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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122372
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20230825BHJP
   B25B 5/12 20060101ALI20230825BHJP
   B25B 5/04 20060101ALI20230825BHJP
   B23K 37/04 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B23Q3/06 302L
B25B5/12
B25B5/04
B23K37/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026040
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 暢崇
【テーマコード(参考)】
3C016
3C020
【Fターム(参考)】
3C016CA01
3C016CC02
3C020CC01
3C020CC08
(57)【要約】
【課題】ワークとクランプアームとの位置調整を容易としながらクランプ力を確保できる範囲を広くできるクランプ装置を提供すること。
【解決手段】一対のリンクプレート13には、リンクプレート13を厚さ方向に貫通するカム溝23が設けられている。リンクプレート13の厚さ方向に沿った外面側からカム溝23を見た場合、カム溝23の円弧の第1端はリンクプレート支点軸17に近い位置にあり、カム溝23の円弧の第2端に向かうに従い、カム溝23はリンクプレート支点軸17から離れるように延びる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体にアーム回転軸によって揺動可能に支持されるアームと、
前記本体にリンクプレート支点軸によって揺動可能に支持されるリンクプレートと、
前記リンクプレートに対してリンクプレート作用軸によって第1端が揺動可能に支持されるとともに前記アームに対してリンク回転軸によって第2端が揺動可能に支持されるリンク部材と、
アクチュエータと、
前記アクチュエータによって前記アクチュエータに対して直線的に移動するガイド軸と、
前記本体に固定された補助プレートと、を有し、
前記補助プレートには、前記ガイド軸が挿通されて前記ガイド軸をガイドするガイド溝が設けられ、前記リンクプレートには、前記ガイド軸が挿通されるカム溝が設けられ、
前記カム溝は、クランプ時における前記リンクプレート支点軸と前記ガイド軸との距離がアンクランプ時における前記リンクプレート支点軸と前記ガイド軸との距離よりも長くするように形成され、
前記カム溝に対する前記ガイド軸の係合位置が、前記ガイド溝と前記ガイド軸との係合によって決定されるクランプ装置。
【請求項2】
前記ガイド溝は、
前記リンクプレート支点軸を中心とする円弧の軌道に沿って延びる第1溝と、
前記第1溝に連続して延びる第2溝と、を有する請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記第2溝は、前記第1溝から延びるに従い、前記第1溝に沿って延びる円弧から離れるように延びる請求項2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記カム溝は、円弧状であり、
前記カム溝の曲率半径は、前記カム溝における前記リンクプレート支点軸寄りに位置する部分よりも前記カム溝における前記リンクプレート支点軸から離間して位置する部分の方が小さくなっている請求項3に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記第2溝は、直線状に設けられている請求項2~請求項4のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記ガイド軸が前記ガイド溝の前記第2溝に位置する状態でクランプする請求項2~請求項5のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パネル資材等のワークを溶接する際に、ワークをクランプするクランプ装置が知られている。特許文献1に記載のクランプ装置は、本体と、本体の端部に支持されるクランプアームと、クランプアームに支持される第1リンク部材と、本体と第1リンク部材とに支持される第2リンク部材とを有する。
【0003】
第1リンク部材の一端部は、ピンによってクランプアームに軸止めされているとともに、第1リンク部材の他端部は、本体に軸止めされたシリンダのロッドに軸止めされている。第2リンク部材の一端部はピンを介して第1リンク部材の中央部に軸止めされているとともに、第2リンク部材の他端部はピンを介して本体に軸止めされている。駆動源としてのシリンダにより第1リンク部材を揺動させて、第2リンク部材を介してクランプアームを揺動させる。第1リンク部材の一端部を軸止めするピンと、第2リンク部材の一端部を軸止めするピンの軸心間線を第1軸線とする。第1リンク部材の他端部を軸止めするピンと、第2リンク部材の他端部を軸止めするピンの軸心間線を第2軸線とする。第1軸線と第2軸線がなす角度をリンク機構のなす角度θ1とする。ワークとクランプアームの先端との接触位置は、リンク機構のなす角度θ1が180°となる死点の直前に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭60-4663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、図10の破線で示すように、特許文献1に記載のようなトグル式のクランプ装置は、リンク機構の支点、力点、及び作用点が同一直線状に並ぶとき、クランプ力が大きく低下する。したがって、例えば、クランプ力を確保するためにリンク機構のなす角度θ1が、180°より小さくなる手前方向に、ワークとクランプアームとの位置関係を調整することが要求される。
【0006】
このとき、クランプアームの先端には、ワークとの接触に伴う摩耗が発生する。このため、ワークとクランプアームとの位置関係の調整の際には、クランプアーム先端の摩耗マージンを見込む必要がある。しかし、摩耗マージンを大きくとることができないため、クランプアーム先端での摩耗量のチェックを含めてワークとクランプアームとの位置関係の調整が面倒であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するクランプ装置は、本体と、前記本体にアーム回転軸によって揺動可能に支持されるアームと、前記本体にリンクプレート支点軸によって揺動可能に支持されるリンクプレートと、前記リンクプレートに対してリンクプレート作用軸によって第1端が揺動可能に支持されるとともに前記アームに対してリンク回転軸によって第2端が揺動可能に支持されるリンク部材と、アクチュエータと、前記アクチュエータによって前記アクチュエータに対して直線的に移動するガイド軸と、前記本体に固定された補助プレートと、を有し、前記補助プレートには、前記ガイド軸が挿通されて前記ガイド軸をガイドするガイド溝が設けられ、前記リンクプレートには、前記ガイド軸が挿通されるカム溝が設けられ、前記カム溝は、クランプ時における前記リンクプレート支点軸と前記ガイド軸との距離がアンクランプ時における前記リンクプレート支点軸と前記ガイド軸との距離よりも長くするように形成され、前記カム溝に対する前記ガイド軸の係合位置が、前記ガイド溝と前記ガイド軸との係合によって決定される。
【0008】
上記クランプ装置において、前記ガイド溝は、前記リンクプレート支点軸を中心とする円弧の軌道に沿って延びる第1溝と、前記第1溝に連続して延びる第2溝と、を有するとよい。
【0009】
上記クランプ装置において、前記第2溝は、前記第1溝から離れるように延びるに従い、前記第1溝に沿って延びる円弧から離れるように延びるとよい。
上記クランプ装置において、前記カム溝は、円弧状であり、前記カム溝の曲率半径は、前記カム溝における前記リンクプレート支点軸寄りに位置する部分よりも前記カム溝における前記リンクプレート支点軸から離間して位置する部分の方が小さくなっているとよい。
【0010】
上記クランプ装置において、前記第2溝は、直線状に設けられているとよい。
上記クランプ装置において、前記ガイド軸が前記ガイド溝の前記第2溝に位置する状態でクランプするとよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ワークとクランプアームとの位置調整を容易としながらクランプ力を確保できる範囲を広くできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態におけるクランプ装置を示す分解斜視図。
図2】クランプ装置を示す分解背面図。
図3】実施形態におけるアンクランプ時のクランプ装置を示す側面図。
図4】アンクランプ時のクランプ装置を拡大して示す部分側面図。
図5】クランプ装置を拡大して示す部分背面図。
図6】初期設定におけるクランプ時のクランプ装置を示す側面図。
図7】初期設定におけるクランプ時のクランプ装置を拡大して示す部分側面図。
図8】摩耗限界におけるクランプ時のクランプ装置を示す側面図。
図9】摩耗限界におけるクランプ時のクランプ装置を拡大して示す部分側面図。
図10】リンク機構のなす角度θ1とクランプ力との関係を示すグラフ。
図11】アームのなす角度θ2とクランプ力との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、クランプ装置を具体化した一実施形態を図1図11にしたがって説明する。
図1図2図3、又は図4に示すように、クランプ装置10は、本体11と、アーム12と、一対のリンクプレート13と、一対のリンク部材14と、一対の補助プレート15と、アクチュエータとしてのシリンダ30と、を有する。アーム12は、アーム回転軸16によって本体11に連結されている。
【0014】
図3に破線で示したアーム12の基端側には、アーム回転軸16が挿通されている。即ち、本体11及びアーム12は、アーム回転軸16が挿通されて連結されている。アーム回転軸16は、本体11に固定されている。したがって、アーム12は、アーム回転軸16の中心軸線を揺動中心に、本体11に対して揺動可能とされている。アーム12は、アーム12の先端に着脱可能に固定された接触子A1を有する。アーム12は、接触子A1の接触面120がワークWの被接触面W1に接触することでワークWをクランプする。接触子A1は、アーム12がワークWをクランプすることによる摩耗を考慮した摩耗マージンM1を有する。接触子A1は、摩耗マージンM1を有することにより、アーム12よりも突出する部分を有する。なお、アーム12がアーム回転軸16を揺動中心としてワークWに向かう方向をクランプ方向Zとする。
【0015】
一対の補助プレート15は、本体11に固定されている。一対の補助プレート15は、本体11を厚さ方向に挟む状態で本体11に固定されている。一対の補助プレート15の各々には、補助プレート15を厚さ方向に貫通するガイド溝20が設けられている。一対のガイド溝20は、本体11の厚さ方向に対向する。一対のガイド溝20の各々は、第1溝21と、第2溝22と、を有する。第2溝22は、第1溝21に連続して延びる。
【0016】
図4に示すように、補助プレート15の厚さ方向かつ外面側からガイド溝20を見ることを側面視とする。ここで、リンクプレート支点軸17を中心とし、第1溝21に沿って延びる円弧を仮想線Cとする。補助プレート15の側面視では、第2溝22は、第1溝21から離れるように延びるに従い、仮想線Cから離れるように延びる。したがって、第2溝22は、リンクプレート支点軸17から離れるように延びる。
【0017】
一対のリンクプレート13は、本体11に支持されている。一対のリンクプレート13は、本体11を厚さ方向に挟む状態で一対の補助プレート15の間に配置されている。したがって、一方のリンクプレート13は、本体11と一方の補助プレート15の間に配置され、他方のリンクプレート13は、本体11と他方の補助プレート15の間に配置されている。
【0018】
一対のリンクプレート13には、リンクプレート支点軸17が挿通されている。リンクプレート支点軸17は、本体11を貫通して揺動可能に支持されている。したがって、リンクプレート13は、リンクプレート支点軸17を揺動中心に、本体11に対して揺動可能とされている。
【0019】
一対のリンクプレート13には、リンクプレート13を厚さ方向に貫通するカム溝23が設けられている。カム溝23は、円弧状である。リンクプレート13の厚さ方向に沿った外面側からカム溝23を見ることをリンクプレート13の側面視とする。リンクプレート13の側面視では、カム溝23の円弧の第1端はリンクプレート支点軸17に近い位置にある。また、リンクプレート13の側面視では、カム溝23はアーム12から遠ざかるように延びる。また、第1溝21は、リンクプレート支点軸17を中心とする円弧に沿って延びる。
【0020】
一対のリンク部材14の第1端14aには、アーム12に揺動可能に支持されたリンク回転軸12aが挿通されている。一対の第1端14aは、リンク回転軸12aの中心軸線を揺動中心に、アーム12に対して揺動可能とされている。よって、第1端14aが揺動可能に支持されている。一対のリンク部材14の第2端14bには、リンクプレート作用軸19が挿通されている。一対のリンク部材14は、アーム12を厚さ方向に挟む状態で一対のリンクプレート13に対してリンクプレート作用軸19によって揺動可能に支持されている。一対のリンクプレート13は、リンクプレート支点軸17及びリンクプレート作用軸19によって互いの位置ずれが規制されるとともに、一対のカム溝23が対向する状態に保持されている。
【0021】
シリンダ30には、シリンダ30への圧縮空気の出し入れによって往復運動可能なピストンロッド31が設けられている。
図1図2図3図4、又は図5に示すように、シリンダ30におけるピストンロッド31が突出するロッド側カバーの先端部には、一対のシリンダ回転軸30aが固定されている。一対のシリンダ回転軸30aは、各々の軸線が一致するようにシリンダ30に設けられている。各シリンダ回転軸30aは、補助プレート15を厚さ方向に貫通している。各シリンダ回転軸30aは、補助プレート15に対して摺動可能である。補助プレート15を貫通したシリンダ回転軸30aには、補助プレート15の外側からボルト18が螺合されている。補助プレート15は、ボルト18によって厚さ方向に位置決めされる。したがって、シリンダ30は、シリンダ回転軸30aの中心軸線を揺動中心に、本体11及び補助プレート15に対して揺動可能とされている。
【0022】
ピストンロッド31の先端部には、クレビス32が連結されている。クレビス32の先端部には、ガイド軸33が固定されている。ガイド軸33の軸線方向を第1方向Yとする。ガイド軸33の軸線方向の両端部は、クレビス32から突出している。
【0023】
ガイド軸33の軸線方向の両端部の各々には、第1カムフォロワ34が設けられている。また、ガイド軸33の軸線方向の両端部の各々には、第1カムフォロワ34よりも外側に第2カムフォロワ35が設けられている。一対の第1カムフォロワ34の各々は、ガイド軸33に対し回転可能に支持されている。一対の第2カムフォロワ35の各々は、ガイド軸33に対し回転可能に支持されている。
【0024】
ガイド軸33の一部は、第1カムフォロワ34を介してリンクプレート13のカム溝23に挿通されている。一対の第1カムフォロワ34の外周面の各々は、リンクプレート13のカム溝23に接している。また、ガイド軸33は、第2カムフォロワ35を介して補助プレート15のガイド溝20に挿通されている。一対の第2カムフォロワ35の外周面の各々は、補助プレート15のガイド溝20に接している。シリンダ30は、シリンダ回転軸30aによって揺動可能に支持されている。第2カムフォロワ35は、補助プレート15のガイド溝20に係合している。したがって、ピストンロッド31の突出方向の動作により、第2カムフォロワ35は、第1溝21から第2溝22への軌道に倣って動作可能に構成されている。
【0025】
第1カムフォロワ34は、第2カムフォロワ35と同軸上に配置されている。第1カムフォロワ34は、リンクプレート13のカム溝23に係合されている。リンクプレート13のカム溝23に対する第1カムフォロワ34の係合位置は、補助プレート15のガイド溝20により位置決めされている。したがって、シリンダ30によってクレビス32がシリンダ30に対して直線的に移動する際には、ガイド軸33及び第2カムフォロワ35もシリンダ30に対して直線的に移動するとともに、第2カムフォロワ35はガイド溝20に接する。同じく、シリンダ30によってクレビス32がシリンダ30に対して直線的に移動する際には、ガイド軸33及び第1カムフォロワ34もシリンダ30に対して直線的に移動するとともに、第1カムフォロワ34はカム溝23に接する。したがって、アーム12、リンクプレート13、及び補助プレート15は、ガイド軸33、第1カムフォロワ34、及び第2カムフォロワ35によって連係されている。
【0026】
アーム12の第1方向Y外側には、一対のリンク部材14がそれぞれ配置されている。一対のリンク部材14の第1方向Y外側には、一対のリンクプレート13がそれぞれ配置されている。一対のリンクプレート13の第1方向Y外側には、一対の補助プレート15がそれぞれ配置されている。アーム12には、第2留め具12bが設けられている。
【0027】
次に、クランプ装置10の作用をクランプ動作とともに説明する。
ここで、クランプ装置10の側面視において、リンクプレート作用軸19の中心及びリンク回転軸12aの中心を通過する直線H1と、リンク回転軸12aの中心及びリンクプレート支点軸17の中心を通過する直線H2と、のなす角をリンク角度θ1とする。また、ガイド軸33の中心及びリンクプレート支点軸17の中心を通過する直線H3と、ガイド軸33の中心及び18aの中心を通過する直線H4と、のなす角をリンク角度θ3とする。
【0028】
ここで、カム溝23の円弧の曲率半径をリンク角度θ3を用いて説明する。カム溝23の円弧の曲率半径は、リンクプレート支点軸17寄りに位置する部分に対して、リンクプレート支点軸17から離間した部分が小さくなっている。つまり、ガイド軸33に発生するモーメント(F×L×sinθ3)が徐々に低減される。なお、シリンダ30の推力がFである。また、リンクプレート支点軸17と、ガイド軸33との距離がLである。距離Lは、一定である。これにより、トグルクランプ機構でのクランプ点の近傍の増力率と相反させることになるため、クランプ力の急激な増加を抑制できる。
【0029】
図3又は図4に示すように、アーム回転軸16の軸心を中心として、アーム12の接触子A1の摩耗マージンM1の摩耗限界点M2とワークWの被接触面W1とのなす角を開き角度θ2とする。摩耗限界点M2は、アーム12と被接触面W1との間に接触子A1を介在させることのできる、最終的な位置である。摩耗限界点M2を越えて接触子A1の摩耗が進むと、アーム12が被接触面W1に接触することになる。アンクランプ時の開き角度θ2は45°である。また、リンク角度θ1は90°である。さらに、リンク角度θ3は95°である。
【0030】
アンクランプ時において、ガイド軸33及び第2カムフォロワ35は、第1溝21における第2溝22とは反対側に位置する。シリンダ30が突出するにつれて、ガイド軸33は、第1溝21における第2溝22とは反対側から第2溝22に向けてガイド溝20を移動する。ガイド軸33は、リンクプレート13を介してリンクプレート作用軸19にモーメントを作用させる。すると、リンクプレート支点軸17を中心としたリンクプレート作用軸19に作用するモーメントがリンク回転軸12aにモーメントを発生させる。つまり、リンクプレート13において、リンクプレート支点軸17は支点として機能し、ガイド軸33は力点として機能し、リンクプレート作用軸19は作用点として機能する。
【0031】
ガイド軸33は、第2カムフォロワ35により補助プレート15のガイド溝20に接し、第1カムフォロワ34によりリンクプレート13のカム溝23に接している。第2カムフォロワ35が補助プレート15のガイド溝20の軌道に倣うことにより、第1カムフォロワ34がリンクプレート13のカム溝23と接触する位置を規定している。補助プレート15の側面視では、ガイド溝20の第1溝21は、リンクプレート支点軸17を中心とした円弧となっている。これにより、図6及び図7で示す状態まで、ガイド軸33がガイド溝20内を移動する際に、ガイド軸33は、カム溝23の第1端側に規制されて第1カムフォロワ34を介してカム溝23を押してリンクプレート13を揺動させる。すると、リンクプレート13がリンクプレート支点軸17を揺動中心として、リンクプレート作用軸19がアーム12に近付くように揺動する。それによって、リンクプレート作用軸19を揺動中心としてリンク部材14が揺動し、アーム12をワークWに近付ける方向へ揺動させる。このとき、ガイド軸33とリンクプレート支点軸17との距離Lは、一定であり、アンクランプ時と同じである。
【0032】
図6図7図10、及び図11に示すように、ガイド軸33及び第2カムフォロワ35が第1溝21と第2溝22の境界に移動した中間位置では、アーム12の接触子A1の接触面120の摩耗限界点M2とワークWの被接触面W1との開き角度θ2は2.5°である。このとき、接触子A1は、摩耗しておらず、接触子A1の接触面120とワークWの被接触面W1とが接触したクランプ状態である。このときのリンク角度θ1は、180°から25°手前の位置となっている。つまり、リンク角度θ1は、リンク回転軸12aの中心、リンクプレート支点軸17の中心、及びリンクプレート作用軸19の中心が同一直線状に並ぶ場合よりも小さくなっている。本実施形態では、開き角度θ2が2.5°である場合におけるクランプ力は、15kNに設定されている。なお、開き角度θ2が2.5°におけるクランプ力はクランプするワークWに応じて適宜設定される。
【0033】
図6又は図7に示す状態でクランプ装置10を使用すると、アーム12の接触子A1は、摩耗していく。クランプ装置10の使用回数が増えるにつれて、接触子A1の摩耗マージンM1が小さくなっていく。そして、接触子A1の摩耗が進むにつれて開き角度θ2は、0°に近づくように減少する。また、リンク角度θ1は、170°に近づくように増加する。
【0034】
初期設定時では、図6又は図7に示すリンク角度の状態でクランプ状態となる。しかし、接触子A1の摩耗マージンM1の摩耗が進むと、図6又は図7に示すリンク角度の状態でクランプ状態とならない。
【0035】
接触子A1の接触面120が摩耗限界点M2まで達した状態について説明する。ガイド軸33及び第2カムフォロワ35は、ガイド溝20の第2溝22に突入している。したがって、クランプ力が最大となる前にガイド軸33が第1溝21から第2溝22に突入している。さらに、シリンダ30によってガイド軸33が中間位置から第2溝22に沿って移動する際には、第2溝22がシリンダ30に対して直線状に延びているため、ガイド軸33は、シリンダ30に対して直線的に移動する。このとき、第2カムフォロワ35がガイド溝20に接しながら回転し、第1カムフォロワ34がカム溝23に接しながら回転する。すると、ガイド軸33を揺動中心としてシリンダ30が揺動する。それと同時に、ガイド軸33が移動するにつれて第1カムフォロワ34がカム溝23に接するため、リンクプレート13がリンクプレート支点軸17を揺動中心として、中間位置からアーム12に近付くように揺動する。また、ガイド軸33が第2溝22に接している間における角度θ1は、155°から170°に近づくように変化していく。
【0036】
すると、リンクプレート作用軸19を揺動中心としてリンク部材14が中間位置から揺動することによって、アーム12をワークWに近付ける方向へ揺動させる。そして、アーム12によってワークWがクランプされる。これにより、中間位置よりもクランプ力が増力される。つまり、アーム12において、アーム回転軸16は支点として機能し、リンクプレート作用軸19は力点として機能し、リンク回転軸12aは作用点として機能する。このとき、ガイド軸33とリンクプレート支点軸17との距離Lは、アンクランプ時及び中間位置よりも大きくなる。したがって、カム溝23を設けることで、クランプ時におけるガイド軸33とリンクプレート支点軸17との距離Lがアンクランプ時におけるガイド軸33とリンクプレート支点軸17との距離Lよりも長くなるように形成されている。
【0037】
図6又は図7に示す状態は、補助プレート15のガイド溝20の軌道において、第2カムフォロワ35が、第1溝21から第2溝22に差し掛かった状態である。このとき、第1カムフォロワ34は、リンクプレート13のカム溝23におけるリンクプレート支点軸17寄りの部分に位置する。ここまでの動作では、第1溝21により、第1カムフォロワ34、つまり、ガイド軸33は、カム溝23におけるリンクプレート支点軸17寄りの部分に保持されている。したがって、カム溝23に対するガイド軸33の係合位置が、ガイド溝20とガイド軸33との係合によって決定されている。
【0038】
ここからさらにシリンダ30の動作が進むと、補助プレート15のガイド溝20の軌道において、第2カムフォロワ35は、第1カムフォロワ34と、リンクプレート13のカム溝23との接触位置がリンクプレート支点軸17から徐々に離れていくように第2溝22を進む。
【0039】
第1カムフォロワ34とカム溝23との接触位置は、リンクプレート支点軸17から離れていく。これにより、ガイド軸33とリンクプレート支点軸17との距離Lは、増大する。その一方で、リンク角度θ3が90°よりも小さくなるように設定されている。これにより、ワークWに与えるモーメントは、徐々に減少する。つまり、リンク角度θ1が180°に近づくにつれて、クランプ力の増幅率を急激に上昇させにくくなっている。
【0040】
図10及び図11に示すように、図3及び図4に示す状態でのリンク角度θ1及び開き角度θ2は、点P1に相当する。同様に、図6及び図7に示す状態でのリンク角度θ1及び開き角度θ2は、点P2に相当する。図8及び図9に示す状態でのリンク角度θ1及び開き角度θ2は、点P3に相当する。
【0041】
図6又は図7に示す状態は、図10及び図11の実線で示すように、1.5kN付近で急激に上昇するカーブから、緩やかに上昇するカーブでの折れ点である点P2に相当する。点P2は、接触子A1の摩耗マージンM1の摩耗を見込んだ初期設定での位置に相当する。
【0042】
図8又は図9に示す状態は、図10及び図11に示すように、接触子A1の摩耗マージンM1の摩耗が進んでリンク角度θ1が170°となる状態である。第2カムフォロワ35と補助プレート15のガイド溝20の第2溝22により、第1カムフォロワ34は、リンクプレート13のカム溝23のリンクプレート支点軸17から離れた側の少し手前に位置するように設定されている。したがって、カム溝23に対するガイド軸33の係合位置が、ガイド溝20とガイド軸33との係合によって決定されている。
【0043】
リンク機構の支点、力点、及び作用点が同一直線状に並ぶ場合、即ち、リンク角度θ1が180°となる死点では、第1カムフォロワ34とカム溝23との接触位置が変位すると、クランプ力が0となる。したがって、クランプ力が0となる前、つまり、図10及び図11に示すように170°となる位置で、接触子A1の交換、又はクランプ装置10の取付位置の調整を行う。
【0044】
図8又は図9に示す状態では、クランプ力が最大となる直前の位置である。第1留め具11aと第2留め具12bとが接触するように予め調整されている。そのため、作業者は、第1留め具11aと第2留め具12bとの間の隙間を確認することにより、この位置を確認できる。
【0045】
図8図9又は図11に示すように、ガイド軸33及び第2カムフォロワ35が第2溝22における第1溝21とは反対側の端部まで移動したとき、アーム12の接触子A1の接触面120とワークWの被接触面W1との開き角度θ1は0°である。本実施形態では、開き角度θ1が0°である場合をクランプ時とすると、クランプ時のクランプ力は、15kN以上に設定されている。クランプ時のガイド軸33とリンクプレート支点軸17との距離Lは、最大である。アーム12の接触子A1の接触面120は、ワークWの被接触面W1と接触している。アーム12に設けられた第2留め具12bは、本体11に設けられた第1留め具11aと接触している。また、このときの開き角度θ2は、180°よりも小さい。
【0046】
本実施形態では、クランプ装置10は、開き角度θ2が0°~2.5°の範囲においてクランプ力を発揮することができる。
上記実施形態では、以下の効果を得ることができる。
【0047】
(1)クランプ装置10は、カム溝23を有するため、クランプ力を徐々に増力させることができる。また、開き角度θ2が0°になる前にガイド軸33が第1溝21から第2溝22に突入することでカム溝23を押す。これにより、クランプ装置10は、開き角度θ2が0°よりも手前であっても所定のクランプ力でワークWをクランプすることができる。したがって、クランプ装置10がクランプ力を確保できる範囲を広くすることができる。
【0048】
クランプ装置10は、開き角度θ2が0°~2.5°の範囲において所定のクランプ力でワークWをクランプすることができる。このため、アーム12の接触子A1に摩耗マージンM1を持たせてもワークWを所定のクランプ力でクランプすることができる。そして、接触子A1が摩耗した後の調整の際には、摩耗マージンM1を大きくとる必要がなくなるため、ワークWと接触面120との位置関係の調整が容易となる。
【0049】
(2)第2溝22は、第1溝21から離れるように延びるに従い、第1溝21の円弧に沿う延長線から離れるように延びるため、ガイド軸33が第2溝22にガイドされて移動するにつれて距離Lを長くしてクランプ力が増力される。
【0050】
(3)第2溝22が直線状に設けられているため、例えば、第2溝22が第1溝21の円弧の延長線上に沿うように設けられている場合と比べて、強制的にリンクプレート13を揺動させるため、クランプ力が増力される。
【0051】
(4)カム溝23の円弧の曲率半径は、リンクプレート支点軸17寄りに位置する部分に対して、リンクプレート支点軸17から離間した部分が小さくなっている。これによれば、ワークWに与えられるモーメントが徐々に低減されるようになる。そのため、クランプ力が急激に増加することを抑制することができる。
【0052】
(5)第2溝22は、直線状に設けられているため、例えば、第2溝22が複雑な形状に設けられる場合に比べて、加工性が向上する。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・ 実施形態において、カム溝23は円弧状に設けられているが、例えば直線状に設けられてもよい。要は、ガイド軸33が第2溝22に突入したときにクランプ力を増力しながらガイドされるような形状であればよい。
【0054】
・ 実施形態において、第2溝22は、直線状に設けられているが、例えば円弧状に設けられていてもよい。要は、ガイド軸33が第2溝22に突入したときにクランプ力を増力しながらガイドされるような形状であればよい。
【0055】
・ 実施形態において、開き角度θ2が0°である状態での角度θ1は180°であってもよい。要は、開き角度θ2が0°である状態において、クランプ力が最大となるような構成であればよい。
【符号の説明】
【0056】
10…クランプ装置、11…本体、12…アーム、12a…リンク回転軸、13…リンクプレート、14…リンク部材、14a…第1端、14b…第2端、15…補助プレート、16…アーム回転軸、17…リンクプレート支点軸、19…リンクプレート作用軸、20…ガイド溝、21…第1溝、22…第2溝、23…カム溝、30…アクチュエータとしてのシリンダ、33…ガイド軸、120…接触面、L…距離、W…ワーク、W1…被接触面、θ1…リンク角度、θ2…開き角度、θ3…リンク角度。
図1
図2
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図4
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図7
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図10
図11