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特開2023-122394半導体装置の製造方法及び半導体基板の加工装置
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  • 特開-半導体装置の製造方法及び半導体基板の加工装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122394
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び半導体基板の加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026070
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 淳士
(72)【発明者】
【氏名】長屋 正武
(72)【発明者】
【氏名】中林 正助
(72)【発明者】
【氏名】河口 大祐
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】恩田 正一
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA01
5F063AA04
5F063CB02
5F063CB07
5F063CB28
5F063CC05
(57)【要約】
【課題】 半導体基板を分割する際に、半導体基板に生じる亀裂や欠けを抑制する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面において、複数の素子領域と、複数の素子領域が存在する中央領域の周囲の外周領域を特定する工程と、半導体基板の表面から半導体基板の厚み方向に伸びるとともに複数の素子領域の界面に沿って伸びる中央改質層を形成する工程と、半導体基板の表面から半導体基板の厚み方向に伸びるとともに外周領域を素子領域よりも面積が小さい複数の微小領域に区画するように半導体基板の縁部まで伸びる外周改質層を形成する工程と、半導体基板の内部で半導体基板の表面に沿って伸びる内部改質層を中央領域内に形成する工程と、内部改質層に沿って半導体基板を分割する工程と、中央改質層と外周改質層に沿って半導体基板を分割する工程、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(100)を製造する製造方法であって、
半導体基板(12)の表面(12a)において、複数の素子領域(60)と、複数の前記素子領域が存在する中央領域(62)の周囲の外周領域(64)を特定する工程と、
レーザ照射装置(26)によって前記半導体基板にレーザ(L)を照射することにより、前記半導体基板の前記表面から前記半導体基板の厚み方向に伸びるとともに複数の前記素子領域の界面に沿って伸びる中央改質層(72)を形成する工程と、
前記レーザ照射装置によって前記半導体基板にレーザを照射することにより、前記半導体基板の前記表面から前記半導体基板の前記厚み方向に伸びるとともに前記外周領域を前記素子領域よりも面積が小さい複数の微小領域(73)に区画するように前記半導体基板の縁部まで伸びる外周改質層(74)を形成する工程と、
前記レーザ照射装置によって前記半導体基板にレーザを照射することにより、前記半導体基板の内部で前記半導体基板の前記表面に沿って伸びる内部改質層(76、176)を前記中央領域内に形成する工程と、
前記内部改質層に沿って前記半導体基板を分割する工程と、
前記中央改質層に沿って前記半導体基板を分割する工程、
を備える、製造方法。
【請求項2】
前記外周改質層を形成する前記工程では、前記外周領域の全域を前記微小領域に区画するように前記外周改質層を形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記内部改質層を形成する前記工程では、前記中央領域と前記外周領域に前記内部改質層(76)を形成する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記中央改質層と前記内部改質層とが繋がり、前記外周改質層と前記内部改質層とが繋がらないように、前記中央改質層、前記外周改質層及び前記内部改質層を形成する、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記内部改質層を形成する前記工程では、前記外周領域に前記内部改質層(176)を形成しない、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
半導体基板を加工する加工装置(20)であって、
レーザ照射装置(26)と、
検出装置(28)と、
制御装置(30)と、
を備え、
前記制御装置が、
前記検出装置によって、半導体基板の表面において、複数の素子領域と、複数の前記素子領域が存在する中央領域の周囲の外周領域を特定する工程と、
レーザ照射装置によって前記半導体基板にレーザを照射することにより、前記半導体基板の前記表面から前記半導体基板の厚み方向に伸びるとともに複数の前記素子領域の界面に沿って伸びる中央改質層を形成する工程と、
前記レーザ照射装置によって前記半導体基板にレーザを照射することにより、前記半導体基板の前記表面から前記半導体基板の前記厚み方向に伸びるとともに前記外周領域を前記素子領域よりも面積が小さい複数の微小領域に区画するように前記半導体基板の縁部まで伸びる外周改質層を形成する工程と、
前記レーザ照射装置によって前記半導体基板にレーザを照射することにより、前記半導体基板の内部で前記半導体基板の前記表面に沿って伸びる内部改質層を前記中央領域内に形成する工程と、
を実行する、
加工装置。
【請求項7】
前記制御装置が、
前記内部改質層に沿って前記半導体基板を分割する工程と、
前記中央改質層に沿って前記半導体基板を分割する工程、
をさらに実行する、請求項6に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置の製造方法及び半導体基板の加工装置に関する。
【0002】
特許文献1には、半導体基板の加工方法が開示されている。特許文献1では、半導体基板の内部に集光するレーザを照射することによって、半導体基板の内部に内部改質層を形成する。内部改質層は、半導体基板の表面に沿って広がるように形成される。このような内部改質層を形成することで、半導体基板を加工することができる。例えば、内部改質層に沿って半導体基板を分割することで、より薄い半導体基板を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-198391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような内部改質層が形成された半導体基板は、半導体基板に対して、その表面と裏面とを引き離す方向に力を加えることにより、内部改質層に沿って分割することができる。しかしながら、半導体基板を分割するときには、半導体基板の縁部に局所的に大きな応力が加わる。このため、特許文献1の技術では、半導体基板の縁部を起点として半導体基板に亀裂や欠けが生じることで、内部改質層に沿って半導体基板を正確に分割することができない場合がある。本明細書は、半導体基板を分割する際に、半導体基板に生じる亀裂や欠けを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置(100)の製造方法は、半導体基板(12)の表面(12a)において、複数の素子領域(60)と、複数の前記素子領域が存在する中央領域(62)の周囲の外周領域(64)を特定する工程と、レーザ照射装置(26)によって前記半導体基板にレーザ(L)を照射することにより、前記半導体基板の前記表面から前記半導体基板の厚み方向に伸びるとともに複数の前記素子領域の界面に沿って伸びる中央改質層(72)を形成する工程と、前記レーザ照射装置によって前記半導体基板にレーザを照射することにより、前記半導体基板の前記表面から前記半導体基板の前記厚み方向に伸びるとともに前記外周領域を前記素子領域よりも面積が小さい複数の微小領域(73)に区画するように前記半導体基板の縁部まで伸びる外周改質層(74)を形成する工程と、前記レーザ照射装置によって前記半導体基板にレーザを照射することにより、前記半導体基板の内部で前記半導体基板の前記表面に沿って伸びる内部改質層(76、176)を前記中央領域内に形成する工程と、前記内部改質層に沿って前記半導体基板を分割する工程と、前記中央改質層に沿って前記半導体基板を分割する工程、を備える。
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、半導体基板を内部改質層に沿って分割する際に半導体基板の縁部に加わる応力は、当該縁部を含む領域の表面積に略比例することが判明した。すなわち、半導体基板を内部改質層に沿って分割する際には、半導体基板の表面積が大きいほど、半導体基板の縁部に高い応力が加わる。上記の製造方法では、各素子領域の界面に沿って伸びる中央改質層に加えて、外周領域を複数の微小領域に区画する外周改質層を形成する。外周改質層は、半導体基板の縁部まで伸びるように形成される。すなわち、半導体基板の縁部には、素子領域よりも面積が小さい複数の微小領域が形成される。このため、内部改質層に沿って半導体基板を分割する工程では、半導体基板の縁部に加わる応力が、細分化された複数の微小領域それぞれの表面積に応じた大きさとなる。すなわち、内部改質層に沿って半導体基板を分割する際に、半導体基板の縁部に加わる応力が分散する。したがって、この製造方法では、半導体基板に生じる亀裂や欠けを抑制することができる。そして、中央改質層に沿って半導体基板を分割することにより、半導体装置を製造することができる。
【0007】
なお、中央改質層を形成する工程、外周改質層を形成する工程、及び内部改質層を中央領域内に形成する工程は、どのような順序で実行してもよい。
【0008】
本明細書が開示する加工装置は、レーザ照射装置と、検出装置と、制御装置と、を備える。前記制御装置が、前記検出装置によって、半導体基板の表面において、複数の素子領域と、複数の前記素子領域が存在する中央領域の周囲の外周領域を特定する工程と、レーザ照射装置によって前記半導体基板にレーザを照射することにより、前記半導体基板の前記表面から前記半導体基板の厚み方向に伸びるとともに複数の前記素子領域の界面に沿って伸びる中央改質層を形成する工程と、前記レーザ照射装置によって前記半導体基板にレーザを照射することにより、前記半導体基板の前記表面から前記半導体基板の前記厚み方向に伸びるとともに前記外周領域を前記素子領域よりも面積が小さい複数の微小領域に区画するように前記半導体基板の縁部まで伸びる外周改質層を形成する工程と、前記レーザ照射装置によって前記半導体基板にレーザを照射することにより、前記半導体基板の内部で前記半導体基板の前記表面に沿って伸びる内部改質層を前記中央領域内に形成する工程と、を実行する。
【0009】
この加工装置は、各素子領域の界面に沿って伸びる中央改質層に加えて、外周領域を複数の微小領域に区画する外周改質層を形成する。外周改質層は、半導体基板の縁部まで伸びるように形成される。すなわち、半導体基板の縁部には、素子領域よりも面積が小さい複数の微小領域が形成される。このため、例えば、内部改質層に沿って半導体基板を分割する際には、半導体基板の縁部に加わる応力が、細分化された複数の微小領域それぞれの表面積に応じた大きさとなる。すなわち、半導体基板の縁部に加わる応力が分散する。したがって、この加工装置では、半導体基板の加工後に続く工程において、半導体基板に生じる亀裂や欠けを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】半導体基板の平面図。
図2図1のII-II線における断面図。
図3】加工装置の構成を示すブロック図。
図4】実施例1の基板搬入工程の説明図。
図5】実施例1の中央改質層形成工程の説明図。
図6】実施例1の外周改質層形成工程の説明図。
図7】実施例1の外周改質層形成工程の説明図。
図8】実施例1の内部改質層形成工程の説明図。
図9】実施例1の基板分割工程の説明図。
図10】実施例1の基板分割工程の説明図。
図11】実施例1の基板分割工程の説明図。
図12】実施例2の内部改質層形成工程の説明図。
図13】実施例2の基板分割工程の説明図。
図14】実施例1の基板分割工程の変形例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書が開示する技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0012】
本明細書が開示する一例の半導体装置の製造方法は、前記外周改質層を形成する前記工程では、前記外周領域の全域を前記微小領域に区画するように前記外周改質層を形成してもよい。
【0013】
この構成によれば、内部改質層に沿って半導体基板を分割する工程において、外周領域に加わる応力をより分散させることができる。
【0014】
本明細書が開示する一例の半導体装置の製造方法では、前記内部改質層を形成する前記工程では、前記中央領域と前記外周領域に前記内部改質層を形成してもよい。
【0015】
この構成によれば、半導体基板全体を内部改質層に沿って分割することができる。
【0016】
本明細書が開示する一例の半導体装置の製造方法では、前記中央改質層と前記内部改質層とが繋がり、前記外周改質層と前記内部改質層とが繋がらないように、前記中央改質層、前記外周改質層及び前記内部改質層を形成してもよい。
【0017】
この構成によれば、内部改質層に沿って半導体基板を分割する工程において、外周領域において、外周改質層が形成されていない側の半導体層に亀裂や割れが生じることが抑制される。
【0018】
本明細書が開示する一例の半導体装置の製造方法では、前記内部改質層を形成する前記工程では、前記外周領域に前記内部改質層を形成しなくてもよい。
【0019】
この構成によれば、内部改質層に沿って半導体基板を分割する工程において、外周領域を残存させたまま中央領域のみを分割することができる。
【0020】
本明細書が開示する一例の半導体基板の加工装置は、前記制御装置が、前記内部改質層に沿って前記半導体基板を分割する工程と、前記中央改質層に沿って前記半導体基板を分割する工程、をさらに実行してもよい。
【0021】
この構成によれば、半導体基板に生じる亀裂や欠けを抑制しながら半導体基板を個片化することができる。
【0022】
(実施例1)
図1及び図2は、加工対象の半導体基板12を示している。半導体基板12は、中央領域62と、外周領域64を有している。中央領域62は、複数の素子領域60を有している。中央領域62では、各素子領域60がマトリクス状に配置されている。図示していないが、各素子領域60内には、素子構造が形成されている。各素子領域60内に形成される素子構造は、MOSFET、IGBT、ダイオード等であってもよい。外周領域64は、中央領域62の周囲に位置している。外周領域64は、半導体基板12の中央領域62を除く領域であり、中央領域62の周囲から半導体基板12の外周端までの領域である。また、半導体基板12の外周縁の一部には、オリエンテーションフラット12fが設けられている。
【0023】
図2に示すように、半導体基板12は、母材基板14と素子半導体層16を有している。母材基板14及び素子半導体層16は、GaN(窒化ガリウム)により構成されている。母材基板14の厚みは特に限定されないが、例えば約350μmである。各素子領域60内の素子構造は、素子半導体層16に形成されている。素子半導体層16は、母材基板14上にエピタキシャル成長によって形成された半導体層である。素子半導体層16の厚みは特に限定されないが、例えば約100μmである。素子半導体層16内に、素子構造が形成されている。
【0024】
図3は、半導体基板12を加工する加工装置20の構成を示している。加工装置20は、半導体基板12の内部に改質層(後述)を形成するとともに、形成した改質層に沿って半導体基板12を分割する。加工装置20は、搬送装置22と、ステージ24と、レーザ光源26と、カメラ28と、分割装置29と、制御装置30を有している。
【0025】
搬送装置22は、加工装置20に対する半導体基板12の搬入を行う。搬送装置22は、加工装置20に搬入した半導体基板12をステージ24上に載置する。ステージ24は、半導体基板12を加工する際に、半導体基板12が載置される台である。レーザ光源26は、ステージ24の上方に配置されており、ステージ24上に載置された半導体基板12に対してレーザを照射する。カメラ28は、ステージ24の上方に配置されており、ステージ24上に載置された半導体基板12の画像を撮像する。
【0026】
分割装置29は、半導体基板を所定の領域に沿って分割する。分割装置29が実行する内容については、後述する。
【0027】
制御装置30は、搬送装置22、ステージ24、レーザ光源26、カメラ28、分割装置29に電気的に接続されている。制御装置30は、搬送装置22、ステージ24、レーザ光源26、カメラ28、分割装置29の動作を制御する。
【0028】
次に、実施例1の半導体装置の製造方法について説明する。まず、図1及び図2に示す半導体基板12を準備する。すなわち、中央領域62に複数の素子構造が形成された半導体基板12を準備する。
【0029】
(基板搬入工程)
基板搬入工程では、制御装置30は、搬送装置22によって、半導体基板12をステージ24上に搬送する。図4に示すように、ステージ24の上面には、例えば真空吸着を利用するウェハチャック32が装備されている。搬送装置22は、ウェハチャック32に対して、半導体基板12の表面12a(素子半導体層16側の表面)を載置することで、半導体基板12をステージ24に対して固定する。
【0030】
(領域特定工程)
次に、制御装置30は、領域特定工程を実施する。領域特定工程では、制御装置30は、カメラ28によって、ステージ24上の半導体基板12の画像を撮像し、半導体基板12の特徴点(例えば、オリエンテーションフラット12fを含む外形等)に基づいて、半導体基板12のステージ24に対する固定位置(すなわち、ステージ24上における位置及び角度)を算出する。例えば、制御装置30は、検出した特徴点を基準としたxy座標系を設定し、半導体基板12の固定位置を算出する。そして、制御装置30は、算出した固定位置に基づいて、中央領域62と外周領域64の位置を特定する。また、中央領域62の内部において、各素子領域60の位置を特定する。
【0031】
(中央改質層形成工程)
次に、制御装置30は、中央改質層形成工程を実施する。図5に示すように、中央改質層形成工程では、制御装置30は、レーザ光源26により、半導体基板12の裏面12b側からレーザLを照射する。ここでは、制御装置30は、各素子領域60の界面に沿って焦点Sが移動するようにレーザLを走査するとともに、半導体基板12の表面12aから半導体基板12の厚み方向に沿って焦点Sが移動するようにレーザLを走査する。焦点Sの位置では、半導体基板12が加熱されて分解される。これにより、焦点Sが走査される範囲に結晶性が低下した中央改質層72が形成される。すなわち、中央領域62において、半導体基板12の表面12aにおいて各素子領域60を区画するとともに、各素子領域60の界面に沿って表面12aから半導体基板12の厚み方向に伸びる中央改質層72が形成される。中央改質層72の厚み方向の長さ(深さ)は特に限定されないが、本実施例では、約70μmの深さの中央改質層72が形成される。なお、中央改質層72は、例えば、ガリウムの析出層等によって構成されている。中央改質層72の強度は、半導体基板12の元の材料(すなわち、GaN)の強度よりも低い。
【0032】
(外周改質層形成工程)
次に、制御装置30は、外周改質層形成工程を実施する。図6に示すように、外周改質層形成工程では、中央改質層形成工程と同様に、制御装置30は、レーザ光源26により、半導体基板12の裏面12b側からレーザLを照射する。ここでは、制御装置30は、半導体基板12の表面12aにおいて、外周領域64を複数の微小領域73に区画するように焦点Sを走査するとともに、半導体基板12の表面12aから半導体基板12の厚み方向に沿って焦点Sが移動するようにレーザLを走査する。ここでは、図7に示すように、制御装置30は、x方向及びy方向にレーザLを走査することで、半導体基板12の表面12aにおいて、格子状に区画された複数の微小領域73を形成する。各方向における走査間隔は特に限定されないが、本実施例では、当該走査間隔は、約100μmである。制御装置30は、各微小領域73の面積が、各素子領域60の面積よりも小さくなるようにレーザLを走査する。これにより、焦点Sが走査される範囲に結晶性が低下した外周改質層74が形成される。すなわち、半導体基板12の表面12aにおいて外周領域64を複数の微小領域73に区画するとともに、表面12aから半導体基板12の厚み方向に伸びる外周改質層74が形成される。図7に示すように、外周改質層74は、外周領域64の縁部(すなわち、半導体基板の外周端)まで伸びるとともに、半導体基板12の表面12aにおいて、外周領域64の全域を微小領域73に区画するように形成される。外周改質層74の厚み方向の長さ(深さ)は特に限定されないが、本実施例では、約60μmの深さの外周改質層74が形成される。すなわち、外周改質層74の深さは、中央改質層72の深さよりも浅い。外周改質層74の強度は、半導体基板12の元の材料(すなわち、GaN)の強度よりも低い。
【0033】
(内部改質層形成工程)
次に、制御装置30は、内部改質層形成工程を実施する。図8に示すように、内部改質層形成工程では、中央改質層形成工程等と同様に、制御装置30は、レーザ光源26により、半導体基板12の裏面12b側からレーザLを照射する。ここでは、制御装置30は、半導体基板12の内部で焦点Sが形成されるように、レーザLを走査する。そして、制御装置30は、焦点Sを半導体基板12の表面12aに沿う方向に移動させることで、半導体基板12の内部に、その表面12aに沿って広がる内部改質層76を形成する。より詳細には、制御装置30は、素子半導体層16の内部に内部改質層76を形成する。ここでは、制御装置30は、中央領域62及び外周領域64の双方に広がる内部改質層76を形成する。半導体基板12の厚み方向における内部改質層76の位置は特に限定されないが、本実施例では、半導体基板12の表面12aから約70μmの深さ位置に内部改質層76が形成される。このため、形成される内部改質層76は、中央改質層72と繋がる一方、外周改質層74とは繋がらない。内部改質層76の強度は、半導体基板12の元の材料(すなわち、GaN)の強度よりも低い。
【0034】
(基板分割工程)
中央改質層72、外周改質層74及び内部改質層76を形成すると、制御装置30は、基板分割工程を実施する。基板分割工程では、半導体基板12を内部改質層76に沿って分割する。具体的には、図9に示すように、制御装置30は、分割装置29によって、ウェハチャック34を装備した支持板36を半導体基板12の裏面12bに載置する。これにより、半導体基板12の表面12a及び裏面12bがウェハチャック32及び34により固定された状態となる。そして、支持板36に対してステージ24から離れる方向(矢印80により示される方向)に力を加える。上述したように、内部改質層76の強度は、GaNの強度よりも低い。したがって、支持板36に対してステージ24から離れる方向に力を加えると、半導体基板12に対してその厚み方向に引張応力が印加され、図10に示すように、半導体基板12が内部改質層76に沿って半導体層112a及び半導体層112bに分割される。このとき、半導体基板12の外周端を起点として、内部改質層76に沿って半導体層112bが半導体層112aから剥離するように半導体基板12の分割が進行する。このため、半導体基板12を内部改質層76に沿って分割する際には、半導体基板12の外周端(すなわち、外周領域64の縁部)に局所的に大きな応力が印加される。しかしながら、本実施例では、外周領域64の縁部には、その表面を複数の微小領域73に区画する外周改質層74が形成されている。このため、外周領域64の縁部に加わる応力が複数の微小領域73それぞれの表面積に応じた大きさに分散され、半導体基板12の外周端において、亀裂や欠けが生じることが抑制される。半導体層112aには、素子構造が形成された複数の素子領域60が含まれる。
【0035】
次に、制御装置30は、半導体層112aに対して表面研磨等の処理を行った後、半導体層112aを中央改質層72に沿って分割する。ここでは、制御装置30は、分割装置29によって、図11に示すように、ウェハチャック32に対して半導体層112aの表面に沿う方向(矢印82により示される方向)に力を加える。これにより、半導体層112aには、その平面方向に引張応力が印加される。上述したように、中央改質層72の強度は、GaNの強度よりも低い。したがって、矢印82に示される方向に力を加えることで、半導体層112aが、中央改質層72に沿って分割される。これにより、素子領域60が互いから分割され、複数の半導体装置100を得ることができる。なお、半導体層112aには、外周改質層74が形成されているので、外周改質層74に沿って半導体層112aが分割され得る。
【0036】
なお、半導体層112bには、母材基板14と、素子半導体層16の一部が残存した層とが含まれる。したがって、残存した素子半導体層16を表面研磨等により除去することにより、母材基板14を再利用することができる。
【0037】
以上に説明したように、本実施例では、各素子領域60の界面に沿って伸びる中央改質層72に加えて、外周領域64を複数の微小領域73に区画する外周改質層74を形成する。外周改質層74は、外周領域64の全域に(すなわち、半導体基板12の縁部まで伸びるように)形成される。すなわち、半導体基板12の縁部には、素子領域60よりも面積が小さい複数の微小領域73が形成される。このため、内部改質層76に沿って半導体基板を分割する工程では、半導体基板12の縁部に加わる応力が、細分化された複数の微小領域73それぞれの表面積に応じた大きさとなる。すなわち、内部改質層76に沿って半導体基板12を分割する際に、半導体基板12の縁部に加わる応力が分散する。したがって、本実施例の製造方法では、半導体基板12を内部改質層76に沿って分割する際に、半導体基板12に生じる亀裂や欠けを抑制することができる。
【0038】
また、本実施例では、外周改質層74の深さが中央改質層72の深さよりも浅く、外周改質層74が内部改質層76と繋がらないように形成される。すなわち、外周改質層74の深さが、半導体基板12の分割面(内部改質層76に沿う面)を超えない深さに設定されている。すなわち、半導体基板12の分割後の半導体層112bには、外周改質層74が残存しない。このため、半導体基板12を内部改質層76に沿って分割する際に、半導体層112b側に、外周改質層74に起因する亀裂や割れが生じることが抑制される。
【0039】
(実施例2)
実施例2の製造方法では、内部改質層形成工程が実施例1の製造方法とは異なる。実施例2では、図12に示すように、制御装置30は、中央領域62に内部改質層176を形成し、外周領域64に内部改質層176を形成しない。
【0040】
その後、実施例1と同様に、基板分割工程を実施する。制御装置30は、分割装置29によって、ウェハチャック34を装備した支持板36を半導体基板12の裏面12bに載置する。そして、支持板36に対してステージ24から離れる方向(矢印180により示される方向)に力を加える。実施例2では、外周領域64には内部改質層176が形成されていない。このため、外周領域64では、半導体基板12がその表面に沿う方向に分割され難い。したがって、実施例2では、中央領域62において内部改質層176に沿って半導体基板12が分割されるとともに、中央領域62と外周領域64の境界においては、内部改質層176の端部を起点として、中央改質層72に沿って半導体基板12が分割される。すなわち、実施例2では、図13に示すように、内部改質層176に沿って半導体基板12を分割すると、素子構造が形成された部分112cのみが半導体基板12から分離されてステージ24上に残存する。
【0041】
その後、実施例1と同様に、ウェハチャック32に対して平面方向に力を加えることで、複数の半導体装置を得ることができる。
【0042】
実施例2の製造方法では、内部改質層176に沿って半導体基板12を分割する工程において、外周改質層74が形成された領域が母材基板14側に残存する。この領域には、外周改質層74が密に形成されているため、当該領域は、研削や研磨により容易に除去することができる。
【0043】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0044】
上述した実施例において、基板搬送工程では、中央領域62の表面のみにウェハチャック32が位置するように半導体基板12をステージ24上に載置してもよい。このような構成では、図14に示すように、実施例1においても、実施例2と同様に、素子構造が形成された領域のみを半導体基板12から分離させることができる。また、実施例2では、より容易に素子構造が形成された領域のみを半導体基板12から分離させることができる。
【0045】
また、上述した実施例において、外周改質層74は、外周領域64の全域に形成されなくてもよい。半導体基板12を内部改質層76に沿って分割する際には、半導体基板12の縁部に最も大きな応力が加わる。したがって、外周改質層74は、少なくとも外周領域64の外周縁を含む範囲に形成されればよい。
【0046】
また、上述した実施例において、中央改質層72と内部改質層76、176は繋がっていなくてもよいし、外周改質層74と内部改質層76は繋がっていてもよい。すなわち、中央改質層72及び外周改質層74の深さは、製造する半導体装置の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0047】
また、上述した実施例において、分割装置29は、制御装置30によって制御されなくてもよい。すなわち、加工装置20は、分割装置29を有していなくてもよく、分割装置29の機能を有する別個の装置を準備してもよい。
【0048】
また、上述した実施例では、半導体基板12の表面12aにおいて、微小領域73が矩形状を有していたが、微小領域73の形状は特に限定されず、例えば、三角形状や六角形状等、他の多角形状であってもよい。
【0049】
(参考例)
上述した実施例では、レーザLを照射することにより中央改質層72を形成したが、中央改質層72に代えて、ダイシングブレードにより溝部を形成してもよい。
【0050】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0051】
12:半導体基板
20:加工装置
22:搬送装置
24:ステージ
26:レーザ光源
28:カメラ
29:分割装置
30:制御装置
60:素子領域
62:中央領域
64:外周領域
72:中央改質層
73:微小領域
74:外周改質層
76:内部改質層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14