延びる延設部313を有する。延設部313は、スイッチ装置301を他の機器に電気的に接続するための配線を設ける部分である。延設部313の先端には、コネクタ(図示せず)および補強板390が設けられている。延設部313は、可撓性を有し、折り曲げ可能であってもよい。なお、延設部313は、設けられていなくてもよい。
【0119】
可動電極320は、上述した可動電極20に対応する。5つの可動電極320には、粘着層370が設けられており、粘着層370によって絶縁基材310の上面に固定されている。可動電極320は、
図5に示される可動電極120のように、拡大部122を有してもよい。可動電極320の平面視形状は、円形であるが、正方形もしくは長方形その他多角形、または、楕円形などであってもよく、特に限定されない。
【0120】
第1電極330は、上述した第1電極30に対応する。本実施例では、5つの第1電極330は、互いに電気的に絶縁されており、各々に流入する電荷量を個別に検出することが可能である。第1電極330の平面視形状は、円形であるが、正方形もしくは長方形その他多角形、または、楕円形などであってもよく、特に限定されない。
図13に示されるように、5つの第1電極330の各々からの配線332は、互いに接触することなく、延設部313の先端部分まで延びている。
【0121】
第2電極340は、上述した第2電極40に対応する。本実施例では、第2電極340は、5つのスイッチ部302a~302eにおいて共通である。第2電極340は、5つの第1電極330の各々を囲むように設けられている。スイッチ部毎に着目すると、各スイッチ部の第2電極340が配線342によって互いに電気的に接続され、互いに等しい電位になるように制御されることになる。
【0122】
また、本実施例では、
図13に示されるように、第2電極340は、メッシュ状の拡大部341を有する。拡大部341は、絶縁基材310の下面において、5つの可動電極320が設けられていない部分を覆うように設けられている。
【0123】
第2電極340の拡大部341を除く部分の平面視形状は、所定幅の円環形状であるが、正方形もしくは長方形その他多角形環状、または、楕円環形状などであってもよく、特に限定されない。第2電極340は、第1電極330を囲んでいなくてもよい。
【0124】
可撓性フィルム360は、5つの可動電極320を一括して覆っているが、これに限定されない。可撓性フィルム360は、1つまたは複数個の可動電極320毎に設けられていてもよい。
【0125】
粘着層370は、5つの可動電極320を絶縁基材310との間に挟むようにして、絶縁基材310と可撓性フィルム360とを固定する。本実施例では、粘着層370は、2つに分離しているが、これに限定されない。粘着層370は、例えば粘着シートであるが、これに限定されない。粘着層370は、可撓性フィルム360に印刷で粘着剤を塗布することによって形成されてもよい。
【0126】
電極保護層380は、第1電極330および第2電極340を保護するために絶縁基材310の下面側に設けられている。電極保護層380は、例えば、絶縁性の樹脂材料を印刷法などにより塗布することで形成される。
【0127】
取付用粘着層385は、スイッチ装置301を他の部材に取り付けるための粘着層である。例えば、取付用粘着層385は、例えば、両面テープであるが、これに限定されない。例えば、電極保護層380に印刷で粘着剤を塗布することによって形成されてもよい。
【0128】
補強板390は、絶縁基材310の延設部313の先端部分の強度を高めるために設けられている。延設部313の先端部分にはコネクタ接続用端子部(図示せず)が設けられて、他の部材への電気的な接続に利用される。補強板390を設けることにより、コネクタ端子との接触の安定化を図るとともに、配線の破損などの抑制を図っている。
【0129】
[実施例2]
次に、実施例2に係るスイッチ装置について、
図14~
図17を用いて説明する。
【0130】
図14は、本実施例に係るスイッチ装置401の斜視図である。
図15は、本実施例に係るスイッチ装置401の分解斜視図である。
図16は、本実施例に係るスイッチ装置401の絶縁基材410ならびに第1電極430および第2電極440を示す斜視図である。
図17は、本実施例に係るスイッチ装置401の断面図である。具体的には、
図17は、
図14のXVII-XVII線における断面を表している。
【0131】
図14~
図17に示されるように、スイッチ装置401は、絶縁基材410と、可動電極420と、第1電極430と、第2電極440と、可撓性フィルム460と、押し子465と、を備える。図示されていないが、スイッチ装置401は、制御回路50を備える。スイッチ装置401は、ディスクリート部品である。
【0132】
絶縁基材410は、上述した絶縁基材10に対応する。絶縁基材410は、
図17に示されるように、上面411および下面412を有する。絶縁基材410は、上面411を囲むように設けられたフランジ部413を有する。フランジ部413は、可撓性フィルム460を支持する壁部である。絶縁基材410は、フランジ部413と上面411とで囲まれた凹部414を有する。凹部414の開口に蓋をするように可撓性フィルム460が設けられている。
【0133】
絶縁基材410は、第1電極430および第2電極440とともに、樹脂材料および金属材料を用いたインサート成形などによって形成することができる。
【0134】
可動電極420は、上述した可動電極20に対応する。本実施例では、可動電極420は、凹部414内に配置されている。具体的には、可動電極420の上面には、押し子465が接触可能に配置されている。
【0135】
第1電極430および第2電極440はそれぞれ、上述した第1電極30および第2電極40に対応する。本実施例では、第1電極430および第2電極440は、絶縁基材410内に埋め込まれている。すなわち、第1電極430および第2電極440は、絶縁基材410の上面411および下面412のいずれにも露出していない。
【0136】
第1電極430には、端子部431が接続されている。端子部431は、第1電極430に対する電気的な接続を行う部分であり、図示しない制御回路50に接続されている。第2電極440には、端子部441が接続されている。端子部441は、第2電極440に対する電気的な接続を行う部分であり、図示しない制御回路50に接続されている。
【0137】
端子部431および441はそれぞれ、絶縁基材410の下面412に沿って、背向する2つの側面からそれぞれ突出している。これにより、はんだ付けなどにより容易に他の部品との接続が可能になる。端子部431および441は、絶縁基材410の同じ側面から、または、隣り合う2つの側面から突出していてもよい。なお、端子部431および441は、下面412のみに露出していてもよく、バンプ電極などによって基板(図示せず)などに実装されてもよい。
【0138】
本実施例では、第1電極430の平面視形状は、円形である。第2電極440の平面視形状は、第1電極430を囲む円環形状である。第1電極430および第2電極440の各々の平面視形状は、特に限定されない。
【0139】
可撓性フィルム460は、絶縁基材410の凹部414を覆うようにフランジ部413に支持されて固定されている。可撓性フィルム460の下面には押し子465が接続されている。押し子465は、剛性を有するブロック状の固形物体である。押し子465は、絶縁性を有するが、導電性を有してもよい。例えば、押し子465は、樹脂または金属を用いて形成されている。可撓性フィルム460が操作体90(図示せず)によって押し込まれた場合、可撓性フィルム460が変形して押し子465を介して可動電極420の変位部421を押し込むことができる。なお、押し子465は、設けられていなくてもよい。可撓性フィルム460は、操作体90に押し込まれた場合に、可動電極420に接触し、可動電極420の変位部421を押し込んでもよい。
【0140】
(他の実施の形態)
以上、1つまたは複数の態様に係るスイッチ装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、および、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0141】
例えば、実施の形態3では、制御回路50が、拡大部241を利用して操作体90の接近を検知して、スキャン速度を変更する例を示したが、これに限らない。例えば、制御回路50は、操作体90による可動電極20の変位部21の押し込み量に基づいて、スキャン速度を変更してもよい。具体的には、制御回路50は、変位部21の押し込み量に応じて増加する静電容量C1の容量値に基づいて、スキャン速度を変更してもよい。
【0142】
図3に示したように、操作体90が変位部21を押し込んだ場合、反力がピークになる前から静電容量C1の容量値は、徐々に増加する。このため、制御回路50は、オン/オフの判定の閾値(第1閾値)よりも小さい第2閾値を、スキャン速度の変更用の閾値として予め設定しておいてもよい。制御回路50は、静電容量C1の容量値が第2閾値より大きくなった場合に、スキャン速度を高速に変更してもよい。これにより、操作体90による変位部21の押し込みがない場合には、スキャン速度を低くしておくことができるので、省エネルギー化に貢献することができる。
【0143】
また、スキャン速度を変更する代わりに、あるいは、スキャン速度を変更するのに加えて、制御回路50は、静電容量C1の容量値が第2閾値より大きくなった場合に、オン/オフの判定結果に応じて動作させるべき処理の一部を先行して開始してもよい。例えば、本開示に係るスイッチ装置がオンされた場合に、所定の画像をディスプレイに表示するのであれば、メモリからの画像の読み込み、読み込んだ画像の処理などを先行して開始し、オンが判定された場合には直ちに画像をディスプレイに表示してもよい。これにより、スイッチ操作に対する処理の反応遅延時間が短縮化することができる。ゲームコントローラなどの高い応答性が要求される場合により有用である。
【0144】
また、例えば、操作体90は、可動電極20に対して直接接触して押し込む必要はない。例えば、
図18に示されるように、操作体90は、スイッチ装置501に備えられた押し子80を介して間接的に可動電極20を押し込んでもよい。押し子80は、上下方向に移動可能に支持部81によって支持されている。支持部81は、絶縁基材10と一体的に構成されていてもよい。
図18に示される例では、第2電極240の拡大部241が設けられているので、実施の形態3と同様に、操作体90の接近を検知することができる。
【0145】
また、本開示の一態様は、上述したスイッチ装置の制御方法、または、当該制御方法をコンピュータに実行させるプログラムとして実現することができる。あるいは、本開示の一態様は、当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現することもできる。
【0146】
また、上記の各実施の形態は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本開示は、オン/オフを精度良く判定することができるスイッチ装置として利用でき、例えば、入力装置、操作装置、ゲームコントローラなどの各種機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0148】
1、2、101、102、103、104、201、301、401、501 スイッチ装置
10、310、410 絶縁基材
11、411 上面
12、412 下面
20、20a、120、120a、120b、120e、320、420 可動電極
21、121e、421 変位部
30、330、430 第1電極
40、240、340、440 第2電極
50 制御回路
60、360、460 可撓性フィルム
70 粘着層
80 押し子
81 支持部
90 操作体
120c 金属部材
120d 導電層
122、122a、241、341 拡大部
302a、302b、302c、302d、302e スイッチ部
313 延設部
332、342 配線
370 粘着層
380 電極保護層
385 取付用粘着層
390 補強板
413 フランジ部
414 凹部
431、441 端子部
465 押し子