(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122387
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】カテーテルチューブ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/14 20060101AFI20230825BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
A61M25/14 512
A61M25/00 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026059
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111615
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】西村 彰敏
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB03
4C267BB09
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB40
4C267CC09
4C267DD01
4C267EE03
4C267GG04
4C267HH04
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】副内管に求められる断面積を確保しつつ、堅牢性の高いカテーテルチューブを提供する。
【解決手段】本発明のカテーテルチューブ1は、主内管11と、主内管11に並列に配置され、横断面視において主内管11よりも断面積の小さい複数の副内管12a、12bと、主内管11を形成する樹脂の溶融温度及び複数の副内管12a、12bを形成する樹脂の溶融温度よりも低い溶融温度を有する樹脂で形成され、主内管11と複数の副内管12a、12bとを覆う外層13と、を備える。複数の副内管12a、12bにおける隣接する二つの副内管12a、12b同士が接触している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主内管と、
前記主内管に並列に配置され、横断面視において前記主内管よりも断面積の小さい複数の副内管と、
前記主内管を形成する樹脂の溶融温度及び前記複数の副内管を形成する樹脂の溶融温度よりも低い溶融温度を有する樹脂で形成された、前記主内管と前記複数の副内管とを覆う外層と、を備え、
前記複数の副内管における隣接する二つの副内管同士が接触している、カテーテルチューブ。
【請求項2】
前記隣接する二つの副内管同士が、横断面視において前記主内管寄りの位置で接触している、請求項1に記載のカテーテルチューブ。
【請求項3】
前記複数の副内管を被覆する被覆膜を備える、請求項1又は2に記載のカテーテルチューブ。
【請求項4】
前記被覆膜が、前記主内管を形成する樹脂の溶融温度及び前記複数の副内管を形成する樹脂の溶融温度よりも低い溶融温度を有する樹脂で形成されている、請求項3に記載のカテーテルチューブ。
【請求項5】
前記被覆膜が、前記外層を形成する樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を有する樹脂で形成されている、請求項3又は4に記載のカテーテルチューブ。
【請求項6】
前記被覆膜が、横断面視において前記主内管から離れた位置に、軸方向に沿って形成されたスリットを有する、請求項3-5のいずれか1項に記載のカテーテルチューブ。
【請求項7】
前記複数の副内管が一体化されている、請求項1-6のいずれか1項に記載のカテーテルチューブ。
【請求項8】
前記隣接する二つの副内管同士を固着することによって、前記複数の副内管が一体化されている、請求項7に記載のカテーテルチューブ。
【請求項9】
前記隣接する二つの副内管が管壁の一部を共有することによって、前記複数の副内管が一体化されている、請求項7に記載のカテーテルチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のルーメンを備えるカテーテルチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のルーメンを備えるカテーテルチューブ、いわゆるマルチルーメンチューブがバルーンカテーテル等に用いられている。例えば、特許文献1には、第1樹脂からなる第1内層管(主内管)を外層で被覆し、その外層内に第2樹脂からなる第2内層管(副内管)を配置した医療用マルチルーメンチューブが開示されている。このようなマルチルーメンチューブをオクリュージョンバルーンカテーテルに適用する場合、第1内層管(主内管)はガイドワイヤや他のカテーテル等が挿通されるメインルーメンチューブとして機能し、第2内層管(副内管)はバルーンの拡張・収縮のための気体や流体を流通させるインフレーションルーメンチューブとして機能することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主内管と副内管とを備えたカテーテルチューブにおいて、副内管は主内管を被覆する外層内に配置されるが、副内管を配置するスペースを確保する目的で徒に外層の断面積を増やすわけにはいかない。その一方で、副内管の用途によっては副内管の内腔にもそれなりの断面積が求められる。例えば副内管をインフレーションルーメンチューブとして機能させる場合であれば、バルーンのデフレートに要する時間を短縮するために、副内管の断面積をそれ相応に大きいものとする必要がある。
【0005】
副内管を配置するスペースが限られている中で、副内管の内腔の断面積を確保しようとすると、例えば引用文献1の
図6に示されているように、外層内に複数の副内管を設けることによって、副内管全体として断面積を大きくすることが考えられる。しかしながら、副内管を複数外層内に設けようとすると、組み付けをする際に位置ずれ(位相のずれ)が生じて組み付け精度が悪くなってしまい、カテーテルチューブの形状が崩れてしまうことにより、カテーテルチューブの堅牢性が低くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、副内管に求められる断面積を確保しつつ、堅牢性の高いカテーテルチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、主内管と、前記主内管に並列に配置され、横断面視において前記主内管よりも断面積の小さい複数の副内管と、前記主内管を形成する樹脂の溶融温度及び前記複数の副内管を形成する樹脂の溶融温度よりも低い溶融温度を有する樹脂で形成された、前記主内管と前記複数の副内管とを覆う外層と、を備え、前記複数の副内管における隣接する二つの副内管同士が接触している、カテーテルチューブを提供する(発明1)。
【0008】
かかる発明(発明1)によれば、外層が限られた断面積しか有していないとしても、外層内に副内管を複数配置することにより、副内管全体として副内管に求められる断面積を確保しつつ、それぞれの副内管の形状を潰れにくいものとすることができる。また、複数の副内管における隣接する二つの副内管同士が接触していることにより、組み付けをする際の位置ずれの発生を抑制することができるため、精度よく組み付けを行うことができ、その結果、堅牢性の高いカテーテルチューブを製造することができる。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記隣接する二つの副内管同士が、横断面視において前記主内管寄りの位置で接触していることが好ましい(発明2)。
【0010】
かかる発明(発明2)によれば、複数の副内管を主内管の外周に対して沿うように配置することができるので、外層内の限られたスペースに効率的に複数の副内管を配置することができる。
【0011】
上記発明(発明1,2)においては、前記複数の副内管を被覆する被覆膜を備えていてもよい(発明3)。
【0012】
かかる発明(発明3)によれば、被覆膜によって複数の副内管の一体性を高めることができるので、カテーテルチューブの堅牢性をより高めることができる。
【0013】
上記発明(発明3)においては、前記被覆膜が、前記主内管を形成する樹脂の溶融温度及び前記複数の副内管を形成する樹脂の溶融温度よりも低い溶融温度を有する樹脂で形成されていてもよい(発明4)。また、上記発明(発明3,4)においては、前記被覆膜が、前記外層を形成する樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を有する樹脂で形成されていてもよい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明3-5)においては、前記被覆膜が、横断面視において前記主内管から離れた位置に、軸方向に沿って形成されたスリットを有していてもよい(発明6)。
【0015】
かかる発明(発明6)によれば、スリットが存在していることにより、複数の副内管を被覆膜が被覆していても、複数の副内管を主内管の外周に対して沿うように配置しやすくなるため、カテーテルチューブの堅牢性を高めつつ、外層内の限られたスペースに効率的に複数の副内管を配置することができる。
【0016】
上記発明(発明1-6)においては、前記複数の副内管が一体化されていることが好ましい(発明7)。
【0017】
かかる発明(発明7)によれば、複数の副内管が一体化されていることにより、組み付けをする際の位置ずれの発生を更に抑制することができる。
【0018】
上記発明(発明7)においては、前記隣接する二つの副内管同士を固着することによって、前記複数の副内管が一体化されていてもよいし(発明8)、前記隣接する二つの副内管が管壁の一部を共有することによって、前記複数の副内管が一体化されていてもよい(発明9)。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、副内管に求められる断面積を確保しつつ、堅牢性の高いカテーテルチューブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカテーテルチューブを用いたカテーテルの構造を示す説明図である。
【
図2】同実施形態に係るカテーテルチューブの横断面(
図1のA-A断面)を示す説明図である。
【
図3】変形例1のカテーテルチューブの横断面を示す説明図である。
【
図4】変形例2のカテーテルチューブの横断面を示す説明図である。
【
図5】変形例3のカテーテルチューブの横断面を示す説明図である。
【
図6】変形例4のカテーテルチューブの横断面を示す説明図である。
【
図7】変形例5のカテーテルチューブの横断面を示す説明図である。
【
図8】変形例6のカテーテルチューブの横断面を示す説明図である。
【
図9】変形例7のカテーテルチューブの横断面を示す説明図である。
【
図10】変形例8のカテーテルチューブの横断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係るカテーテルチューブ1を用いたカテーテル10の構造を示す説明図であり、
図2はカテーテルチューブ1の横断面(
図1のA-A断面)を示す説明図である。なお、本発明は、以下に説明する実施形態にのみ限定されるものではなく、記載された実施形態はあくまでも本発明の技術的特徴を説明するための例示にすぎない。また、各図面に示す形状や寸法はあくまでも本発明の内容の理解を容易にするために示したものであり、実際の形状や寸法を正しく反映したものではない。
【0022】
本明細書において、「先端側」とは、カテーテル10を構成するカテーテルチューブ1の軸方向に沿う方向であって、カテーテル10が治療部位に向かって進行する方向を意味する。「基端側」とは、カテーテル10を構成するカテーテルチューブ1の軸方向に沿う方向であって、上記先端側と反対の方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。さらに、「先端部」とは、任意の部材または部位において、その先端を含み上記先端から基端側に向かって上記部材等の中途まで延びる部位を指し、「基端部」とは、任意の部材または部位において、その基端を含みこの基端から先端側に向かって上記部材等の中途まで延びる部位を指す。なお、
図1においては、図示左側が体内へと挿入される「先端側」であり、図示右側が手技者によって操作される「基端側」である。
【0023】
カテーテル10は、
図1に示すように、長尺のカテーテルチューブ1と、カテーテルチューブ1の先端側に取り付けられた先端チップ2と、先端チップ2とカテーテルチューブ1との間に設けられたバルーン3と、カテーテルチューブ1の基端に接続されたコネクタ4とを備える。カテーテル10は、狭窄部または閉塞部を診断または治療するために用いられるバルーンカテーテルであり、例えば、狭窄部が形成された心臓の血管内に挿入されて、血管内の狭窄部を押し広げるとき等に使用される。なお、本実施形態においては、カテーテルチューブ1を用いたカテーテル10がバルーンカテーテルであるものとして説明するが、本発明のカテーテルチューブが適用されるカテーテルはこれに限られるものではなく、バルーンを備えていないカテーテルやダイレータ、内視鏡等に適用されてもよい。
【0024】
カテーテルチューブ1は、
図2に示すように、内部に複数のルーメンを有する長尺の管状部材であり、主内管11と、横断面視において主内管11よりも断面積の小さい二つの副内管12a、12bと、主内管11と二つの副内管12a、12bとを覆う外層13とを備える。主内管11は、横断面視で略正円形状の内腔を有する内層管111と、内層管111の外周に配置された補強体112とによって構成されている。二つの副内管12a、12bは、いずれも横断面視で略矩形状の内腔を有し、接触した状態で一つの被覆膜14によって被覆されている。二つの副内管12a、12bは、いずれも主内管11に並列に配置されており、すなわち、主内管11と二つの副内管12a、12bとは同一の軸方向(カテーテルチューブ1の長手方向)に沿って配置されている。
【0025】
先端チップ2は、カテーテル10の先端部に設けられ、主内管11の内層管111の内腔と連通する開口部(不図示)を有している。
【0026】
バルーン3は、マルチルーメンチューブ10と先端チップ2との間に設けられ、バルーン3の内部空間と二つの副内管12a、12bの内腔とが連通している。
【0027】
コネクタ4は、主内管11の内層管111の内腔と連通する開口部(不図示)を有するメインポート41と、副内管12a、12bの内腔と連通する開口部(不図示)を有するサイドポート42とを備えたY字コネクタであり、マルチルーメンチューブ10の基端に接続されている。
【0028】
カテーテル10は、一例としてコネクタ4のメインポート41の開口部から挿入されたガイドワイヤや他のカテーテルを、主内管11の内部を経由して先端チップ2の開口部へ導くことができる。また、カテーテル10は、コネクタ4のサイドポート42の開口部から副内管12a、12bを経由して流体をバルーン3の内部空間に供給することができる。
【0029】
主内管11の内層管111は、樹脂によって形成されたチューブであり、内側には、ガイドワイヤや、他のカテーテルが挿入されるルーメンが形成されている。内層管111を形成する樹脂材料については、特に限定されないが、他部材との摺動性が良好な樹脂が好ましく、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペン)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂や、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等を例示することができる。内層管111の外径は、後述する副内管12a、12bの外径よりも大きくなるように構成されている。
【0030】
内層管111の外周に配置された補強体112は、例えば複数の素線を網目状(メッシュ状)に編み込んで形成した編組体(金属ブレード層)である。補強体112は、内層管111の全体を覆っていてもよいし、内層管111を部分的に覆っていてもよい。また、補強体112を埋設した樹脂製の外層管(不図示)を内層管111の外周に配置した構成としてもよい。
【0031】
副内管12a、12bは、樹脂によって形成されたチューブであり、内側には気体や液体といった流体が流通するためのルーメンが形成されている。副内管12a、12bを形成する樹脂材料については、特に限定されないが、機械的強度が高く、高い潰れ耐性を有する樹脂が好ましく、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PI(ポリイミド)、PEI(ポリエーテルイミド)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)等を例示することができる。また、副内管12a、12bは、主内管11の内層管111と同じ種類の樹脂によって形成されていてもよいし、それ以外の樹脂によって形成されていてもよい。副内管12a、12bの外径は、主内管11の内層管111の外径よりも小さくなるように構成されている。なお、必ずしも二つの副内管12a、12bが同一の樹脂材料で形成されていなくてもよいし、同一のサイズ、形状である必要もない。
【0032】
外層13は、樹脂によって形成されており、主内管11(内層管111、補強体112)及び副内管12a、12bを被覆している。外層13を形成する樹脂材料については、特に限定されないが、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等を例示することができる。外層13は単一の樹脂材料で形成されていてもよいし、複数の領域に分けてそれぞれ特性の異なる複数の樹脂材料を用いて形成されていてもよい。また、外層13を形成する樹脂にタングステン粉末を含有させ、その含有量によって樹脂の硬度を変化させてもよい。外層13を形成する樹脂に放射線不透過性の粉末であるタングステン粉末を含有させることで、冠動脈造影時に医師等の手技者がカテーテル10の位置を正確に把握することができる。
【0033】
被覆膜14は、樹脂によって形成されており、二つの副内管12a、12bを接触した状態、かつ一体化した状態で被覆している。すなわち、二つの副内管12a、12bは、隣接する二つの副内管12a、12b同士が接触した状態が維持されるように、被覆膜14によって一体化されている。被覆膜14を形成する樹脂は、外層13を形成する樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を有するものとなっている。被覆膜14を形成する樹脂材料については、特に限定されないが、被覆膜14と外層13との接着性、密着性の良好な樹脂が好ましく、例えばポリウレタン、ポリアミドエラストマー、変性ポリエチレン等を例示することができる。
【0034】
本実施形態においては、カテーテルチューブ1は二つの副内管12a、12bを備えているが、二つの副内管12a、12bは横断面視において主内管11寄りの位置で接触している。このように、隣接する二つの副内管12a、12b同士が、横断面視において、主内管11寄りの位置で接触しているということは、二つの副内管12a、12bを主内管11の外周に対して沿うように配置することができるということを意味し、外層13内の限られたスペースに効率的に複数の副内管12a、12bを配置することができる。また、本実施形態においては、被覆膜14によって複数の副内管12a、12bの一体性を高めることができるので、カテーテルチューブ10の堅牢性をより高めることができる。
【0035】
なお、二つの副内管12a、12bが接触している状態は、被覆膜14で二つの副内管12a、12bを被覆することによって維持されているだけでもよいし、隣接する二つの副内管12a、12b同士を、接着や溶着等の公知の固着手段を用いて固着することによって、維持されていてもよい。本実施形態においては、隣接する二つの副内管12a、12b同士が、横断面視において、主内管11寄りの位置でのみ接触しているが、必ずしもこのように接触していなければならないということではなく、組み付け時に位置ずれが発生しないように、隣接する二つの副内管12a、12b同士が接触してさえいればよい。より好ましくは、隣接する二つの副内管12a、12b同士が接触した状態で一体化されていればよい。
【0036】
被覆膜14の厚さは、特に限定されるものではないが、二つの副内管12a、12bを効率よく配置するために、二つの副内管12a、12bの管壁の厚さよりも薄くなっていることが好ましい。また、本実施形態においては、被覆膜14は全体が均一の厚みを有するように構成されているが、これに限られるものではなく、例えば、被覆膜14の主内管11から遠い部分の厚さが、主内管11寄りの部分の厚さよりも薄くなるように、被覆膜14が形成されていてもよい。このように被覆膜14を形成すると、被覆膜14の主内管11から遠い部分が主内管11寄りの部分よりも伸びやすくなり、二つの副内管12a、12bを主内管11の外周に対して沿うように配置しやすくなる。
【0037】
また、二つの副内管12a、12bが接触している箇所を接触部とすると、この接触部は、カテーテルチューブ1の長手方向において、連続的に設けられていてもよいし、間欠的に設けられていてもよい。接触部をカテーテルチューブ1の長手方向において間欠的に設けるということは、二つの副内管12a、12bが接触していない箇所も存在しているということになる。二つの副内管12a、12bが接触していない箇所を隙間部とすると、隙間部がカテーテルチューブ1の長手方向において存在している場合、二つの副内管12a、12bの動きが互いに拘束されにくくなるため、カテーテルチューブ1の曲げやすさ(柔軟性)を確保することができる。
【0038】
このようなカテーテルチューブ1によれば、外層13が限られた断面積しか有していないとしても、外層13内に複数の副内管12a、12bを配置することにより、副内管全体として副内管に求められる断面積を確保しつつ、それぞれの副内管12a、12bの形状を潰れにくいものとすることができる。また、複数の副内管12a、12bが、隣接する二つの副内管12a、12b同士が接触した状態を維持されるように一体化されていることにより、組み付けをする際の位置ずれの発生を抑制することができるため、精度よく組み付けを行うことができ、その結果、堅牢性の高いカテーテルチューブ1を製造することができる。
【0039】
ここで、主内管11(の内層管111)、副内管12a、12b、外層13及び被覆膜14のそれぞれを形成する樹脂の溶融温度の関係について説明する。上述のように、外層13を形成する樹脂は、主内管11(の内層管111)を形成する樹脂の溶融温度や、二つの副内管12a、12bを形成する樹脂の溶融温度よりも低い溶融温度を有するものとなっている。これは、カテーテルチューブ1を製造する過程で、主内管11に副内管12a、12bを組み付けた状態で、主内管11及び副内管12a、12bを覆うように外層13を形成するが、この外層13の形成時に主内管11の内層管111及び副内管12a、12bが溶けてしまうことを防止するためである。
【0040】
また、被覆膜14を形成する樹脂も、同様の理由で、主内管11(の内層管111)を形成する樹脂の溶融温度や、二つの副内管12a、12bを形成する樹脂の溶融温度よりも低い溶融温度を有するものとなっていることが好ましい。さらに、被覆膜14を形成する樹脂は、外層13を形成する樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を有するものとなっていることが好ましい。これは、外層13を形成する際に、被覆膜14が溶けてしまうと、被覆膜14で被覆することにより接触状態が維持されている二つの副内管12a、12bが離隔し過ぎてしまい、副内管12a、12b同士が接触しない状態になってしまうことを防止するためである。
【0041】
例えば、主内管11を形成する樹脂の溶融温度は180~420℃の範囲にあることが望ましく、副内管12a、12bを形成する樹脂の溶融温度は340~410℃の範囲にあることが望ましく、外層13を形成する樹脂の溶融温度は180~270℃の範囲にあることが望ましく、被覆膜14を形成する樹脂の溶融温度は180~240℃の範囲にあることが望ましい。
【0042】
上記の構造を有するカテーテルチューブ1の製造方法について説明すると、まず、主内管11の内層管111の樹脂材料を金属芯上に押出成形機等を用いて被覆するか、金属芯を内層管111の樹脂材料が溶解した溶液に塗布又は浸漬し、その後乾燥させることによって、主内管11の内層管111を形成する。この内層管111に補強体112を巻き付けて、主内管11を形成する。
【0043】
続いて、主内管11の内層管111と同様に、副内管12a、12bの樹脂材料を金属芯上に押出成形機等を用いて被覆するか、金属芯を副内管12a、12bの樹脂材料が溶解した溶液に塗布又は浸漬し、その後乾燥させることによって、副内管12a、12bを形成する。副内管12a、12bを被覆する被覆膜14の形成は、副内管12a、12bを形成した後、それらを被覆膜14の樹脂材料が溶解した溶液に塗布又は浸漬し、その後乾燥させてもよいし、副内管12a、12bを押出成形により形成する際、被覆膜14の樹脂材料を同時に押出成形することも可能である。
【0044】
形成された主内管11に被覆膜14で被覆された副内管12a、12bを沿わせて配置し、この状態で外層13の樹脂材料からなるチューブを被せ、加熱して熱溶着させることにより、カテーテルチューブ1が製造できる。なお、主内管11に被覆膜14で被覆された副内管12a、12bを沿わせて配置した状態で、これを疑似芯として、外層13の樹脂材料を押出成形で被覆してカテーテルチューブ1を製造することもできる。
【0045】
以上、本発明に係るカテーテルチューブについて図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。上記実施形態に係るカテーテルチューブ1の変形例について以下説明する。
【0046】
<変形例1>
変形例1のカテーテルチューブ1Aでは、
図3に示すように、被覆膜14Aが、横断面視において主内管11から離れた位置、すなわちカテーテルチューブ1Aの外周に近い位置に、軸方向に沿って形成されたスリット141を有している。スリット141が存在していることにより、二つの副内管12a、12bを被覆膜14Aが被覆していても、二つの副内管12a、12bを主内管11の外周に対してさらに沿うように配置しやすくなるため、カテーテルチューブ1Aの堅牢性を高めつつ、外層13内の限られたスペースに効率的に複数の副内管12a、12bを配置することができる。
【0047】
スリット141は、カテーテルチューブ1Aの長手方向において、連続的に設けられていてもよいし、間欠的に設けられていてもよい。また、スリット141は、管状の被覆膜14で二つの副内管12a、12bを被覆してから、被覆膜14にカッター等で形成してもよいし、シート状の被覆膜14で二つの副内管12a、12bを巻き込んだ状態で、スリット141部分を残して被覆膜14を副内管12a、12bに固着させることで形成してもよい。
【0048】
<変形例2>
変形例2のカテーテルチューブ1Bでは、
図4に示すように、副内管12Ba、12Bbがいずれも横断面視で略楕円形状の内腔を有し、一つの被覆膜14Bによって被覆されている。二つの副内管12Ba、12Bbは横断面視において主内管11寄りの位置で接触している。このように、副内管12Ba、12Bbの断面形状は略矩形状に限られるものではなく、略楕円形状であってもよいし、その他の形状を呈していてもよい。なお、被覆膜14Bは、二つの副内管12Ba、12Bbの外周に沿うような形で、副内管12Ba、12Bbを被覆していてもよい。
【0049】
<変形例3>
変形例3のカテーテルチューブ1Cでは、
図5に示すように、一つの被覆膜14Cによって三つの副内管12Ca、12Cb、12Ccが被覆されている。副内管12Ca、12Cb、12Ccは、いずれも横断面視で略矩形状の内腔を有し、三つの副内管12Ca、12Cb、12Ccのうち、二つの副内管12Ca、12Cbは横断面視において主内管11寄りの位置で接触しており、二つの副内管12Cb、12Ccも横断面視において主内管11寄りの位置で接触している。このように、副内管12Ca、12Cb、12Ccの数は特に二つに限定されるものではなく、三つ以上であってもよい。また、複数の副内管12Ca、12Cb、12Ccの形状は同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0050】
<変形例4>
変形例4のカテーテルチューブ1Dでは、
図6に示すように、一つの被覆膜14Daによって二つの副内管12Da、12Dbが、もう一つの被覆膜14Dbによって二つの副内管12Dc、12Ddが被覆されている。副内管12Da、12Db、12Dc、12Ddは、いずれも横断面視で略矩形状の内腔を有し、二つの副内管12Da、12Dbは横断面視において主内管11寄りの位置で接触しており、二つの副内管12Dc、12Ddも横断面視において主内管11寄りの位置で接触している。このように、副内管12Da、12Db、12Dc、12Ddの数は特に二つに限定されるものではなく、また、被覆膜14Da、14Dbによって被覆された副内管の集合体が二つ以上であってもよい。
【0051】
<変形例5>
変形例5のカテーテルチューブ1Eでは、
図7に示すように、二つの副内管12Ea、12Ebが横断面視において主内管11寄りの位置で接触した状態で配置されているが、二つの副内管12Ea、12Ebは被覆膜によって被覆されていない。このように、被覆膜がなくても、二つの副内管12Ea、12Ebの接触状態が維持されるのであれば、副内管に求められる断面積を確保しつつ、堅牢性の高いカテーテルチューブを提供することができる。また、二つの副内管12Ea、12Ebが、接触状態を維持するように、接着や溶着等の公知の手段を用いて固着されていてもよい。
【0052】
<変形例6>
変形例6のカテーテルチューブ1Fでは、
図8に示すように、隣接する二つの副内管12Fa、12Fbが管壁の一部を共有することによって、複数の副内管12Fa、12Fbが一体化されている。具体的には、一つの扁平な横断面視で略矩形状の内腔を有する副内管121内に平板状の管壁122を立設することにより、一体化された二つの副内管12Fa、12Fbが形成されている。このように、被覆膜がなくても、二つの副内管12Fa、12Fbが一体化されていることにより接触状態が維持されるのであれば、副内管に求められる断面積を確保しつつ、堅牢性の高いカテーテルチューブを提供することができる。
【0053】
<変形例7>
変形例7のカテーテルチューブ1Gでは、
図9に示すように、隣接する二つの副内管12Ga、12Gbが管壁の一部を共有することによって、複数の副内管12Ga、12Gbが一体化されている。具体的には、二つの副内管12Ga、12Gbを、二つの横断面視で略楕円形状の内腔123a、123bを有する一つの眼鏡形状の副内管124として形成することにより、一体化された二つの副内管12Ga、12Gbが形成されている。このように、被覆膜がなくても、二つの副内管12Ga、12Gbが一体化されていることにより接触状態が維持されるのであれば、副内管に求められる断面積を確保しつつ、堅牢性の高いカテーテルチューブを提供することができる。
【0054】
<変形例8>
変形例8のカテーテルチューブ1Hでは、
図10に示すように、隣接する二つの副内管12Ha、12Hbが管壁の一部を共有することによって、複数の副内管12Ha、12Hbが一体化されている。具体的には、二つの副内管12Ha、12Hbを、二つの横断面視で略矩形状の内腔125a、125bの主内管11寄りの角部が連結された形状の一つの副内管126として形成することにより、一体化された二つの副内管12Ha、12Hbが形成されている。このように、被覆膜がなくても、二つの副内管12Ha、12Hbが一体化されていることにより接触状態が維持されるのであれば、副内管に求められる断面積を確保しつつ、堅牢性の高いカテーテルチューブを提供することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 カテーテル
1 カテーテルチューブ
11 外層
12 主内管
13 補強体
14a、14b 副内管
2 先端チップ
3 バルーン
4 コネクタ