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特開2023-122413作業補助システム、作業補助方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122413
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】作業補助システム、作業補助方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20230825BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026095
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 康平
(72)【発明者】
【氏名】高見 文宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】詳細な作業支援を行うことができる作業補助システムを提供すること。
【解決手段】作業補助システム100、100aは、第1記憶部13と、第2記憶部15と、作業測定部2と、形状推定部16と、差分計算部17と、提示部3と、を備える。第1記憶部13は、研磨作業の開始時における作業対象物Y1の加工面Y11の表面形状である初期表面形状を記憶する。第2記憶部15は、研磨作業の終了時における作業対象物Y1の加工面Y11の目標の表面形状である目標表面形状を記憶する。作業測定部2は、加工面Y11を移動する作業子X2の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも1つの情報を含む作業情報D1を測定する。差分計算部17は、作業表面形状と目標表面形状との差分を計算する。提示部3は、差分に基づいて、研磨作業を支援する支援情報D2を作業者X1に提示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が作業子を押し付けて作業対象物を研磨する研磨作業を補助する作業補助システムであって、
前記研磨作業の開始時における前記作業対象物の加工面の表面形状である初期表面形状を記憶する第1記憶部と、
前記研磨作業の終了時における前記作業対象物の前記加工面の目標の表面形状である目標表面形状を記憶する第2記憶部と、
前記加工面を移動する前記作業子の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも1つの情報を含む作業情報を測定する作業測定部と、
前記初期表面形状及び前記作業情報に基づいて、現在の前記作業対象物の前記加工面の表面形状である作業表面形状を推定する形状推定部と、
前記作業表面形状と前記目標表面形状との差分を計算する差分計算部と、
前記差分に基づいて、前記研磨作業を支援する支援情報を前記作業者に提示する提示部と、を備える、
作業補助システム。
【請求項2】
前記提示部は、前記支援情報として、前記差分を色で表すヒートマップを提示する、
請求項1に記載の作業補助システム。
【請求項3】
前記提示部は、前記作業対象物の前記加工面のうち前記差分が予め定められた閾値以上である所定範囲において、前記研磨作業を行うことを促す指示を提示する、
請求項1又は2に記載の作業補助システム。
【請求項4】
前記研磨作業の開始時における前記作業対象物の前記加工面である初期表面の粗さを粗さ測定量として測定する粗さ測定部を更に備え、
前記初期表面形状は、前記粗さ測定量によって表される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の作業補助システム。
【請求項5】
前記粗さ測定部は、前記初期表面の粗さを二次元的に測定し、
前記粗さ測定量は、最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和であるPV値、及び、算術平均粗さであるRa値の少なくとも一方である、
請求項4に記載の作業補助システム。
【請求項6】
前記粗さ測定部は、前記初期表面の粗さを三次元的に測定し、
前記粗さ測定量は、前記作業対象物の前記加工面の最も高い点から最も低い点までの距離であるSz値、算術平均高さであるSa値、二乗平均平方根高さであるSq値、及び、前記初期表面形状のアスペクト比であるStr値の少なくとも1つである、
請求項4に記載の作業補助システム。
【請求項7】
前記初期表面形状に基づいて前記目標表面形状を算出する目標算出部を更に備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の作業補助システム。
【請求項8】
前記初期表面形状に基づいて前記目標表面形状を算出する目標算出部を更に備え、
前記粗さ測定量は、前記PV値であり、
前記目標算出部は、前記PV値に基づいて前記目標表面形状を算出する、
請求項5に記載の作業補助システム。
【請求項9】
前記目標表面形状は、前記PV値の所定数倍以上の研磨量を前記初期表面形状から研磨した前記表面形状である、
請求項8に記載の作業補助システム。
【請求項10】
前記初期表面形状に基づいて前記目標表面形状を算出する目標算出部を更に備え、
前記粗さ測定量は、前記Str値であり、
前記目標算出部は、前記Str値に基づいて前記目標表面形状を算出する、
請求項6に記載の作業補助システム。
【請求項11】
前記目標表面形状は、前記Str値が所定値以上の前記表面形状である、
請求項10に記載の作業補助システム。
【請求項12】
前記目標表面形状が入力される目標入力部を更に備える
請求項1~6のいずれか一項に記載の作業補助システム。
【請求項13】
前記作業情報は、前記作業子の前記圧力、前記位置、前記速度、前記加速度、及び前記振動のうち少なくとも2つの情報を含み、
前記形状推定部は、前記作業表面形状を推定するときに、前記研磨作業に用いられるスラリーの種類に応じて、前記少なくとも2つの情報のそれぞれの影響度合いを変化させる、
請求項1~12のいずれか一項に記載の作業補助システム。
【請求項14】
作業者が作業子を押し付けて作業対象物を研磨する研磨作業を補助する作業補助方法であって、
前記研磨作業の開始時における前記作業対象物の加工面の表面形状である初期表面形状を記憶する第1記憶ステップと、
前記研磨作業の終了時における前記作業対象物の前記加工面の目標の表面形状である目標表面形状を記憶する第2記憶ステップと、
前記加工面を移動する前記作業子の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも1つの情報を含む作業情報を測定する作業測定ステップと、
前記初期表面形状及び前記作業情報に基づいて、現在の前記作業対象物の前記加工面の表面形状である作業表面形状を推定する形状推定ステップと、
前記作業表面形状と前記目標表面形状との差分を計算する差分計算ステップと、
前記差分に基づいて、前記研磨作業を支援する支援情報を前記作業者に提示する提示ステップと、を含む、
作業補助方法。
【請求項15】
コンピュータシステムに、
請求項14に記載の作業補助方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、作業補助システム、作業補助方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、研磨作業を補助する作業補助システム、作業補助方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業者が作業子を繰り返し移動させる反復動作を含む作業に用いられ、取得部を備える作業管理システムが開示されている。取得部は、反復動作を行う作業期間において、計測器の計測結果を取得データとして取得する。計測器は、作業子の移動に関する物理量を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-128638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業管理システム(作業補助システム)は、取得データ(作業情報)を作業支援に利用している。すなわち、作業子の移動に関する物理量を作業支援として作業者に提示するため、大まかな内容の作業支援になってしまうという問題があった。言い換えると、詳細な作業支援を行うことができないという問題があった。
【0005】
本開示の目的とするところは、詳細な作業支援を行うことができる作業補助システム、作業補助方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る作業補助システムは、作業者が作業子を押し付けて作業対象物を研磨する研磨作業を補助する。前記作業補助システムは、第1記憶部と、第2記憶部と、作業測定部と、形状推定部と、差分計算部と、提示部と、を備える。前記第1記憶部は、前記研磨作業の開始時における前記作業対象物の加工面の表面形状である初期表面形状を記憶する。前記第2記憶部は、前記研磨作業の終了時における前記作業対象物の前記加工面の目標の表面形状である目標表面形状を記憶する。前記作業測定部は、前記加工面を移動する前記作業子の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも1つの情報を含む作業情報を測定する。前記形状推定部は、前記初期表面形状及び前記作業情報に基づいて、現在の前記作業対象物の前記加工面の表面形状である作業表面形状を推定する。前記差分計算部は、前記作業表面形状と前記目標表面形状との差分を計算する。前記提示部は、前記差分に基づいて、前記研磨作業を支援する支援情報を前記作業者に提示する。
【0007】
本開示の一態様に係る作業補助方法は、作業者が作業子を押し付けて作業対象物を研磨する研磨作業を補助する。前記作業補助方法は、第1記憶ステップと、第2記憶ステップと、作業測定ステップと、形状推定ステップと、差分計算ステップと、提示ステップと、を含む。前記第1記憶ステップは、前記研磨作業の開始時における前記作業対象物の加工面の表面形状である初期表面形状を記憶する。前記第2記憶ステップは、研磨作業の終了時における前記作業対象物の前記加工面の目標の表面形状である目標表面形状を記憶する。前記作業測定ステップは、前記加工面を移動する前記作業子の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも1つの情報を含む作業情報を測定する。前記形状推定ステップは、前記初期表面形状及び前記作業情報に基づいて、現在の前記作業対象物の前記加工面の表面形状である作業表面形状を推定する。前記差分計算ステップは、前記作業表面形状と前記目標表面形状との差分を計算する。前記提示ステップは、前記差分に基づいて、前記研磨作業を支援する支援情報を前記作業者に提示する。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、上記の作業補助方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、詳細な作業支援を行うことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1の作業補助システムの全体構成を示す概略説明図である。
図2図2Aは、同上の作業補助システムが用いられる研磨作業の様子を示す側面図である。図2Bは、同上の作業補助システムが用いられる研磨作業の様子を示す平面図である。
図3図3Aは、同上の作業補助システムの第1作業測定部の使用例を示す斜視図である。図3Bは、同上の作業補助システムの第2作業測定部の使用例を示す斜視図である。
図4図4は、同上の作業補助システムを用いた場合のヒートマップの一例を示す概略図である。
図5図5は、同上の作業補助システムにおいて提示部が作業者に対して支援情報の提示を行う様子を示す概略説明図である。
図6図6は、実施形態1の作業補助方法を示すフローチャートである。
図7図7は、実施形態2の作業補助システムの全体構成を示す概略説明図である。
図8図8は、実施形態2の作業補助方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
(1-1)概要
以下、実施形態1に係る作業補助システム100の概要について、図1図2Bを参照して説明する。
【0012】
作業補助システム100は、図1図2Bに示すように、作業者X1が作業子X2を押し付けて作業対象物Y1を研磨する研磨作業を補助する。本開示でいう「研磨」は、物体の表面を滑らかにするために研ぎ磨くことを意味し、図2A及び図2Bに示すように、作業対象物Y1の表面である加工面Y11を、パッド等の作業子X2で繰り返し擦ることによって表面部分を削り、平滑にしていく作業である。
【0013】
作業補助システム100は、図1に示すように、第1記憶部13と、第2記憶部15と、作業測定部2と、形状推定部16と、差分計算部17と、提示部3と、を備える。
【0014】
第1記憶部13は、研磨作業の開始時における作業対象物Y1の加工面Y11の表面形状である初期表面形状を記憶する。第2記憶部15は、研磨作業の終了時における作業対象物Y1の加工面Y11の目標の表面形状である目標表面形状を記憶する。作業測定部2は、加工面Y11を移動する作業子X2の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも1つの情報を含む作業情報D1を測定する。形状推定部16は、初期表面形状及び作業情報D1に基づいて、現在の作業対象物Y1の加工面Y11の表面形状である作業表面形状を推定する。差分計算部17は、作業表面形状と目標表面形状との差分を計算する。提示部3は、差分計算部17が計算した差分に基づいて、研磨作業を支援する支援情報D2を作業者X1に提示する。
【0015】
以上から、実施形態1の作業補助システム100では、作業者X1は、作業表面形状と目標表面形状との差分に基づいた支援情報D2に従って、研磨作業を行うことができる。すなわち、実施形態1の作業補助システム100は、詳細な作業支援を行うことができるという利点がある。
【0016】
(1-2)詳細な構成
(1-2-1)作業補助システム
(全体の構成)
以下に、実施形態1の作業補助システム100の詳細な構成について、図1図6を参照して説明する。
【0017】
作業補助システム100は、図1に示すように、作業管理システム10と、作業測定部2と、提示部3と、制御装置4と、を備える。
【0018】
作業補助システム100は、作業者X1が作業子X2を押し付けて作業対象物Y1を研磨する研磨作業を補助する。
【0019】
また、本開示でいう「作業対象物」は、作業者X1による研磨作業が施される物体(有体物)である。すなわち、図2Aに示すように、研磨作業によって作業対象物Y1の加工面Y11が平滑化されることになる。実施形態1では一例として、作業対象物Y1は、樹脂成型に用いられる金型であることと仮定する。より詳細には、例えば、樹脂ミラー又は樹脂レンズ等の光学部品の成型用の金型が、作業対象物Y1であることとする。
【0020】
さらに、図2Aに示すように、金型である作業対象物Y1は、金型基材Y12と、めっき層Y13と、を有している。金型基材Y12は、金型の基材として金型の形状を決定する。めっき層Y13は、例えば、NiP等のめっき層であって、金型基材Y12の表面を覆うように形成されている。このような作業対象物Y1においては、めっき層Y13について研磨が施されることにより、作業対象物Y1の加工面Y11が研磨されることになる。
【0021】
また、本開示でいう「作業者」は、研磨作業を行う者、つまり研磨作業の実行主体である。すなわち、研磨作業を指示する者と、指示を受けて実際に研磨作業を行う者とが存在する場合には、実際に研磨作業を行う者が作業者X1である。実施形態1では一例として、作業が行われる工場の従業員が作業者X1であることと仮定する。
【0022】
また、本開示でいう「作業子」は、図2Aに示すように、作業者X1が作業対象物Y1の加工面Y11を繰り返し移動させる物体である。実施形態1では一例として、研磨に用いられるパットである。
【0023】
実施形態1では、図2A及び図2Bに示すように、作業者X1は、作業子X2としてのパッドを操作し、作業対象物Y1としての金型の加工面Y11を、作業子X2で繰り返し擦ることによって、作業対象物Y1の研磨作業を行う場合を想定する。このとき、作業者X1は、手の指先で作業子X2としてのパッドを、適当な力で作業対象物Y1に押し付けた状態で、作業対象物Y1の表面上を滑らせるように、作業子X2を繰り返し移動させることで、作業対象物Y1の研磨を行う。
【0024】
実施形態1では、遊離砥粒方式の研磨を実現するべく、図2Aに示すように、作業対象物Y1の加工面Y11と、作業子X2としてのパッドとの間には、スラリーY2を介在させた状態で、研磨作業が行われる。スラリーY2は、砥粒を混ぜ込んだ液体であって、このようなスラリーY2を用いることで、遊離砥粒方式の研磨が可能となる。つまり、作業対象物Y1との間にスラリーY2が介在した状態で、作業子X2が移動させられることによって、スラリーY2中の砥粒が作業対象物Y1の加工面Y11上を潤滑に移動しつつ、作業対象物Y1の遊離砥粒方式の研磨を実現する。つまり、スラリーY2は、研磨作業に関連する作業関連材であって、より詳細には、作業子X2による研磨作業を補助する補助材料として機能する。
【0025】
ところで、実施形態1では、上述したように、例えば、樹脂ミラー又は樹脂レンズ等の光学部品の成型用の金型が、作業対象物Y1である場合を想定している。このような金型においては、金型の表面の仕上がりが成型品(光学部品)の特性にも影響し得るため、その研磨作業は非常に繊細な作業となる。また、この種の金型においては、表面が様々な曲面(自由曲面)を含み、かつ個体ごとにその表面の形状が異なることも相まって、その研磨作業の自動化を図ることは困難である。例えば、研磨作業に際しての作業子X2の動きが単調過ぎると、作業子X2の動きの規則性に応じて金型の表面に虹面が生じる等、金型の表面の仕上がりが劣化する可能性がある。つまり、この金型の研磨作業にあっては、作業対象物Y1の面形状等の様々な要素に応じて、作業子X2の微妙な操作の調整が必要であって、作業者X1の熟練度によって研磨作業の仕上がりにも差が生じ得る。そして、研磨作業の仕上がりが成型品の特性にも影響することを考えると、このような金型の研磨作業に関しては、作業者X1に、いわゆる熟練者のような比較的高いスキルが要求される。
【0026】
なお、「研磨」は、機械的な研磨だけでなく、例えば、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)等も含んでいる。化学的機械研磨は、砥粒自体が有する表面化学作用又はスラリーY2に含まれる化学成分の作用にて、化学的に作業対象物Y1の表面を溶融又は変質させ、砥粒による機械的な研磨を補助することで、相乗的に研磨の速度及び質を向上させる手法である。
【0027】
(制御装置)
制御装置4は、作業管理システム10での管理対象となる研磨作業が行われる施設に設置されている。実施形態1では一例として、制御装置4は、1以上のメモリ及び1以上のプロセッサを含むコンピュータシステム、例えば、パーソナルコンピュータを主構成とする。言い換えれば、コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、プロセッサが実行することにより、制御装置4の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0028】
制御装置4は、作業測定部2及び提示部3の各々と、通信可能に構成されている。さらに、制御装置4は、作業管理システム10とも通信可能に構成されている。本開示でいう「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワークNT1若しくは中継器等を介して間接的に、信号を授受できることを意味する。実施形態1では一例として、制御装置4は、作業管理システム10、作業測定部2、及び提示部3の各々との間で、双方向に通信可能である。これにより、作業管理システム10は、作業測定部2及び提示部3の各々とも、制御装置4を介して間接的に信号の授受が可能となる。つまり、制御装置4は、ゲートウェイとして機能する。
【0029】
(作業測定部)
作業測定部2は、加工面Y11を移動する作業子X2の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも1つの情報を含む作業情報D1を測定する機能を有している。すなわち、作業情報D1は、作業子X2の移動に関する物理量の情報である。実施形態1では、作業測定部2は、複数設けられている。複数の作業測定部2は、第1作業測定部21、第2作業測定部22、及び第3作業測定部23を含んでいる。本開示において、第1作業測定部21、第2作業測定部22、及び第3作業測定部23を特に区別しない場合には、第1作業測定部21、第2作業測定部22、及び第3作業測定部23の各々を「作業測定部2」ともいう。
【0030】
作業測定部群20は、第1作業測定部21、第2作業測定部22、及び第3作業測定部23によって構成されている。第1作業測定部21、第2作業測定部22、及び第3作業測定部23は、作業子X2の移動に関し、互いに異なる物理量を計測する、異なる種類の作業測定部2である。実施形態1では一例として、第1作業測定部21は、作業子X2の圧力、速度、及び加速度を測定する。第2作業測定部22は、作業子X2の振動を測定する。第3作業測定部23は、作業子X2の位置を測定する。すなわち、作業測定部群20は、互いに異なる作業子X2の物理量を測定する、複数種類の作業測定部2を含んでいる。
【0031】
実施形態1では一例として、第1作業測定部21は、図3Aに示すように、例えば、作業者X1の作業子X2(パッド)を操作する手の指先に装着される指サック型の作業測定部2であって、圧力センサ、速度センサ、及び加速度センサを含んでいる。第1作業測定部21は、例えば、作業者X1の指先と作業子X2との間に介在する歪みゲージ式又はピエゾ抵抗式等の圧力センサにより、作業者X1が作業子X2を押すことで作業子X2から作業対象物Y1に加わる圧力を計測する。すなわち、本開示でいう「作業子X2の圧力」とは、例えば、作業者X1が作業子X2を押すことで作業子X2から作業対象物Y1に加わる圧力、又は作業子X2が作業対象物Y1から受ける圧力(反力)等である。
【0032】
また、第1作業測定部21は、例えば、互いに直交する3軸の速度に対してそれぞれ感度を有する3軸の速度センサにより、作業者X1の指先にかかる速度から、複数のサンプリングタイミングの各々における作業子X2の速度を測定する。同様に、第1作業測定部21は、例えば、互いに直交する3軸の加速度に対してそれぞれ感度を有する3軸の加速度センサにより、作業者X1の指先にかかる加速度から、複数のサンプリングタイミングの各々における作業子X2の加速度を測定する。
【0033】
また、第2作業測定部22は、図3Bに示すように、例えば、作業者X1の作業子X2(パッド)を操作する手の指に装着される指輪型の作業測定部2であって、振動センサを含んでいる。第2作業測定部22は、例えば、圧電型の振動センサにより、作業者X1の指にかかる振動から、作業者X1が作業子X2を移動させることで作業子X2に加わる振動を測定する。本開示でいう「振動」は、例えば、作業者X1が作業子X2を移動させることで作業子X2に加わる振動、又は作業子X2が作業対象物Y1から受ける振動等である。
【0034】
このように、実施形態1では、少なくとも第1作業測定部21及び第2作業測定部22は、作業子X2の移動に関する物理量を、作業子X2を操作する作業者X1の指に装着されるセンサにて間接的に検知する。
【0035】
第3作業測定部23は、実施形態1では一例として、イメージセンサを含むカメラである。第3作業測定部23は、作業者X1が作業対象物Y1の研磨作業を行う作業スペースを撮像するように、作業スペースの上方の定位置に設置されている。この第3作業測定部23は、作業子X2が移動する作業対象物Y1の加工面Y11を上方から撮影することで、撮影された画像から、平面視における作業子X2の位置(二次元位置)を測定する。
【0036】
本開示でいう「画像」は、動画(動画像)及び静止画(静止画像)を含む。さらに、「動画」は、コマ撮り等により得られる複数の静止画にて構成される画像を含む。ここでは一例として、第3作業測定部23で得られる画像は、時間経過に伴って変化するフルカラーの画像(つまり動画)である。より詳細には、一例として、画像は、モーションJPEG(Motion JPEG)等の時系列に沿った複数の静止画にて構成される動画である。さらに、画像は、イメージセンサで生成されたデータそのものでなくてもよく、例えば、撮影された画像から一部を切り出す加工、ピント調整、明度調整又はコントラスト調整等の加工が施されていてもよい。
【0037】
実施形態1では一例として、作業測定部群20における各作業測定部2と制御装置4との間の通信は、Wi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。つまり、各作業測定部2は、上述したようなセンサに加えて、制御装置4との無線通信機能、及び電源回路等を有している。
【0038】
(提示部)
提示部3は、研磨作業を支援する支援情報D2を作業者に提示する。提示部3での提示の態様には、例えば、表示、音、印刷(プリントアウト)、情報端末への送信、非一時的記録媒体への記録(書き込み)等が含まれる。実施形態1では、提示部3は、複数設けられている。複数の提示部3は、第1提示部31、第2提示部32、及び第3提示部33を含んでいる。本開示において、第1提示部31、第2提示部32、及び第3提示部33を特に区別しない場合には、第1提示部31、第2提示部32、及び第3提示部33の各々を「提示部3」ともいう。
【0039】
第1提示部31、第2提示部32、及び第3提示部33は、互いに情報の提示の態様が異なる種類の提示部3である。実施形態1では一例として、第1提示部31は、据え置き型のモニタ(ディスプレイ)であって、表示により情報を提示する。第2提示部32は、眼鏡型のウェアラブル端末であって、拡張現実(AR:Augmented Reality)表示により情報を提示する。第3提示部33は、スピーカ又はヘッドホン等であって、音(音声を含む)により情報を提示する。これら複数の提示部3(第1提示部31、第2提示部32及び第3提示部33)は、提示部群30を構成する。つまり、提示部群30は、互いに異なる態様で情報を提示する、複数種類の提示部3を含んでいる。
【0040】
実施形態1では一例として、提示部群30における各提示部3と制御装置4との間の通信は、Wi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。つまり、提示部3の各々は、制御装置4との無線通信機能、及び電源回路等を有している。
【0041】
(作業管理システム)
作業管理システム10は、図1に示すように、取得部11と、粗さ測定部12と、第1記憶部13と、目標算出部14と、第2記憶部15と、形状推定部16と、差分計算部17と、補助処理部18と、通信部19と、有する。
【0042】
取得部11は、作業測定部2の測定結果を作業情報D1として取得する。実施形態1では、取得部11は、作業測定部群20に含まれる複数の作業測定部2の各々から、測定結果を作業情報D1として取得する。取得部11は、複数の作業測定部2から、制御装置4及びネットワークNT1を介して、作業情報D1を取得する。
【0043】
粗さ測定部12は、研磨作業の開始時における作業対象物Y1の加工面Y11である初期表面の粗さを粗さ測定量として測定する。
【0044】
実施形態1の粗さ測定部12は、初期表面の粗さを二次元的に測定する。本開示でいう「初期表面の粗さを二次元的に測定する」とは、触針の先端が初期表面を直接なぞることにより得た初期表面の断面形状に基づいて、初期表面の粗さを測定することである。すなわち、粗さ測定部12は、触針の先端が初期表面を直接なぞることにより、初期表面の粗さを測定する接触式である。一般的に、二次元的に測定された粗さ(二次元的な表面形状を表す粗さ)は、「線粗さ」と呼ばれる。すなわち、実施形態1の粗さ測定部12は、初期表面の線粗さを測定する。なお。粗さ測定部12は、レーザ等が初期表面をなぞることにより得た初期表面の断面形状に基づいて、初期表面の粗さを測定する非接触方式であってもよい。
【0045】
粗さ測定部12は、初期表面において最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和であるPV値を、粗さ測定量として測定する。言い換えれば、粗さ測定量は、初期表面において最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和であるPV値である。具体的には、粗さ測定量は、触針の先端が初期表面を直接なぞることにより得た初期表面の断面形状において、最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和であるPV値である。
【0046】
第1記憶部13は、研磨作業の開始時における作業対象物Y1の加工面Y11の表面形状である初期表面形状を記憶する。初期表面形状は、粗さ測定部12が測定した粗さ測定量によって表される。実施形態1では、初期表面形状は、粗さ測定部12が測定したPV値によって表される。第1記憶部13は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)のような書き換え可能な不揮発性メモリを含む。
【0047】
目標算出部14は、初期表面形状に基づいて目標表面形状を算出する。実施形態1の目標算出部14は、PV値に基づいて目標表面形状を算出する。より詳細には、目標算出部14は、PV値の所定数倍以上の研磨量を初期表面形状から研磨した表面形状を目標表面形状とする。言い換えれば、目標表面形状は、PV値の所定数倍以上の研磨量を初期表面形状から研磨した表面形状である。なお、目標表面形状は、PV値の10倍以上の研磨量を初期表面形状から研磨した表面形状であることが望ましい。この場合、研磨作業前に加工面Y11に存在した虹目が研磨作業によって除去されるという利点がある。
【0048】
第2記憶部15は、目標表面形状を記憶する。実施形態1では、第2記憶部15は、目標算出部14が算出した目標表面形状を記憶する。第2記憶部15は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)のような書き換え可能な不揮発性メモリを含む。なお、第2記憶部15は、第1記憶部13と一体になっていてもよい。
【0049】
形状推定部16は、初期表面形状及び作業情報D1に基づいて、現在の作業対象物Y1の加工面Y11の表面形状である作業表面形状を推定する。より詳細には、形状推定部16は、第1記憶部13が記憶している初期表面形状、及び取得部11が取得した作業情報D1に基づいて、作業表面形状を推定する。本開示でいう「作業表面形状」とは、研磨作業中の作業対象物Y1における加工面Y11の表面形状である。言い換えれば、「作業表面形状」とは、研磨作業が行われているときの作業対象物Y1における加工面Y11の表面形状である。また、研磨作業中において、スラリーY2が作業対象物Y1の加工面Y11上に存在しているため、粗さ測定部12が作業表面形状を測定することは難しい。
【0050】
一例として、形状推定部16は、プレストンの法則に従い、初期表面形状及び作業情報D1に基づいて、現在の作業対象物Y1の加工面Y11の形状である作業表面形状を推定する。より具体的には、形状推定部16は、プレストンの法則に従い作業情報D1から研磨作業の研磨量δを計算し、初期表面形状から研磨量δを差し引くことで作業表面形状を推定する。プレストンの法則では、研磨量δは、係数「k」を用いて下記の式1で表される。
【0051】
δ=k×p×v×t ・・・(式1)
ここで、変数「p」は「圧力」、つまり作業者X1が作業子X2を押すことで作業子X2から作業対象物Y1に加わる圧力である。変数「v」は「速度」、つまり作業者X1が作業子X2を移動させたときの作業対象物Y1に対する作業子X2の相対的な速度である。変数「t」は「存在時間」、つまり作業子X2が対象領域に存在している累積時間である。式1で表される研磨量δは、作業対象物Y1における対象領域の研磨量に相当する。
【0052】
具体的には、圧力「p」については、第1作業測定部21にて、作業子X2から作業対象物Y1に加わる圧力を測定している。また、速度「v」については、第1作業測定部21にて、作業子X2の速度を測定している。言い換えれば、第1作業測定部21から取得される作業情報D1が圧力「p」及び速度「v」に相当する。存在時間「t」については、第3作業測定部23にて、平面視における作業子X2の位置を計測しているので、第3作業測定部23の計測結果の時系列分析により存在時間「t」が求まる。言い換えれば、第3作業測定部23から取得される作業情報D1が存在時間「t」に相当する。
【0053】
差分計算部17は、作業表面形状と目標表面形状との差分を計算する。より詳細には、差分計算部17は、形状推定部16が推定した作業表面形状と、第2記憶部15に記憶されている目標表面形状との差分を計算する。すなわち、実施形態1の差分計算部17は、形状推定部16が推定した作業表面形状と、目標算出部14が算出した目標表面形状と、の差分を計算する。
【0054】
補助処理部18は、差分計算部17が計算した差分に基づいて、作業者X1に対して研磨作業を補助する補助処理を行う。補助処理は、作業者X1に対する情報の提示を含んでいる。すなわち、補助処理部18は、補助処理として、制御装置4を介して間接的に、提示部群30の提示部3を制御し、作業者X1に対する情報の提示を提示部3に実行させる。具体的には、補助処理部18は、提示部3が提示する情報である支援情報D2を、制御装置4を介して提示部3に送信する処理を、補助処理として実行する。
【0055】
実施形態1では、補助処理部18は、支援情報D2として、形状推定部16が推定した作業表面形状と、目標算出部14が算出した目標表面形状と、の差分を、提示部3に制御装置4を介して送信する。すなわち、提示部3は、支援情報D2として、形状推定部16が推定した作業表面形状と、目標算出部14が算出した目標表面形状と、の差分を作業者X1に提示する。
【0056】
より具体的には、補助処理部18は、支援情報D2として、作業表面形状と目標表面形状との差分を色で表すヒートマップ(図4参照)を第1提示部31及び第2提示部32に制御装置4を介して送信する。すなわち、第1提示部31及び第2提示部32は、支援情報D2として、作業表面形状と目標表面形状との差分を色で表すヒートマップを提示する。より詳細には、図5に示すように、第1提示部31は、据え置き型のモニタにヒートマップを表示し、第2提示部32は、拡張現実表示によりヒートマップを表示する。
【0057】
本開示のヒートマップとは、作業表面形状と目標表面形状との差分を色によって可視化したものである。言い換えれば、ヒートマップは、目標表面形状に達するまで、作業表面形状からあとどのぐらいの研磨量が必要かを色によって可視化したものである。実施形態1におけるヒートマップは、図4に示すように、作業表面形状と目標表面形状との差分を色のグラデーションによって可視化したものである。より詳細には、実施形態1のヒートマップでは、色が、赤と青との間で、作業表面形状と目標表面形状との差分に応じて段階的(又は連続的)に変化する。実施形態1のヒートマップでは、差分が大きいほど赤に近くなり、差分が小さいほど青に近くなる(図4では、差分が大きいほど黒に近くなり、差分が小さいほど白に近くなる)。すなわち、加工面Y11において、目標表面形状に到達するまでに必要な研磨量が多いほど、ヒートマップで表示される色が赤に近づく。一方、加工面Y11において、目標表面形状に到達するまでに必要な研磨量が少ないほど、ヒートマップで表示される色が青に近づく。
【0058】
また、補助処理部18は、作業表面形状と目標表面形状との差分が予め定められた閾値以上である所定範囲において研磨作業を行うことを促す指示を、第3提示部33に制御装置4を介して送信する。すなわち、第3提示部33は、作業対象物Y1の加工面Y11のうち作業表面形状と目標表面形状との差分が予め定められた閾値以上である所定範囲において、研磨作業を行うことを促す指示を提示する。より詳細には、第3提示部33は、作業表面形状と目標表面形状との差分が予め定められた閾値以上である所定範囲において、差分に応じて段階的(又は連続的)に研磨量を変化させる研磨作業を行うことを促す指示を音によって提示する。具体的には、第3提示部33は、所定範囲において、赤に近い色で示された箇所(図4では、黒色に近い色で示された箇所)ほど研磨量が大きく、青に近い色で示された箇所(図4では、白色に近い色で示された箇所)ほど研磨量が小さくなるように、研磨作業を行うことを促す指示を段階的(又は連続的)に音によって提示する。例えば、加工面Y11の中央における差分が予め定められた閾値以上であり、加工面Y11の中央がヒートマップにおいて赤に近い色で示されている場合、第3提示部33は、「加工面の中央を集中的に研磨してください」という音声を出力する。一方、加工面Y11の周縁部における差分が閾値以上であり、加工面Y11の周縁部がヒートマップにおいて青に近い色で示されている場合、第3提示部33は、「加工面の周縁部をあと少しだけ研磨してください」という音声を出力する。
【0059】
また、第3提示部33は、作業表面形状と目標表面形状との差分が予め定められた閾値よりも小さい所定範囲において、研磨作業を行いすぎないように注意する指示を音により提示する。例えば、加工面Y11の周縁部における差分が閾値よりも小さい場合、第3提示部33は、「加工面の周縁部を避けて研磨してください」という音声を出力する。
【0060】
閾値は、例えば、0よりもわずかに大きい値に設定される。この結果、第3提示部33は、作業表面形状が目標表面形状と一致する前に、研磨作業を行いすぎないように注意する指示を音により提示することができるという効果を奏する。そのため、作業補助システム100は、作業者X1が作業対象物Y1を研磨し過ぎてしまうことを防止することができるという利点がある。
【0061】
通信部19は、制御装置4と通信する機能を有している。実施形態1では、通信部19はネットワークNT1に接続され、ネットワークNT1を介して制御装置4と通信する。さらに、通信部19は、制御装置4を介して、作業測定部2又は提示部3とも通信可能である。
【0062】
作業管理システム10は、例えば、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するコンピュータシステム(実施形態1では一例としてクラウドコンピューティング)を主構成とする。コンピュータシステムは、1以上のメモリに記録されているプログラムを1以上のプロセッサで実行することにより、作業管理システム10としての機能を実現する。プログラムは、予めメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような非一時的記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。言い換えれば、上記プログラムは、1以上のプロセッサを、作業管理システム10として機能させるためのプログラムである。
【0063】
(1-2-2)作業補助方法
次に、実施形態1の作業補助方法について、図6のフローチャートを参照して説明する。実施形態1の作業補助方法は、作業者X1が作業子X2を押し付けて作業対象物Y1を研磨する研磨作業を補助する。作業補助方法は、図6に示すように、粗さ測定ステップST1と、第1記憶ステップST2と、目標算出ステップST3と、第2記憶ステップST4と、作業測定ステップST5と、形状推定ステップST6と、差分計算ステップST7と、提示ステップST8と、終了判断ステップST9と、を含む。
【0064】
まず、粗さ測定ステップST1では、粗さ測定部12が、研磨作業の開始時における作業対象物Y1の加工面Y11である初期表面の粗さを粗さ測定量として測定する。実施形態1の粗さ測定ステップST1では、粗さ測定部12の触針の先端が初期表面を直接なぞることにより得た初期表面の断面形状に基づいて、粗さ測定部12が初期表面の粗さを粗さ測定量として測定する。第1記憶ステップST2では、第1記憶部13が、粗さ測定部12が測定した粗さ測定量によって表される初期表面形状を記憶する。
【0065】
目標算出ステップST3では、目標算出部14が、初期表面形状に基づいて目標表面形状を算出する。第2記憶ステップST4では、第2記憶部15が、目標算出部14が算出した目標表面形状を記憶する。
【0066】
その後、作業者X1が研磨作業を開始する。作業測定ステップST5では、作業測定部2が、加工面Y11を移動する作業子X2の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも1つの情報を含む作業情報D1を測定する。
【0067】
形状推定ステップST6では、形状推定部16が、初期表面形状及び作業情報D1に基づいて、現在の作業対象物Y1の加工面Y11の形状である作業表面形状を推定する。具体的には、形状推定部16は、プレストンの法則に従い作業情報D1から研磨作業の研磨量δを計算し、初期表面形状から研磨量δを差し引くことで作業表面形状を推定する。
【0068】
差分計算ステップST7では、差分計算部17が、作業表面形状と目標表面形状との差分を計算する。
【0069】
提示ステップST8では、提示部3が、差分計算部17が計算した差分に基づいて、研磨作業を支援する支援情報D2を作業者に提示する。より具体的に、提示ステップST8について説明する。提示ステップST8では、補助処理部18が、支援情報D2として、差分計算部17が計算した差分を色のグラデーションで表すヒートマップ(図4参照)を第1提示部31及び第2提示部32に制御装置4を介して送信する。その後、第1提示部31及び第2提示部32は、支援情報D2として、ヒートマップを提示する。また、提示ステップST8では、補助処理部18が、作業対象物Y1の加工面Y11のうち作業表面形状と目標表面形状との差分が予め定められた閾値以上である所定範囲において研磨作業を行うことを促す指示を、第3提示部33に制御装置4を介して送信する。その後、第3提示部33は、作業対象物Y1の加工面Y11のうち作業表面形状と目標表面形状との差分が予め定められた閾値以上である所定範囲において、研磨作業を行うことを促す指示を提示する。
【0070】
終了判断ステップST9では、作業管理システム10が、作業者X1が研磨作業を終了したか否かを判断する。作業者X1が研磨作業を終了すると、作業管理システム10は、研磨作業が終了したと判断し(ST9:YES)、研磨作業の補助を終了する。一方、作業者X1が引き続き研磨作業を継続していると、作業管理システム10は研磨作業が終了していないと判断し(ST9:NO)、作業測定部2が作業情報D1を再び測定する(ST5)。すなわち、作業補助方法は作業測定ステップST5に戻る。
【0071】
図6のフローチャートは、実施形態1の作業補助方法の一例に過ぎず、その処理の順序が適宜入れ替わっていてもよいし、いずれかの処理について適宜省略されてもよい。
【0072】
(1-3)利点
作業補助システム100では、形状推定部16が、初期表面形状及び作業情報D1に基づいて作業表面形状を推定し、差分計算部17が、形状推定部16が推定した作業表面形状と、目標算出部14が算出した目標表面形状と、の差分を計算する。そして、提示部3は、支援情報D2として、作業表面形状と目標表面形状との差分を作業者X1に提示する。その結果、実施形態1の作業補助システム100では、形状推定部16が推定した作業表面形状と、目標算出部14が算出した目標表面形状と、の差分に基づいた支援情報D2を確認しながら、研磨作業を行うことができるという利点がある。すなわち、実施形態1の作業補助システム100は、形状推定部16が推定した作業表面形状と、目標算出部14が算出した目標表面形状と、の差分に基づいて、詳細な作業支援を行うことができるという利点がある。
【0073】
作業補助システム100は、研磨作業の開始時における作業対象物Y1の加工面Y11である初期表面の粗さを粗さ測定量として測定する粗さ測定部12を備える。その結果、作業者X1が研磨作業ごとに初期表面形状を入力する必要がなくなり、作業者X1の負担を軽減することができるという利点がある。また、作業者X1が誤った初期表面形状を入力してしまうことを防止することができるという利点もある。
【0074】
粗さ測定部12は、初期表面の粗さを二次元的に測定することによって、走査方向における初期表面の粗さの推移を確認することができるという利点がある。
【0075】
また、第1提示部31及び第2提示部32が、支援情報D2として、作業表面形状と目標表面形状との差分を色によって可視化したヒートマップを提示する。その結果、作業者X1が、研磨作業による加工面Y11の表面形状の仕上がりを目標表面形状に容易に近づけることができるという利点がある。
【0076】
同様に、第3提示部33が、作業対象物Y1の加工面Y11のうち作業表面形状と目標表面形状との差分が予め定められた閾値以上である所定範囲において、研磨作業を行うことを促す指示を音によって提示する。その結果、作業者X1が、研磨作業による加工面Y11の表面形状の仕上がりを目標表面形状に容易に近づけることができるという利点がある。
【0077】
また、第2提示部32が、拡張現実表示によりヒートマップを表示することによって、作業者X1は、作業対象物Y1から目線を離すことなく、ヒートマップを確認できるという利点がある。
【0078】
また、第3提示部33が、研磨作業を行うことを促す指示を音によって提示することによって、作業者X1は、作業対象物Y1から目線を離すことなく、指示を確認できるという利点がある。
【0079】
また、作業補助システム100が、初期表面形状に基づいて目標表面形状を算出する目標算出部14を備えることによって、作業者X1が研磨作業ごとに目標表面形状を入力する必要がなくなり、作業者X1の負担を軽減することができるという利点がある。また、作業者X1が誤った目標表面形状を入力してしまうことを防止することができるという利点もある。
【0080】
(1-4)変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0081】
実施形態1では、1人の作業者X1の研磨作業を補助対象として作業補助システム100が適用されている。しかし、複数人の作業者X1の研磨作業を補助対象として作業補助システム100が適用されていてもよい。すなわち、作業補助システム100は、複数人の作業者X1のそれぞれが行う複数の研磨作業を補助対象としてもよい。複数人の作業者X1の研磨作業を補助対象とする場合には、作業測定部群20及び提示部群30はそれぞれ複数設けられる。
【0082】
同様に、制御装置4は、作業補助システム100での補助対象となる研磨作業が行われる施設ごとに設置されるため、作業補助システム100が複数の施設で行われる研磨作業を補助対象とする場合には、制御装置4も複数設けられる。
【0083】
また、実施形態1では、作業測定部2は複数設けられているが、作業測定部2は少なくとも1つ設けられていればよい。すなわち、作業補助システム100は、第1作業測定部21、第2作業測定部22、及び第3作業測定部23の少なくとも1つを備えていればよい。
【0084】
同様に、実施形態1では、提示部3は複数設けられているが、提示部3は少なくとも1つ設けられていればよい。すなわち、作業補助システム100は、第1提示部31、第2提示部32、及び第3提示部33の少なくとも1つを備えていればよい。
【0085】
実施形態1の粗さ測定量は、最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和であるPV値であるが、算術平均粗さであるRa値であってもよい。すなわち、粗さ測定量は、最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和であるPV値、及び、算術平均粗さであるRa値の少なくとも一方であればよい。本開示でいう「算術平均高さ」とは、加工面Y11の平均面に対する、加工面Y11上の各点における高低差の絶対値を平均した値である。
【0086】
実施形態1の作業情報D1は、作業子X2の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも1つの情報を含む。すなわち、作業情報D1は、作業子X2の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも2つの情報を含んでいてもよい。この場合、形状推定部16は、作業表面形状を推定するときに、研磨作業に用いられるスラリーY2の種類に応じて、少なくとも2つの情報のそれぞれの影響度合いを変化させてもよい。
【0087】
この場合の利点について説明する。一般的に、スラリーY2に含まれる研粒の形状又は材質によって、作業子X2の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のそれぞれが研磨作業に与える影響度度合いが異なっている。そのため、形状推定部16が、スラリーY2の種類に応じて、作業情報D1に含まれる少なくとも2つの情報のそれぞれの影響度合いを変化させることによって、スラリーY2の種類ごとの研磨作業への影響度度合いの差分を考慮して、作業表面形状を正確に推定することができるという利点がある。
【0088】
例えば、形状推定部16は、プレストンの法則を応用した下記の式2を用いて作業情報D1から研磨作業の研磨量δを計算し、初期表面形状から研磨量δを差し引くことで作業表面形状を推定してもよい。
【0089】
δ=k×p×v×t ・・・(式1)
ここで、変数「m」は、「圧力」を示す変数「p」のべき指数である。変数「m」が大きい場合、変数「p」が研磨量δへ与える影響度合いが大きくなる。一方、変数「m」が小さい場合、変数「p」が研磨量δへ与える影響度合いが小さくなる。すなわち、作業子X2の圧力が大きいほど研磨作業の研磨速度が速くなるスラリーY2が研磨作業で使用される場合、形状推定部16は変数「m」を大きく設定する。一方、作業子X2の圧力が大きくなったとしても研磨作業の研磨速度があまり変化しないスラリーY2が研磨作業で使用される場合、形状推定部16は変数「m」を小さく設定する。
【0090】
同様に、ここで、変数「n」は、「速度」を示す変数「v」のべき指数である。変数「n」が大きい場合、変数「v」が研磨量δへ与える影響度合いが大きくなる。一方、変数「n」が小さい場合、変数「v」が研磨量δへ与える影響度合いが小さくなる。すなわち、作業子X2の速度が大きいほど研磨作業の研磨速度が速くなるスラリーY2が研磨作業で使用される場合、形状推定部16は変数「n」を大きく設定する。一方、作業子X2の速度が大きくなったとしても研磨作業の研磨速度があまり変化しないスラリーY2が研磨作業で使用される場合、形状推定部16は変数「n」を小さく設定する。
【0091】
実施形態1の粗さ測定部12は、初期表面の粗さを二次元的に測定するが、初期表面の粗さを三次元的に測定してもよい。本開示でいう「初期表面の粗さを三次元的に測定する」とは、初期表面上にある凹凸の縦、横、高さの情報を取得し、凹凸の寸法、位置関係、及び輪郭形状を測定することである。具体的には、粗さ測定部12は、白色光を初期表面に照射し、光の干渉の強弱から初期表面の粗さを測定する白色干渉方式であってもよい。一般的に、三次元的に測定された粗さ(三次元的な表面形状を表す粗さ)は、「面粗さ」と呼ばれる。この場合、二次元的に測定した場合と比較して、触針の走査方向に依存する初期表面の粗さのばらつきが発生しないという利点がある。なお、粗さ測定部12は、共焦点原理を利用し初期表面の粗さを測定する共焦点方式であってもよい。
【0092】
また、粗さ測定部12が初期表面の粗さを三次元的に測定する場合、粗さ測定量は、作業対象物Y1の加工面Y11の最も高い点から最も低い点までの距離であるSz値、算術平均高さであるSa値、二乗平均平方根高さであるSq値、及び、初期表面形状のアスペクト比であるStr値の少なくとも1つである。本開示でいう「算術平均高さ」とは、加工面Y11の平均面に対する、加工面Y11上の各点における高低差の絶対値を平均した値である。また、本開示でいう「二乗平均平方根高さ」とは、加工面Y11の平均面に対する、加工面Y11上の各点における高低差の標準偏差である。また、本開示でいう「初期表面形状のアスペクト比」は、0~1の範囲の値であり、加工面Y11の表面性状の均一性を表す尺度である。すなわち、「初期表面形状のアスペクト比」は、加工面Y11の異方性の強さを示す値である。
【0093】
例えば、粗さ測定量がStr値である場合、目標算出部14は、Str値に基づいて目標表面形状を算出する。より詳細には、目標算出部14は、Str値が所定値以上の表面形状を目標表面形状とする。言い換えれば、目標表面形状は、Str値が所定値以上の表面形状である。なお、目標表面形状は、Str値が0.5以上の表面形状であることが望ましい。この場合、研磨作業前に加工面Y11に存在した虹目が研磨作業によって除去できるという利点がある。
【0094】
また、実施形態1のヒートマップは、作業表面形状と目標表面形状との差分を色のグラデーションによって可視化したものであるが、作業表面形状と目標表面形状との差分を色の濃淡によって可視化したものであってもよい。すなわち、ヒートマップは、差分を白黒の濃淡によって可視化したものであってもよい。
【0095】
また、実施形態1の第1提示部31及び第2提示部32は、支援情報D2として、作業表面形状と目標表面形状との差分を色のグラデーションで表すヒートマップを提示する。しかし、作業対象物Y1の加工面Y11のうち作業表面形状と目標表面形状との差分が予め定められた閾値以上である所定範囲において、研磨作業を行うことを促す指示も更に提示してもよい。具体的には、第1提示部31は、ヒートマップに加えて、研磨作業を行うことを促す文面を据え置き型のモニタに表示してもよい。同様に、第2提示部32は、ヒートマップに加えて、研磨作業を行うことを促す文面を拡張現実表示により表示してもよい。
【0096】
また、実施形態1の第3提示部33は、作業対象物Y1の加工面Y11のうち作業表面形状と目標表面形状との差分が予め定められた閾値以上である所定範囲において、研磨作業を行うことを促す指示を提示する。しかし、第3提示部33は、作業対象物Y1の加工面Y11のうち作業表面形状と目標表面形状との差分が0以下である所定範囲において、研磨作業の終了を促す指示を提示してもよい。すなわち、第3提示部33は、作業対象物Y1の加工面Y11のうち作業表面形状が目標表面形状と一致した所定範囲において、研磨作業の終了を促す指示を提示してもよい。
【0097】
(実施形態2)
(2-1)概要
以下、実施形態2に係る作業補助システム100aについて、図7を用いて説明する。実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0098】
実施形態2の作業補助システム100aでは、作業管理システム10aが、目標算出部14の代わりに、目標入力部14aを有するという点で実施形態1の作業補助システム100と異なる。すなわち、実施形態2の作業補助システム100aでは、提示部3が、支援情報D2として、形状推定部16が推定した作業表面形状と、作業者X1によって目標入力部14aに入力された目標表面形状と、の差分を作業者X1に提示する点で実施形態1の作業補助システム100と異なる。
【0099】
(2-2)詳細な構成
(2-2-1)作業補助システム
(全体の構成)
実施形態2の作業補助システム100aは、図7に示すように、作業管理システム10aと、作業測定部2と、提示部3と、制御装置4と、を備える。
【0100】
(作業管理システム)
作業管理システム10aは、図7に示すように、取得部11と、粗さ測定部12と、第1記憶部13と、目標入力部14aと、第2記憶部15と、形状推定部16と、差分計算部17と、補助処理部18と、通信部19と、を有する。
【0101】
目標入力部14aは、目標表面形状が入力される。より詳細には、目標入力部14aは、ユーザによって目標表面形状が入力される。言い換えれば、実施形態2では、目標表面形状は、ユーザによって目標入力部14aに入力される。一例として、作業対象物Y1の設計時に作成した目標表面形状の3Dデータが、目標表面形状として、目標入力部14aに入力される。すなわち、目標入力部14aは、目標表面形状の3Dデータが記憶された記憶媒体が接続されるコネクタ部を有している。ここでいう「ユーザ」とは、例えば、指示を受けて実際に研磨作業を行う作業者X1、又は研磨作業を作業者X1に指示する者である。
【0102】
実施形態2では、第2記憶部15は、ユーザによって目標入力部14aに入力された目標表面形状を記憶する。また、差分計算部17は、形状推定部16が推定した作業表面形状と、ユーザによって目標入力部14aに入力された目標表面形状と、の差分を計算する。
【0103】
補助処理部18は、支援情報D2として、形状推定部16が推定した作業表面形状と、ユーザによって目標入力部14aに入力された目標表面形状と、の差分を、提示部3に制御装置4を介して送信する。すなわち、提示部3は、支援情報D2として、形状推定部16が推定した作業表面形状と、ユーザによって目標入力部14aに入力された目標表面形状と、の差分を作業者X1に提示する。
【0104】
(2-2-2)作業補助方法
実施形態2の作業補助方法について、図8のフローチャートを参照して説明する。実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0105】
実施形態2の作業補助方法は、目標算出ステップST3の代わりに、目標入力ステップST3aを有するという点で実施形態1の作業補助方法と異なる。
【0106】
目標入力ステップST3aでは、ユーザが、目標表面形状を目標入力部14aに入力する。第2記憶ステップST4では、第2記憶部15が、ユーザによって目標入力部14aに入力された目標表面形状を記憶する。
【0107】
図8のフローチャートは、実施形態2の作業補助方法の一例に過ぎず、その処理の順序が適宜入れ替わっていてもよいし、いずれかの処理について適宜省略されてもよい。
【0108】
(2-3)利点
実施形態2の作業補助システム100aでは、形状推定部16が、初期表面形状及び作業情報D1に基づいて作業表面形状を推定し、差分計算部17が、形状推定部16によって推定された作業表面形状と、ユーザによって目標入力部14aに入力された目標表面形状と、の差分を計算する。そして、提示部3は、支援情報D2として、作業表面形状と目標表面形状との差分を作業者X1に提示する。その結果、実施形態2の作業補助システム100aでは、作業者X1が、形状推定部16によって推定された作業表面形状と、ユーザによって目標入力部14aに入力された目標表面形状と、の差分に基づいた支援情報D2を確認しながら、研磨作業を行うことができるという利点がある。すなわち、実施形態2の作業補助システム100aは、形状推定部16によって推定された作業表面形状と、ユーザによって目標入力部14aに入力された目標表面形状と、の差分に基づいて、詳細な作業支援を行うことができるという利点がある。
【0109】
また、作業補助システム100aが、ユーザによって目標表面形状が入力される目標入力部14aを備えることによって、ユーザが目標表面形状を容易に変更できるという利点がある。
【0110】
(2-4)変形例
以下、実施形態2の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0111】
実施形態2では、作業対象物Y1の設計時に作成した目標表面形状の3Dデータが、目標表面形状として、目標入力部14aに入力される。しかし、粗さ測定部12が初期表面の粗さを二次元的に測定する場合、研磨作業の終了時における作業対象物Y1の加工面Y11の目標のPV値及びRa値の少なくとも一方が、目標表面形状として、目標入力部14aに入力されてもよい。
【0112】
また、粗さ測定部12が初期表面の粗さを三次元的に測定する場合、研磨作業の終了時における作業対象物Y1の加工面Y11の目標のSz値、Sa値、Sq値、及びStr値の少なくとも一方が、目標表面形状として、目標入力部14aに入力されてもよい。
【0113】
この場合、目標入力部14aは、例えば、タッチパネルディスプレイを含み、ユーザの操作の受け付けと、ユーザへの情報の提示(表示)を行う。ユーザインタフェースは、タッチパネルディスプレイに限らず、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、メカニカルなスイッチ、又はジェスチャセンサ等の入力装置を有していてもよい。
【0114】
(まとめ)
実施形態に係る第1の態様の作業補助システム(100、100a)は、作業者(X1)が作業子(X2)を押し付けて作業対象物(Y1)を研磨する研磨作業を補助する。作業補助システム(100、100a)は、第1記憶部(13)と、第2記憶部(15)と、作業測定部(2)と、形状推定部(16)と、差分計算部(17)と、提示部(3)と、を備える。第1記憶部(13)は、研磨作業の開始時における作業対象物(Y1)の加工面(Y11)の表面形状である初期表面形状を記憶する。第2記憶部(15)は、研磨作業の終了時における作業対象物(Y1)の加工面(Y11)の目標の表面形状である目標表面形状を記憶する。作業測定部(2)は、加工面(Y11)を移動する作業子(X2)の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも1つの情報を含む作業情報(D1)を測定する。形状推定部(16)は、初期表面形状及び作業情報(D1)に基づいて、現在の作業対象物(Y1)の加工面(Y11)の表面形状である作業表面形状を推定する。差分計算部(17)は、作業表面形状と目標表面形状との差分を計算する。提示部(3)は、差分に基づいて、研磨作業を支援する支援情報(D2)を作業者(X1)に提示する。
【0115】
この態様によれば、詳細な作業支援を行うことができる、という利点がある。
【0116】
実施形態に係る第2の態様の作業補助システム(100、100a)では、第1の態様において、提示部(3)は、支援情報(D2)として、差分を色で表すヒートマップを提示する。
【0117】
この態様によれば、作業者(X1)が、研磨作業による加工面(Y11)の表面形状の仕上がりを目標表面形状に容易に近づけることができる、という利点がある。
【0118】
実施形態に係る第3の態様の作業補助システム(100、100a)では、第1又は第2の態様において、提示部(3)は、作業対象物(Y1)の加工面(Y11)のうち差分が予め定められた閾値以上である所定範囲において、研磨作業を行うことを促す指示を提示する。
【0119】
この態様によれば、作業者(X1)が、研磨作業による加工面(Y11)の表面形状の仕上がりを目標表面形状により容易に近づけることができる、という利点がある。
【0120】
実施形態に係る第4の態様の作業補助システム(100、100a)は、第1~第3のいずれかの態様において、研磨作業の開始時における作業対象物(Y1)の加工面(Y11)である初期表面の粗さを粗さ測定量として測定する粗さ測定部(12)を更に備える。初期表面形状は、粗さ測定量によって表される。
【0121】
この態様によれば、作業者(X1)が研磨作業ごとに初期表面形状を入力する必要がなくなり、作業者(X1)の負担を軽減することができる、という利点がある。また、作業者(X1)が誤った初期表面形状を入力してしまうことを防止することができるという利点もある。
【0122】
実施形態に係る第5の態様の作業補助システム(100、100a)では、第4の態様において、粗さ測定部(12)は、初期表面の粗さを二次元的に測定する。粗さ測定量は、最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和であるPV値、及び、算術平均粗さであるRa値の少なくとも一方である。
【0123】
この態様によれば、走査方向における初期表面の粗さの推移を確認することができる、という利点がある。
【0124】
実施形態に係る第6の態様の作業補助システム(100、100a)は、第4の態様において、粗さ測定部(12)は、初期表面の粗さを三次元的に測定する。粗さ測定量は、作業対象物(Y1)の加工面(Y11)の最も高い点から最も低い点までの距離であるSz値、算術平均高さであるSa値、二乗平均平方根高さであるSq値、及び、初期表面形状のアスペクト比であるStr値の少なくとも1つである。
【0125】
この態様によれば、走査方向に依存する初期表面の粗さのばらつきが発生しない、という利点がある。
【0126】
実施形態に係る第7の態様の作業補助システム(100)は、第1~第6のいずれかの態様において、初期表面形状に基づいて目標表面形状を算出する目標算出部(14)を更に備える。
【0127】
この態様によれば、作業者(X1)が研磨作業ごとに目標表面形状を入力する必要がなくなり、作業者(X1)の負担を軽減することができる、という利点がある。また、作業者(X1)が誤った目標表面形状を入力してしまうことを防止することができるという利点もある。
【0128】
実施形態に係る第8の態様の作業補助システム(100)は、第5の態様において、初期表面形状に基づいて目標表面形状を算出する目標算出部(14)を更に備える。粗さ測定量は、PV値である。目標算出部(14)は、PV値に基づいて目標表面形状を算出する。
【0129】
この態様によれば、研磨作業毎における目標表面形状を算出する基準が一定になるという、という利点がある。
【0130】
実施形態に係る第9の態様の作業補助システム(100)では、第8の態様において、目標表面形状は、PV値の所定数倍以上の研磨量を初期表面形状から研磨した表面形状である。
【0131】
この態様によれば、研磨作業前に加工面(Y11)に存在した虹目を研磨作業によって除去できる、という利点がある。
【0132】
実施形態に係る第10の態様の作業補助システム(100)は、第6の態様において、初期表面形状に基づいて目標表面形状を算出する目標算出部(14)を更に備える。粗さ測定量は、Str値である。目標算出部(14)は、Str値に基づいて目標表面形状を算出する。
【0133】
この態様によれば、研磨作業毎における目標表面形状を算出する基準が一定になるという、という利点がある。
【0134】
実施形態に係る第11の態様の作業補助システム(100)では、第10の態様において、目標表面形状は、Str値が所定値以上の表面形状である。
【0135】
この態様によれば、研磨作業前に加工面(Y11)に存在した虹目が研磨作業によって除去できる、という利点がある。
【0136】
実施形態に係る第12の態様の作業補助システム(100a)は、第1~第6のいずれかの態様において、目標表面形状が入力される目標入力部(14a)を更に備える。
【0137】
この態様によれば、ユーザが目標表面形状を容易に変更できる、という利点がある。
【0138】
実施形態に係る第13の態様の作業補助システム(100、100a)は、第1~第12のいずれかの態様において、作業情報(D1)は、作業子(X2)の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも2つの情報を含む。形状推定部(16)は、作業表面形状を推定するときに、研磨作業に用いられるスラリー(Y2)の種類に応じて、少なくとも2つの情報のそれぞれの影響度合いを変化させる。
【0139】
この態様によれば、スラリー(Y2)の種類ごとの研磨作業への影響度度合いの差分を考慮して、作業表面形状を正確に推定することができる、という利点がある。
【0140】
実施形態に係る第14の態様の作業補助方法は、作業者(X1)が作業子(X2)を押し付けて作業対象物(Y1)を研磨する研磨作業を補助する。作業補助方法は、第1記憶ステップ(ST2)と、第2記憶ステップ(ST4)と、作業測定ステップ(ST5)と、形状推定ステップ(ST6)と、差分計算ステップ(ST7)と、提示ステップ(ST8)と、を含む。第1記憶ステップ(ST2)は、研磨作業の開始時における作業対象物(Y1)の加工面(Y11)の表面形状である初期表面形状を記憶する。第2記憶ステップ(ST4)は、研磨作業の終了時における作業対象物(Y1)の加工面(Y11)の目標の表面形状である目標表面形状を記憶する。作業測定ステップ(ST5)は、加工面(Y11)を移動する作業子(X2)の圧力、位置、速度、加速度、及び振動のうち少なくとも1つの情報を含む作業情報(D1)を測定する。形状推定ステップ(ST6)は、初期表面形状及び作業情報(D1)に基づいて、現在の作業対象物(Y1)の加工面(Y11)の表面形状である作業表面形状を推定する。差分計算ステップ(ST7)は、作業表面形状と目標表面形状との差分を計算する。提示ステップ(ST8)は、差分に基づいて、研磨作業を支援する支援情報(D2)を作業者(X1)に提示する。
【0141】
この態様によれば、専用の作業補助システム(100、100a)を用いなくとも、詳細な作業支援を行うことができる、という利点がある。
【0142】
実施形態に係る第15の態様のプログラムは、コンピュータシステムに、第14の態様に係る作業補助方法を実行させる。
【0143】
この態様によれば、専用の作業補助システム(100、100a)を用いなくとも、詳細な作業支援を行うことができるという利点がある。
【符号の説明】
【0144】
100、100a 作業補助システム
10、10a 作業管理システム
12 粗さ測定部
13 第1記憶部
14 目標算出部
14a 目標入力部
15 第2記憶部
16 形状推定部
17 差分計算部
2 作業測定部
3 提示部
X1 作業者
X2 作業子
Y1 作業対象物
Y11 加工面
D1 作業情報
D2 支援情報
ST2 第1記憶ステップ
ST4 第2記憶ステップ
ST5 作業測定ステップ
ST6 形状推定ステップ
ST7 差分計算ステップ
ST8 提示ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8