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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122390
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】測距装置及び測距方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/484 20060101AFI20230825BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20230825BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
G01S7/484
G01S17/10
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026063
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】関谷 彰人
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA05
2F112CA12
2F112DA24
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA45
2F112GA01
5J084AA05
5J084BA06
5J084BA07
5J084BA36
5J084BA39
5J084BA40
5J084CA03
5J084CA20
5J084CA31
5J084CA32
5J084CA49
5J084EA04
(57)【要約】

【課題】遠距離の測距を行う場合でも、測距誤差を小さくできる測距装置を提供する。
【解決手段】測距装置は、発光部が発光した発光パルス信号が物体で反射されて得られた反射光パルス信号を受光する受光部と、前記受光部での前記反射光パルス信号の受光時間に応じたデジタル信号を所定の時間分解能で生成する時間デジタル変換器と、前記デジタル信号に基づいて、前記反射光パルス信号の受光時刻の頻度分布を表すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、前記発光パルス信号のパルス幅が前記ヒストグラムの頻度単位を示すビン幅の整数倍となるように、前記発光パルス信号のパルス幅及び前記ビン幅の少なくとも一方を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部が発光した発光パルス信号が物体で反射されて得られた反射光パルス信号を受光する受光部と、
前記受光部での前記反射光パルス信号の受光時間に応じたデジタル信号を所定の時間分解能で生成する時間デジタル変換器と、
前記デジタル信号に基づいて、前記反射光パルス信号の受光時刻の頻度分布を表すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、
前記発光パルス信号のパルス幅が前記ヒストグラムの頻度単位を示すビン幅の整数倍となるように、前記発光パルス信号のパルス幅及び前記ビン幅の少なくとも一方を制御する制御部と、を備える、測距装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記発光パルス信号のパルス幅を変更せずに、前記ビン幅を制御する、請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記ヒストグラムの左端のビンの頻度数が右隣のビンの頻度数よりも大きいか否かを判定する第1判定部と、
前記ヒストグラムの右端のビンの頻度数が左隣のビンの頻度数よりも小さいか否かを判定する第2判定部と、を備え、
前記制御部は、前記第1判定部にて前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数よりも大きいと判定された場合には前記ビン幅を狭める制御を行い、前記第2判定部にて前記右端のビンの頻度数が前記左隣のビンの頻度数よりも小さいと判定された場合には前記ビン幅を広げる制御を行う、請求項2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数に一致し、かつ前記右端のビンの頻度数が前記左隣のビンの頻度数に一致するまで前記ビン幅を制御する、請求項3に記載の測距装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記時間デジタル変換器の前記時間分解能を制御するとともに、前記ビン幅を制御する、請求項2に記載の測距装置。
【請求項6】
前記時間デジタル変換器及び前記ヒストグラム生成部の動作に同期するクロック信号を生成するクロック生成器と、
前記制御部から出力された制御信号に基づいて、前記クロック信号の周波数を調整する周波数調整部と、を備える、請求項5に記載の測距装置。
【請求項7】
前記時間デジタル変換器は、前記周波数調整部で調整された前記クロック信号の周波数に応じた時間分解能で前記デジタル信号を生成し、
前記ヒストグラム生成部は、前記周波数調整部で調整された前記クロック信号の周波数に応じたビン幅で前記ヒストグラムを生成する、請求項6に記載の測距装置。
【請求項8】
前記制御部が前記ビン幅を制御した後、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御する発光制御部を備える、請求項2に記載の測距装置。
【請求項9】
前記発光制御部は、前記制御部が前記ビン幅の制御を開始する前に、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御する、請求項8に記載の測距装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記ビン幅を変更せずに、前記発光パルス信号のパルス幅を制御する、請求項1に記載の測距装置。
【請求項11】
前記ヒストグラムの左端のビンの頻度数が右隣のビンの頻度数よりも大きいか否かを判定する第1判定部と、
前記ヒストグラムの右端のビンの頻度数が左隣のビンの頻度数よりも小さいか否かを判定する第2判定部と、を備え、
前記制御部は、前記第1判定部にて前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数よりも大きいと判定された場合には前記発光パルス信号のパルス幅を広げる制御を行い、前記第2判定部にて前記右端のビンの頻度数が前記左端のビンの頻度数よりも小さいと判定された場合には前記発光パルス信号のパルス幅を狭める制御を行う、請求項10に記載の測距装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数に一致し、かつ前記右端のビンの頻度数が前記左隣のビンの頻度数に一致するまで前記発光パルス信号のパルス幅を制御する、請求項11に記載の測距装置。
【請求項13】
前記制御部からの指示に従って、前記発光部に対して前記発光パルス信号のパルス幅を制御する制御信号を送信する発振制御部を備え、
前記発光部は、前記制御信号に基づいて、前記発光パルス信号のパルス幅を調整する、請求項10に記載の測距装置。
【請求項14】
前記発光制御部は、前記制御部が前記発光パルス信号のパルス幅を制御した後、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御する、請求項13に記載の測距装置。
【請求項15】
前記発光制御部は、前記制御部が前記発光パルス信号のパルス幅の制御を開始する前に、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御する、請求項14に記載の測距装置。
【請求項16】
第1距離範囲で測距を行う第1モードと、前記第1距離範囲よりも長い距離の第2距離範囲で測距を行う第2モードとのいずれかを選択するモード選択部を備え、
前記制御部は、前記第1モードが選択された場合には、前記発光パルス信号のパルス幅を前記ビン幅の整数倍とする制御を行わずに前記ヒストグラム生成部に前記ヒストグラムを生成させ、前記第2モードが選択された場合には、前記発光パルス信号のパルス幅を前記ビン幅の整数倍とする制御を行った後に前記ヒストグラム生成部に前記ヒストグラムを生成させる、請求項1に記載の測距装置。
【請求項17】
前記ヒストグラムに基づいて、前記物体までの距離を計測する距離計測部を備える、請求項1に記載の測距装置。
【請求項18】
発光部が発光した発光パルス信号が物体で反射されて得られた反射光パルス信号を受光部にて受光し、
前記受光部での前記反射光パルス信号の受光時間に応じたデジタル信号を所定の時間分解能で生成し、
前記デジタル信号に基づいて、前記反射光パルス信号の受光時刻の頻度分布を表すヒストグラムを生成し、
前記発光パルス信号のパルス幅が前記ヒストグラムの頻度単位を示すビン幅の整数倍となるように、前記発光パルス信号のパルス幅及び前記ビン幅の少なくとも一方を制御する、測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距装置及び測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光パルス信号(Txパルス信号)を物体に照射し、物体からの反射光パルス信号(Rxパルス信号)を受光して、Txパルス信号を投光してからRxパルス信号が受光されるまでの時間により物体までの距離を測定するdToF(direct Time of Flight)方式の測距装置が知られている。
【0003】
測距装置は、Rxパルス信号の受光時間に応じたデジタル信号を生成する時間デジタル変換器(TDC:Time Digital Converter)と、Rxパルス信号の受光時間の頻度分布を表すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部とを備えている(特許文献1参照)。
【0004】
TDCの時間分解能によって、ヒストグラムのビン幅が制御され、TDCの時間分解能を高くするほど、ヒストグラムのビン幅を狭めて距離精度を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-25778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、TDCの時間分解能を高くしても、Txパルス信号のパルス幅とヒストグラムのビン幅との関係によっては、測距誤差が大きくなる場合がある。特に、遠距離の測距を行う場合に、測距誤差が大きくなりやすい。
【0007】
そこで、本開示では、遠距離の測距を行う場合でも、測距誤差を小さくできる測距装置及び測距方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示によれば、発光部が発光した発光パルス信号が物体で反射されて得られた反射光パルス信号を受光する受光部と、
前記受光部での前記反射光パルス信号の受光時間に応じたデジタル信号を所定の時間分解能で生成する時間デジタル変換器と、
前記デジタル信号に基づいて、前記反射光パルス信号の受光時刻の頻度分布を表すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、
前記発光パルス信号のパルス幅が前記ヒストグラムの頻度単位を示すビン幅の整数倍となるように、前記発光パルス信号のパルス幅及び前記ビン幅の少なくとも一方を制御する制御部と、を備える、測距装置が提供される。
【0009】
前記制御部は、前記発光パルス信号のパルス幅を変更せずに、前記ビン幅を制御してもよい。
【0010】
前記ヒストグラムの左端のビンの頻度数が右隣のビンの頻度数よりも大きいか否かを判定する第1判定部と、
前記ヒストグラムの右端のビンの頻度数が左隣のビンの頻度数よりも小さいか否かを判定する第2判定部と、を備え、
前記制御部は、前記第1判定部にて前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数よりも大きいと判定された場合には前記ビン幅を狭める制御を行い、前記第2判定部にて前記右端のビンの頻度数が前記左隣のビンの頻度数よりも小さいと判定された場合には前記ビン幅を広げる制御を行ってもよい。
【0011】
前記制御部は、前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数に一致し、かつ前記右端のビンの頻度数が前記左隣のビンの頻度数に一致するまで前記ビン幅を制御してもよい。
【0012】
前記制御部は、前記時間デジタル変換器の前記時間分解能を制御するとともに、前記ビン幅を制御してもよい。
【0013】
前記時間デジタル変換器及び前記ヒストグラム生成部の動作に同期するクロック信号を生成するクロック生成器と、
前記制御部から出力された制御信号に基づいて、前記クロック信号の周波数を調整する周波数調整部と、を備えてもよい。
【0014】
前記時間デジタル変換器は、前記周波数調整部で調整された前記クロック信号の周波数に応じた時間分解能で前記デジタル信号を生成し、
前記ヒストグラム生成部は、前記周波数調整部で調整された前記クロック信号の周波数に応じたビン幅で前記ヒストグラムを生成してもよい。
【0015】
前記制御部が前記ビン幅を制御した後、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御する発光制御部を備えてもよい。
【0016】
前記発光制御部は、前記制御部が前記ビン幅の制御を開始する前に、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御してもよい。
【0017】
前記制御部は、前記ビン幅を変更せずに、前記発光パルス信号のパルス幅を制御してもよい。
【0018】
前記ヒストグラムの左端のビンの頻度数が右隣のビンの頻度数よりも大きいか否かを判定する第1判定部と、
前記ヒストグラムの右端のビンの頻度数が左隣のビンの頻度数よりも小さいか否かを判定する第2判定部と、を備え、
前記制御部は、前記第1判定部にて前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数よりも大きいと判定された場合には前記発光パルス信号のパルス幅を広げる制御を行い、前記第2判定部にて前記右端のビンの頻度数が前記左端のビンの頻度数よりも小さいと判定された場合には前記発光パルス信号のパルス幅を狭める制御を行ってもよい。
【0019】
前記制御部は、前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数に一致し、かつ前記右端のビンの頻度数が前記左隣のビンの頻度数に一致するまで前記発光パルス信号のパルス幅を制御してもよい。
【0020】
前記制御部からの指示に従って、前記発光部に対して前記発光パルス信号のパルス幅を制御する制御信号を送信する発振制御部を備え、
前記発光部は、前記制御信号に基づいて、前記発光パルス信号のパルス幅を調整してもよい。
【0021】
前記発光制御部は、前記制御部が前記発光パルス信号のパルス幅を制御した後、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御してもよい。
【0022】
前記発光制御部は、前記制御部が前記発光パルス信号のパルス幅の制御を開始する前に、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御してもよい。
【0023】
第1距離範囲で測距を行う第1モードと、前記第1距離範囲よりも長い距離の第2距離範囲で測距を行う第2モードとのいずれかを選択するモード選択部を備え、
前記制御部は、前記第1モードが選択された場合には、前記発光パルス信号のパルス幅を前記ビン幅の整数倍とする制御を行わずに前記ヒストグラム生成部に前記ヒストグラムを生成させ、前記第2モードが選択された場合には、前記発光パルス信号のパルス幅を前記ビン幅の整数倍とする制御を行った後に前記ヒストグラム生成部に前記ヒストグラムを生成させしてもよい。
【0024】
前記ヒストグラムに基づいて、前記物体までの距離を計測する距離計測部を備えてもよい。
【0025】
本開示によれば、発光部が発光した発光パルス信号が物体で反射されて得られた反射光パルス信号を受光部にて受光し、
前記受光部での前記反射光パルス信号の受光時間に応じたデジタル信号を所定の時間分解能で生成し、
前記デジタル信号に基づいて、前記反射光パルス信号の受光時刻の頻度分布を表すヒストグラムを生成し、
前記発光パルス信号のパルス幅が前記ヒストグラムの頻度単位を示すビン幅の整数倍となるように、前記発光パルス信号のパルス幅及び前記ビン幅の少なくとも一方を制御する、測距方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態による測距装置を備えた測距システムの概略構成を示すブロック図。
図2図1の測距装置が実装された積層体の模式的な斜視図。
図3A】TXパルス信号のパルス幅とヒストグラムのビン幅との関係を示す図。
図3B】TXパルス信号のパルス幅とヒストグラムのビン幅との関係を示す図。
図4A】Txパルス幅がヒストグラムのビン幅の2.5倍のときに、物体の距離によって真値からの誤差が変化する様子を示す図。
図4B】ToF値の誤差がTxパルス幅により変化する様子を示す図。
図5】第1の実施形態による測距装置の主要部の詳細なブロック図。
図6】第1の実施形態による測距装置内の制御部の処理動作を示すフローチャート。
図7A図6のステップS2がYESになる例を示す図。
図7B図6のステップS2がNOになる例を示す図。
図7C】連続する2つのビンの頻度数が等しい例を示す図。
図8】第2の実施形態による測距装置の主要部の詳細なブロック図。
図9】第1の実施形態による測距装置内の制御部の処理動作を示すフローチャート。
図10】第3の実施形態による測距装置内の制御部の処理動作を示すフローチャート。
図11図10の処理結果をまとめた図。
図12】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図。
図13】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、測距装置及び測距方法の実施形態について説明する。以下では、測距装置の主要な構成部分を中心に説明するが、測距装置には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による測距装置1を備えた測距システム2の概略構成を示すブロック図である。図1の測距システム2は、測距装置1と、発光部3と、全体制御部4とを備えている。
【0029】
発光部3は、一次元又は二次元方向に配置された複数の発光素子3aを有する。複数の発光素子3aは、所定の時間間隔で発光パルス信号(Txパルス信号)を繰り返し発光する。発光部3は、複数の発光素子3aが発光した光信号を所定の二次元空間上で走査することができる。光信号を走査させる具体的な手法は問わない。全体制御部4は、発光部3と測距装置1を制御する。発光部3と全体制御部4の少なくとも一方は、測距装置1に統合することが可能である。
【0030】
測距装置1は、画素アレイ部10と、測距処理部11と、信号処理部12と、制御部13と、クロック生成部14と、発光制御部15と、駆動回路16とを有する。測距処理部11は、時間デジタル変換器(TDC)17と、ヒストグラム生成部18と、測距制御部19とを有する。
【0031】
画素アレイ部10は、一次元又は二次元方向に配置された複数の画素10aを有する。各画素10aは、受光素子20を有する。受光素子20は、例えばSPAD(Single Photon Avalanche photo Diode)である。以下では、各画素10aがSPADを有する例を主に説明する。各画素10aは、不図示のクエンチ回路を有していてもよい。クエンチ回路は、初期状態では、SPADのアノードとカソード間にブレークダウン電圧を超える電位差の逆バイアス電圧を供給する。駆動回路16は、SPADが光子を検出した後に、対応するクエンチ回路を介してSPADに逆バイアス電圧を供給して、次の反射光パルス信号(Rxパルス信号)の検出に備える。
【0032】
TDC17は、SPADが受光したRxパルス信号の受光時間に応じたデジタル信号を所定の時間分解能で生成する。第1の実施形態によるTDC17は、時間分解能を切り替えることができる。TDC17の時間分解能が高いほど、Rxパルス信号の受光時間をより精度よく検出でき、測距精度を向上できる。
【0033】
ヒストグラム生成部18は、TDC17が生成したデジタル信号に基づいて、TDC17の時間分解能に応じたビン幅のヒストグラムを生成する。ビン幅とは、ヒストグラムを構成する各頻度単位の幅である。TDC17の時間分解能が高いほど、ビン幅を狭くでき、Rxパルス信号を受光した時間頻度をより精度よく反映させたヒストグラムが得られる。
【0034】
信号処理部12は、距離計算部12aを有する。距離計算部12aは、ヒストグラムに基づいてRxパルス信号の重心位置を計算する等して、物体までの距離を計算する。
【0035】
制御部13は、Txパルス信号のパルス幅がヒストグラムのビン幅の整数倍となるように、Txパルス信号のパルス幅及びビン幅の少なくとも一方を制御する。第1の実施形態による制御部13は、Txパルス信号のパルス幅がヒストグラムのビン幅の整数倍となるようにビン幅を制御する。この他、制御部13は、測距装置1内の各部の処理動作を制御する。
【0036】
クロック生成部14は、TDC17とヒストグラム生成部18が使用するクロック信号を生成する。クロック生成部14は、例えば不図示のPLL回路を用いてクロック信号を生成する。また、クロック生成部14は、生成したクロック信号を発光制御部15に供給する。発光制御部15は、このクロック信号に同期して、発光素子3aの発光タイミングを制御する。
【0037】
駆動回路16は、SPADが光を検知してカソード電圧が下がったときに、カソード電圧を元の電圧に復帰させるクエンチ制御などを行う。
【0038】
図1の測距装置1は、複数のチップを積層させた積層体で構成することができる。図2図1の測距装置1が実装された積層体の模式的な斜視図である。図2の積層体は、第1チップ21と、第1チップ21に積層される第2チップ22とを有する。第1チップ21には、主に図1の画素アレイ部10が配置される。第2チップ22には、図1の測距装置1内の画素アレイ部10以外の少なくとも一部が配置される。第1チップ21と第2チップ22は、Cu-Cu接合、ビア、又はバンプ等により接合される。図1の測距装置1内の画素アレイ部10以外の一部の構成部分を第1チップ21に配置して、残りの構成部分を第2チップ22に配置してもよい。あるいは、図1の測距装置1内の画素アレイ部10以外のすべての構成部分を第2チップ22に配置してもよい。また、図1の発光部3、全体制御部4及び制御部13の少なくとも一部を第1チップ21又は第2チップ22に配置してもよい。さらに、図1の測距装置1は、3つ以上のチップを積層させた積層体で構成してもよい。
【0039】
図3A及び図3BはTXパルス信号のパルス幅とヒストグラムのビン幅との関係を示す図である。図3AはTxパルス信号のパルス幅がビン幅の2.5倍で、Txパルス信号の真値が1.25の例を示している。Txパルス信号の発光開始位置とヒストグラムのビンの境界位置が一致している場合、図3Aに示すように、左から2つ目までのビンの頻度は1、右端のビンの頻度は0.5となる。
【0040】
図3BはTxパルス信号のパルス幅がビン幅の2.5倍で、Txパルス信号の真値が2の例を示している。図3BのTxパルス信号の発光開始位置はビンの境界位置からずれている。よって、ヒストグラムには4つのビンがあり、左端と右端のビンの頻度は0.25、中央側の2つのビンの頻度は1となる。
【0041】
図3A図3Bからわかるように、Txパルス信号のパルス位置とヒストグラムのビン位置との関係によって、真値が変化する。
【0042】
図4Aは、Txパルス幅がヒストグラムのビン幅の2.5倍のときに、物体の距離によって真値からの誤差が変化する様子を示す図である。図4Aの横軸は物体の距離、縦軸は真値からの誤差を示している。図4Aからわかるように、真値からの誤差は周期的に変動する。
【0043】
図4Bは、ToF値の誤差がTxパルス幅により変化する様子を示す図である。図4Bの横軸はTxパルス幅、縦軸はToF値の誤差である。なお、ToF値とは、測距装置1で計算された物体の距離である。図4Bには、ToF値の最大誤差を示す曲線w1、ToF値の最小誤差を示す曲線w2、ToF値の誤差のピークtoピークの曲線w3が図示されている。
【0044】
図4Bからわかるように、Txパルス幅が広がるにつれて、曲線w1~w3の誤差は小さくなる。Txパルス幅が大きいほど、Txパルス幅はヒストグラムのビン幅の整数倍に近づくため、図4Bの結果からも、Txパルス幅をビン幅の整数倍にすることが望ましいことがわかる。
【0045】
図5は第1の実施形態による測距装置1の主要部の詳細なブロック図である。第1の実施形態による測距装置1は、発光素子3aが発光するTxパルス信号のパルス幅(Txパルス幅)を変えずに、ヒストグラムのビン幅を調整することにより、Txパルス幅をビン幅の整数倍にすることを特徴とする。
【0046】
図5に示すように、第1の実施形態による測距装置1内の制御部13は、パルス幅検出部23と、追従制御部24と、周波数調整部25とを有する。
【0047】
パルス幅検出部23は、Txパルス幅がビン幅の整数倍か否かを検出する。パルス幅検出部23は、判定部を兼ねている。判定部は、ヒストグラム内の連続する2つのビンのうち、時間の早いビンの頻度数が時間の遅いビンの頻度数よりも大きいか否かを判定する。制御部13は、時間の早いビンの頻度数が時間の遅いビンの頻度数よりも大きいと判定された場合にはビン幅を狭める制御を行い、時間の早いビンの頻度数が時間の遅いビンの頻度数以下と判定された場合にはビン幅を広げる制御を行う。
【0048】
追従制御部24は、Txパルス幅がビン幅の整数倍になるようにビン幅の調整を指示する。周波数調整部25は、追従制御部24からの指示に従って、ビン幅の調整に合わせてクロック信号の周波数を調整する。クロック生成部14内のPLL回路は、周波数調整部25が調整した周波数のクロック信号を生成する。
【0049】
クロック生成部14で再生成されたクロック信号は、TDC17とヒストグラム生成部18に供給される。TDC17は、クロック信号の周波数に応じた時間分解能で、Rxパルス信号をデジタル信号に変換する。ヒストグラム生成部18は、デジタル信号に基づいて、クロック信号の周波数に応じたビン幅で、ヒストグラムを生成する。
【0050】
クロック生成部14で再生成されたクロック信号は、発光制御部15にも供給される。発光制御部15は、クロック信号に同期させて、発光素子3aに発光開始を指示する。
【0051】
画素アレイ部10内の各画素10aの受光素子(SPAD)20のアノードは固定の電圧に設定され、カソードには定電流源26が接続されている。また、SPAD20のカソードにはインバータ27が接続されている。インバータ27の出力信号はTDC17に入力される。
【0052】
図5では、ビン幅を調整するのに用いられるSPAD20と、測距用のSPAD20aとを別個に図示しているが、ビン幅を調整するのに用いられるSPAD20は、測距用のSPAD20aを流用してもよい。
【0053】
図6は第1の実施形態による測距装置1内の制御部13の処理動作を示すフローチャートである。制御部13は、測距装置1の電源をオンにした場合、又は測距装置1にリセットをかけた場合などに、図6の処理動作を実行する。あるいは、制御部13は、測距装置1が測距処理を行っている最中に、定期的又は不定期的に図6の処理を繰り返し実行してもよい。
【0054】
まず、スタートトリガ位置を調整する(ステップS1)。スタートトリガ位置の調整とは、Txパルス信号の立ち上がりエッジのタイミングと、TDC17がRxパルス信号のカウントを開始するタイミングとを揃えることを指す。制御部13は、発光制御部15を介して、発光素子3aに対してTxパルス信号の発光タイミングを指示するとともに、TDC17に対して時間デジタル変換を開始するタイミングを指示する。
【0055】
その後、発光素子3aがTxパルス信号の発光を開始する。発光素子3aは、Txパルス信号を所定の周期で繰り返し発光する。Txパルス信号の一部は、物体に照射されて反射され、その販社Txパルス信号(Rxパルス信号)がSPAD20で受光される。
【0056】
TDC17は、クロック信号の周波数に応じた時間分解能で、Rxパルス信号の受光時刻に応じたデジタル信号を生成する。ヒストグラム生成部18は、デジタル信号に基づいて、クロック信号の周波数に応じたビン幅で、Rxパルス信号の受光時刻の頻度分布であるヒストグラムを生成する。
【0057】
制御部13内のパルス幅検出部23は、ヒストグラム内の左端から連続する2つのビンのうち、左端のビンの頻度数が右隣のビンの頻度数よりも大きいか否かを判定する(ステップS2、第1判定部)。ステップS2がYESになるのは、例えば図7Aのような場合である。この場合、Txパルス幅が2個のビン幅より小さいことを示している。よって、制御部13内の周波数調整部25は、ビン幅を狭める調整を行う(ステップS3)。ビン幅を狭めるには、クロック信号の周波数を高くする必要がある。よって、周波数調整部25は、クロック生成部14に対してクロック信号の周波数を高くすることを指示する。この指示を受けて、クロック生成部14は、クロック信号の周波数を高くする。
【0058】
一方、ステップS2がNOの場合、パルス幅検出部23は、ヒストグラム内の右端のビンの頻度数が左隣のビンの頻度数よりも小さいか否かを判定する(ステップS4、第2判定部)。ステップS4がYESになるのは、例えば図7Bのような場合である。この場合、Txパルス幅が2個のビン幅より大きいことを示している。よって、周波数調整部25は、ビン幅を広げる調整を行う(ステップS5)。ビン幅を広げるには、クロック信号の周波数を低くする必要がある。よって、周波数調整部25は、クロック生成部14に対してクロック信号の周波数を低くすることを指示する。この指示を受けて、クロック生成部14は、クロック信号の周波数を低くする。
【0059】
ステップS3又はS5の処理によりクロック信号の周波数を変更すると、ステップS1で調整したスタートトリガ位置がずれる。そこで、再度、スタートトリガ位置の調整を行う(ステップS6)。
【0060】
ステップS6の処理が終わった場合、又はステップS4がNOの場合、制御部13内のパルス幅検出部23は、ヒストグラム内の連続する2つのビンの頻度数が等しいか否かを判定する(ステップS6)。図7Cは連続する2つのビンの頻度数が等しい例を示している。頻度数が等しくなければ、ステップS2以降の処理を繰り返す。頻度数が等しい場合には、調整後のクロック信号の周波数を不図示の記憶部に記憶する(ステップS7)。記憶されたクロック信号の周波数は、次に調整を行うまでは有効なものとして扱われる。
【0061】
このように、第1の実施形態による測距装置1では、発光素子3aのTxパルス幅を一定として、ヒストグラムのビン幅を調整することにより、Txパルス幅がビン幅の整数倍になるようにする。これにより、距離の異なる物体であっても、測距誤差のばらつきを低減できる。
【0062】
第1の実施形態による測距装置1は、TDC17とヒストグラム生成部18に供給するクロック信号の周波数を変えることにより、Txパルス幅をビン幅の整数倍に調整できるため、新たなハードウェア部品を追加することなく、既存の装置構成で測距精度を向上できる。
【0063】
(第2の実施形態)
以下に説明する第2の実施形態による測距装置1は、ヒストグラムのビン幅を一定にして、発光素子3aのTxパルス幅を制御して、Txパルス幅をビン幅の整数倍に調整することを特徴とする。
【0064】
第2の実施形態による測距装置1は、図1と同様のブロック構成を備えているが、制御部13の内部構成が第1の実施形態とは異なっている。図8は第2の実施形態による測距装置1の主要部の詳細なブロック図である。
【0065】
図8の測距装置1内の発光素子3aは、Txパルス信号のパルス幅(Txパルス幅)を調整可能な機能を有する。具体的には、発光素子3aは、発光制御部15からの制御信号に基づいて、Txパルス幅を調整する。
【0066】
図8に示すように、第2の実施形態による測距装置1内の制御部13は、パルス幅検出部23と、追従制御部24とを有する。図8の制御部13は、図5の制御部13内に存在した周波数調整部25を持たない。
【0067】
パルス幅検出部23は、Txパルス幅がビン幅の整数倍か否かを検出する。追従制御部24は、Txパルス幅がビン幅の整数倍になるようにTxパルス幅の調整を発光制御部15に指示する。発光制御部15は、Txパルス幅の調整指示を含む制御信号を発光素子3aに送る。発光素子3aは、制御信号に基づいて、Txパルス幅を調整する。
【0068】
図9は第1の実施形態による測距装置1内の制御部13の処理動作を示すフローチャートである。まず、図6のステップS1と同様に、スタートトリガ位置を調整する(ステップS11)。その後、Txパルス信号の発光と、Rxパルス信号の受光及びヒストグラムの生成を行う。
【0069】
次に、図6のステップS2と同様に、ヒストグラム内の左端から連続する2つのビンのうち、左端のビンの頻度数が右隣のビンの頻度数よりも大きいか否かを判定する(ステップS12)。
【0070】
ステップS12がYESの場合、発光制御部15は、Txパルス幅を長くすることを指示する制御信号を発光素子3aに送る(ステップS13)。発光素子3aは、制御信号に基づいて、Txパルス幅を長くする。Txパルス幅をどのくらい長くするかは、予め決めておけばよい。
【0071】
ステップS12がNOの場合、パルス幅検出部23は、ヒストグラム内の右端のビンの頻度数が左隣のビンの頻度数よりも小さいか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14がYESの場合、発光制御部15は、Txパルス信号を短くすることを指示する制御信号を発光素子3aに送る(ステップS15)。発光素子3aは、制御信号に基づいて、Txパルス幅を短くする。Txパルス幅をどのくらい短くするかは、予め決めておけばよい。
【0072】
ステップS13又はS15の処理によりTxパルス幅を調整すると、ステップS11で調整したスタートリガ位置がずれるおそれがある。そこで、再度、スタートトリガ位置の調整を行う(ステップS16)。
【0073】
その後、図6のステップS6、S7と同様の処理を行う(ステップS17、S18)。ステップS18では、調整後のTxパルス幅を不図示の記憶部に記憶する。
【0074】
このように、第2の実施形態による測距装置1では、ヒストグラムのビン幅を一定として、Txパルス幅を調整することにより、Txパルス幅がビン幅の整数倍になるようにする。これにより、距離の異なる物体であっても、測距誤差のばらつきを低減できる。
【0075】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、測距距離モードによって、Txパルス幅とビン幅との関係を調整するか否かを決定するものである。
【0076】
dToF方式の測距装置1は、例えば1m以内の近距離に位置する物体の距離を計測する場合と、10m以上の遠距離に位置する物体の距離を計測する場合とでは、ヒストグラムのビン幅を変えるのが一般的である。具体的には、遠距離に位置する物体の距離を計測する際のビン幅は、近距離に位置する物体の距離を計測する際のビン幅よりも大きくする。
【0077】
ビン幅を小さくすると、Txパルス幅がビン幅の整数倍に近づくことから、第1及び第2の実施形態による調整処理を行わなくても、測距誤差のばらつきは小さくなる。ビン幅を小さくするということは、相対的にTxパルス幅を大きくすることと等価であり、図4Bに示すように、ToF値の誤差も小さくなる。
【0078】
そこで、第3の実施形態による測距装置1は、遠距離モードのときに限って、第1又は第2の実施形態による調整処理を行い、近距離モードのときは、第1又は第2の実施形態による調整処理を行わず通常の測距処理を行うことを特徴とする。
【0079】
第3の実施形態による測距装置1は、図1と同様のブロック構成を備えている。図10は第3の実施形態による測距装置1内の制御部13の処理動作を示すフローチャートである。まず、遠距離モードか否かを判定する(ステップS21)。本実施形態では、近距離モードと遠距離モードがあることを前提としている。近距離モードは例えば1m以内の近距離に位置する物体の距離を計測するモード、遠距離モードは例えば1mを超える遠距離に位置する物体の距離を計測するモードである。なお、各モードで計測する物体までの距離は任意に変更してもよい。また、物体までの距離に応じて、3つ以上のモードに分けてもよいが、以下では、近距離モードと遠距離モードの2つが存在する例を説明する。
【0080】
近距離モードと遠距離モードの選択は、ユーザが明示的に行ってもよいし、Txパルス信号を送信してからRxパルス信号が受光されるまでの時間により、自動的に近距離モード又は遠距離モードを選択するようにしてもよい。
【0081】
図10のステップS21で遠距離モードが選択されると、上述した図6又は図9の処理を行って、Txパルス幅をビン幅の整数倍に調整し、その後に測距処理を行う(ステップS22)。一方、ステップS21で近距離モードが選択されると、図6又は図9の処理を行わずに、通常の測距処理を行う(ステップS23)。
【0082】
図11は、図10の処理結果をまとめた図である。図11に示すように、近距離モード時は、ヒストグラムのビン幅が狭いため、Txパルス幅がビン幅の整数倍に近づくことから、Txパルス幅をビン幅の整数倍に調整する処理(Txパルス幅・ビン幅追従処理)は行わない。一方、遠距離モード時は、ヒストグラムのビン幅が広いため、そのままでは、Txパルス幅がビン幅の整数倍にならないことが多い。そこで、Txパルス幅・ビン幅追従処理を行う。
【0083】
このように、第3の実施形態では、近距離モードが選択された場合のみ、第1又は第2の実施形態で説明したTxパルス幅・ビン幅追従処理を行うため、測距精度を低下させることなく、制御部13の処理負担を軽減できる。
【0084】
<<応用例>>
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0085】
図12は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図12に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0086】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。図12では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0087】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0088】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0089】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0090】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0091】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0092】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0093】
ここで、図13は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0094】
なお、図13には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0095】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0096】
図12に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0097】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0098】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0099】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0100】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0101】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX(登録商標)、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0102】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0103】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0104】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0105】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0106】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0107】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0108】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0109】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図12の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0110】
なお、図12に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0111】
なお、図1等を用いて説明した本実施形態に係る測距装置1の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを、いずれかの制御ユニット等に実装することができる。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することもできる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0112】
以上説明した車両制御システム7000において、図1等を用いて説明した本実施形態に係る測距装置1は、図12に示した応用例の統合制御ユニット7600に適用することができる。
【0113】
また、図1等を用いて説明した測距装置1の少なくとも一部の構成要素は、図12に示した統合制御ユニット7600のためのモジュール(例えば、一つのダイで構成される集積回路モジュール)において実現されてもよい。あるいは、図1を用いて説明した測距装置1が、図12に示した車両制御システム7000の複数の制御ユニットによって実現されてもよい。
【0114】
なお、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)発光部が発光した発光パルス信号が物体で反射されて得られた反射光パルス信号を受光する受光部と、
前記受光部での前記反射光パルス信号の受光時間に応じたデジタル信号を所定の時間分解能で生成する時間デジタル変換器と、
前記デジタル信号に基づいて、前記反射光パルス信号の受光時刻の頻度分布を表すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、
前記発光パルス信号のパルス幅が前記ヒストグラムの頻度単位を示すビン幅の整数倍となるように、前記発光パルス信号のパルス幅及び前記ビン幅の少なくとも一方を制御する制御部と、を備える、測距装置。
(2)前記制御部は、前記発光パルス信号のパルス幅を変更せずに、前記ビン幅を制御する、(1)に記載の測距装置。
(3)前記ヒストグラムの左端のビンの頻度数が右隣のビンの頻度数よりも大きいか否かを判定する第1判定部と、
前記ヒストグラムの右端のビンの頻度数が左隣のビンの頻度数よりも小さいか否かを判定する第2判定部と、を備え、
前記制御部は、前記第1判定部にて前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数よりも大きいと判定された場合には前記ビン幅を狭める制御を行い、前記第2判定部にて前記右端のビンの頻度数が前記左隣のビンの頻度数よりも小さいと判定された場合には前記ビン幅を広げる制御を行う、(2)に記載の測距装置。
(4)前記制御部は、前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数に一致し、かつ前記右端のビンの頻度数が前記左隣のビンの頻度数に一致するまで前記ビン幅を制御する、(3)に記載の測距装置。
(5)前記制御部は、前記時間デジタル変換器の前記時間分解能を制御するとともに、前記ビン幅を制御する、(2)乃至(4)のいずれか一項の測距装置。
(6)前記時間デジタル変換器及び前記ヒストグラム生成部の動作に同期するクロック信号を生成するクロック生成器と、
前記制御部から出力された制御信号に基づいて、前記クロック信号の周波数を調整する周波数調整部と、を備える、(5)に記載の測距装置。
(7)前記時間デジタル変換器は、前記周波数調整部で調整された前記クロック信号の周波数に応じた時間分解能で前記デジタル信号を生成し、
前記ヒストグラム生成部は、前記周波数調整部で調整された前記クロック信号の周波数に応じたビン幅で前記ヒストグラムを生成する、(6)に記載の測距装置。
(8)前記制御部が前記ビン幅を制御した後、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御する発光制御部を備える、(2)乃至(7)のいずれか一項に記載の測距装置。
(9)前記発光制御部は、前記制御部が前記ビン幅の制御を開始する前に、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御する、(8)に記載の測距装置。
(10)前記制御部は、前記ビン幅を変更せずに、前記発光パルス信号のパルス幅を制御する、(1)に記載の測距装置。
(11)前記ヒストグラムの左端のビンの頻度数が右隣のビンの頻度数よりも大きいか否かを判定する第1判定部と、
前記ヒストグラムの右端のビンの頻度数が左隣のビンの頻度数よりも小さいか否かを判定する第2判定部と、を備え、
前記制御部は、前記第1判定部にて前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数よりも大きいと判定された場合には前記発光パルス信号のパルス幅を広げる制御を行い、前記第2判定部にて前記右端のビンの頻度数が前記左端のビンの頻度数よりも小さいと判定された場合には前記発光パルス信号のパルス幅を狭める制御を行う、(10)に記載の測距装置。
(12)前記制御部は、前記左端のビンの頻度数が前記右隣のビンの頻度数に一致し、かつ前記右端のビンの頻度数が前記左隣のビンの頻度数に一致するまで前記発光パルス信号のパルス幅を制御する、(11)に記載の測距装置。
(13)前記制御部からの指示に従って、前記発光部に対して前記発光パルス信号のパルス幅を制御する制御信号を送信する発振制御部を備え、
前記発光部は、前記制御信号に基づいて、前記発光パルス信号のパルス幅を調整する、(10)乃至(12)のいずれか一項に記載の測距装置。
(14)前記発光制御部は、前記制御部が前記発光パルス信号のパルス幅を制御した後、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御する、(13)に記載の測距装置。
(15)前記発光制御部は、前記制御部が前記発光パルス信号のパルス幅の制御を開始する前に、前記発光部が前記発光パルス信号を発光するタイミングを制御する、(14)に記載の測距装置。
(16)第1距離範囲で測距を行う第1モードと、前記第1距離範囲よりも長い距離の第2距離範囲で測距を行う第2モードとのいずれかを選択するモード選択部を備え、
前記制御部は、前記第1モードが選択された場合には、前記発光パルス信号のパルス幅を前記ビン幅の整数倍とする制御を行わずに前記ヒストグラム生成部に前記ヒストグラムを生成させ、前記第2モードが選択された場合には、前記発光パルス信号のパルス幅を前記ビン幅の整数倍とする制御を行った後に前記ヒストグラム生成部に前記ヒストグラムを生成させる、(1)乃至(15)のいずれか一項に記載の測距装置。
(17)前記ヒストグラムに基づいて、前記物体までの距離を計測する距離計測部を備える、(1)乃至(16)のいずれか一項に記載の測距装置。
(18)発光部が発光した発光パルス信号が物体で反射されて得られた反射光パルス信号を受光部にて受光し、
前記受光部での前記反射光パルス信号の受光時間に応じたデジタル信号を所定の時間分解能で生成し、
前記デジタル信号に基づいて、前記反射光パルス信号の受光時刻の頻度分布を表すヒストグラムを生成し、
前記発光パルス信号のパルス幅が前記ヒストグラムの頻度単位を示すビン幅の整数倍となるように、前記発光パルス信号のパルス幅及び前記ビン幅の少なくとも一方を制御する、測距方法
【0115】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 測距装置、2 測距システム、3 発光部、3a 発光素子、4 全体制御部、10 画素アレイ部、10a 画素、11 測距処理部、12 信号処理部、12a 距離計算部、13 制御部、14 クロック生成部、15 発光制御部、16 駆動回路、17 時間デジタル変換器(TDC)、18 ヒストグラム生成部、19 測距制御部、20 受光素子(SPAD)、21 第1チップ、22 第2チップ、23 パルス幅検出部、24 追従制御部、25 周波数調整部、26 定電流源、27 インバータ
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13